【希儀/密命】糸口
マスター名:桜紫苑
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: 難しい
参加人数: 9人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/02/18 23:22



■オープニング本文

前回のリプレイを見る


●狩り
 ゆらり、炎が揺れた。
「何ぞ良き事でもございましたか」
 注いだ酒に映し取った揺らめきを眺めるうちに、気持ちが漏れ出たらしい。傍らに控えていた男に問われて、口元を歪める。
「良き事、か。そうだな。炎に追われ逃げた小動物共を再び狩り立てられると思えば、心も浮き立つというもの。だが」
 一息に酒を流し込み、杯を男の顔へと投げつける。
「人形の分際で主の心を読むという愚を犯した阿呆め。不愉快だ。消えろ」
 途端、がくりと崩れ落ち、ぴくりとも動かなくなった男を一瞥することもなく、新しい杯に酒を注いで笑んだ。
「さて、どのように狩るか。長く遊んでやってもいいが、仕留めるならば活きがいい方が面白い‥‥」

●標
 集めて来た希儀の様々な資料の中から、意図的に選別したものを更にフィフロスで調べた。
 予め選別していたとはいえ、それなりに量は多い。
 馴染みのない言語で記された資料を読み解くのは時間が掛ったけれど、手分けして、更に分類した。
 その結果が、今、焔が手にしている冊子だ。
 書き留められているのは、希儀に伝わる伝承だった。
 きっかけは、何気ない開拓者の一言。
 剣に関する記述を集めているうちに、それが天儀の民話伝承と被る事に気付いた。
 生贄の姫を救う勇者。
 亡き妻を取り戻そうと黄泉に向かう男。
 姫の協力で難題を解決した勇者の悲劇。
 そして、複数の頭を持つ蛇の化け物退治。
「希儀で最も大きな沼に棲む化け物、か。‥‥天儀の民話で、多頭の蛇を退治した剣は「天羽々斬」。関係があるのか、無いのか‥‥」
 片割れを示すと言われる「布都御魂」は、希儀に来てからも沈黙したままだ。
 可能性とほんの少しの好奇心で、天井から吊るしてみたのだが、羅針盤のように方角を指し示してくれる事もない。
「どうしたものか‥‥」
 呟かれた声は、皆が寝静まった部屋に低く響いたのだった。


■参加者一覧
霧崎 灯華(ia1054
18歳・女・陰
水月(ia2566
10歳・女・吟
赤鈴 大左衛門(ia9854
18歳・男・志
ケロリーナ(ib2037
15歳・女・巫
御調 昴(ib5479
16歳・男・砂
叢雲 怜(ib5488
10歳・男・砲
笹倉 靖(ib6125
23歳・男・巫
フレス(ib6696
11歳・女・ジ
神座亜紀(ib6736
12歳・女・魔


■リプレイ本文

●情報交換の一コマ
 霧崎灯華(ia1054)は言葉を失った。
 単独行動をしていても、仲間との情報交換は必要だ。打ち合わせていた通り、指定された場所に来たのだが、目の前に広がる光景には口元を引き攣らせるしかない。
「えっとぉ‥‥」
「あ、灯華姉ちゃんが来たのだぜ!」
 灯華の姿を見つけた叢雲怜(ib5488)がぶんと手を振る。
「姉ちゃん、早く早く!」
 木々が太陽の光を遮り、何となくおどろおどろしい雰囲気を醸し出している沼のほとりに茣蓙を敷き、弁当やら何やらを広げて、仲間達は野遊びに来ているかのようにのんびりとくつろいでいた。
「‥‥伝承の調査はどうしたわけ?」
「順調に進んでますよ」
 にこにこと笑って御調昴(ib5479)が灯華の為の場を空ける。
「蛇退治の伝承が残っている場所で、最も大きな沼」
 昴は静まり返った水面へと視線を向けた。
「幾つか似たような場所があったのですが、消去法で行くとここが最有力候補ですね」
「で、場所が絞り込めたから一旦休憩しようって事になってさ」
 手についた米粒を舐め取って、笹倉靖(ib6125)が肩を竦める。
「そうそう。腹が減っては戦は出来ないからね」
 はい、と神座亜紀(ib6736)が差し出した折詰には、天儀を出てからお目に掛かる事もなかった寿司が詰められていた。つんとしながらも、どこか甘さを感じる酢の香りに食欲を刺激され、灯華は苦笑しながらも折詰に手を伸ばしたのだった。

●警戒
「灯華姉ちゃんは忙しない」
 ぶすっと頬を膨らませると、怜は食事と簡単な情報交換の後、すぐに場を離れた灯華への不満を漏らした。
 そんな怜の様子に首を傾げた水月(ia2566)に、靖がこっそり耳打ちをする。
「ずっと別行動の姉ちゃんと久しぶりにゆっくり出来ると思ってたから、拗ねてるんだよ」
「聞こえているのだぜ!」
 拗ねてないと主張する怜を笑って躱し、靖はぽんぽんとその頭を叩く。じゃれ合う2人を眺めながら、フレス(ib6696)は隣で握り飯を頬張る赤鈴大左衛門(ia9854)を見上げた。
「‥‥食べ過ぎなのだよ?」
「だいじょぶだス! まだまだいけるだスよ!」
 ぐっと腕を曲げて力こぶを作ると、大左衛門はフレスを安心させるように笑ってみせた。
「うん、力こぶ関係ないんだよ」
 口のまわりに飯粒をつけた全開笑顔の大左衛門に、フレスもにっこり無邪気な笑顔で突っ込みをいれる。‥‥が、大左衛門自身が突っ込まれた事に気付いていないので、傍目には和やかに会話を交わしているようにしか見えない。
「平和、ですね」
「‥‥ん」
 呟いた昴に、水月がこくんと頷く。
 天儀で執拗に襲って来た者達の気配は、今のところ全く感じられない。それが些か不気味だ。
「ボク達が布儀に渡って、奴らが諦めたとは思えないよね」
 亜紀の言葉に、もう一度水月が頷いた。
 と、その時、焔と共に周囲を調べていたケロリーナ(ib2037)の上げる小さな声が、彼らの耳に届く。緊張を孕んでいない事から、それは敵襲などではないと知れた。しかし、戸惑っている様子も伝わって来る。
「どうかした?」
 ケロリーナの背に声を掛け、彼女の視線を追った亜紀も驚きの声を上げた。
 沼へと迫る切り立った崖へと続く岩場の陰に、人が倒れていたのだ。
「焔おねにぃさま‥‥」
 駆け寄ろうとしたケロリーナを手で制して、焔が人影へと近付く。
 慎重な手つきで抱き起こすと、焔は成り行きを見守る仲間達へと視線を向けた。
「はいですの」
 即座に、ケロリーナが動く。
「え、今ので分かったんだ?」
「うーん、多分、慣れのようなものではないかと」
 焔と行動を共にする事が多いケロリーナは、どうやら目線1つで焔の意図するところを汲み取る術を身に付けたらしい。目をまるくした靖と昴の会話を聞き流し、水月はフレスの裾を引いた。
「分かっているんだよ」
 背中へ回した手に胡蝶刀を握ったフレスと、杖「榊」を持つ手に力を込めた水月とを見て、靖が深く溜息をつく。
「女の子って凄いよね」
「ある意味、超能力と言っていいかもしれませんね」
 軽口を交わす靖と昴も、何が起きても対応出来るように立ち位置を変えている。
「焔さ、どうしただスか?」
 そんな中、構えるでなく、ふらりと動いたのは大左衛門だった。ひょいと焔が抱えている人物を覗き込んだ大左衛門がずざざっと後退る。
「べべべ‥‥」
「べ?」
 仲間達の視線が集中する中、頬を赤らめた大左衛門はへなへなとその場に崩れ落ちた。
「別嬪さんだス〜‥‥」
「‥‥さて、とりあえず介抱しようか」
「昴にいさま、なんか楽しそうなんだよ‥‥」
 いつも通りの仲間達のやりとりに、水月は微かに口元を緩めた後、ゆっくりと周囲を見回した。森の入口に仕掛けておいた瘴索結界に異変はない。大きな沼の全てを覆うのは無理だが、要所要所に設置しておいたから、ある程度はアヤカシの侵入を感知出来るはずだ。
 あとは、図書館や港で襲って来た人々のように操られている者だが、能力を何割増しかにされていても、開拓者に勝てるとは思わない。
(‥‥用済みになったら、あっさり捨てるの‥‥ひどい)
 次に彼らが襲って来た時には、1人でも多く助けよう。
 決意を込めて、水月は手をぎゅうっと握ると仲間の元へと向かった。

●伝承の剣
 村を襲ったアヤカシと黒づくめの集団。
 村に取り残された人々を助け出す為には、この沼の奥、複数の頭を持つヘビが守る宝しかないとここまでやって来た‥‥そう語る娘に、開拓者達は思案げに黙り込んだ。
 ここまで似通っていては、疑うなと言う方が無理だ。
「その宝ってなに?」
 考え込む大人達を尻目に、怜は娘に詰め寄った。
 押さえ切れない好奇心が体中から溢れだしている。
「その昔、お姫様を救った勇者の剣、「ラティオクス」‥‥だそうですの」
 手製の辞書を片手に、ケロリーナが娘の言葉を伝える。
 途端に、怜が気炎を上げた。
「お姫様を救う勇者ってカッコ良くて憧れるんだぜ! ‥‥で、お姫様を助けたあと、どうなったの? ママ上が寝る前に聞かせてくれたお話みたいに、めでたしめでたし?」
「ちょ、ちょっと待って下さいの。えーと‥‥」
 身ぶり手ぶりを交えてケロリーナが怜の言葉を伝えると、娘はようやく笑みを見せる。
 昔語りを強請るように、怜が娘から聞き出した話は、剣に認められた英雄にしか扱えない「ラティオクス」に纏わる冒険の物語だった。
「‥‥剣に認められるとは、具体的にどのような事なのでしょうか?」
 問うた昴に、娘は崖を指差した。
「沼の奥に隠された洞窟の中に、複数の頭を持つヘビがいるんですの。剣の英雄以外は、そのヘビにぱくって丸呑みにされちゃうらしいですの」
「そんな危険を冒してまで、村の為に‥‥ううう、感動だス! 娘サン、安心して欲しいだス! わしらが絶対、力になるだスよ〜っ!」
 手近に咲いていた野花を一輪毟ると、大左衛門は男泣きに泣きながら娘へと差し出す。その勢いに気圧れたのか、娘は躊躇いつつも花を受け取った。
「なるほどな」
 ぽつりと呟いた靖は、素早く仲間達と視線を交わす。
「焔、何か反応はあるか」
 無言で焔は鞘掛けから刀を取り出した。
「凄く、熱くなってる」
 ずしりと重い刀を受け取った亜紀が思わず呟く。
 薄く光を纏い、刀自身が発熱しているかのように熱い。その反応が示すものは、恐らく1つ。
 開拓者達の表情に緊張が走った。
「こっちの伝承通りなら、剣を守るヘビがいるはずだ」
 確認の為に靖が瘴索結界を展開しようとしたその時、地面が揺れた。
 次いで、巨大な水柱が立ち上る。
 そこから飛び出して来たのは、開拓者達もよく知る人影だった。
「灯華姉っ!?」
 灯華は崩れ始めた崖を足場に、幾度も身を翻す。
 よくよく目を凝らせば、もうと立ち込める土埃の中、灯華を追うものがある。四方八方からの攻撃を、灯華は、まるで激しい舞を舞うかのごとくに躱していた。
「敵か!?」
 周囲を素早く見渡した後、靖はフレスと頷き合った。とんと軽く地を蹴ったフレスは、灯華を援護する為に胡蝶刀を振りかざす。
 が、彼女の一撃は飛んで来た何かに弾かれてしまった。
 体勢を崩した隙を狙ってフレスへと伸びた攻撃は、怜の短筒「一騎当千」から放たれた弾が防ぐ。
 相手も彼らを灯華の仲間と認識したようだ。
「敵の正体がまだ見定められませんね」
冷静に呟いた昴に、怜はぶんと首を振った。
「もう、見えたのだ。あれ!」
 射手である怜は目がいい。縦横無尽に攻撃を仕掛けてくるものの動きを追い掛け、やがて崩壊する崖の一点を指差す。
「全部、あそこから来ているのだ!」
「なるほど」
 攻撃を止めるには元を叩けばいい。そう伝えようとした昴は、ケロリーナの悲鳴に動きを止めた。
「わわわわわわわ、へびですの〜っ!」
 自分の真横を掠めていったものが巨大なヘビの頭だという事に気付いて、カエル大好き少女の本能がそれを拒絶したらしい。
「あーっ、もう面倒っ!」
 ケロリーナの悲鳴に気を取られていた怜は、苛立たしげに舌打ちして叫んだ灯華にぎょっとした。
「灯華‥‥姉、まさか‥‥」
「全部吹っ飛ばしてやるわ。アイツが剣を守っているなら、ちょーっと一緒に飛んじゃうかもだけど」
「ちょっ! 待っ‥‥!」
 一時退避!
 怜が叫ぶのと灯華が悲恋姫を放つのとは、ほぼ同時だった。その凶悪な力は崩れかけた崖へと突き刺さり――。

 眩い光が周囲を焼く。

 気がつけば、あれほどに激しかったヘビからの攻撃は途絶えていた。

●天羽々斬
 目が眩む程の光は、いつしか一点に収束し、きらきらと光の欠片を振り零しながら1本の剣の形となった。
「あれが‥‥天羽々斬‥‥」
 古に天儀より失われた剣は、何千年もの刻を越えて巡り合えた兄弟剣の元へと引き寄せられるようにゆっくりと降りて来る。手を伸ばして柄に触れると、ばちっと軽い衝撃が走った。
「っ、何‥‥?」
 針で刺されるみたいな痛みが走り、亜紀は思わず剣から手を放す。
「これは、剣がまだ俺達を認めていないってことかな」
 亜紀に代わって剣に触れた靖が、顔を顰めて指先を振る。その顔には苦笑が浮かんでいた。
「でも、布都御魂はこんな事ないよね」
 抱えていた布都御魂に目をやると、亜紀は眉尻を下げる。
 天羽々斬を見つけたのはいいが、触れる事も出来ないのでは天儀に持ち帰る事も出来ない。
「あの‥‥!」
 深刻な表情で剣を囲み、黙り込んだ仲間達の間から昴が手を挙げた。
「布都御魂なら、どうでしょうか? 天羽々斬も布都御魂を拒絶する事はないはずです」
 その言葉に頷いて、亜紀は布都御魂を差し上げる。宙に浮かぶ天羽々斬の鞘に布都御魂が触れた途端、天羽々斬は吊るした糸が切れるように落下した。それを受け止めたのは、布都御魂の鞘掛けを手にした焔だ。
「なるほど。布都御魂と共にあるならば、天羽々斬の拒絶も軽減される、か」
 鞘掛けで天羽々斬を包んだ焔に、亜紀は布都御魂を渡す。
「布都御魂も、そのままじゃ可哀相だから、あとで綺麗な布を探してあげるからね」
 猫の子にでもするように布都御魂を撫でながら呟いた亜紀の傍らで、ケロリーナは2本の霊剣を見つめて眉を寄せた。
「布都御魂は天羽々斬を導いて、天羽々斬は‥‥」
「ケロリーナさん?」
 覗き込んで来る昴に視線を向けると、ケロリーナは思い付くままに言葉を重ねる。
「内緒の依頼は、2本の霊剣が天儀にとっても重大な意味を持つから? なら、あの黒い人が襲って来るのはどうして? 希儀に着いて襲撃がないのはどうして?」
「それは‥‥」
 言い淀んで昴も考え込む。
「それは、彼らが天羽々斬を‥‥」
 昴は体を震わせた。探し求めていた霊剣が見つかったこと、剣の番人たるヘビを退けたことで安堵していた心に冷や水を浴びせかけられたようだ。
「皆さん、気を付」
 仲間達を振り返ろうとして、昴は息を呑んだ。
 水月の細い首に絡みつく手。
 つぅと頸動脈をなぞると、その手の主は口元を吊り上げて笑った。
「また会えたな、小鳥」
 娘の口から聞こえて来たのは、希儀の言葉ではなく、慣れ親しんだ天儀の言葉。そして、「小鳥」という単語が示すものを、水月も仲間達も十分に理解していた。
「あ、あなたは」
 ごくりと喉を鳴らして、ケロリーナが問い掛ける。
「‥‥女装が趣味ですの?」
 緊迫した空気の中、一瞬だけ仲間達の体が揺れた‥‥ような気がした。
「ふ。お前の国では、女が女の格好をする事を女装というのか」
「いや、アンタもまじめに答えるなよ」
 口元を引き攣らせて、靖がひらひらと手を振る。
「あー、つまりは年端もいかない女のコに「我が小鳥」とか囁いたのはアンタの趣味ってことでいい?」
 がしがしと頭を掻いて、溜息と共に吐き出された言葉に、娘は不快そうに鼻を鳴らす。
「くだらない」
 ふーん、と靖が睥睨してみせたと同時に彼の陰から飛び出したフレスが娘へと一撃を浴びせ、大左衛門が水月の腕を引き、水月の杖が娘の足を打ち据える。
 けれども。
「あっ!」
 胡蝶刀を避けた娘がフレスの腕を掴み、捩じり上げる。
「水月の次はフレス? 人質をとって剣と交換とか、せこい事を考えてるのかしら?」
「まさか」
 背後に回り込み、その首筋に金蛟剪を押し当てた灯華に、娘は嘲りを浮かべて肩を揺らした。
「貴様がヘビに放った技を、もう一度使ってみるか? 真正面から受けてやろう。‥‥使えるものならば、な」
「‥‥」
 ヘビとの戦闘は全て見られていたのだろう。
 ぎり、と灯華は唇を噛んだ。
 悲恋姫を使えないわけではない。しかし、あれは消耗が激しい。真正面から受けると豪語する相手に、何の策もなく使うのは危険だ。
「どうした。来ないのか? 来ないのならば、こちらから行くが?」
 金蛟剪を持つ灯華の腕を払って、娘は首筋目掛けて手刀を振り下ろす。
「なめないでよ、ねっ!」
 腕を払われた時点で次の攻撃を予測していた灯華は、飛び退りざま足を払う。すかさず、水月と大左衛門が攻撃を仕掛け、一旦距離を取ったフレスも再び間合いへと踏み込む。短筒で彼らを援護するのは怜だ。
 だが、その全てを躱し、娘は一息に剣を持つ焔へと襲い掛る。
 咄嗟に前に出た昴と靖を薙ぎ払い、ケロリーナと亜紀が放った術をものともせず、剣へと手を伸ばした。
 その手が剣に触れようとした瞬間、剣が光を放ち、娘は見えない壁に弾き飛ばされる。
「‥‥剣が、拒絶した‥‥のですの?」
 呆然と呟くケロリーナの声に、開拓者達が我に返った時には娘の姿はどこにも無く、湿り気を帯びた温い風がただ吹き抜けていくばかりであった。