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■オープニング本文 前回のリプレイを見る コーヒー。 泰国南部地域で日常的に飲まれているお茶だが、日常的ゆえに活発に取り引きされず、広く流通もしていない。 ――これを、天儀で流行させる事ができないか? 閉鎖的な同地域は南那(ナンナ)という地方に目を付けた林青商会代表の林青が、開拓者の手を借り商業的開拓に着手した。 そして開拓者を交えた試飲会の結果、まずは天儀での消費動向調査と需要の掘り起こしから始めることにした。 臨時喫茶店開店計画の始動である。 「みんなノリノリだったから、きっとうまくいくよ」 天儀は神楽の都で、深夜真世(iz0135)が脳天気に歩いている。 「真世くんの言う通り、来てもらえれば間違いなく『満足』してもらえるだろうね」 隣を歩くひょろりとした林青が請け合った。含みをもたせたのは、仮にコーヒーの味に満足してもらえなくても好奇心は満たされるという読みだ。現在、神楽の都は新天地開拓の噂で浮き足立っている。新たな商材をぶつけるにはまたとない機会となっている。逆に、このあと新天地が開拓されるようであれば、新たな物があふれ返り埋もれてしまう危険性がある。時期としては、ここしかない。 「来てもらえれば、かぁ。‥‥問題は場所だよね。こんな活気のある都で、空いている場所なんてないよ」 「策は巡らせているんだがね」 難しい顔をする二人。 と、彼らを呼ぶ声がした。 「おおい、林青さん、真世」 振り返ると、志士の海老園次々郎が追ってきていた。 「林青さん、うまくいったよ」 どうやら、蕎麦屋の主人とそこで働くほぼ全員を南那の観光地「尖月島」に連れて行く交渉をしていたようだ。見事、商談成立。 「もちろん、留守の間に喫茶店を試験的に営業するって話もばっちり。しっかり南国の飲み物で客をつなぎ止めておいて欲しいとまで言ってもらったよ」 「良・良、最良だよ、次々郎さん」 にっこりと上機嫌の林青。これでひとまず、今回の臨時店舗の心配はなくなった。 「じゃ、あとはどうやって来てもらうかだね」 「そうだが、コーヒー豆の総量が少ない問題は解決していない。多くを捌くより、丁寧にやっていこう。最終的には喫茶店を持って、そこを豆の流通窓口の一つにしたい。将来的な店舗運営を考え技術を身に着けながらやっていこう」 コーヒー職人として、南那から前回の喫茶店店主、加来(カク)を連れてきた。抽出などの研修の場としたい考えだ。 「確か開拓者ギルドの職員に勧めたいという案もあったろう。外部への紹介も平行してやっていきたくもある。‥‥店名も決めて、本開業に向けた準備もしないとな。忙しくなるぞ」 「うん、分かった。じゃ、開拓者ギルドに募集を掛けて、またみんなに集まってもらうね」 盛り上がる話に瞳を輝かせ、真世は早速ギルドに駆け出すのだった。 |
■参加者一覧
アーシャ・エルダー(ib0054)
20歳・女・騎
来島剛禅(ib0128)
32歳・男・魔
アイシャ・プレーヴェ(ib0251)
20歳・女・弓
モハメド・アルハムディ(ib1210)
18歳・男・吟
唯霧 望(ib2245)
19歳・男・志
万里子(ib3223)
12歳・男・シ
禾室(ib3232)
13歳・女・シ
ディディエ ベルトラン(ib3404)
27歳・男・魔 |
■リプレイ本文 ● 今日もにぎわう神楽の都。人は往来を西に東に。 そんな繁華街の外れで、店の看板をいじっている影が一つ。 踏み台を置いて、その上に立つ。 「蕎麦処 武々天」とあるがこれに白い布を被せた。 ふと、通りを振り返る横顔。 唯霧望(ib2245)だ。 見事な筆さばきで自筆した新たな立て看板を設置する。 と、ここで。 「やいやい、老舗のこの店に何しやがんでぃ」 通行人の一人が文句をつけた。 「いえ、ここ数日は『「珈琲茶屋」南那亭』ですよ。店の人が旅行中の留守をしっかり預かるよう、ご主人から任されました」 「そういや、なんなって所に行くって言ってたが。‥‥主人の行った場所の茶が飲めるのか?」 顎を引き答える望。 「そんなら、ちょいと味わってみるか」 「あいすいません。準備中でして」 まさに掲示しようとしていた「準備中」の札を見せる。 まずは昼までに技術を磨くとのこと。 だから今は準備中。 「珈琲茶屋」南那亭は、準備中――。 ● さて、時は若干遡る。 「蕎麦処 武々天」の店内はせわしかった。 「さあっ、頑張らなくちゃね」 食器を持って右に左に動いている大きなネズミの耳は、万里子(ib3223)(以下、まりね)。南那の加来(カク)の店で使っていた厚ぼったい、取っ手のついた器を持ってきて、それを準備しているのだ。 「ふふふ。天儀の勇気ある方々に珈琲を味わって頂きましょ〜」 整った顔をゆがめて微笑しながら、小さな樽に中、さらに麻袋に入ったコーヒー豆を出しているのがディディエ・ベルトラン(ib3404)。時折目をつぶって体全体を使うように息を吸って香りを実感しているあたり、グルメである。 そんなディディエの向こうで、夢見るように目をつぶりつま先立ちでくるりんと回ったのが、アイシャ・プレーヴェ(ib0251)。フリルたっぷりのメイド服のスカートが広がり、アイシャの可愛らしさを振り撒く。 「ちょ‥‥、やっぱアイシャ可愛いし〜。つまりそれって私も可愛いってことで!」 その横で超前向き発言をするのは、アイシャとおそろいのメイド服に身を包んだアーシャ・エルダー(ib0054)。アイシャの双子の姉である。負けずにくるっと回るが、ちょっと勢いがつきすぎたか、ふわっと香るようなスカートが広がり方ではなく、ぶわっという感じ。 「そんなお姉ぇが一番可愛いです」 にこにこ笑いながらアイシャ。 「なんかこう、祭の前のようなワクワク感があるの!」 狸耳の禾室(ib3232)も、メイド服でくるりん。 「ふふっ。禾室さんも可愛いですよ」 アイシャが目を細めて言う。 そんな華やかさの中、一人の男が声を上げた。 「ナンナティ?」 モハメド・アルハムディ(ib1210)が黒い瞳を丸くしていた。 「ええ。『「珈琲茶屋」南那亭』がいいと思います。どうでしょう?」 来島剛禅(ib0128)(以下、クリス)が頷き、モハメドに尋ねてみた。 「ヤッラー! これは驚きました。偶然ですが、私の氏族の言葉では、ナンナティは『南那の』を意味します。ハカン、なるほど。来店の是非はともかくあちらの氏族への広告にもなるでしょう」 モハメド、目尻を下げて我がことのように喜んでいる。そして、陽気。あるいはこれがコーヒー、彼の氏族の言葉で言うカホワの持つ魔法なのかもしれない。 「なるほど。それはいい」 この様子を見て閃くクリス。 「売り込みの文句は、『太陽の香り、南国の味』などいいかもしれません」 「ナァム、そうですね。豆の名前は『香陽』(こーひー)が似合いそうです」 人差し指を立てるクリスに、乗ってきたモハメドが案を出す。 「おおっ、それはいいのじゃ。上手く馴染んでいくと良いの」 ウズウズしていた禾室が目を光らせながら両手を合わせる。 「南那の人も、遠く離れた天儀で、南那産の珈琲が話題だと知れば誇りに思えるはずです」 愛国心の強いアーシャが言えば、アイシャも隣で頷いている。 「申し訳ありません、皆さん」 と、ここで加来が剃り上げた褐色の頭を下げた。 「余所者、余所者と思って気乗りしませんでしたが、私が間違ってました。‥‥いいでしょう。この加来、皆さんのために知っている技術をすべてお教えします」 わあっと、手狭な店内が陽気に盛り上がるのだった。 ● 「コーヒーは収穫した果実から外皮や果肉、種皮などを除去した、精製済みの豆として運ばれます。皆さんは、この店で豆を必要なだけ焙煎します」 加来の研修が始まった。まずは麻袋から適量を出し、平たく壷のようになっている鉄製の器具に入れた。そして火にかけると、中の豆が焦げないよう、まんべんなく火が通るよう回すように揺すりはじめた。からからと音がする。ディディエがうっとりと鼻先を上げるように、とても香り立つ作業である。 「これです、これ〜。この香りで道行く方々の注目を集められるかもしれませんですよ〜」 「そうですね。団扇でパタパタ扇いだりして。鰻屋さんの気分です」 先日、泰国に行って店先で感じた魅力と再会したディディエが集客案を出すと、ノリよくアーシャがほほ笑んだ。まりねはふんふんと頷いては教わったことを一生懸命メモしている。 「そして豆を粉砕、じょうろ型の器具にろ紙を合わせて、その中に粉状にしたコーヒー豆を入れて、お湯をまんべんなく注ぎながら抽出するのを待ちます。‥‥ほら」 次に加来は、取っ手の付いた大きめの器に専用のじょうろを備え付け、ろ紙をそのすり鉢上の内側に貼り付けるように置くと粉砕した黒い粉を適量入れた。沸騰したヤカンから湯をゆっくり回すように、じっくり時間をかけながら注ぎ、実際にコーヒーを淹れて見せる。馥郁たる湯気が立つ。 「じっくり淹れるといいですが、時間を掛けすぎると雑味が増します。‥‥豆の量や焙煎時間、淹れるときの抽出時間で味が変わってきます。こればっかりは個性ですので里でも皆淹れ方は違います。皆さんでこれはと思うのを探してください。それがコーヒーの醍醐味の一つです」 ただし、一番重要なのは焙煎とのこと。そして今回はいろいろ試す時間がないので、加来お勧めの淹れ方を基本とした。 「結局は植物であり、茶類な訳ですから‥‥」 ここで、ふむ、とクリス。 「炒りを少なめにすれば酸味が強く、多めにすれば苦味が強くなると思います」 この指摘に、加来は感心した。クリスは続けて「受け入れやすいのは、中間のもの。味の浅炒り・苦味の深炒りを若干足す、という感じの微妙なブレンドで良いでしょう」と。加来はこの言葉に反応し「では」と、若干手本を修正。今回の臨時開店用の味を用意した。まりねがこれをしっかりと記録し、記憶違いで味がぶれてしまうのを防いだ。 「今のは、天儀の茶の応用。加えて、香辛料や果物と同じで、産地というか土壌で味が変わると思いますが」 「ええ、クリスさん。コーヒーは大まかに、木のある山の高さによって味が変わってきます。高い方が酸味が強くなって、コクや香りと合わせ全体的に華やかさとキレのいい後味がより楽しめるのですが‥‥」 ここで表情を翳らせる加来。 「アヤカシがいるので、良質な豆は親衛隊しか収穫できないんです。結果、高級な豆となってしまい、庶民には味わえないものになっています」 「それはよろしくないですよ。ぜひアヤカシは退治すべきです」 ディディエが熱心なのは、もちろん飲んでみたいから。ともかく、このあたりは後回しであるが。 「ともかく、コーヒーは奥が深いです。淹れ方で薄くなったり濃くなったりするのは置いておくとして、勝負は焙煎の深さや浅さなどの具合といっていいでしょう。私たちがお勧めする、そしてこちらの人に喜ばれる『香陽』の味として、最良なものを探っていきましょう」 淹れ方の研修は、これで終わり。 望が店名と謳い文句の看板を立てるため、外に出るのだった。 ● さあ、ここからは忙しい。 容器は、泰国から持ってきた取っ手付きの陶器を。 席を整えて座布団をふかふかにして、さあ、開店だ。 「ようっ、ス。蕎麦屋の主人が旅行してる場所のお茶が飲めるんだってね」 「おぅ。留守の原因を作った茶の味ってモンを、おれっちの舌に合うかどうかためしに来たぜ」 どうも蕎麦屋の常連らしき客が、まばらに入ってくる。 「いらっしゃいませぇ」 まずは、アイシャが行った。異国情緒あふれる様子と愛らしさに、客の頬が緩む。掴みは良好のようで。控えるアーシャ、禾室のメイド服部隊は確かな手ごたえにぐっと可愛らしく拳を固めてにこっとほほ笑み合った。 「大人な苦味と、茶菓子の甘さのハーモニーをお楽しみください♪」 給仕に行ったのは、アーシャ。 いつもは蕎麦をのせる盆に、茶菓子も添えて一緒に「どうぞ♪」。 「ほほぅ」 「南那の珍しいお茶ですよ。なかなか手に入らない飲み物なのです」 先に言うのは、値段が張ってしまうから。 「いらっしゃいませ、なのじゃ」 「しかしたけぇな。これじゃ、二杯飲んだら蕎麦が三枚すすれるじゃねぇか」 禾室が行った客が、それだった。これでも林青としては、薄利多売でしか生き残れない価格設定。もっとも、茶菓子がついていること、今回は大量に運んでないことが影響している。大量にさばける見込みがつき、一度にまとめて運べば商売として成り立つのではあるが。 「で、でも、珍しいのじゃ。よ、良かったら感想を一筆書いて欲しいのじゃ」 うつむき、しおりと寝る狸耳。禾室の可愛さに客は「ま、お嬢ちゃんの言うとおりか。ここの主人は大枚はたいてのんびり羽を伸ばしてんだ。俺たちがこの程度で一緒の茶を飲めるのは幸せってもんか」と機嫌を直したり。 「お待たせしましたのじゃ。‥‥まずはこのまま一口飲んで頂いて、万が一飲み辛ければこちらを混ぜてみて欲しいのじゃ」 そう言って、禾室はあらかじめ小さな焼き物に小分けにしていた砂糖やミルクを指差す。 別の場所ではどうだろう。 「うおっ、苦いっ!」 「ナァム、ハーズィヒルカホワ・アルナンナティ・フィッターイ。‥‥ええ、泰国は南那のカホワですよ」 「ふぅむ。アンタにいわれると納得だが‥‥」 「マラン? 苦いですか? ラキン、しかし砂糖や乳類を溶かして飲むと、甘くまろやかな味を楽しめますよ」 「ほう。なるほどなぁ」 彼の氏族独特の衣装に身を包んだモハメドは、立ち居ぶるまいからして異国情緒にあふれている。そんな彼から給仕を受ければ、少々苦かろうがそれはそれとして受け入れられているようで。このあたり、得な男である。 「何で飲むのかなど、気分の問題でしかありませんが〜。意外とそういうところが重要だったりするわけでして、はい」 とかなんとか言っていたのはディディエだったが、何といま、彼は蕎麦つゆを入れる容器に入れてコーヒーを出したではないか。 どうやら意外と繁盛しているようで、容器が不足気味なのだ。 「うぶっ!」 なじみの器で出たせいか、その客は経験したことのない苦い飲み物に激しい反応を示した。 しかしっ! 「む、うまい。この、一見さんお断り的な、選ばれた者にしか受け入れなれないような味が気に入ったッ」 どうも、この蕎麦屋の客はひねくれたというかかわった性癖というか、そういう客も多いようで。妙に理解され受け入れられている。 「蕎麦茶に似通ったところもあるしな」 もともとこだわりのある客筋である。希少性と新規性にほれ込んでいるようで。 ――ぱちん。 「良い手が浮きますように」 「ふむッ」 クリスは、将棋を囲み始めたご隠居二人に行った。最初に砕きかき餅、次いで手前で風上に回ってからコーヒー。 「ふむッ、ふむッ」 二人は勝負に夢中ながら、険しかった表情が和らいでいる。苦味と、かき餅のほのかな甘さが口に合っているようだ。実はクリス、かき餅の生地を練る前に甘草の煮汁を混ぜておくよう指示して、頼んでおいた。巧緻である。 ところで今回、深夜真世(iz0135)がいませんよ。どこ行った? ● 「あっ、真世さん。どうでした?」 店の外で、ふらふら今頃やってきた真世を、店先で焙煎して客寄せしていたアーシャが迎えた。その横ではアイシャがニコニコ立って宣伝活動。 「駄目。林青さんがまだ空き店舗探してるけど、私はもうこっち手伝う〜」 「お疲れ様。だったら客として休んで休んで」 へろへろと言う真世の腕に抱きついて、店に入れるアーシャだったり。 「じゃ、改めて。お帰りなさいませ。真世さん」 「う、さすがジルベリアの騎士。その服似合いすぎだよ、アーシャさん」 そして、盆を持ってアイシャがやって来る。って、なぜに猫耳猫の尻尾が追加されているのか。 「ネコミミとしっぽをつけた方が可愛いでしょうか〜?」 「そりゃ可愛いけど、もうつけてるじゃない」 「かしこまりました。じゃあ」 「って、ええ。私がつけるの!」 閑話休題。 (へえっ。割と流行ってるんだ) コーヒーをちびちびやりながら、そんなことを思う真世。 見回すと、執事姿の望が目に入った。さわやかな笑顔で客に説明している。そしてまた別の卓。と、こっちへ来た。 目が、合った。 「真世さん、来てたんですか」 「望さん、笑顔が素敵だよ」 声を掛けると、望はさらにほほ笑んだ。――自然。給仕をしているときよりも、素顔の笑みだった。真世、さらににっこり。 「べ、別に、真世さんに言われた事を気にしている訳、では」 後から皆に聞くと、序盤は「笑顔、笑顔‥‥」と呟いていたそうだ。 「って、まりねちゃん。何でそんな格好してるのよ」 「あ、まよねー。飲食店ではネズミの印象は良くないじゃない。だから」 頭巾を被っている理由を説明するまりね。「そんなことないよ。まりねちゃんはまりねちゃんだよっ」と頭巾を取っ払うという蛮行に及ぶ真世。‥‥どうやら客はあまり気にしてないようですよ、まりねさん。って、やっぱり頭巾無しの方が受けは良いようで。 「あれ、ディディエさん。どこ行くの?」 「香りでアピール。店先で焙煎ですよ〜」 なるほど、モハメドもあっちで香りでアピールしてるしね、と真世。視線は、豆を香壺に入れて客に楽しんでもらっているモハメドに移っていた。 「真世君、お疲れ様。どうやら商売になりそうですよ」 クリスも寄って来て、会心の笑みを浮かべる。 林青も後にやって来て、大いに手ごたえを掴んだという。 ● 「すみませんお邪魔します」 夜の開拓者ギルドに忍び込む、‥‥あ、いや。お邪魔する、一つの影があった。床に落ちた頭の影に、鼠のような大きな丸い耳がある。まりねだ。 「依頼書や報告書の作成、お疲れ様です。これ、頭が冴えたりして気分転換にいい魔法の飲み物です。よろしかったら、どうぞ」 ギルドの不寝番の影が、何かを受け取り、口につける。 それまで動きの鈍かった不寝番の影が、たちまち陽気に、てきぱきと動き始めたのでした。 「太陽の香り、南国の味。【香陽】ね」 ふうん、と影。 また、飲む。 |