|
■オープニング本文 前回のリプレイを見る あの騒動の後刻、席を外す事となった青柳 上総(あおやぎ かずさ)と在由(ありよし)を交えて。開拓者立会いの元で過去の罪は明らかにされた。 ただし当事者である上総と冬華(ふゆか)の言い草でしかないという部分が、全てを薄暗い灰色に包んでいたが。 開かれた箱の中から出てきたのは、汚れた過去。ぼろぼろになって判読もできぬ過去。 全く変わらぬように見えるのは当主の在実(ありざね)。温厚に町場の子供達に教えを続ける彼は、一体何を思っているのか。 上総の身柄は公の裁きに預けず、内聞に付して破門。神楽分道場の身を片付けて辞した後の彼の行方は知れぬ。 神楽の道場も半ば子供相手の物で師範の後継も居ないが、ひとまずは懇意の知人に預けて営みを続けていた。 幼少時の在真(ありまさ)を一時世話していた事もある家族ではあるが、彼らは旗乃宮流の一門とは異なる。 一門の者は皆、上総を除いてはお国の禄を食むお役目に付いていたので、行く行くは誰かがという事はあっても差し当たっては難しかった。 上総の日頃見せていた性格から自害も考えられたが、開拓者を帰した後、奥の書斎で二人だけで話し合った結果それはないと在実は言う。 何を話したかについては妻子にすら明かされる事はなかった。在真と在由は幾度と尋ねたが、いつまでも言を明らかにしない父に失望するしかなく。 彼の身が心配かと問われれば胸の内は複雑である。 罪を悔いて生きていなければ意味がない。勝手に自らを害する事でさっさと一人で楽になられては……自己本位な理由で命を奪われそうになり、大事な人を奪われた側はどうすればいいというのか。 先の妻、真名(まな)が病死という表向きは尚も変わる事はなかった。澱んだ灰色の噂が更に濃さを増そうとも。生家に健在の老親にも伝えられず。 何故ならば一方の当事者である冬華は家に置かれたままだからだ。 彼女は今も旗乃宮の妻であり、離縁を下される気配もない。 ただし冬華の処遇については、在真がこのままでいいと言ったのもある。 『母上』とその精悍な唇から紡がれる度に、苛まれている彼女の様子が最も厳しい罰である事を示していた。 在由の方がむしろ激しく嫌い、彼女に直接的な処罰を求めていたが在実がそれを受け入れる事はなかった。 ◆ 騒動に巻き込んでしまった開拓者は忙しくしているだろうか。 あのまま彼らを帰してしまって申し訳ない事をした。 「呼んでいいんだよな、親父殿」 「お前達がそれでいいと思うのなら」 在実のそんな返事に在由が忌まわしげな表情をする。彼はあれより変わった。 純真に向上に励み、町場のような家族の輪に憧れていた子供から。物足りぬ父と汚れた母を憎む微妙な年端の少年に。 箸を乱暴に置き、席を立つ。止めぬ父、止められぬ母。 「待てよ、在由」 「来ないで下さい!……散歩です、頭を冷やしてきます」 兄の腕も叩く勢いで振り払い。逃げ駆けるごとく家を出てゆく在由。 「俺も散歩!母上、残りは握り飯にでもしといてくれよ。後で食うからっ」 真名の周年の忌。家族行事としては何も行われない。それも歯がゆかったが、かといって在真も墓参するのは初めてである。 旗乃宮の墓は仁生にはなく、一族の出自である里に今も置かれていた。真名の遺骨もそこに納められている。 在由と話し合って決めた。世間では花見の頃合いでもある。こないだの開拓者を呼んで、お詫びの意味を込めて馳走を振る舞おう。そう話していたのに。 「来ないでください……って言ったでしょう!」 「俺を振り払うには鍛錬がまだ足りないな」 「どうせ私はお座敷育ちの人形です。兄上みたいには……だから兄上に継いで欲しいって言ってるでしょう」 「お前な、お行儀を育てる道場の後継ぎに何を言ってるんだ?お上仕えに返り咲くなら尚更だろう。俺なんか野育ちで恥ずかしくて出れねえよ」 在由が散り乱れた気持ちを整理した上で、何か他に目指したい道があってというのなら。俺はお前の為にこの一門を継ぐ覚悟をしてもいいが。腹いせだけでの言ではそう簡単に後継を預かるとは言えない。 家に戻ってよりの在真は以前よりは大人になっていた。名門後継の誉れは可愛い弟に継がせ、自分は今まで通りの風来坊と単純に考えていた節は、打ち砕かれた。 在由に預けるには重すぎる荷なのかもしれない。 自分はどうかというと、半端ま風来坊暮らしが性にあっていた。 筋骨にそこそこ恵まれた体で人足や天秤持ち、老いた行商人の一時的な相棒も務めれば季節になれば農村の収穫手伝い。 養育してくれた家には時折顔を出してはいたが、道場には心惹かれる事もなく。刀など自己流で護身に使う程度だ。 ともかく、いざ前日になって。 放り出して居なくなるとは。 (お前なあ……心配させる奴を増やしやがって) 「見つからないな……。畜生」 開拓者も仁生に到着する頃合である。 恥を詫びるつもりが、上塗り。 探し回るうちにギルド近くの路地で遭遇してしまった。 「どうしました、こんな夜分に。迎えというにはただならぬ様子ですが」 息を切らせた在真は、力が抜けたように肩を落とした。 |
■参加者一覧
大蔵南洋(ia1246)
25歳・男・サ
九法 慧介(ia2194)
20歳・男・シ
月代 憐慈(ia9157)
22歳・男・陰
明夜珠 更紗(ia9606)
23歳・女・弓
ベアトリクス・アルギル(ib0017)
21歳・女・騎
繊月 朔(ib3416)
15歳・女・巫
緋那岐(ib5664)
17歳・男・陰
ゼス=R=御凪(ib8732)
23歳・女・砲 |
■リプレイ本文 「在由さんの道場のお友達でしたら、私達が家を知っています」 「悪いけど、先に呼ばれた時に遺漏の無いように色々調べさせて貰ったんでな。これも俺達の仕事だ、気を悪くするなよ?」 在真の肩を抱くように腕を回し、にっと口元を緩める月代 憐慈(ia9157)。この際役に立つんだ、細かい事言いっこなしだぜ。 「朔、ここで手帳を開いても読めやしないから一旦ギルドに戻るぞ」 路地はようやく顔が判別できる程度の闇である。前と同じ道のり、提灯を借りて油を費やす程でもなかった。 さて充分な灯りがまだ照らしているのは不寝番が居るような場所しかなく。番屋に駆け込んで余計な説明するくらいなら、すぐそこのギルドまで戻った方が手っ取り早い。 「で。心当たり、それしかないんだな?」 「在由も今まで親に逆らうとか無かったんだろ。他の大人を頼りにするって感じじゃないよな」 緋那岐(ib5664)の言葉に頷き、その後に首を横に振る。 「そうだと思うけど……俺、戻ってくる前の事は全然知らないから」 「母親があれじゃ在由の気性なら無理な気がするな。って俺もこないだあいつとは少し話した程度だけどさ」 至極生真面目だったという印象。その分だけ思い込んだら何するか判らない、危なっかしい気性なのかもしれないけれど。 (放っておけないよな。真っ直ぐ育ってきた奴にあの騒ぎは酷だよ全く) 「親御はこの事を知っているのか」 まだ在由で良かったかもしれないとの想いは胸に仕舞い込み、尋ねる大蔵南洋(ia1246)。 弟に比べ多少は世知を心得た育ちと思われるこの少年が出て行ったというのなら捜しあぐねる。身ひとつでどうとでもなろう。 「出てった事は知ってるけど。最近よくある事だから俺もすぐ連れて戻るつもりだったし……」 「だが今回はそのよくある範囲に収まってないようだな。見る限り」 冷たい土の道をまっすぐと見つめ呟くゼス=M=ヘロージオ(ib8732)。 頷き後を続ける南洋。 「自宅から持ち出した物がないか確認した方が良いな。可能性は低いと思うが龍なり馬なりを御せるとなれば行動範囲も広げて考えねばならぬ」 「ちょいと場所貸してくれよ。危急の打ち合わせだ」 憐慈が奥へ声を掛けるよりも早く繊月 朔(ib3416)は手近な明かりの側で帳面を広げていた。住まいは散っている。同じ都内とはいえ存外遠くから通う子も居るようで。 頭を寄せていた面々は自分の担当をそらんじると即座に行動へと移った。 都の中で徒に笛など鳴らしても要らぬ騒ぎを増やしかねぬ。刻限を切って集合に決めた。 ● 「このような夜分に戸を叩き申し訳ございません。実はーー」 一体何事と寝乱れた姿で飛び起きた家族。一間の暮らし。道場に通ってるであろう年頃の男児も一緒。在由の家出捜索と説明を受けて何か言おうとするが唇の滑らかな母親が先回りし て、もどかしそうに俯く。 大仰な声を出す母親を懇切丁寧に宥めながら、これは一緒では難しいなと目の端で男児の様子を伺う明夜珠 更紗(ia9606)。 「いえあたしがお話を伺いますよ。この子はそりゃあ旗乃宮の坊ちゃんにお世話になってますけど」 できれば親御さんから少し離れて伺いたい話もあると理解を得られるまでには少々骨が折れた。 「ごめんなさいね。後で叱られたりしないよう……ですが今は時間が無いから」 ばつが悪そうな顔をしている男児の前に屈み、同じ高さで見つめる真剣な瞳に。 「お姉ちゃん……よっちゃんを家に連れ戻しちゃうの?」 「在……よっちゃんの話をきちんと聞いて帰る事に同意して貰ってからですよ。でもまずね、危ない場所に居たら保護しないといけない。それは、よっちゃんに限らない事」 目の届かない場所ではどんな悪い大人が居るか判らない。昼間安全だと思っている場所でも怪我をするかもしれない。 大事な友達に危ない目に遭って欲しくないよね。家を出る事は友達には話していたのかな。よっちゃんにとっても大事な友達なのですね。 何処に行くとは聞いていないと首を横に振る。でもよっちゃんが好きな場所は幾つか知っている。 「誰にも……誰にも会いたくないと思うんだ」 判っています、判っていますよと言葉には出さず強く頷く。決して目を逸らさずに。 (幼いなりに心の整理をしたいんでしょうね。上手く整理を付けるにはまだ難しい多感な年頃ですが) 「……とにかく、在由さんを見つけ出さないと」 目撃者が居ないか付近に聞き込みに回るベアトリクス・アルギル(ib0017)。 余計な、巡回のさぼりを決め込んでいた酔士も見つけてしまったが。関わり合っている場合ではない。 彼らがしっかりしていればもしやあっさり未然に防げていたかもしれないと怒りを覚えはするが。 火の用心にも既に遅い刻限。人通りといえば店仕舞いの屋台引きが疲れた顔をしているくらいで。 在由のような子供が歩いていれば目立つだろうが情報は得られない。今日の分に限っては。 この頃夜歩きが増えていたが、たいがい兄弟らしき少年が一緒で賑やかに口喧嘩していたというのは在真の事だろう。 (表通りを避けた……連日の夜歩きで人の気配がある場所は把握しているくらいの聡さは持ち合わせているでしょうか) そういう賢さと見合うだけの分別を育てるのは誰が担っていたのか。父親の顔を浮かべ、母親の顔を浮かべ溜め息が洩れる。 (戻りましょう。何処か行き先の情報が得られてれば良いのですが) 在真を連れて聞き込みに回っていた朔。 在真にはとにかく弟の身を心配する兄という点にだけ徹して貰い。 「あ、憐慈さん。そちらはどうです!?」 「鼻っ柱強い奴で噛み付かれる剣幕だった。まぁ在由をけしかけたのが子供達という事は判った。けしかけといて何にも知らんと来たがね」 最後にはわんわん泣かれたが、どうにも本当に行き先を知らない事は判った。 「そっちの首尾は?……だろうな。で、その子が言うにゃ更紗の向かった奴が当たりか?」 朔の尋ねた先は唯一の女児。幾つかの場所と在由が一番信頼している子が誰か教えてくれた。 「どれも道場から離れているので絞られているといいのですが」 門の前ではむっつりと南洋が腕を組んで待っていた。冬華は話を聞くなり卒倒するし、在実は埒が明かぬ。 そこまで頼んでいない。いや依頼人は貴殿ではなく在真で、確かに頼まれている。つまらぬやり取りだった。 冬華を介抱し、屋敷内を調べさせている内に他所へ向かう時間も浪費されてしまった。 (年端もいかぬ者に理解しろというも無理があるが。それを導くべき大人がこの体たらくでは) 龍や馬の扱いは学ばせていない。家の金目の物も恐らくは持ち出されておらぬ。 在由の財布は無いが、子供の小遣い。駄菓子を友達に奢れる程度しか持たせていないという。 壁に貼られていた紙が破り取られていたが。父が手習いの段階ごとに書いた免状。 (焼き捨てにでも行ったか……すると誰かの家という線は薄いか) 「何処も物騒だってのに……都の外か!」 整合するに更紗が聞いてきた場所が一番濃い線だろう。郊外林中の廃屋。 ● 「在真……このような時に聞くのも何だが」 何故、お前は一度家を出たんだ? ゼスの言葉は聞こえたか聞こえなかったか。いや答えを考えてるようにも見える。 言葉を選ぶというより、聞かれて何故だろうと自分でも考える顔。 「上総が鬱陶しかったから……かなぁ?あんな事は知らなかったんだけど」 養父母はいい人だったし、親父もしょっちゅう文をくれたし。居ても良かったんだけど。 でも知らない人と一緒に居る方が居心地良かった。仁生に帰りたいとか思わずに済むから。我侭言わずに済むから。 「おじさんもおばさんも判ってくれてる感じだったけど。お互いに作り事みたいでさ」 結局、本家から預かった坊ちゃんでしかなかった。上総は特にそうだった。道場の奴らにもそう扱わせるんだ。 「最初から弟に継がせるつもりだったのか」 「その方がいいと思ってた。祝いに帰ってきてそれでめでたしだと思ってたよ」 「思ってた、か。今は?」 「在由をこんなとこに放り出して帰れるかってんだ」 「ふ……いい兄だな」 在由には近過ぎて、まだ彼の愛情が見えないのかもしれないが。恵まれている事に気付くのはいつだろう。 二重映しになるのはいつだって自分の故郷。自分はこれほど気にかけてくれる人が居ただろうか。 昼間なら視界も開けて心地よい緑の中で、腕白な子供達もささやかな冒険も楽しめるであろう。都の治安の圏内とも言える。 日暮れ頃には遊び過ぎて時間を忘れた子供が居ないか、見回りの士だって気の利いた者なら足を伸ばすかもしれない。 だが今は人の気配ひとつない。驚かす夜鳥の声さえもしない。虫も何かを感じて逃げ去ったかのごとき静けさ。 厭な予感がした。霊刀に念を込め、辺りへと瘴気を探る力を放出する朔。身体が淡く輝き、人の目には見えぬ結界がじわりと闇に広がる。 「アヤカシが……これは一刻の猶予もならない状況かもしれません!」 「在由、居るのか!居るならこっちに来い!」 在真の悲鳴に似た呼び掛け。走り出すがまだ止める必要はない、自分達より前に出さなければ。離れて置いてゆく方が危ない。 憐慈の握り締めた手から紫の光が洩れ、微かな線香のような煙が昇る。一行の目の先を夜光虫の灯りが共に急ぐ。 衣擦れ、鞘の走る音。地を駆ける振動。アヤカシの鳴き声が響く。こちらの存在に気付いたようだ。 「在真、俺の背後から離れるな。在由が居ても、いいな、決して飛び出すな」 硬石の声音で制し、狙撃銃を構えるゼス。息を呑み込む在真の気配を背中に感じる。獲物の影はまだ捉えられぬ。引き金に掛けた指先が解き放たれる瞬間を待っていた。 精霊が見せてくれる薄影。更紗にはそれで充分であった。研ぎ澄ませた心から注ぎ込む錬気。必殺の矢が闇を貫いて大仰な悲鳴を上げさせた。 ばさりと地面に落ち、それきり動かぬ。九法 慧介(ia2194)の刃が夜光を照り返し翻る。実戦的で尚美しい型。 光が地面にうずくまる在由の姿を照らす。仕立ての良い着物はボロ布になり頭を庇った腕は血だらけ。 南洋が引き付けたアヤカシは次々と討ち取られていき。 「在由さん、しっかりしてください」 治癒を施されても動かぬ。頭を抱えた姿勢のままぶるぶると震え、尿の臭いが漂う。 「兄にその姿を見られるのが嫌か。甘ったれるな、自分でしでかした事くらい毅然と受け入れる器量を持て」 なりふり構わず首を横に振りわめく在由にゼスの一喝。驚きに一瞬固まって、唇を噛み俯く子供の頭を憐慈がくしゃりと掻き撫でる。 「在真さんよ、少しだけ時間をくれないかね。この際、一切合切全部胸に溜まった泥でも炎でも吐き出させてやろうじゃないか」 な、俺達は外から来た人間だから。悪口だろうが何だろうが構いやしない。関係ねえんだ、ああそうですかって具合。木に出来た洞か何かと思って全部ぶちまけてしまいなよ。 にっと唇を笑みの形にした憐慈。 辺りが安全になった事は朔が確かめた。もう瘴気は周辺に凝固していない。 「言いたい事、言っちまえ。よし廃屋の中に行こうか」 しばらく二人きりで何を話していたのか。南洋は拾い集めた泥と血に汚れた紙束を手にして待った。 汚れを身に移した憐慈の袖が湿っている。出てきた時には在由は初めて会った時のような聡明な顔に戻っていた。 「ごめんなさい、召し物を汚してしまいました……」 「気にする事はないさ。まぁ花見に相応しくないってならおまえさんの兄貴の服でも借りるよ」 「そうしてください、是非に」 はにかんだような笑顔。 「皆様、兄上……ご心配お掛け致しました」 ● 桜の下、香る線香。草花の生命の匂い。 (純潔、か……) そよ風に揺られて墓石に降りかかる桜の淡い花びらを目で追って、友人の言を回想するゼス。 先程洗い流した際に見かけたまだ新しい灰。上総はここに寄ったのだろうか。 「進むべき道が見えぬなら、自らを律し、道が拓けるよう己を鍛える事です」 膝を正して生真面目な顔で諭すベアトリクス。 「大人は時に酒の力を借り、溜め込んだ思いを吐き出す。……どうだ、一杯」 更紗が差し出した黒朱に塗り分けられた小盃。蒔絵を散らすとまではいかぬとも重膳と共に見栄えのする品。 兄の顔を、そして憐慈の顔を見る在由。 「もしかして甘酒も初めてなのか?ぐいといってしまえ」 寝たら誰におんぶして欲しいか指名しとけよ、と茶化されて。 「あ、兄上お願いします」 子供扱いに赤面する在由に、桜茶と料理を嗜みながら笑う面々。 「いっそ二人でやればいいんじゃないのか、道場」 どちらも足りぬというなら力を合わせればいいじゃないか――。 |