頭部の探索そして〜興志王〜
マスター名:天田洋介
シナリオ形態: シリーズ
危険 :相棒
難易度: やや難
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/09/26 18:48



■オープニング本文

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 地下遺跡の盗掘に関連して希儀・羽流阿出州の石塔屋と為人屋の建物に朱藩官憲が立ち入った。資料を没収して関係者の取り調べが行われる。
 朱藩・安州にある石塔屋本社でも行われたが、責任者は全員が逃亡していた。
 重視されたのはかわら版の真実眼屋との関連性だった。
 地下遺跡で発見された各部位は巨人ギガが寝床とする羽流阿出州に隣接する遺跡内へと運び込まれる。
 真実眼屋は巨人部位新規発見のネタを掴んでいるはずなのに、かわら版の記事にはしなかった。ここぞという機会にばらすことで巨人ギガへの憎悪をあおり立てようとしている意図があると興志王と開拓者達は判断する。
 先手を打つために興志王が動いた。
「何の発表やろ」
「王様、直々なんて珍しいな」
 羽流阿出州内にある仮住まいの屋敷にかわら版屋の探訪員を集めて会見を行う。その中には当然真実眼屋の姿もあった。
「つい先日、未探索の地下遺跡で新たな巨人の部位が発見された。ギガ用のこれまでと違う腕の部位。さらに十三尺級の各部位もだ。但し十三尺級の頭部はねぇ。現在、様々なところを探索中だ。発見次第、希儀の未来に大きく関わる発表を行う。なおこれは武天の王、巨勢宗禅からも了承を得ている案件だ」
 興志王自らの発言だけあって非常に注目度が高かった。真実眼屋への牽制の意味合いが大きかったが、語られた内容に嘘偽りはない。
 発表後に質疑応答はなく、様々な憶測を呼んだ。その中には真実眼屋が流していた巨人ギガの反乱への危惧も含まれていたが、割合としては好意的な意見が多かった。
 希儀の未来に関わる発表とは何なのか。各かわら版に載る記事はそれで埋め尽くされる。
 数週間後、綿密な調査によって新たな古代遺跡が発見された。羽流阿出州から遠く離れた地中海近くの自然洞窟が実は出入り口になっていたのである。
 開拓者ギルドに協力を依頼して探索班が編制される。その中には興志王も含まれていた。


■参加者一覧
芦屋 璃凛(ia0303
19歳・女・陰
奈々月纏(ia0456
17歳・女・志
リューリャ・ドラッケン(ia8037
22歳・男・騎
フィーネ・オレアリス(ib0409
20歳・女・騎
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
十 砂魚(ib5408
16歳・女・砲
ウルイバッツァ(ic0233
25歳・男・騎


■リプレイ本文

●洞窟の奥へ
 早朝の希儀地中海。朱藩所属の大型飛空船が沖に漂う。
 海岸線の断崖面に目的の空洞は存在する。
 自然洞窟にしか見えない空洞は内部への立ち入り調査の結果、古代遺跡の出入り口だと判明していた。但し、全貌は明らかにされていない。
 非常に大きな洞窟で出入り口付近でも地面から天井まで五メートルの高さがあった。奥はもっと広がっている様子である。
「さあ、いくぜ!」
 興志王も探索班の一人として古代遺跡に参加した。
「キロ級の頭部、見つかればええけど」
 芦屋 璃凛(ia0303)は鋼龍・風絶と共に洞窟内部へと足を踏み入れる。
 往路の間に興志王が巨人の呼称を決めていた。
 今後、十八メートル前後の巨人をギガ級。四メートル前後巨人をキロ級。それ以下はヘクト級と呼ばれることとなる。
 十八メートルと四メートルの間が離れているので、予備として『メガ級』の呼称はわざと残された。
 奈々月纏(ia0456)は地図の記録係を担当する。手にした木炭で洞窟内の特徴的な場所を記していく。
「今んとこ地図があるんで楽でええわ」
 奈々月纏の前を歩く人妖・道明が提灯で行き先を照らしてくれた。
 竜哉(ia8037)はアーマー「人狼」改・NeueSchwertに搭乗したまま洞窟の奥を目指す。
「自然洞窟だと見間違えるのも無理はないな。奥に行けば変わるのだろうか」
 アーマーを稼働させていたのは初っぱなの襲撃を警戒したからだ。操縦席内には興志王に用意してもらったかなり大きめの包みが載せられていた。
 ウルイバッツァ(ic0233)は竜哉とは対照的にアーマーケースを担いで歩く。
「巨人の頭部パーツ‥‥なぁ〜んか、ひっかかるんだよねぇ。えっと今は引き潮の時刻だったよね」
「地中海の満ち引きで隠し通路や部屋が現れるか。あり得るな」
 ウルイバッツァと興志王は状況を確認し合うように話しながら洞窟を進んだ。その際、自然物に模した隠し扉などがないか見逃さないよう目を光らせる。
 フィーネ・オレアリス(ib0409)は定期的に立ち止まり、岩などにチョークで出入り口の方向や歩数などを記す。
「シュロ、わかったらすぐに知らせてくださいね」
 フィーネが声をかけると足下の忍犬・シュロが小さく吠えた。
 シュロには事前にキロ級頭部のにおいを覚えさせてある。フィーネはいつでも嗅がせられるよう破損が激しい部位から採取した巨人の欠片を持っていた。
「ちょっと止まってね」
 リィムナ・ピサレット(ib5201)は仲間達に動きを止めてもらい、超越聴覚で耳を澄ます。
 反響のせいで特定はできなかったが水音が聞こえた。潮の満ち引きによっての隠し部屋の信憑性が増してくる。
 しばらくして洞窟の空間がさらに広がった。
「この辺り、やけに湿気てるな。怪しいんで少し調べようか。どこもびしょ濡れだし。滑らないように注意だ」
 興志王が棚状になった岩の上へと登る。心配になった十 砂魚(ib5408)も一緒について行く。
「ギガより大きな巨人は見ませんの。やっぱり、ギガがリーダー格なのでしょうか」
「俺もそうじゃないかって持っているが‥‥あの窪みの奥、何か光ってないか?」
 興志王が咄嗟に身体を逸らし、十砂魚は屈み込んだ。二人が闇の中から飛びだしてきた何を避ける。
 明かりは一行が持っているランタンや提灯、松明のみで洞窟の殆どが闇に包まれていた。
 空中に浮かぶ道明の真下を何かが通り過ぎたとき、提灯の明かりに照らされて一瞬だけ闇から浮かび上がる。
「荷車のような巨人だ!」
 目視したリィムナが叫んだ。何かは四輪付きの平べったい形状をしていた。もう一度闇から浮かび上がったとき、キロ級と思しき頭部が確認される。
「そこか!」
 NeueSchwertを駆る竜哉は動体感知で先回りをして洞窟奥側へと移動。降着姿勢をとることで壁となり四輪巨人の逃亡を阻止した。
 ウルイバッツァは展開したアーマー「人狼」改・スメヤッツァに搭乗し、迅速起動で立ち上がらせる。急いで出入り口方面の壁となった。
「まさかこうくるとはね」
 伸ばされたウルイバッツァの左腕が四輪巨人を弾きとばす。
「ここでがっちりと守るんやで」
 芦屋璃凛の指示で鋼龍・風絶は出入り口側の壁役に加わる。
「通してはだめですの」
 轟龍・風月は十砂魚と一緒に洞窟の奥側を手伝った。
「どっちだ?」
 興志王は魔槍砲を構えながら時折闇から浮かび上がった四輪巨人を睨みつける。
 以前から洞窟に潜んでいたのか、それとも真実眼屋の刺客なのか、今のところ判断がつかなかった。
 ちなみに真実眼屋の建物を破壊した四メートルのメガ級巨人二体は人型であった。そのうちの一体は鹵獲済みだ。
「シュロ!」
 フィーネの指示に呼応した忍犬・シュロが四輪巨人へと飛び移る。頭部に覆い被さって眼部を隠した。
 視界を奪われた四輪巨人が洞窟の壁面へと一直線に突き進んだ。シュロは衝突する寸前に飛びおりて難を逃れる。
 ぶつかってもまだ四輪巨人は動いていた。よろよろと走っているところをウルイバッツァのスメヤッツァがひっくり返す。
「首刎ね、構わん」
 興志王冷静な声で指示をだした。
 NeueSchwertの竜哉が地面と四輪巨人のわずかな隙間を通すようにMURAMASAソードを振った。四輪巨人の頭部が洞窟の壁まで転がって止まる。
「起きとったらなんや返事してや。‥‥‥‥完全に沈黙のようやな」
 奈々月纏が刎ねられた頭部に近づいて話しかけたが反応はなかった。刎ねた斬り口は胴体部分なので頭部に損傷はない。
「鹵獲したメガ級の初期化が成功すれば、この頭部もいずれ力を貸してくれるだろう」
 興志王もできることならば巨人の初期化はしたくなかった。だが記憶を刷り込まれた敵として破壊するよりもましだと考え直した経緯がある。
 説得に関して開拓者の間から様々な意見がでたので興志王が決断した。
 真実眼屋の巨人も含めて頭部は極力残すように戦うべきと決められる。戦闘の手を止めない限りの説得もかまわない。但し、多勢に襲われた場合には躊躇のない巨人破壊が厳命された。
「う〜ん。このあいだ捕まえた巨人の頭部とかなりちがうよね。王冠みたいな髪飾りとか、目はこっちのほうが鋭いし」
 リィムナが入手したばかりのメガ級頭部と睨めっこする。隣に座った興志王も頭部をじっくりと眺めた。
「最初は真実眼屋の巨人かも知れねぇと迷ったが、元々ここに残されていた個体なんだろうな。門番だったのだろう」
 興志王とリィムナは意見の一致をみる。
(「うまくいけば真実眼屋が巨人にどれだけ精通しているかがわかるはず」)
 竜哉は本物のメガ級頭部の代わりに偽物を四輪胴体の近くに転がしておくのだった。

●古代都市
 奥に進むにつれて洞窟の様子が移ろいでいく。ある地点を境にして岩を積んだ坑道となる。さらに石組みの立派な通路に変化した。
「どないして造ったんやろ」
「まるで地下の町、いや都市やで」
 奈々月纏と芦屋璃凛が感嘆の声を上げたのも無理もない。非常に広大な地下空間に石造りの都市がひっそりと佇んでいる。この事実は報告書に載っていなかった。
 ぼんやりと明るいのはそこら中で繁殖しているキノコのせいだ。ぼんやりと緑色や赤色に輝いていた。
 芦屋璃凛は鋼龍・風絶、十砂魚は轟龍・風月に跨がって空中から様子を探る。気をつけさえすれば空間の天井まで充分な高さがあった。
 奈々月纏は『心眼「集」』でアヤカシや生物の存在を確認する。
 リィムナは超越聴覚で耳を澄ました。その後、輝鷹・サジタリオと『大空の翼』で同化して空中に浮かび、都市上空を一周する。
 フィーネは鼻を利かせる忍犬・シュロを連れ歩く。探索はシュロに任せてフィーネは護衛役だ。
 三十分後、興志王が狼煙銃を撃って集合をかける。
 全員の報告をまとめると地下都市に一行を除いた人やアヤカシはいないようだ。見かけられた動物は昆虫とコウモリだけである。
「真実眼屋の奴らはいないようだが、さっきの車輪付きの巨人みたいのが潜んでいるかも知れねぇ。くれぐれも注意してよな。俺が狼煙銃を撃ったらここに再集結だ」
 興志王が赤く塗られた石柱を掌で数回叩く。全員が地下都市に散らばっての巨人の頭部探しが始まった。

「あそこが怪しいと思ってたんや」
 芦屋璃凛は鋼龍・風絶で浮かんで巨大地下空間の壁面にあった窪みへと降り立つ。言魂でコウモリを出現させると窪みの奥へと送り込んだ。
 芦屋璃凛とコウモリの聴覚と視覚が共有される。無防備になった芦屋璃凛を風絶が護衛した。
 窪みの奥にも発光するキノコがいっぱい生えていた。不気味さを感じながら調べるがこれといった発見はない。
 見逃したかも知れないと再挑戦。すると妙なキノコの塊が見つかる。球状の周囲に発光キノコが生えている、そんな感じであった。
「これや! 風絶兄さん、見つかったで!」
 コウモリと意識を断絶させた芦屋璃凛は立ち上がって叫んだ。
 今度は松明を片手に自ら窪みの奥へ。怪しいキノコの塊を調べてみれば、核になっていたのがメガ級巨人の頭部だった。周囲にびっしりとキノコが生えていたのである。
 飛び散る胞子を避けつつ一部のキノコを取り除いて触れられる部分を作った。そして静かに持ち上げて外へと運びだす。
 風絶に乗って空中をゆっくりと移動。岩の間から染み出る地下水に浸しながら綺麗に洗う。間違いなくメガ級巨人の頭部であった。

 フィーネが布の包みを開いて忍犬・シュロに巨人の欠片を嗅がせる。
「これと同じ素材を見つけてくださいね」
 同じ場所をぐるぐると回っていたシュロだが、立ち止まって遠くを眺めた。そして駆けだす。フィーネはシュロの後を追いかける。
 地下空間であってもわずかな風の流れはあった。
 突然に停止したシュロが小さく吠える。次に高い建物の屋根まで跳んだ。フィーネも近くの建物の壁を蹴るようにして屋根に降り立つ。
 シュロが次々と屋根を跳び越えていく。
「どこまでいくのかしら?」
 シュロの走る背中を眺めながらフィーネが呟いた。やがて屋根が崩壊した屋敷風の建物に辿り着く。
 設置されていた石製の階段はしっかりしていた。シュロと共に建物内部へと下りたフィーネがランタンを高く掲げる。
「祭祀場といった雰囲気ですね」
 フィーネは石材に刻まれた装飾彫りを眺めながら広間を歩き回った。
「こんなところに」
 フィーネが瞬きを繰り返したときにシュロが小さく吠える。
 広間の奥まったところに建てられた祭壇にはメガ級巨人の頭部が祀られていた。

「ギガの仲間なら、出来るだけ傷付けたくありませんの」
「ギガと同じように喋れる巨人もいると思うんだ」
 十砂魚とリィムナは一緒に古代都市を探し回る。どこもかしこも石製ばかり。木製や金属製の物品が残っていてもわずかな衝撃で砂と化してしまうほど風化していた。
「これってもしかして」
「間違いないですの」
 二人が折れた巨大石柱の前で立ち止まる。石柱の根元に取りつけられた両開きの石扉には巨人の意匠が刻まれていた。
「よいしょ!」
「う〜ん!!」
 左右に分かれたリィムナと十砂魚が石扉に指を引っかけて力一杯に引っ張った。轟龍・風月も爪を食い込ませて手伝う。
 わずかに空いた隙間に輝鷹・サジタリオが落ちていた岩を挟んでくれた。ここで小休憩。もう一度力を合わせて今度は完全に石扉を開放する。
「あ、ギガそっくり〜!」
「瓜二つですの」
 隠されていたメガ級巨人の頭部は巨人ギガにそっくりな造形をしていた。

 奈々月纏が瓦礫の山を前にして腕立て伏せの姿勢をとった。
 人妖・道明が地面に置いた提灯の明かりが瓦礫の隙間奥を照らす。地下への階段らしきものがわずかながら見える。
「こりゃうちだけではあかんわ。手伝いよばな」
 志体持ちの奈々月纏でも山のような瓦礫を退かすのは大変である。
「ここで待っといてや。すぐに戻るやさかい」
 奈々月纏は道明に留守番をしてもらって仲間を呼びに行った。しばらくしてアーマーを操る竜哉とウルイバッツァを連れて戻る。
「人力だけだと一日仕事だな」
「任せてくださいねぇ〜。ひょひょっい、とやっちゃいますから」
 アーマーのNeueSchwertとスメヤッツァが瓦礫撤去を開始。約三十分後、地下への階段が露わになった。
 道明が地上に残り、奈々月纏、ウルイバッツァ、竜哉の三人が階段を下りていく。
「巨人の廃棄場か?」
 竜哉がかなり傷んでいた巨人の足らしき部位に目を凝らす。
「修理していたような気もしますね。これなんてほら」
 ウルイバッツァがよくわからない錆だらけの絡繰り仕掛けに近寄る。触れるとぼろぼろに崩れてしまった。
「これ、もしかして頭部ちゃうん?」
 奈々月纏が石造りの棚に置かれたメガ級巨人の頭部を発見。近くを探すともう一つ見つかる。どちらも風化とは無縁でしっかりとしていた。
 数時間後、地下に下りてきた道明が集合の狼煙銃が打ち上げられたことを三人に伝える。地下での収穫はメガ級巨人頭部二つであった。

●真実眼屋
 襲ってきた個体も合わせると手に入れたメガ級巨人の頭部は六体分となる。探索はもう一日続いたが、これ以上の発見はなかった。
「潮時だな」
 興志王の判断で探索は切り上げられる。
 地下都市まで辿り着いた順路を逆に辿っていく。メガ級巨人の頭部は分担して運ばれた。
「予想はしていたが、こういうことか」
 数時間後、立ち止まった興志王が頬を掻いた。
「まさかこうだったとはねぇ」
 ウルイバッツァが目の前の泉を覗き込む。ここは出入り口まで続いている洞窟の一部だったはず。満潮に合わせて冷水が湧きだしたようだ。
 竜哉は近くに転がっていた四輪巨人の残骸を確かめる。偽の頭部がかなり離れたところに移動していた。わざと泥で汚しておいたのだが拭われた跡もある。
「これぐらいの区別はつくようだな。つまりそれなりに巨人を扱えるということか」
 真実眼屋の奴らが自分達が立ち去った後でここを訪れた。頭部を調べて偽物だと判断して捨てていった。そう竜哉は推理して興志王に報告を入れる。
「俺の判断とも合っているな。立ち往生の機会を狙って真実眼屋が攻撃を仕掛けてくるはずだ」
 興志王が戦闘準備を告げる。それから数分後、現実のものとなった。
 奈々月纏が『心眼「集」』で敵らしき存在に気づいた。リィムナの超越聴覚による判断も裏付けとなる。
 十砂魚が『マスケット「クルマルス」』を構える。興志王は専用の魔槍砲で狙う。
 一般的な洞窟よりも広いとはいえ閉鎖空間なのは間違いない。逃げ道が閉ざされているので短期決戦が望まれていた。
「この音は‥‥、巨人は二体いるよ!」
 『大空の翼』で輝鷹・サジタリオと同化していたリィムナが叫んだ。
 二つの砲が火を噴く。迫る先頭のメガ級巨人の左脚部にひびが入る。
 まだ距離は離れていた。二射目は後方のメガ級巨人の右脚部に命中。欠けて破片が散らばる。
 射程に入ったところでリィムナが鷹睨で敵をまとめて睨みつけた。
 芦屋璃凛は『雷獣』で鵺のような式を召還。先頭のメガ級巨人の左脚部に雷撃を食らわせた。ひびが広がって完全に左脚部が崩壊する。
 この時点で実質的な勝敗は決まった。
 何人かの開拓者が投降を呼びかけたが、メガ級巨人二体に受け入れる素振りはない。味方の二体のアーマーによって頭部が綺麗に刎ねられる。
 フィーネは巨人対アーマーの戦闘をすり抜けて駆けた。遠方から窺っていた真実眼屋の三人をハーフムーンスマッシュで吹き飛ばす。
 死なない程度の怪我を負わせて捕らえることに成功する。
 それから三時間ほど待ってようやく水が引く。洞窟から外にでると夜空に星が瞬いていた。
 メガ級巨人の頭部はすべて合わせて八つ手に入ったこととなる。全員が大型飛空船に乗り込んで帰路に就くのであった。

●希儀の未来
 洞窟から帰った翌日には巨人ギガが協力した実験によってメガ級巨人頭部の初期化が成功した。真実眼屋の扱いでは個性といえるべき設定はされていなかったようだ。
 興志王の指示によって組み立てられたメガ級巨人には規律を持ち得る程度の個性設定が認められる。
 さらに二日後、興志王は再び羽流阿出州内の屋敷で会見を開いた。
「飛空船は便利だが大量輸送には向かねぇ。赤光ぐらいの超大型飛空船をボコボコ造れれば別だが、そんなのあり得ねぇからな。費用に対して効果が薄いってやつだ。そこで俺は考えた。移動に日数はかかるものの、大量輸送に一番適しているのは何か。それは海に浮かぶ普通の船だ。進むための風宝珠はともかく、かなりの重量でも浮遊宝珠は必要ねぇ。水に浮かぶっていうのはそれだけ便利ってことさ。当たり前っていえばそうなんだが、どうしても飛空船の影に隠れちまう存在だからな」
 しばらく一般的な大型船の有用性についてが興志王の口から語られる。
「内陸への輸送にはこれまでの通り、飛空船を活用すればいい。適材適所だ。だが各地の要所への流通には一般船の航路が不可欠だ」
 興志王が手をあげると臣下達が巨大な板を運んできた。それには希儀の地図が貼られていた。
「希儀の外海と地中海を繋ぐ大運河計画をここに宣言する。完成すれば希儀の発展は飛躍的なものになるだろう。外海と地中海といった両面からの海上流通の利便性は計り知れねぇからな」
 興志王は巨人の力を借りての運河を堀ると大風呂敷を広げた。
 この場合の運河とは大型船がすれ違えるほどの幅を持った人工の水路を指す。河川の拡張工事ではなく、まったくの新規掘削が説明される。
「この計画はギガを始めとした巨人達がいなければ始まらねぇ。駆鎧にも当然活躍してもらうことになるだろう」
 興志王の話しを聞いたかわら版屋の探訪員達は半信半疑の表情を浮かべた。荒唐無稽の夢物語にしか聞こえなかったからだ。
 大運河計画の報は他の儀にも伝えられる。
(「どうせやるなら急ごうか。その前に真実眼屋を完全に潰さねぇと」)
 真実眼屋の犯罪証拠は一通り揃っている。興志王の心の中では憤怒の炎が燃えさかっていた。