【珈琲】珈琲お届け隊☆
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/09/15 21:15



■オープニング本文

前回のリプレイを見る


●南那にて
 泰国南西部に位置する南那。
 その中心地、椀那(ワンナ)からしばらく海岸線を行った場所に位置する交易都市、備尖(ビセン)にて――。
「よし、いいぞ。去年の今頃を考えると珈琲の収穫量が格段に上がっている」
 次々と中型飛空船「万年青(おもと)丸」に積み込まれる珈琲豆入りの樽を数えつつ、旅泰の林青(リンセイ)が声を弾ませていた。
「昨年の課題だった供給面が整備されましたな。‥‥今度は需要面を何とかしないと」
「そうアル。今ではアル・カマル産の珈琲豆も神楽の都に入っている状況ネ。早いとこ他の地域にも珈琲文化を根付かせ、我々南那珈琲通商組合の取り引き客として先に抑えておきたいアル」
 林青と一緒にいる珈琲通商組合の旅泰たちが口々に更なる販路拡大を訴えている。
「それはそうだが、もう南那亭を増やすわけには行かないし‥‥」
 うーん、と林青が唸る。
 一年前、珈琲流通開拓者たちが協力して商品開発した南那の珈琲は、今では主に神楽の都で飲まれ、じりじりと知名度を上げている。が、他の地域ではさっぱりだ。
 理由の一つが、供給量不足。
 ただし、これは一年経過してクリアされた。
 もう一つの理由が、開拓者にあった。
 珈琲が今主に親しまれているのは、開拓者の多く住む神楽の都だ。
 流れ者が多かったり目新しいものが好きだったりする開拓者たちに受けたのは大きい。現在、深夜真世(iz0135)など開拓者の働く「珈琲茶屋・南那亭」には、開拓者への人気につられ一般人も多く入っている。
 しかし、ここに落とし穴が。
 新し物好きだったり、新規品に寛容な開拓者のいない地域で、はたしてここまで受け入れられるか?
 また、珈琲を知ってもらうため喫茶店を開店するという手法で神楽の都で成功を収めたが、このビジネスモデルは綱渡りであった。
 喫茶店で飲んでもらう珈琲は薄利多売で、主に珈琲を知ってもらう広告塔の役目を果たしていたからだ。
 利益の捻出は、珈琲豆の販売取り引き。
 一年目はある程度赤字覚悟でやってきたが、もう利益回収を考えないといけない。
 もう、常設の喫茶店を出店するわけにはいかない。
「屋台のような、常設ではない移動販売で知名度を高めるしかないだろう」
「そう、だな。そして、次はどことの取り引きを目指すか‥‥」
「首都・遷都を狙うか、それとも天儀最大国の武天か、はたまた南方に位置して泰国南部と共通するところもある朱藩か‥‥」
 口々に思案を巡らせる珈琲流通組合の旅泰たち。
「分かった。ともかく、販路拡大の線で珈琲流通開拓者たちにも相談してみることにする。‥‥何せ、知名度のないところから一緒に汗をかいてくれた彼らに動いてもらうのが一番、信用できるからね」
 林青はそう言って、その場をまとめるのだった。

●お届け隊☆
 後日。
 場所は神楽の都は、珈琲茶屋・南那亭で。
「うん、分かった。‥‥ちょうど南那亭も一周年を迎えるし、久し振りにみんなと集まりたかったし」
 南那亭めいど☆の深夜真世が大きく頷いていた。
「良かった。とにかく加来(カク)にこっちに来てもらうから、しばらく南那亭は彼に任せて真世君たちは販路拡大に動いてほしい」
 林青はそれだけ言って、珈琲通商組合で決まった内容を伝え始めた。
「ん? 今回は屋台なの?」
「そう。新たな都市に行って、とにかく工夫を凝らして珈琲を多くの人に飲んでもらってまずは知名度向上に努めて欲しいんだ」
 目指す土地は、以下の三つのうちのどれか。

・武天内にある旅泰の街『友友』(ゆうゆう)
 金融がとても発展した街。金貸しも行われており、財政に切迫した氏族も用立ててもらっているという噂も。街の高台には旅泰豪商の大邸宅が立ち並ぶ。旅泰が多く珈琲の存在は知られているが、今まで商材として注目されてなかっただけに出回っておらず。

・朱藩の町『遊界』(ゆうかい)
 開国したばかりの朱藩において、賭博による遊技で発展しようと考えた町。まだ朱藩内であっても広く知られていない。札や盤上勝負、または動物を競わせるような様々な賭け事が用意されている。

・理穴の旅泰の町『拳風』(けんぷう)
 旅泰が拓いたところだが、泰拳士が多く集まる町。道場などもたくさんあるが、どちらかといえば腕試しとして流れてくる泰拳士が多い。決闘が始まると、いつの間にか野次馬が集まる。普段は人通りの少ない町。

「‥‥何で首都とかじゃないの?」
 真世、素朴な疑問を口にする。
「いきなり失敗する可能性もあるからね。まずは手堅く、珈琲に少しは理解のある場所や伝統なんかがない新たな街を狙う。この『珈琲お届け隊』が上手く行けば、各国の首都なんかを目指せばいいよ」
「ふうん。なるほどね〜」
「ともかく、できれば最初は一年前のメンバーに集まってもらって、ここでどの街から訪れるか、屋台とかの装飾をどうするかを話し合ってもらいたいんだ」
 ウインクして人差指を立てる林青。
 珈琲お届け隊☆の始動である。


■参加者一覧
紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454
18歳・女・泰
アーシャ・エルダー(ib0054
20歳・女・騎
アイシャ・プレーヴェ(ib0251
20歳・女・弓
唯霧 望(ib2245
19歳・男・志
万里子(ib3223
12歳・男・シ
禾室(ib3232
13歳・女・シ
ジレディア(ib3828
15歳・女・魔
泡雪(ib6239
15歳・女・シ


■リプレイ本文


 黒い衣装に紫色の長い髪が特徴的な魔術師、ジレディア(ib3828)が神楽の都を歩いている。
 丸い眼鏡をかけた瞳できょろと見回し、人の流れる往来から一本裏道に入った。やがて足を止める。
「南那亭、ここですか」
 看板を見上げ、つぶやく。
 その時だった。
「まよまよもふ〜☆」
 横から金色のもふらさまが跳ね前へと追い抜いていった。
「わ、もふ龍ちゃんだ〜」
 打ち水をしていた深夜真世(iz0135)が、ぴょんぴょんもふーと飛び付いてきたもふららまを抱く。
「これこれ、もふ龍ちゃん、そう言うことしちゃ駄目よ。‥‥取り敢えず、今回からお世話になりますのでよろしくお願いしますね、真世さん」
 背後からの声にびくっとしたジレディアが横を向くと、もふ龍の主人、紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)が駆け寄っていた。「うんっ。沙耶香さん、こちらこそお願いしますね」と真世。もふ龍は「分かったもふ〜」と今度は沙耶香にぴょんもふっ。
「なんと言うか‥‥」
 眺めていたジレディアは、さらに驚くことになる。
「まよねー!」
 今度はネズミ耳のある人影がすごい勢いで横切った。
「きゃっ。まりねちゃん、久し振り〜」
 飛び込む万里子(ib3223)(以下、まりね)を抱き止める真世。
「‥‥こういうノリの場所なんですね」
 きゃいきゃいする真世とまりねを見つつ立ち尽くすジレディア。
 そして、さらにびくっとすることになる。
「おお、いらっしゃいなのじゃ。こたびはよろしく頼むの」
 騒ぎに見とれている隙に、ぽわぽわクセっ毛と狸耳の禾室(ib3232)がこんな近くまで寄って来ていた。「まあとにかく着替えるのじゃ」と、ジレディアの腰を押すのであった。


 そして、店内。
「たまには旗袍(ちーぱお)以外で厨房に立つのもいいですかね」
 ひらりん、とメイド服の腰の締まりっぷりを確認しながら沙耶香が更衣室から出てきた。「もふ龍も手伝うもふ〜」と笑顔のもふ龍は、首元に蝶ネクタイ的なリボンをつけ真世に抱かれていた。
「深夜様。開店一周年、おめでとうございます。私もこれからお世話させていただきますね」
 慣れた風にメイド服を着こなし上品にお辞儀するのは、泡雪(ib6239)。とにかくお淑やかだ。
 その時。
「‥‥ちょっと胸が苦しいですね〜」
 胸元を気にする沙耶香。借り物なので仕方ない。
「あ。そういえば泡雪さんもかなり着痩せするって聞いたことが‥‥」
「言わないで下さいませ言わないで下さいませっ!」
 真世の視線に泡雪、真っ赤になって両手ぶんぶんしながらわたわた。‥‥お淑やかではない時もあるっぽい。
 それはともかく。
「‥‥寸法があうモノは‥‥なさそうですね」
「ふむ、わしのだとおぬしには小さすぎるのか」
 ジレディアがメイド服を広げて困り、禾室が気遣っている。
「あ。ジレディアさんゴメンなさい。詰め物詰めも‥‥きゃん!」
「まよねー、そっちの大きさじゃないと思うんだよ☆」
 勘違いして慌てておっきく見える布胸当てを探し始めた真世の足を、まりねが引っ掛けて止めた。
「まあ、次回までに探しておきます。使用人の服を着るのには若干抵抗があまりすがこれもお仕事ですし」
「えー。お屋敷を抜け出す時の由緒正しき衣装じゃない〜」
 お淑やかに言うジレディアにぶーたれる真世。
「可愛いですし、お世話をしやすい服装なのでぜひ次回は着てくださいね」
「‥‥え? 可愛かったから着てみたかった、とか‥‥無いです‥‥」
 にっこり泡雪の言葉にさらっと言葉を返すジレディアだが、語尾が消え入りそう。
「か、可愛さなら狐になぞ負けんのじゃ!」
「もちろんネズミも可愛いけどね」
「まよねー、あたいは男だよ?」
 泡雪の狐的可愛さに対抗意識を燃やす狸っ娘の禾室に、獣人といえばとまりねを巻き込む真世。まりねはきゅっと執事服の蝶ネクタイを締めて自分自身の格好に照れていたり。
「他の人は?」
 ここで、ジレディアがきょろり。
「先に現地視察をしておくって。夕方前には帰るらしいよ?」
 真世がそんなことを言う。
 さて、どうなっているか?


 場面は変わって、武天内にある旅泰の街「友友」(ゆうゆう)の近く。
「ね〜、アイシャ、また私達の出番がやってきたね」
 きゃいきゃいとはしゃぐのは、時に凛々しく時におとぼけな元気騎士、アーシャ・エルダー(ib0054)。双子の妹で冷静時々悪戯好きな弓術師、アイシャ・プレーヴェ(ib0251)に抱きついては、「美人双子パワーで売り上げ倍増!」と拳を固めごごごと闘志を燃やしている。
「それにしても、南那亭も一年が経つのですか。感慨深いですねー」
 姉のやる気には当てられずマイペースで空を見上げるアイシャ。珈琲を初めて飲んでみて、試験販売をして、アヤカシを倒して収穫アップに努めた。「珈琲流通開拓者」のおかげで、今では神楽の都で珈琲は親しんでもらっている。南那の経済の一つの柱として、産地も活気付いている。
「私も、真世さんに『硬い』と言われて一年以上たつんですねぇ」
 二人の横にいた唯霧 望(ib2245)も感慨深げに言う。もちろん彼は真面目なのでそんなことを怒っているのではない。そこから怒涛のように経験した異国分化との交流に満足しているのだ。
「しかし林青さん、ここの飛空船の港は凄く広いですねぇ」
 望、振り返って林青に言う。
 実はこの三人、林青の中型飛空船「万年青丸」(おもとまる)に乗せて貰って友友に隣接する飛空船発着場所に降り立ったばかりである。
「ええ、望さん。ここは『飛空船基地』と呼ばれてます。」
 にっこり説明する林青。
「旅泰の町で定期便も多く、何でも揃います。この基地では、そのまま飛空船を倉庫にして直接物々交換などという風景もあります。‥‥そうそう。この町では信用取引が盛んなんですよ?」
「信用取引」
 望が目を輝かす。
「ええ。現金払いを不要とした証文による信用取引で、株仲間と呼ばれる共同出資制度といった感じです」
「規模が大きいのですね」
「貿易航海に臨んでの危険性分散と、成功した時の増額が目的です。‥‥そうそう。泰と同じくこの町でも紙幣が流通しますから、両替商も盛んです」
「あ。ちょっと待ってください。‥‥急いで追いましょう」
 難しい話の途中で、望が声を上げた。
 アーシャとアイシャが先行しているのだ。しかも、何やら柄の悪げな大男数人と揉めてる。
「女性のみで見知らぬ街を歩くというのは少々気に掛かると感じたのですが‥‥」
 望、走る。
 いざとなれば腰の太刀「銀扇」を抜く覚悟である。
 と、その速度が緩んだ。
「いいか、嘘だったら承知しねぇからな」
「帝国騎士の言葉に偽りなどありません」
 大男とアーシャのやり取りでその場は収まったようだ。
「どうされました?」
「望さん、何でもないんですよ〜。ただ、『ここで商売してもあんたらじゃ金を失うだけだぜ』って馬鹿にされたんで、ちょっとご商売しただけですよ〜」
「まさに『売り言葉に買い言葉』です」
 にこにこと怒り隠すアーシャに、冷やかされただけだと説明するアイシャ。
「いや」
 ここで林青が口を挟んだ。
「探りを入れられたのでしょうね。我々が何をするかをまだ話さなかったのは正解かもしれません。‥‥それより、行きましょう」
 どうやらそういう町のようだ。


「町は活気がありますね。特に商売が盛んですか?」
 友友の町を歩きながら望がきょろきょろしながら感心した。
「武天の巨勢王から旅泰による自治独立が認められてます。‥‥商売が活発なので見た目は小売りなどが目立ちますが、金融においては規模が大きく氏族も集まりますよ」
 林青が誇らしく言う。
「ですが、泰の南部では普通に珈琲は飲まれていたはず。商売になりますか?」
「付加価値がついてないので日常飲料や商売として広まってないというのが実情です。‥‥私は、南那亭の成功は、異国の使用人の服装で給仕したことによって付加価値がついたのだと見てますがね」
 ふむ、と顎に手をやり考え込む望に、林青が説明した。
「ほら」
 改めて、指をさす林青。
 その先にはアーシャとアイシャがいる。
「素敵なドレスがいっぱい。ねーねー、アイシャ。これなんて素敵じゃない?」
「お姉。ここってちょっとお堅いところっぽいから‥‥」
「へーきよ? ね、店員さん。あ、そうだ。試着させてください」
「あ、それなら私も‥‥。すいません、今、どんなものが売れてるんでしょうね?」
 ジルベルア風のドレスを着たアーシャとワンピースを着たアイシャが洋服店できゃいきゃいしてる。二人ともどこぞのお嬢さまという感じで買い物する姿が似合っているが、逆に言うと先ほど突っかかられたのも当然というかなんというか。
「ともかく、飲み物に華やかな雰囲気が出ます。‥‥望さんの場合は格式が出ていいのですけどね」
「そうですか」
 自分の話題も出て照れる望だったり。

 やがて、場所選定で歩き回りある場所で足を止めた。
「この広場なんか良いんじゃない? 座る場所も木陰もあるし」
「そうですね。広めで、落ち着いた雰囲気の場所ですし、ほかに屋台もない」
 アーシャがくるっと振り向き、望が頷く。
「この広さなら二台いけるかも。‥‥私だったら屋台を二連結にしても引っ張っていけるけど〜、アイシャにはちょっと厳しいよね」
「お姉はムキムキですからね〜。望さんは護衛ですから手伝いませんよ?」
「ちょっとアイシャ」
「きゃ〜」
 と、アイシャがふざけて逃げ回れるくらい、存分に広い。ちなみに下は、赤レンガ。町は上水が完備されており、水場も近い。当然、人も多い。
「しかし、どうしてここに屋台がないのでしょう?」
「急ぐ人は急ぐ。ゆっくりする人はゆっくりする。‥‥お金の飛び交う町ですから、そういう雰囲気です。それに、泰料理の店先で肉まんなど点心の窓口販売もしてますから、屋台は少ないです」
「大丈夫ですかね」
「泡雪さんに念を押され頼まれましたから、場所は私が責任持って借りましょう。‥‥あとは皆さんが楽しさを振り撒けばいいのですから、勝負はできます」
 そんなこんなで、一旦帰る視察組だった。


 そして、南那亭。
「――でね、友友が良いと思うんだよ」
「そうじゃの、アーシャやアイシャ、望もそう言っておったし」
 まりねが指を立てて言い、禾室がうむうむと頷いていた。
「‥‥はい。これが紙漉しの珈琲の淹れ方です」
 その後では、真世がジレディアと泡雪、沙耶香に珈琲の淹れ方を教えていた。とはいえ、料理オンチの真世が淹れられるくらいなので難しい技術は不要。ちょっとしたコツを覚えればいいだけだが。
「あたしは泰国出身者ですから」
 沙耶香は自分の知識との差異がないか確認すると、いそいそと別の作業を始めた。
「珈琲に合う料理‥‥お菓子ですかね。こちらを作ることにします」
 そして持参した無花果を取り出し、クッキーなどに使う予定のジャムを作り始めた。
「皮を剥いて四つに割って、鍋に無花果と砂糖を入れ かき回しながら練って‥‥」
 無花果って旬ですし、そのままでは傷んで輸送に向かないので喜ばれるはずです〜とか、食材の知識を披露したりも。
「ん。美味しいです。友人のアイシャさんより以前に振舞ってもらった珈琲が美味しかったので、それを広めるのは意義あることかと思いましたが‥‥」
 自分が淹れるのもいいものですね、とジレディア。首をお嬢さま角度に傾げてにっこりする。
「紅茶と抹茶は学びましたが、コーヒーは初めてなので嬉しいですね」
「あ。私は紅茶がまだだから、いつか教えて欲しいなぁ」
 泡雪はさっそく全員分の珈琲も淹れて満足そう。真世はとなりでぼそりとそんな独り言も。
 って、真世がまりねと禾室の会話に反応しましたよ?
「‥‥まだ商材として注目されてないなら逆に好機だよね。町での習慣化を狙うとかどだろ?」
「友友、遊界、拳風の順で回れば、わしらが他の場所で宣伝活動している間にも口コミで広まる可能性があるの。人が多くお金を持っている人達から攻めていくのが確実じゃし」
「まりねちゃん、禾室ちゃん、どうしたの? 何かゆってることが冴えてるよ?」
「まよねー、それはどういう意味?」
「だったら真世も冴えるのじゃ」
 まりねが呆れ、禾室がふふんと胸を張る。
 その時。

「ただいま〜」
 視察組が帰ってきた。
「真世さん、南那亭の誕生日、おめでとうございます」
「というわけで、誕生日記念パーティー。ケーキ買ってきましたよ〜」
 アイシャの、「ちゃんとお誕生日おめでとう、って言いたいじゃないですか」の言葉に涙ぐむ真世。そこへアーシャがケーキを差し出す。
「ちょうどクッキーも焼きあがりましたので。‥‥もふ龍ちゃん、運んでくださいね」
「分かったもふ」
 沙耶香も厨房から出て焼きたてクッキーを。
「服は華やかでした。逆にシックな方が目立つでしょう。‥‥場所は赤レンガでしたから、ジルベリア風がいいかも?」
「分かったのじゃ、望。では真世はこれに着替えを‥‥」
「きゃ〜。禾室ちゃん、ここで脱がしちゃダメ〜っ」
 望の報告に、禾室が裾の長いメイド服を出す。どうやら落ち着いたスカート丈の長い黒白ベースのメイド服でそろえるようだ。男性はやはり、執事服。
「泡雪さん現地のトップの許可は得たから、あとは存分に」
「ご丁寧にありがとうございます」
 許可がらみの提案にそって動いてくれた林青に礼を言う泡雪。
「りんせー。早朝開店と『珈琲時間』を設けて消費の習慣化をはかろーと思うんだけどー」
「それはいいですね。実行しましょう」
 以前と同じ冴えを見せるまりねの案ににっこりする林青。
「では、屋台はガッシリ丈夫に改造して柄の布を掛けて‥‥」
「ええ、禾室さん。そんな感じで」
 望から現地の雰囲気を聞いて早速屋台を飾りつける禾室。とはいえ準備不足でとりあえず黒と白の布を使って飾りつけ。
「あとは、木製の食器を」
「そだね」
 アーシャとまりねは林青に木製食器の手配を。
「真世さん、念のために礼儀作法を鍛えておきましょう。大物客がくるかもしれません」
「ええっ! うん、自信ないからお願い〜」
 ジレディアは奔放すぎる真世を鍛えたり。
「禾室さん? 氷霊結で凍らせた珈琲が随分解けましたよ?」
「沙耶香、ありがとなのじゃ。これを淹れたての珈琲に入れるとすぐ冷えるぞ」
 沙耶香の呼び掛けに、作業をしていた禾室と望が戻る。
「それじゃ、乾杯しますよ?」
 どったんばったん忙しい中、こだわりを持ってアイシャが音頭を取る。
「南那亭、お誕生日おめでとう」
「おめでとう」
 声をそろえて、乾杯。
 節目を機に、この9人が「珈琲お届け隊☆」として動き始める――。