不思議洞穴弐【第四階】
マスター名:如月 春
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/11/28 01:41



■オープニング本文

前回のリプレイを見る


●第四階層
 少しいつもと違う雰囲気を肌に感じながらいつもの二人が歩いている。
 勿論この二人と言うのは毎度の事痛い目にあっている二人だ。

「‥‥何か、寒気しねぇか?」

「別にぃ?どうせ薄着してっからだろ、阿呆」

 そんな事をいいながら松明の火を壁や天井、床に向けて何かないかと探し始める。
 とは言え、何時もの様に砂金がちらほらと落ちているだけなのだが。

「鉱脈にぶち当たってるっぽいんだよな、ここ」

 一つ、また一つと拾い始め。

「あんまり離れんなよ?」

「分かってるって」

 そう、いいながら二手に別れるように探索を始める。
 何だかんだでここまで二人できているわけだから、実力はそれなりにあるのだろう。

 そうこうして、一人が探索を進めているといつもの粘ォアヤカシがぶよぶよと大量にいる部屋を見つける。
 壁際から覗き込み、どうなっているかを見る。
 なにやら壁やら天井から染み出るように増えている。

「うぇ、あんなふうに出来てきたのかよ、あいつら」

 瘴気から生まれてくる物がアヤカシ。
 此処までくると瘴気の濃度も高いのだろう、と。
 一先ずこいつらを片付けなければ前には進めない。
 ゆっくりと静かに来た道を戻り、分かれた反対側へ。

「おーい、どこまでいってんだ‥‥?」
 
 松明の火が見えたので近づいていくと、地面に力なく落ちている一振りの剣と松明。
 辺りには特に何もない。

「逃げたにしちゃ、おかしいが‥‥」
 
 そうして相棒の探索をしながらさらに奥に進んでいく。
 一切荷物はばらつかず、戦闘したという形跡も見当たらないのに松明と剣だけが落ちているのが気になる。
 いつもより慎重かつ冷静に、じっくりと調べていく。

「と、行き止まり‥‥?だとしたらやはり、先に逃げたのか‥‥?」

 そう言っている背後から忍び寄る影には気が付かず。
 彼もまた洞窟の犠牲者となったのだ。


●数日して
 行方不明者が出始めて数日、ぼろぼろになった開拓者が一人洞窟から出てくる。
 その顔つきや服装は精神的にも肉体的にも信じられないことが起きたようなものだ。

「俺はぁ、見たんだよ‥‥通路いっぱいの何かを‥‥迫ってきて、そのままあいつは‥‥」 

 よほどのことであったのか、其ればかり呟き、ぶるぶると震えている。

「手を出しちゃいけなかったんだよ‥‥こんな洞窟埋めなきゃいけねぇんだよ‥‥」

 目の正面も合わずに呟き続ける。
 そうして、第四階層の「何か」は次第に開拓者の間で呟かれる。
 
 とにかく通路いっぱい、でかくてすぐ後ろにいる。
 戦うのは無謀だ。
 とにかく逃げろ。

 そんな風に噂が立っている。
 さらに数日して、また一人の開拓者が生還する。
 
「見たんだよ、赤い宝石みてぇな塊が壁にあったのを!まぁ、あのわけわかんねぇのが出てきたから逃げてきたんだが‥‥嘘じゃねぇぞ!」

 と、こんな事を言ったせいで行方不明者が増えているのは言わずも分かる事。


●ギルドにて
 夢宛の何時もの洞窟に関する手紙。
 内容は第四階層の調査でもあるのだが、行方不明者の捜索ともある。
 洞窟をギルドが調査しているとは言え規律で入ってはいけないということはないせいもあるのだが。

「ははぁ‥‥なにやらきな臭いねぇ‥‥」
 
 机の引き出しから依頼の書類を引き出してさらさらといつものように依頼の内容を書いていく。
 そうして洞窟依頼、第四階層の調査が張り出された。


■参加者一覧
鈴代 雅輝(ia0300
20歳・男・陰
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
朱麓(ia8390
23歳・女・泰
フレイア(ib0257
28歳・女・魔
音影蜜葉(ib0950
19歳・女・騎
ルーディ・ガーランド(ib0966
20歳・男・魔
蜜原 虎姫(ib2758
17歳・女・騎
御影 銀藍(ib3683
17歳・男・シ


■リプレイ本文

●洞窟前の準備にて
 何時もの様に洞窟に入る前の持ち物検査。というよりは準備。あれがないだのこれがないだのは村やら洞窟前に店を構えてる者から購入し不備のないようにしっかりと。そうしてこれまた何時もの様に騒がしい二人や顔ぶれがいなくなって少々寂しくなっている。
「おっと、なんだかさみしいなぁ?」
 煙管の紫煙を燻らせて鈴代 雅輝(ia0300)が足りない水や塩を買いつつ辺りを眺めている。何時も騒々しいところであったがやはり行方不明者の多さから、大分人は少なくなっている。流石に事態も事態なので笑ってはいられない。
「行方不明者が多いようですね、発見できればいいのですが」
 此方も洞窟前に構えている店でいくつか岩清水を購入しつつ、かんじきやギルドから借りてきた物品を配っている玲璃(ia1114)がいつもと違う光景を眺めて、多少の焦りがあらわれている。
「しかし、本当にきな臭いねぇ」
 前回弟子に出番を奪われた朱麓(ia8390)が何時もの二人がいないので少し寂しげにしている。何だかんだでライバル意識していたようなそうでもないような、とは言え本当のライバルだと思っているのは今はここにいない。もう潜っているのかねぇ、と煙管をふかす。
「注文の多い洞窟ですね‥‥実はアヤカシ、だったり」
 扇で口元を隠しながら「ふふ」っと楽しそうにフレイア(ib0257)も準備を進めている。流石に今回は自分の命もかかっているので何時もよりも重装備で洞窟に向かう気持ちが道具に現れている。疲労回復の飴玉や岩清水など腐りにくく栄養価の高い食べ物を中心にしている。
「帰らぬものも増えているのですし、あながち間違いではないかと」
 今回二回目の音影蜜葉(ib0950)がギルドから借りてきた物品を詰め込みながら考察し始める。自分も好奇心で命を落さないようにしないと、とぽつりと呟き。
「嫌な予感は少し前からしていたが、こうなるとはな」
 人数分の水や防寒具の確認を此方ではしながらルーディ・ガーランド(ib0966)が音影とフレイアと話している。その傍ら今まで溜めてきた地図やら仕掛けなどをいろいろ書き込んだ手帳を眺めて退路の確認などを進める。
「なんとも怪しい感じに、今回も気をつけていきましょうか」
 何時もの様に腰に縄と苦無をぶら下げ、動きやすいように使いやすいように調整をしている御影 銀藍(ib3683)。また何時もの小瓶を胸などに収めるが、それほど余裕があるかどうかは微妙だ。
「洞窟探険‥‥おしえて、ほしかったです」
 むすっと頬を膨らませている蜜原 虎姫(ib2758)がルーディの荷物の詰め方をみながら自分も荷物をぎゅうぎゅうと詰めている。今回初めての洞窟探索なのでほぼ手探り状態である。

 そうこうして準備を整えた開拓者八人、最後の階層と思われる第四階層へと足を踏み入れるべく、洞窟の中へと入っていく。

●第一〜第三階層
 蜜原を除いた七人にはうんざりと言うほどに通りなれた第一階層。そろそろ季節も冬になり寒がりにとってはいいところだろう、湿度が高いのがネックではあるが。流石に第一階層ともなると既に踏破しつくされたのか他の開拓者や旅人が熱湯で卵を茹でるくらいに何もなくなっている。――名物第一階層卵六個入りで二百文なり。
 とは言え、第二階層までは大分距離がある。各々持ち込んだ岩清水を飲みながら第二階層の階段へと向かう。今までいた粘性のアヤカシも出てこず、奥に進むほどひっそりとしている感じがある。
「何とも、嫌な予感がするな」
 ルーディが手帳を開いて退路の印をつけながら進む。アヤカシが出なければただの蒸し風呂のようなもの。汗を拭いつつ階段にたどり着く。

 第二階層、一つ降りるだけで開拓者や旅人の数はがくっと減る。人間熱いのより寒いほうが厳しいという事だろうか。それ以前に防寒具などかさばるものが多いのもあるのだろう。開拓者八人かんじき、防寒具、手袋などギルドから借りてきたものを階段で着込むとさらに進んでいく
「んー‥‥寒い、です」
 蜜原が御影と音影、ルーディの後ろでぷるぷると震えながら付いてくる。流石に初めてと言う事もあり、かなり堪える寒さのようだ。
「と、次は私は分からないさねぇ‥‥磁力だったっけ?」
 先頭で道を確認しながら朱麓が尋ねる。前回の三階層は弟子に出番を取られている。
「だなぁ、肩こりは取れなかったがな」
 がっはっはと何時もの様に笑いながら鈴代が懐炉で温まりつつ冗談を言っている。流石にまだまだ余裕といったところだろう。
「と、そろそろ三階層ですね」
 フレイアがそういうと階段の場所に着く。第四階層の影響のせいかかなり人もまばらになり、寂しくなっている。
「とりあえず防寒具は置いておいても大丈夫そう、ですかね」
 階段の隅のほうに何個か他の防寒具も置いてあるのをみて、自分のを別の場所に置く御影。其れを見て全員がまとめて荷物を置きつつ小休止。折り返しというわけではないが、ここらで体を暖める。
「しかし、奥がどうなっているかいまいち想像が付きません」
 玲璃がすっかり冷え切ってしまった第一階層の水を捨てながら階下を見やる。
「行方不明者が見つかればいいのですが」
 音影が一番下になり警戒しつつ、そんな事を言う。わずかな希望と言う奴だ。とりあえず気丈に振舞ってはいるものの多少なりと疲れが見えている。彼女らしい一面といえばそうだろう。

 第三階層、かなり最近に踏破され、それなりに掘りつくされている。所々に砂金やら宝石目当てで使ったツルハシや道具が落ちている。第四階層の話を聞いて慌てて脱出したという後がちらほらと。
「流石に金より命かね‥‥何人もぐったのやら」
 ツルハシを持ちあげ、二度三度振るってぽいっと捨てる朱麓。ぐるりと見渡して警戒するが、やはりひっそりと静か過ぎる。煙管の煙がゆらゆらと揺れるだけ。
「とりあえず此処さえぬければ磁力はなくなるはずだよなぁ?」
 鎧袖が多少なりと重いのか肩をまわしている鈴代。第一第二の事を考えればそうなるだろう。
「と、着きましたね」
 玲璃が階段の前に立ち止まり、一呼吸。瘴索結界を使い、アヤカシに備える。なぜかじっとりと嫌な汗が溢れてくる。とにかく生きる事が重要なので二列隊形に組みなおしを指示し、手記を取り出し、書き込みを始める。

 ――ここからが本番だ。


●第四階層
 階段を一つずつ警戒しながらおりていき、開拓者八人身構えながら足を踏み入れる。第一階層や第二階層の様に大きな変化もなく、第三階層の様に何かあるわけではないが‥‥雰囲気ががらっと変わる。何かに見られているような、そういう感じだ。
「此処全体に瘴気がありますね‥‥奥からかなり高濃度の瘴気が溢れているようですが」
 瘴索結界を使っている玲璃が冷や汗を流しながらそういう。
「‥‥異質、という奴ですかね」
 苦無で壁の土を削り、小瓶に入れて振ってみる。特に変わったところもないただの岩だ。しかし鉱石が混じっているというよりはただの土壁でしかない。
「なんだか、いやな感じ‥‥です」
 とにかく瘴気の濃いほうへと足を踏み入れていく。部屋と呼べる広いところは所々にありつつも、殆どが通路ばかりで退路があまりない。
「これは、本気でアヤカシだったりな」
 ルーディが筆を止めて地図をじっくりと眺める。螺旋上に奥に奥に行くような地図が出来上がっていく。
「今のところ、敵は見えませんが」
 横目で後ろを確認しながら少し前に突出し斥候をする音影。
「此方の地図も螺旋状ですね、間違いはないようで‥‥」
 フレイアがぴっと白墨で目印を付け‥‥られずに壁に取り込まれる。
「―っ!くる‥‥!」
 警戒に当たっていた蜜原が声をあげる。後ろの方から垂れるように粘性アヤカシが落ちてくる。通路いっぱいに。
「とりあえず奥に行くぞ!」
 咄嗟に御影と蜜原を下がらせブリザーストームを一発。迫り来る粘性アヤカシが魔力の吹雪によって動きを固めていく‥‥が。
「ダメかね、量が多すぎて完全に凍らないさねぇ」
 冷静に事態を見つめつつ旋根で竜巻を起こして足を止めるように動く。そうして続けさまに鈴代が霊魂砲を発動、符から弾丸の様な弾が着弾、炸裂。
「質より量ってのはなんともめんどうだなぁ、おい!」
 未だに足の止まらない粘性のアヤカシを眺めて「ちっ」と舌うち一つ。炸裂し煙をあげてはいるがうぞうぞと迫り来るように近づいてくる。
「此方はいないようです、いきましょう!」
 音影の斥候のおかげでその場から全員走り始める。
「と、お土産を忘れるところでしたね」
 フレイアがフロストマインの置き土産を発動し、全員がその場から逃げ出す。

 ‥‥長めの通路を走り、曲がり角を曲がったところにあったそれなりに広い部屋といってもいいぐらいのところで呼吸を整える。あそこまで量が多いとは、全員がそういいながら岩清水を飲み、警戒を続ける。
「‥‥あれ‥‥なん、だろ?」
 壁から突き出ている刀、鞘の部分が壁に埋もれて刃だけが出ている。ゆらゆらとランタンの光を反射させている。
「取り込まれた、と考えるのが普通ですかね」
 全員の傷を確認しつつ、玲璃が其れを眺めてポツリと。とにかく取ってみるか、といいつつぐいぐいと鈴代が引っ張る。ぼろっと埋め込まれていた部分が出てくると、腐食しぼろぼろになった部分があらわになる。
「‥‥覚悟はしておいた方が、いいってことですね」
 音影が奥から戻り、其れを眺めて一言。はっきり言えば退路は今のところ数本しかなく、奥に行くしか道はない。

 そうして退路を塞がれつつも最奥へとたどり着く。ぽっかりとドーム状の開けた場所、その壁の方に赤い宝石のようなものがある。半分程壁に埋まっており、やけに光沢がある。
「とにかく破壊してみよう、宝石なら砕けても回収できる」
「では、私が」
 御影が立ち上がり自分の射程に赤い宝石を入れると身構える。いやに静かになった部屋のなか、しゅっと風の切れる音と共に苦無が赤い宝石へと一直線に飛び、破壊‥‥することはなかった。拳一つ分横にずれて苦無を回避すると同時に真ん中からぎょろりと目玉のようなものが出ると、開拓者を睨みつける。
「やっぱり、アヤカシのようですね!」
 音影が獲物を突きの姿勢で構えたまま核に向かう、そこに。
「先程のがきます!」
 瘴索結界により感じた瘴気の動きから粘性アヤカシの注意を声に上げる。はっと気がつき、音影が後退、そこにぼとっと数メートルはあろう粘性アヤカシが落ちてくる。
「お土産は気に入らなかったようですか」
「退路、確保しなきゃ‥‥」
 来た道から現れた小粒の粘性アヤカシを蜜原が撃退し始める。が、弓だけではいまいちだ。
「面白くなってきたなぁ!死んだら終わりだけど、よぉ!」
 霊魂砲で蜜原の援護をしながら鈴代も退路確保に努め始める。
「とにかくあれを破壊しないと、だめだねぇ」
 朱麓が巨大粘性アヤカシの横に隙間に狙いを定め横踏、そこから紅椿を発動し、雷撃のような挙動をしながら一撃。動けないように挟む形で旋根が突き刺さり動きを止める。と、同時に壁の方に腕を引っ張られる。
「早くしろ!」
「蜜、いけっ!」
 ルーディが起点をきかせてサンダーを打ち込む。迸る雷光が直撃すると同時に鼻孔につんとこげた匂いを発しながらじゅうじゅうと蒸発を始める。
「此処で終わらせましょう」
 神楽舞「脚」を使い音影を支援する玲璃、後ろで退路を確保している三人にも続けて舞を付与していく。
 其れを目で確認すると同時にオーラを発動、薄ぼんやりと光を帯びながら核に攻撃を。
「主よ、力なき我が身にその御力を‥‥ッ!!」
 サンダーで脆くなった部分を突き破り、核を狙い朱麓の肩から滑るよう核へと一撃。ぶしゅっと瘴気が一度溢れてからさらに大きく噴出し始める。
「終わりましたか?」
 粘性アヤカシを蹴散らし、瘴気の音を聞いた御影が横目でちらりと。巨大な粘性アヤカシは動きが止まっている、核からは瘴気が溢れている。やったと、内心で呟き退路を確保し続ける。
「とりあえず‥‥なんだ!?」
 鈴代が微振動している四階層に気がつく。洞窟自体の柱となっていたようで、崩れ始めている。
「あわ、に、にげないと‥‥!」
 オーラを使って道を開けた蜜原に賛同するように玲璃が神楽舞「脚」を使い全員の速度を上げて部屋から出て行く、が。
「もう少し、なんだけどねぇ‥‥」
 壁に埋まった腕を眺めて朱麓がぽつり、少しずつ抜き始めているが、取り残る形に。
「助けにいきますっ!」
 御影が飛び出そうとした瞬間に目の前に落石。脚を止める。
「先、いってくれないかねぇ‥・・ちょっと見せられないことになりそうだし」
 そう「ニッ」と笑顔を見せて全員を先に逃がしてから一息、右腕を伸ばし壁に突き刺さっていた刀を外して狙いをつける。
「覚悟は昔に出来ている、と言っても痛そうだねぇ」
 ははっと笑いぎゅっと唇をかみ締め。
「もう少し、しぶといと思ったんだがねぇ」
 不意に呟かれた声に振り向き、洞窟が崩れ始める。

●脱出
 蜜原、音影がオーラを使い、障害物を弾き飛ばしながら第三階層へと駆け上がる。そうしてそのまま第二階層、第一階層をぬけて一気に地上へと走る。
 磁力を気にしている暇も。
 防寒具を回収している暇も。
 暑さ対策している暇も。
 そんなもの全て無視して走り続ける。
 第四階層が崩れたのは確かではあるが、三〜一階層は半壊といったところだろうか。
 他にも潜っていた開拓者達と共に脱出。
 しかし、すぐさまに反転して入ろうとするが。ずしんと大きな音が奥から響いてくるのを聞いて、軽く絶望もする。助からないと。‥‥しばらくして、恥かしそうに頬をかきながら朱麓が出てくる。
「あー、うん、ただいま?」
「無茶するねぇ、ほんと」
 少し後から送れて出てきた夢が埃塗れでそういう。何だかんだで心配していたらしい。
「とりあえず、アヤカシだったのは早急にわかってよかったよ‥‥ほら、受け取りな」
 小さめの袋を人数分渡し、中を見ると砂金が詰まっている。
「今回の報酬さ、朱麓は貸し一つな」
 そういいながら夢が手を振り洞窟に戻っていく。

「今のはノーカンにしてくれてもいいのに」
 ぶつくさ文句をいいつつも砂金の袋を受け取る朱麓。
「なんっつーか、無事でよかったなぁ」
「後は何時もの温泉でのんびりと」
「いいですねぇ、恒例ですわ」
 と、鈴代、玲璃、フレイアが余裕ありげに
「‥‥はぁ‥‥死ぬかと、思いましたぁ‥‥」
 音影は隅のほうでぐったりしている。
「ま、面白いところではあったな」
「そうですね、どうだった?」
「‥‥洞窟‥‥おもしろい」
 ほくほくと蜜原がしているのを見つめてほんわかしたところで全員が宿に向かって温泉を堪能する。

 色々あったがそれなりに収穫があったりとなかなかの手ごたえに満足する開拓者だった。