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■オープニング本文 前回のリプレイを見る ●籠絡 生ぬるい風が吹いていた。 いや、生ぬるいと感じるのは葬られた者の血の臭い故かもしれない。 開拓者ギルドから出た、開拓者達を待っていたのは黒衣の男。 片腕だけが露出しており、その腕には黒い蜘蛛の入墨が刻まれている。 「開拓者には、開拓者を――。ところであなた方、俺達と取引をしませんか」 言葉こそ慇懃ではあるが、威圧感を感じさせる。 開拓者達は警戒を強め、目の前の黒衣を見据えた――ある者は弓を、ある者は符を構える。 「北條の頭領が、随分と懇意にしている、と言う情報が入りましてね。如何です、俺達と手を組みませんか?」 「手を組むねぇ。此方にはメリットがあるのかしらぁ?」 「莫大な金と、そして技術が手に入ります」 淡々と返す黒衣の男は、開拓者達を品定めする様な冷淡な眼つきで見据えた。 (「随分とまぁ、爬虫類の様な目だ」) その瞳は何処か、北條のお頭に似ている事を知覚し、男は嗤う。 「――リスク無しで、手に入るとは思えないな」 「変に聡い人間は、早死にしますよ。まあ、ギルドからは追われるでしょうね」 ……開拓者ギルドを敵に回す。 開拓者ギルドとは、朝廷の認めた機関――それを敵に回す事は、即ち開拓者としての生すら危うくなる。 (「北條の頭も、この男も知らないが。リスクが大きいねぇ」) 「具体的には、北條・李遵――彼女の腹心である藍玄を殺して欲しい。少々、目障りなものですから」 「……考えておこう」 渋面を作って、一人の開拓者が告げる――この男は危険だ。 そう、本能が告げている以上、下手を打つ訳にはいかなかった。 「いい返事を、お待ちしておりますよ」 去っていく黒衣の男、そして代わりに現れたのは。 「先程の男の、話に乗って頂きたい。その上で、私の依頼を請けて頂きたい」 藍玄と名乗る、李遵の腹心――その暗い瞳に、何かがうずくのを感じながら、一人が口を開く。 「もう少し、説明が欲しい」 「ご尤も。彼等は影蜘蛛と呼ばれる民――私達の同胞ですが、何か良からぬ事を企んでいるのです」 「わっちに出来る事でしたら。ですが、もう少し説明を欲しいところでありんす」 口元を着物の袖で隠しながら、一人が問いかける。 内容によっては自分達が不利益を被る事もあるだろう。 だが、先程の男とは違い、少なくとも藍玄の依頼ならば北條で身柄を保障してくれるはずだ―開拓者を失う事は、決して彼等の意図するところではないのだから―。 「北條・李遵の監視と、そして彼女の『不寝番』の殺害、もしくは捕縛です」 |
■参加者一覧
孔雀(ia4056)
31歳・男・陰
リューリャ・ドラッケン(ia8037)
22歳・男・騎
溟霆(ib0504)
24歳・男・シ
長谷部 円秀 (ib4529)
24歳・男・泰
蓮 蒼馬(ib5707)
30歳・男・泰
笹倉 靖(ib6125)
23歳・男・巫
高尾(ib8693)
24歳・女・シ |
■リプレイ本文 ●駆け引き 返答は如何に、と黒衣の男は問いかける。 相変わらずギャァギャァと喧しい烏と、そして灰色の空。 膚に触れる空気は纏わりつき、不快感を伴っていた。 「アタシは遠慮するわ。お肌のツヤが悪くなっちゃう」 誰も、先程藍玄と邂逅した事を告げる開拓者はいない。 全く話にならないわ、と孔雀(ia4056)は鼻で嗤うのを堪え、話は終わったとばかりに踵を返す。 「(よく云うよ。それにしても、金にならなそうな依頼だねぇ)」 去っていく孔雀を目端で捕え、高尾(ib8693)の脳内では利益と損失が素早く計算されていく。 莫大な金と言うのは魅力的であるが、死んでしまえば元も子もない……それに、具体的な報酬が告げられていない以上、やはり利益は少ない。 だが、微塵もその計算を見せない修羅の女はただ、黒衣の男を見据えるのみ。 「条件を飲んでもいい、がねぇ。城内に味方はいるのかい?」 溟霆(ib0504)の切り返しに、顔の視えぬ男は淡々と返答を返す。 「……藍玄の始末。あなた達だけで可能である、と判断しています」 「シノビの『戦い方』に、数が通用するとは思えないけれどねぇ。それは、そちらも分かっている筈だよ」 その言葉に少しの間を取り、黒衣の男は北條・李遵(iz0066)に付けた不寝番が6名、存在していると口にした。 「(つまり、蜘蛛の男の手先か……だが『誰』が不寝番だとは聞いていない)」 顎に手を添え竜哉(ia8037)は思考を巡らせる。 彼の思う事は尤もであろう、情報の少なさは危険でもあるが、自分達を守るものでもある。 故に、不寝番を葬っても『そちらの手の者だとは、判明していない』と弁解出来る――それが通じる相手かどうかは、不明であるが。 氏族同士の争い、陰殻は喰うか喰われるか……逃げ道を常に用意する、と言うのは開拓者達が持つ共通の意識であった。 「じゃあ、あたしは不寝番として李遵につくよ。そっちの方が開拓者として城に居るより、不自然じゃないだろう?ついでに、蜘蛛の飾りでも借りれると、いいんだけどねぇ」 高尾の言葉に、黒衣が一瞬揺れそして彼女へ蜘蛛の飾りを渡す――腕の先までどす黒い様はまるで光の届かない深淵のようであった。 その飾り、やはりそれは、何処かで見たことがあった、様な気がした。 「(思惑が絡んでいるようですが、情報が足りない以上、独自には動きにくいですね……)」 李遵の近く……燃やされた記憶が、疼く。 神妙な顔をしている長谷部 円秀 (ib4529)と同じく、蓮 蒼馬(ib5707)もまた、頭が疼く。 苦虫を噛み潰したような表情からは、もどかしさと葛藤が顔を覗かせた――失った記憶が、蘇るのか、それが幸か不幸かは解らぬ。 「そろそろ、出発して貰いましょうか」 黒衣の男の先導で、北條の住まう粗末な城へと向かう。 「何故、藍玄が目ざわりなのか……依頼を請ける以上、聞いてもいい筈だ」 蓮の言葉に、ピタリと黒衣の男は足を止める、烏のざわめきが遠くで聞こえた――口を開く。 「――裏切り者、我々の目的を阻害する者。この一言で十分でしょう」 「で、李遵と藍玄の居場所は?李遵と鉢合わせなんて嫌じゃん、俺ら勝手に侵入してることになるんだよね?」 ヘラリ、笑った笹倉 靖(ib6125)の言葉に、李遵は自室にいるでしょう、と黒衣の男は言う。 藍玄の場所は不明であるが、腹心――その言葉を使う時、黒衣の男は鼻で嗤った様であった――李遵とは近しい場所にいる筈、と告げた。 「で、俺達、役目が終わったから厄介払い、なんて事は無い?」 「開拓者を敵に回す程、俺達も馬鹿ではありませんよ。さあ、着きました、健闘を祈りますよ」 7名の開拓者は、城へと潜入する。 笹倉、そして蓮は既に顔を隠していた、城外部で動く孔雀の姿は既になく、高尾は不寝番として動く為蜘蛛の飾りを身に付けていた。 ――もう一つの依頼の為に、黒衣の依頼を踏み台にする。 ●情報収集 梵露丸を一気に飲み干し笹倉は、閃癒を使い開拓者達の傷を癒す。 依頼終了後に面倒事に捕まったなぁ、とでも言いたげな表情だ。 孔雀は何処かに潜んでいるのだろう、ぞろりと壁を這う人魂――時折、叩かれては姿を消す。 連絡手段には少々乏しいかもしれぬ――されど、開拓者達は困る事は無い。 「符丁を決めておきましょう」 長谷部の提案した符丁が、役に立つだろう……場所と連絡手段、簡単なものであったが情報さえ、知る事が出来れば構うまい。 無論ながら、話すに可笑しくない話であれば、接触して話す事も可能であろう。 まず、黒衣の男の信頼を得なければならない、竜哉を始め開拓者達は、藍玄がいる……と思われる執務室へと向かう。 下働きの下忍に聞けば彼等は、一瞬不審そうな表情をしたが深く問う事は無く、執務室の場所を教える。 「藍玄の首と、金を交換する時を待っていますよ」 黒衣の男は、ついて来たものの全てを開拓者に任せるつもりのようだ……その、全てがどうでもよさそうな口調は、明らかに誰かに似ていて。 少しばかり、嗤うような口調で告げられた言葉、長谷部の口元がピクリ、と動く。 「(金さえあれば、と思っているようですが――私は義を棄てませんよ)」 ……外が見える場所に、藍玄は立っていた。 一気に距離を詰め、鉄扇を薙ぐ蓮、それを後ろに跳ね跳ぶ事で藍玄はかわす、薙いだ故に生まれた隙は竜哉の脚絆「瞬風」による蹴りが炸裂した。 身体を滑らす事によりかわし、カウンターを仕掛けるかのように、忍刀が竜哉の腕を掠める。 溟霆の忍刀を忍刀で受けとめる、火花が散る――そして、力を抜くと蹴りを放つ。 舞う血飛沫、そしてそれ以上にキッチリと整えられた白い書類、それが舞い踊る、舞い踊る。 長谷部は拳を繰り出すが、それは忍刀の背で払われ――雷火手裏剣が飛来した。 手加減された雷火手裏剣に倒れたフリをして、笹倉は黒衣の男が妙な動きをしていないか、気配を探る……だが、分からぬ。 「(策でもあるのかね。それにしても、藍玄、その内胃に穴が開くんじゃね?)」 「……一旦、退却するか」 誰ともなく呟いた言葉と、竜哉が紛れ込ませた行動予定表。 それに気付いたのか藍玄は書類を纏めるフリをして、目を落とした。 一方、高尾は不寝番と接触していた。 部屋と言うには粗末な場所、であるが李遵の部屋に寝泊まりしているのだと言う。 ――李遵は、クロ、か。 「(数は6名、朝、昼、夜に2名ずつ。連絡手段は烏)」 『不寝番を束ねている』黒衣の男の手引きで入った高尾に、不信感を抱く不寝番など居らず。 もしかすれば、ギャァギャァと喚いていた烏、その中に……紛れ込ませた『連絡用』の烏がいるのやもしれぬ。 「(癪だけど、孔雀の人魂を使ってやるか。いや、此方の方が早いねぇ)」 ピィ、ピィ……ピィ、ピィ……ピィ、ピィ……ギャァギャァ。 不寝番の数と、そして連絡手段の烏の鳴き声――尤も、啼く『モノ』でなければ人魂へと話しかけるしか無かったであろうが。 少なくとも黒衣の男は、開拓者達を信用していない……交代時間と場所など、告げれば直ぐに分かってしまうだろう。 超越聴覚でその音を拾ったのは、溟霆だ。 烏の鳴き真似に、上手いなぁ、と音を立てず笑い、交代時間と場所を聞きだせば――了解とばかりに、烏の鳴き真似で返す。 「(じゃあ、確かに連絡はしたからね)」 「烏に注意、と言う事だよ」 溟霆の言葉に、すれ違った蓮は相分かった、返答を返す。 そこに滲みでる感情など無く、ただ、依頼をこなすのみ。 情報はまるで蜘蛛の巣のようにあっという間に、開拓者達の間に伝わった。 「アヤカシ騒ぎと、騒いで貰えるかしら?」 人魂と繋がった視覚と聴覚、少しばかり目を閉じては、息を吐く。 流石に人魂を放置したままとはいかないのか、何度消されたか分からぬ……だが、連絡手段にはなったようだ。 「全く、こんなに暗くなるまで外にいて、攫われちゃうわよぉ」 にまり、唇が弧を描き、孔雀の陰陽符が変容する――そして、龍へと変化した大龍符が姿を現した。 ●流転 「敵か……」 驚いた北條流のシノビ達であったが、各々に武器を取りだすと龍に向かって得物を放つ。 一瞬で消えた龍の姿に驚いたのは、下働きを兼ねている下忍のみ。 ある程度修練を重ねたシノビ達は流石に、この程度では驚かない……だが。 「騒ぎに乗じて、仕留めてくるさ」 ふらり、笹倉が消える――黒衣の男は暫し、その姿を見ていたがやがて、周囲に溶け込むように姿を消した。 「急げ、と言う事か」 携帯汁粉を持ち、襲撃に併せて向かう蓮――蓋にはサブルボーク。 流石に娘には言えんな、と苦笑しつつ静かに進む。 不寝番、そして、その場にいる李遵にも動揺など無い……襲撃など些末事。 「俺は影蜘蛛の協力者だ。疲れたろうから――」 言う前に、攻撃したのはどちらか、咄嗟に守りに入った蓮、攻撃したのは不寝番であるシノビ。 「(やはり、普段と違う事には敏感だな)」 サブルボーグを咄嗟に取り、受けとめた蓮が汁粉をシノビの顔へとぶちまける。 そしてそのまま、援軍にかけつけた開拓者達と共に、戦闘へとなだれ込んだ。 青い閃光が龍の様に走り、即絶破昇竜脚を使った蹴りがシノビの腹部に入る――倒したのは長谷部。 ゴキュ、と骨の折れる湿った音をたて、シノビはその場に倒れ込む。 竜哉の脚絆で強化した脚は、宙を駆ける様な優美な動きと其れに反して、強烈な蹴りを放った。 咄嗟に火遁で応戦するシノビ、炎が竜哉へと襲いかかる――それを突き進む事で、印を紡いだシノビの横面を蹴りつけた。 糸が竜哉に向かって放たれる、そのまま炎の渦に叩きこめられ、体勢を崩す、が、蓮がその糸を己の鉄扇で断ち切った。 そのまま瞬脚で追い付き、鉄扇で連々打と得物を二度、叩き込む。 その場に崩れ落ちたシノビ達の絶命を知り、素早く血を払い……そして、倒れた筈のシノビの攻撃を背拳で翻す。 長谷部によって、即絶破昇竜脚を叩きこまれた筈のシノビが虫の息のまま、糸を放ち、そして今度は本当に絶命した。 突き刺さった不可視に近い糸――糸のように細く、そして避けきれない、長谷部は痛みを覚悟するが、紡がれた術は敵の絶命と共に効力を無くし。 そして、静けさが戻る。 李遵の部屋。 騒ぎを察知した高尾は、他の者が戦闘に入った事を知り、夜の不寝番へと近づき仕留めようとして、その拳が何らかの糸によって、阻害される。 咄嗟に後ろに飛んだ彼女を追う不可視に近い、糸――それは形状を変え、蜘蛛の巣のように変化する。 「面倒なんだよ!」 一気に駆けだし、糸をくぐりぬけ攻撃を加えようとした彼女、それを追う糸。 目端で黒い烏が闇夜へ向かって飛ぶのが解ったが、此処でたじろいでは待っているのは報酬でなく、死。 「シノビと言うのは、そんなものかも知れないねぇ。じゃあ、佳い夢を」 駆けつけた溟霆は影で潜んだまま、他の不寝番を忍刀で首を切り裂いた、噴きでる鮮血。 「佳い夢も何も、あったもんじゃないね」 「死の先は誰も知らないさ」 高尾の皮肉に、溟霆は飄々としたまま嗤う……そして抜き放った忍刀を操り、背面からの糸から身を守る。 粘着性の糸は、くるくると絡まり絡め取られる――捕食しようとする不寝番は真に、不気味な様相をしていた。 忍刀を諦め、戦輪を放つ溟霆、そして……現れたのは。 「つまり、俺達は『見える襲撃』でしか無かったって事かね」 「……ええ、貴方達が下手人となれば上手くいったものを」 白霊弾を放つ笹倉と、孔雀は形勢が藍玄側に傾いているのを知り、毒蟲を放つ。 黒衣の男は放たれた術を平然と受け止め、ですが、と紡いだ。 「此処までの様です……俺も流石に、7名の開拓者と藍玄を一気に相手にするつもりはありませんよ」 黒衣の男の手に舞い降りた烏、それを手に嗤い、影に消えゆ。 ●往く先 「状況は全て、把握しましたが……無茶な事をやってくれましたね」 気配も、姿も無かった北條流の頭領は、無機質な瞳に愉しげな色を浮かべるとお茶でもどうです、と散らかった部屋に入る。 その腰に付いているのは、蜘蛛の飾り、黒衣の男が高尾に渡したものだ。 「単刀直入に聞くわぁ。行動を監視されて、不都合な事があるのかしら?」 孔雀の言葉にそうですね、と李遵はまあ、いいでしょうと口を開く。 「ある人物からの強請りと、私が藍玄と通じて敵を葬る様な動きをしないよう、監視されていました。とは言え『北條』の為には『敵』の排除が必要です、私はもう少し信頼を得て、潰すつもりだったのですが」 「敵ってのは、あの黒衣と不寝番は通じてる、でいいね?」 軽やかに、だが断定的な言葉をかけた笹倉に頷き返し、李遵は嗤う――感情のない嗤い方で。 「ええ、その前に、行ってきます」 止める暇などあればこそ、李遵は軽く窓から飛び降りると大地を駆けた。 その後を追う高尾……『北條・李遵の監視』と言う依頼内容であるならば、まだ夜に彼女が何処かへ行っているのかは掴めていない。 「これ、李遵さんに渡しておいて貰えますか?」 もふらのぬいぐるみを藍玄に渡し、長谷部は告げた、恐らく好きだと思うので、と。 「解りました、必ず」 溟霆はやれやれ、とモノクルの位置を直した。 追うべきか追わざるべきか――少しばかり様子を見た方がいいだろう。 北條氏系の列氏である氏族を出身とする溟霆は、知り過ぎたものには容赦なく死を渡す『北條』の血の掟を知っている。 「――奴等に追われる心配は、無いとみていいのか?」 蓮の問いかけに勿論です、と藍玄はシノビにしては柔和な表情を浮かべた。 「勿論ですよ。我々の氏族で片付けるべき事に、手を貸して貰っているのですから」 「俺達も依頼だからな。それに、少々の事で倒れる気はない」 竜哉の言葉に力強いものです、そう言い、笑う。 一方、李遵の後を追った高尾。 「探し人ですか?」 背面に立つ李遵の姿に、足を止める。 殺気も無く、敵意も感じられず。 である筈なのに、糸は絡みついている、身体の骨が悲鳴を上げるが気丈に、彼女は鋭い声で告げる。 「ああ、まだ依頼は終わっちゃいないからね」 「流石です。影蜘蛛と商人は繋がっている――氏族の台頭が『蜘蛛』と『影』の為すべき事でした。ですが『北條』は棄てません……私は話し合いに行きますので『件の物』に注意を、と藍玄に伝えて下さい」 この情報を藍玄に伝えれば、報酬が手に入りますよ、少々多めに……そう言って李遵は消える。 『影蜘蛛』と繋がっている『商人』と、そして『話し合い』に行った李遵。 『蜘蛛』と『影』の為すべき事に『件の物』と言う隠されたままの物、物質か、情報か。 ――それは『積み荷』と関係があるのだろうか。 「(人間風情が、贅沢なものだ)」 忌々しい思いで高尾は、北條の城へと足を向けるのであった。 |