【轟拳】協力要請
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: シリーズ
危険 :相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/04/02 21:04



■オープニング本文

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「少々込み入った依頼なのだが、まずは話を聞いてくれんか」
 泰国のとある街にて、依頼を受けた開拓者はそう話を切り出された。
 相手はガラン。八極轟拳と敵対する男だ。
 彼は地道に力を蓄え味方を増やしているらしい。開拓者達もその一員だ。
 だが、今回はとある門派との交渉をしてもらいたいという話。
 開拓者達は、まずその話を聞くことにするのであった。

 渦山派という門派がある。
 切れ味鋭い剣の扱いと、雷法と呼ばれる雷撃の気功術を得意とする攻撃的な門派だ。
 だが、その門派は数年前、大きく二つに割れた。
 剣の技こそ至高という渦山派剣宗と雷法を磨くことこそ本道と説く渦山派気宗に分かたれたのだ。
 剣こそ至高という剣宗、気こそ本道と説く気宗。
 この二つの争いは平行線を辿るかと思われた。
 だが、剣宗の筆頭と言われた男、楽軍(ガクグン)は突如として八極轟拳と手を結んだのだ。
 結果として剣宗が渦山派の主流となり、気宗は追いやられることとなる。
 だが、気宗の筆頭、漠杯(バクハイ)は八極轟拳と敵対し、傘下に入ることを否定する。
 結果、渦山派の気宗は滅亡寸前へと追いやられることとなるのだった。

 気宗筆頭のバクハイ先生は、老境にいたりてもその気の技は歴代随一と呼ばれる名手だ。
 だが、それまでの苦労が祟り最近は病床に臥せっているのだという。
 そこを、どうやら八極轟拳に与した剣宗の拳士たちが狙っているようだ。
 彼らにとっては、敵となったかつての同門である気宗の拳士たち。
 それを殲滅せんと、今まさに迫りつつあるのだという。

「我々には少しでも味方が欲しい。そのため、気宗の面々を助けてくれないか」
 そういってガランが紹介したのは、まだ年若い少女だった。
 彼女はバクハイの孫娘であり、渦山派気宗の拳士でもある麗珊(レイサン)だ。
 まだ12才という年若さながらも、気の扱いにかけては優秀な拳士であるレイサン。
 彼女は、祖父を救おうとして助けを求め、その必死の行動がガラン達に届いたというわけだ。

「現在、気宗の面々は隠れ家に潜んでいるのだが見つかるのは時間の問題だろう」
 ガランは地図を示し、その隠れ家のある山中を示した。
 現在、八極轟拳の一員と化した渦山派剣宗の面々はその場所を探し山中に散っている。

「……開拓者の皆さんは、義侠心と功夫を併せ持つ武侠たちだと聞きました」
 レイサンはそういって貴方たちの顔を見る。
「どうか、我々を助けてくれないでしょうか!?」

 さて、どうする?


■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034
21歳・女・泰
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
劫光(ia9510
22歳・男・陰
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔
緋乃宮 白月(ib9855
15歳・男・泰
迅脚(ic0399
14歳・女・泰


■リプレイ本文


「麗珊殿、秘伝は易々と他人に漏らせるものでは無いと重々承知だが、渦山派について教えてくれないか」
 開拓者一同を先導して進む麗珊に問いかける羅喉丸(ia0347)。
 開拓者達一行は、麗珊の祖父・漠杯師が待つ隠れ家に向かっていた。
「いえ、今回は我々を救っていただくわけですからお教えしたいのですが……」
 緊張した面持ちの麗珊はそう言って口ごもった。
「でも私はまだ若輩ですから、渦山派の秘伝は分かりません。それに剣宗の技にもあまり詳しくはないんです」
 ゴメンナサイ、とすまなそうに言う麗珊。
「でも基本なら分かります! これでも一応渦山派の拳士ですから」
「うむ、それで十分だ。少しでも手の内が分かれば、やりようがあるしな」
 羅喉丸の言葉に麗珊は頷いて、説明を始めるのだった。
「構えは左に剣を。接剣の形で逆手に構えた形が基本となります」
 麗珊は左手に持ち、剣を逆手に刃が腕に沿うように構えた。
「右手は剣指です。ここから拳か雷法へと派生します。基本は掌打を使うのですが……」
 彼女ら渦山派気宗の特技はこの雷法だという。構えながら麗珊は細々と説明して。
「ふム。それが話に聞く雷法かァ……拳士からすると、厄介な技だナ」
「うん、全くだね。でも、ボクは興味があるから、後で色々教えて欲しいな」
「ま、敵が雷法の得意な気宗の方じゃなくテ、良かったナ。術を避けるのはしんどいシ」
 梢・飛鈴(ia0034)と水鏡 絵梨乃(ia0191)は麗珊の説明を聞きながらうなずき合うのだった。
 そして一行は隠れ家近くへ。
「ちょっと待ってくれ。先に人魂で偵察してみよう」
 劫光(ia9510)が人魂で隠れ家周囲を窺う。
「……敵の姿は無いな。どうやら間に合ったようだ」
「良かった……」
 ほっとして笑みを見せた麗珊とともに、一同は隠れ家へと到着した。


「麗珊……助けを呼んできてくれたのだな……」
「お祖父様! 無理なさらないで……」
 ごほごほと咳き込みながら体を起こす老人。やせ細った老拳士は、麗珊の手を借りて体を起こした。
 漠杯はとても小柄な老人であった。彼は体を寝台の上で起こすと、じっと開拓者達を見つめて。
「漠杯先生ですね。ジークリンデと申します。よろしくお願い致します」
「劫光だ。宜しく頼む」
 挨拶をするジークリンデ(ib0258)や劫光ら開拓者達。それに対して漠杯は、
「……病の身故に、床を離れられぬ不作法をお許し下され」
 麗珊の手を借りて体を支えた老人は居住まいを正して。
「この老骨だけであれば戦いで命を落とすのも悔いは無いのだが……」
「お祖父様! そんなこと……」
「ああ、すまないね麗珊。だが、これでも一門を守る拳士だ、覚悟はある……」
 そういって漠杯は咳き込み言葉を切るが、改めて開拓者に頭を下げて。
「しかし、我ら気宗の弟子たちは麗珊をはじめ若い者ばかりだ、彼らのためにも力を貸してくだされ」
「ああ。任せろ、協力は惜しまない」
 劫光をはじめ、開拓者は強く頷いて助力を約束するのだった。

 ジークリンデは紅茶と菓子で門弟らを労いすぐさま隠れ家の周りに罠を張り始めた。
 慌ただしくなる隠れ家周辺。だがそんな中で、飄々と隠れ家の前で座り込む男が1人。
「……開拓者がついたと知って馬鹿正直に各個撃破されるかどうか……」
 魔槍砲に寄りかかりながら、鷲尾天斗(ia0371)が呟けば。
「オイオイ、そんな調子で大丈夫カ?」
「あんまり気を抜いていると、痛い目をみるよ?」
 梢と水鏡は、鷲尾の様子を見て軽口を叩く。
「なぁに、爺さんには興味無ェが、麗珊のために戦おう!」
「……そういえばお前はそういうヤツだったナ」
「やる気があるんなら良いけどね……で、大丈夫?」
 苦笑する2人に対して、鷲尾はのっそりと立ち上がってぐるりと周囲を見回すと。
「おう、心眼には引っかからねェな」
 そんな言葉に、歴戦の開拓者等はうなずき合って。
 そして開拓者達は先手を打って行動を起こすことにするのだった。

「むむ、恐ろしい少年幹部に雷法も使える渦山派剣宗……どれも恐ろしいですね」
 小柄な迅脚(ic0399)はそういいながらもぐっと拳を握る。
 まだ若くともさすがは開拓者だ。気合い十分なのか、と思われたのだが……、
「……どれにも勝てないかも知れない……どうしよう」
 しょんぼりと肩を落とす迅脚。たしかに、今回も歴戦の拳士が仲間として参加しているのは事実だ。
 だが、己を知る事もまた強さ。敵との戦いにおいては、大金星もありえるもので。
「護衛は……守りきれる自身がありません。こちらから討ってでましょう」
「ン、その意気だナ。じゃ、そろそろ出るとしようカ」
 迅脚の言葉に頷く梢。彼女は枝の上に飛び乗って。
「各個撃破出来れば良いんだが……」
 続いて羅喉丸。梢と付かず離れずの距離を保ちつつ森に進み、続くのは緋乃宮 白月(ib9855)と迅脚。
「緋乃宮さん、ご一緒して良いですか?」
「うん、そう言う事なら協力して立ち回ってみようか、僕の武器はこの布なんだけど……」
 2人は先行する梢と羅喉丸を追いかけつつ立ち回りを確認するのだった。


 ガクグン率いる剣宗は、総勢三十名ほど。
 それが5人ずつほどの集団に別れて気宗の隠れ家を探っていた。
 相手は未熟な気宗の拳士数人と病床のバクハイ師だけだ。場所が見つかれば殲滅は容易い。
 そう考えていた剣宗の門弟達だったのだが……、
「……居たナ。5人、カ……」
 樹上でその5人を見付けた梢。彼女は後方に控える羅喉丸や迅脚、緋乃宮に合図を送る。
 作戦はただ一つ、速攻だ。
 梢は、懐から拾っておいた石を取り出して投擲。石は五人組の背後にぽとりと落下。
 思わず数人が振り向いたその隙に、4人の開拓者は一気に襲いかかった。
 まずは梢、樹上から枝を足場に飛び込んで、そのまま脳天に旋蹴落。
 続いて羅喉丸。隙を突いての蹴りを1人の鳩尾に。
 残る3人が気付いたときには、彼らの間合いに緋乃宮と迅脚が踏み込んでいた。
 緋乃宮は黒夜布を奮って2人を同時に一撃。倒しきれないが、それで十分。
 1人に飛びかかったのは迅脚。一撃の軽さを補う連打で1人を倒す。
 残りは2人、1人に梢の連環腿。もう一人には羅喉丸の骨法起承拳。
 声も立てずに敵五人は昏倒するのだった。

 羅喉丸や緋乃宮は倒した敵から情報を引き出すことにした。
「そうですね、まずはガクグンの居場所について教えて貰いましょうか」
 緋乃宮はそういって縛り上げた敵に問いかける。彼らは技量の差を知って観念したのか、
「……ガクグン様は、10人ぐらいの手勢とともに後方に……」
「ならば次はあの少年幹部についてだ。なにか知っているか?」
 続いて問いかけたのは羅喉丸だ。彼はいろいろと気になることがあるようだ。
 だが、帰ってきたのはさっぱり知らないという答えだけ。
 ならば次の敵集団を倒そうとする開拓者、彼らを遠くから見つめる一団があった。
「……足止めを」
 ほど近い小高い丘から開拓者をめざとく見付けて、そう告げたのは少年幹部であった。
 黒と銀の装束に、小手と脚甲には紅い宝玉。特にその脚甲からは威圧感じみた鬼気がにじみ出ていた。
 彼は、まだ幼さの残る顔に、表情すら浮べずに部下に指示を告げて。
 結果、15人の剣宗門弟が彼ら4人の元へ。
 残るガクグンと9名の門弟が、隠れ家をさらに探すため別行動を開始した。

「み、皆さん! どうやら囲まれてしまったみたいですよ!」
 もっと仲間を連れてくるべきだったでしょうか、と半泣き気味の迅脚。
 彼ら4人の開拓者は、剣宗門弟15名に囲まれていた。
 4人対15人。本来なら迅脚が取り乱すようにとても分の悪い戦いだろう。
 だが、そんな迅脚に対して、
「んまあ、囲まれてしまったガ、こっちに敵主力を引きつける目的は果たせたナ」
 懐から苦無を取り出してこともなげに言う梢と、
「ふむ、見たところガクグンはここに居ないようだ。こいつ等を倒して隠れ家に戻ろうか」
 ごきごきと拳の骨を鳴らして羅喉丸も言い放った。
「速攻で攪乱しましょうか。迅脚さん、援護しますね!」
「こ、こうなればやるだけやってやるです! アチョオー! ホアタア!」
 そして、緋乃宮は黒夜布を翻し、迅脚は怪鳥音とともに包囲に切り込んだ。
 15人の剣宗門弟は、たった4人で刃向かってくる開拓者に驚いた。てっきり降伏すると思って居たのだ。
 そして彼らはさらに驚くことになる……開拓者の、あまりの強さに。


「……来やがったな。オイ、陰陽師の兄ちゃんよォ。こっちに来てる奴らは仲間じゃねぇよな!」
「ああ、敵だ……ガクグンの姿もある」
 立ち上がって魔槍砲を構える鷲尾に、劫光は応えた。その言葉に鷲尾はにやりと笑うと、
「ハハ! やっと出番だな! 美少女の味方に付いたガチロリの怖さ、思い知らせてくれるわァ!」
 と呵々大笑しながら、宣言するのだった。
「周囲には、罠を仕掛けてある。ここを動かないでくれ」
「麗珊様は漠杯先生のお側に。ここは私たちが守りますから」
 劫光とジークリンデは、改めて隠れ家の戸を閉ざして迎撃に出る。
 そして、とうとうガクグンとその配下らが隠れ家付近まで到着した。
 腕の立つ弟子達を集めてきたようで、隠れ家を守る開拓者に敵はすぐさま襲いかかってくる。
 そこで発動するフロストマインと地縛霊。ジークリンデと劫光の設置した罠、だが倒すには至らない。
 他の門弟は、即座に罠を飛び越え瞬脚で一気に距離を詰めてくる。
 迎撃するのは水鏡と鷲尾、そして剣を構えた劫光だ。
「簡単に通すと思う? そうはさせないよ」
 瞬脚で追いついて真っ向から立ち向かう水鏡。
 門弟は剣を振るうが、水鏡はそれを回避して蹴りで反撃。
 しかし、なかなかに剣の速度は速く躱しきれなかった一撃が少しだけ彼女の髪を切り飛ばした。
「このままじゃ避けきれない、か……」
 そう呟いた水鏡は、手にしていた古酒を一口呷ると、ゆらりと酔拳の構え。
 一方劫光は、霊剣を構えて、
「所詮は病気で伏せっている者にしか手がだせんか? 流派の名前が泣くぞ」
「ほざけ! たかが4人。すぐさま切り裂いてやろう!」
 挑発をすればすぐさま剣指を向けて雷法を放つ門弟。
 気宗の雷法には及ばないが、その一撃は真っ直ぐに劫光を穿つ。だが劫光はそれも何処吹く風で、
「雷法恐るるに足らず。なら剣の流派、どれほどのもんか、見せて貰おうか?」
 九字護法陣の防御で凌いで、すぐに霊剣で反撃。見事な剣捌きで逆に追い詰めていくのだった。
「大技は打てませんが……こちらも雷の技で反撃と致しましょう」
 そして、罠を抜ける門弟等をジークリンデのアークブラストが狙い撃ちにしていた。
 仲間を巻き込みかねないサンダーヘヴンレイは使えないが、罠にかかった敵を雷が直撃。
 じりじりとガクグンの部下達は劣勢へと向かうのだった。
 そして、真っ向からガクグンとその門弟を足止めする鷲尾。ガクグンを見付け狂笑を浮べ、
「なァ! 大将首だろ!? 大将首だろお前! だったら首置いてけ!」
 その鬼気に押されたのか門弟達が数歩後ずさるが、すぐに鷲尾は狂気を押し隠した。
「……と思ったがよゥ。美少女が居るンでなァ。首はイラン、その代りフルボッコにしてやんよォ」
 その言葉と共に、魔槍砲片手に一気に突進。門弟の1人に真っ向から切り結ぶ。
 斬撃を槍でいなして砲撃で反撃、距離を取れば短銃で雷法を牽制。
 ガクグンは、予想外の開拓者の強さに歯噛みするのだった。

「やあああ! 一撃で倒せないなら巻き込んで一緒に倒すだけです!」
 迅脚は灯籠崩を放って地面に倒れこむが、そこからバネのように飛び上がり滝登の一撃。
「油断しましたね、隙だらけですよ!」
 がつんと下からの追撃で、1人を撃破。悶絶し倒れる門弟を見て、緋乃宮は構えをといて。
「……今ので終わりですね」
 彼らは、縦横無尽に暴れ回って15人もの門弟を倒しきったのだ。
「少しばかり手間取ったな、周囲に他に敵は?」
「気配はないナ。じゃ、戻るかネ」
「はぁっ……は、はい! 急ぎましょう」
 息を整えつつも健気に迅脚は頷いて、一同は隠れ家に戻るのだった。

「……すごい……」
 麗珊は、外の戦いを窺って思わず呟いた。
 隠れ家を守る開拓者は腕利き揃いで、あっという間にガクグンの手下は半壊した。
 残りはガクグンを含めたった4人。このまま形勢逆転するのは不可能だとガクグンは悟った。
 となれば、あとは逃げるしか無いのだが、
「逃げる気かァ!? そうはさせねェ!」
「うん、もうすぐ仲間も戻ってくるだろうしね」
 鷲尾と水鏡がじりっと距離をつめて牽制。
 ジークリンデは雷撃で、劫光も鍔迫り合いで門弟を1人倒して、ガクグンたちに向き直った。
 そこにやって来る迅脚たち開拓者4人。とうとうこれで年貢の納め時かと思われたのだが、
「……作戦は失敗だな」
 そこに瞬脚で飛び込んできたのは少年幹部とその部下達だった。
「新手か! 俺は砂迅騎の鷲尾天斗。貴様の名と流派は?」
 鷲尾の声に、少年幹部はただただ視線を向けるだけで何も言わずに、
 その少年幹部と部下達は時間を稼ぐために開拓者に拳を向ける。
 その隙に逃げようとするガクグン。しかし、少年幹部らはまだ開拓者を甘く見ていた。

 逃げようとするガクグンと門弟に、劫光とジークリンデの技が襲いかかる。
 さらに、迅脚と緋乃宮は、
「空・気・撃! ホゥアッタァ!!」
「逃がしませんよ!」
 空気撃と黒夜布で足止め。門弟は全員脱落し、残るはガクグンのみ。
 彼を守るように少年幹部とその部下が立ちはだかるが、
 梢は旋棍「竜巻」で風を放ち部下を牽制、敵を足止め。
「龍の彫られた古びた脚甲……やはり清璧派の……綾麗さんの物と似ているな」
 ちらりと羅喉丸がそう呟けば、無表情な少年幹部は一瞬だけ羅喉丸に射貫くような視線を向けて。
 だが、羅喉丸は逃げようとするガクグンを優先、彼の放った雷法に身をさらしてそれを受け止める!
「邪魔するんじゃねェ!」
 妨害する手下を自分事砲撃で吹き飛ばして蹴散らす鷲尾。その隙に、水鏡が一気に詰め寄った。
 反撃を酔拳でひらひらと避ける水鏡。だがガクグンは、蹴り技使いの水鏡の反撃を十分に警戒。
 蹴りがくると見て飛び上がって避けようとするのだが、
「なっ! 拳だとっ!」
 水鏡は鳩尾狙いの拳を一閃。蹴りに意識を向けさせた上での乾坤一擲の一撃に、ガクグンは昏倒。
 それを確認した少年幹部は、強烈な蹴りの一撃で、なんと梢と羅喉丸を蹴散らし退散するのだった。
「清璧派とは、どこか似ているがまるで真逆の攻め一辺倒の動きか……」
「ふん、歳の割にはイイ動きしやがる」
 羅喉丸と鷲尾はそう言いながら、少年幹部の行方を追いかけるが結局足取りは追えなかった。
 しかしガクグンを撃破し、漠杯と渦山派気宗を守ることには成功。
 新たな謎が増えたが、無事に依頼は成功するのだった。