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■オープニング本文 前回のリプレイを見る フダホロウの街の現状を調べた報告書を並べて、シューヨーゲン領主のオリガは代官クセニアと要点をまとめていた。 シューヨーゲン領主屋敷には、隣領のミエイとタハル、友好領のシテの領主も顔を揃えている。 「代官の経歴に怪しいところはないのよね?」 「家柄がちょっと良くて、苦労知らずだがね」 オリガの発言に最年長のタハル領主が応えたが、実際に経歴で怪しいところはない。代官変更の原因も、開拓者の集めた情報通りに、前の代官が父親が以前から患っていた眼病の悪化で引退し、家督を継いで実家に戻ったため。 ただ、現在の代官には、フダホロウの街の規模から経験の足りなさを挙げる反対意見もあった。けれども他の候補者も似たり寄ったり、最終的には家柄と血縁でもある前任者の推挙が決定打となったらしい。 ところが、これで気が大きくして、いきなり通行税を上げたことが主君の耳にも入り、叱責された。それで慌てたのか、税を下げ、酔芙蓉亭の葬式へ欠席した詫び状を出し、体調を崩したギルド幹部達に見舞いの品を届けと、印象の回復にこれ努めているようだ。 開拓者達の聞き込みでは、一時的にあまり質の良くない男達が代官屋敷に出入りはしていたが、主君の叱責以後はそれらも遠ざけている。だが最初の印象が影響して、街での評判は上がっていない。 更に、開拓者の一人が恋鳥小屋の所有者と主治医から預かってきた、ギルド幹部への代官からの見舞いの薬酒は‥‥ 「入っている薬は毒ではないが、酒と一緒の服用は禁じる種類だ。内臓が荒れるから、病人の回復が遅れる。老人や子供、栄養状態が悪い者なら、そのまま弱って生死に関わる場合もある」 ミエイ領主の調べによれば、明らかな悪意がなければ混ざらない代物が入っていた。他にも香草が色々入っていたが、一緒に服用すると苦く感じるのを誤魔化すためだろう。 そして、この薬はオリガの元夫のアレクセイが飲まされていた薬とはまったく違う。あちらは複数の興奮や錯乱状態を引き起こす効果がある薬を混ぜていて、常用したら日常的に暴れるくらいの症状を示しかねないものだ。 けれども、元店員達の話や開拓者達が集めた情報、恋鳥小屋の所有者がオリガに寄せてきた手紙まで全部確かめたミエイ領主は、もう一通の手紙を出して、ある可能性を口にした。 「アレクセイ氏の体質が分からないので不確定だが、マイヤやこの薬の調合者は、現在の状態を望んでいたわけではないかもしれない。うちに薬草の注文が来たが、おそらく解毒剤を調合するつもりだろう」 アレクセイは当初注意力が散漫になり、意欲が失せて、オリガがいなくなってから自分で切り盛りしていた店をマイヤに任せてしまった。しばらく伏せってから突然暴れだし、錯乱して叫んだりすることを繰り返すようになったらしい。 なお、開拓者の解毒の術のおかげで回復した恋鳥小屋の所有者の手紙では、開拓者達が街を出た後は少し状態が落ち着いている。マイヤが懇意にしている医者が、街中から色々な薬草を掻き集めて調合しているそうだが、それでは足りなくなって、薬草の一大産地であるミエイに注文を寄越したのだろう。 「その医者って、どこの奴か分かったのか?」 「ツナソー。前の代官の領地よね。あ、親戚だから今の奴もここの生まれか」 「現代官の前任地が、ツナソーの東方の町でした。まだ返事が来ませんが、その医者の兄の農園も、地名からするとその辺りではないかと」 「あの辺は結構土地が肥えてて、農地が多いな。代官や大地主が大規模に農園を経営して、効率よく作物を育ててる」 シテ領主の問いには、オリガが適当に、クセニアが丁寧に答えた。質問した側が追加した情報は、傭兵稼業で各地を点々とする際に見聞きした事柄だろう。医者の兄が実際にこの地域の人間かは、フダホロウの街でも知られていないが、可能性は高いと見るのはオリガ以外の三人の貴族だ。 「フダホロウとツナソーは、今の時期なら往復一週間は掛かる。ミエイなら急げば二日。足りない分を緊急で仕入れるならミエイを頼るほうが理に叶う」 求められた薬草の分量をタハル領主に尋ねられたミエイ領主は、『せいぜい一週間分』と応えた。アレクセイに用いるなら、もっと量が必要だから、後は兄の農園で送ってくる算段が出来ていると考えることも出来る。 「なるほどねぇ。でもマイヤはなんでツナソーの人間と繋がったのかしら‥‥繚雲屋敷で芸妓をしてたって話なのに」 「屋敷ってことは、娼館か。繚雲は違法賭場が発覚して、潰された店だろ?」 オリガは前の依頼では開拓者に説明しなかったが、フダホロウではある程度店の名前で商売の内容が分かるようになっている。小屋と付けば芝居小屋、見世物小屋の興行系統で、亭なら飲食店や食品を商う店だ。屋敷と付くのは高級娼館で、フダホロウでは娼婦以外に芸妓と呼ばれる芸だけを売る女性も置いている店を指す。 開拓者達があちこちで集めた情報では、マイヤは二年半ほど前に潰れた繚雲屋敷の芸妓だったようだ。屋敷とつく店では内密の商談等も行われるので、アレクセイとはその際に知り合ったらしい。 そのマイヤと医者の繋がりがどこで発生したのかと、代官がアレクセイのことにまで関与しているのかは、確たる証拠もないので下手な推論は誰も口にしない。けれども、マイヤの周辺が怪しいのと、代官が薬物を扱ってなにか企んでいるのは間違いがないだろう。 すでに主要ギルドの幹部が数名引退して、別の者に変わっている。一度に何人も変わるのは珍しく、それが狙いだったとすれば効果は十分だ。とはいえ、赴任したばかりで自分に近しい人物を中枢に据える様な真似はしたくとも出来ないが。 「恋鳥小屋がギルドの方面には注意してくれてるけど、あそこの旦那もまだ病人の振りをしてるから、あんまり動けないのよねぇ。それに常設小屋に新しい歌劇団が入るなんて無理だし‥‥短期間で出入りする一座じゃ、まともな場所は借りられないし」 一部の開拓者は華やぎ亭が楽器演奏者だけでもと募集を掛けたのを耳にしていたが、あいにくとそれを知らせてくれた人々がこぞって止めておけとも口にしたので、前回は関わりが持てていない。そして、募集しても思うように人が集まらなかった華やぎ亭では、近隣の一座に個別に声を掛ける方法に変えたようで、今では少人数が潜り込むのも無理だ。 恋鳥小屋からの手紙にはそうあって、五人が開拓者をマイヤか代官のどちらかに近付ける方策はないものかと頭をひねっていたところ。 誘いは、向こうからやってきた。 仮称帝国歌劇団へ、華やぎ亭から舞台への誘いが届いたのだ。 『興行予定がない時期に、当店舞台にて歌劇を披露して欲しい』 前回訪問時に、開拓者達が舞台を披露する場所がないと嘆いていたのを知ったのだろう。給与の面でも相応の金額を記して、是非にと来演を乞う手紙だった。 |
■参加者一覧
スワンレイク(ia5416)
24歳・女・弓
ユリア・ソル(ia9996)
21歳・女・泰
シャンテ・ラインハルト(ib0069)
16歳・女・吟
ヘスティア・V・D(ib0161)
21歳・女・騎
アイリス・M・エゴロフ(ib0247)
20歳・女・吟
フィーナ・ウェンカー(ib0389)
20歳・女・魔
アレーナ・オレアリス(ib0405)
25歳・女・騎
サブリナ・ナクア(ib0855)
25歳・女・巫
葉桜(ib3809)
23歳・女・吟 |
■リプレイ本文 ●華やぎ亭・序 ミエイにいることになっている歌劇団への依頼状は、形式的に華やぎ亭所有者アレクセイの名前で届いていた。もちろん当人の病気が快癒したとは聞こえてこず、公演に応じて訪れた一行を待っていたのはマイヤだった。 「失礼ながら、そのお顔はどうされた?」 輝星歌劇団を名乗って、丁寧な挨拶に一行八人がマイヤとの顔合わせなどを済ませたところで、サブリナ・ナクア(ib0855)が問い掛けた。問われたマイヤは、額を覆う位置で華やかな布を頭に巻いていて、それは服装ともよく似合った洒落た装いだが、左のこめかみから目の上に掛けての痣を隠すためのものだ。額にも広くすり傷があって隠しきれていないのだが、堂々と振る舞うのでなかなか他の者は問い掛けにくい雰囲気ではあった。 実際、葉桜(ib3809)やシャンテ・ラインハルト(ib0069)、スワンレイク(ia5416)あたりは直視を避けたり、マイヤと目が合っても思わず逸らしたりしていたくらいだ。 だが、劇団での立場は脚本家と名乗っているが、医者の方がより本職に近い分、サブリナには遠慮がない。こちらも堂々と医者も兼ねていると名乗って、治療が必要なら今すぐ応じるがと申し出た。イリス(ib0247)が是非と口添えしたのは、同じ女性として、顔の傷を放置するのはしのびないとの思いもあったろう。 「傷はたいしたことはないの。ちょっと見た目が悪いけれど」 「確かに傷口は小さいですが、最初は出血したでしょう? 私も薬を調合出来ますから、痣が早く消える軟膏を作ってお持ちしますわ」 「‥‥医者に薬師までいて、どうして流しの劇団をしているの?」 手際よく布を外して、さっと傷と痣の具合を確かめたサブリナの後ろから様子を覗いて、フィーナ・ウェンカー(ib0389)も言葉を添えた。それこそ自宅にでも届けてあげると言い出しかねない押しの強さが滲んでいるが、彼女は前回の訪問からそういう役どころを自分に課しているので誰も驚かない。マイヤはフィーナの態度より、構成員の特技が多すぎることを不審がっていた。医者なら大抵どこでも歓迎されるから、流浪の歌劇団にいる必要はないのも確かだ。 「前はちゃんと地付きでやってたんだけど、ちょっと揉め事に巻き込まれてね。以来、なかなか居続けられる場所が見付からなくて」 ユリア・ヴァル(ia9996)が適当な言い訳を口にしつつ、たまたま隣に座っていたアレーナ・オレアリス(ib0405)やフィーナ、葉桜を指し示した。別に三人に指される憶えはないのだが、護衛まで女で固める歌劇団の有様などで、マイヤはユリアが狙ったように勘違いしたらしい。男って面倒よねと苦笑した。 そういう表情や立ち居振る舞い、言葉遣いなどを見ると、マイヤは闊達さが前面に出るオリガよりも上品でたおやかな風情だ。とてもではないが夫に毒を盛るようには見えない。まあ印象と内実が違う者など幾らでもいるから、それで皆の警戒心が解けるわけではないのだが。 よく効く軟膏は後としても、手持ちの薬で湿布を作り、それをサブリナが当ててやる間の話で、マイヤの怪我はアレクセイが錯乱して振り回した腕に強打されたせいだと分かった。寝ていると思って近付いたら、すごい勢いで跳ね除けられたらしい。 「ああ、いけない。ここの持ち主だけれどね」 アレクセイは奇病で度々錯乱し、店に顔を出せる状態ではないから挨拶に出向いて来られず申し訳ない。感染する病気ではないので、安心して仕事して欲しい。と、これまた丁寧に頭まで下げられて、一行もそれぞれに丁寧に返事をした。この態度が表向きだけかは、現在の店員達にも探りを入れれば判明するだろう。 そうした役回りもすでに分担済みの輝星歌劇団一同は、舞台や店内をよく確かめたいと願い出て、マイヤとの初回の会談をまずは終わらせた。マイヤが元芸妓だと知っていることは誰も口にもしなかったが、歌や演奏に詳しい彼女に不審を抱かれないだけのものを演じるためには、念入りな準備も必要だった。 ●夢蝶屋敷・序 繚雲屋敷から移ってきた妓はいないものか。 二度目の訪問とあって気安い口をきくようになったリンに、ヘスティア・ヴォルフ(ib0161)はそう尋ねてみた。もちろんマイヤのことを訊きたいのだと、リンも気付いたことだろう。 けれども。 「あそこは突然潰れてしまって、女達の借金証文が行方不明になったの。そうなれば、皆これ幸いと逃げ出すわね。娼館から戻ったなんて、小さい村じゃ嫁の貰い手もなかったりするし、実家に戻ったのも少ないんじゃないかしら」 芸妓だったとはいえ、マイヤが残っていたのは、だから人の噂になった。なまじ華やぎ亭が名の知れた店で、アレクセイが前妻オリガと別れる羽目にもなり、その後オリガは領主に成り上がりと下世話な興味をかき立てる流れだったから、娼館にいた前歴が知れ渡ってしまったのだ。 華やぎ亭の踊り子や店員はオリガの世話になった者ばかりだから、芸妓への偏見が薄くてもマイヤ当人への反発は特に大きかったろう。 「名が知れて、嬉しいことはないのよ。でも逃げないって事は、店長さんによほど惚れてるのかしらねぇ」 店では鈴小鳥と芸名を名乗るリンは、繚雲屋敷の話を幾つか話してくれたが、詳しいことを知っている人間に紹介しようとは口にはしなかった。ヘスティアが知りたい他のことも、店の人間の名前は大半が伏せたままだ。 冬であっても通商で賑わうフダホロウの、華やかだが寂しい部分の担い手達には、独自の矜持があるものらしい。 ●街のあちこち 公演場所が決まれば、当然ながら地域の顔役に挨拶に出向く必要がある。フダホロウは常設芝居小屋もある街だから、劇団や志体の有無に関わらず吟遊詩人、芸人などを取りまとめるきちんとしたギルドが存在した。 「ギルドがあって、とてもありがたいですわ。他所では何組も自分が取りまとめだという方が出てきて困ったこともございますし」 輝星歌劇団の代表は病気療養中にしておけば、誰でも代表代理の肩書きで動けるからとオリガの入れ知恵を受けて、この日ギルドに挨拶に出向いたのはアレーナだった。手土産は酔芙蓉亭の見た目が華やかな菓子とジェレゾで売り出し中の茶だ。 優雅な所作で礼儀正しく頭を下げられ、今後懇意にお願いしたいと申し出られたら、仕事柄綺麗どころは見慣れている興行ギルドの人々も悪い心地はしない。所定の手続きはあっさりと済み、フダホロウでの興行心得など教えてもらう間に持参の茶をアレーナ当人が淹れて振る舞うことになり、普段ならそんな手続き程度では顔を出さない幹部も同席した。帝国中央でこれから流行するかもしれないものは知りたいのが、興行ギルドの人々に共通するところだろう。 そうした付け届けが効果絶大だったか、ギルドの人々の口はすべらかだ。最近のフダホロウの事情などもあれこれ話してくれたが、流石に新入りを不安にさせないためか奇病云々は出てこない。だが直接マイヤから聞いたアレクセイの病気が本当に感染しないのかと、そう尋ねても不審に思われることもなかった。そんな話もしたのかとマイヤの判断は驚かれたようだが。 「その心配はないだろう。なにしろあの気の強い女房もぴんぴんしているし」 「そんなに気の強い方には思えませんでしたけれど‥‥」 「普段は振る舞いもちゃんとしているが、怒らせると恐ろしいそうだよ。店の中では、彼女が駄目と言ったことはやらないほうがいい」 そういう一面もあるのかと頷いて、出来ればぜひ一度公演にも足を運んで欲しいと宣伝をしておく。にこやかな笑みに幹部からは真意を窺わせない笑みだけが返って来たが、係員などは気持ちよく『ぜひ近々』といい返事がある。 帰り際、よければ町の案内がてらに一緒に歩こうとの誘いが複数あったアレーナは、気前よく全部受けて‥‥誘った側の落胆も誘っていた。 挨拶回りには、シャンテも出向いていた。前回訪ねた店を回って、興行が決まったことを知らせて回るのだ。今回は半ば宣伝で無理に店主に会う必要はないので、前回応対してくれた人々に面会を求めていたが、華やぎ亭でと言うと皆一様になんともいえない顔になった。せっかく仕事が出来たのだからと思うのだろう、あまりあからさまなことは言わないが、仕事以外を強要されたらギルドに駆け込めとそれとなく促された。 「そういう揉め事は多いのでしょうか? うちは女ばかりで、色々と心配です」 「変な客がいたらしいけど、最近は落ち着いたのかな‥‥でも店主が倒れたまんまで、何かあっても動ける奴がいないから、その時はギルドを頼るんだよ」 アレクセイの病状は相変わらず噂になるらしいが、そんなに有名な人でしたかと尋ねたシャンテに、相手は説明の仕方をしばし考えていたが。 「前の代官様と何かで知り合って、代官様の地元の商売を任せてもらうらしいぞって話が出たんだよ。それまでは華やぎ亭以外には食料品商ってた、普通の商人だったんだけどね」 前妻のオリガのことも有名になった理由はあるだろうが、商人間ではこの情報が寝耳に水で駆け巡ったらしい。ただ代官も急に変わり、アレクセイは倒れ、商人ギルドの幹部も数名体調を崩し‥‥とあれこれ続いた挙げ句に、街の権益構図にまだ変化がないので大きな噂になっていないだけらしい。 前任者は今の代官と親戚だったはずと思い返しつつ、シャンテは相手の色々な助言に丁寧に礼を言った。 ●代官屋敷 まるで昨日も会ったかのように、気軽に声を掛けたところ、相手は流石に驚いたようだった。 「ようやく興行が決まったのよ。宣伝に来たわ」 華やぎ亭でとユリアが言うと、代官屋敷の兵士達は『あそこは最近味が落ちた』と口を揃えた。確かにオリガのところにいる料理人の方がうまい物を作るが、酒は悪くないので、ユリアは負けずに『ぜひ来てちょうだい』と重ねる。 「いっそ、代官様にもご招待出そうかって勢いなんだけど」 「数日は無理だよ。今、偉い人が来てるから」 一体誰だろうかと尋ねてみると、これが予想外に兵士達の口は固かった。代官や側近の予定などは教えてくれない。どうも前の代官の時に、家族相手でも不用意にそういうことは口にしないと厳しく教育されたとか。別に怪しい人ではなく、位が上の貴族が来ているのだとは分かったが、そこまでだ。 立ち話では当然ここまでと判断して、ユリアはまた近くの店に陣取った。そこにいるからと明言してきたので、交代時間で顔見知りの兵士が三人ほどやってきてくれる。前回、散々飲み比べをした三人で、一緒にどんどん飲んでくれるユリアが気に入っているらしい。まあ内一人は、それよりちょっとしつこいが。 「忙しいなら、代官様以外の偉い人も駄目かしらね? やっぱり側近みたいな人がいるわけでしょ?」 「全然無理。周りの役人も偉い人ほど忙しいから」 兵士達は仕事中はともかく、仕事場に詰めっきりになるほどではないが、代官屋敷の中は大変だとか。代官が交代すると必ず来る帳簿その他の確認だが、やたらと偉い人が来てしまい、てんてこまいしている様子だった。 そうした客人や代官の出掛ける予定などは三人とも絶対に言わないが、側近衆の人数や名前は別に隠しておく必要がないからだろう、手厳しい下っ端評価付きで教えてくれた。要するに前の代官が出来すぎて、今の代官とその側近はかなり手厳しい見方をされているらしい。 「そんなにいい男なら会ってみたかったねぇ」 まんざら冗談でもなく言ったユリアに、兵士達は『憎いほどもててた』とため息をついた。だが彼らが前の代官を嫌っていないのは、そのもてっぷりをひけらかすことなく、女遊びとは無縁の仕事三昧生活、でも部下の休みはきっちり保障してくれたことにあるらしい。中には病気の家族に医者を差し向けてもらった者もいたとか。 その医者の名前を聞き出して、ユリアは一旦華やぎ亭に戻っている。 ●華やぎ亭・公演 輝星歌劇団は総勢八名。一人が脚本家、一人で営業の裏方で、二人は演奏担当、残り四人が役者となるが、その初演はいささか寂しいものだった。ユリアやアレーナが情報収集の折に誘った者が来ているが、それでも空席が目立つ。商売敵の多い街のこと、新しいというだけで足を運んでもらうには、宣伝がいささか弱かったらしい。そもそも、華やぎ亭は女性や家族客がほとんど狙えない店でもある。 それは最初から分かっていたので、皆が計画したのは短い一幕ものを連ねる公演だった。個人での演目ならなんとでも出来る力量はあるが、一緒に練習する時間がない当人達の都合もあるし、飲食どころだから長々と見てくれる客はないと踏んでのことだ。 細かいところは個々で違うが、全体の特技などを入れると歌と踊りが基本になった。衣装や装飾品はスワンレイクが張り切って華やぎ亭の名に負けない代物をオリガ達から借り出して来たし、それぞれの持ち物も歌劇団員らしいものを持参している。 演目は以前帝国歌劇団の名で行った演目に、輝星歌劇団員それぞれの得意なものを盛り込んで、人ならぬ美女と人の男の恋物語やらなにやらといった群像劇になった。 「雲の上、天の下、地上ならぬ世界の戦乙女が、どうして人の世に焦がれねばならぬのか」 ジルベリアには精霊などの伝承があるから、そうした存在が人に恋焦がれる話は分かりやすい。うつつの話よりも見る側も気楽だろう。 スワンレイクがその恋情を、地上への道行きを留めるアレーナの剣舞を掻い潜るように立ち位置を変えて歌い上げる姿に、当初はアレーナを目的に来たのだろう数名が視線を忙しく動かしている。恋人役の役者はもちろんいないから、客席に向けて謳われる歌に、伸ばされる手、投げ掛けられる視線と、その先にいた客は落ち着かない様子だ。 そうやって熱烈に相手を求めた歌や舞が終わると、今度はイリスが歌い手に立つ。主の病を癒そうとする人形の美姫達の気持ちを朗々と、けれども艶やかにしっとりと歌い上げて、スワンレイクとアレーナと共に華麗な身のこなしでめまぐるしく位置を変える踊りに入る。 「我らはこの夜の帳の中でだけ、命ある者になりますの。さあ、どうかお手を‥‥」 伸ばされた手に、うっかりと反応しそうになった客はけっこういた。中にはぼうっと手を出して、仲間に小突かれる青年まで出たほどだ。 一人ずつの出番は短いから、次から次へと舞台の上の姿は変わる。葉桜とシャンテの演奏が交互に入る幕間には、かなりあけすけに今の踊り手が好みだの違うのと酒場らしい会話が交わされ、注文を受けた店員達が立ち働く。 そうやって活気付いた後には、天儀の着物姿のユリアが片思いの詩を音に乗せ、葉桜との掛け合い歌も含んで、シャンテの龍笛を添えて、緩やかな舞を披露する。これまで出演した者も、衣装を変え、それぞれに舞扇で顔を幾らか隠しての舞は、動きの華やかさはないものの‥‥扇の向こう側からちらりと向けられた視線に釘付けになった客は少なくない。客数が少ないから、かならず舞台の誰かと目が合うので、しまいには陶然としている者もいたくらい。 おそらく、話に聞いていた華やぎ亭の明るいちょっと色気もある舞とはまったく別物だろうが、うつつごとを離れた風情の舞台は初日の客にはかなり好評に見えた。 当然だが、舞台からそう見えただけでは実際のことなど分からないと、接客はどうにも苦手という葉桜とシャンテは変わらず演奏に勤しみ、他の者は客席への挨拶回りを始めていた。メイドの経歴も長いイリスが率先して出て行ったので、他の者もそれに倣う感じだ。客の間を巡れば、世間話も聞こえてこようし。 ところが、これに驚いたのは客のほうで。 「え、お酌頼んでいいの?」 「まあ、お客様へのご挨拶と思いましたのに。こちらの街でははしたないことでしたかしら?」 どうやら、以前の華やぎ亭では踊り子は客席に絶対降りてこなかったし、給仕の店員も酌はしてくれなかったようだ。代わりにオリガが店の中を巡り歩いて、細かな気遣いをしていたから、以前を知る客はその印象が強かったのだろう。驚きつつも、イリスの問い掛けは慌てて否定して、嬉しそうに酌を受けている。 イリスも経歴柄、給仕もお手の物だから、まだ慣れない様子の店員が運んできた料理を取り分けてやったりしながら、以前の店の様子に街の状況などを聞きだしている。 アレーナなど、興行ギルドの係員達にしつこく同席を求められて、仲間に申し訳なさそうに卓に着いた。実は当人、飲食の場でなら色々聞きだせると狙っていたが、そんな様子はまったく窺わせない。 また、葉桜の案で色々なギルドの幹部を招いたらと計画はあるのだが、伝手もないのにただ招待状だけ出しても来てもらえまいと、スワンレイクもにこにこと笑顔を振りまいて、主に年配の客の所を巡っていた。家族連れが見込めないなら、年齢に関係なくお客は大事にしているところを印象付ける狙いもある。 ユリアはすっかり顔馴染みの代官屋敷の門番達と、すでに楽しく乾杯を交わしていた。 そんなこんなで客の入りの割には賑やかになった店内では、注文も順調に増えていた。店にとってはありがたいことだが、まだまだ不慣れな者が多い店員達は泡を食っている。そうした様子に、演奏をシャンテと交代で行っていた葉桜は腰を上げて、配膳の手伝いを始めた。自分だけ何もしないのは耐え難いし、愛想は振り撒けないが、料理や飲み物を持っていくだけなら平気だ。そのはずだったが。 「せっかくだから、一杯だけ飲んでおいき。それからあっちの娘さんと交代しなよ」 仕事で天儀に何度か出向いたという隊商の一団に手招かれて、腕まで引かれて座らされた。かなりいかがわしいこともさせる店になっているかもと聞いていたから警戒していたが、左隣の客が物珍しそうに頭を撫でた以外は普通の小父さん達だった。 否。 「天儀だと着物の晴れ着って幾らくらいからあるもんかね? 仲間に泰国の人はいないか? わしら、商売を広げようと思っててねぇ」 素晴らしく商売熱心で、質問攻めにしどろもどろの葉桜からなんとか返答を搾り出すと、店員にシャンテを呼んでくれと言い出す。 「あの‥‥どういう、方でした?」 「悪い方ではありませんが‥‥ずいぶん突っ込んだ話を尋ねてくるので気を付けてくださいませ」 どうも店員からあちこち巡っていた歌劇団だと聞き出して、他所の地域の情報など聞きたいようだが、うっかり知っていることを話し過ぎると本職ではないとばれてしまう。シャンテも苦労していたが、家族がいない者が多いとかそういう話にいたく感じ入るものがあったようで、この面々は毎日短時間でも寄ってくれるいいお客になった。 小父さんでこうだから、若者はもっと通ってくる。 ●華やぎ亭・裏 イリスにスワンレイク、葉桜は大抵華やぎ亭にいる。宿泊場所は別だが、華やぎ亭の店員達が出勤してくる時間にやってきて、店の掃除や仕込みの手伝いまでこなしていた。その分の給金は出ないが、一様に『こういう仕事は落ち着く』と口にする。 毎日そうやって長時間顔を合わせていれば、打ち解けてもくるもので、店員達の何人かとは世間話をする仲になっていた。 「すごーくうるさいよ。お店の中のことは分かるけど、この店は使うな、あの道は通るなとか言うの。旦那さんが病気だから、変な験担ぎでもしてるのかしら?」 「そいえば、その旦那。子供が欲しくて変な薬掴まされて、それでおかしくなったって?」 「でも、あの医者と怪しいよね?」 無責任な噂話が好きなのがいて、毎日どこからか新たな話を仕入れてくるのは情報収集としてはありがたいが、葉桜には大変刺激が強い。イリスとスワンレイクも大抵苦笑しているが、流石にアレクセイの噂は聞き流せない。そんなに悩んでいたのかしらとイリスが同情交じりに口にしたが、そこまでアレクセイのことに詳しい店員はおらず、しばらく考えて。 「前の奥さんとは、子供が出来ないんで五、六年前から別居してたとは聞いたけどねぇ」 「旦那さん、なんかで稼いで、家族向けの食堂やりたいって言ってたらしいよ」 また出所がわからないが、新しい噂が出てきて盛り上がっている。それでいて、話している当人達は自分のことを言わないから、まだ信用度が足りないなと三人は感じていた。 ●アレクセイ マイヤの顔の痣は、軟膏のおかげか色が戻るのが早いようだ。こんないい薬なら店にも常備しておきたいと言うので持ち分を譲ってやると、輝星歌劇団、特にフィーナとサブリナの印象が良くなったらしい。あちこちで気が強いという話が聞こえてくるが、今のところは激することもなく、丁寧な態度で接してくれていた。 ちなみに歌劇団の給与は宿代などがあるので一部前払い、残りは今回の興行終了後の支払いとなっていた。劇団員が客から貰った心付けは当人の取り分になっているが、一部は食事代として返している。劇団員が店の仕事を手伝っても、契約外だからもちろん給与はなし。 「構いませんのよ、好きでやっておりますし」 一部率先して店の仕事をしている者がいるので、マイヤがその支払いを心配していたが、フィーナが給金不要を明言したので気が抜けたらしい。 「接客してもらった分も、保障出来ないけれど‥‥それでも?」 「あれも宣伝。私達のやり方でよかろう?」 「そのあたりを承知していてくれるとありがたいわ。そりゃあこの辺りは流れる先に困らないけれど、やっぱりお客はちょっとしたご奉仕なんてのに弱いから」 前の店員はそれが全然分からなくてと零したのは、マイヤもうっかりしたのだろう。二人が気付かない振りでやり過ごしているのにも気付いたようだが、取り繕わずにちょっと首を傾げてみせた。やり過ごしたことに軽く礼をしたというところか。 だがまあ、二人とてただやり過ごしたわけではなく。 「見たところ、病人を抱えて切り盛りするには規模が大きい店だが、誰かお身内に頼れる方はいないのかね?」 「残念ながら。もう少し良くなってくれたら心配が減るのだけれどねぇ」 実のところ、サブリナがオリガにアレクセイを巫女の術で快癒させるべきか尋ねてきたのだが、オリガは悩んでから『それは駄目かも』と答えていた。死んだり、いつまでも病気のままでいいとは思わないが、アレクセイは『口は固いが、隠し事が出来ない』のだという。 どういうことかと思えば、秘密は絶対に言わないのだが、何か隠しているのは親しい者には態度でばれるのだとか。ちなみに嘘はつくこともあるが下手。これまたすぐばれる。よって『回復させたら、病人のふりなんか無理』というわけだ。あっさり治せれば話が早かろうが、致し方ないので生命に関わる危機がなければ、効果的な治療までで留めることになっていた。いきなり快癒は取り繕いようがないが、薬が劇的に効いたのなら問題はない。 で、ミエイ領主が『そんな薬が簡単に作れるか』と文句たらたら調合してくれた解毒剤を持参しているのだが、今がまさに付け入り時だとフィーナが口を開いた。 「もちろんお医者様が診ておいででしょうけれど、別の診立てもあれば良いかもしれませんわ。サブリナに診せてはいかが?」 「‥‥知らない人が来ると暴れるのよね、幾ら裏方でもこんなことになったら困るじゃない」 自分で毒を盛ったのだろうに心配は本気と見え、マイヤはこの申し出に一旦身を乗り出しのだが、二人が殴られたら困るし、アレクセイも知れば落ち込むからと迷っている。それなら安眠の香でも焚いて、寝ている間に様子だけでも見ようかとサブリナも言葉を添えたが、それは絶対駄目だと言い張った。 これは理由がある態度だと思えば、 「あんなに悪くなったのは、薬を飲み間違えてからなのよ。一度に一日分。それにあの人、なんだかその時に別の薬まで飲んだみたいで‥‥医者も調合した薬以外は飲ませるなって」 鼻を啜りながらマイヤが訴えるのを聞くと、アレクセイが前の代官と仕事で繋がりがあったのは間違いないらしい。それに着手する寸前に離婚だ再婚だと騒ぎがあって、疲労で倒れたものだから、前の代官と親戚のよしみで今の代官が医者を紹介してくれた。ところがその薬を飲み違えて悪化したものだから、薬草園も営む医者の兄までやって来る騒ぎがあったようだ。最初は飲み違いか薬の取り違いか分からなくてのことらしい。 なお、ユリアが聞いた医者とアレクセイの主治医は名前が同じだった。おそらく同一人物だろう。 これは顔も確かめねばと、手持ちの薬が役に立たないか、主治医に見てもらったらどうかとか、色々話し込んでいるうちに、マイヤは気持ちが揺れたのか、薬を出してきた。アレクセイが勝手に飲まないように、持ち歩いていたらしい。薄紙に包まれた薬の数もきっちり数えていたが、確認するには一度開封するわけで‥‥フィーナが会話で気を引いている間に、サブリナが一舐めしてから、手持ちの薬と中身をすり替えた。恋鳥小屋の主治医に持ち込むか、それともオリガに渡すかは、この後どう動けるかだろう。 その後もなにくれとマイヤの看病話を聞いて、二人で的確な助言を続けると、周囲との軋轢が多くて疲れたとも零したマイヤは一度だけアレクセイが寝ているところに案内してくれたが、その時はやつれていたものの脈や肺の音は悪くはなく‥‥きちんと世話されていることも確かめられた。彼女達の鼻にも、室内に危険な薬があると訴えてくるものはない。 ●夢蝶屋敷・破 左目を眼帯で隠して、夢蝶屋敷にちょくちょく通うことになったヘスティアは、すぐに店の女達に顔を憶えられた。護衛の口を捜しているから、なんであれ顔が売れるのは重畳と景気よく言ってあるから、誰もが顔を見ると『まだ仕事がないの?』とからかってくる。リンの客となってはいるが、色の関係がないのは周知のことで、声も掛けやすいのだろう。 そんな中の一日に。 「あいにくだけど、今日は貸切なんだよ。ま、一杯飲んでお行きね」 「貸切? この店を? どこのお大尽だよ」 「代官のお屋敷で宴会さね。大きなもてなしがある時は、この辺のお屋敷が順番に出向くことになってんの」 皆準備に忙しいのだろう、店の奥からは悲鳴のような声があれこれ響いてくる。女将一人は平然としているが、服も飾りもいつもより数段いいものになっている。いつだって小娘では太刀打ちできない粋な装いの女将だが、今日は特に素敵だと思った通りに誉めたら苦笑を返された。 こんなに度々通ってきて、本気で妓達の装いを誉めたり、感心したりするのは物好きだと常日頃から思っていたのだろう。そこに真意があるかどうかくらい、女将は見通しているに違いない。 「オリガが何を考えてるか知らないが、一つ返すと言っておくれ。二年前までは、代官屋敷の宴会に呼ばれるのは必ず繚雲屋敷でね」 繚雲屋敷は周りの同業者が一目置く宴会の華だった。芸妓の腕は一流、娼妓はいずれ劣らぬ才女揃い。潰れる一代前までの楼主が女達の教育に力を入れていたので、どこも成り代わる隙が掴めなかったのだ。だが潰れた時の楼主は賭け事好きで、その地位ゆえに自分は安全と思い違えて賭場に手を出した。それで潰される羽目になったが、女達の借金証文は当時の代官の側近の誰かが焼いてしまったのだと同業者間では囁かれている。 「あの屋敷の娘達は、結構前の代官の周りの奴の手が付いててね。何人かは、そのまま妾に納まってるよ」 「それで、どこでも口が重いのか」 店の奥、今まで入ったことがない女将の控えの間で強い酒を啜りつつ、ヘスティアはようやく合点がいっていた。同業者間の暗黙の了解と、街を離れたとはいえ権力者への遠慮とがあって、リンも誰もはっきり言わないのだろう。中には、それこそ繚雲屋敷の誰かと暮らしている他所から来る客人等もいるのかもしれないし。 だが、彼女がふと気付いたのは、女将の口調があまりに断定的なこと。繚雲屋敷の女達は逃げ散って、どこにいるのかはっきりしないのだと言うリンの様子に嘘はなかったが。 「証文の話が分かる前に、一緒に逃げる、自分が引き取るって男や身内がいた娘は、送り届ける手伝いしたからねぇ」 同業者に嫌われるとそんな目にあうんだよと、女将はヘスティアの額を小突いたのだった。 ●フダホロウ 輝星歌劇団より一日だけ早く、代官屋敷の客人がフダホロウを出発した。一行は来訪時を見ていないが、なかなか凛々しい騎士や堂々とした役人がいたと聞いて、野次馬に混じって眺めに行く。皆で手分けして華やぎ亭の元店員達に代官やマイヤ周辺の人の出入りなどを普段の生活で分かる範囲で教えてくれと頼んでいたのを、怪しまれずに聞きに行く目的もあった。 だが、その目的よりも。 「大分、見た目に不自由している感じ」 前の代官は誰もが口を揃えて男前だったといい、今回の客人は凛々しいと言うのに、当代の代官は顔はともかく、体型が太りすぎて見栄えが著しくよろしくなかった。何を食べたらああなるのかと、考えてしまうほどだ。 けれども、にこやかに客人を送り出す時の様子を見ていると、弁は立つのだなと、それは全員が感じている。ただそれだけで人柄など判断出来ないのは、マイヤの前評判と実際の印象との差もあって、全員が理解もしているが。 事態がこれからどう動くかは、皆で集めた情報に、オリガ達が探っていることを照らし合わせて、何が浮かんでくるかで違うのだろうが‥‥まだ何かが起きそうな気配は皆が感じていた。 |