外道退治 終
マスター名:雪端為成
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: 難しい
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/02/20 17:27



■オープニング本文

前回のリプレイを見る


 かつて、武天のちいさな領地を治める領主が居た。
 その父が名君だった故に、息子を甘やかし、結果息子は暴走し、討たれた。
 息子を討たれた領主は暴走し、自分の血に連なる遠縁の赤子を奪おうした。
 だが、その企みもまた防がれてしまった。

 それから、一年近くもの年が流れた。
 赤子をさらおうとしたあの夜以来、領主は姿をくらませた。
 居なくなったのは領主だけでは無い。
 領主と共に消えたのは、彼の付き従っていた手練れの兵士の一団と装備一式。
 では、その領主たちは何処に行ったのだろう?

 ……領主、いや元領主の名は、西塔・英龍(さいとう ひでたつ)。
 彼が再び姿を現したのは、去年の暮れである。
 彼は、自分の領地より持ち出した装備と兵士たちとともに、賊徒に身を落としたらしい。
 だが、ただの賊では無いようだ。
 特に開拓者を中心に襲い、訓練を受けた兵と優れた装備のためか高い戦力を誇っているようだ。
 すぐさま被害は拡大し、とうとうその首には賞金が賭けられたのである。

 特定の拠点を持たずに、身軽に動き回る盗賊集団となった英龍ら一味。
 人数は20名ほどで、元領主の英龍と10名ほどが正規兵出身の手練れ。
 残りは、歴戦の山賊や腕利きの浪人者だという。
 また護衛の少ない隊商や、開拓者集団のみを狙い、決して危険を冒さないらしい。
 それゆえに、この盗賊たちはの追っ手がかかってから二ヶ月、未だに逃げ続けてるという。
 だが、このたび開拓者に秘密裏に依頼がもたらされた。

「……いやはや、大分遅くなってしまいましたが、今回で決着を付けたいと思いましてな」
 そういって開拓者の前に依頼を持ってきたのは老人だった。
「ああいう輩を野放しにしておくと、我々のような力なき民たちが犠牲になるのじゃ。それはいかん」
 どさりと彼が机に置いたのは、普段の依頼よりは多めの報酬だ。
 そういえば、この老人どこかで見たことがある……たしか、武天は芳野にある大店の隠居。
 芳池酒店を営む住倉月孤という老人のはずだ。楽隠居の好好爺のはずなのだが……。
「ああいう獣のような輩は、早々に討たねばのう。というわけで、獣には罠じゃ」
 にやりとほほえむ老人の目には、どこまでも酷薄であった。
 そして語られた依頼の詳細は、次のようなものだった。

 質素な荷馬車数台による隊商が用意される。
 これには、芳野のいくつかの商店から高級品が満載され、巨勢王が領する此隅へと向かう。
 この情報は、確かな筋を通じて、すでに英龍が率いる盗賊団へと伝わっている。
 これを開拓者が護衛することになる。
 人数的には不利だろうが、それを補うために一応依頼主が用意したものがある。
 それは高級品に紛れて荷馬車に積まれた宝珠砲だ。最も小型の物ではあるが、それが5門。
 この状況で、盗賊を返り討ちにするのがこの依頼の目的である。

「依頼が首尾良く果たされ、西塔英龍が討たれれば、報酬に加え賞金首も皆様方の物です」
 依頼人である、芳野の住倉月孤という老人はそういって、説明を締めくくった。

 さて、どうする?


■参加者一覧
静月千歳(ia0048
22歳・女・陰
シュラハトリア・M(ia0352
10歳・女・陰
辛島 雫(ia4284
20歳・女・サ
ネオン・L・メサイア(ia8051
26歳・女・シ
ザザ・デュブルデュー(ib0034
26歳・女・騎
猫宮 京香(ib0927
25歳・女・弓


■リプレイ本文

●街道にて
 街道を行く大きな馬車。その周りに数名の護衛。
 天候は肌寒く、遠くに見える山々の麓には雪が見える。
 冬の街道を進む一行は、獣への罠だ。
 守る護衛は女ばかり、そして人数は少ない。
 積んでいる荷物は高級品ばかり、これを知れば用心深い獣とはいえ興味を覚えるだろう。
 だが、獣はただの獣では無い。
 用心深く、手練れの部下を連れた暴虐な獣だ。
 果たして、今回の作戦は上手くいくのだろうか……。

 街道から離れた山中の廃屋、そこに獣たちが居た。
 首魁は元領主、西塔英龍だ。
 勇壮な名、それも名君であった彼の名が与えたものである。
 だが、彼は名君であった彼の父を超えられなかった。
 重圧に押しつぶされ、歪んだ愛情を自信の子に注ぎ、そしてすべては奪われた。
 領地すら失われ、すでに彼は流浪の身どころか賞金を賭けられた犯罪者である。
 だが、そんな状況を元領主は楽しんでいた。
 もう重圧も無ければ彼を縛る鎖も無い。負うべき責任も無ければ、果たすべき責務も無い。
 彼は自由だった。
「……おい、獲物の情報は本当なのか?」
「はっ、物見を出しましたが、荷馬車と護衛が来るのは確実なようです。ですが罠の可能性も……」
「くどい」
 元領主は部下の発言をぴしりと封じた。その目は半ば狂気に濁っている。
「たとえ罠だとしても何を恐れることがある。よほどの相手でなければ返り討ちにすれば良い」
「し、しかし……」
「それに、手に負えなければ、また身を隠せば良い。捨て駒ならばいくらでも居るのだからな……」
 そういってにたりと笑う元領主。
 開拓者を蹂躙するのも楽しければ、手下を捨て駒として使うのもまた一興。
 いびつに歪んだ元領主は、そう考えながら濁った視線を部下に向け、出発の準備を命じるのだった。

 街道を進む馬車の一行。先頭はひょろりと背の高い女性だ。
 馬車のくつわを引きながら、その薄く開いた瞳で静かに周囲を見渡す彼女は辛島 雫(ia4284)だ。
 無口な彼女は、一言も言葉を発さずに一行の先頭を進んでいるのだが、
「……厳しい戦いになりそうだな。とはいえ、ああいう輩を放置しては禍根が残る……」
 辛島の横に並んでそう語りかけたのは黒髪の女性だ。
 彼女が歩きながら取れる軽食を辛島に渡せば、辛島は受け取りながらじっと見つめ返して、
「ああ、自己紹介がまだだったな。ザザ・デュブルデュー(ib0034)だ、よろしく」
 ザザのその言葉に、辛島は頷いて応えるのだった。
 街道を進む道行は平穏だった。
 だが、この街道は最近賊が出現するという噂から、滅多に他の旅人も隊商も通らないよう。
 ひとけのない街道をただただ進む一行の話題は自然と、今回の依頼のこととなるようだった。

「随分と長いこと、姿を眩ませていていたものだな」
 長頭巾を目深に被り、変装しているネオン・L・メサイア(ia8051)がそういえば、
「ええ、全くですね。前回では仕留めきれませんでしたが、それを取り戻すチャンスですね〜」
 同じように長頭巾を被って顔を隠した猫宮 京香(ib0927)が応えるのだった。
 二人は長きにわたるこの案件に関わった開拓者たちであった。
 前回では倒しきるに至らなかったので、今回こそはとの思いがあるのだろう。
 そんな二人に応えるのは、彼女たちと同じく、元領主との長い戦いに関わってきた開拓者たちだ。
「しかし、盗賊に身を落とすとは……領主を続けても、暗殺されるだけと悟ったのでしょうか?」
 首をかしげて静月千歳(ia0048)が言えば、馬車の荷台から応える声が。
「領主さんはぁ、きっと反撃にあってびびったのよぉ」
 けらけらと笑いながら応えたのはシュラハトリア・M(ia0352)だ。
 そんなシュラハの言葉に静月は頷いて。
「自暴自棄になっているのか、はたまた恐怖で暴走しているのか……どちらにせよ、甚だ迷惑な相手ですね」
「うん、人数的には心細いけどぉ……今度こそぉ、ばっちり仕留めないとねぇ」
「ええ、盗賊に身を落としたなら、人目を憚ることなく『討伐』出来ますからね」
 さらりと怖いことを言いつつ、にっこりとほほえむ静月。
 どうやら開拓者たちには油断も恐れも無いようであった。

 さらに街道を進めばそろそろ賊が現れそうな場所が近づいていた。
 あまり道の状態は良くない。それもおそらくは最近賊が良く出るからだろう。
 そんな中、馬車が轍に車輪を取られ、がたんと大きく揺れた。
「……大丈夫でしたか? 扱いは気をつけて下さい。『積荷』に何かあれば、事ですから」
 静月が不安そうに馬車の方を見上げれば、幌の下から顔をだしたのはザザだ。
「うむ、『積荷』は大丈夫だ。準備もあと少しで整うだろう……あとは、いつ来るかだな」
 そういってザザはぐるりと周囲を見渡すのだった。

●襲撃
「それにしても、食えない相手ですね〜」
「ん? それは元領主のことか?」
 周囲に視線を向けながら、ぽつりとつぶやいた猫宮に、思わず尋ねるネオン。
 だが、そんなネオンに猫宮は首を振って。
「確かに元領主さんも食えない相手ですが、依頼人のおじいさんの事ですよ〜」
「ああ、確かにな。おそらくあの老人、我々が女ばかりなことも折り込み済みなのかもしれないな」
「ええ、それにそれだけでは無いと思いますよ〜」
 猫宮の言葉に思わず首をかしげるネオン。そんなネオンに、猫宮は荷台を示して、
「宝珠砲……あれは武器としても驚異ですが、おそらく逃亡を続ける賊からすれば……」
「なるほど。のどから手が出るほどほしい宝でもあるってわけだな」
 ネオンの言葉に、きっとそうですよと猫宮は頷くのだった。
 そんなところをひょこっと馬車の上から覗いたのは、シュラハだ。
「あ、みんな注目ぅ。人魂で周囲を探ってたんだけど、どうやらいくつか小集団がこっちに来てるみたいよぉ」
 その言葉を聞いて、一同は急ぎ準備を進めるのだった。

 彼らの人数は少ない。しかも後衛4人に対して前衛が2人だ。
 数の上での絶対的な不利は免れないだろう。
 対して火力においては宝珠砲がある。しかもそれが五つもあるのだ。
 一発ずつしか発射できないだろうが、その有利は絶対的。ならば大事なのは何処で使うかだ。
 別働隊を作るのか。囮を使っておびき寄せるのか。十字砲火をしくために分散するのか。
 開拓者たちの作戦はどれでもなかった。
 自身たちの戦力の少なさを逆手にとって、敵を引きつけての集中砲火。
 荷を奪うつもりの敵集団が、遠距離攻撃を仕掛けてこないことを期待しての危険な策であった。
 果たして吉とでるか凶と出るか。それは実は今回初参加の前衛2人にかかっているのだった。

「宝珠砲の発射に伴う混乱を生かして一気に蹴りをつけるのが、この作戦の肝だな。責任重大だ」
 外套の下で、ナイトソードとベイルをしっかりと確認しながら、ザザはそうつぶやいた。
 彼女と、もう1人の前衛である辛島。この2人が混乱を利用して敵首魁を狙う。
 これが今回の作戦の最重要な点である。
 敵集団が、元領主一人の支配によって成り立っていることを知っているがこそ、司令塔を狙うこの策。
 その成否は、ザザと辛島の働きにかかっているのだ。
 ザザが辛島に視線を向ければ、辛島も静かに頷いて。
 短い間の依頼だったが、ザザは辛島が無表情なだけだと気付いていたようで。
「辛島殿、邪魔な相手の露払いは任せてくれ。共に、敵首魁へ。全力を尽くそう」
 静かに頷く二人の女剣士。騎士とサムライは、ただ決行の時を待つのだった。

 そして、盗賊たちはやってきた。
「ふん、罠があろうが関係無き事よ。まずは部下から進ませよ」
 元領主の英龍はそう冷酷に命じ、自分は最も遠方から静かに馬車の様子を窺っていた。
 たとえ馬車に手勢を伏せていたり、罠が仕掛けてあろうが巻き込まれるのは部下だ。
 いざとなれば自分は逃げることが出来る……。
 そしていよいよ賊たちが馬車に襲いかかるのだった。

「とりあえずは、罠にかかってはくれたみたいですよ〜。さあ、作戦開始です〜」
 声を上げながら襲いかかってきた襲撃者たちの数は15名ほどだ。
 軽くこちらの護衛の倍、それが五名ずつほどに分かれての襲撃だ。
 護衛役の猫宮は矢を放ちながらとっさに馬車の上へ。
「で、出た‥‥!? くっ、多過ぎる」
 そう言いながら逃げて馬車に昇るのはネオン。彼女の動きももちろん演技であった。
 馬車の上にはこれでネオンと猫宮。そこに布をばさりと跳ね上げて、静月とシュラハトリアが。
 陽光の下きらりと輝く宝珠砲。それが一斉に火を吹いた!
 射撃を担当したのは、ネオンに猫宮、そしてシュラハトリアだ。
 それぞれが盗賊の小集団に着弾。賊たちを巻き込んで一気に吹き飛ばす!
 その瞬間、元領主はわずかに躊躇した。
 まだこちらを射程には収めては居ないのだろう、今逃げれば助かるはず。
 だが、それを野心が邪魔をした。敵の手にある宝珠砲、それを奪えればさらに部下を増やせる。
 しかし、その迷いが生んだ一瞬の時間が命取りだった。

「残る2門は元領主のいる本隊に向けて……距離、少々遠いので修正を」
 静月は斬撃符と人魂で距離を再確認、それに会わせてネオンと猫宮が、最後の2門を調整。
 一瞬迷った元領主たちの集団へ、最後の火砲が放たれるのだった!

●決着
 一瞬の轟音と閃光、着弾の爆音と衝撃に元領主、西塔英龍は思わず膝をついた。
 耳がしびれるが、直撃は受けていない、周りの部下たちもまだ無事だ。
 おそらく周囲で砲撃を受けた部下たちも全滅はしていないだろう、ならばまだ勝機は……。
 だがそれは遅かった。その命令を発すること無く、一直線に彼のもとへやってくる姿がふたつ。
「汝……此処にて、死すべし……! 於於於於於嗚嗚嗚嗚嗚呼呼呼呼呼!!!」
 咆哮を上げて突貫するのは先頭の辛島だ。
 両の手で金剛刀を掲げ、立ちはだかろうとした部下をがっちりと切り結ぶ。
 その横手から、立ち直った新手が。しかしそれを受け止めたのは辛島と共に進んでいたザザだ。
 ザザはグレイヴソードで邪魔者を切り払い、アヘッドブレイクで盾を構え敵を押し出した。
 敵本隊はわずかに五名ほどだろう。全員が訓練を受けた正規兵崩れで、練度は高い。
 実力で言えば、ザザと辛島には並ぶかそれ以上だったのだが……。
「混乱の虚を突けば恐るるに足らん!」
 裂帛の気合いと共に、ザザが一人を打ち倒せば、さらに踏み込んだ辛島は回転切りを一閃。
 あっという間に、護衛の三名を切り倒して一気に元領主に迫る二人だった。

「……領主を辞めても、兵が付いて来るなんて。人望が有るんだか無いんだか」
 そう想いながら氷龍を放つ静月。砲撃で混乱した小集団を一気になぎ払い氷結させる。
 そこにたたき込まれるのは猫宮の乱射だ。
「援護は任せてください〜! ネオンさん、二人の援護は任せましたよ〜」
 猫宮は残敵掃討に選任するようで、乱射を使って混乱中の小集団を次々に射貫いていく。
「ふふ、集まってしまうといい的ですよ〜?」
 もちろん、後衛ばかりの四名だ。15名ほどの馬車周囲の部隊を残してしまえばかなり危険。
 だが、時間との勝負とばかりにそれを凌ぐ一行であった。
「領主さんへの攻撃は十分みたいだしぃ……これで弱っている子にとどめよぉ」
 にんまりと笑いながら蛇神を放つシュラハトリア。
 そう、実は後衛ながら静月と猫宮、そしてシュラハの三名でなんと15名の賊徒を足止めしているのだ。
 馬車を中心に全方位に散らばる賊たち。
 一斉砲撃でそれぞれ被害を受けたのだろうが、まだまだ健在。
 無傷な者はいないだろうが、動ける者は10名近くいただろう。
 だが、それを封殺しているのは彼らの技の組み合わせだった。
 静月の氷龍が動きを鈍らせれば、猫宮は命中力の低い乱射でも、多くの敵に被害を与えられる。
 そして弱った者から順に、シュラハトリアが蛇神で痛撃を与えていけば、三名でもしのげるというわけだ。
 そして残る一名、ネオンの仕事は前衛2人の援護だ。
「残るは2人……ふん、前回の隊長殿に元領主殿か……」
 きりりと弓を引き絞るネオン。彼女の視界には、元領主とその片腕と戦う辛島とザザだけが見えていた。
 背中は仲間に任せて、彼女はただ狙いを定めて。
「どれ、我も負けては居られないな。さぁ、此の矢を受けてみろ!」
 そういって鋭い矢を放つのだった。

 ザザと辛島の2人は、一転して苦戦していた。
 元領主もその片腕である部下も、かなりの手練れ。
 他の部下の援護が無いとはいえ、徐々に劣勢に追い込まれているのだ。
 だが、そこに飛来したのは、ネオンの矢だ。とっさにそれを鎧で受ける部下。
 しかし、ザザはその隙を逃さない。わずかに崩れた体勢を見て、グレイヴソードで一閃。
 狙いは敵の武器だ。刀を強打された部下、オーラドライブで強化されたザザの一撃は武器を飛ばされる。
 そして気付いたときには、ザザの返す一刀は彼を切り裂いていた。
 それを見ていたのは彼女だけでは無かった。
 崩れ落ちる部下を見て、強烈な体当たりで辛島の体勢を崩させた元領主、英龍。
 彼は単独で逃げるために、なりふり構わず背を向けて走り出そうとしていた。
 それを追いすがる辛島。
「於於於於嗚嗚嗚嗚嗚呼呼呼ッ!!」
 気合いのこもった咆哮が元領主を打ち据えるが、かろうじて抵抗、そのまま逃げる元領主。
 全力を尽くしたザザや辛島では追いつけないか、そうだれもが思ったのだが。
「逃がさん。獲物は大人しく狩られてしまえ……其の薄汚い心臓の鼓動、必ず我が仲間が止めてくれよう」
 ネオンの放った矢は、見事に英龍の足を貫いた。
 もんどり打って倒れる元領主、そこに辛島とザザが一気に襲いかかるのだった。
「あら、領主様の方は片付いたみたいですね」
「うん、残るはぁ。ここに居る人たちを退治するだけ、だねぇ。逃げないのぉ?」
 あえて英龍が捕まったことを高らかに言い放った猫宮とシュラハ。
 だが、それに対して逃げるかどうするか迷ったときにはもう遅い。
「貴方たちのすることが、少し派手すぎたみたいですね」
 静月は斬撃符を放ち、
「逃走、不許可……! 全敵……必滅……!」
 狂戦士と化した辛島に負われた残党は、あっという間に退治されていくのだった。

 そしてすべてが終わった。実のところ、ほぼ全員練力も尽きて疲労困憊であった。
 もし、残敵が逃げればそれもよいと思っていたのだが、旨く混乱を付けたためか全滅させることが出来て。
「これで、長かったお仕事もやっと終わりですね〜」
 猫宮の言葉に、一同は頷いて、ギルドへと帰路につくのだった。

 そして、無事賞金は全員に払われ、依頼は終わった。
 無法の領主は退治され、無事禍根は断たれたのである。
 表には決して出ない依頼だが、参加した開拓者たちだけは、確かな達成感を感じるのであった。