未来を創る〜技能・四
マスター名:龍河流
シナリオ形態: シリーズ
EX
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/04/17 07:12



■オープニング本文

前回のリプレイを見る


 ツナソー地域の再建はノーヴィだけで進んでいるものではないが、春を前に転換期を迎えていた。

「これ、どういうこと?」
「ドーの街の港拡張工事で、貧民街の住人の一時的な移転が計画されてたんだ。それをやってみたら、ドーの街以外に移住したいって希望者が結構いたんだろうな」
「ふぅん。それで人手が足りないところに受け入れろって話かしら。それなら、ノーヴィはいらないわよねぇ」
「待て待て、ここのところをよく読め。技術者も結構いるぞ」
「人柄や素行は、信用しても大丈夫なのかな」

 領主であるガリ家が、お膝元の街の大規模改修を始め、貧民街の取り壊しも行っている。街の拡張計画とは別に、二百年近い歴史の中での人口流入により無秩序に広がった地域は、犯罪組織がはびこってもいた。
 それらの殲滅はガリ家の領分だが、実はこの貧民街にも他の街区とたいして変わらない生活を送っていた人々がいる。たまたまそこに生まれついたり、よそから流れてきて住みついたりした人々で、総じて貧しいが性質は普通の住人とあまり変わりがない。
 この中には、職人や技術者として生計を立てていた者も少なくなかった。こうした人々には、貧民街跡地の新たな街区建設の仕事が優先で回ってくるのだが、他の地域に移住したいと希望する者が案外と多かったらしい。もちろん、これという技術がない人々にも、同様の希望が多数ある。
 このため、ガリ家では人材不足が著しいツナソー地域の活性化にこれらの人々を使う事にしたようだ。その知らせを眺めて、ノーヴィに派遣されている五人は悩んでいる。

 なにしろノーヴィの住人はやや改善してきたとはいえ、指示待ち型の従順すぎる性質はまだ強い。ここに土地のことを知らないのに、親分風を吹かせる輩が来ても、混乱の元になるだけだ。また貧しい農村生活に適合出来る人でないと、集落に馴染むのは難しい。
 人材は欲しいし、そうした人々が住む場所も提供できるが、さて希望を出してもいいものか。一応、移住希望者の一部が名簿になって届いているのだが、名前や職種だけ見ても判断は難しい。ノーヴィの人々に尋ねたら、あっさりたくさん来て欲しいとか言いそうなので、五人はまずキーラを呼んで相談する事にした。
 すると。

「ドーの街の貧民街? 名簿? あ、この通りはあたしが住んでたところの近くだなぁ。他から来た連中が最初に住み着くところ」

 話によると、名簿にあるのはドーの街に他の地域から流入した家族が主らしい。非常に劣悪な環境で、更に貧民街の中でも余所者と爪弾きされるため、才覚や職能があっても這い上がるのが難しい地区でもある。
 ゆえに犯罪組織に取り込まれていく者が多いが、それが嫌な者は日銭を稼いでなんとかその日暮らしをしていたようだ。

「へえ、案外色んな職人がいたもんだねぇ。ここの連中って、農村生まればっかりかと思ってた。時々、仕事を手伝ってもらってたんだ」
「農家の人も多いの?」
「たまに猟師や木こりもいたかな。薬が足りない時に、探してきてもらってたよ。裏通りの店で買うより安いから」
「そういう人達なら、こちらの希望と折り合う家族には来てもらってもいいのかな」

 相談はそういう具合にまとまって、今度はノーヴィの主だった住人に話を持っていった。
 すると、やっぱり。

「空いてる家の分だけ、来てもらったらいい。きっと助かる」

 誰でもいいから来てもらおうと言い出した。

「開拓者に相談しよう。ついでに人を呼んだら必要になるものも教えてもらわにゃ」

 もうちょっと全体の需要や、住人の実際の希望をきちんと確かめてから検討しないと駄目だと、キーラ達は考えた。
 技術者や職人が来ても、それを活かす為に必要な道具や設備の有無も検討しなくてはならない。そこまでするには知識人が必要だと、開拓者ギルドにノーヴィからの依頼が送られた。


■参加者一覧
御剣・蓮(ia0928
24歳・女・巫
メグレズ・ファウンテン(ia9696
25歳・女・サ
レートフェティ(ib0123
19歳・女・吟
フレイア(ib0257
28歳・女・魔
十野間 空(ib0346
30歳・男・陰
ルヴェル・ノール(ib0363
30歳・男・魔
サブリナ・ナクア(ib0855
25歳・女・巫
三条院真尋(ib7824
28歳・男・砂


■リプレイ本文

 この二日程、ノーヴィの住人達の話題はそれだった。
「来たい人に来てもらえばいいんじゃないのかねー」
「だけどさ、家の数に合わせないと駄目ってのは、言われりゃそうだろ」
 新たな住人にはどういう技術者が適しているか。また何家族なら受け入れ可能かという、相談しているのだ。開拓者達に、将来の展望を持って選ばねば駄目だと促された住人達は、考えてはいるのだが‥‥
「言わなかったら、来たいだけ呼んじゃったのかしら」
「食べ物は多少足りなくても普通だと、未だに考えている節があるからな。なんにしても、何十人も新たに養う余裕はないんだ。少しは悩んでもらおう」
 誰彼構わず呼んだら、まず住む場所が足りない。そこを指摘された住人達が同じ話題で悩むのを目撃して、三条院真尋(ib7824)は頭痛を覚えたようだ。眉間に寄った皺を伸ばしている三条院の横では、ルヴェル・ノール(ib0363)が人に決めてもらう姿勢を改めるいい機会だと口にはしつつ、やはり心配そうである。
 普段なら、こういうことで住人が頼るのは外の生活を知っているキーラだが、現在の彼女はと言えば。
「あんたが留守なら、他の誰かが読まなきゃならないんだ。泣き言を言う前に、とにかく書いてごらん!」
 サブリナ・ナクア(ib0855)から、悪筆改善の猛指導を受けていた。右手で書いて駄目なら左手で練習しろと、厳しいを通り越して、万策尽きる寸前の指導だ。キーラも記録として役に立たなければ人命に関わると一喝されて、ぶつぶつ文句を垂れ流しつつ、左手で練習中だ。
 こんな様子で‥‥住人達が自分達で考えるにはちょうど良い。
 だからといって、まるきり放置しているわけではなく。
「呼んだら、俺達より腕前がいい人が来てくれますかね?」
「資料には腕前を測れる記述はありませんが‥‥どうしてそういう期待をしましたか?」
「煉瓦の家って丈夫だから、建てられる人が来るといいなあって」
 雪がなくなったので、冬の間に傷んだ家屋の修繕をしていたメグレズ・ファウンテン(ia9696)は、大工の青年の問いに、心中で要望書に記載すべき項目を一つ付け加えた。荘園全体の技術や教育度合いが低いノーヴィに必要なのは、確実に他に指導が出来る経験者だ。開拓者全員も漠然と『そういう人が来てくれるはず』と思っていて、メグレズも新たな住人からの技術指導で住人全体の技術と生活向上が可能と考えていた。
 しかし寄越される移住者の技能は不明だから、ノーヴィの詳細な状況を要望書に付記して、適任者を寄越してもらわねばならなかった。善良でやる気と努力の人であっても、ノーヴィの住人と同程度の腕前では生活向上は望めない。
 同じことは、住人が知らない職種の説明を求められたフレイア(ib0257)も感じていた。
「井戸は水が出る場所を探し、そこを深く掘り下げるのに技が必要です。長く安全な水が出るようにするには、やはり専門の人がいた方が助かりますよ。測量技師も、飲み水や汚れた水を別々に流す仕組みを作るのに不可欠ですね」
 測量技師は一度来たことがあるから、あの時の人達がそれだと説明したら、現在ノーヴィで随一の知識人になった少年が、首を傾げてこう問うた。
「その仕事がある時だけ来てもらえば?」
 井戸掘りや利水・排水設備を作るのに掛かる時間が、少年には分からない。測量は非常に急いで行ったが、それを普通だと思っているのかも知れなかった。
 この疑問をフレイアから聞かされた十野間 空(ib0346)は、少年以外もいる時にそれぞれの作業がどの程度時間が掛かるものか、図解も交えて説明した。ただ、これらの計画には新たに開墾や灌漑設備が造られることが前提で、住人は今の農地が大きく変化するのに不安が出てきたらしい。住人達が開拓者の言う事に乗り気でないのは、十野間の知る限り初めてだ。
「自分達がすぐにやりたいことかあれば、それを手伝ってくれる人に来て貰うべきです。用がある時だけ呼ぶ方法もありますからね」
 問題は必要な時にすぐ来てくれるとは限らないことだ。毎日の仕事や生活に関係する人なら、この機会に仲間に加えた方がいい。説明をそうまとめた十野間とそれを見届けたフレイアは、住人達の話し合いには参加せず他の仕事に出向いていった。
 すると、住人達が頼ったのは一緒に生活している派遣された五人で。
「そんなに難しい話ではありませんよ。例えば毎日おなかいっぱい美味しいものを食べるために自分が何をしたいか、皆の意見を出し合えばいいのです」
 その五人と現状で判明している必要物資、設備の一覧を作成していた御剣・蓮(ia0928)にも、まずは『どうしよう』と尋ねてきた。蓮がかなり端的に返すと、次は誰に来てもらおうかと質問が変わる。
「空いてる家が‥‥何軒だったっけ?」
「九軒さー。二つは結構大きいな」
 しばらく質問が行き来するうちに、住人もどこから決めるべきか混乱していたところが整理されてきた。とはいえ、春先のことで全員が腰を据えて話し合うには忙しいものだから、あちこちで立ち話をして、困ると開拓者のところに指示を求めに来てしまう。
 これが意見を求める程度に変わってくれればとは、皆が思っているところだ。
 ところで。
「‥‥読めないよりはまし、と諦めるか?」
 三日間、厳しーくサブリナに左手で字を書く練習をさせられたキーラは、一応読める文字を書く事に成功していた。出来は幼児の手習いだが、今までの判読不可能からは大進歩だ。
 サブリナは、そう自分を納得させている。

 三日の間、いささか放置気味に住人の話し合いを一歩下がって観察していた開拓者一同だが、最初はもう少し積極的に移住希望者から必要な人材を推挙しようと考えていた。実行しなかったのは、到着してすぐに『誰を呼んだらいいか、決めてくれる?』と尋ねられたからだ。
 ここで積極的に出たら、住人の受け身体質が改善しない。だから行きつ戻りつする相談を見守っていたが、皆の希望の聴取や資料の読み込みは熱心に行っていた。
 そうして、四日目。
「だーかーらー、一人ずつ話せよー」
「誰か、最初から説明してくれい」
「今、なんの話?」
 皆に最近の生活の便利と不自由を聞いて回っていた十野間が最初に誘われ、うっかり感涙に咽びそうになった住人達の話し合いの席で、今度は冷や汗を流していた。
 住人が屋外に集まって話し合いをすると言うので、今までにない積極さに表情を緩ませていたルヴェルや蓮、サブリナも溜息をつき、フレイアと三条院は出てきたがすでに退屈している少年達に静かにと諭している。
 話し合いなどしたことがない住人達は、司会役を決めることもせずに数人が好き好きに話し出す。挙げ句に何から相談するのかも決まらず、わいわいと騒ぎ出してしまったのだ。
 流石にこれはてこ入れせねばと、せめて司会役だけでも担当すべく、開拓者達が目顔で相談を始めた時。
「一回黙れー」
 暖と灯りを兼ねた焚き火に張り付いていたキーラが、薪を打ち合わせて皆を沈黙させた。そのまま何か言うかと思えば、押し出したのは最近開拓者達の後ろを付いて回っていた少年だ。
「えーと、今度、俺達が知らないこととか出来る人達が新しく来るから、どういう人に来て欲しいかを連絡しないと駄目だって」
 現在のノーヴィで皆が認める秀才の少年でも妙な言い回しだが、大人も素直に説明を聞き始め、
「やっぱりそこから始まるんですね‥‥」
 蓮が苦笑してしまったのは、また『何家族に来て貰うか』とやりだしたからだ。空いている家は九軒で、その全部に新しい住人を入れても大丈夫かとの説明は、大工の青年が担当する。
「ここの家の大きさだと、例えば機織道具は入りません。それだけをする建物を一つ用意した方が、習うのも簡単でしょう」
 強度や修繕の説明はちゃんと出来るが、全部に住人を入れると作業小屋がなくなるといったことは、やはり住人は気付かない。それでメグレズが補足の説明を入れ、受け入れる職種により増やす必要がありそうな施設の予想される大きさと建てるのに便利な場所を図にしていく。
 たまたま資料の中で一番大きな道具を使いそうなのが機織だったが、人が来れば農具を増やし、収穫物の増量を目指すと同時に倉庫の増築も検討を始めなければならない。
「あ〜、何人かには言ったんだけど、機織って単純なのはこのくらいの道具で出来るけど、いいものを作るにはここからその辺まで置き場がいるのね。高さもこのくらい」
 自分達で布が織れれば、必要なだけ手に入れられる。余剰は収入にもなる。三条院が具体的な織り機の大きさを示すと、反応が良かったのはやはり裁縫などを習っていた女性達だ。
 ただし、市場は未知の世界なので、今まで通りに誰かがやってくれると思っているようだ。商売と納税がごっちゃになっている。
「布地の他にも、薬草から薬を作れる様になれば、高く売れる‥‥って言っても実感がないか。薬なら、他の村や荘園でノーヴィが欲しい物と喜んで交換してくれるよ。そういういい物が作れる人を呼ぶのは大事だね」
 林業に詳しい者がくれば加工木材を精算して高く売れると説明をしたかったサブリナだが、貨幣価値が分かってない住人に難しい話を展開するのは避けた。少年がキーラに『薬なら何と交換してくれる?』と訊いているから、細かいことは少人数に教え込む方が今は適切だと思ったのもある。
 このあたりで、受け入れ可能な家族は八世帯、畑仕事が苦にならない人をお願いしようとまとまってきたが、他にどんな経験がある人にするかとなると‥‥
「自分達の希望が先だと、何度も言いましたでしょう。今の段階で抜けているものとしたら‥‥字や計算を教えることに専念する方ですかしらね」
「それと、こちらの方々が商売は詳しいものの、いつまでもノーヴィにいるとは限りません。市場の事に詳しい人が一人もいなくなると、よそから欲しいものを買う時に不便ですよ」
 視線で『どうしよう?』と皆で問い掛けてくるものだから、フレイアと十野間が住人の眼中になかった職種の有用性を説明し始めた。開墾や利水、排水設備の話は、すでにあちこちで説明したので今更繰り返さない。今決めるべきは、誰を受け入れたいかだ。
 それに端で聞いていて気付いたが、住人は領主派遣の五人はこの先もノーヴィにいるつもりで話していた。だから商売のことや教育は頼れると思っているので、念のため釘を刺しておく。
「畑と家畜と木と井戸の人達。それから、大工さんか。あと、字が読める人とお金の計算が得意な人‥‥かな?」
 だんだん話し合いは飲み込みが良い十人程度が相談をして、ある程度まとめた内容を他の住人に確かめるようになってきた。
「なるほど、身近な良い例を真似るのはいいことだが‥‥皆、忘れているようだが、新しい住人が来れば家以外に食べ物も、仕事の道具も必要になるぞ」
「皆さんが忙しいので、こちらで調べましたが、農機具の数が何種類か足りていませんね? 鍛冶師の方が作るにも材料がない有様です。足りないものは今回貰わないと、次からは材料か現物を買う事になりますよ」
 言外に『お金はないだろう』と『物は他にも不足しているだろう』を匂わせたルヴェルと蓮が、派遣されている五人の話し合い態度を真似ている住人達にわざと厳しい表情を向けている。蓮など、この機会に移住者用の家財や道具以外に、ノーヴィ全体の予備の道具や倉庫の建材くらいは請求しても罰は当たるまいと考えているが、それも領主からの大掛かりな支援はこれが最後だろうと踏んでいるからだ。
 ノーヴィの基盤はまだまだ脆弱で、人口が増えても簡単に改善は見込めないから、受けられる先行投資は受けた方がいい。もちろん将来は納税で返すものだが、元が悪すぎるから、技術の向上が出来れば生産性も上がるだろう。
 今回、色々と話してみた結果では、住人達は今までやってきた農業や畜産業がもっとも身を入れやすく、また発展の将来像を描きやすいようだ。それと家屋、衣類、生活用具が作れるか修繕が出来る人がいれば助かると、経験で分かっている。
 後は少しばかり助言をして、勧めるべきはきっちり勧めれば、今までになく住民達の意向が反映した要望書が出来そうだったが、キーラが『暗い、寒い、明日も仕事』と騒ぎ出した。それで、ここまでの内容をまとめて、また何か思い付いた人がいたら話をする事にして解散となる。
 開拓者達も、話し合いから推測された言葉になっていない要望や不足物品、住人達にもう一度検討させるべきことなどをそれぞれに書きとめ、確かめ合いつつ、続きは翌日とした。
「移住の希望者に面接が出来れば、一番良かったけどねぇ」
 三条院がそれは残念そうにぼやいたが、依頼人がノーヴィなので、そこから移住希望者を管理する領主側に面接まで求める間に依頼期間が終わってしまう。これまでの状況は適宜報告をあげているから、ノーヴィの住人の特質を考慮して人を選抜してもらいたいものだ。
 となると。
「どう書くのが、一番でしょうねぇ。用具の見積もりは、少し多目にするつもりですが」
「すぐに必要ないものは材料で請求して、ここで作らせてはどうだろう?」
 蓮が色々な物品の数値を記した紙を片手に、書類の書き方を悩んでいた。これはノーヴィの人々にはまだ書けないから、皆で分担して完成させねばならなかった。それらの中から、メグレズがノーヴィの鍛冶師が作れるものは材料に変更しようかと提案している。
 そんな相談をしている中で、測量技師は派遣が適当かと納得したフレイアが、あることを失念していたのに気付いた。
「この先の勉強をする場所が、ちゃんと決まっていませんわ」
「筆記用具やサブリナさんやルヴェルさんが寄付してくれた本を保管するのに、専用の部屋があると安心ですね」
「いや、勉強道具と作業の資料は別に保管したほうがいい。手引きはすぐ確認できる場所にないとね」
 空き家を使っていた活動の移転先も決めないと、場所がないからやらなくなったなんてことになりかねない。それでなくとも畑だなんだと忙しいのだ。生活に追われて、せっかく覚えたことまで忘れては困る。それに利便性まで考えねばと、十野間とサブリナも加わって、相談することは多岐に渡った。手引きはまだ読めない人の方が多いが、手引きは『身近にある』ことも大事なのだ。
 こうした調整は誰とすべきか、開拓者側で相談したことが住人の希望に反していないかなどと確かめているうちに、あっという間に依頼の期間は過ぎた。なんとか書類は書き上げたが、さてどこまで叶うものかも分からない。
 それでも。
 新しい住人が来るからと空き家を丁寧に掃除している人々の姿を見ると、誰が来ても一緒にいい再出発が出来るのではないかと、そういう希望は持てた。