【珈琲】友友の広場から
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: シリーズ
EX
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/10/18 17:39



■オープニング本文

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 珈琲通商組合の旅泰、林青(りんせい)の飛空船「万年青丸(おもとまる)」が天儀の空を飛んでいた。
「いよいよですね、林青さん」
 甲板で風に吹かれつつ、「珈琲お届け隊☆」の深夜真世(iz0135)が振り返った。
「そうだね。これで注目を浴びれば珈琲流通も安定するだろう。南那の経済も安定し、我々もようやく投資に見合うまとまった収入が得られる。珈琲通商組合なんて立派な組織も立ち上げたが、我々旅泰の目は厳しいからね。これ以上利益の大幅回収が遅れると解散ということになりかねん」
 しみじみと、林青が言う。
 世の中、珍しかったりまだ注目されてない商品を引っ張ってくれば商売になるほど甘くない。
 先駆者が世に紹介し、力尽きた後で商品が大流行するということもありえる。
「まあ、『友友』を最初に選んでくれたのは助かった。‥‥珈琲を知ってる者も多いし、緑茶のようにさまざまな食事に合うという利便性はないと思われている。その中で、神楽の都で商売にしたと知れば興味をそそられる者もいるだろう」
「でも、旅泰さんたちは情報が早いんでしょ? もう南那亭のこと知ってるんじゃないの?」
 真世、素朴な疑問を投げる。
「知ってる人は『この程度で成功とは言わん』という立場。実際、私でもそう言うね。‥‥そのくせ、自分たちは個人で飲んでる人もいる」
 にやり、と林青。
「南那亭の成功は新奇性や付加価値をつけたことのほかに、開拓者ばかりの町で、開拓者ギルドの人に来てもらうなど町の性格を取り込んだからというのも要素の一つにあったんじゃないかと思うんだ。もちろん、真世君たち開拓者が店員というのも、住民たる開拓者には気に掛かる要素だったんじゃないかな?」
「ふうん‥‥」
 真世、難しい話は分からない。
「ともかく、皆のアイデアに頼るところ大、だ。‥‥まずはこうして早く現地に入って、翌早朝から赤レンガの広場で開店するって案があったよね。それと、町の顔役にちゃんと話を通すこと――こっちは、珈琲を知ってる人だったんで快くOKしてくれたからもう問題はない。あとは‥‥」
「私たちが頑張るだけ!」
 ぐ、と両拳を胸の前で合わせる真世。
「それもだけど、何か思いついたら実行してくれると助かる。小さなことから大きなことまで」
 そう期待を掛ける林青。
「‥‥あれ?」
 ここで、はたと気付く真世。
「私たちって、珈琲を売ればいいのよね?」
「珈琲を売ることで、珈琲を知ってもらうこと。そしてできれば、興味をもってもらって珈琲豆の個人取引先や商業取引先になってくれる人、ウチが珈琲豆を卸すことを条件とした喫茶店開店してくれる人を募るのが本当の目的になるね」
 実際、喫茶店開店はリスクが高いからこれはまずないだろうけどね、と林青はまとめた。

 こうして、翌朝。
 珈琲移動販売屋台での一日珈琲出張販売が始まる。


■参加者一覧
アーシャ・エルダー(ib0054
20歳・女・騎
アイシャ・プレーヴェ(ib0251
20歳・女・弓
唯霧 望(ib2245
19歳・男・志
万里子(ib3223
12歳・男・シ
禾室(ib3232
13歳・女・シ
ディディエ ベルトラン(ib3404
27歳・男・魔
ジレディア(ib3828
15歳・女・魔
泡雪(ib6239
15歳・女・シ


■リプレイ本文


 友友の朝は早い。
 街の性格としては金融の街であるが、つまり金の集まるところには人も集まり、物も集まる。自然、物流も活発になり生鮮物などが早くから取り扱われることになる。
 そしてここは、繁華街にある赤レンガの広場。
 なにやら屋台二台と小さな天幕二つが張られている。
 おや、その天幕からひょい、とネズミっぽい耳が出てきましたよ?
「ここが友友なんだねー。よーっし、頑張るよっ!」
 顔だけ出してきょろきょろしたのは、万里子(ib3223)(以下、まりね)。ぴょんと飛び出しうーんと伸びをする。執事服姿が可笑いらしい。
「朝は本当に人が忙しく行き交ってますね。まりねさん、急ぎましょう」
 続いて出てきた唯霧 望(ib2245)がまりねの肩を叩く。こちらはきりっと執事服を着こなしている。目元も涼しい。
 一方、別の天幕からも。
「珈琲お届け隊☆出動じゃー!」
 ばさーっ、と元気よく出てきたのは、禾室(ib3232)。メイド服のスカートの裾がひらりん☆する。
「皆様お久しぶりでございます〜」
 ここで、ディディエ ベルトラン(ib3404)も出てきた。
「真世さんたちは?」
「時間が掛かりそうじゃの、望。先に準備してしまおう」
 望の疑問にやれやれといった感じの禾室。
 ちょっと女性用の天幕を覗いてみよう。
「はい、これでいいですよ。‥‥わあ、やっぱり可愛いですよね」
 両手を顔の横であわせ、きゃいきゃいとアイシャ・プレーヴェ(ib0251)が盛り上がっていた。
 目の前には、もぞもぞっとメイド服に袖を通していたジレディア(ib3828)がいる。
 今、細いウエストをきゅっと腰のリボンで縛った。白いエプロンにふんわりとひだができる。
「先日は着れなかったですが、今回は大丈夫ですね」
 前を気にしたり後ろのスカートの裾を気にしたりするジレディアも、ようやく満足いったようだ。
 と、思ったら。
「あ、眼鏡はつけたままで、いいでしょうか? 無いと殆ど何も見えませんので。あ、それとチョーカーは‥‥」
「あ、別に大丈夫ですよ〜」
「その、大事な人につけていただいたものなのでできれば外したくな‥‥」
 深夜真世(iz0135)の声と被り、真っ赤になって俯くジレディア。アイシャとj真世は理由を聞いてにこにこ。
「お人形さんみたいに可愛いですから飾りがいもありますよね〜」
「だよね〜」
 アーシャと真世は好き放題ジレディアをコーディネート。少しリボンが多いのはご愛嬌だ。
「お待たせしました。急ぎましょう」
「アイシャ、私たちは先に出るからね」
 盛り上がる三人を尻目に、準備の済んだ泡雪(ib6239)とアーシャ・エルダー(ib0054)が出る。
 さあ、忙しい一日の始まりだ。


 広場ではすでに林青が机や椅子を並べていた。
「アーシャさん。重い方をよく運んでくれました。おかげでずいぶん客が座れますよ」
「二連結にしても引っ張っていけるって前に言った手前、重い方の屋台くらい平気です」
 アーシャは満面の笑みで返しつつ、茶の野点で使う大きな傘を日除けに立てている。
「りんせー、縄を借りるよ〜」
 遠くでは、まりねが持参した幟旗を立て固定している。
『神楽の都で大人気! 南那亭』
『朝珈琲でシャッキリスッキリ!』
 などと書かれた文字が躍る。
「のん気な奴らだな。朝は忙しいってのに」
「珈琲なんざ、泰国ですら商売にならんのになぁ」
 通り掛かりの人は口々に否定的なことを言っている。う、と思わず肩を落とすまりね。
「まりねさん、顔に出さず元気に行きましょう。‥‥おはようございます」
 そんなまりねを望が励ました。そればかりか元気よく道行く人に挨拶する。
「そうじゃ! わしが『あまよみ』をしたらば晴れじゃった。今日はいい天気となるのじゃ、明るく行かんか!」
 禾室もやってきて元気よくまくし立てる。
 これが奏功した。
「ふむ」
「ほう」
 金融の街は、そのまま情報の街。禾室の口にした情報に多くの人が「やはりな」と顔を明るくしていた。
 そして、もう一つの側面。新しいものに敏感という性質もある。
「こんな店があると知ってればもっと早く出たんだがな。用事の帰りに寄らせてもらうよ」
「ありがとうございます。お気を付けて行ってらっしゃいませ」
 急ぐ中そういってくれる人も。望が手厚く対応し見送る。周りの心象は良い。
 ここでディディエが冴えた。
「アッサリ味の珈琲をある程度まとめて準備しておくのがいいかもですねぇ」
「接客の人が多いみたいですし珈琲淹れておきましょうか」
 そうつぶやくと、出てきたアイシャも同意見。そそくさと準備を始め‥‥。
「今、淹れ立ての珈琲が入りましたよ〜」
 呼び込みの声を上げた。廃棄するリスクを負ったが、朝のスピード社会に対応する妙案だ。
「早朝はカウンターでの立ち飲みでしたね?」
 泡雪もその手はずで動いている。カタンカタン、スコーンと荷物屋台を変形させた。
「朝に弱いこのわしでもこの通り元気全開、寝覚めスッキリ! 南那の珈琲はいらんかねー!」
 禾室も『朝に一杯☆南那の珈琲』と書かれた旗を振りつつアピール。
「じゃ、ちょいと飲んでいくかな?」
 おおっ、客が付いたぞ。
「そうね。軽く体を温めておきましょうか」
「じゃ、私も」
 一人入ると後が続く。これで忙しくなった。
「まよねー、これお願い」
「おっけー、まりねちゃん」
「お姉、あっちのお客様に」
「任せて、アイシャ」
 まりねやアイシャらが厨房で頑張れば、真世やアーシャらがくるくると給仕。
「‥‥」
 この様子を見て、ジレディアは無言で目を丸めていた。
 動き始めた店。
 動き始めた街。
 喧騒や賑わいが舞踏会のよう。
「あ。帰って来た人もいらして下さりはじめました。ジレディアさん、行きましょう」
 泡雪に声を掛けられ、こくと頷くジレディア。
 今日が、本格的に動き始める。


 さて、昼前。
 店は閑散期に。
「朝は忙しかったよね」
「昼食後からのお客様にはどっしりとした味わいの豆に切り替え、熱々で入れたての一杯を飲んでいただきましょ〜」
 まりねが頭の後ろで両手を組んで言うと、ディディエは次の準備の話をする。
「ディディエさん、これどうですかね。ブラックで飲んでもすんなり呑める様に酸味のバランスにした『アイシャのオリジナルブレンド』です」
 アイシャが試飲用の珈琲を淹れている。望も飲んで「朝に間に合わなかったのが残念ですね」と。ドタバタしたのでしょうがない。
「あの、真世さん?」
 ジレディアはこの機会に真世に声を掛けた。
「どうしたの、ジレディアさん」
「私は接客に対しては素人ですが、人、特にこういう上流の人間と接する場合にはやはり上品に振舞う事が大事だと思います。‥‥真世さんは、接客はともかく少々落ち着きにかけるように思います」
「う‥‥」
 真世が言葉を失ったのは、明らかにジレディアのほうが上品であると分かっているから。
「まあ、真世さんはとにかく店を回すために頑張ってましたから仕方のない面もあるでしょう。なんならこの機会に覚えましょう」
 林青が助け舟を出すが、甘やかすことはない。
「では、早速。‥‥いいですか? 接客と言っても色々あります。こういう場所では礼儀を重んじて上品にいくのがよいのではないかと」
 ああ、滔々と語り始めるジレディア。上品な口調であるが、彼女を知る者がこの場面を見たら「ジレディアは今日はどうしたんだろう。えらい楽しそうだな」くらいは言うかもしれない。
「ちょっ。‥‥ああん、アイシャさん助けて〜」
 頭の上に重い本を乗せられ歩くよう言われた真世が助けを求める。
 が。
「礼儀作法? それはちゃんと学ぶべきです。こう見えてもお嬢様ですからね、私。その辺は昔からおてんばさんでさぼり気味だったお姉にも負けませんからね」
 悪戯っぽく言うアイシャ。ああ、鬼教官が増えたと肩を落とす真世。
「聞き捨てならないけど、動きがおかしいのはしょうがないの。だって貴族のお嬢様で給仕される側だったんだもん」
「そうじゃそうじゃ。わしらは元気に給仕するんじゃもん」
 言い抜けるアーシャに禾室も同調。
「私も手伝いましょう。はい、顎は上げないで引いて」
「あん☆」
「お尻を引くのは先を急いでいる証拠ですよ?」
「きゃん☆」
「ほら、背筋はぴしっと」
「ひぃん☆」
 望に人差指で優しく顎を押さえられ、ジレディアにお尻を叩かれ、そしてアイシャに背筋を指先でつつつーとされたり。これで真世が少しはマシになったかは謎ではあるが。
 それはそれとして、泡雪がなにやら陳列しているようだが‥‥。
「林青様。確か、珈琲の卸し先や喫茶店開業者も探すのでしたよね? 珈琲の実、豆、焙煎した豆を見本として用意しておきます。商談などにどうぞ」
「ああ、ありがとう。気が利くね」
 泡雪、さらに前回の仲間が用意したイチジクジャムを使った菓子なども並べている。
「朝は嵐のようで出せなかったですけど」
「午後からはゆっくりした雰囲気になるだろうね。菓子も必要になる。商談もできるといい」
 新ためて机と椅子を並べた敷地を見回す泡雪と林青。真世が頭に載せて歩いていた本を落としたり、まりねが幟旗を『一息つきたい時は、珈琲時間でまったりと』と掛かれた物に変えている。
 昼過ぎから、また客も増えてくるだろう。


 そして、午後。やはり珍しいようで客が入る。
「あ」
 そう言って一瞬固まったのは、アーシャ。
 何と、前回視察に来た時に絡まれた柄の悪げな大男数人が客として椅子に座ってすでに珈琲を飲んでいたのだ。
「あら、いらっしゃいませ」
 アーシャ、わざと絡みに行く。前回言われた「あんたらじゃ金を失うだけ」という言葉は忘れてない。
「ふん。奇をてらっただけの、売り逃げ商売だな」
 男たちの口は悪い。が、暴れるような様子はない。こんな風体だが商売人で、筋はわきまえているようだ。
「閑散とした時間もありましたが、お客様は素敵な時間を過ごされてますよ?」
 アーシャ、にこやかに対応。余裕を見せる。その後ろでまりねが給仕している。
「気だるい午後は、こーひーじーかんっ♪」
 新たな食文化定着を狙い、明るく歌うように執事服の裾を翻している。
 その向こうには、泡雪。
「神楽の都では一定の成功を収めております。ですが、産出国である泰で知名度が低いので是非広めようと。安定供給が可能となりましたし、神楽に比べれば輸送のコストも安く済みますから」
 興味のある客がいたのだろう。商業的な話をしている。聞いている客は、まるで故郷を懐かしむように珈琲に口をつけている。
「泰国では飲茶に合うわけではなく華やかさに欠けていたが、なるほど、ジルベリアの文化と融合させたか‥‥。ちょっと、その旅泰の旦那に合わせていただけませんか?」
 おおっ。泡雪、手柄である。
 この様子を見て、先の男たちは席を立つ。
「‥‥ちっ」
「またどうぞ〜」
 とりあえずアーシャ、内心勝ち誇って柄の悪げな男らを見送る。
 そして、彼らとすれ違う形でジレディアがいた。
「‥‥いらっしゃいませ」
 どうやらジレディア、別の席で接客しているのだがちょっと声が小さいか。
「いらっしゃいませー。南那亭出張店舗へようこそ」
 横からアイシャが笑顔で助け舟。
 ともかく注文を取って下がる。
「ジレディアは可愛いから、あとは笑顔ですよ、笑顔」
 上品なジレディアに足りないものを言って、元気付ける。
 ちょっと落ち込んだジレディア、ふと周りを見る。
「ほれ望、まごまごしとらんでマダムの接客をせぬか」
「はいはい。分かりましたから、禾室さん」
「あれ? 泡雪さん、ディディエさんは?」
「街に呼び込みに行きましたよ、真世さん」
 上品かどうかはともかく、賑やかで楽しいことは伝わってくる。というか、決して上品ではない。それでも、例えば真世のドジを客は笑って許している。
「そうですね」
 そういうものかもしれない、とちょっとだけ砕けた感じになるジレディアだった。

 その頃、街では。
「えぇ御蔭様を持ちまして都では好評を頂いておりますで。現時点ではですねぇ、都に足を運んで頂きませんと楽しめない飲み物です、はい」
 ディディエがそれとなく情報を流しまり。
 今度は交代で、アーシャと真世が看板を持って練り歩き。
「太陽の恵み、南国の味、南那亭の本格珈琲はいかがですか〜?」
 って、その書き文字、どうしたんですか、アーシャさん?
「真世さんに書いてもらったことは内緒にしておいてくださいね。またアイシャに馬鹿にされちゃいます」
 こっそりそんなことも。ちなみに真世は字がうまいのではなく文化の違いだったり。
 あれ、禾室さんは何してるんですか?
「ふむ、うまいの。‥‥もし飴作りの水を珈琲にしたら、珈琲飴が出来たりするのじゃろうか?」
 飴売りにそんなことを言ったりも。そりゃ苦いよ、と返されたが。
 そんな地道な活動もあり、昼下がりに続き夕方ものんびり賑やかで、概ねお客様に喜ばれ繁盛したという。


 夜。
「かんぱ〜い」
 泰国料理店で、威勢のいい声が上がる。
「おかげさまで数件の契約と、かなりの数の仮契約を取れました。ありがとうございます」
 まずは、林青が今日の成果を話した。喫茶店契約まではいかなかったものの、大口の卸し先もできたようだ。
「南那亭のようなゆったりした雰囲気を出すよう努めたかいがあったというものです。‥‥おっと、このテーブルは回転するのですか。勢いを付けすぎないよう気をつけないと‥‥っ」
 ああ、望が生き生きしてテーブルや料理を珍しがっているっ!
「ちょっと、お姉っ」
「大丈夫、おかず取りすぎたりしないから」
 いや、アイシャさんはアーシャさんが回しすぎないか心配みたいですよ?
「っと、そだ、次の遊界。どんな所かな? 派手なのが好きだったりするのか‥‥辛っ!」
「まあ、まりね様ったら。‥‥お客様から聞いた話ですと、昼が朝で遊び心満載の街のようです」
 涙目のまりねに水を差し出す泡雪。
「ふむ、盤上勝負をしながら珈琲が楽しめるスペースを設けてみてはどうじゃろうか」
「籤を用意して当たりが出たらお菓子を、というのも良さそうですね」
 うまいのぅレシピが気になるのぅとせわしい禾室に、炒め物が美味しいですねと堪能する望が思いを巡らせる。
「賭場にも出張しませんか? 良からぬ輩は排除しますよ」
 頭すっきり珈琲で売り込めますよ、とアーシャも乗り気。
「ここと同じく、容易にシェアが確保できるかもと誘えますねぇ」
 泰国料理を堪能することにご執心だったディディエもふふふ、と。
「真世さん、どう思います?」
 一通り意見が出たとみて、アイシャが真世に振った。
「ね、ジレディアさん。少しはうまくなったでしょ?」
「まあ、その心掛けです」
 分厚い本を頭の上に乗せる真世に、「食べてる時にまで‥‥。仕方ないですね」と苦笑するジレディア。
 そのジレディアの砕けた様子に、改めて笑顔を見せるアイシャだった。