開拓村未満〜十月
マスター名:龍河流
シナリオ形態: シリーズ
相棒
難易度: やや難
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/11/15 02:43



■オープニング本文

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 開拓予定地にて、軽犯罪と言うには色々やらかしていた少年少女の更正を監督している騎士と兵士達は、彼らの移住先は農村が適していると主家に報告した。
 テュールのサヴァーの発言からこちら、仲間と一緒に暮らせる家が欲しいと言う者が増えたこともある。アルミアの幼少時からの夢は歌手なのに、それを自ら否定していた理由が『仲間と別れたらもう会えない』だったのも大きい。
 後者は、根無し草である仲間達と離れたら再会し難い現実を何度も味わっての懸念だ。もしも離れても、気持ちまで離れないから大丈夫とか色々と開拓者に諭されてちょっと気が楽になったようだが、仲間が居る場所が不確かでは先々を思うには到らない。
 要するに、少年少女には故郷とまで行かなくても、生活の場として存在を認めてくれる土地で、しばらく落ち着いて暮らす体験をさせるのが重要と判断したのだ。将来、夢の実現や生活の糧を求めて出て行くとしても、折に触れて帰れる場所があれば気持ちも安定して過ごせるだろう。
 またうかつに街に返して、顔見知りの悪党に取り込まれたりするのも避けたい。
 そして、なにより。

「だからさ、前は親がいないのは駄目だって言われたの。あんたが親の代わりについてきてくれたら、お屋敷でも雇ってくれると思うんだ」
「あんた達は、フダホロウの『お屋敷』で働きたい、と?」
「そうそう。お屋敷ならお金いっぱいもらえそうだし。あたし達三人と、他の奴らも使い走りとかさせてもらえれば、なんとか食えるよ、きっと」
「くちききって言うんだっけ? それやって」

 フダホロウという街出身の少女達が三人、女性騎士に口利きを頼んできた。今まで仕事の希望を口にしたことがない彼女達には、実は希望の仕事があったのだが‥‥
 このフダホロウの店舗の大半は、商売の種類で屋号の一部を固定する習慣がある。例えば屋号に『なんとか小屋』なら、芝居小屋などの興行を商売にしている店だ。
 この屋号の特徴は他にも色々とあって、『屋敷』と付くのは高級娼館だ。交易で栄える街の歓楽街の華であり、色を売る以外に芸事に優れた妓女を多数抱える高級宴会場の顔も持つ。
 街の中では大変な存在感と影響力を持ち、祭りでは妓女達の姿や芸を見ようと人が集まる人気ぶりだが‥‥よし、分かったと連れて行く場所でもない。
 なによりガリ家の領内では、娼婦の斡旋は許可証を持つ口利き屋か女衒に限定されていた。騎士が付き添って、本人達が働くのを希望していても、確実に断られるのだ。

「やっぱり許可のない娼館なんぞに売り飛ばされないように、繁華街のない地域に送り込むべきだな」
「人数が多くて、受け入れ先が限定されるのが問題だけどね」
「それだが、候補地からあいつらの様子を確かめに人が派遣されて来るそうだ。役人が来たとかとんがらないように、よく注意するようにしような」

 このまま街に戻したら、何人かは確実に悪い道に引きずりこまれたり、本人の意に沿わない奴隷同然の労働を強いられる。
 その予感がひしひしとする、少年少女の常識欠落、偏りに頭痛を覚えつつ、監督役達は開拓者にも協力してもらって、いつも以上に少年少女達にきちんとした生活を送らせるように努めようと誓い合った。

「うちの村、しばらく外から人が入ってないからさ。たくさんくれ」
「くれって、犬の仔じゃないんだから。フダホロウやドーの街育ちが、いきなり高山暮らしは厳しいわよ」
「キーラも、無茶な頼みを寄越してくれる‥‥」

 まだ監督役さえも知らなかったが、『派遣されてくる人』は受け入れ候補地のなんと領主達だった。
 いずれもが間接的に少年少女達と関わりがあるのだけれど、仲良く出来るかはまた別の問題だ。


■参加者一覧
御剣・蓮(ia0928
24歳・女・巫
八十神 蔵人(ia1422
24歳・男・サ
皇 りょう(ia1673
24歳・女・志
明王院 玄牙(ib0357
15歳・男・泰
サブリナ・ナクア(ib0855
25歳・女・巫
エルシア・エルミナール(ib9187
26歳・女・騎


■リプレイ本文

 貴族が来る。
 そう聞いただけで、案の定少年少女達はあからさまに嫌そうな顔になった。あまりの分かりやすさに、開拓者も監督役も思わず感心してしまったほどだ。
「それは確かに、突然の視察ですが‥‥しかも領主自らね」
「そう言われれば、部下ではなくご本人方がお出ましなのか。少しでも気さくな方達だといいのだが」
「シューヨーゲンのオリガは構えなくても平気だよ。おっと、流石に敬称が必要だな」
 『貴族なんて嫌い』と表している少年少女達の前ながら、開拓者達も色々と手を打たなくてはと考えていた。役人ではなく、領主達が来るのであれば到着前にどこから手を付けるかと御剣・蓮(ia0928)や皇 りょう(ia1673)が思案顔になったのに、サブリナ・ナクア(ib0855)は面識がある一人をあっさりと敬称なしで呼んだ。
 そうした後で苦笑しているサブリナに、八十神 蔵人(ia1422)や明王院 玄牙(ib0357)がそんなに気安い相手かと目顔で尋ねていたが、言葉で返したのはフダホロウ出身の少女達だ。
「どっかの店の踊り子だった人だろ?」
「違うよ、歌手だよ。それでアイジンと浮気した亭主を捨てて、成り上がった女って」
 知識と共に語彙と発音も変なところがある少女達が、かしましく言い立てた内容はものすごく間違っているわけではないが、表現としてはよろしくない。となると。
「言葉遣いはさておくとしますが、よく分かっていない話を人にするのは誉められませんですよ」
いつものようにエルシア・エルミナール(ib9187)の説教が始まった。今回も長くなるかと思いきや、珍しい事にエルシアは短時間で説教を切り上げた。
「人が来ることですし、身奇麗にしておくであります。皆、手が真っ黒ではありませんか」
 そんな手で作った食事を食べさせられるのはごめんこうむるとのエルシアの意見には、なるほどと開拓者達が納得した。
ちゃんと洗っていないらしく、少年少女達の手足には土埃や何かの汚れが落ちずにこびりついている。
「だって、水冷たいじゃん」
「せやかて、その顔と手は問題やで。風呂があったら放り込むところやけど、せめて湯で洗っとけ」
「そういえば、こちらでは蒸し風呂に入る習慣があると聞きましたが?」
 これまでの生活習慣のせいか『冷たいより汚いほうがいい』としか聞こえない言い訳に、八十神が一度綺麗さっぱりと汚れを落とせと言い聞かせた。風呂というのがぴんと来ない少年少女達とは対照的に、明王院はジルベリアの習慣を思い出している。
 壁がきちんと補強された小屋を使えば、多分蒸し風呂は出来る。お湯を使って手足を洗わせても、時間が掛かると風邪の元だ。それならうんと熱くして、きっちりと汚れを落とした方がいいと言うのは、明王院や八十神に限らず、たいていは風呂が好きな天儀人らしくと言えようか蓮やりょうも頷いた。サブリナは衛生の観点からも、綺麗にさせたい。
エルシアだけは特に何も言わなかったが、監督役達は全員まとめて入浴させるには手が足りなくて放置する羽目になっていたようで、視察が来る前日に汚れを落とさせることとなった。
「体面を気にする段階ではなくとも、第一印象は大切だからな」
「傭兵の方はともかく、お医者様と元が踊り子というお二方には、清潔感の有無は大きく作用しそうですしね」
 りょうは蒸し風呂をするなら、薪拾いは更に力を入れてやらねばと気合をいれ、蓮は監督役達が新たに皆から聞き取った希望職種の覚え書きをまとめる算段をしながら、貴族嫌いと領主達の対面前の準備計画を他の者と色々練っていた。

 開拓者も監督役も、少年少女に言葉遣いや目上の者に対する立ち居振る舞いを教えたところで、付け焼刃にもならないことは了解していた。過去に散々役人に追いかけられているから、嫌う態度も理解はする。
 だが、彼らの前歴を考えた場合、数をまとめて引き受けてくれようとする場所など、滅多にあるものではない。しかも相手の身元は確かで、天儀では無名ながら、ジルベリアのギルドでは薬や保存食、花木などの生産地域としてそこそこ知られた存在だと明王院が調べてきていた。
「というわけでやな、何度でも言うが」
「聞き飽きた」
「お前らが真面目に聞かんから、繰り返してやっとるんや」
 貴族、領主と言うから、少年少女には別世界の存在に聞こえるのだろうが、実際は集団のまとめ役である。税は取るが、代わりに集団をまとめ、守る義務がある。彼らが捕まった際に、仲間を庇って抵抗したのと根本は同じだ。
 そういうことを、薪拾いや石除けの作業の合間に延々と語り聞かせていた八十神は、納得していない顔ばかりでも、話そのものは飲み込んだのを見て取った。後は先方の態度と、この生意気盛り達にどういう扱いを考えているかで、これはりょうがものすごく心配をしている。
「地図で見てみたら、その四つの領地は隣り合っているんですよ。山の上のシテ村はともかく、他の三つは道もしっかりしているし、行き来は難しくなさそうですよ」
 明王院がジェレゾのギルドで確かめたところ、この地域からは過去に何度も依頼が出ていた。開拓者ギルドに依頼が出せるくらいに経済的な余裕があるとも見える。
 つまり衣食住で困ることは考えにくい。シテ村から他所に行くのは大変そうだが、領主間の関係がよければ行き来も出来ないということはないだろう。と、明王院は噛み砕いて説明している。
「あと、ミエイは旅芸人が冬を越す場所だそうですよ」
「じゃ、練習してるところ見られるんだ? 俺、そこに行こうかな」
 前回歌手になりたいと分かったアルミアに聞かせるつもりで言ったが、食いついて来たのは年少の少年だった。
「練習が見たいのか? どうせならちゃんとした出し物の方が見応えがあるだろうに」
 そんなことで行き先を決めるのもどうかと思うと、りょうと明王院が渋い顔になったのだが、少年は悪びれない。
「金ないもん」
 木戸銭が払えないから、練習しているところを運良く覗ければ楽しめる。働いてお金を貯めてという考えが抜け落ちている点も、領主達には伝えておかねばとりょうが溜息を吐いた。明王院もアルミアが歌手に憧れたのは、そうやって覗いた経験からだとサヴァーが口にしたので、なんとも神妙な顔付きになってしまっている。

 外の作業が、順次進んでいる頃。すっかり事務屋さんだと口にしながら、蓮は書類仕事に没頭していた。監督役達が聞き取った分も合わせて、少年少女の適性や希望を記した一覧を作っている。
 この作業は難しくもないが、悩みどころは人数の割り振りだ。受け入れ候補は四箇所あるが、本人達の希望と適性で振り分ければ、出身地は無視する事になる。仲間意識が強い彼らのこと、あまり小分けすると問題行動に繋がりかねない。
「特にシューヨーゲン出身者をどうするか。ご領主にお会いしてからとも思いましたが、皆様のお考えも参考に添えた方がより適切かと思いまして」
「オリガさんは酒場の経営者だったから、多少の難がある連中でも気にしないでしょうね」
 土地柄を言えば他所からの移住者は少ないが、領主が地元出身ではない分、入りやすいし受け入れもしてくれよう。シテ村は十年くらい前まで、傭兵稼業で出向いた各地から孤児を引き取って来たりしていたので、移住者には寛容だ。ミエイも人の出入りが多く、新たな住人には慣れている。
「うちのタハルは、移住者をたくさん受け入れるのは初めてですねぇ」
 だけど、四つの領地では唯一、小さいけれど学校がありますよと、タハルの次期領主は各領地の説明を終えた。どうして学校を作ったかといえば、温室栽培をするタハルは年中農繁期だから。他の領地では農閑期の冬場に集中して子供に教育を施すらしい。
「だから、どこに行っても最初は勉強漬けかも知れませんね」
「それはまあ覚悟してもらいましょう」
 なにしろ名前も書けない者ばかりだ。さぞかし本人達は嫌だろうが、蓮は是非にと思っている。
 そうした話を後で聞いた他の者達も、逃げ出さない程度に厳しくやって欲しいものだと同意した。もちろん、少年少女達にはまだ内緒。
 こんな話の間にいつもの作業に薪拾いを増やし、蒸し風呂にするのとは別の小屋の壁をサブリナの指導の元にせっせと塗っていた少年少女達は、更に汚れていた。
 それでも、後は綺麗にさせて、それから皆でまとめた各領地の特徴を珍しく座学で教える事にしようと、そういう計画でいたところ。
「おーい、デニス、来たぞー」
 予定より早く、訪問者がやってきた。

 訪問者と揉めたら、食事を減らして説教三昧。
 このエルシアの申し渡しが効果を奏した‥‥訳ではなく、少年少女達は訪問者といわゆる貴族の印象格差に毒気を抜かれてしまったらしい。
「領主だと言うから、もっとこう‥‥澄ました感じの方々かと思っていた」
「村長の呼び名が変わった程度の土地持ちなんで、気取る余裕なんてとてもとても」
 騎士のまとめ役のデニスが、跡取りの自分も含めた領主達に対するりょうの感想に、至極もっともと頷いていた。ここの監督役達も野良着で普通に働いているが、領主達も服装からして大差がない。
「第一印象は悪くなさそうですね。変に反発して、また落ち着きをなくしたらと心配だったんですが」
「そうですな。しかし、呆けて仕事ならないのと、客人が率先して仕事を進めるのは困るであります」
 明王院は皆が騒ぎも起こさずにいるのを安堵したが、エルシアは更に要求度合いが高い。事実、さぼりを警戒していたら訪問者が手伝い始めて、肝心の少年少女がその手際の良さに呆然としていては話にならないのだ。
 そこは、事情を察した蓮が、受け入れについての諸々を確認したいと持ち出して、三人を小屋の一軒に連れて行った。誰をどこに送るかを決めるのには、各領地で引き受けられる人数や必要とされる適性を確かめる必要があるから、幾らでも尋ねたいことはある。
「あんなのが貴族って、本当かな?」
「今の私よりは貴族らしいんじゃないか?」
 話し合いが行われているのとは別の小屋の壁に漆喰を塗る作業をしていた少年が、訪問者達の姿に戸惑いの声を上げて‥‥サブリナの返事に、妙な納得をしたようだ。漆喰を塗る手本を示している最中の彼女よりは、馬に乗ってきた方が偉そうに見えるのだろう。
「話の通りは良さそうやが、油断して行き違いがないようにせんとなぁ」
 八十神も幾つか願いたいことを気楽に伝えられそうだと安堵しつつ、何かと問題が多い少年少女のこと、後々話が違うと双方が言い出さないようにせねばと、蓮の話が終わった後に色々聞かせて貰おうと考えていた。
 そうこうするうちに日が暮れかけて、本来は見栄えを良くするはずだった蒸し風呂の体験を今更ながらに少年少女にさせたが。
「がたがたぬかすなっ、そんなので洗ったうちに入るか!」
「虫下しが必要なのがいるな。全員に飲ませるか」
 少年達はイワノフに首根っこを押さえられて、皮膚が赤くなるほど擦られ、続いてアリョーシャに診察だとあちこち押された。
「あーもー、服も靴もちゃんと合ってない子が多すぎるわよっ!」
少女達もオリガに何をされたか、悲鳴が多発。
「いきなり裸の付き合いとは、なかなか予想外でありました」
 蒸し風呂には付き合わなかったエルシアが、男女それぞれで違う勢いの悲鳴がする小屋の外で見張りをしつつ、頼まれた薬を煎じていた。それはもうすごい臭いがするので、屋内では煎じられない代物をだ。
 この臭いには、一緒に薬を飲まされる羽目になった開拓者達も、サブリナ以外は多少の差はあれ嫌そうな顔をしたのだから‥‥飲ませる苦労は、それはもう大変なものになった。

 訪問者達は、少年少女から『変な奴だ』と猫が毛を逆立てるような対応をされる事になったが、気にした様子もなくそれぞれの領地の特徴を説明した。そこに皆がわかり易いように開拓者や監督役が言葉を添えて、行きたい場所があれば申し出るようにと伝えたが、半数くらいは風呂で温まった後のことでうとうとしていた気配がある。
 流石に年長の者ほど真剣に聞いていたが、行き先を選んでよいとの申し出に反応は薄かった。
「あんまし少人数に分けると、不安になって揉め事起こすで。それに山の生活は、やっぱ実感が湧かんようやな」
 大人達だけでの相談でも、八十神が口にしたように、どう分けるかが問題になった。
「当人の希望に合わせて、向いていそうなご領地を告げても、仲間と別れることには抵抗しますしね」
 蓮も、時間を縫って聞き出した希望を細かく書きとめた草案を手に、らしくない溜息を吐いた。なまじ隣接した領地だから、仲間に会いに抜け出して、事故に遭ったら問題だ。
「故郷が欲しいと、そう言っていたことがある。『家族』と一緒なのも大事なことだと思うのだが‥‥」
「そうですね。あと、皆様の地元から彼らが他所に移動することは出来るのでしょうか? 例えば、修行とか」
「しばらくは制限があっても、致し方ありませんですよ。今のままでは、そもそもどこにも出せませんです」
 りょうや明王院はすっかりと少年少女達寄りで、将来のことを思いやっているが、社会性の基礎がなっていないとエルシアに指摘されると返す言葉はない。なにしろやっと毎日規則正しい生活が出来るようになってきたところだ。
 そこはガリ家も気に掛けていた様で、二年間は各領地に置いて、基礎教育を施すようにと指示されているとか。つまり、二年後に当人が希望したなら、どこへ行こうとも制限はされない。
「幾らなんでも、フダホロウのお屋敷に奉公はさせないけどね」
「あのキーラがわざわざ頼んできたって連中だし、妙な道に逸れないようには考えてやらないと」
「キーラが、何を頼んできたって?」
 また犯罪に手を染めたり、娼館で働きたいと言い出したりしないような世話は考えると、皆の先行きを心配していた側からすると気が抜けていきそうな話の進みようだったが、途中でサブリナが質問を挟んだ。
 彼女が以前に縁を得た女医は、元はドーの街の闇医者で、少年少女とも浅くない縁がある。その女医が、わざわざ師匠格のアリョーシャに何を頼んだかと疑問に思ったのだが。
「彼女の子供が生きていれば、あの年頃らしい。何人かでも引き受けてくれないかとね」
 子供と言われると弱いんだよと、三人共になにやら事情がありそうな表情を見せたが、基本的にはガリ家当主からの要請に応えた形だ。引き受けるからには、当然領民としての義務や労働も期待するが、その分生活や教育には不足がないように努める。この点は口を揃え、
「だから、君らの意見を聞きたい」
 あの三十人を、適性と希望職種ごとに振り分けるのと、元からの仲間をまとめる形と、どちらが各領地に移住させるのに適しているのだろう?
 この問いから発した相談は、一晩ではなかなかまとまらなかった。