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■オープニング本文 前回のリプレイを見る 希儀の空を、中型飛空船「チョコレート・ハウス」が飛んでいる。 「なるほど……コクリの嬢ちゃんたちが使っている技は『巴戦』とか『燕返し』とかいうんだな」 食堂で珈琲を飲みつつ空賊「空の斧」の頭目、赤熊がテーブルにのっそりと上半身を乗り出した。 「おい、何度言ったらわかるんだ。コクリの嬢ちゃんは艦長だ。艦長と呼べ!」 ぐぐ、と今度は別方向からチョコレート・ハウス副艦長の八幡島が身を乗り出した。 「ああん、貴様もコクリの嬢ちゃんって言ってるじゃねぇか」 「俺の勝手だ。だが貴様がそう呼ぶのは許さん」 にらみ合いをしつつ暑苦しい応酬を重ねている。 彼らの前に座るチョコレート・ハウス艦長のコクリ・コクル(iz0150)、この様子に苦笑するしかない。 「そうだね。ボクはまだ使えないけど、技量の高い人のやってる戦法はそう呼ぶらしいよ」 結局、二人を見て困った顔をしつつ、赤熊の最初の問いに真面目に答えた。 「俺らがやられ、『槍天狗』の突撃好きたちもやられ、割と手堅い『地獄蜻蛉』の奴らもやられた……」 赤熊、コクリの言葉を聞いて大柄な身を戻しうむむと唸る。そして結論に。 「滑空艇乗りの技術もあっという間に上がったということか。こりゃ、俺らも鍛えなおさんといかんなぁ」 「空賊がそんな真面目なことすんのかよ」 八幡島がすぐさま突っ込んだ。 「ま、しねぇな。……だが、技量差はなんとかしねぇと」 「あれ?」 ここでコクリ、ある疑問がわいた。 「赤熊さんたちと他の空賊の滑空艇部隊って、技量差があったの?」 「大差ねぇよ。俺たちの空戦は間合いの取り合いまでだ。お前さんたちゃ、それに加えて曲芸飛行しやがったり上下前後に広く戦場を使ってきやがる」 赤熊、ふんと忌々しそうに返す。 「じゃ、最後の『三つ目鴉』も……」 「ありゃ別格だ」 コクリが勢い込んだところで、赤熊がとめた。 「おそらく、技量はお嬢ちゃんたちが上だ。だとしたら、奴等は戦わないかもな。……何をやってくるか分からねぇ。だから、三つ巴の戦いの時は残り二つの空賊が奴らを襲った」 「大変ですじゃ」 突然、元『地獄蜻蛉』にいた学者崩れの男がなだれ込んできた。 「『三つ目鴉』の奴らを発見したそうじゃ!」 実はコクリたち、エトーリア人の財宝に関する最後の手掛かりを手に入れるため、「三つ目鴉」の中型飛空船「シャルンホルスト」を狙っていた。 既に開拓者を雇い、彼らの縄張りに潜入していたところ、ついに補足した。 「よし、追いかけるよ!」 「おっしゃ!」 コクリの掛け声で立ち上がる。 追撃だ! そしてこの後、知ることとなる。 シャルンホルストは、ある遺跡に向かっていたことを。 「おそらく、奴等はこちらに対抗するため新たなエトーリアの遺品を集めてますじゃ。あの遺跡にも何かがあるに違いないのですじゃ」 学者崩れはそう主張する。 「三つ目鴉」はすでに建物の柱が乱立する遺跡の横に着陸していた。 やがて敵はチョコレート・ハウスに気付く。 滑空艇の影が十二以上、発進する。敵の首領も滑空艇で出ている。 しかし敵は、空戦で敵わないと見るや遺跡内部に滑空艇のまま逃げ込むのでした。 まるで、誘うように。 もちろん今、迎撃に飛び立ったコクリたちはまだ後の展開を知る由もない。 |
■参加者一覧
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
猫宮・千佳(ib0045)
15歳・女・魔
アイシャ・プレーヴェ(ib0251)
20歳・女・弓
朽葉・生(ib2229)
19歳・女・魔
シャルロット・S・S(ib2621)
16歳・女・騎
シーラ・シャトールノー(ib5285)
17歳・女・騎
アナス・ディアズイ(ib5668)
16歳・女・騎
ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)
10歳・女・砲
クロウ・カルガギラ(ib6817)
19歳・男・砂
小苺(ic1287)
14歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ● 「いきますの、サンダーフェロウ!」 小さな騎士、シャルロット・S・S(ib2621)(以下、シャル)の掛け声と共に相棒の甲龍「サンダーフェロウ」が羽ばたいた。中型飛空船「チョコレート・ハウス」から、すでにコクリ・コクル(iz0150)をはじめとするショコラ隊のメンバーは全員飛び立っている。 目標は、遺跡に着陸している空賊「三つ目鴉」の旗艦「シャルンホルスト」。 もちろん、敵もこちらに気付いて滑空艇15機が飛び立っている。 対するショコラ隊は、滑空艇など11体。 「空賊さんはコクリちゃん達と一緒に迎撃粉砕ですのよ」 最後尾のシャル、戦況を観察していたが迷わず真っ直ぐ進んだ。 この少し前の時点。 ショコラ隊の前衛。 「空賊相手に一戦か。面白え」 クロウ・カルガギラ(ib6817)が華麗に相棒の翔馬「プラティン」で空を駆けていた。オーラの翼を優雅に羽ばたかせ、まるで地上を走るように自在に走っている。 「空を行く馬か〜。いいな〜」 横に滑空艇「カンナ・ニソル」をつけたコクリ・コクル(iz0150)が羨ましそう。 「コクリさんとは依頼で一緒になるのは初めてだな。宜しく頼むぜ」 クロウ、ウインクで返す。 そこへ、戦馬「ジンクロー」に乗るアイシャ・プレーヴェ(ib0251)が寄せて来た。 「敵の滑空艇が上がって来ましたよ」 ジンクローにはオーラの翼はないが、足元に煙のようなものを纏わせやはり地上と同じように空を疾走。敵艦から滑空艇15機が上がってきたのを知らせる。 「『堅守知略』の噂がありましたよね? 慎重で策を弄してくる雰囲気がしますが……」 「残る短剣は後一つ。そこに刻まれた文字は…目指せお宝、輝く明日が待っている、にゃ」 面を引き締め考えを巡らせるアイシャの目の前を、元気に小苺(ic1287)が横切った。相棒の駿龍「舞風(ウーフェン)」に乗って上空に移動。 「待ち構える敵は何かしら策を講じてる可能性あり。後々のことを考えれば慎重に動くべし。にゃ」 「特に変わった武装はねぇな。小苺さん、様子を見るか?」 アイシャに習って面を引き締め考える風な小苺。 クロウに聞かれぷる、と顔を振る。 「邪魔する奴は蹴散らすのにゃー! 者共、いざ出陣! うにゃー!!」 「やっぱそうなるか」 降下しつつ迎撃に速度を上げる小苺。 そうこなくちゃな、とクロウが追った。 その、空いた上空に今度は滑空艇改「白き死神」が舞い上がってきた。 乗っているのはルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)。 「ルゥミ、行かないの?」 滑空艇改「オランジュ」のシーラ・シャトールノー(ib5285)も続いてこの位置にピタリ。 「下の遺跡の形とかちゃんと見ておこうと思ったんだ、シーラちゃん」 見下ろしていた遺跡は、建物が崩れて円柱が乱立し大地に穴も空いている。複雑な地形だ。 「地上戦、ありえますよね」 新たにアナス・ディアズイ(ib5668)がやって来た。艦載滑空艇に乗っているが、背中にはアーマーケースを背負っている。 「私は、あちらの方が気になるけど……」 シーラは敵艦の方を見た。シャルンホルストはこちらに気付いて上昇している。 「まあ、『空の斧』にお願いしたから何とかしてもらえるわよね」 「私も狙ってきます。敵滑空艇の分散にもなりますし」 シーラの言葉に、新たにやって来た朽葉・生(ib2229)が続く。 生、迅鷹「ヤタ」を従え艦載滑空艇で高度を下げた。 「とにかく、いっくよー!」 ルゥミ、元気に声を上げると高度を下げた。アナスが続き、生は進路を変える。シーラだけ上空待機して得意の戦法に備えた。 ● 戦闘の火蓋を切ったのはアイシャだった。 「さあ、空賊さんにはここらで退場願いましょうか」 ロングボウ「フェイルノート」を引き絞り、長距離から多数の矢を放ち牽制する。 同時に味方が散った。 「よし、左はボクが押さえるよ」 コクリ、左。 「うに、空中戦は得意じゃないから援護に回るにゃ!」 艦載滑空艇に乗った猫宮・千佳(ib0045)がぐうんとコクリに追随。千佳の頭の上では相棒の仙猫「百乃」が遠い目をしているぞ。 というのも出撃前。 『我は空が得意じゃないから船を守る方に回るのは…だ、ダメなのにゃね…』 などとうるうるした瞳をしたが、主人の千佳にわしりと首根っこをつかまれ連行された。 『いつものことにゃけどね』 猫髭へにょり。 「近寄らせないにゃよ〜っ!」 主人の千佳はコクリに近寄りそうな敵に水球スプラッシュ、スプラッシュ。 そして、右。 「どんな策を弄したって、空で僕と星海竜騎兵には勝てないよ…それに何より、僕は僕達の手で、この短剣の秘密と謎を解き明かすんだからなっ!」 ぎゅん、と回り込みつつ滑空艇・改弐式「星海竜騎兵」を駆る天河 ふしぎ(ia1037)が黄金に輝く三叉の槍穂先を持つ魔槍砲「ヴォータン」を構えて片目を瞑り、ど〜ん! しかし。 「外れた? ヴォータンの命中率で?」 顔を上げるふしぎ。外れたというか敵が射程外に逃げたという感じか。 「ふしぎさん、敵は低空で勝負したいみたいです」 赤い衣装のアナスがふしぎの前に割って入り声を上げた。ベイル「翼竜鱗」を掲げ味方の盾となる覚悟を決めているだけに、敵の攻撃意欲の低さには敏感だった。 「まっすぐ仕掛けていきますわ。頑張りますのー」 左手となり中央では、最後尾からシャルがサンダーフェロウで真っ直ぐ突っ込んできていた。耐久力を生かして囮になるつもりらしい。ぶうん、ぶうんと龍尾を仕掛けるが敵は本腰を入れて攻撃はせずに下へと蜘蛛の子を散らすように逃げている。 ――タァン。 上から急降下してきたシーラのオランジュは得意の形で爆連銃を放つが、狙った所に当らなかった。 「さすが堅守が売りと言うべきなのかしら?」 浮かない顔のシーラ。実は手の内が読まれているのだが。 嫌な予感が胸に去来する。 ここから戦場は敵のペースとなった。 こちらは、浮上したシャルンホルスト周辺空域。 「まだいたのですか?」 生は目を見開いていた。 あれだけ艦載機が上がってきたのに、さらに滑空艇5機程度が防空のため上がってきたのだ。 はっ、と息を飲む生。 敵滑空艇が先程までと違いすべて黒いことに気付いた。 「まさか、『槍天狗』残党?」 空賊三隻を相手に戦った記憶が蘇った。 黒い機体の槍天狗は既に退治したが、こちらが「空の斧」と手を組んだように敵も残党を取り込んでいたのだ。やがて敵機から矢が来る。 「……ララド=デ・メリタで重要機関を削っておきたかったですが、コクリさんたちに知らせなくては」 生、離脱に切り替える。 が。 「くっ……仕方ありません」 猪突猛進が売りの敵、突っ込み速度は伊達ではない。低空に逃げるがやがて、激しい集中攻撃を受けてやむなく不時着することとなった。 場面は主戦場、低空域。 「んもー。当らないし、敵は時間を掛けて数をかけて……えいっ!」 ルゥミが追われて、遺跡の柱の間をすり抜けるように飛んでいた。 いま、急反転で柱を高速のまま直角に曲がった。追っている敵は大きく回ることとなり、引き剥がすことに成功する。 「でも、また!」 ぱうっ、と半身で牽制射撃する隙はできたが新手に背後を取られた。 苦戦しているのは、手の内が読まれているためだったりする。 ――パン! 新たな射撃音は…… 「無事か、ルゥミさん」 オーラの翼を広げた翔馬が横に並んだ。 宝珠銃「ネルガル」を放ったクロウだ! 「クロウちゃん、後ろから来てる」 「おっと、忙しいな」 ルゥミに指差されて気付いたクロウ、名刀「ズルフィカール」を抜き放ちながら振り返り迫った敵に斬り付ける。が、さらに後続も来ている。かなり組織的な攻撃だ。もちろん、クロウは離脱して次の一撃に備える。 「うにゃー!!」 ここで上空から小苺の舞風が舞い降りた。 ぶぅわ、と翼を力強くはためかせソニックブームを見舞う。 さらに射撃一直線! 「気を付けて。上空からも狙ってるわよ」 シーラもやって来た。 これで形成は逆転しそうだ。 が。 実はそれだけではない。 ひひん、とジンクローがやって来た。 「敵が逃げてます。……地上の穴から地下に」 鞍上のアイシャが矢を放ちながら知らせた。 先程までここで戦っていた敵もみな一点を目指し引いていた。 「罠なのは一目瞭然。ならば、できるだけ……」 アイシャは高速で追いつき矢を放つ。 上空ではふしぎや千佳、シャル、アナス、そしてコクリが穴へ向かう敵を追っているのが見える。 「罠。かといって、機を逃すのは得策じゃないにゃ。むむむ」 「……明らかに誘われてるな。だが行くしかねえ」 腕を組んで悩む小苺。クロウは小苺の悩みを消すようにすっと前に。 「クロウちゃん、あたい、考えがあるんだ」 ルゥミも声を掛けながら急ぐ。 戦場は、新たな舞台へと移る。 ● 敵滑空艇はすべて、迷わず地下へと下りた。 「結構、小回り利かせてたよね」 コクリが穴を見下ろしながら迷っている。 「任せて、コクリかんちょー」 ルゥミが白き死神を寄せて何やら厚めの矢盾を取り出……いや、ぱたんぱたんと木製の翼と機首を開いて変形させて、小さな滑空艇型にしたではないか。 「囮だよ。何かの役に立つかなって作っておいたんだ! うまく滑空してよ〜」 ぐうん、と爆撃……ではなく、穴への射出ルートに乗り、風に乗せて放した。 すい〜っ、と穴へと入っていく囮。 するとすぐに矢を放つ音がした。 「左翼側からの射撃だったかしら、クロウ?」 「ああ、間違いねぇ」 上空から角度を変えつつ囮の行方を目視追跡していたシーラがクロウに確認した。バダドサイトで暗視はできないが、入ったばかりの囮が矢を受けてどちらに墜落していったかは分かる。 「じゃ、左に突っ込もう!」 「うに、待ってにゃ、コクリちゃん」 先陣を切って穴に入ったコクリ。千佳もこれをすぐに追う。 「コクリちゃん、私から離れないでーっ」 シャルもすぐに降下。 しかし、もちろんこれは狙われていた。 「うわっ!」 コクリ、地上からの一斉射撃で撃墜。 「うにゃーっ!」 続いた千佳も撃墜。 『空賊は嫌いにゃ! 空を飛ぶから! 地上で戦ってくれれば空を飛ばないで済んだものをー!』 百乃は千佳に必死にしがみついている。 「穴が明るいから狙われてるですのーっ!」 シャルのサンダーフェロウはこれを耐えて、無事に着陸。不時着した二人を救うべく持参したアーマー「レーヴェ」を展開しつつ叫ぶ。 ここでシーラが動いた! 「そう……じゃあ、逆に徹底的に照らし出してあげるわ」 白の照明弾を発射し、突入。 「守りは任せてください」 横からアナスが出できてシーラの盾となる。 「あら?」 「私の本命はこちらですから」 気にしなくていいのに、という感じのシーラに背負っているアーマーケースを見せるアナス。 「分かったわ」 シーラ、入ると同時にもう一度照明弾。くん、と機首を上げてからももう一発。とにかく撃てるだけ撃ちまくる。これは利いた。 反対に、高度を下げたアナスの艦載滑空艇に射線が集中した。 アナス、墜落するように不時着する。 「敵の位置はおかげで随分つかめました」 大きな怪我ではないと判断すると、早速アーマー「人狼」改「轍」を展開する。 小苺の舞風も下りてきた。 「前回の分も存分に暴れる……にゃにゃっ!」 着陸した敵滑空艇を見つけ近寄ったところで、隠れていた敵から一斉射撃を食らった。 「気をつけろ、敵の着陸した滑空艇は囮だ!」 羽ばたく翔馬「プラティン」を駆るクロウは小苺のはまった敵の戦法を看破し味方に伝えるべく声を張る。 「よくもやってくれたにゃ! いくにゃ、舞風、袋叩きもとい袋刻みにするにゃ」 体勢を立て直した小苺は舞風に大きく羽ばたかせ、ソニックブーム。派手な動きを敵に見せ付ける。 これを見た敵は、地上戦から再び空中戦をすべく滑空艇に乗り込んだ。 「ちくしょう、空に逃げるか。細かく動きやがるが……」 クロウは名刀「ズルフィカール」に持ち替えプラティンで地上を駆けて斬りつけたところ。逃げられ悔しそうに見上げはするが瞳は輝いている。 「こっちは陸も空もスムーズなんでな」 ばさっと羽ばたき空を翔け、追う。 どかかっ、と蹄の音。 「馬なんですから地上でもお手のものですよ?」 アイシャも戦馬「ジンクロー」で着地すると地を駆けて瓦礫の裏に隠れる敵を見つけては射掛けている。地上の遮蔽物がアイシャを守るため、敵は対応に苦慮している。 「くそっ。ならばこっちもからだ」 アイシャに気付き、瓦礫に隠れ矢を放つ敵。 が、すぐに倒れることに。 「すり抜けた……だと?」 アイシャの放った、薄緑色の気を纏う矢が障害をすり抜けて自分の胸に刺さっていたのだ。 「『月涙』ですよ?」 これで慌てて空に逃げる敵。 もちろんアイシャの得意は長距離射撃。これを追撃すべく矢を放つ。 その上空。 ふしぎが敵滑空艇に背後を取られていた。 「誘い込んだつもりだろうが、この星海竜騎兵なら閉所の戦闘だって……」 ぐぐっと滑空艇の可変翼が広がり速度が落ちる。ふしぎを追い抜くしかない敵。 しかし、その間に横から別の滑空艇がふしぎを狙う。 「逆に追い込まれたのはお前達だっ!」 こうすると運動性能もアップするんだ、とばかりに強引に旋回。敵をやり過ごすと今度は強襲で背後を追い……いや、これは追いつかないだろう。 否っ! 「短剣は置いていって貰うんだからなっ…そして僕達が、謎の先の未来を掴む!」 夜で時を一瞬止めた。 そして二丁魔槍砲の一斉射撃。二天の技術の応用で軸はぶれない。 ――がすっ。 敵滑空艇を華麗に撃墜した。 こちらは、折れて崩れてしまった柱。 ぎゅん、と敵に背後を取られた滑空艇改「白き死神」が通り過ぎようとする。 「黒い鴉じゃ白き死神には勝てない!」 いや、急反転して空中静止したぞ。 敵は通り過ぎてから大きく反転し向かってくる。 もちろん、白き死神のルゥミはじっくりこれを見ている。 片目を閉じて漆黒のマスケット「魔弾」を構える。 正面からすれ違いの勝負だ! 「白黒つけるよ!」 銀の単発が揺れ魔弾が吠える! ――ビシッ! 敵の矢はルゥミが盾にしていた柱に当り、通り過ぎた敵はしばらくしてからバランスを崩し墜落した。 「これが、参式強弾撃・又鬼」 ルゥミ、素早く次弾を込めつつ口元を満足そうに緩める。 地上戦では。 「千佳さん、お願いっ」 「にゅにゅにゅ、邪魔をするんじゃないにゃ! マジカル♪ブリザードにゃー!」 コクリが囮となり走り、敵がまとまったところで千佳が範囲攻撃。ぐっと親指を立てるコクリに、にゃふん、と胸を張る千佳。 「上がお留守だぜ?」 これを敵滑空艇が狙う。 「闘技場なら敵のアーマーでも出てくるかと思ったですのよ?」 シャル、レーヴェの巨体を入れて二人を守る。ずっとこのパターンでこの辺りを制している。 「やれっ!」 が、敵首領らしき滑空艇から指示が出た。 「な、なんですのーっ」 ――ガスッ! シャル、思わぬ衝撃に愕然とする。 なんと、敵がアーマーに体当たりしてきたのだ。 ――ガスッ! 「これは……酷いですね」 アーマー「轍」でチェーンソーを振り回していたアナスも敵の横からの体当たりを食らって転倒していた。堅牢を誇ったシールド「グラン」をついに取り落とす。 「敵のボスが降りて奥に向かったにゃ」 アナスが顔を出したところで舞風の小苺も着陸。体当たりの指示を出した敵の動きをちゃんと見ていたのだ。遺跡探索をしたくてうずうずしていたのが幸いした。 ここに、新たに上空から敵が狙って来た。 これは完全に捕らえられたぞ? 「にゃーっ……って、何にゃ?」 「間に合いましたね」 見上げる小苺。 そこには迅鷹「ヤタ」と同化し背中の光の翼で羽ばたく朽葉・生がいた。錫杖「ゴールデングローリー」を振るった後だ。 「ヤタがいて本当に助かりました」 生、細い顎を上げると前に飛ぶ。 そちらではコクリ、千佳、シャルの三人が敵のボスを追っていた。 「待てーっ!」 「ふん、体当たりにも恐れず周りを見て対応してくるか」 コクリたちに追われる「三つ目鴉」のボスが振り向きながら舌打ちをする。 その横から突然、誰かが突っ込んできた。 「行かせないわよ」 シーラだ。 オランジュで回り込んで着地し、盾を構えて一気に突っ込んできた。 「おわっ!」 騎士剣「ロッセ」にオーラを纏わせた一撃。ボスを狙ったが側近が身を挺して守った。 ――ヒヒン! 今度は、馬の嘶き。 「そこまでね」 「そこまでだな」 アイシャとクロウだ。完全に前に回り込んで行く手を阻んでいた。シーラの横からの突撃で前がやや不注意になっていたのだ。 「よし、反対も抑えたぞ」 シーラの逆はふしぎの星海竜騎兵が着陸する。 敵のボスと数人は包囲されて完全に足を止める。後からはさらに生、小苺、アナスも到着した。 「仕方ない、交渉だ。ボスは誰だ?」 観念したボス。コクリが前に出る。 「はぁ? こんなガキが……いや、娘か。面白い。気に入った」 こんなのに負けたのか、という顔をしたがすぐに真顔になった。 「これをくれてやる。この先も好きに探索すればいい。その代わり追って来るなよ?」 言うなり、探検を投げた。 「コクリさん!」 アナスが前に出てベイル「翼竜鱗」で受ける。三文字の短剣だ。 「…迅鷹!」 生が目を見張る。 敵のボスはこの隙に舞い降りてきた迅鷹と同化し、光の翼で飛び立った。周りに飛んでいた敵もこれを守るべく随伴する。 生、追う姿勢を見せる。 「いい子だ。この件からは一切手を引く。……嬢ちゃんに困ったことがあれば空賊を束ねて助けてやる。楽しいことがあったら知らせな」 見上げるコクリたち。 「コクリちゃん、これで全部揃ったにゃね〜」 「さあて、遺跡探検するにゃ」 コクリに抱き付きスリスリする千佳。そして小苺の言葉に頷く一同。 さあ、探索だ。 ● 一同は、敵が進もうとした闘技場の先に伸びる通路を探索していた。 「周りの警戒を頼みます」 盾を掲げたアナスを先頭に進む。 「闘技場みたいな場所の先は……」 通路は狭いのでジンクローから下りて進むアイシャ。 「神殿みたいですのー」 シャルは槍烏賊を構えてそんな呟き。 「きっと、勝者がこの通路の先の戦利品をもらえたんじゃないかなー」 ルゥミはわくわくしている。 「分かるかにゃ?」 『生憎とイヌではないから匂いを嗅いでも分からないにゃよ?』 千佳と百乃はそんな感じ。 が、やがて瓦礫で行き止まり。 「任せてください」 ここは生のララド=デ・メリタ。障害物を消していき……。 やや広い部屋に出た。中央に台座と宝箱。もう、通路はない。 「空の宝箱がある」 コクリ、中に入る。 「うに、この中身ってどこにあるんだろうにゃー??」 「二重底かもしれねぇぜ?」 覗き込む千佳に、どれどれとクロウ。 「定番は、宝箱のさらに下、とかだけど」 しゃがみこみ台座を調べるシーラ。 「一応、帰路を確保しておきます」 「シャルも行くですのー」 通路側に立つアナスに、てててと隣につくシャル。 「風の流れは…」 小苺は隠し部屋を探してきょろきょろ。 「松明の火を見る限りでは…」 皆のために明かりを持つ生が残念そうな顔。 「再生の獅子を刃が歯を尾を盾持て止める…いや、獅子は騎士とか尾は目や手かもしれないけど」 ふしぎはぶつぶつ言いながら盾と同じ紋章を探している。 「土の場所はないにゃ? 掘った後、無いかにゃ?」 千佳は床の下を調べようとうろうろ。 「それだわ」 シーラがピンと来て台座の動く仕掛けを見抜いた。さらに床の埃を丁寧に払い始めた。 そして紋章の彫られた石を発見。 外すと、床の下から【エトーリア王家紋章の首飾り】が出てきた。 「これで……揃ったはず」 コクリ、敵の投げた短剣に刻まれた 「めがに」 の三文字をじっと見詰める。 |