未来を創る〜荘園・参
マスター名：龍河流
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| ■オープニング本文 前回のリプレイを見る ツナソー地方に点在する荘園の一つ、ノーヴィ。 十五年近く前、ここで荘園主への反抗があった。嗜虐傾向が強かった荘園主が、代替わり当初に様々な規制を強め、重税を課したために、住民が代表を立てて抗議したのだ。誰かが暴れたわけでもなく、反抗と呼ぶには理性的な行動だが、荘園主の対応は苛烈だった。 ならず者と呼んだほうがよいような傭兵団を呼んで、代表だった住民を片端から捕らえて処刑し、その家族を見せしめに人買いに売り飛ばした。残したのは技能職の家系の者だけで、彼らはその後も何かに付けて虐待され続けたという。 つい先日、ノーヴィに到着した医者のキーラは、両親が処刑された後にそれを為した傭兵団に仕事の代金の一部として引き渡した娘四人の一人だ。団長に気に入られて情婦として連れ回されるうちに薬草の扱いを覚えたが、七年前に傭兵団は仕事をしくじって、団長はじめ大半の傭兵が死んだらしい。その後は生き残りの団員に連れられてドーの街の花街に住み着き、闇医者として色々危ない仕事をした挙げ句、数年前に捕まっている。 キーラは何が原因だか親と不仲で傭兵団への反発心が薄かったようだが、同じ境遇の娘達三人は精神的に厳しすぎたのだろう、一年もしないうちにばたばたと病死した。他に売られた住民が二十人くらいいたが、そちらはどうなったのか分からない。 「今思えば、捕まった時に全部ぶちまけていれば、こんなにならないうちにご領主様が動いてくれたかも知れないんだけど、あの頃は死刑になりたくない一心でね」 「ちょっと、幾らなんでも人殺しと一緒は嫌よ」 「うーん、だいたいは裏稼業の怪我人を縫ったり張ったりしてたかな。それで麻薬を使ってて、捕まったのよ。縫うのが我ながら上手でねぇ。おかげでちゃんと勉強させてもらえたのね」 「あんた、刑期は？」 「勉強させてもらえた分の前借金込みで、あと十五年。色々訊かれるかと思ったけど、何にも言われなくて驚いちゃった」 十年余の虐待ですっかり気力を奪われた住民は、キーラが医者になって戻って来て、知らない者より安心だという反応を示した。彼女が出て行った事情から、これまでの経緯を尋ねる者がいても不思議はなかったが、そんな話をしたのは大工の青年だけだ。 彼も、キーラと一緒に傭兵団に連れ去られた姉のことを聞いて、後の追求はなかったという。訊いたら悪いと思っている訳ではなく、そういうことには考えが回らないようだ。 おかげで、実はこれまでの犯罪行為の罰として、指定された土地での医者仕事を義務付けられているキーラも、まるで出世して帰ってきたような扱いだ。もちろん当人も自分は罪人ですとは言わないので、ノーヴィは近年まれに見る平和な日々である。 だがしかし、それとても秋の気候が残っている間だけ。 「それで、うちの壁はいつになったらもうちょっと厚くしてもらえるのかな？ 診療室だけでもいいんだけど」 「あと数日で最初の荷が届く。同じ頃に開拓者も来てくれるから、大々的に家の修繕を始められる」 「どっから手を付けたら、効率よく進むかねぇ」 「家畜市も始まるぞ」 「備蓄倉庫も入れ替えないとな」 キーラはじめ、ノーヴィに派遣された者達は、前回開拓者発案でまとめた各戸の住人の所持技能一覧を眺めたが、家屋修繕の技能を持っている者だけで作業を済ませるのはもちろん無理な話だ。 問題は、自発的行動が取れなくなっている人々に、冬を乗り越えるための修繕を短期で為せるような指示を的確に出すことだが‥‥その権限は開拓者に与えられている。 |
■参加者一覧
御剣・蓮（ia0928）24歳・女・巫 
メグレズ・ファウンテン（ia9696）25歳・女・サ 
レートフェティ（ib0123）19歳・女・吟 
フレイア（ib0257）28歳・女・魔 
十野間 空（ib0346）30歳・男・陰 
ルヴェル・ノール（ib0363）30歳・男・魔 
羊飼い（ib1762）13歳・女・陰 
将門（ib1770）25歳・男・サ 
ヘルゥ・アル＝マリキ（ib6684）13歳・女・砂 |
| ■リプレイ本文 捌かれた豚肉を塩漬けにする作業の横に、羊飼い（ib1762）が張り付いていた。 「この塩は岩塩？ 随分細かくしてあるのね〜」 海辺で採れた塩のようだと言いながら味をみて、豚肉の加工作業にも加わっている。開拓者の筋力に慣れてきた荘園ノーヴィの住人達は、相変わらず遠慮がちにだが、一番大きな豚腿肉の血抜きを羊飼いに任せていた。 「若い雌なのに、惜しいですねぇ。足が折れたのでは仕方ありませんけれど」 出荷、加工、飼育と分けられた家畜の頭数と内容を確認していた御剣・蓮（ia0928）が、加工と区分けされた羊に眉を寄せているが、当人が言う通りに弱い個体なので加工するのが一番適切だ。細かい作業は住民に任せても問題ないので、加工用家畜の囲いに入れておく。後で住民が毛を刈ってくれるだろう。 運命を悟ったというより、周囲の常にない慌しさに興奮している家畜はやたらと騒ぐが、人は誰も気にしない。そんな暇もないわけで、人家のあるはずれでは大工事の真っ最中だった。 「‥‥確か、こんな感じだったような？」 「倒れなければよいのです。支柱の準備はいかがでしょう？」 巨大なアーマーを横に従え、魔術で生み出した石の壁の設置場所を詰めているのはフレイア（ib0257）だ。アーマーも魔術もまるで縁のないノーヴィの人々は、どちらを見ても呆然と立ち尽くし、何かに使えないかとのフレイアの提案にも首を傾げていたが、派遣されている五人の中に石工がいた。 ストーンウォールの石は加工の仕方により消失するし、やたらと重いので家屋には向かないと石工は判断した。だが他の事を検討しているうちに『家屋以外で何かに使えるかも』となり‥‥ずっと昔は石を積んだ室で薪や農具を保管していたと老人が言い出して、現在は地面を掘り下げて、石壁を半ば近く埋めて倉庫を作っているところだ。 「その柱は家に使うので、倉庫はこちらの木材にしてください。屋根は‥‥どうしましょうね」 「草で葺けば、材料は足りると‥‥」 「雪で抜けないか？」 「それはいつものことだから、天気のいい日に掘り返せば」 予定外に大工仕事が増えて、物資や作業手順の管理、指導を担当しているメグレズ・ファウンテン（ia9696）とルヴェル・ノール（ib0363）はてんてこ舞いだが、住民はどれだけ忙しくても文句など言わない。でも大工の青年でさえ、屋根が抜けるのを『いつものこと』と言うのでは、効率が良い作業は見込めないと頭痛がしてきそうだ。 別の場所でも。 「なるほど。冬季は壊れた家の修繕に時間が取られたのですね」 「そんな寒い思いをする羽目にならないように、しっかりした方法を早く覚えるのは、家族のためになるぞ」 急ぎ修繕が必要な家屋で使用する材料の振り分けをしていた十野間 空（ib0346）と将門（ib1770）も、これまでの冬季の過ごし方を聞いて、こめかみや眉間を押さえている。十野間の額が赤いのは、先程鍋の蓋を燃料の足しにと出したら、キーラに勿体無いとぶん殴られたせいだが、その時よりよほど痛そうな顔つきだ。 今回、修繕が済んだ家にまだの家の住民を移して共同生活をしてもらう案を十野間が出していたが、住民が素直に頷いたのはこれまでと生活が変わらないから、らしい。どこかが壊れると親戚などの家に避難して、荘園主の機嫌がいい時を見計らって応急処置をし、戻る生活だったとか。 開拓者でなくとも、あんまりな生活だと考えるのだが、住民達は他所を知らない。冬季に十数人亡くなるのは当然と思っていて、そうはならないように備えるのだとの指示に実感が出ない様子だ。それでもここ数ヶ月の生活向上が効いて、元気に働いている。 「底辺って、慣れると楽なのよ」 「外を見てきたキーラがそんなことを言うては、発展せんじゃろうがっ」 「だってさぁ、生きてく最低限しか食ってない時は、難しいことなんか出来も、考えもしないって」 「少し余裕が出来たのだから、羊毛や羽毛で冬を越す衣類や布団を作るのはいかが？」 「家に布団が一枚あれば、皆で入れるもんね。それはいいわぁ」 人数分揃えるとは、キーラも思いつかないのかとヘルゥ・アル＝マリキ（ib6684）とレートフェティ（ib0123）は文字通り頭を抱えたが、ヘルゥがキーラにあれこれ言わずに済んだのは、これまでの報告で不足を強調しておいた生活物資が届いたからだ。当座の分で、毛布は一人一枚。第二陣が来るともう一枚。 流石に加工に回された家畜の分だけでは、全員分の布団は賄えないなぁとヘルゥがしょんぼりしていたら、羊飼いが『飼料をベッドにすれば？』と、当人には助言にすら当たらない事を口にした。壁際に積めばそれだけで冷気が伝わりにくいなど、ヘルゥには無縁の知識だったが、これなら今からでも実行出来る。 なんでそんなこともしていなかったのかと、そんな疑問を持った開拓者が何人かいたが、そうしたものは出荷で空いた家畜小屋に厳重保管されて、持ち出しは叶わなかったとか。 「修繕が間に合わなかったら、この小屋に住んでも暖かそうよね」 レートフェティの案に、キーラがいっそ診療所を移したいとぼやいていたが、丁寧に内部を洗えば悪い話ではないかもしれない。 今回のやるべき仕事は、家畜と家屋と備蓄に関する諸事全般。 開拓者達が到着した時、ノーヴィでは芋の収穫真っ只中で、出迎えは派遣されている者のうち女性二名だけだった。昨日から寝る間も惜しんで収穫しているとかで、どちらもふらふらだ。 「なんで、無茶な働き方をしておるのだっ」 そういうのは駄目だと、ヘルゥの怒りに火が点いたが、出迎えの二人もこんな無茶はしたくてしているわけではない。 「夕方から雨が降るから、それまでに掘らないと駄目だって」 「ああ、芋は乾燥した状態で掘らないといけませんが‥‥お詳しい方がいましたか？」 すでに届いている荷物や書類の確認をと、なれない農作業に足取りが覚束ない二人が案内してくれるのに手を貸しつつ、十野間が誰の言い出した突貫作業かと尋ねた。派遣されている五人に食料商いの元商人はいたが、畑仕事に精通しているとは聞いていないが。 「ここの人達が、どうしましょうって尋ねてきたものですから」 間に合わないと、収穫が数日遅れる。そうしたら家屋の修繕も遅れかねないと、必死に働いているところだ。そのせいか、先日伐採した木を切断しようとしていた様子も見えるが、放置されている。 「やるべきことは理解しているのに、指示がないと動き出せないのですね」 「困った話だが、他の急ぎの仕事が出来るように収穫は終わらせるか」 蓮はなんとか主体性を持てないものかと思案を巡らせる様子だが、見れば空は雲が厚くなっている。将門が腕まくりして、自分も収穫に混じる意向を示した。他にもどんどんと作業に入ろうとして、何人かは荷物と書類の確認をしてくれと引き止められる。 さっと手分けして、収穫と確認仕事に分かれた開拓者はどちらの仕事も大変な勢いで進め、雨が降る前に収穫物を倉庫に運びこむことが出来た。 「切ってから運んでも良かったのでは？」 住民は、合わせてまだ皮も剥いでいない雑木を屋根の下に運んでいたので、メグレズがわざと質問を投げかけたところ。 「良く乾燥させないと駄目だって、いつも言われてたんで」 生木は建築資材にも薪にも向かないからあながち間違いでもないが、知識には偏りや不足があるかもと、メグレズは木の用途をどうするのかなど尋ねながら観察を続けている。聞けば修繕用の物資は追加が届く手筈だが、それでも全戸を修繕するには足りそうにない。無駄が出ないような技術を叩き込まねばと、これは建築に多少でも心得がある者は全員が思っていた。 家屋の修繕も大事だが、家畜の出荷は日取りが決まっているので、これまた急ぐ必要がある。 「値段交渉出来ないなんて‥‥買い叩かれない？」 「ツナソーの家畜市場の長も捕まったので、今年は全域で生育具合なんかで値段を決めて買い取りになるそうですよ」 「ちゃんとした価格がつくのかしら‥‥色々心配事が増えますね」 「市場の利用料がすごく高かったので、その分は確実に増額されます」 羊飼いと蓮が不満と心配を表明するが、こればかりは今更どうしようもない。ちゃんと出荷量と質に見合った収入があればいいので、引取りに来る役人によくよく確かめてみることにした。 ちなみに彼女達の今の仕事は、出荷する家畜の種類や数量を書類にしたり、飼葉の必要量を計算し直したりの事務仕事だ。もっと実際の作業も指示が必要かと考えていたのだが、レートフェティが住民が毎年やっていたことだからと、『いつも通りに準備を』と数回繰り返したら、さくさくと選別や加工の準備を始めたのだ。作業量は多いから後から手伝うとして、仕事そのものはそれなりに出来ている。 ただ、たまに迷うことが出てくると一気に作業が止まるので、今はレートフェティが加工に必要なものを倉庫から出しつつ、様子を見守っていた。残る問題は、肉にした家畜を片端から塩漬けにしようとするところだが‥‥燻製は作り方が良く分からないというので、作業が一段落したら教える事になっている。 「どうして塩漬けだけなの？ あ、その香草を入れると臭みが抜けるから除けないで」 「ご主人様が燻製は嫌いだったから」 以前は作った塩漬け肉は住民の口には入らなかったと聞いても、もう驚かなかったが‥‥レートフェティは事細かに調理の仕方を説明していた。 家畜の出荷その他は、例年のことで予想外に作業が進んだが、家屋の修繕はそうは行かない。住人に大工、派遣に石工が一人ずつでは、雪が降るまでに出来ることなどたかが知れている。よって、 「毎年、壊れるかもしれない家に住むのは嫌だろう。その心配がなければ、別の作業に時間も使えるぞ」 将門が住民に家を直す利点を説き、生活を向上と共に、いい加減な修繕では無駄が多いことも覚えこませている。口と一緒に、手は壁に塗る土と藁を混ぜているが、流石に一般人では同様の力加減にはならない。そこは配慮して、肩や腰に負担がないような方法も手解きが必要だ。 「キーラさんは字が読めましたよね、キーラさん？」 「覚えろ、皆、この割合を覚えろー」 壁土にあれこれ混ぜ合わせる割合は、もちろん経験が物を言う。だがそこまで経験を積ませる時間はないから、後でも分かるようにルヴェルが記録も取っているのだが‥‥字が読めるキーラは皆に覚えろとうるさい。こちらも土をこねる手は忙しいが。 「読み書きが出来るのだから、いざという時はお願いしますよ」 ルヴェルに繰り返し諭されて、渋々了解したキーラだが、実際は読み書きがそれほど得意ではないらしい。ぶつくさ垂れる愚痴で気付いたルヴェルは派遣の者にも声を掛ける事にし、将門は手際が良い若者数人にみっちり教え込むことにした。 同様の問題は、備蓄食料から建築資材、燃料までごっちゃで整理が追いつかない倉庫でも起きていた。 「一度にまとめて整理して‥‥ここの倉庫は食料だけにして、建築資材は別に移しましょう。で、箱に中身を書いても、ほとんど読めないわけですか」 「色か記号も入れて分かるようにするとして、帳簿の確認はとりあえず皆さんにお任せしても？」 フレイアと十野間が倉庫の中身を、子供達と元商人の二人に手伝わせて外に広げている。質と量、種別を確認したら、それぞれ倉庫に入れるが、無秩序な倉庫の使い方はこの機に改めさせると箱に大きく入れた物の名前を書いていた。これは基本だろうと将門も口にしていたが、ほとんど誰も読めないとなると書くだけでは意味がない。 もちろん数量把握は継続して元商人がする予定だが、二人がいないと物一つ動かせないなんてことがないように、箱に色を塗り、整然と積み上げると同時に、早期に消費したほうがいいものを手前に置くなど、その場で思いつく限りの工夫はした。後ほど住民にも周知するが、合わせて倉庫ごとに同じ種類のものを入れるよう徹底も必要だろう。 そしてこちらも、畑の収穫物に詳しい者を数名選んで、保管物の大体の量と場所を覚えこませた方がいいと考えていた。その人選でまた苦労するのだが。 同じ頃には、メグレズが大工の青年に、設計図の見方を頭を押さえつける勢いで教え込んでいる。幸いにして青年も相当やる気だが、基礎があちこち欠けているので完璧になるのは今回だけでは無理がある。 「品物は大体揃ったようじゃが、やはり冬を越すには不安がある！ いや、品物を揃えてくれたのは感謝しておるのじゃぞ。だがここに腰を据えて、技能を教えてくれる者がおってもよかろうに」 届いた物資を半ば強制的に配布して歩いたヘルゥが、派遣されている者のところに乗り込んだ。修繕も手伝ったが、大半が素人の住民だと手際が悪い。短期依頼の開拓者の指導だけでは限界があるし、派遣されている者も元商人や石工など荘園経営に直接かかわらない前歴の者ばかり。人手不足でも、これはあんまりだとのヘルゥの主張は、開拓者のほとんどが多少なりと感じていることだった。 元の荘園主が戻るのは、兄弟同然と思う子供が嫌がるので御免だが、代理は来てもいいではないかとヘルゥがぷんすか怒っていると。 「ノーヴィは従順すぎて、新しい責任者の色に染まるから、当面は開拓者に任せるってのが上の決めたことらしいよ。なんで開拓者にかは知らないけど」 「弱者に親身に対応出来て、かつ多くの技能者がいて、各地の貴族も加わっているから、と。我々が知っているのはそこまでです」 キーラと元商人とが、これまで口にしなかった内情を明らかにした。なんだか自分達も試されていたようだと、何人かは思ったが口にはしない。ここにいる者に言っても、何の権限も無い彼らも困るだけだ。 だが。 「我々も報告を上げるので、参考までにノーヴィでこれからやるべきと思われたことを教えてもらえますか」 先方から知恵を貸せと言われたら、遠慮はしない。 「茣蓙くらい編めないと駄目ですよねぃ」 「開拓者より、普通の大工を追加したほうが良くないか」 「先々、最低限の読み書きと計算は教えないといけませんわね」 「手業ももう少しいい物が作れるようにならないかしら」 「度量衡はきちんと把握させましょう」 「主体性を養う方法は‥‥」 「作業の記録は取っておいたので、活用してください」 「あぁ、私も気が付いたことは書き留めておきます」 「キーラ、ちゃんと聞いておるのかっ！」 一晩かけて、体裁もきちんとした分厚い報告書を仕上げて、文字を読むのが不得手なキーラに悲鳴を上げさせた。 届いた毛布や家屋の修繕のおかげで熟睡した住民達は、寝不足で少しだけ元気が足りない開拓者達を心配してくれたが、当人達はそれなりに満足していた。これがきちんと考慮されて、今後に活かされればもっと満足出来るだろう。 |
