|
■オープニング本文 前回のリプレイを見る ● 「アヤカシとの共存!?」 愕然たる声は、天輪宗本山不動寺内に聳え立つ塔内部で発せられた。 発したのは男。年齢は四十半ば。僧である。 が、その炯と光る眼は、とても僧のものとは思えなかった。獅子の瞳である。 また、その体躯も僧職の者のそれとは見えない。鋼の筋肉を身にまとわせていることは明白であった。 男の名は天輪大僧正。東房をまとめる天輪王であった。 天輪王の手には数枚の書状がある。天陽宗の正体を調べたさせた開拓者の報告書であった。 天陽宗とは、東房辺境にある霞寺において突如流行りだした宗教である。教義は人と精霊との共存を説くものであると聞いていたが、開拓者の報告書にはさらに恐るべき内容が付け加えられていた。 天陽宗の教義。それこそは人と精霊、そしてアヤカシの共存であると。 「馬鹿な」 知らず、天輪王は呻いていた。 アヤカシの何たるかは、アヤカシの脅威にさらされている東房の主たる彼が誰よりも知っている。共存などできようはずがなかった。 アヤカシの性は完全なる悪である。その望みはひたすら人の破滅だ。なんで共に歩むことができようか。 が―― 天輪王の思いを裏切る内容が報告書には綴られていた。霞寺を襲ったアヤカシを鬼が撃退したというのだ。その鬼に、霞寺の人々は信頼を寄せているという。 他方、気になることもあった。いくら流行りだしているとはいえ、やはり東房においては圧倒的に天輪宗を信じる者が多い。が、その天輪宗を信じる村――霞寺近辺の村では相変わらずアヤカシの襲撃が続き、大勢の村人が浚われているという。 さらにもう一つ。 天陽宗を信じる者には飢えはないという。その食糧を、彼らはどこから得ているのであろうか。確かに北面の富豪にも信者はいるらしいが‥‥。 「それにしても」 天輪王の顔に翳りがさした。 報告書にある二人の若者。翠峰と紫藤。彼も知る手練れの泰拳士だ。天輪宗に対して信仰の篤かった彼らが、何故異教の走狗となりはててしまったのか。 ともかく、もう少し天陽宗を調べねばならない。強硬派の者達が動き出す前に。 天輪王は侍僧を呼んだ。 ● 「何故、逃したのですか」 声は御簾のむこうからした。 「それは」 一人の男が顔をあげた。ごつい体格で、岩を人型に彫り出したかのような印象がある。 男はいった。 「女でありました故。おそらくは天輪宗の手の者。恐れることは」 「お前が判断することではない」 声に怒りの色が滲んだ。それだけで恐れを知らぬように見える男の顔が強張った。 「天輪宗の僧などに、そのような真似ができるものか。おそらくは開拓者であろう。奴らには」 声は、ふいに途切れた。が、すぐにさらなる静かな声音で、 「聖地に忍び入る不埒者を見逃してはならぬ。琥珀四天王よ。次は必ず殺せ」 命じた。そして小さな影がゆれた。 |
■参加者一覧
赤銅(ia0321)
41歳・男・サ
志藤 久遠(ia0597)
26歳・女・志
八十神 蔵人(ia1422)
24歳・男・サ
かえで(ia7493)
16歳・女・シ
狐火(ib0233)
22歳・男・シ
マックス・ボードマン(ib5426)
36歳・男・砲
ユーディット(ib5742)
18歳・女・騎
宍戸・鈴華(ib6400)
10歳・女・サ |
■リプレイ本文 ● 「アヤカシとの共存、たぁな」 呆れたような、あるいは戸惑ったような。 複雑な表情をうかべたのは実に漢くさい男であった。日焼けした顔には不精髭がまばらに生えている。 赤銅(ia0321)。開拓者であった。 「確かに敵でさえなければ喰われずに済む。縋りたい心情は解るが」 気に入らぬように顎のあたりを掻く。 そうなのだ。先日判明した天陽宗の真実。それは人と精霊、そしてアヤカシという三者の共存であったが―― わからぬ理屈ではない。が、理屈は所詮理屈だ。現実ではない。 その現実とは何か。 アヤカシこそ人の天敵。それが赤銅の知る現実であった。 「だが」 と、ここで赤銅の思考はとまる。事実、彼は見たのだ。紅角という鬼は人を助け、美穂という少女は紅角になついていた。 「ともかく紅角の野郎にあってみるか。会話が通じるアヤカシに会ったのも何かの縁だろう」 赤銅は足を霞寺の外れにむけた。 ● ましらのような影が樹木にとりついた。するすると登っていく。 ましらと思われたが、陽光に浮かび上がったその姿は人であった。どころではない。やや大人びた相貌の美少女である。 名はかえで(ia7493)。その重力を無視したかのような身ごなしからでもわかるようにシノビであった。 かえでは樹上から、彼方の岩山を見つめた。 霞山。天陽宗本山霞寺がそこにはある。 本当は霞寺を見下ろす位置からかえでは監視を行いたかった。が、近辺には霞山より高い山はなく、それで近くの丘より見上げることとなったのである。 「警護が行われてる。‥‥重要な何かがあるんだね」 かえではシノビの者らしい直感が告げている。天陽宗本山霞寺にこそ全ての鍵があると。 その霞寺であるが。 潜入は困難だ。嶮しい岩山であるため、裏から忍び込むことなどほぼ不可能。が、かえではあくまで潜入路を見つけるつもりであった。 「やはり監視状況を調べるしかないか」 かえでは飛鳥のように樹枝から飛んだ。 ● その霞山をゆく者達があった。 唯一頂にむかう道。歩む影は四つ。 一つは僧形であった。二十歳半ばほどの若者で、端正な顔に、あるかなしかの微笑をうかべている。翠峰であった。 残る三つ。男はもう一人いた。 彫の深い顔立ちからしてジルベリア生まれだろう。色白の顔は優男めいているが、眼には物騒な光があった。 他の二人は女だ。 一人は二十歳半ばほど。凛とした顔立ちで、綺麗な蒼の髪を無造作に結っただけであるのだが、それが妙に似合っている。 もう一人は少女だ。見た目は十歳というところか。可愛い顔をしているが、どこか野生児めいた不羈奔放の気風がある。 男はマックス・ボードマン(ib5426)、女は志藤久遠(ia0597)と宍戸鈴華(ib6400)といった。ともに開拓者である。 天陽宗の主たる蒼貴と会う。それが今回の彼らの目的であった。そのために彼らは翠峰のもとを訪ねた。 面倒は予想されたが、案に相違して事は簡単に進んだ。それで三人の開拓者は嶮しい山道を登っているのだが―― 心覆で殺気を隠し、何食わぬ顔で久遠は問うた。 「蒼貴様とはどのような方なのですか」 「お会いすればわかります」 翠峰は笑みを深くした。その顔からは何も読み取れない。悪童としてならしたマックスにしても。 「あのさー」 次に口を開いたのは鈴華であった。翠峰を見上げると、 「翠峰サンって、偉いのかな?」 「偉い?」 「うん。ボク達が会いたいってことも蒼貴様に伝えて、お許しもいただいてくれたし」 ははは、と翠峰は笑った。 「確かに私は直接蒼貴様とお話できる四人の一人ですから、偉いといわれればそうかもしれませんね」 「四人?」 鈴華の眼がきらりと光った。 「てことは、あと三人、偉い人がいるんだよね」 「ふふふ」 こたえず、翠峰は足をすすめた。その背を、じっと鈴華は見つめた。 この時、鈴華はある仄暗い考えを抱いている。それは翠峰は本当に翠峰であるかということだ。 実は人間とアヤカシが少しずつ入れ替わってたりして‥‥。 「まさかね」 鈴華が強張った笑みをうかべた。その間、マックスは周囲の様子を窺っている。 人の通りは全くない。霞寺にある寺院には誰もが訪ねることができるようだが、霞山にある霞寺は選ばれたものしか入山することはできぬとのことであった。 「着きましたよ」 翠峰が足をとめた。振り返る。その背後に、朱色に塗られた豪壮な寺院が建立されていた。 ● 視線を感じて、女はふと眼をあげた。 窓から覗いている男がいる。紅い髪の、どこかふてぶてしい面つきの若者だ。顔に薄い笑みをうかべてはいるが、あまり嫌味には感じられない。 女は問うた。 「何か‥‥用?」 「いやあ」 若者は悪戯を見つけられた子供のように笑うと、八十神蔵人(ia1422)と名乗った。 「天陽宗さんが肉を配っとるもんやったら、ご利益ありそうやって、お袋が欲しがっててなあ」 蔵人は懐から金子を取り出した。 「よかったら、わしに分けてはもらえんやろか」 「いいわよ」 あっさりと女は肯った。蔵人の笑顔には、どこか人の胸の扉を開かせる魔力めいた魅力のようなものがあるようだった。 金子をうけとり、女は調理しかけていた肉を竹皮に包んで差し出した。 「おおきに」 肉を受け取った蔵人は背を返した。歩き出す。その手には肉の重みがある。 「配給に肉とは、また豪華やが」 蔵人は掌の上の肉を竹皮包みを見下ろした。 「さあて。その肉が問題や」 ● 「蒼貴様?」 女が上気した顔をあげた。見下ろすのは美麗な若者であった。長い黒髪を束ね、背に流している。若者は狐火(ib0233)と名乗った。 「はい」 狐火は肯いた。そして簪を並べた。商いをする素振りで、そっと女の様子を窺う。 女は、そんな狐火の視線など気づくことなく――いや、シノビたる狐火の注視など気づけるはずもなく、ただ簪に少女のように輝く眼をむけていた。 「霞寺から何時降りていらっしゃるのですか」 「降りては来られないわ。みとめられた者が霞寺にお参りすることが許されるのよ」 「ほう」 感心したように狐火が声をあげた。そして眼を――瞳の奥に針の先のような光をともして――眇めると、 「貴方も蒼貴様に会われたのですね。で、その際にですが。蒼貴様は特別な何かを連れてはいらっしゃいませんでしたか」 「特別な何か?」 女が首を傾げた。 その瞬間である。狐火は女の顔にうかんだ異変を見とめた。女の眼の焦点が一瞬だがゆるんだのである。 ややあって女は首を振った。 「いいえ。そんなものはいなかったわ」 「そうですか」 狐火はあっさりと探索の手をひいた。それで十分だったからである。 彼のみ気づいた天陽宗の秘密。その正体。 天陽宗、蒼貴という名。紅角という四本腕の鬼。さらにはおかしくなっている人々。それらに共通してうかびあがってくる、ある戦慄すべきモノがある。 「どうやら追っていたモノが見つかったのかも知れませんね」 狐火の全身を、そっと殺気の焔が縁取った。 ● 霞寺から離れた、二頭の馬がひく荷車は、すぐに山道にむかった。やや離れて―― 樹陰に、ふっとわいた影があった。 少女だ。冷然たる風貌で、輝く金髪とアイスブルーの瞳がよく似合っている。 少女は開拓者の一人。ユーディット(ib5742)であった。 彼女が追っているのは、霞寺に肉を運び込んだ荷車だ。近隣の、天陽宗に帰依する村を調べた結果、どこからともなく現れるという荷車にいきついたのである。 「このような山の中に何が‥‥」 ユーディットは荷車を追って足をすすめた。 騎士である彼女は、元来隠密行動は不得手である。が、荷車を操る者達は作業になれすぎており、尾行者に気を配っている様子はなかった。 そして―― 山の中腹あたり。荷車はとまった。側にはぽっかりと巨大な洞窟が口を開けている。 薄笑いをうかべた四人の男達が荷車から飛び降りた。咄嗟にユーディットは木陰に身を隠した。が、杞憂であったようだ。男達は樹間に入り込んでいったからだ。 すでに日は暮れかけている。このような時刻に山を降りるのではなく、逆に分け入るとはどのようなつもりか――疑念は一瞬であった。それよりもユーディットは洞窟内部のことが気にかかった。 足音を忍ばせ、ユーディットは洞窟に近寄っていった。内部に足を踏み入れる。 洞窟内部はひんやりとしていた。肌寒いほどに。 暗くはない。所々に灯りがあり、薄暮の明るさを保っていた。 ユーディットはゆっくりと歩をすすませた。が、すぐに彼女は異変を感知した。 異様な匂いがする。生臭く、どこか甘いような―― 血臭! 匂いの正体に気づき、ユーディットは慄然とした。これほどの濃密な血臭が立ち込めているとは只事ではない。 じり、じり、と。さらにユーディットは洞窟の奥へと進んだ。永劫かと思えるような時がすぎ、やがてユーディットは目的の場所へといきついた。 「うっ」 奥に広がる空間を一目見て、さすがのユーディットが息をひいた。 中は血の海であった。岩のようなものがごろごろと転がっている。それは―― 首! 「やはり、ここで‥‥」 「誰だ」 声がした。背後から。 振り向きざま、ユーディットは剣を抜き払った。声の主を切り捨て、そのまま駆ける。声の主は荷を運んでいた男であった。 ● 「待て」 ひやりとする声。 蔵人は足をとめた。霞寺のはずれである。 先ほどまで、蔵人は村長宅近くにいた。偶然を装って村長に接触しようと企んだが、さすがにそう意図通りにはいかず―― 「来たな」 蔵人は振り返った。笠で顔を隠した細身の人影がある。笠の内から声が響いた。 「それを返してもらおうか」 「こいつか」 蔵人は竹皮包みに眼をむけた。 「見張ってたのは知ってたが‥‥。アカンなあ。これはお母ちゃんへの土産なんや」 「ぬかせ」 人影が蔵人に迫った。 剛、と。 人影の拳が蔵人の眼前でとまっていた。受け止めたのは蔵人の喧嘩煙管である。蔵人がニッと笑った。 「よほど大事なものなんやな。謎の食料、殺されるのではなく攫われる他宗派の人間‥‥と、くりゃあ」 「ふんっ」 人影の右足がはねあがった。飛び退りつつ、さすがの蔵人が舌をまいている。 ――迅い! 刹那、人影の脚が蔵人の左手を蹴り上げた。竹皮包みが蹴り飛ばされる。 しまった、と蔵人が思った時はすでに遅かった。人影が竹皮包みを拾い上げている。 「待て!」 蔵人が後を追おうとして、がくりと膝を折った。衝撃が腹を貫いている。気での攻撃だ。 再び蔵人が顔を上げた時、人影の背は遠くなっていた。 ● 黄昏の頃。 黄昏の光の差し込まぬ一室に久遠とマックス、鈴華の三人はいた。 霞寺の奥。彼らの前には女と見紛うばかりに流麗な男が座している。蒼貴であった。 久遠は前におかれた茶から眼をあげた。何を仕込まれているかわからぬものに、迂闊に口をつけるつもりはなかった。 「確かめたいことがある」 マックスが口を開いた。 「アヤカシとの共存を唱えているようだが、その共存とは一体どのようなものなのだ」 「文字通り、共に在るということです」 静かな眼で蒼貴はこたえた。 「人はアヤカシを敵として見なしてきた。が、違う。良き隣人として、人とアヤカシは生きていけるのです」 「ふふん」 マックスは皮肉めいた笑みを返した。 「本当に、その教えで争いがなくなるのなら結構な話だがな」 「事実、アヤカシとの争いはなくなっています」 「でも」 ふっ、と不審げに口を開いた者がいる。鈴華だ。 鈴華は問うた。 「まだ良くわからないんだよ。みんな、やっぱりアヤカシが恐いはずなのに、どうしてこんなに急速に蒼貴様の教えが広まったのかな」 「それは我らには神がついているからです」 「神?」 「そう」 蒼貴が肯いた。その眼が凄絶な光を放っている。 「我らが神こそ、琥珀様!」 刹那、するすると蒼貴の背後の御簾があがった。 ● 落日の残照に溶け込むように、三つの影があった。 一つは赤銅だ。そしてもう一つは―― 人ではなかった。小山のような巨躯の鬼だ。赤黒い肌をしており、四本の腕をもっている。 紅角であった。 「またお前か」 紅角の口が開いた。獣のような牙が覗く。 その足元には三つめの影があった。紅角のもとまで案内してくれた美穂である。 見返す赤銅の顔には複雑な色がうかんだ。 無理もない。相手はアヤカシであるのだ。いくら美穂が懐いていようと、今まで敵として見なしていた相手と簡単にうちとけあえるわけがない。 が、顔に洒脱な笑みをにじませて、 「ああ。少しばかり訊きたいことがあってな」 「それで、こんな村外れまでか。ご苦労なことだな」 「その苦労に免じてこたえてくれ。この前、お前はアヤカシを追い払った、といったが、斃さずに追い返したって意味か?」 「そうだ。俺は天陽宗の教えに賛同する者だからな。だから人もアヤカシも殺さぬ」 「人とアヤカシとの共存ってやつか。が、払う者が居なけりゃ襲われる、それでも共存といえるのかい?」 「人にもアヤカシにも、真理に気づかぬ愚か者は多い。だからといってすぐに排除していては真理を広めることなどできぬ。故に、俺は人を守り、アヤカシにも共存を説いているのだ」 「なら、何故改宗しない村への襲撃を阻止しねえ? てめえが守るのは天陽宗を信じる村だけか」 「何ィ」 紅角の眼がぎらりと光った。金色の光の中で、血の色が閃く。が、それは一瞬―― くくく、と紅角は笑った。口のみ歪ませて。そして美穂を抱き上げた。 「赤銅とやら。つらまぬことは詮索せぬ方がいい」 美穂の細い首に口を近寄せ、紅角は告げた。 ● 残照も消えた頃、霞山から下山してきた者がある。久遠とマックス、鈴華の三人だ。翠峰の姿はない。 と―― 三人が林道にさしかかったとき、ふっと彼らの前にわいた影がある。かえでだ。側には狐火の姿もあった。 「他に気配はないようですね」 狐火が告げると、ふんとかえでは顔をそらせた。 「そんなこと私だって気づいてたんだから。もう、ずっと側にいて鬱陶しい」 かえでは顔を顰めた。が、その頬にうっすらと紅が散っているのはどういうわけだろう。 その事実を誤魔化すわけではあるまいが、かえでが問うた。 「蒼貴に会ってきたんでしょ。で、どうだった?」 「それが」 わからない、と久遠がこたえた。覚えているのは蒼貴の美しい顔のみである。 ごくり、と狐火は唾を飲み込んだ。 三人の仲間の眼。それと同じものを、かつて彼は見たことがあると思った。 かつて朝廷に反旗を翻した未綿の里。その里長である忠恒の眼である。 今、三人の開拓者は開拓者として、在る。が、今後も果たしてそうか? 忠恒は本人も知らぬうちに魂を蝕まれていたのだ。元凶を滅さぬ限り呪いが解けることはない。 彼ら八人の開拓者の前に、重い暗雲が垂れ込めてきたことを、一人狐火のみは気づいていた。 |