不思議洞穴弐【第三階】
マスター名:如月 春
シナリオ形態: シリーズ
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/11/06 01:55



■オープニング本文

前回のリプレイを見る


●洞窟内部三階階段にて
 防寒具を着たまま二人の開拓者が階段で小休止をしている。
 前回、二階層へと進んで見事に返り討ちにあった二人だ。
 体温回復の為に酒をあっためながらゆっくりと階下をみやる。
 冷気は上から下に流れてはいるが途中で熱気で薄れるのかそれほど寒くは無い。

「次は電気とかそういう感じか?」

「さぁ‥‥な」

 こつこつと靴の音を鳴らしながらどんどんと深く降りていく。
 流石に日がないせいかどれほどの時間たったのか曖昧になる。
 ぼんやりと眠そうに欠伸をしながら進んでいく。
 そうして奥に進んでいると妙な違和感が。

「何か体重くないか?」

「そうか‥‥?体調崩しただけだと思うが」

 そうかと呟いて腕を回しながら階段を降り続けるが、妙にぎしぎしニした感じだ。
 
「やはり、何か動きづらいんだが」

「鎧の関節部分に油でもさしとけって」

 そう言いながら三階に降り、辺りを見回す。
 特に寒くも熱くもない、ただの洞窟だ。
 ただ、一人の開拓者はどっしりと疲れている。

「すんげぇ‥‥体重いんだが‥‥」

「あぁ?‥‥しゃーない、戻るか」

 体調不良での洞窟探険は難しいものだ。
 二人が洞窟から出て、体が重いといっていた開拓者が鎧を脱いで一息。

「‥‥?‥‥特になんとも無いな」

「ったく、体調管理もしっかりしろよ」

 そう、悪態をつきながら三階への推理を始める二人であった。


●ギルドにて
 夢が今回の洞窟依頼を張り出している。
 相変わらず心を躍らせながら角にぴっちりと合わせて張り出すのも相変わらず。

「さて、今回は‥‥何が要因してるのやら‥‥楽しいなぁ」
 
 くるくるとナイフをまわしながらぼんやりを思いをはせる。
 その目の前には溜りに溜まった書類があるのは別のお話。


■参加者一覧
鈴代 雅輝(ia0300
20歳・男・陰
貉(ia0585
15歳・男・陰
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
フレイア(ib0257
28歳・女・魔
音影蜜葉(ib0950
19歳・女・騎
ルーディ・ガーランド(ib0966
20歳・男・魔
百々架(ib2570
17歳・女・志
御影 銀藍(ib3683
17歳・男・シ


■リプレイ本文

●洞窟前の恒例行事
 何時もの様に開拓者八人が洞窟前に入り、背負い袋に第一階層用の岩清水、第二階層用のかんじきと防寒具をぎゅうぎゅうと詰めながら洞窟の入口を眺める。
「今度の洞窟は磁力か?とことん健康にいいな!肩こりも治るし、蒸し風呂もあるしな!」
 がっはっはと何時もの様に豪快に笑いながら鈴代 雅輝(ia0300)が背負い袋に片足を突っ込んで荷物を押し詰める。荷物の積み込みすら豪快である。所々めきめき言っているが、壊れていないので問題ない。
「次は体が重くなる、ねぇ‥‥一階、二階に比べればマシだが、さて‥‥」
 持ち物に金属品がないのを確かめ、その後に毎度おなじみ砂金袋を準備する貉(ia0585)胡散臭いのをそれとなく感じ取ってはいるが、危険よりも金、金は命の次に重いもの。一文を笑う物は一文に泣く、毎度の事だがにんまりと砂金袋を確認している。
「さて、この次はどういう場所でしょうか」
 ぺらりぺらりと手帳をめくりながら第一階層と第二階層のおさらいを始める玲璃(ia1114)。次はどうですかね、と隣にいるルーディ・ガーランド(ib0966)と、相談を始める。地図を作っている物同士、何かあればと言う事で技能の相談やら地図はどうするだの話している。
「熱ときて、冷気ときて、次は何だろうなぁ‥‥」
 ルーディが頭を抑えながら「はぁ」と大きく息をつく、興味はそそられる洞窟なのだが、いかんせん怪しすぎると言うのが引っかかっているようだ。
「今回は磁力、でしたか‥‥最終的にどうなることやら」
 フレイア(ib0257)が手に息をかけてあったまりながらそう呟く、最近めっきり冷えてきたし、温泉の気持ちいい季節ですねぇ、と何時もの洞窟帰りの宿の方を眺めている。
「不思議な洞窟ですね‥‥これも神のお導きなのでしょうか」
 今回から初参加の音影蜜葉(ib0950)が周りの準備を見ながら自分の荷物を詰め始める。とりあえず、第一階層用の水、第二階層用の防寒具と既に踏破済みのところは準備万端だ。
「んふふ、それしても師匠はズルイわぁ。こんなに楽しいところにきてるなんて」
 洞窟の入口をぷりぷりと怒りながら百々架(ib2570)がぺたぺたと触っている。あることないこと妄想しながらしらべまわっている。ちなみに彼女の師匠は一緒にはこられなかったようでちょっと残念とも呟いている。
「第一、第二とも無事に調査も出来ましたし、このまま最後までこの調子だといいんですが」
 この洞窟の調査係な御影 銀藍(ib3683)が前回、前々回の調査記録をめくり、確認しながら小瓶やらを仕舞っている。最初は自前で用意していたがギルドの方(夢の方)から至急されるようになったので予備もばっちりだ。
 
 そうして開拓者一同、洞窟前に並ぶと早速と言わんばかりに洞窟に入る‥‥前に、もう少し準備をする。とことこと百々架が先に三階層へと足を踏み入れた開拓者二人に話を聞きにいっている。相変わらず、先行して痛めにあっている二人だ。
「三階層か?まぁ、重いって感じたのは俺だけだからな」
 騎士鎧に身を包んだ一人が顎に手を当てて唸っている。
「だから、油さしとけっていっているんだよ。そもそも無駄に思い荷物とか積んでるから疲れただけじゃねーの?」
「あぁ?てめぇ見たいに何も持たないで洞窟攻略するから俺がどうにかしてるんだろ、阿呆が!」
「まぁ、落ち着いて‥‥」
 百々架が抑えているものの、やめる気配は全くと言っていいほどない、取っ組み合いを初めて、殴り合いを始める二人。「あのー」と声を掛けるも、虚しいので早々と戻って洞窟の前に並ぶ。
 「早速、行きますかね」
 そう誰かが言うと各々背負い袋を持ち、中に入っていく。

●洞窟内部へと
 相変わらず高温高湿の息苦しい第一階層を岩清水を飲みつつ、素早く突破していく。初参加となる音影と百々架がどうなるかと思っていたが特に問題はなし、次の第二階層の低温低湿は第一階層の温石やら、熱湯を懐に入れて進んでいく。流石に他の開拓者や旅人もいるため、アヤカシや道は整っているので体力や連力はそこまで消費せずに第三階層へとたどり着く。とりあえず防寒具は必要なさそうなので階段の中間あたりにおいておく。

 ――第三階層
 第一階層、第二階層が急激な温度変化であったが、たどり着いた第三階層‥‥開拓者の予想である磁力、属性的なことを言うと雷と言う事だ。
「では、失礼して」
 フレイアが懐から鉄釘を一本取り出してぴっと投げてみる。くるくると回りながら宙を舞うと、何事もなくかつんと落ちる。よくよくみるとゆったりと転がってはいるが、そこまで強く引っ張られている感じではない。
「小さいから、でしょうか」
 音影が持ってきたナイフをゆっくりと壁に押し付けてみる。ナイフの先端が壁に付こうか付かないか、と言うところで軽く引っ張られ「カチッ」と硬い音と共に壁にくっつく。
「ふむ、話と今の事例を考えたら磁力であっていると思うんだが」
 次にルーディもナイフを取り出ししゃがみこむと、地面に差し込むようにナイフを突き立てる。そしてゆっくりと手を離すと垂直にピンとナイフが立つ。
「磁力で、正解ですかね」
 苦無の持ち手に縄をくくりつけてぶら下げて、御影がゆっくり先に進んでいく。磁力に反応してかぐるぐると円運動を始めたり、片一方の壁のほうに偏ったり、かなり激しく動き回っている。強さもまちまちだ。
「そういえば強い磁力とかだと、心臓に当てたら止まっちまうらしいが‥‥」
 石を拾ってがちがちとあわせてみるが、特に何も起こらずにぽいとその辺に石を捨てる。影響がある強い磁力と言ってもその場に一日中いたり近くに押し付けたりしない限りはそこまで影響も無く、心臓に負担が掛かる程度で止まりはしないのだが。
「とにかく前に進んで、何があるか調べましょう、聖剣とかあるといいわぁ」
 うっとりと頬に手を当てて妄想している百々架の目の前で手をぱっぱと振りながら貉がじっくりと地面を舐めるように見つめ始める。
「(さって、今回の物は‥‥と)」
 早速小粒の砂金を拾って袋に詰める。
「(しかしながら‥‥どうもうさんくせぇんだよなぁ‥‥一応天然ものってことだから侵入者の心理を付いているとは思わんが‥‥)」
 ふむぅ、と唸りながらも人魂を使い、警戒を始める。
「それでは第三階層にいきましょうか」
 玲璃も手帳を開いて先程やっていた磁力の確認結果を書き記し、地図の作成も始める。
とりあえずの正体は分かったので、先に進んでいく。

 道幅もそれなりに狭くなり、蛇布陣の状態で多少狭苦しく中を進んでいく。それなりに大振りの獲物を持っているものは道の所々で壁にごつごつとぶつけたりしている。
「なんつーか、そんなに横道がなくなってきたなぁ」
 鈴代がぺたぺたと壁を触りながら、調べ始める。
「奥に誘われてるんですかねー」
 人差し指をぴっと立てながら頬に当てて、百々架がうーん?と首をかしげている。
「とにかくここまでは殆ど一本道ですね、特に何かあるわけでもなく」
 手帳に地図を書いているのは他の地図と照らし合わせて道を確認しているが、特に横未地も無く殆ど一本道だ。
「特にいまんところはなんもねぇな」
 人魂を一度解除し、一息しながら岩清水を飲みながら貉が地面を見つめる。奥に来るほどやけに純度が高いものが落ちてくるようになった‥‥気がする。
「磁力もまちまちですね‥‥罠もめぼしいものがないですし」
 苦無を見つめて磁力を探っているが、特に仕掛けもなく、強くなったり弱くなったりと一定ではない。
「磁力も一定ではないのがネック、ですかね」
 アイアンウォールを使って磁力を遮ろうとするが、一定方向ではないので全くと言っていいほど効果はなく。
「退屈しのぎには、いいかもしれない相手がいますが」
 瘴索結界を使っていた玲璃が奥のほうに指を指す。
「確かに何も無いよりはましですが」
 音影がすっと前に出ると獲物を構えて相手の出方を伺い始める。
 後ろでアヤカシの数を数え、舞を踊り始めた玲璃を守るように前衛も出始める。
 
 奥のほうから転がってきたのは、第一階層にいたような粘性のアヤカシがぶよぶよとそこにいる。なんとも拍子抜けのような気もするが、粘性系のアヤカシは分裂するわ、鬱陶しいわで中々面倒な相手だ。とりあえず出方を伺うべく、相手を見据える開拓者。しかし相手もじっと此方を見つめたままで動かない。
「なんなんだ‥‥?」
 ルーディがそういいながらアヤカシについて書き記す。
「このままでは先に進めません、潰します」
 御影が苦無を投げつける。一直線に粘性アヤカシ向かって飛んでいき、当たったと思われたのだが、見た目に反して硬いのだろうか表面を滑るように反れていき、壁に当たる。
「可愛いんですけどねー」
 素早く抜刀し百々架が切り込んでいくがやはり滑るように反れて、地面をえぐる。そして金属系の武器を使っている者は心なしか何時もより重く刀が感じられ、動きが鈍い。
「可愛くはないだろう、よッ!」
 鈴代が斬撃符を投げつけると、これまた何時もの様に分裂してぷるぷると震えている。一定数分裂すれば消滅するのは大分前に知っているので問題はないのだが、いかんせん数が増える一方で金属系の武器が聞かないのはいただけない。
「なんとも、こういうのは苦手ですわ」
 ホーリーアローで狙撃をし、一匹一匹確実にし止めるフレイア、命中すれば大きく吹き飛ばし、少し増えて戻ってくるのでまだダメージを与えている。
「アヤカシってのはなんともめんどくせぇな」
 手短にいたアヤカシに眼突鴉を繰り出し、粉砕。「ひゅぅ」と口を鳴らしつつ、捌き始める。とは言えこの状況は中々難しい、前衛の音影、百々架、御影が刀、剣系を封じられているので木刀で対抗するが、いかんせん威力が足りない。
「ジリ貧ですね」
 玲璃が神楽舞での支援を行い、多少動きは良くなってはいるのだが、火力不足だ。
「とりあえず、凍らせるぞっ!」
 ルーディの詠唱が完了し、一気にブリザーストームでアヤカシを凍らせていく。液体から固体にするのはこの手のアヤカシにはかなりの効果だ。そこに。
「では、これで」
 音影が振り下ろす木刀がもろに直撃すると粉砕。そのまま瘴気と化していく。後は全て作業と同じ、凍らせて壊す、凍らせて壊す。分裂した物もあるので中々に数があるが、どうにか全て退治すると、開拓者一同ぺたりと座り込んで、一息つくのだった。

●恒例の調査の時間
 御影と音影が一緒になって鉱石を採取する。とりあえず小瓶の中に入れて、観察。からからと小瓶の中で磁力を持った石が転がってはいるのだが一番近い壁の方向に転がっていく。二人そろって「?」と頭に出しながら石の採取を行うのだった。
「さて、此方は清書を」
「そうだな」
 ルーディと玲璃が作った地図を見比べて、しっかりとちゃんとした地図に清書をしていく。脱出する前にしっかりと退路を確保するのは定石で必須だ。
他の四人はあたりを警戒しつつ砂金を探しつつ、のんびりとお茶を楽しみながら待っているのはなんとも言えない光景だ。

 そうして調査をしていると次の階層に向かう為の下り坂を見つける。一通り調査と休憩を済ませると開拓者一同、重い腰を上げて地上のほうへ歩き出すのだった。

●洞窟帰りの温泉
 開拓者八人、地図の作成や、調査記録などを纏めていつもの一室に荷物を置くと温泉に向かっていく。次第に深く潜る為往復が大変な洞窟だと行って帰るといい感じに疲れて宿のご飯やら温泉がいつもよりうまく感じる物だ。
「今回も大変でしたが、何とかいきましたね」
「調査も順調ですから、ね」
 御影と玲璃がのんびりと宿を堪能しながら、今回の洞窟の調査記録をぱらぱらとめくっている。
「次がどうなるかさっぱりだけどな」
 ルーディもそういいながらゆっくり酒を傾けている。
「まぁ、いいじゃねえか、次も健康にいいといいんだがな!」
 鈴代が「がっはっは」と笑いながら杯を合わせ乾杯しながら堪能中だ。
「(うさんくせぇんだが、やめられねぇんだよな、これが)」
 貉はというと今回も拾った砂金の数と重さを調べながらにんやりと仮面の下で笑うのだった。

 そして此方音影とフレイア、百々架も温泉につかって疲れを癒している。
「でっかい水晶とか、聖剣とか期待したいのにぃー」
 ぱしゃぱしゃと泳ぎながら百々架がぶーたれる。
「まぁまぁ‥‥」
「不思議なところでしたね」
 なだめるようにそういいながらのんびりと温泉を堪能している。
「もー!後でもっかいいってこよ!」
 百々架がばしばし水面を叩きながら暴れている声が辺りに響く。

 そんな事をいいながら今回の洞窟探険が終わるのだった。