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■オープニング本文 前回のリプレイを見る 五行結陣の遙か東、金山を越えた先にある白螺鈿。 その傍にある農場の一つに、幼い杏と障害故に嫁にいかず日々を暮らす姉のミゼリ、そして二人に付き従う人妖のブリュンヒルデと炎鳥は暮らしていた。 多数の開拓者を雇い、土地を開墾し、小屋や生き物の世話を再開し、農場が本来の機能を取り戻しつつある中で、姉のミゼリはついに聴覚を取り戻した。視覚と声は失ったままだが、簡単な意志の疎通がとれるまでに回復したのは、開拓者の献身のおかげと言えた。 ここ最近雨が降り続け、さらに蒸し暑い。 女性達や杏やミゼリも夏ばて気味だ。 そんななかで、人妖の炎鳥はとても頑張っていた。 「ヒルデー、800坪に薄荷の種ってどれくらい蒔いたっけ。いくら?」 「ええー? どうだったかしら。帳面はっと」 途方もない数を巻いたように聞こえる。 が、これでも結構倹約していた。 例えばきちんと畝に植えていたとしたら、畝1Mに家庭菜園用の小袋一つ10文、1畝分で25袋、約100坪で600袋分は必要になる。約800坪の敷地を見て雑草が生える前に薄荷を巻く話になり大量に買い付けてきた。根付けば幸運、程度の撒き具合だったから対して気にもしていなかったが。 「あった、薄荷の種が全部で48000文よー」 「結構、経費食ったなぁ」 前回は他にも色々な種を購入している。苗でなく種である分、市場価格より安く、多少多く手にはいるが、間引く手間を考えれば似たり寄ったりだ。銜えて、牧草、食費、人件費、生活費‥‥と計算していくと、前回の出費は66850文。 「すげぇ。久々だな、この数字」 「今回みんながきたら、何をすればいいんだっけ?」 「許可証の手続きと、加工品の販売と、卸先、料理人って二人ともしっかりした身元だったけどどうするか決めないと、‥‥あとこの雨で桜桃がやられそうだから、曇りの日を狙って摘みに行かなきゃだめかもね」 神楽の市には小売りや総菜屋が多いわけだが、その分似たような商品も多数あり、ちょっとした激戦区だった。売れ筋はやはり彩り豊かな一品料理たち。味にも見栄えにもうるさい目の肥えた女性達だ。ちなみに焼き卵や総菜入りの卵はあったが、漬けた卵は確認されていない。 老舗の料亭で修行を積み、最近独立したばかりだという料理人も、こちらで若いマダム層を狙った店を開いていた。必要なものを必要なときに必要なだけ仕入れるというスタンスで、高値での販売方針や人気が出れば利益を還元するとも言った。 もう一方の料理人は、幸弥の市のそばで昔なじみの食堂を営んでいた。 最近目新しい店の多い区域に客をとられ、素材も高騰続きと言うことで、まだ特定の契約者をもたない杏たちの農場に興味を示したらしい。不慮の事故で体を痛めている為、素材提供だけではなく二人三脚の、つまり『新しい何か』を一緒に考えてくれたら嬉しいという。 幸弥の市ではおっとりした気質の家族連れが行き交い、やはり自分で手料理をつくる主婦層が大半をしめていた。料理に使う調味料やちょっとした彩りは、瞬く間に噂が広まる性質がある。 そういえば。 鬼灯方面の山麓で蜂蜜をつくっているという養蜂家だが、寡黙な人物がいたらしい。 旅人用の小料理屋をかね、店の裏手で細々と蜂蜜を作っていた。やはり広大な敷地や沢山の花がなければ難しいと言われている。それでも本当にやる気があるなら、教えても良いと返事をもらった。 ただし教えを受けるには、蜂の生態を知るために何日かこもりっきりになるらしい。 牛の搾乳量と鶏卵の増加、桜桃の木の発見、連日の雨天による水やり負担の軽減、管理冷蔵庫の製作による、加工品の増産。 いいこと続きかも知れない。 「それにしても、これ、本当に凄いわよね」 空き部屋に造った、気密性を高めた箱。 とは言っても、やはりどんなに氷を入れようが溶けて水浸しになるのが世の常である。そこで一工夫が懲らされ、溶けた水は受け皿から傾斜のかかった木筒を通り、土壁をぶち抜いた場所を通って、母屋の脇に並べてある栽培箱に、絶えず流れてゆく。 そこだけ水やり不要の環境が出来上がっていた。 「流し素麺できそうね」 「やめとけって。赤紫蘇がこんなになってるのは、これだよなぁきっと」 爆発的に増えた赤紫蘇。毎日料理に使っても無くならない。 「凄いのは、薄荷も一緒だけどね」 「畑は、もう杏や俺らにとっては森だよな」 もさぁ、と広がる緑の光景。今後、人の出入りを考え、開拓者が造った敷地の図の写しに、順次作物の情報をくわえた。これで見やすくはなったはずだ。 「蒸し暑いけど、風がふいてくれるのが幸いね」 最も、その風はべと病という、よけいな病を連れてきてしまったのだけれど。 「一つの節目だし、お祝いとかできたらいいわね。ね、杏。ミゼリもね」 「うん!」 手を挙げる杏。吠える子犬。それもいいですねぇと笑う、雇った女達。 そして言無し姫は、ゆっくりと微笑んだ。 |
■参加者一覧
酒々井 統真(ia0893)
19歳・男・泰
若獅(ia5248)
17歳・女・泰
ブラッディ・D(ia6200)
20歳・女・泰
アルーシュ・リトナ(ib0119)
19歳・女・吟
ロムルス・メルリード(ib0121)
18歳・女・騎
久遠院 雪夜(ib0212)
13歳・女・シ
ミシェル・ユーハイム(ib0318)
16歳・男・巫
白 桜香(ib0392)
16歳・女・巫
ネリク・シャーウッド(ib2898)
23歳・男・騎
桂杏(ib4111)
21歳・女・シ |
■リプレイ本文 さわさわと緑が揺れる。 整備されていない小径を抜けると、杏たちの農場が見えてきた。 むかしならのんびりどこから手につけるかと悩んでいたものだが、今はみな、それぞれにやることがある。 手が回らないほどだ。 「ミゼリさんが聴覚を取り戻して本当に良かったです。農場はこれからですね」 道行く白 桜香(ib0392)は心躍る。 「あれ? こっちに向かってきてるのって、絆くん? 感心、感心」 犬の躾は引き続き、久遠院 雪夜(ib0212)がするらしい。 いつか忍犬のように逞しい存在になってくれたら嬉しいな、と期待も込めて。 対照的に暗い気配を背負っているのが、酒々井 統真(ia0893)だ。 「前回俺馬鹿みたいだったな。いや、馬鹿だった、か」 ごーん、と落ち込んでいる。 想像が暴走して、というより、慎重になりすぎて近づくことが出来なかった。心優しいとも言えるし、不器用な面でもある。 人はこうして日々を学ぶ。 考え直して首を振った。 「懸念は少し和らいだし‥‥いつか、杏達が開拓者の力なしで立てる時の為に頑張るか」 いつか、独り立ちできる日が来るように。 荒れ果てていた昨年末。 今は、あるべき姿が想像できるほどになった。 「ええ。完全に元通り、とはまだ言えないでしょうけど、それなりに農場として形になってきたようね。来月の収穫に色々と備えないと」 面倒くさい手順を思い出して、ロムルス・メルリード(ib0121)が優先順位を考える。 「収穫にも絡む話ですが、私は白螺鈿の方へ行って参ります」 桂杏(ib4111)の手には、7月から9月の収穫予定作物を纏めた書きつけがあった。ついでに処理に困っている蜂の子の瓶詰を手に、神楽の市、幸弥の市の順で料理人を訪問するつもりだ。 「やっと少しずつ前は見えてきたけど、それでもまだまだ問題は山積、か」 ネリク・シャーウッド(ib2898)は肩を鳴らす。 「さて、今回も頑張っていきますか。出かけるといえば‥‥俺、養蜂家のほうにちょっと顔出しに行ってくる。朝食と昼食は作っておくからな」 言いながら献立を考える。白の言うように、ミゼリの聴覚が戻ったことを祝うべきではないだろうかという気持ちがよぎった。少し豪勢に作ったってかまわないだろう。 「あ、養蜂家さんへはボクも同行したいんだよ」 久遠院の希望に、シャーウッドも「ああわかった」と首を縦に振った。相談をしながら久遠院は考える。帰ってきたら、少しずつミゼリちゃんに話をしよう。いいお姉さんな歳であるにも関わらず、ミゼリは農場にかかりきりの人生だった。心を閉ざしていた時と違い、今なら声を聞いてくれる。外の様子や行った作業、ほんの細かな事でいい、外に興味が持てる様に話をしようと考えていた。 仲間達の姿にアルーシュ・リトナ(ib0119)の顔にゆるく笑みが浮かぶ。 「季節は巡り若芽は伸び行く‥‥今出来る事を、となりますと、私の場合はご近所巡りをしてこないといけませんね」 今回はミシェル・ユーハイム(ib0318)も同行する。 振り返った先のユーハイムはといえば。 「すまない、先にコレを置かせてもらっていいかな」 「えぇもちろん」 ユーハイムは神楽の市に立ち寄り、病害虫予防に効く品を調達していた。勿論、自分で持つのは困難なので、相棒のモードレッドが頼りだ。 「しかしバジルがメボウキで、チャイブがエゾネギなんて名前だとは思わなかったな」 異文化の面白さを体感しながら、バジリコこと目箒、チャイブこと蝦夷葱、そして大蒜を200gずつ購入した。 それだけでなく、セージこと薬用サルビア、カモミールこと加密列(カツミレ)、そして大蒜の苗三種類も各20ずつ買ってある。 何故か、硬めの筆も。 「ええもちろん」 「いろいろやんなきゃな。そうだなぁ」 わしわし頭を掻いたブラッディ・D(ia6200)が、今回やらなければまらないことを指折りで数え始めた。 「まず畜舎と鶏小屋の点検・補修かな? 雌牛ーズの散歩も行って、森で材料も回収しておこう。熱くなってきたし適度に休憩もするけど」 適度に体を休めて水分をとることは大切だ。 冬場はぐったり倒れるだけで済んでいたが、夏場は倒れるだけではすまないだろう。 そして母屋の方を一瞥した。 「‥‥ミゼリと話したり、遊んだり出来たらいいなー」 「なんか言ったか?」 若獅(ia5248)が顔をのぞき込む。 「なんでもない! なんでもない! いこうぜ!」 「おう!」 元気よく応えた若獅が後に続く。 母屋の裏には井戸がある。 しかしあくまで生活面を補う為のものにすぎない。現在畑の水まきも井戸から汲み上げて使っていた。今が雨季だから水やりの心配はしなくてすむものの、今後のことも考えると厳しいのが現実だ。 森の近くを歩きながら、酒々井が呟く。 「やっぱ水路を農場の方に引くしかないか‥‥安定した水の確保は必須だな」 森の奥には、半野生化していた雌牛たちが陣取っていた水源がある。あそこから水をくめればいいのだが、母屋にいるのは足の悪い女子供と人妖ばかり。流石に困難だ。 「今の小川は残して、森から流れてた小川うおおおおおおお!」 何かに足を取られて、そのまま倒れる。 二枚目の顔も泥まみれだ。 「なんだってんだ、全く‥‥お?」 洗濯の心配やら、下流の川へ調べものやら、最悪井戸掘りを、と色々考える前に、酒々井の視線は、自分の足をすくったソレに視線を注ぐ。 考えること数秒。 泥にまみれた顔が旧畑の方を向いて、再び森の奥を見やる。 白の言葉が脳裏をよぎる。 『母屋の勝手口の傍の井戸はともかく、この農場の近くに水源はないんでしょうか? なんでしたら、後で白兎を使って見ますけれど』 「‥‥確かに、な」 ここはかつて大きな農場だったという。 ジルベリアの特徴を備えた大きな屋敷、母屋の井戸は人を養うためのもの。 あの莫大な農地を潤していた水は、どこへ消えた? 「大丈夫かしら、彼」 畜舎の手伝いをしていたメルリードが目を凝らす。 視線の先には、倒れてからおぼつかない足取りで彷徨い、ぬかるんだ地面に頻繁に足を取られながら、森の奥へと消えていく酒々井の姿だった。 「さっき転んだ時に、頭でも打ったのかしら」 「どうしたんだ?」 にょ、と顔を出したのは鶏小屋の餌撒きを終わらせた若獅だった。 メルリードが見た光景を話すと。 「んーオレ、これから雌牛の散歩と水浴びさせついでに洗ってブラッシングしに水源へいってくるから、帰りに立ち寄ってみようか?」 「そうね、おねがい」 若獅が雌牛を解き放つ。 日射病で倒れてたら担いでくるから、と言って出かけた。 「掃除と餌よろしくなー!」 「分かったわ」 「おー、まかせとけって!」 丁度、台所から塩を分けてもらったブラッディが戻ってきた。 メルリードと一緒に、若獅を見送る。 「さて、今回は節目ということもあるし、掃除など特に念入りにしましょうか」 「さんせーい。あ、牛には塩分が必要らしいって聞いたから、これを前作った未使用の栽培箱にいれて、塩入れにして置いておくな」 必要になれば勝手に舐めるだろう、と。 「この湿気に、気温だものね」 「うん。雌牛ーズには健康でいて欲しいから、適度な運動、休養、栄養ってな!」 晴れやかな声が、風にとけて流れてゆく。 ところで他の者達はというと、皆、外へ出かけていた。 養蜂家の所へ出かけたのは、シャーウッドと久遠院の二人である。 本格的に学ぶために、まずは人手と道具を揃えるため、今月は来ることが出来ないことを詫びに来た。ただ興味本位でやりたい、というのではなく、真面目に下準備から始めていくという建設的な姿勢は好印象を与えたらしい。無口ながらも必要な道具や材料について教え、今後も訪ねて良いかという質問には「来たければくればいい」と許しを得た。 その日の帰り道。 「養蜂を学ぶなら俺だけじゃなくて、他のやつも覚えておいたほうがいいからな」 「怖そうな顔だったけど、追い返されなくてよかったんだよ。帰ったら忙しくなるね、作れるものは、作って置いた方がいいし」 ああ、と相づちを打つシャーウッドの瞳には、沈みゆく太陽の茜色がやきついた。 時は少しばかり巻き戻り。 白とユーハイム、フィアールカを連れたリトナと杏は、近所の農家を訪ねて回った。 奪ったり奪われたり、恨んだり言いがかりをつけられたりと散々ではあったが、地道な努力は周囲の意識を変えつつある。 蒸し暑くなってきたので、今後氷がよく売れる。それを見越して氷霊結で氷を作り、子犬を譲ってくれたお礼や、現在農場で発生中のべと病に対する対処知識へのお礼などをかねて、一軒ずつ訪ねて回った。 例の謎の苗、二種類を持って。 夕方。帰り道で一緒になると、分かったことを話し合った。 「塩卵が好評でよかったです。べと病はやっぱり全部処分ですね」 リトナが「三日目が大変ですね」と予定を考える。 あの、と白が鉢を差し出す。 「この蕾の方は、鶏頭というそうです。鶏の鶏冠のように、真っ赤な花がつくと農家の方が仰っていました。食用にもなるようですが、干して燻すとネズミ避けになるそうです」 リトナのきいた時も同じ答えだった。咲くのが楽しみだ。 問題は。 ユーハイムが頭が痛そうに持っている、もう一方。 「この葉の方は、葛なんだそうだ。植えてしまったな、どうしようか」 葛、とは所謂葛粉や漢方薬の元となる、あの葛である。 秋に赤紫の花を咲かせ、甘い香りを発し、根は非常に深く太って長芋状になっていく。 一見、有益に聞こえるが、実は一度植えたら駆除するのが不可能に近いと謳われる驚異の雑草でもある。どこにでも根付き、蔓を張り巡らせ、樹木や建物を侵食して絞め殺す。 初心者が扱うには過ぎた代物だ。 「受け取った時期から考えれば、ある意味で嫌がらせだったのかもしれないね」 定期的に蔓も根も刈り取れば、上手く共生できるという。 根は葛粉などの食用に、干した葛根は発汗作用と鎮痛作用を持つ漢方薬に、乾燥前の蔓は家畜の餌にもなるし、蔓で籠を編めば売り物になり、蔓を煮て発酵させ、取り出した繊維で編んだ布は葛布となる。 「私達次第、ということでしょうか」 眉間に皺を寄せて考え込む白に「そうらしいね」とユーハイムが告げた。 ところで料理人の店を順に訪ねた桂杏は、帰り道に上機嫌で歩いていた。 処理に困った蜂の子を『美しい髪と肌をもたらす珍味』として漢方薬を扱う店に売って来たからだ。商魂逞しいが、交渉術に長けてきたあたりに黒い人格を感じなくもない。 神楽の市にある料亭の名を『まほろば』といった。 欲しい食材は葉物全般、塩卵、マヨネーズらしい。食材高騰に加えて、夏が近づき、葉物が傷みやすいのだとか。そしてマヨネーズはこの辺ではジルベリアからの輸入が基本で、やや高めの値段であることから、易く手に入るなら有るだけ欲しいという。 幸弥の市にある食堂の名を『ほたる』といった。 欲しい食材は、穀類、卵、牛乳らしい。高級な食材が使いにくくなっている為、訪れる者にたらふく食えることを意識しているらしい。よって芋などの穀類は歓迎だという。 しかし。 「ほたるは‥‥おきまりのメニューに、昼時しか開店しない、これは先が思いやられますね」 新しく料理人を雇わせたほうがいいのではと考えながら、農場に戻った。 二日目の朝。 酒々井は相変わらず日が昇る前から出かけていった。楽しみに待っていろ、という含みのある言葉は、どうやら仲間達を良い意味で驚かせてくれそうな予感がする。 家の中では、白達が大量繁殖した栽培箱の赤紫蘇の間引きに追われていた。 売りに出す紫蘇と、母屋で使う分に分ける。 販売分は綺麗に処理すれば刺身のつまや料理の彩りとして高値で売れる。 「あ、この捨てる方もらってっていいかな。ちょっと試しに餌に混ぜてあげてみようと思うんだ。すぐ戻る」 余った赤紫蘇の茎をブラッディが牛の所へ持っていく。 午後になったらユーハイムと畝二つ分に匹敵する栽培箱を作ると言うから大忙しだ。 メルリードとミゼリ、雇った女性達の子供が、紫蘇を綺麗に処理していく。 切り取った紫蘇を、痛めないように井戸水で洗い、ゴミを落として纏めていた。 「ミゼリ、どう? できそう?」 こっくりと揺れる頭。 できればこれから先、自分たちが居ないときでも何か一つでも出来るようになってもらいたいと願いながら、メルリードはミゼリを含めて、子供達に指導する。 一方、足の悪い女性達は、久々に晴れた天候を好機とみて、洗濯物の真っ最中だ。 ぎこちなくともここに馴染んだ様子を満足げに眺め、白は干された衣類に目を細めた。 「昨日は皆さん、泥だらけでしたね」 農作業は汚れと友達だ。 普段は険しい道をゆき、アヤカシと戦う。 そんな過酷な日々を、今だけは忘れさせてくれる。 「昨日は雨、今日は晴れ、流石に蒸し風呂のようだね」 ユーハイムの場合は、土間でメボウキやエゾネギを煮出しているので、当然だ。 時々氷水で喉を潤し、冷えた手拭いで首を冷やしながら何をしているかというと、虫対策である。煮出した液を塗布するため、一リットルに40gの配分で鍋に叩き込んでいる。桂杏もまた病害虫対策は欠かせないと、一緒に手伝っていた。 ところでこの日。 リトナとシャーウッド、そして杏の三人は如彩家の屋敷へやってきていた。 今後市場に品物を出荷する場合、白螺鈿には面倒な決まりがあったからだ。 毎週末に四カ所の広場で行われる白螺鈿最大の市場に店を出すには納税が欠かせない。如彩家発行の『年間出店特別許可証』を毎年一万文で購入し、更に売り上げを明確に報告して一割を所場代として支払う。これが出来ない者は場所から追い出されるという。 所場代の集金方法は区によって違う、という話もある。 そして決めた出店先は、如彩家三男、幸弥が統べる区域だった。 「はい。この証書を無くさないようにね」 差し出された八月から有効の『年間出店特別許可証』を受け取る。 偉い相手は、とても人の上に立っているとは思えない、病弱そうな若者だった。 「ありがとうございました」 ぺこん、と頭を垂れる杏。 何事も経験だと教えたリトナとシャーウッドに言われたとおり、身なりを整え、好意的に映るように礼儀正しさを目指した。最も、五歳ぐらいにしか見えない杏の場合、好意的云々より、微笑ましさしか感じないのだろうが。 表向きは病で動けない姉の代理という話になっているが、そもそも農場を現在の形まで戻してきたのは、何も知らなかった杏と悪知恵の働く人妖達が雇った、開拓者達の助力があってこそだ。 小さいなりにも、立派な経営者になりつつある。 証書を胸に、再び町中へ出た。 働く権利は手に入れた。 物乞い同然だった昨年とは違う。 杏の頭を撫でながら、シャーウッドが人で溢れる町中を示す。 「杏、よく覚えておくんだ」 「‥‥手続きを?」 「それも大事なことだが、この世界で大切なのは信用と信頼だ。自分で足を運んで色々調べておくといいぞ。馴染みの店、関わる人々、付き合いも長くなるだろうしな」 ここから始まる。 嬉しいことも、辛いことも、なにもかも全てが。 まだ歩き出していない。 だからこそ、この気持ちを、決意を忘れてはならない。 「それでは予定地の下見に参りましょうか。周辺で若獅さんと久遠院さんが市場調査をしているはずですから、食堂『ほたる』さんに立ち寄ってから一緒に帰りましょう」 リトナは、食堂『ほたる』にも塩卵を売り込みにいこうと考えていた。 黄味だけでおつまみに、全卵をお粥に混ぜたり、苦瓜と一緒に炒めたりすると美味しいからだ。今後市場で売りに出し、食堂で宣伝もしてくれれば少し値引くと話すつもりでいる。卸値は通常卵と同等位までさげられると言えば、卵が高騰している今、お互いに利点も多いだろう。 「それと、帰りに町中でお土産も買いたいのですが」 「土産?」 「ええ。みんなに水菓子、ミゼリさんには風鈴、杏さんにはご本を」 「よし、そうしよう。通りがかりに馴染みの店に杏も紹介していくよ」 と、そのとき。 「お。きたきたー! こっちこっちー!」 若獅がぶんぶんと手を振っている。久遠院も一緒だ。 「いい場所もらっちゃったんだよー、週末の市場は、みんな注目間違いなし!」 夜春を駆使して、既に関係者と周囲へ挨拶回りをすませていた。 女性陣、強し! ついでに夕食はこれがいい、と調査の為にちゃっかり人気商品を入手した若獅がいた。 三日目は、朝早くからべと病に犯された作物の一斉間引きだ。 三つ葉の表面は黄色く変色していた。葉をひっくり返すと真っ黒に黴がはえている。 密集して植えたり、肥料を多くやり過ぎると発生しやすい、と近くの農家からきいた。 ひとまず病にかかった苗はどうすることも出来ないので、25Mに渡って植えた三つ葉は全て撤去し、廃棄する。次に三つ葉が植えられていた畝両脇の作物を虱潰しに調べ、患部を取り除く。 せっせと働く間にも、龍達には薄荷畑の仕切りとなる岩の運搬をさせる。 そして涼みながら昼食をとった後は。 体力有り余るメンツは芸香、赤紫蘇、大葉の間引きに出かけた。 「間引いた奴で、問題ないのはこっちに運べばいいんだよな」 「ええ、頼んだわ。ブラッディ」 「芸香は、多量だと皮膚に害を起こすって本で読んだし、作業中は引き続き手袋かな」 うろ覚えの知識をひっぱりだしながら、若獅は身支度を整える。 その傍らで、昨日煮出した香草の汁と筆、そして買い足した苗をせっせと運ぶユーハイムの姿があった。 「じゃ、間引きと予防の班にわけようか」 この汁は虫除けとして、葉の両面に流布する。購入してきた セージこと薬用サルビアの苗は野菜のある畝の方に栽培箱ごと置いていき、カモミールこと加密列もまた栽培箱ごと香草の畝の所に均等に配置していく。その他、大蒜は後で栽培箱に植えるからいいとして。 こうして畑の方には、ユーハイム、酒々井、若獅、ブラッディ、リトナ、メルリードの六人が出かけた。 ちなみに。 「では桜桃の収穫にいってまいります」 「沢山取ってくるから楽しみにしててほしいんだよー」 農場の人妖ブリュンヒルデ、酒々井の人妖雪白、そして己の人妖百三郎をひきつれた桂杏。そして農場の番犬となる絆の訓練をかねて、若獅の忍犬たる天月と己の忍犬こと天国をつれた久遠院の二人が、桜桃摘みに出かけた。 農場の人妖である炎鳥は相変わらずミゼリにぴったりとよりそい、白の人妖である桃香は味見の真っ最中‥‥そう、味見である。 「あまーい」 「こら、桃香ったら。きちんと助言してね」 「心配せずに任せて、美味しい物にはうるさいわよ? 私は! コレ、少し濃いかもね」 只今、紫蘇の煮汁に蜂蜜をいれて清涼飲料にできないかと試行錯誤している最中だ。 ちなみに。 炎鳥と桃香が紫蘇飲料の味見なら、ブリュンヒルデと雪白と百三郎は桜桃のつまみ食いに違いない。 人妖達に混じって味見をするシャーウッドが唸った。 「うーん、多少すっぱいくらいのほうが、天儀だとウケがいいかもしれない。二種類用意して、みんなにも味を見てもらうか」 「冷やしても薄めてもいいですし、味はお好みで調節を‥‥そういえば紫蘇味噌はどうかっていう話があったんですけど」 夏ばて防止になるからと、久遠院の提案が話題に上る。仕事は果てがない。 四日目、朝日も昇らぬ時刻というより、まだ深夜の時刻。 酒々井は浅い眠りについていた若獅を起こすと、耳元で何事か囁いた。 「‥‥え、マジ?」 「おう、マジだぜ。今日、追肥くらいだろ? 俺は森に行って準備してくる、農場側を少し手伝ってくれ。みんなの驚いた顔、見たくないか?」 謎めいた行動に出ること数時間後。 「おーい、どうだー?」 「順調。当面はこのまま凌ぐとして、真夏当たりに細かく整備すればいいんじゃないか?」 ふぁー、とあくび一つした二人の背中に。 「‥‥何してるの?」 起き出してきたメルリード達が声をかけ、驚いて目を丸くする。 池があった。 「は?」 昨日まで緑の雑草が生い茂っていた場所に、である。 時を遡ること初日。 地道に水路と井戸掘りをしようとしていた酒々井が見つけたのは、生い茂った雑草の中に埋もれた、石造りの意味深な溝であった。足で探り、草木をかき分け、何度もすっ転んで『頭を打ったのでは』と心配されながら見つけた石の溝は、森の奥の水源から旧畑の近くまでのびていた。雑草に埋もれた不自然な高低差。そもそも大農家であったはずの家が、あんな井戸で水をまかないきれたはずがない。 そして旧畑の傍らに、ため池の痕跡をみつけた。 「使われなくなって涸れたんだろうな、ここ毎日溝にたまった土やら雑草やらの掃除して、水が通るようにした。ついさっき水源の方でせき止めていた板を外してきた。ここまで距離があるからな。一日か二日位で、このため池には脛ぐらいまで水が入るぜ」 にぃー、と笑って。 「よし、昼まで仮眠するか。正直俺、今回でできると思わなかったしな、目標は達成した」 「賛成。ごめんな、少しだけ休ませてくれな」 驚く面々の隣をすり抜けた酒々井と若獅は、足りない睡眠を補うため母屋に戻った。 と、まあ。 朝から驚きの連続ではあったが、四日目もみな予定通りに作業に取り組んだ。 昨日の夜に味見してもらった紫蘇の清涼飲料を調整するシャーウッドとユーハイム、そして桂杏。実は桂杏、今月から売り出しにいくようならと、アル=カマルっぽい装束で派手な捨て身の客引きも覚悟していたらしく、ややほっとしていた。 一方、紫蘇味噌に挑戦する白、味見をして変な顔になってる桃香、久遠院は昨日収穫しきれなかった桜桃の残りを人妖たちと杏をつれて一緒に取りに出かけた。 「いってきまーす。絆君、ちゃんとついてくるんだよー?」 きゃん、というひと鳴き。 塩卵の仕込みが終わったリトナは、合間を見てミゼリの髪を切りそろえ、星屑のヘアピンを飾った。 「女の子ですもの。綺麗ですよ、いつか鏡で見る日を楽しみにしてください」 いつか。 その閉ざされた視界が、恐ろしいものでなくなるように。 「いいんじゃないか? 似合うよ、折角だしロムルスも少しは」 何かを言いかけたシャーウッドの口元に無言で突き出されたのは、熱々と湯気を立てる紫蘇入り卵焼き。ちなみに、まだ黒こげが目立つ。 まだ白に習い始めたばかりだった。 シャーウッドには意地でも教わらないらしい。 それはいいとして。 「あつ! あついって! 何を怒ってるんだ!」 「怒ってないわ。少し腹がたっただけ。‥‥‥‥折角、私も少しは‥‥成長できるように頑張らないとって‥‥!」 気怠い暑さは、人の心を短気にする。 「ねー、あれなぁに?」 「ふふ、見てはいけませんよ、桃香。恋人たちの邪魔をする人は、馬に蹴られて死んでしまえと言うらしいですからね。さ、次はふりかけを作りましょうか」 白、笑顔のまま我関せず。 リトナはにこやかに騒動が沈下するのを眺めていた。 なんだかんだ言っても、へそを曲げたメルリードを殺し文句で沈めるのはシャーウッドの役目なのだ。何も心配する必要なんてなかった。 ところ変わって、八月から市に出るということで、その下見に出た者と、食堂『ほたる』に出かけた者がいた。ブラッディである。共に『新しい何か』をやっていく為に、考えついたことがあるらしい。 「食器と料理の調和って、どうかな」 「食器とな」 「んと、料理って、見た目的にもやっぱり印象を残しとかないといけないから‥‥お客さんの記憶に残りやすいように、素敵な食器で、上手い料理をって感じかな」 ただ小汚い器に山と盛るのではなく、少しずつ変化させていこうという。 今はお互いの考えを出し合うだけだ。 しかし、ゆくゆくは木型を作り、よりよく出来そうで有れば陶器の作成も視野に入れていた。帰り道で近くの陶芸品を扱う店を巡り、工房を探した。 器の味わい、釉薬の色合い、そんな小さな違いを見るために、お土産としてみんなの分の湯飲みを買った。次は陶工に会って交渉してみよう、そんな楽しい気持ちが心を占めていく。 五日目。 この日は朝早くからせっせと働いた。 というのも、折角の節目ぐらい、宴会を開こうという話になったからだ。 農場の作物を収穫するにはやや早いが、これから夏が来て、秋に移り変わっていく家庭で、自分たちが育てた作物を存分に口に出来る日々も近いに違いない。 「なぁ、ひとまずの打ち上げでもやるなら、雪白にまた人妖劇でもやらすか? ミゼリは、初めてになるだろし」 「いいですね、お楽しみの人形劇。いままでを振り返るような内容とか」 作業の合間を見て、言い出した酒々井とリトナ、そして人妖達は演劇をやろうとこそこそ作業に取り組んだ。耳が聞こえているのなら、声や音だけでも届くだろうと。 陽が落ちるとリトナの歌声が母屋から零れ始めた。 姫桜に着替えた久遠院の、セレナードリュートの音色が響く。 篝火が照らす豪華な食事と、試作品の加工品の数々を片手に、皆が眺める。 「‥‥小さな領土に住む王子様とお姫様、 今にも隣国に奪われそうな時、王子様の祈りに仲間がやって来ました。 僧侶や戦士や騎士、 力を合わせ知恵を持ち合い、少しずつ国を変えて行きます。 至る道はまだ遠く。 けれど、決して諦めません、国と二人が豊かに実りを迎えるまで‥‥」 夏を感じさせる音色が心地よい。 熱のこもった人妖たちの様子は、まさに子供と変わらぬ仕草だった。 「次のお料理ができましたよ」 「熱いので気をつけてくださいね」 桂杏と白が大皿を抱えている。交代で台所に入り、絶え間なく料理を運んでいた。 「先はまだ見えないけど、でももう胸がいっぱいな気が」 ほろりときたらしいユーハイムが呟く。胸もお腹もいっぱいだ。 「俺達が関われる農場の作業も、一先ず一区切り、かぁ‥‥」 頬杖をついて、紫蘇の清涼飲料を見下ろす。 からり、と氷が啼いた。 「何かがむしゃらに頑張ってきたけど‥‥杏やミゼリ達の為に、少しでも今後に繋がるものを残せてたらいいな」 「とりあえずはひと段落、かな? まだまだ、いっぱいやることはありそうだけどなっ!」 若獅とブラッディの視線の先には、食い入るように眺める杏と、耳を傾ける言無し姫がいた。 傍にいたシャーウッドが二人の呟きを拾う。 「同感だな。また暫く会えなくなるし、少しでもミゼリに思い出は残しておいてやりたい」 紫蘇撒き卵を口に運びながら「暫くなぁ」と酒々井が考え込む。 「俺は当面、こっちの地方に出入りはするつもりでいるが、何日も滞在するのはむりだろうし、そうなるんだろうな。次は本格的に市場に出店だろ? まだ地力の少ない幸弥の方で出すのはいいとして‥‥」 「おぃおぃ、今は肩の力を抜いて楽しめばいいじゃないか。なあ?」 シャーウッドが一瞥した先には。 「そうだ! いい出番だったのに、見てなかっただろう!」 ぷりぷり怒った人妖の雪白が、酒々井の後ろ髪を渾身の力でひっぱった。 「痛い痛い、おぃ雪白!」 「あはは、手加減してやれよ。それにしてもロムルスは‥‥何をしているんだ?」 シャーウッドが目を凝らす。 視線の先には、黒やぎと白やぎの置物を、餞別として杏に渡すメルリードがいた。 「二つ揃えておくと幸運を招くとかなんとか‥‥ま、本当かどうかなんて分からないけどね」 幸運と言うより、手紙の紛失が増えそうな気がしたシャーウッドだった。 その面白い光景がある一方で。 「私の演技力すごかったんだから」 と白に詰め寄る人妖の桃香と。 「いつかあんな風に守ってやるから!」 と桂杏に言う人妖の百三郎が微笑ましい。 逆に。 「演技なのは分かってるって」 ブラッディの鬼火玉こと、悪役を務めた黒緋が、犬みたいに何かを必死で訴えていた。 きっと本心から虐めてはいない、と。言いたかったに違いない。 楽しい時間は過ぎていく。 穏やかで、優しく包むような日溜まりの空間。 翌朝、みんなで、思い思いの言葉をかけた。 「気付けば夏か。結構、長い間ここに関わってきたんだな、俺たち。すっかり第二の実家みたいだ。このまま今から畑耕しにいくって言っても不自然じゃないくらいな」 笑うシャーウッドに「そうね」と見渡すメルリード。 「初めて農場に来たときと比べたら見違えたわね。でも大変なのはむしろここからよ。ようやく前に進み始めたばかりなんだから。この先も色んなことがあるでしょうけど、そのときはまた開拓者を頼ってくれればいいわ。きっとまた皆駆けつけてくるから」 メルリードの言うとおりだ。 当面の間の農場の運営は勿論、注意しなければならないことも含めて沢山ある。 「杏、良い滑り出しが出来そうな今こそ、虎司馬には気をつけてろよ。ミゼリも‥‥前は怖がらせて悪かったな」 しんみりしちゃうじゃないか、と雪白の突っ込みが酒々井に入る。 笑い声が零れる中、リトナは杏の手を握った。 一粒の翡翠を隠して。 「また会えるおまじないです」 「あら、先に言われてしまいましたね」 桂杏も同じことを考えていたらしい。やはり一粒の翡翠を渡した。 といっても。 桂杏の場合は、算盤を弾きながらの、順調な収穫時期までこれで頑張って、的な意味があったのだが、それは秘密である。 「初めての事だらけで、でもすごく楽しかった」 「おれもおれも!」 若獅とブラッディが笑いかける。 「これで一つの区切りになっちゃうけど、ボクたちはずっと友達だからね。絶対に、また来るよ」 「そのとおりだ。また、必ず会いに来るよ」 久遠院とユーハイムが約束をした。 ギルドの決まりが、いったいどれほど彼らを縛れるというのだろう。 「まだまだです、楽しい農場にしていきましょう」 白の明るい笑顔に「うん」という小さな返事。 「いってらっしゃーい」 杏たちは、ギルドに戻る者達に手を振りながら、そう言った。 いってらっしゃい。 その次に続く言葉は「おかえりなさい」だと、彼らはもう知っている。 ゆっくりと振り返った。 ああ、眩しくて前が見えない。 雨上がりの豊かな色彩が、瞳を焼く。 肌を撫でる風、香る緑、そそがれた太陽の欠片。 遠ざかる後ろ姿に、いつまでも届く声音が耳に心地よい。 ここはまさに、もう一つの我が家。 新しい未来を歩き出す。 いつか再び舞い戻る、優しい日々に思いをはせて。 |