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■オープニング本文 前回のリプレイを見る 八極轟拳と闘う蒼旗軍を檄文が駆け巡る。 『時は来た。今こそ決起の時。囚われの仲間を取り戻し、八極轟拳を倒すための蒼き御旗を掲げる時!』 仲間たちが囚われている牢獄、その名も鬼哭塞。 ついにその鬼哭塞を攻める準備が整ったのだ。 今回、蒼旗軍の全兵力を投入して、この牢獄要塞を落とすつもりである。 すでに瑞峰という新たな領地へ八極轟拳の主力は移ったとは言え、鬼哭塞の周囲は八極轟拳の支配領域。 蒼旗軍は背水の陣でこの要塞を陥落させるために死力を尽くすつもりのようだ。 全軍の長は、蒼旗軍のまとめ役ガラン。 以前落とした無名関を後方との拠点として何とか後方からの支援を受けつつ蒼旗軍を維持している。 その背景には、玉麒麟号を駆る女商人シュンレイらの活躍があるという。 そして今回、ついに蒼旗軍の全力を賭して堅牢にして不落を誇る鬼哭塞を陥落させる準備が整ったのである。 不落の名を掲げ、鬼が哭くという物々しい名で知られる鬼哭塞。 それを作ったのは、現在蒼旗軍に匿われている老建築家、オウジュウである。 湖に浮かぶ島に作られた鬼哭塞は堅牢不抜。 だが建築家だけが知っている小さな抜け道が鬼哭塞には存在したのだ。 そこを今回開拓者は通って、直接内部に侵入することになる。開拓者達の役目は、牢獄の開放だ。 牢獄には数百人に及ぶ、反八極轟拳の拳士たちが囚われている。 獄卒たちの数は二百をくだらないだろうが、その隙を突いて牢獄を開放し混乱を引き起こさねばならない。 孤立無援で、はたしてどうすればこの難しい任務を果たすか。 それは全て開拓者の作戦と行動にかかっているのだ。 牢獄には幾多の罠もあり、優れた拳士たちも守りを固めているだろう。 素早く敵を撃滅する方法、注意を引くこと無く隠密で動く術、罠や扉、鍵を突破するための方策。 さらには牢に囚われた仲間たちの有用な活用や敵を欺き翻弄する方法。その全てが必用となるはずだ。 これが成功すれば、蒼旗軍はついに八極轟拳本拠地への足がかりと十分な戦力を手に入れることになる。 全ては、この一戦にかかっていると言って良いだろう。 さあ、どうする? |
■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034)
21歳・女・泰
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
朧楼月 天忌(ia0291)
23歳・男・サ
鬼島貫徹(ia0694)
45歳・男・サ
叢雲・なりな(ia7729)
13歳・女・シ
真名(ib1222)
17歳・女・陰
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)
10歳・女・泰
ローゼリア(ib5674)
15歳・女・砲
ライ・ネック(ib5781)
27歳・女・シ
嶽御前(ib7951)
16歳・女・巫 |
■リプレイ本文 ● 「隠密行動は苦手だけどよ……こんな格好は勘弁してもらいてェな」 装備の上から黒布をまとって、渋い顔をする朧楼月 天忌(ia0291)。 その黒布は梢・飛鈴(ia0034)が隠密行動用のために、とガランに用意して貰った黒い布の外套だ。 「ま、そう言いなさんナ。そろそろ大詰めだシ、奇襲を成功させんといかんからナ」 しぶしぶ身につけている天忌を見て、にっと笑う飛鈴。 開拓者達は、現在隠密行動にて鬼哭塞へ接近を試みているところであった。 「(みなさーん、静かにね)」 シノビの叢雲・なりな(ia7729)が、口の動きだけで後ろに続く開拓者に告げる。 先頭を進んでいたのはなりなと、ライ・ネック(ib5781)だ。 二人は静かに耳を澄ませて周囲の様子を探った。 シノビの忍眼と暗視が示すその先こそが、秘密の通路を出口。 周囲に気配が無いことを確認し終えた二人は、出口にそっと近付いた。 慎重に蓋に手をかけ、音を立てずに重いその蓋をそっと開ける。 すぐさま滑るように通り抜ける開拓者たち。すると遠くから喧噪が聞こえてきた。 それはガラン率いる蒼旗軍の主力が砦を攻めている砦攻めの音だ。 守りの硬い砦を前に、城攻めは夜を徹して行われるはずである。 しかし開拓者達だけは、ガランの果敢な鬼哭塞への攻めが囮であることを知っていた。 ついに作戦は始まった。あとは時間との勝負であった。 ● 開拓者達はこの要塞の内部構造を把握していたのだが、 「フム、やはり構造には手が加えられているな」 周囲に視線をやって、鬼島貫徹(ia0694)は小さく呟く。 この要塞は牢建築家オウジュウの設計後、多くの手が加わっているようだ。 「ならばどうする。そこらの者を捕まえて吐かせてる時間はないじゃろう?」 リンスガルト・ギーベリ(ib5184)が、カンテラの光量を絞りつつ聞く。 すると鬼島はにやりと笑って言い放った。 「なぁに、つけいる隙はある」 「じゃあ、ボクとローゼリア(ib5674)はグイルのところに向かえばいいんだね?」 水鏡 絵梨乃(ia0191)の言葉に鬼島は頷く。 「ああ、別れて行動した方が時間の節約になる。戦力は分散するだろうが……」 「わたしは、絵梨乃の腕を信頼してますわ」 「うん、ボクたちは大丈夫。新奥義もあるしね」 絵梨乃が古酒の瓢箪を掲げてみせて頷けば、残る開拓者達もその決意に応える。 そして二人は要塞の上部へ。 「我もすぐに向かう。くれぐれも気を付けるのじゃぞ……」 嶽御前(ib7951)は、すぐに闇に紛れていく二人の背に向けて無事を祈った。 さらに続いたのは、飛鈴とリンスガルト。 風を纏った二人は、滑るように駆け出すと砦の奥へ。二人が狙うのは、拷問吏カドラだ。 敢えて三つに分散する今回の策は、個々の力と技に頼った危険な策だ。 だが、それでも目的は果たさねばならない。 これを成功させなければ、蒼旗軍に勝ち目はないのだ。 ● 「一度本場の拳士って相手を相手取ってみたかったのよね」 ひらりと飛び出たのは真名(ib1222)だ。 いや、彼女は飛び出したのに、“何も飛び出さなかった”。 彼女は気配どころか姿さえをナハトミラージュで消していたからだ。 翻る黒布、一瞬で締め落として見張りを制圧。 「一番厄介なところは過ぎたな! おい、オッサン! もう暴れてもいいんだろう!」 「フン、抑えても聞かんだろう? 無駄な戦闘以外なら存分に暴れるが良い!」 吼えながら黒布を脱ぎ去って、刀を抜き放つ天忌。 暴れたくてウズウズしていたらしく、そのまま刀を一閃! 「っ!? し、侵入者っ!!」 「ハッ! 仲間は呼ばせねェぜ!」 天忌は見張りを一刀両断で斬り飛ばす。 「見回りの足音が前から来るよー」 「罠はこの道にはないようですし、小勢ならば迎え撃ちましょう」 なりなが超越聴覚で警戒すれば、ライは忍眼で罠を警戒。 天忌と真名が連携しつつ、一行は一気に牢獄最深部へとすすんでいくのだった。 牢への侵入者あり、その報告は砦内を駆け巡るかに見えた。だが、その報は届かない。 まずは、罠と見張りの撃破によって、敵の指揮系統が混乱していたこと。 もう一つは、幾つかの場所にライが火を放ったことでの敵の混乱を招いたことだ。 だが、最大の理由は幹部の2人が身動きがとれなかったからである。 「さぁて……今度はあんたがブチのめされに来たんカ?」 「貴様がカドラか。八極轟拳、貴様等にかける情は持ち合わせておらぬ。疾く地獄に堕ちよ」 飛鈴とリンスガルトの前に立ちはだかる拷問吏カドラ。 ぎろりと2人を睨み付ける不気味な双剣使いは、ぼそぼそとした声で呟いた。 「そうか……貴様らが侵入者か。他にもネズミがいるのか? ならば早く首を落とさねば……」 取り巻きの拳士たちとともに、2人の開拓者の前に立ちはだかるカドラ。 次の瞬間、カドラが動く。爆発的な加速からの鋭い突き、狙いはリンスガルトだ。 彼女は辛くも回避。八極天陣があったからこそ回避出来たが、カドラの突きは全て急所狙いだ。 「恐ろしく正確な突きじゃな! さすがは拷問吏といったところじゃ。気を付けるんじゃぞ」 「ふむ……ここまで来ると多少ハ歯ごたえのあるやつがいるナ」 反撃の一手は飛鈴。なんと最初から奥義の一撃、雷斬脚。 天を貫く強烈なケリの一撃にカドラも防御の構え。 他の幹部を2人も屠った飛鈴、その強さを侮ってはいなかったようでカドラは一旦距離を取る。 そこに周囲の取り巻きがなだれ込み乱戦となった。 襲いかかる取り巻きを、蹴散らし殴り飛ばし、切り倒す2人。 機を窺うカドラ。じりじりと時間は過ぎていくのだった。 そしてもう一方の幹部。その所にも伝令が飛んだのだが……。 「獄長! 報告がっ……ぐへぇっ!!」 応えたのは銃弾だ。獄長グイルの前に立ちはだかる絵梨乃とローゼリア。 伝令を打ち抜いたのは援護役のローゼリアの弾丸だ。 「ふん、邪魔をさせないというわけか……良かろう!」 吼えるグイル。髭を蓄えた巨体の拳士が構えたのは、二丁の鞭だ。 「とっとと貴様ら2人を絞め殺して、報告の元を確認するとしよう!」 「ふふん、そう簡単に倒せるつもり?」 「おなご2人を殺さねばならぬとは、勿体ないが……我が鞭、喰らうが良い!」 グイルはまずは絵梨乃を打ち据えようと襲いかかってきた。 そこにぴたりと狙いをつけるローゼリア、援護の一撃。 だがそれをグイルは回避した! 巨体に似合わぬ鋭い動き、さすがは泰拳士。 回避からすぐ攻撃に転じるグイル。 強烈な鞭が絵梨乃へと嵐のように襲いかかるが、それを前に彼女は古酒をごくり。 そして、そのまま鞭の嵐へとひらりと身を躍らせた。 舞うような動き、ジプシーの舞のように情熱的で蠱惑的な動きで絵梨乃はひらりと鞭を回避。 「なっ!? 貴様酔拳使いかっ!? だがその技……」 さらなる鞭の連撃が絵梨乃に襲いかかる。それを今度はゆったりと受け流す絵梨乃。 舞の動きは変化して、まるで巫女の神楽舞のような無駄を廃した緩やかな動き。 最低限の動きで回避し絵梨乃はとうとうグイルの間合の内側へ。 獄長グイル、慌てて巨体を活かした踏みつけ攻撃。しかしそこにローゼリアの援護射撃! がちんと鎧の表面を削った射撃に一瞬だけグイルは怯むが、 「ふん、そのような豆鉄砲、聞かぬわっ!」 そう吼えて、意識を絵梨乃に戻すと、彼女はすでに懐に。 「だったらこっちの鉄砲は? 結構効くと思うけど」 「がぁああ! そのような細腕の打撃で我輩の鎧を打ち抜けると思うかっ!」 ぴたりと銃の形に構えた指をグイルに向けた絵梨乃。だがグイルは吼えて蹴りを放つ。 紙一重で躱す絵梨乃、指鉄砲をぐっと握ると砲撃のような拳の一撃! 「がはっ!!」 ぶっとぶグイル。流石に頑丈で、数歩下がって耐えきった。だが口からは一筋の血。 絵梨乃は、様々な開拓者達の動きや技を模してそれを酔拳に取り入れていたのだ。 名付けて酔仙人骨拳。絵梨乃の奥義を前に、グイルは血を拭い警戒を高めるのだった。 ● 「あんまり威力が乗らないんだけどねっ! そこまで時間は稼げないよ?」 氷龍を追っ手に向けて放ち真名は声を上げた。そこは牢へと繋がる通路の一つだ。 現場は混乱し、追っ手の数はまだ少ない。だが着々と数は増えている。 そこを支えているのは真名ともう一人。 「こっちだ雑魚ども! くらいやがれえぁああああ!」 敵陣に飛び込んで回転切り、さらに咆哮で敵を引きつけ大暴れ。 獅子奮迅の活躍をする天忌だ。 この二人が追っ手を防いで稼ぐその貴重な時間に、牢屋の開放が進んでいた。 ライやなりなが鍵を解除。続いて、持ち込んだ食料や治療品、嶽御前の治癒の術による回復。 牢は開いた。持ち込んだ資材や治療品、嶽御前の奮闘は大いに効果を発揮した。 その結果大半の囚われの拳士は、戦える程に力を回復したのだが……。 「薬も効いたようじゃが、このままではこの者たちは戦えぬ」 「ああ、心が折れているな。このままでは使い物にならん」 どうしたものかと見上げる嶽御前を前に、吐き捨てる鬼島。 囚われの拳士たちはのろのろと立ち上がろうとした。 だが、闘えるほどに彼らの闘志は高くない。このままでは犬死にだろう。 長い投獄生活が彼らの心に敗北を刻んでしまったのだ。 だが、時間が無い……そんな時、彼らの前に鬼島が傲然と立ち、言い放った。 「貴様らがここに閉じ込められたのは、八極轟拳の連中のせいなのか? 否!!」 追っ手が迫る中、黒衣の鬼島は豪奢な刀を手に、負け犬と化した拳士たちに吼えた。 「貴様らが牢にいる理由、それはただ単純に貴様らが弱かったからだ!!」 容赦ない一言に、拳士たちはぎりりと歯噛みする。微かに残った矜持と誇り。 心は折れても、それだけは残っていたようだ。 「貴様らの誇りは、轟拳に踏み躙られた。ならば己が武威で失ったものを取り戻して見せよ!」 その言葉とともに、ライは武器庫を探りかき集めてきた武具をがしゃりと積み上げた。 無言で、その武具を手に取る拳士たち。 拳士たちは、最後の誇りを自らの手で取り戻そうと動き出したのだ。 「援護します!」 ライの鋼線が轟拳の拳士たちを怯ませた。 そこに躍りかかったのは囚われていた仲間の拳士たち。 コレまでの鬱憤を晴らすかのように怒濤の勢いで、反撃を開始。 ライの鋼線に続き、氷龍の一撃が敵の足を止める。 「間に合ったね」 これで押し返す徒ばかりに真名は氷龍。合間に果敢に布を延ばして攻撃を加える。 さらに、大暴れしているのは天忌だ。後ろを気にしなくていいとなれば彼の本領発揮。 「死にてェやつから前に出な!」 積まれている資材や柱ごと切り倒して敵を巻き込みながらの大暴れだ。 だが、そこでもまだしも多勢に無勢。 疲弊していた囚われの拳士たちでは今一歩力が及ばない……かと思われたが。 「クハハハハ! この大海嘯、有象無象に止められるかよッ!」 黄金太刀を一閃させて、黒衣の偉丈夫、鬼島が吼えた。 一つだけの瞳が妖しい光を帯びて、そしてその全身から鬼気迫る闘気が噴き出す。 それは、味方すら威圧するような尋常では無い迫力。 それこそが、鬼島の放つ威光。敵を威圧し萎縮させる恐ろしいまでの武威なのだ。 形勢は逆転した。 開拓者と反撃の拳士たちは、一気呵成に八極轟拳の拳士たちを押し返していくのだった。 ● そのころ、なりなと嶽御前は砦内部を駆け回っていた。 なりなが探していたのはこの状況下でも冷静な敵の存在だ。 そいつがするであろうこと、それは情報の持ち出しや破棄。 そうはさせじとなりなが追う。そして嶽御前は仲間の元へと駆けていく。 そして二人がたどり着いた先は、獄長の部屋だった。 逃げ回っていた男が目論んでいたのは、獄長室にある資料の破棄。 しかし、そこにはなんと獄長本人とそれと闘う開拓者が! その後の攻防は一瞬だった。 資料を破棄しようとする男、その背になりなの苦無が突き刺さる。 一瞬その男を撃とうかと考えたローゼリア、その迷いを見切った獄長のグイル。 グイルは水鏡を倒すより先にと渾身の体当たりをローゼリアに放った。 流石の巨体、水鏡にはとめる術が無いはず。ましてや相手は砲術士。 必殺の気合いでグイルがローゼリアに襲いかかる。 だが一瞬遅い、まず嶽御前の神楽舞「瞬」がローゼリアと絵梨乃の速度を強化した。 そしてローゼリア、彼女には泰拳士の心得があった。 「使いたくなかったんですけどね!」 グイルが予想もしなかった瞬脚で回避して、そのままなんと転反攻! 反撃の蹴りが獄長に突き刺さった。同時に接近していた嶽御前。 彼女は巫女ながら果敢に距離を詰め、剣で一撃! そして、水鏡がグイルの眼前へ。 苦し紛れのグイルの鞭、それを水鏡は軽くいなすと鞭が絡み合って、グイルは反撃の手を失う。 そこに絵梨乃の峻裏武玄江。巨体が浮き上がる。 飛び上がっての追撃、絵梨乃の蹴りが右左とグイルの顔面に。 そしてトドメの五神天驚絶破繚嵐拳。恐ろしい連打でグイルは吹っ飛んでいった。 壁に叩きつけられ、そのまま獄長室の家具を潰して崩れ落ちるグイル。 その様はまるで棺桶にはまり込んだようであった。 これにて、獄長グイル撃破。 絵梨乃は、援護してくれたローゼリアや嶽御前とハイタッチ。 援護をしてくれた嶽御前の頭をわしわし撫でれば、はにかむ嶽御前。 そして、なりなは獄長室に遺された貴重な資料を無事に回収するのだった。 そして地下の血生臭い石牢にて、拷問吏カドラとの戦いもついに決着を迎えていた。 恐ろしいことに、リンスガルトと飛鈴を前に、取り巻きが居たとは言えカドラははほぼ互角。 しかしカドラは飛鈴の奥義と、リンスガルトの技を前に冷静に距離を測っていた。 疲れを待つつもりか、取り巻きの数は減らしつつカドラは冷静に状況を分析。 そしてついに反撃に転じた。 狙いは飛鈴の足。一撃受ければ再起不能になる非道な一撃だ。 その狙い澄ました反撃が突き刺さる瞬間、なんとカドラの両手が斬り飛ばされた。 狙っていたのは同じだ。 リンスガルトは、カドラが攻撃した瞬間にその腕だけを狙った一撃を放ったのである。 腕を失い、ぽかんとするカドラ。 その顎に、温存してきた飛鈴の奥義、雷斬脚が突き刺さる。 こうして瞬き一つの攻防が終わり、カドラは崩れ落ち……生き残ったのは開拓者だけであった。 蒼旗軍はまたしても勝利を収めた。 鬼島は金色の刃を振るう黒き将として。 飛鈴は、八極轟拳の将を刈り続ける面の拳士として。 刹那の刃を振るったリンスガルトは、閃刃を振るう小さな龍姫として。 そして獄長を屠った絵梨乃は、大酔する仙姑として名を成した。 決着の日は近いだろうが、その日ばかりは蒼旗軍は勝利を祝うのだった。 |