北面よりの使者
マスター名:御言雪乃
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: 難しい
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/08/22 03:15



■オープニング本文

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「万紅め」
 御簾のむこうから、掠れた老婆のような声が響いた。
「しくじったか。魔の森を失いおって」
 嘲りを滲ませて老婆のような声は続けた。
 声の主は考える。敗因は開拓者を侮ったことにあると。
 かつて声の主はひとつの里を壊滅の淵へと追いやったことがある。そう、九分九厘その里は滅びるはずであった。
 が、しくじった。開拓者のせいである。声の主自身、開拓者を侮っていたのであった。
「蟻の一穴により堤が崩れるということもある。上手く人間どもを使わねば。すでに東房の三割ほどの町や村はおさえた。さらに北面にも毒を仕込んだ」
 声はいった。
 北面での拠点。それは万紅の一件が露見したため、芹内王により潰された。が、手駒はすでに手に入れてある。
「次第に腐り始めた二国。つつけば膿が噴き出し、大勢の人間がのたうちまわり、死ぬこととなろう……ふふ」
 含み笑う声は少女のそれのようであった。


「北面の使者?」
 訝しげに問い返したのは五十代の男であった。髪や髭はすでに雪のように白いが、その身から溢れる精気は二十歳の若者もかくやというほど熱く沸騰している。天輪王であった。
「はい」
 肯いたのは、のほほんとした雰囲気をもった二十歳ほどの若者で。
 名は赤雷。現在は天輪王の侍僧をつとめている。
「内藤将監殿。北面の重臣でございます。此度、東房と北面が相協力して事にあたったことに対し、御挨拶申し上げたいとのこと」
「よかろう」
 天輪王は肯いた。断る理由はない。
「では」
 赤雷は退室した。すぐに背をむけたので、天輪王には赤雷の顔はよく見えなかった。

「赤雷殿」
 声が、した。
 愕然とすると、赤雷は足をとめた。振り返る。場所は鞍馬堂の前であった。
 天輪宗総本山である不動寺の中にあって、上位の僧しか出入りの許されない堂がひとつある。それが鞍馬堂であった。
 その堂の扉が開き、一人の男が姿をみせていた。女と見紛うばかりに美麗な若者で、口元にあるかなしかの微笑をためている。
 これが、あれか。鞍馬堂の蔵馬か。
 そう赤雷は思った。
 一応は説法派に属しており、時雨慈千糸よりの命を蔵馬は受けることもある。が、他に天輪王より直接の命を受け動くこともあるという。
「蔵馬殿ですね。何か御用でしょうか」
「はい。北面よりの使者、貴方が受けられたと聞きましたが」
「ええ。それが、何か」
 赤雷の眼が探るように蔵馬を見た。ただ微笑をうかべているのみで、気配は読み取れない。何を考えているか、わからぬ男であった。
「不動寺において北面の使者との対面。面白いことだと思いまして」
 蔵馬の笑みが一瞬だけ深くなった。


■参加者一覧
北條 黯羽(ia0072
25歳・女・陰
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
狐火(ib0233
22歳・男・シ
フィン・ファルスト(ib0979
19歳・女・騎
レイス(ib1763
18歳・男・泰
マックス・ボードマン(ib5426
36歳・男・砲
ユーディット(ib5742
18歳・女・騎


■リプレイ本文


「俺はサムライのルオウ! よろしくな〜」
 大声をはりあげて挨拶したのは十四歳ほどの少年であった。燃えるような紅髪で、好奇心に瞳を輝かせている。ルオウ(ia2445)であった。
 対する六人の開拓者の反応は様々だ。
 北條黯羽(ia0072)はどこか冷めた顔に艶っぽい笑みをうかべ、狐火(ib0233)は冷然と肯いただけ。マックス・ボードマン(ib5426)は言葉もなく翳りをおびた黒曜石の瞳をむけ、ユーディット(ib5742)は凛然と佇んだまま手をあげた。
 やや愛想良く対応したのはレイス(ib1763)であろうか。微かに微笑すると、会釈してみせた。相対したルオウの表情が小さく変わった。
 レイスという若者、顔は整っていて優しげで、いかにも好青年といた風情だが、その瞳の奥――
 ルオウはレイスの瞳の奥に一瞬閃いた牙を見てとっていた。それは毒蛇の牙であった。
「へえ」
 ルオウの唇の片端がわずかに吊り上がった。
 その時である。ルオウの背をばしんと叩いた者があった。フィン・ファルスト(ib0979)である。
「ルオウ君もこの一件のことは詳しく知らないんだ。あたしと一緒だね」
 フィンはいつものようにあっけらかんとして笑った。通常、人はこフィンの無垢な行動に惹きこまれる。が、この場合、ルオウは違った。首を傾げたのである。
 ルオウは若年ながら、かなりの手練れであった。それが何故フィンの何気ない一打を背にくらったか。
 理由は簡単であった。フィンの一打に殺気がこもっていなかったからである。なまじルオウは歴戦の戦士であるため、殺気に対して本能的に反応してしまうのであった。
「ところで」
 フィンが開拓者達を見回した。
「その……天陽宗でしたっけ。教えていただきたいんですけど。一体どういうものなのか」
「一言でいってしまえば邪宗だ」
 ユーデットがこたえた。
「邪宗?」
「ああ。人の肉を動物の肉としてばらまいていた。鬼畜外道の輩だ」
「うえ〜」
 フィンとルオウがうんざりした顔を見合わせた。それから苦いものを噛んだかのようにルオウは顔をしかめたまま、
「東房ってあんまし関わって無いからどんな所かって興味あったんだけどな〜。そんな気持ちの悪い連中の相手をすることになるとはね〜」
「気持ち悪いだけじゃない」
 マックスが苛立ちをまじえた声をもらした。
「奴らは東房だけではなき北面にも手をのばしつつある。こちらの方は芹内王が手を打ってくれたおかげで、まだ被害はそれほどではないようだが。しかし東房に至っては……」
 マックスほどの男が声を失った。そしてユーデットを見遣った。
 かつてユーデットは天陽宗の蒼貴なる者を斃すために霞寺に乗り込んだことがある。結果、彼女は記憶を喪失して帰還した。有体にいえば蒼貴に撃退されたのである。
 ユーデットは決して弱い騎士ではない。むしろ強い。常人からみれば超人といっても差し支えなかった。
 そのユーデットが成す術なく追い返されたのである。その一事から、敵の強大さは推して知るべしであろう。
「おそらく背後にいるのは陽貴」
 狐火が指摘した。
 陽貴。
 かつて人妖に憑依し、その力を利用して未綿の里を壊滅寸前まで追い込んだ上級アヤカシ。開拓者の手により一旦は追い払われたものの、再び舞い戻り、人妖を手に入れ、姿を消した。
「では蒼貴の正体が陽貴だと?」
「いいえ」
 狐火は首を振った。そして、しかし、と続けた。
「陽貴が天陽宗の首魁であることは間違いないでしょう」
「そっか」
 フィンは大げさに溜息を零してみせた。
「仲が悪かった国と国が歩み寄るって聞いて、喜んでたんだけどなあ。でもそんなことが裏にあるんじゃ、今回のこと、何かあるかもしれないですよね」
 フィンはレイスを睨みつけるようにして見た。
「しくじらない様にね、レイス」
「はい」
 にこりとレイスは笑みを返すと、フィンの頭を撫でた。
「フィンちゃんも気をつけるんですよ」
「うん。……って、何すんのよ。い、犬のくせに!」
 むきーっ、と。フィン頬を膨らませた。


 不動寺近くの堂。
 中に七つの人影があった。六つはいうまでもなく開拓者のものだ。
 のこる一つは花を思わせる美麗な若者であった。蔵馬である。
 その蔵馬の眼前。黯羽が露わとなった背をむけていた。さらしを巻いている。
「どうも上手くいかないねえ」
 黯羽が胸の辺りを見下ろした。強く巻いたつもりであったが、さらしが大きく膨らんでいる。乳房が大きすぎるのであった。
「フィン、頼むよ」
「はい」
 フィンが黯羽の背後に回った。腕力には自信がある。さらしをぎゅっと締め上げた。
「どうですか」
「う、ぐぐ」
 痛みをこらえ、黯羽が胸を見下ろした。先程よりはかなり胸が平らになっている。
「これならいいだろ。すまなかってね」
「いえ」
 首を振ってフィンは座った。気がつくとレイスがじっと彼女の胸を見つめている。フィンも当然さらしを巻いていたのだが、黯羽ほど苦労することはなかった。
「な、何よ」
「いえ……胸が大きいというのも大変だと思いまして」
「どういう意味!?」
 フィンがレイスの首をぐいぐい締め上げた。
 その時、狐火は蔵馬に天陽宗について知りえたこと、さらには推測を述べていた。蔵馬は菩薩のように薄く微笑をうかべ、
「なるほど。では、その陽貴なるアヤカシが背後にいると?」
「ええ。そして、その魔手はすでに不動寺にすらのびていると私は考えています」
 狐火の脳裏に赤雷の顔がよぎった。
 以前、狐火は不動寺を訪れたことがある。その帰途、彼は何者かに襲われた。敵は狐火が不動寺を訪れたことを知っていたのだ。
「幾つか確認したいことがあるのだが」
 マックスが良く光る眼をむけた。
「北面に対する東房のスタンスだ。魔の森焼き討ちが成功したからって、そう簡単にはと仲良くできない事ぐらいは私でも知ってはいるがね。で、実際のところはどうなんだ。もし問題が起こった場合、アヤカシや何やかやへの備えと並行して北面とやりあえるのかい?」
「さあて」
 蔵馬は小さく紅い唇をゆがめた。あえて言葉にはださないが、それが明白な返答であった。
「なるほど。となると御使者殿には何事もなく国に帰って頂けねば困るわけだ。こちらの面子が潰されるような事があってはいけないのは無論としてな。それと肝心の御使者殿――内藤将監についてだ」
 マックスはユーデットが口にしたことを脳裏に思い浮かべた。ユーデットは事前に内藤将監について調査を行ったのだが時が足りず、詳しいことはわからなかった。ただ樫村喜左衛門のさらなる上役であることだけは突き止めていた。
「どのような人物か、わかっているのか」
「北面の重臣です。対東房に関しては穏健派であるようですが」
「なるほど。穏健派か」
 マックスは肯いた。そうでなければさすがに芹内王も使者として出すまい。また天輪王も迎えまい。
 理屈は通っている。が、この胸のざわめきは何だ。
 その時、蔵馬が立ち上がった。
「そろそろいきましょうか。後一刻ほどで使者が町に着きます」


 三人の男が不動寺の宿の前で足をとめた。
 一人は初老の男、もう一人は中年で、三人めは若い。年齢は別々であるが、共通していることが一つある。それは三人が三人とも只ならぬ使い手であるということだ。
 余人は知らず、その事実をユーデットのみは見抜いた。それはユーデットもまた恐るべき使い手であるからだ。天才は天才を知る。
 ユーデットは東房に入った使者一行をずっと尾行していた。ここに至るまで別段異常なことはない。
 まず中年の男――塚田勘助が宿に入った。続いて内藤将監、最後に若い男――上杉周太郎が宿に。
 それを見届け、ユーデットは重い息を吐いた。使い手三人の尾行はユーデットの心身を想像以上に疲労させていたようである。
「いや、これからだ」
 ユーデットは自らの頬を叩いた。


 天輪宗総本山不動寺。
 境内と呼ぶにはあまりに広大なその片隅で、二人の僧が顔をあわせた。狐火とレイスである。
 どうです、と狐火が問うと、レイスは小さく首を横に振った。
「霞寺周辺から不動寺に来て働いている者はいません」
 レイスはこたえた。彼は不動寺内において天陽宗に通じている者を探していたのであった。
「そっちは?」
「こちらの方も同様です。ただ」
 調べた数人の僧や下働きの者。そのうちの何人かは赤雷の紹介であるらしい。
「赤雷?」
「ええ」
 狐火は眼で示した。
 本堂の方に歩いていく若い僧。赤雷であった。
「あれが赤雷……」
 レイスの瞳がぎらりと光った。赤雷の尋常ならざる精気に無意識的にレイスが反応したのであった。
「そうです。あれが赤雷です」
 狐火もまた赤雷の後姿を眼で追った。その瞳には焦慮の色が滲んでいる。
 不動寺内部にまで、すでにかなりの数の天陽宗の手の者が入り込んでいる。急がなければどうなるか――

 不動寺の奥まった一角。そこに小さな、それでいて豪華な造りの堂があった。鞍馬堂である。
 その周囲を一人の僧がぶらりと歩いていた。黯羽だ。
「誰もいやがらねえ」
 ぼそりと黯羽が呟いた。無理もない。上位の僧でなければ鞍馬堂に近づくこともできないのだった。
 黯羽は周囲を見回した。木立が多く、見通しは悪い。暗殺者を配置するには適しているといえた。
「どうも悪い予感がするぜえ」
 黯羽はごちた。


 不動寺の門が開かれ、三人の男達が中に足を踏み入れた。内藤将監一行である。
 出迎えたのは蔵馬と数名の僧だ。蔵馬は相変わらず菩薩の笑みをうかべているが、他の者達――東房側の者も北面側の者も強張った顔をしている。無理もない。先日まで東房と北面は仇敵の間柄であったのだから。
 蔵馬が先に立った。むかうのは上位の僧しか入ることは許されぬ鞍馬堂である。
 やがて蔵馬が足をとめた。
「天輪王が中でお待ちしております」
 蔵馬がいった。将監はうなずくと堂に歩み寄り――蔵馬が制した。
「腰のものをお預かりしておきましょう」
「では私が。私は外に控えておりますれば」
 周太郎が将監と勘助から刀を受け取った。
「では」
 蔵馬が鞍馬堂の扉を開いた。

 同じ時、ユーデットの姿は不動寺に至る道の上にあった。不動寺に用のある幾人かの通行人があったが、すべてユーデットが抑えた。有事の場合に備えてのことである。情報を漏洩させることはできなかった。
「今日は通すわけにはいかない。お帰りいただこう」
 ユーデットは天輪王の署名の入った書面を見せた。蔵馬が用意したものである。それをみとめた通行人がしぶしぶ引き返していった。
 それを確認し、ユーデットが振り返った。
「頼む。杞憂で終わってくれ」


 将監が座についた。傍らには勘助が座している。
 彼らの眼前には悠然たる様子の初老の男の姿があった。天輪王である。
 その天輪王の斜め前。数人の僧の姿があった。
 では上位の僧か。いや――僧に扮した開拓者であった。
 その開拓者の中、マックスのみはやや後方にいた。将監と勘助の同行をじっと見守っている。
 天輪王が声をかけた。それに将監がこたえる。手が動いた。懐に。
 まずい。
 マックスの手がすうと胸にのびた。抜き撃ちに備えて。と――
 マックスの手がとまった。将監が懐から取り出したのは書状であったからだ。
「芹内王より預かりし書状でございます」
 将監がわずかに膝をすすめた。
 刹那である。突如扉が蹴破られた。周太郎である。
 反射的に開拓者が腰を浮かせた。その時、すでに周太郎の手から棒状のものが飛んでいる。刀であった。
 空で刀をひっ掴むと、将監と勘助が天輪王に殺到した。凄まじい速さで。
「ぬっ」
 呻く声は将監の口から発せられた。彼らの眼前に幻のようにルオウとフィンの姿が現出したからである。将監達が暗殺に及んだと気づくやいなや、ルオウとフィンは業を用い、一瞬にして距離を詰めたのであった。
 次の瞬間、真紅の血煙があがった。


 はじかれたようにレイスが振り返った。凄絶の殺気を感得した故である。気がつくと数人の僧の姿が見えた。
 おかしい。
 レイスは身構えた。鞍馬堂はよほどの上位僧でなければ近づくことも許されないはずだ。
 一瞬でレイスは僧達の前に移動、立ちはだかった。
「どこへ行くのですか。この先にあるのは鞍馬堂ですよ」
「どけ」
 僧の一人が襲いかかった。するりとレイスはその僧の拳を避け、背後に。手刀をその首に叩き込む。
「赤雷さん」
 声がした。狐火のものだ。
 すると僧の中にまじっていた赤雷が足をとめた。飄然たるその顔に、一瞬だがどす黒い色が滲んだ。
「お前は……確か開拓者。何故、不動寺に」
「出家したのですよ」
 狐火はニヤリとした。
「蔵馬様の弟子としてね」
「蔵馬の……弟子?」
 愕然たる声を発した赤雷の歯が軋り鳴った。その身が呪縛されてしまっているからだ。気づけば足元に影がのびている。
 それは狐火の影であった。


 将監と勘助が斬りぬけ、走った。あまりに鋭い斬撃に、さすがの開拓者といえど躱すことはかなわなかった。
 悪鬼の形相で、さらに将監と勘助が天輪王に迫った。が――
「うっ」
 将監と勘助がたたらを踏んだ。眼前に漆黒の壁が立ちはだかったからだ。
「させねえぜ」
 黯羽の指の間で符が光った。さらに漆黒の壁が現出し、将監と勘助の前をふさいだ。
「ちぃ」
 将監と勘助が雷に撃たれたかのように振り返った。灼熱の殺気に吹かれたからだ。殺気の主はルオウとフィンであった。
「話し合う場じゃねえのかよっ!」
 ルオウが怒鳴り、将監との間合いをつめた。怒りに身を震わせている。
「殺すな!」
 マックスが叫ぶ。その手の銃の銃口は周太郎の顔面にむけられていた。
「動くなよ。動けば、遠慮なく撃つ」
「お前だな」
 フィンの眼が蒼く光った。
 勘助の太刀筋。覚えがある。北面の刺客の太刀筋と同じであった。
「今度はそうはいかない」
 フィンの脚がはねあがった。同時に勘助の刃が閃く。
「うぐっ」
 鳩尾をおさえ、勘助が崩折れた。それを見届け、フィンもまた倒れる。その胴から血をしぶかせて。
「ええい」
 刃を手に将監が飛んだ。漆黒の壁を蹴り、さらなる高みへ。
「やらせねえ!」
 ルオウもまた飛んだ。将監めがけて。
 疾るのは刃と拳。響いたのは肉を断つ音と肉を叩く音であった。
 わずかに遅れてルオウと将監が床に落ちた。それきり二人は動かなくなった。


 天輪王暗殺は阻止された。
 天輪王と芹内王の間にどのような話がかわされたのかは定かでない。ただこの暗殺が表沙汰になることはなかった。

「赤雷の姿が消えたか」
 鞍馬堂の中。蔵馬の声が闇に滲んだ。
「もし将監達が死んでいたら……さすがにこうは上手く事はおさまらなかっだろう。さすがは開拓者というべきか。ともかく、そろそろ本腰を入れて天陽宗を潰さねばなるまいな」