不思議洞穴弐【第二階】
マスター名:如月 春
シナリオ形態: シリーズ
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/10/14 16:56



■オープニング本文

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●新洞窟にて
「あっついなぁ‥‥全く‥‥」

「まぁそういうな、第二階はまだ公開されてねぇんだし」

 ぶつくさと岩清水を飲みながら一服する開拓者二人。
 前回の洞窟も経験してきたとは言え、この高温高湿には参るようだ。

「そういや、次の階層から冷気だかが出てるって言ってたな」

「一応未探索、未開拓だからギルドの方で開拓者雇って調べるって話だから詳しい事は知らんけど‥‥らしい」

 第二階への階段と言うか下り坂からはひんやりとした冷気が出てきているのは確かである。
 階段を発見したときにも多少なりと其れを感じているはずだ。
 二人は階段側のほうへと視線を向けるとにやにやと笑いながら休憩を終えて進みだす。
 
「まぁばれなければ」

「いいわけで」

 と、悪人の言うような台詞を吐きながら勝手に第二階へと進んでいく。
 ‥‥数十分後、村の温泉でガタガタと震えてる二人が発見されたのは言うまでもない。

「薄着じゃ死ねるな‥‥」

「不思議洞穴、侮りがたし」

 「へっぶしゅ!」とくしゃみをしながら体を暖める二人。
 どうやら環境が一変する様で中々手ごわいようだ。


●ギルドにて
 夢が嬉しそうに新しい依頼書をぴっちり角に合わせて張り出す。第二階への調査依頼だ。

「また行くんですか?そろそろ有休ないですよ夢さん」

「いいのよ、仕事前倒しでいくから、それにやばかったらご飯と引き換えに休み貰うし」

 角にしっかりと合わせて依頼を張り出すのは相変わらず。
 仕事よりも趣味を優先するのも相変わらず。

「まぁ、調査も兼ねているんでいいですけど、趣味は程ほどにしてくださいね」

 わかったわかった、といいながら手を振り奥に消えていく夢を眺めながら一息。
 ぴっちり書かれた依頼書の確認をする

 ――第二階、第一階と違い、低温低湿の寒い箇所となっている
 服装、装備には十分に注意されたし
 
「仕事は出来るんですけどねぇ‥‥」

 そんな事をいいながら受付へと戻り開拓者を待つのであった。 


■参加者一覧
鈴代 雅輝(ia0300
20歳・男・陰
貉(ia0585
15歳・男・陰
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
朱麓(ia8390
23歳・女・泰
フレイア(ib0257
28歳・女・魔
ルーディ・ガーランド(ib0966
20歳・男・魔
御影 銀藍(ib3683
17歳・男・シ
イーノック・アントニオ(ib4470
20歳・男・騎


■リプレイ本文

●洞窟前にて
 開拓者八人が第二階層対策の防寒具やらかんじきを用意しながら各々が入り前にやることをし始める。
 入口の外れにいる先に第二階層にいった開拓者二人に朱麓(ia8390)が話を聞きに着ている。なんとも痛い目にあったのか、いい笑顔で話を始める。
「まぁ、とにかく寒かったな、奥に行く気もしないぐらいにな」
「完全に不意打ちだったよなぁ‥‥金属じゃなくても堪えるぜ、あれ」
 けらけらと笑いながら思い出話のように朱麓に話している。なんとも早く攻略して人柱になってくれと言わんばかりの顔でだ。
「ふむ‥‥どうやら一癖も二癖もありそうだねぇ‥‥」
 煙管に火をつけて他の話を聞き始める。
そしてもう一人煙管に火をつけてゆったりと探索前の一服をしている鈴代 雅輝(ia0300)なんとも奇怪な洞窟だなぁと、いつもの様に「がっはっは」と笑いながら眺めている。とは言え、前回笑えないほどに死に掛けたので洞窟を見つめる視線はきっと鋭い。
「まぁ水風呂も嫌いじゃないぜ!」
 その水の字に点が一つ足りないぞと誰かが突っ込んだ声が上がったのは別の話。
 仮面のズレを直しながら前回の砂金を思い出しながら出し抜きの算段を考える貉(ia0585)。さりげなく仮面の下で嫌な顔をしている。
「暑いところの次は寒いところか‥‥儲かるのはいいんだが、少し妙だな」
 背負い袋に防寒具と変えの仮面をぎゅうぎゅう詰め込みながら洞窟三割宝七割くらいの割合で思いをはせる。さりげなく前回拾った砂金の一つを取り出してにんまり。笑顔が止まらない。
 此方は採取用の小瓶を胸やらポケットに入れ、防寒具とかんじきの準備をしている御影 銀藍(ib3683)。前回の水質や地質調査は中々に興味深くとてもいい調査結果だとギルドの中でも結構な評判になっていた(主に夢が)。
「地味ですが、中々有意義で面白い洞窟ですね」
 縄と苦無を腰の鞄にくくりつけながらこちらもゆっくりと準備を始めていくのだった。
「灼熱の次は寒冷か‥‥地獄めぐりじゃないんだがな」
 ルーディ・ガーランド(ib0966)がそんな事をいいながら防寒具を背負い袋に入れ、その他の道具も詰め込んでいく。前回の手帳を取り出して一つ一つ第一階層の確認をし始める。またあの暑い場所を通ると考えると少々頭が痛いがしょうがない。
「高温高湿の次は低音低湿ですか、興味が沸きますわね‥‥自然というわけではなく人の手が入っているのでしょうか」
 じっくりと前回の事を思い出しながらフレイア(ib0257)が考察を組み立てる。とは言え、いきなり発生してる点やこうまで自然現象を起こせるのは流石に人工物ではないとも考えられる。中々に難儀な物だ。
 洞窟の入口あたりで手帳をぱらぱらとめくりながら玲璃(ia1114)がぽつぽつと呟きながら、次の階層の対策を考え始める。取りあえず石灰石があればと思い前回の調査記録をぱらぱらとめくり地質の性質を考え始める。
「ありますかね‥‥取りあえずは」
 そういいながら岩清水を氷霊結で氷に変えながら仲間に配り始める。
 最後に先程から「大丈夫だ、問題ない」といい続けているイーノック・アントニオ(ib4470)。レディには親切にエスコートしようとするが女だと思って話しかければ男であったり、旦那持ちだったり、そもそも相手にされなかったりと散々だ。そして何一つ対策も考えずにどうにかなるだろうと思っているのが目に見えているのか洞窟前にたむろっている冒険者が「ふざけるな」という顔で見つめているが本人は気にしていない。

 取りあえず全員が第二階層への準備や心構えを完了させて、洞窟前に横一列で並ぶ。
 全員が全員楽しそうにしながら洞窟へと入っていくのだった。

●灼熱から極寒へ
 取りあえず第一階層、高温高湿の灼熱地獄へと全員が踏み入れる。
 相変わらずのこの異常な場所、とは言え第二階層への道は既に開拓されている。前回よりはさくさくと進んでいる。取りあえず第二階層への準備として各々が熱された岩や熱湯を瓶につめて暖を取れるように工夫しながら準備を進めていく。
「石灰石はなさそうです」
 御影が苦無で玲璃の求める石灰石を探してみるが、それらしいのは見当たらない。そもそも石灰石‥‥石灰岩が発生する生物起源も化学的沈殿も行われていないのだからある方が珍しいだろう。結晶からのもあることにはあるが、高温の条件は満たしているとは言え、高圧ではない。着眼点としては良かったが。
「取りあえずどれだけ持つかは分からないが‥‥熱いのは我慢しろよ?」
 少し大きめの瓶に熱湯を入れて変なガスやら成分が溢れないように注意を促しながら手渡していく。流石に直接触ればかなりの暑さだが包帯やら布やらで包むといい感じだ。
 朱麓も熱された石を布で包みつつ全員に渡していく。即席とは言えかなり熱く。火傷すらしそうなほどに熱い。二階層の手前でこれを懐に入れるのは中々に堪えるものだ。
「(チクショー‥‥流石にとり尽くされたか?)」
 砂金目当ての貉が地面を見ながら此処まで来たが収穫はなし、金の匂いと言うのは分かる人には分かるのかある程度見切りをつけて岩清水を分けてもらいぐびっと一飲み。
「凍傷には注意だからな、皮膚は晒さない方がいい、それと着替えがあったら着替えておいた方がいいぞ」
 鈴代が真面目な顔でいつもの笑いもせずにしっかりとし注意を促す。
「大丈夫だ、問題ない」
 と、即答と言わんべき速度でイーノックが答える。本当に分かっているのかと皆が視線を投げつける。とは言え、身をもって知った方がいいだろうということなので何も言わない。
「流石にドレスだと難しいですわね」
 素早く着替えて肌の露出を抑えたフレイアが丁寧に畳んだドレスを背負い袋に入れながら防寒着を取り出す。

 各々が準備を完了し、新しい階層へと足を踏み入れるのだった。

●第二階層
 階段を一つ下りるたびに比例して落ちていく温度。
「こうまで寒くなるものか?」
 鈴代がぶるっと身震いしながら防寒具とかんじきを階段の途中で着込みながら階段を降りていく。
「確かに異常気象とも言えますね」
「流石に、ちょっときついな」
 白い息をだしながらルーディと玲璃も防寒具を取り出して上に羽織る。
「取りあえず腹ごしらえもかねて、ほい」
 朱麓が特性の辛団子を渡していく。餅米と干し肉と砂糖少々を加えて練った物を団子状に丸めて蒸した朱麓特製の団子。中々に効果は抜群なのかぽかぽかと体のそこが暖かくなっていく。
「‥‥大丈夫なんですか」
「‥‥大丈夫だ、問題‥‥ない」
 御影がイーノックに尋ねる。先程からずっとそればかり言っているがどう見てもやせ我慢だ。
「ふざけていると死にますわよ」
 しっかりと水分補給も済ませ、防寒着も華麗に着こなしブーツに鎖を巻いてしっかりと滑り止めを済ませるフレイア。
「しっかし、洞窟の中で凍え死ぬのはごめんこうむる」
 汗をしっかりと拭って貉が悪態をつきながら背負い袋を階段の途中で置いてしっかりと防寒する。その後ろ、長く続く階段に「在庫処分‥‥在庫処分」と言いながら朱麓が何かを置き続けたのは全員無視だ‥‥この何かが蠢いたとか言うのは別のお話。

「‥‥極端にこうまで変わると中々ですね」
 手をすり合わせながら御影が洞窟の中をゆっくり見回す。壁面やら天井やら氷柱が垂れ下がっていたり氷で覆われている。勿論足元はなかなかに滑りやすくなっている。
「かんじきは正解ですか」
 玲璃がしっかりと足で地面を踏み込む。かんじきを借りてきたのは正解だった。普通の靴のままで此処を歩けばまともに動けなかっただろう。
「冷気も結構きついな‥‥」
 鈴代が煙管を点して煙の流れを見つめる。奥のほうからびゅうっと冷気が流れている。なぜか奥の方へと手招いているようにも感じられる。
「とっとと済ませて温泉にでも浸かりたいところですわ」
 フレイアも手をすり合せ白い息を吐き出しつつあたりを見回す。
「今のところ敵の気配は‥‥ないねぇ」
「取りあえず奥に進もう、こうしているだけでも体力を奪われる」
 ルーディがそういいながらお湯を懐にしっかりといれて暖を取る。ここで怖いのは凍傷。流石に凍ってぽきんと折れたりはしないが、神経がやられて使い物にならなくなったりする。舐めて掛かると前回同様に痛い目にみる嫌な負傷の類だ。
「とは言え、すんなりとはいけないのがお約束」
 貉が人魂での索敵を済ませると奥の方へと指を向ける。さすがに粘性ではないが赤子程の氷の粒がごろごろと地面に転がっている。
「ざっと、数は五と言うところですかね」
 瘴索結界を使い回りと相手の数を把握すると各々が武器を取り臨戦態勢に。通路での戦闘は今回が初めて、ジグザグに配置された陣形がうまくいったのか相手を見やすく、対処もしやすい。

 先頭にいる御影と朱麓がまずは先制攻撃。手前にいた氷の塊に向けて苦無と旋棍での竜巻。鋭く的確に飛んでいく苦無と豪快に冷気を含んだ竜巻が氷の粒に襲い掛かるが、効果が薄い。というよりかは氷の重さと密度が高い性で攻撃が通らないだけだ。
「思った以上に硬いですね」
「そういうときは、こうだ!」
 御影の後ろから斬撃符、火輪とファイヤーボールが二人分放たれて、氷の粒に向かって飛んでいく。斬撃符は表面をカキ氷のように削り、ファイアーボールはどろどろと溶かしていく。
「なんとも分かり易い弱点で」
 ある意味では楽ではあるがある意味では面倒な敵だ。的確に弱点を突かなければ反撃してくる。足元を掬うように滑りながら突撃してくるのだ。
「ちぃ、めんどうだ、ねぇ!」
 下段に構えてぶつかるのと同時に旋棍と苦無を突きつける。流石に力が入っているだけあるのか。思い切りぶつかった瞬間に氷の粒にひびが入り砕け散る。
「――ッ‥‥痺れますね」
 御影が手を振りながら痺れを取りつつ、抜けていった氷の粒を見つめる。前に出てきたイーノックがなにやらいいながら剣を使い攻撃を受けきる。とは言え、かなりの速度でぶつかった為か足元を滑らせながら勢いを殺す。
「やりますわね」
 そういいながら止まった氷の粒にファイヤーボールを投げつけたり、斬撃符で粉みじんにしたり、火輪で溶かしたり、思い切り殴って粉砕したり。対処は意外とあっさりできた。
「‥‥っと‥‥」
 さりげなく撃破した後に見つけた光る物を拾う貉。やはり今回も砂金、前よりは粒が大きめではあるのだが。
「(ここも砂金か‥‥妙に怪しいんだよな‥‥なんつーか奥へ奥へと誘われているような‥‥ま、引き際も大事、これ守銭奴の常識‥‥と)」
 勿論誰にも見られていないのを確認してから砂金を専用(このためだけ)の袋にいれて仮面の下でにんまりとする。

 さて、アヤカシの弱点さえ分かれば後はこっちのもの‥‥といいたかった何分通路での攻撃、数とかなりの消耗をしたのは必然であった。階段にようやくたどり着いたときには全員が既に五割程しか体力も練力も残っていなかった。
「そろそろお湯も水か、往復でいい感じか」
 ルーディが懐から冷めた水を捨てながら此処まで来た道を玲璃、フレイア、御影と照らし合わせて不足した部分見落とした部分などを補完し、最善の帰り道を導き始める。今回ばかりは流石に調査する余裕が無いほどに体力を消耗している。熱いのよりも寒いのは分からないところで影響を及ぼす物。各々の手が震え始めているのもあってのことだ。
「見たところ、一階と変わりはない、それに植物も生育してなかった」
 御影が空いた時間に氷と壁の一部を瓶につめながら大事そうにそれを仕舞う。本来ならばもう少し詳しく調査したいところだが、死んでしまっては元も子もない。
「ったく‥‥こう帰って早くいっぱいやりたいな」
「まったくさねぇ‥‥」
 鈴代と朱麓が二人そろって煙管に火をつけて一服。
「この道を辿ればアヤカシも討伐済み、確認も取れているのですぐに戻れるかと」
 玲璃が纏めた地図を眺めながらゆっくりと全員に知らせ、撤退の準備を始める。
 その後ろでイーノックが壁に「依頼達成」とガリガリ削りながら書き記している。意外と元気そうだ。
「では帰りましょうか」
 そういってきた道を戻っていく。

 第一階層まで上ってくるとなんだか懐かしいような、むわっとした空気に包まれて防寒着を背負い袋に詰めなおし、第一階層の地図を辿りながら戻り始める。
 洞窟から出てくると待っていましたと言わんばかりに他の冒険者がこぞって洞窟へと入っていく。
「おかえり‥‥どうだった?」
 相変わらずの気だるそうな夢に出迎えられぺたりと座り込む開拓者達。
「大分やられているねぇ‥‥お疲れさん、ギルドの方で宿取っているからゆっくりしていきな」
 そういわれつかの間の休息を楽しむべく宿へ向かう開拓者達。

●脱出した後のお約束
 寒いところから暑いところへ、中々に体調が悪くなるのでやはり最後の締めは温泉とお酒だ。とは言え流石に気候の変化が激しかったのか、各々が「ふぃー」と大きな息を吐きながらゆったりと余韻に浸る。

「さて、次の階層はどんな感じだと思う?あんたの予想によっちゃ言う事きいてやるよ」
 そう朱麓が夢に向かって杯を「チン」と合わせて酒を飲みつつ聞いてみる。
「さぁねぇ‥‥それが醍醐味で楽しみってもんだからねぇ‥‥」
 ふふんと鼻で笑いながら先に温泉から上がり一言「頑張りな」と言って消えていく。
「‥‥勝てないねぇ、あんたには」
 ケラケラと笑いながら見送った後に今回の洞窟探険の疲れを癒す開拓者達だった。