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■オープニング本文 前回のリプレイを見る ローザ・ローザが篭ると考えられていたベルイフ領の西の森洞窟内。 レナ・マゼーパ(iz0102)は見張りに立っていた陰陽師の神西橙火(トウ)に人魂を使い、洞窟内を探らせた。 その結果、ローザは洞窟内部から地下に潜り、人魂から得られる情報を見守っていた皇女を含め、その場にいた者達の背後土中よりその姿をいきなり現した。 瘴気を操る陰陽師の術は、何らかの形でローザに刺激を与えるであろうと考えてはいたが、前に人質を捕えていたのも地下だったから、彼女が地下を移動している可能性は想定できたはずだった。 そこに思い至らなかった自分の浅はかさにレナは臍を噛んだ。 ひとりの死者も出さず、橙火も、彼の妹弟も無事に退避させられたのは、その時そこにいた開拓者の動きがあればこそだっただろう。 ローザは飢餓状態で再生回復を行えず、その体は軋み割れかけている。 今こそ息の根を止める好機であるが、その身の内に恐ろしいほどの瘴気を溜め込んでいることが現した姿により判明した。 恐らくとどめを刺せば、あっという間に森中が瘴気の海と化すだろう。 森だけならまだいいかもしれない。 それが村にまで届いたら? いや、そもそもとどめを刺すためにその場に居合わせる開拓者達は? 駿龍のハル・アンバルをヴォルフの屋敷に下ろした。 出迎えた騎士が慣れた様子で龍を誘導し、ニーナが駆け寄る。 「またすぐ行くの?」 手袋を取って足早に歩くレナにニーナは言う。 「橙火は?」 レナは尋ねる。 「暫く口もきかないし、何も食べない状態で」 屋敷の扉を開いてニーナは答えた。 「昨日、一発殴って叱り飛ばしたの。げんこつで」 レナは思わず足を止めて彼女の顔を見た。ニーナは肩をすくめる。 「トウのことは前から知ってるから、許容範囲よ」 はあ、と息を吐いてレナは小さく首を振り、再び歩き始める。 「話せる?」 尋ねると、ニーナは頷いて先にたってレナを促す。 「騎士がびっちり見張ってるから軟禁状態だけど」 そして彼女はひとつの扉の前で足を止めた。 開いた扉の中は明るく広い部屋だった。 騎士のひとりがレナとニーナを見て立ち上がる。座っていていいからとレナは手を振り、 「蒼」 と、片隅にいた迅鷹を見て思わず声を漏らした。 「助かったのか…」 蒼はレナを見て小さく啼いた。 迅鷹の蒼は出現したローザに翼を半分引きちぎられ、橙火と共にヴォルフに運ぶ時には助からないかもしれないと思われたのだ。 レナはその後、窓辺の椅子に座る橙火に目を向ける。 我が身を捨ててローザに対峙しようとした橙火の行動をレナは許さなかった。 二度とローザには関わらせまいと開拓者の力を借りて西の森から撤退させ、ヴォルフ伯爵に身柄を委ねられた。 どうやらバレクを通じて彼をよく知っているニーナが厳しく接しているようだ。 橙火は立ち上がる気配もなく、前のように物静かな表情でじっとこちらを見ていた。 「蒼が助かって良かった」 近づいてレナが言うと、橙火は目を逸らせた。 「でも、もう前のようには飛べない」 彼は言った。 「俺があの時呼ばなければ」 「飛べない迅鷹を眠らせてやろうという話もあったの」 ニーナが小さな声で言った。 「でも、桃火ちゃんが泣いて蒼から離れなかったの」 「翼を無くした…」 橙火は呟いた。 「飛べない迅鷹にはもう愛情を持てぬか?」 レナは言ったが、橙火は答えなかった。 「ローザを討ちに行く」 レナは彼の向かいの椅子に腰を下ろす。 「私は生きて帰りたい。共にする開拓者も死なせたくない」 橙火は目を向けない。 「其方のように命を奴には捧げようとは思わない」 「それでも奴は道連れにする」 目を向けないまま橙火は答えた。 「身の内に溜め込んだ瘴気は奴の死と共に光矢のごとく周囲を飲み込むだろう。傍にいた者は巻き添えを食う」 ニーナが思わずレナの顔を見る。 「私は必ず帰る」 橙火は何も答えない。レナは彼を見つめ続け、沈黙が続く。 暫くして橙火は口を開いた。 「あの穴を使えば? ローザが掘ったあの穴を」 橙火は突き放すような声で言った。 「風は吹く。地中で葬りそのまま埋める。地中ならば川のように瘴気が下流に流れることはない。月日と共に瘴気は徐々に雲散していくだろう」 橙火はそのあと微かに口元を歪める。 「誰が一緒に埋まるのか知りませんが」 レナは息を吐いて橙火の見ている窓の外に視線を伝わせた。 何事もなかったかのようなヴォルフの大地と青い空が広がっている。 「其方はどこでローザの情報を知り得たのだ?」 尋ねると、橙火はちらりと彼女に目を向けて再び窓の外を見る。 「ローザに聞いた」 その答えにレナは目を細める。 「友を食らい、友の顔で奴が言った。お前にできるものかと嘲笑いながら」 橙火は怒りの表情を浮かべて言い放つ。 「…そして俺はできなかった。貴方にもできない」 レナは椅子の背に身を預け、頬杖をついて橙火を見る。 「どうしてそう思うの」 「生きたいと願うから」 橙火は答えた。 「その時思い出したのね。桃火と白火のことを」 レナの言葉に橙火の視線が苛立たしげに揺らぐ。 「いまいましいお姫様だ」 橙火は言う。 「其方も鼻もちならぬ」 レナも負けてはいない。 「ちょっと! けんかしてどうするのよ」 ニーナが口を挟んで橙火の耳を掴んでねじりあげる。橙火は痛みに顔を歪めた。 「レナが来たらちゃんと話をしてねって言ったでしょ! スープに人参を山ほど入れるわよ!」 「人参が嫌いな子供が偉そうな口を利くものではないわ」 レナが鼻で笑うと、橙火は耳をさすりながらレナを睨む。 「子供に子供と言われる筋合いはない」 「トウっ!」 再び耳を掴もうとしたニーナだったが、さすがに橙火はぱしりとその手を止めた。 「必ず帰ってくるから人参が食べられるようにしておいて」 レナは言った。 「其方はあの時奴に勝ったのよ。苦悩と怒りにまみれて奴と対峙し捕えられていたならば、それこそ奴の最高の餌だった」 彼女はそう言って立ち上がった。 「奴が少しずつ追い詰められていったのは、彼らが闇を見ないから。囚われて揺さぶられていたのは私のほう。私は彼らを信じて共に行く」 「彼ら…?」 橙火は目を細めた。 「開拓者は甘くない。そう言ったのは其方ではなかったの?」 レナは答えた。 |
■参加者一覧
酒々井 統真(ia0893)
19歳・男・泰
黎乃壬弥(ia3249)
38歳・男・志
フェンリエッタ(ib0018)
18歳・女・シ
フレイア(ib0257)
28歳・女・魔
叢雲 怜(ib5488)
10歳・男・砲
イルファーン・ラナウト(ic0742)
32歳・男・砲 |
■リプレイ本文 ベルイフ領、西の森を見渡せる丘の上。 ここは前に領主であったエドゥアルト・ベルイフの屋敷があった場所だ。 鷲獅鳥のイェルマリオに騎乗し、フレイア(ib0257)が先行して偵察を行った。 「前に人を囲っていた穴も騎士達が塞いだ様子。それ以外に見える範囲ではやはり出入り口らしきものは見当たりませんわ。巧みに隠していたなら別でしょうけれど、ないことを願いましょう。あとは山の裏側?」 フレイアは言った。 「裏側は連なる山脈で、そこに逃げれば奴も更に飢えに耐える決心をつけねばなりますまい」 ヴォルフ騎士団長のゲルマンが答えた。 そうだ、飢え、だ。 ローザは喰らえることを待ちわびている。 ヴォルフからの騎士は6名。第3騎士団長ゲルマンは今まで洞窟前でローザを見張っていた壮年の騎士だ。 「フェンリエッタ(ib0018)様からお預かりした衣を布に。こちらは姫様がお渡しくださったアイスミストのローブを同じく解き、数枚に」 ゲルマンは龍に乗せた布を示した。 「縫製はベルイフの村の民が。エドゥアルト様が与えてくださった縫製技術が最後にこの地を守ることを祈ると」 それを聞いてレナ・マゼーパ(iz0102)が一瞬目を伏せる。 「村の人達は避難を?」 布を触って確かめたフェンが言うと、ゲルマンは微かに眉を吊り上げた。 「実は予想外なことが。あの見張り台の村が避難拒否を」 それを聞いてイルファーン・ラナウト(ic0742)は思わず無言で丘の背後にある村を振り返る。 「なんで」 酒々井 統真(ia0893)が神甲を軽く打ち合わせて尋ねる。 「村を…捨てたくはないと」 「今までを思えば気持ちが分からぬでもないが…バレクは何をしてる」 レナの少し苛立ちを含んだ声。 「説得中です」 それを聞いて思わず息を吐き、空を仰ぎ見たあとのレナの視線が黎乃壬弥(ia3249)と合う。 「つつけば弾ける瘴気爆弾、奴も堕ちるところまで堕ちたもんだ。だがな、生憎こちらは堕ちちゃいねえ。なに、爆弾は地下で破壊すりゃいいだけの話だ。ボン! とな」 壬弥は最後の言葉で手を上に向けてぱっと開く。 言うが易いが実は難な戦いであることは彼も重々承知。それでも彼の飄々とした言葉には救われる。レナは小さく笑みを浮かべたあと全員を見回した。 「飛空船は間もなくこの丘まで来る」 飛空船にはイルファーンの進言に基づき、ローザの破壊された穴を埋める土砂が積んである。 土砂はゲルマン率いる精鋭部隊とは別の騎士達が龍に積み替えて待機。 ローザのとどめが地下となれば彼らは地埋めの為、この土を携えすぐさま上空に来るであろう。地上なれば土砂は捨て、瘴気を避けて飛空船と共に一気に上空にあがる。上がったとて感染しない保証はないが、後の脱出援護を第一に行動する。 しかしながら地下か地上かの判断がいかにタイミングよく伝達できるかが鍵となる。 ヴォルフの騎士頼みであるのをカバーするのはフェンの連れた又鬼犬フェランの遠吠えだ。さらにウルシュテッド(ib5445)の忍犬ちび、あるいは彼自身の聴覚が威力を発揮するであろう。 「短く2回なら地下。長く1回なら地上。聞き分けてうまく連携を」 フェンが言った。 ローザにぎりぎりまで最も接近しているのは統真と壬弥。次に近いのはフレイアとフェン。 砲術士の叢雲 怜(ib5488)、イルファーン、レナはローザの退路や動きが封じ込まれたところで迎撃。ここではもうとどめになる。 「イルファーンのおっちゃんの射程にローザが入ってきたら集中攻撃開始するのだぜ。レナ姉、射程は?」 「私はイルファーンより短い」 レナが答え、イルファーンが怜にぬっと顔を寄せる。 「おっちゃん?」 怜の口が「あはっ?」と開く。イルファーンはその頭をぐりぐりと撫でた。 「奴が外に出る気配あればお前の狙撃力で撃ってくれ。待つな」 「でも…皆が距離をとりきれて…」 怜はイルファーンを見上げ、言いかけて口を引き結び頷く。 「…分かったのだぜ…」 瘴気を浴びるより、奴が地上に出てしまうリスクの方が甚大。怜の視線を受けてレナも頷いた。 ゲルマンがそこで口を開く。 「我らは地上の手下の邪魔立てを阻止。討伐脱出時は上空より縄を下ろします。しかし脱出も困難を極めます。共に気力消費覚悟を」 頷いたレナは父から賜ったカービン銃を掲げた。それに続き皆がそれぞれの武器を掲げる。 壬弥は太刀を、フェンは殲刀を、怜は漆黒のマスケットを、イルファーンはがしりと重い火縄銃を、フレイアは千早を絡める美しい手を、統真はその鉄の拳を、ウルシュテッドは忍刀を。 皆で無言のまま目を合わせる。 我らに勝利を。 「信じる」 レナは言った。 フェンは統真と共に鎗真の背に。フェランはレナが。ウルシュテッドはゲルマンが。ちびは騎士のひとりが預かり洞窟前に到着。 素早く鎗真の背から洞窟入り口に荒縄を携えた統真とフェンが滑り降り、ウルシュテッドもそれに続く。 「突入するぞ」 「な、何言ってやがる! この洞窟は危険なことは知ってるだろう!」 統真の声に壬弥が呆れた声を出す。 「そんな悠長なことをまだ言ってるの? 臆病風に吹かれるなんて、志士の名が泣くわね」 フェンが言い返し、フェランがわんっ! と吠えた。 「大きな図体も見せかけだったようですわねえ?」 と同じく洞窟に降り立ったフレイア。 「うるせえ! 俺のでかさは懐のでかさに比例してんだ!」 と、壬弥。 「声のでかさの比例は顔か…?」 壬弥が思わずレナを見る。冗談を言ってどうするよ、とその目が言っていた。 そう、これは大芝居。仲間内で分裂させたと奴に見せかける。 レナには少し難しかったようだ。 「とりあえず俺達は行く。てめえはそのへんで昼寝でもしてやがれ」 統真はそう言い捨て背を向ける。それに続くフェンとフレイア、ウルシュテッド。 「統真!」 叫んだのは再びレナだった。その声に何かを感じて4人は振り向く。 レナの顔は真実だった。生きて帰って、とその表情が物語っていた。 統真は腕を伸ばし、親指を立てて笑みを浮かべた。 「レナ、待ってろ」 彼らの姿が外の光の届かぬ先に見えなくなった時、ちらりと何かが反射した。 フレイアがストーンウォールで洞窟の入り口を塞いだのだ。 もう戻れない。 「行くぞ」 イルファーンが声をかけた。レナは微かに青ざめた顔で頷いた。 ウルシュテッドが松明を持って先に行く。フェランも3人の前を進む。 「水の音が聞こえるな」 同じく松明を持った統真が呟いた。岩肌に触れると湿った手触りがした。 「地盤が確かに脆そうね。彼女が暴れないことを願いたいわ」 フェランの様子を確認してフェンが言う。 「私達は大切な餌。岩ごと全滅はさせませんわ」 フレイアは答え、その後に思う言葉は飲み込んだ。でも、統真もフェンも察してしまう。 『全滅はね』 まともに戦い、分が悪いと思う相手は餌ではなく彼女にとって敵だろう。それをどこまで見切っているだろうか。 フェランが小さく鼻を鳴らした。 「叔父様が何か見つけたみたいだわ」 フェンは言った。急いでウルシュテッドの元に近づく。 足元からふわりと風を感じた。松明を照らすと、直径1m半程の穴が開いていた。これが地下に続く穴であることは容易に察することができたが、覗き込んでも底まで松明の光が届かない。 洞窟は穴を挟んで向こう側にも更に続いていたが、フェランが反応しているのは穴のほうだ。奴はやはりこの先にいると思っていいだろう。 統真は手の平にすっぽりと入るほどの石を拾うとフェンとフレイアを見る。 2人が頷いたので、彼は手の中の石を放り込んだ。皆で石の地上到達の音に耳を澄ませる。 ――― カツン… 「20…25m…もっとかな」 フェンが呟き叔父の顔を見る。ウルシュテッドは暫く考え、それくらいかもと頷いた。 統真は周囲を見回して縄を括りつけられる岩を探す。少しまた離れなければならなかったが、強度を確認して縄を回して固定、再び戻ってきた。 「念のためひとりずつだ。岩の強度より奴の攻撃に備える」 統真は言った。 ウルシュテッドが最初に。次にフェン。一度縄を引き揚げてフェランに括り付けてそっと下ろす。 その後フレイアが。統真は最後を希望した。 微かな水音以外何の音も聞こえない。不気味なほど静かだ。 底についたウルシュテッドの持つ松明の灯りを上から見るととんでもない高さに思える。 「高いところが苦手じゃない自分に感謝だわ」 フェンがそう言って穴に入っていった。 穴の深さはやはり30m近くあり、底に降り立つとすぐに横穴が続いていた。フェンがやっと立って歩ける高さで狭い。フレイアやウルシュテッドは身を屈めねばならないだろう。 降りた順に横穴に移動して全員が降りるのを待つ。フェランが到達したのでフェンは横穴の先に警戒待機させ、全員が降りてくるのを待った。 フレイアが降りかけた時、突然異変は起こった。 フェランが低く唸り、ウルシュテッドが体中で警戒する。何かが来る。 最初は「チッ」という小さな声だった。夜雀。 横穴の奥から来たそれを、フェランがあっという間に飛びかかって仕留める。さらに一羽。 ――― チッ チッ チッ… ――― チッ チッ チッ チッ チッ チッ ――― チッ チッ チッ チッ チッ チッ チッ チッ… ――― ザアアアアッ! 夜雀の大群がすさまじい勢いで横穴から上穴へ舞い上がる。フレイアが底に到達。 「統真!」 フェンが叫ぶ。 「心配ねえ! 通り過ぎてるだけだ! このまま降りる!」 上から統真の声が聞こえた。 煩い大群をやり過ごしたが、これで何もないとは思えない。ウルシュテッドが警戒を促す。案の定、今度は無数の羽音。 「嫌な奴が来たようですわね」 フレイアの声の直後、それは来た。今度は鉄喰虫だ。まずい。 防御の姿勢をとったが、奴らもまた通り越し、縦穴に昇って行く。その理由をいち早く感じ取ったのはまだ降りきっていない統真だった。 カツンと頭上から落ちていった小さな石。 カツン、カツンとそれは増えて行く。 「ん、のやろう…」 統真は頭上を見上げ、素早く縄を伝い降りてあらん限りの声で叫んだ。 「穴が崩れる! 逃げろ!!」 すさまじい音が響き渡った。 こちらは穴側に着いたイルファーン達。 穴は思いのほか深く広かった。ローザ出現時に倒れた木々が折れ重なるようにして中にあるため全貌は上からでは分からない。 龍達は各々止り木を見つけ待機。上空に残るヴォルフの騎士は2名、残りは地上に開拓者と共に降りた。 壬弥が倒木を伝い穴に降りる。どこかに洞窟に通じる横穴があるはずだ。 ちびが地面に鼻をすりつけて何かを知らせるように小さく吠えた。 「この犬は覚えがあるようだ。来るぞ」 レナにゲルマンは「お任せを」と頷いた。各々の龍達も指示を与えているから狼達が来れば戦うはずだ。 「レナ」 壬弥が横穴を見つけた。倒木の幹の向こうに壬弥の顔が見える。 「横穴はここだけだ。中は木の根っこまみれだな」 カンテラを掲げ、壬弥は言った。 「心眼は気配を感じるか?」 「今はまだ何も。俺は行くぞ」 「待って」 レナが素早く穴に降りる。続きイルファーンと怜も。 横穴は狭かった。壬弥が片腕を伸ばすと壁に突き当たる。そして先が見えない。外から見える範囲からしても木の根まみれの足元は行く手を阻みそうだ。 ローザはここまで出てくると倒木を伝い、すぐに地上に出てしまう。それを考えるとこの横穴の中がいいのだろう。でも…。 レナは魔槍砲で頭上を突いた。ばらばらと土が落ちて来る。 「ゲルマン」 レナは魔槍砲を彼に渡した。 「横穴に入る。狼は絶対入れるな。アイスミストの布を一枚私に」 「レナ」 壬弥が首を振った。 「砲術士は最後の砦だ。崩れたら全員お陀仏だぞ」 「援護できるぎりぎりまで離れる。奴だけが来るとは限らない」 レナは松明に火をつけ、カービン銃を抜いた。 「イルファーンは私の更に後方、怜は穴の外で待機」 「レナ姉! 嘘だろ?」 怜が声をあげた。怒ったような彼の顔をレナは暫く見つめた。 「分かった。怜、奴をこの入口まで出してはならぬ。其方が必ず最後尾で死守して。迷わず撃つのよ」 「俺は迷わないし、疑わない。絶対みんなが無事に戻る」 怜は答えた。 「行くぞ」 壬弥が足を踏み出した。 鬱陶しい根を払いながら壬弥が先に進んでいく。 暫くして後方で獣の声がした。 「狼らが来やがったか」 イルファーンが呟いた。 「怜! 騎士が漏らした奴は頼むぞ!」 「分かってるのだぜ!」 答える怜の声はさらに遠い。壬弥の心眼はまだ何も察知しない。 その時、前方で途方もない音がした。 何? と思う間もなく頭上が振動で崩れる。 「レナ!」 「壬弥!」 土砂の向こうに消える壬弥の持つ灯りに叫ぶレナの頭をイルファーンが庇った。 「みんな無事か!」 荒い息の下で統真は叫ぶ。すぐにウルシュテッドが消えた松明に火を灯した。 鉄の壁が光に照らされ鈍い色を放った。フレイアのアイアンウォールだ。 すんでのところで横穴に滑り込んだあと、縦穴にはすさまじい勢いで岩と土砂が雪崩れ込んだ。 横穴に土砂が浸入するのを彼女が鉄壁で防いだのだ。 「全く…こんな手が通用すると思ったのかしらね」 優雅に腕の土埃をはたきながらフレイアは少し怒ったように言った。 「統真、血」 フェンが統真の額を指差す。 「心配ねえよ。石っころがひとつ当たっただけだ」 統真は答えた。 「フレイアの読みは当たったな。ちょっとでも戦力減少させて喰らいつく魂胆だ」 「でも、失敗に終わった。飢えにさらに拍車がかかったことでしょうね」 と、フレイア。 「姿見せたら壬弥に出会うまで俺が注意をひきつけて誘導する。この狭さだと相当難航しそうだけどな」 統真は穴の奥に目を向けて言った。 「叔父様はできるだけ速く出口に向かってフェランの声を聞きとって」 フェンが叔父に願う。 「横穴も脆そうですわね。何とか皆が脱出できる位置まで」 頭上に触れてフレイアが言った。了解と皆が頷いた。 「おーい、無事かー」 むくりと起き上がって壬弥は後方に声をかける。 「大丈夫だ!」 イルファーンは答え、腕の下のレナを見る。 「怜!」 レナは声を張り上げた。 「大丈夫なのだぜ!」 元気な声が聞こえてレナがほっとしたのがイルファーンの腕に伝わった。 カンテラを確認し、壬弥は再び火を入れた。 「落ちた分だけ天井は高くなったが、足元は余計鬱陶しいな」 そう言って前を向いた彼の目が細められる。何か来る。奴か、それとも別のものか。 太刀に手をかける。奴なら抜けない。そうでなければ…でも速い! 「ガウゥゥウウッ!」 暗闇から飛び出した狼を木の根ごと斬り捨てた。 「なんで前からきやがる」 壬弥は先の暗闇に目を凝らす。 レナとイルファーンもそれに気づいて身構えた。 暫く進み、何度か襲ってくる狼を壬弥は斬る。その間隔がだんだん狭くなっていく。 「おい!」 周囲を見回していた壬弥は立ち止り声をあげた。壁に開いた狼の頭がようやく出て来るような小さな穴。 壬弥に追いついたレナとイルファーンが穴を見る。 「こんな小さな穴から?」 顔を近づけたイルファーンはぬっと首を出した狼に慌てて身をのけぞらせる。 狼は狂ったように身をよじらせ穴を広げるように出ようとする。 レナが撃った額への一発で、狼はムッとする瘴気を残して消えた。彼女は持っていた布を穴にねじ込む。 「私がここに残る」 レナは言った。 「先に行って。壬弥」 気遣わしそうな視線を一瞬残し、壬弥は再び歩を前に進め始めた。 「俺が残る」 イルファーンは言ったがレナは首を振った。 「其方の銃の威力は狼じゃない。ローザに使え。狼くらい私が…」 「ギャウウウウッ!」 言っている間にねじ込んだ布が食いちぎられ、狼が顔を出す。 イルファーンは携帯していた銃剣で狼の首を斬り、瘴気が雲散しきらぬうちに火縄銃を穴に突っ込んで一発放った。衝撃でばらばらと頭上の土が落ち、レナが思わず腕をあげて頭を庇う。 「レナ姉!」 怜の声が響く。 「心配ねえ!」 イルファーンは答え、 「俺の銃は穴塞ぎにも威力がある」 口元を微かに歪める彼の顔を見て、レナはふうと息を吐いた。 「それと、この状態だと俺達が先に進めるのはあと数十メートルだ。それ以上深入りするととどめをさす態勢に影響が出る」 「分かってる」 レナは答えた。 頭上から木の根が至る所に突き出している。ウルシュテッドが暗視を使いながら先に進み、それでも更に注意を払って見通しの悪い場所ではフレイアが銀の手鏡を用いて進路を確認する。 突然フェランが鼻を鳴らし落ち着かなげに唸った。 いる。 ローザが近くにいる。なのに姿が見えない。 先頭のウルシュテッドがふと歩を止めた。彼の様子に気づいた統真が手をあげて後方のフェンとフレイアに合図する。口元に指を立てたウルシュテッドの仕草は逆に音を感知した、ということだ。 「フェラン、しっ…」 フェンの声にフェランが唸りを止める。 指を立てたままウルシュテッドが右を向いた。その視線を皆で追う。右はただの土の壁だ。 それでも静かに反対側に身を寄せながら見つめていたその時 ―――― ズシャッ…! 白い腕がいきなり土の壁から飛び出した。 腕は統真を掠め、フェンを掴み取ろうとして空を切った。 ガラガラと壁が崩れ、さらにもう一本の腕が飛び出す。統真が苦心石灰を放って腕を抑え込む。 「フェン! 行け! 壬弥と合流しろ!」 「フェラン!」 フェランとフェン、ウルシュテッドが先に走る。上半身を出したローザの無い首元からごぼりと瘴気が零れ、統真の頭上に落ちる。統真は思わず息を止め、それはフレイアの足元にも及んだ。 「フレイア! 構わねえ! 行け!」 足元に目を向けたフレイアはうごめく人喰鼠の姿を見た。 彼女が出口側に移動したのを確認した統真は素早く奴から身を放す。よろけて地に手をついたローザは人喰鼠を掴み取り、それを首の中に放り込んだ。アヤカシがアヤカシを喰っている。もはや見境のない雰囲気だ。 「どうした、獲物の場所もわからねえか! こっちだぜ!」 統真が煽動する。怒り狂った様子でローザは木の根を掴み、握りつぶした。 統真は瞬脚を使う。この様子だとローザも動きが速い。フレイアは万が一の援護ができる距離まで移動する。 壬弥がフェランの吠え声に気づいて歩を止めた。フェランの姿を見た途端、無数の鼠がそれに続いてくる。鼠を踏み越えウルシュテッドが出口に向かう。 「叔父様! レナ達は外へ! 奴はすぐ来るわ!」 フェンの声がした。 「また、うざったいのがわらわらとっ!」 壬弥は鼠を踏みつけて叫ぶ。 「ローザが来るわ!」 「承知、承知」 「出口まではどれくらい」 「80m程度だ」 「フェランを…」 「おう! 2回だ。意地でもな!」 ウルシュテッドの姿を見て出口側に急いで戻るレナとイルファーンはフェランの遠吠えを2回聞いた。後方の怜も聞いているだろう。続いて鼠の群れが来る。 「レナ! 急げ!」 イルファーンが叫ぶ。 「このクソ鼠…!」 レナが呻く。 「怜が松明をつけてる」 イルファーンは言った。出口付近10m範囲内に怜が灯した松明を転々とあちこちに差している。 明るい場所なら奴らも動きが鈍る可能性がある。案の定、手前で鼠達はその場でぐるぐると右往左往していた。 出口に着いた途端、狂ったように倒木の隙間から顔を出した狼をイルファーンは撃った。 「上は狼の波だぜ!」 怜が言った。騎士と龍達が必死になって穴に入り込むのを防いでいる。 「皆とローザの距離ができるだけ離れてることを願うしかないな」 狙撃の態勢につく怜の前にイルファーン、更に近づいてレナ。 「姫様!」 ゲルマンの声が聞こえ、レナの手元に魔槍砲が届いた。 「壬弥、其方からもらったこの銃でとどめを刺してやる。必ず戻って」 レナは呟き、銃を構えた。 「来い! うすのろ!」 統真が近づいたかと思えば瞬脚で離れ、ローザを移動させる。彼女が動くたびにごぼりごぼりと首から瘴気が零れだす。零れ出すごとにローザは焦ったように手当たり次第に手で掴みとったものを首に押し込んでいく。その様子は狂気だった。 しかし統真は一番最初に瘴気を浴びている。気力も間もなく半減となるだろう。退却分を残しておかねば彼が動けなくなってしまう。 フレイアが危うさを感じた時、 「おら! 餌はこっちだぞ!」 壬弥の声がした。やっと合流した。 「統真!」 フェンが走り寄り、殲刀を掲げて斜陽を放つ。 フレイアが壬弥のカンテラを受け取る。 「ほら、来いよ。鬼さんこちら、とな」 背後に回った統真とフレイア、フェンを確認して壬弥は不敵ににやりと笑い、指でくいくいと招く。 ローザとの距離、数メートル。出口のほうにいくつもの灯りが見える。怜がつけた松明だ。恐らくそこがボーダーライン。 「さあ、来い、いい調子だぜ、おっと、空振り、惜しいな」 振り上げられる腕を避けながら壬弥が動く。 瞬間、ローザの姿が消えた。衝撃を受けて全員が倒れる。フェランの吠え声。 統真が唸り声をあげて立ち上がり、木の根を飛び越えた。続き壬弥が。 ローザは全員を跳ね飛ばして瞬時に出口側に移動していた。灯りの距離まで15m。出口まで25m。 「フレイア! フェン! 走れ!」 統真が叫ぶ。 「フェラン!」 フェンの声にフェランが出口に突進した。 ローザの前に立ちはだかる統真。ここでやるしかないのか? もう一度瞬間移動されたら外だ。 振り上げられるローザの腕。 統真が歯を食いしばった時、壬弥が背後からその腕を掴んだ。その壬弥の体をローザはいとも簡単に振り回す。鈍い音をたてて地面に落ちた壬弥だったが、フェンが携えていた布をローザに放った。 もともとこうしたことに使う予定ではなかったが、ローザの動きは鈍った。 「走れ!」 壬弥は怒鳴った。そして近くの松明を一本取る。 「あの世の土産にいいものをくれてやる」 彼はそう言って布を取ろうともがいている彼女の泥まみれのドレスの腰飾りに刀のように松明を突っ込んだ。 「アヤカシにあの世なんかねえけどな!」 壬弥は叫んで身を翻した。 「レナ姉! ローザを捕えた!」 スコープを使った怜が叫ぶ。しかしまだ皆が出て来ない。頭上では土砂を携えた龍がいる。そしてもちろん狼も。 フェランが飛び出して来た。吠え声に反応してウルシュテッドが素早く穴に入る。 いったい何が起こっている? 皆は? 自分の耳に聞こえる自分の呼吸。3人の銃口がひたすら穴の中を狙っていた。 「灯りが動いてる」 レナが言い、イルファーンを見る。 「標的をつけてくれたらしい…いや、止まった?」 イルファーンは答えた。脱出援護のためにウルシュテッドが「夜」を使ったのだ。 しかし皆はまだ出て来ない。 そしてようやく最初にフェンとフレイアが。次に統真。そしてウルシュテッド。 「壬弥…!」 レナが小さく声を漏らす。時間にしてはほんの数秒だっただろう。 「撃て!」 辿り着いた壬弥は叫び、身を伏せた。 怜のマスケット、イルファーンの火縄銃、レナの魔槍砲が一斉に一点を狙う。 3つの銃声。 その音が穴の中に消えたあと、世界の全てが無音になったように思えた。 穴の中でゆらめく松明の火。それが次々に消えていく。 本能的に全員が身を伏せる。 ――― ゴオォォォォッ…! 穴を渦巻きながら瘴気の黒い爆風がとてつもない勢いで身を包む。 この時、皆が同じ幻影を見た。 それを知ったのはずっとあとになってからだ。 赤く燃えるような無数の花びらが黒く燃え尽き影となって消えた。 ローザが最期に見せた抵抗の幻覚だったのかもしれない。 「早く縄を!」 一瞬気を失ったのかもしれない。イルファーンの声にレナは目の前の縄を掴んだ。 音が戻る。狼達がまだいる。 レナが縄を掴んだのを見てイルファーンが引き揚げられていく。自分の体がふわりと浮いた、と感じた時、ふいに頭に衝撃を感じた。あ、と思う間もなく再び下に落ちる。 「レナ姉!」 怜の声が聞こえた。縄。縄はどこだ。手を伸ばすが視界が赤くてよく見えない。それが狼に襲われて頭を切った出血のせいだとはまだ彼女は知らなかった。 「レナ、来い!」 近くで壬弥の声がする。手を伸ばすと力強い手がしっかりと自分の手を掴んだ。そのまま足が地を離れる。 その後のことをレナはあまりよく覚えていなかった。 心地よい風に頬を撫でられ目を開く。 「気がついた? お姉ちゃん」 覗き込む怜の顔。自分がイルファーンの腕にがっしりと抱かれていたのを知って慌てて身を起こした。当のイルファーンは大の字になって高いびきだ。 「イルファーン? 壬弥の声を聞いたような気がしたのに」 レナは呟き周囲を見回す。ここは飛空船の甲板だ。 統真と助けてくれたはずの壬弥もぐったりと眠っている。フェンとフレイアは毛布にくるまれていた。 「壬弥のおっちゃんはお姉ちゃんを助け上げたけど、途中でイルファーンのおっちゃんがシャールクでそのまんま運んだ。お姉ちゃん抱いたまんまぱったりだ。みんな気力ぎりぎり。龍達も休んでるよ。俺ももう限界だぁ」 怜は笑ってレナに毛布を渡した。レナはそれをイルファーンにかけてやる。 「不甲斐ない…最後の最後に皆に手間をかけてしまって」 「あいつは剣狼だったから。頭はけっこう血が出るしね。襲われたのはお姉ちゃんだけじゃないの。みんな脱出するときけっこう大変だった」 レナは手当された頭の包帯に手をやり、そしてふと怜の顔を見た。怜は照れ臭そうに笑う。 「えへ。頑張ってローザをやっつけたからさ、お姉ちゃんって呼んでもいいかな〜って」 レナは笑った。 「もうずいぶん前からそう呼ばれていたような気がする」 風に煽られている怜の黒髪をレナは撫でた。 「怜、有難う。みんなにも感謝しきれない。右往左往してばかりの私に、みんなよくついてきてくれたわね…」 「着いて行くとかじゃないよ。みんなで一緒に来たよ」 怜の返事にレナは笑みを返し、立ち上がってそっと下を見下ろした。 もう森は見えない。船はジェレゾに向かっている。 「怜、あの後、穴と村の人達は…」 振り返ったレナは毛布にくるまってくうくうと寝息をたてている怜を見た。 「後で確認するわ…。お休み」 レナは小さな声で言った。 ローザ・ローザは酒々井 統真、黎乃壬弥、フェンリエッタ、フレイア、叢雲 怜、イルファーン・ラナウトの6名、及びウルシュテッドの助太刀を受け討伐された。 討伐時の瘴気は嵐のごとく、穴を埋めていた倒木までも吹き飛ばす勢いであったという。 それは一度穴を埋め尽くしたあと、上空に噴き上がったが、最後にフレイアが瘴気の渦の中で勇敢にも穴の前に立ち、ララド=メ・デリタで横穴を埋め込み、ウォールを打ち立てたので広範囲には及ぶことはなかった。 しかしながら、これが地上での討伐となった場合、やはり相当の被害が拡散したであろう。 ローザの討伐位置はこの位置が限界だったのだ。 そのぎりぎりのラインを死守できたのは開拓者達の連携の取れた動きの成果であったのだろうとヴォルフの騎士団長ゲルマンは言った。 開拓者とレナ皇女を引き揚げた後、穴は速やかに騎士が土砂で埋め尽くし、洞窟から続いていた横穴の場所も灰になり陥没したため土砂を落として更に埋め込んだ。 開拓者達は皆が瘴気を浴び、気力を使い果たしての任務となったため、全員がジェレゾで瘴気からの回復を受け、なおかつ消耗した練力も全て回復させた。 途中あちこちで受けた傷も同時に手当を受ける。 消費した提携品については同様の物、若しくは別の物を皇女より開拓者に渡された。 それ以外にこまごまとしたものを皇女は開拓者に贈ったが、物ではとても感謝を表せないほどの多くを私は開拓者達から賜った、と彼女は父に報告した。 ガラドルフ大帝は独りよがりでプライドだけが高かった末娘の表情がこれまでとは全く違うと満足の意を重臣達に話したという。 なお、避難を拒否していたベルイフの村だが、結局バレク・アレンスキーは説得することができず、討伐時も村人はそのままだった。 気を失っていたから分からなかったものの、飛空船は村の上空を飛び、村人は手を振って見送っていたから、レナ皇女が実際にそれを見ていたら彼女のことだから即座にハル・アンバルに飛び乗ってバレクを殴り飛ばしに行っただろう、と開拓者達は密かに思ったらしい。 此方の問題はこれからも残りそうである。 開拓者達に栄光あれ。 |