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■オープニング本文 前回のリプレイを見る 新大陸を目指す為の航路上には二つの島が存在する。 一つは伊乃波島、もう一つが鬼咲島である。 「行方不明か。会ったことはねぇが、今、奴がいなくなるといろいろと大変だろうな」 安州の海岸にある岩場に座り込んでいた興志王は、釣り竿を握りながら配下からの報告を背中越しに聞いていた。 開門の宝珠が眠る栢山遺跡を実際に発見したのが遭都出身の考古学者『黒井奈那介』である。その黒井が鬼咲島探査中に行方不明になったのだという。やはり新大陸絡みで。 「その鬼咲島。アヤカシが巣くう魔の島らしいな」 「はい、興志王様。瘴気満ちる魔の森が殆どを占める島だと報告には御座います」 配下とやり取りをしている途中で手応えを感じた興志王は釣り竿を引きあげる。釣り針にかかっていたのは掌三つ分はある真鯛であった。 「‥‥行くか、その島に。黒井って輩には興味があるからな。朱藩所属・調査船団『朱』の準備は?」 「昨日の段階で約八割の整備が済んでおります」 「出航までにすべてを終わらせろ。それとだ。開拓者ギルドに出向いて募集もかけてこい。一人でも百人力の頼りになる連中だからな」 「はっ!」 配下の者が姿を消した後で儀弐王は立ち上がる。 「せっかくの鯛だ。寿司にして食べてやるか」 興志王は賑やかな街の中心部へと歩み、適当な寿司屋を探すのであった。 |
■参加者一覧
紅鶸(ia0006)
22歳・男・サ
守月・柳(ia0223)
21歳・男・志
白蛇(ia5337)
12歳・女・シ
七郎太(ia5386)
44歳・男・シ
景倉 恭冶(ia6030)
20歳・男・サ
和奏(ia8807)
17歳・男・志
セシル・ディフィール(ia9368)
20歳・女・陰
磨魅 キスリング(ia9596)
23歳・女・志
フィーネ・オレアリス(ib0409)
20歳・女・騎
不破 颯(ib0495)
25歳・男・弓 |
■リプレイ本文 ●艦橋にて 興志王率いる朱藩所属・調査船団『朱』は首都安州の飛空船基地を離れて鬼咲島を目指す。旗艦・超大型飛空船『赤光』を中心に昼夜を問わずの飛行を続け、伊乃波島周辺を越えた。 鬼咲島が小さく望める上空にまで達すると眼下は雲ばかりになる。 鬼咲島は天儀本島の浮遊大陸とは独立して存在している。土台となる陸の中央周辺に鬼咲島があり、周囲は海で囲まれた形だ。 陸の縁から滝のように海水が零れているものの、落下の過程で霧となる。いつかは雨となって鬼咲島に戻るといわれていた。 「あれがそうか。魔の島とは本当のようだな」 赤光の艦橋内。足を組んで椅子の背もたれに寄りかかった興志王が呟く。 鬼咲島に近づくにつれて飛来するアヤカシの数が増していた。 果たしていつもこうなのかは事前の情報が少なくて『朱』の面々には判断がつかなかった。何かしらのきっかけがあってアヤカシが活性化していたのかも知れないし、または目立つ巨大船団故に引き寄せた可能性もある。どちらにせよ大規模な戦いは避けられそうもなかった。 艦橋には状況を知るために開拓者達が訪れていた。 「鬼咲島かぁ。なんだか、不吉な名前の島だね〜」 のんびりと様子で七郎太(ia5386)は目の上に左の掌でひさしを作って前方窓に広がる景色を眺める。 (「あれが鬼咲島‥‥新大陸を目指す為の、足掛かり‥‥」) セシル・ディフィール(ia9368)は不思議な島を窓越しに眺めながら行方不明となっている黒井奈那介の安否を気遣った。 (「魔の島‥ここに住んでいた人達の為にも‥取り返してあげたいね‥」) 白蛇(ia5337)は開拓者ギルドで読んだ資料を思いだす。五十年程前にアヤカシに支配された島だと記されていた。つまりそれ以前は人が生活を営んでいた島である。 「このまま進めばどうなると思う?」 「仰る通り、さらにアヤカシは増えてゆくと思われます」 興志王の質問にフィーネ・オレアリス(ib0409)が即答する。窓の外ではアヤカシの排除の為にいくつもの砲弾の軌跡が弧を描いている。 (「武官は別にして、朱藩の文官は王の怪我を心配して心が安まる時がないのでしょうね」) 指揮を執る興志王を眺めて、思わずクスクスと笑いがこみ上げてきた磨魅 キスリング(ia9596)であった。 「艦長、態勢を第四に移行。状況が不利に傾く前に龍を出す!!」 「各艦船からの龍の小団、出撃用意!!」 興志王の求めに応じて白髪の艦長が指示を出す。それは赤光内だけでなく手旗と鏡の反射によって船団のすべてへ伝えられた。 「さて‥‥アヤカシはどう動きますか?」 胸元で組んでいた手を腰に移動させながら紅鶸(ia0006)は遠くの鬼咲島を眺め続ける。興志王にさらなる作戦を期待した紅鶸だ。 「興志王の為ならば何処までも‥‥」 守月・柳(ia0223)は興志王の瞳を見ながら新大陸到達の意志を一言だけ呟いた。 「興志王に頼まれたとあっちゃ黙っていられないやね」 窓枠に手をかけてアヤカシが飛び交う外を眺めていた景倉 恭冶(ia6030)が興志王へと振り向く。 (「アヤカシなら消滅させるのに気兼ねをしなくてよいですね」) 敵が人ではなくてアヤカシならばと奮起した和奏(ia8807)だ。 「魔の島、か。まあやれるだけのことはやらせて貰いますよぉ。だから色々よろしく〜」 いつものようにへらりとしていた不破 颯(ib0495)だが、場を弁えて興志王を兄者とは呼ばなかった。 ちなみに以前、開拓者達が守った飛空船が改修されて船団内で既に運用されているらしい。興志王の行動と決断の早さに感心する不破颯である。 開拓者達は興志王の求めに応じて戦闘の準備を始める。赤光艦内に待機する者、龍を操って空中戦に赴こうとする者など様々であった。 ●戦いの序章 艦砲の終了から間髪入れずに各艦船の甲板や船倉扉から龍が飛び立つ。 赤光の甲板から次々と飛び立つ龍の背中には開拓者の姿も見かけられた。 「長期戦になるのを覚悟しなければ」 炎龍・大火を駆る紅鶸は飛行の速さを赤光に合わせる。 「‥それでは、参りましょうか」 炎龍・大火を追いかけるようにセシルは炎龍・イグニィを操った。翼を広げた炎龍・イグニィが上昇するように赤光の甲板から離れてゆく。 「下方からやられちゃたまらないからね〜」 駿龍を操る七郎太は赤光の真下で周囲の状況に気を配る。 「黒井奈那介とやらがやはり気にかかるな」 炎龍・風花の背に乗った守月柳は紅鶸、セシルと行動を共にする。 「程々に頑張りますかぁ」 景倉恭冶は手綱を引いて駿龍・夢彈を赤光の真上へと移動させた。 「まずは赤光の砲術士連中と連携といきましょうかねぇ」 駿龍・瑠璃を御しながら不破颯は弓に手をかける。 「望めますが、まだ島までは遠いですね」 駿龍・颯に跨った和奏は船団中央で状況を確かめた。 「行きましょう」 駿龍・ブリュンヒルトで空に舞った磨魅は、赤光に乗艦していた砲術士の龍・第三小団の六名と共に行動した。彼、彼女らは全員が志体持ちでもある。 (「雲に隠れているアヤカシもいる事でしょう。充分な注意を払わねば」) 駿龍・ヴァーユの背中の上でフィーネは周囲を取り巻く雲に注視する。何人かの開拓者はフィーネと同じように雲の中に注意を払っていた。 「みんな飛んでいったね‥」 白蛇はミヅチ・オトヒメを傍らに置きながら赤光の艦橋に残る。今のところは興志王の側で補佐をし、状況次第では赤光を守る為に動くつもりだ。 機会を合わせたかのように突如として進路に立ちふさがるアヤカシの数が膨れあがる。戦いの幕はあがったばかりであった。 ●激戦 アヤカシの群れは調査船団を包み込んだ。 不気味な人面鳥が空中を舞い、蛇に羽がついたような小雷蛇など他にも飛行可能なアヤカシが見て取れる。 調査船団は超大型飛空船『赤光』を中央にして密集態勢をとった。龍による戦闘へ移行していたので艦砲は中止される。同士討ちを防ぐ為だ。 代わりに小回りの利く砲術士達が各所の配置についた。寄ってくるアヤカシに狙いを定めて撃ち抜いてゆく。 「墜とさせて‥‥たまるかよ!」 中型飛空船にアヤカシが集るのを視界に捉えた紅鶸は炎龍・大火を急降下させる。大きく翼を広げさせて中型飛空船の甲板間近で停止。紅鶸が咆哮をあげてアヤカシの注意を引きつけると再び空へ舞い上がる。 「しばらく耐えて下さい!」 セシルは符を打ち、紅鶸を追いかけるアヤカシに斬撃の式を飛ばす。炎龍・イグニィは鋭い爪で迫り来るアヤカシを振り払った。 「守月柳‥推して参る‥っ!」 紅鶸の動きを予測した守月柳は炎龍・風花を操って先回りをする。アヤカシとのすれ違い様に手にした刀で羽や翼を斬り裂く。 どのような攻撃をアヤカシから受けようともひたすら突き進むしかなかった。勢いを無くしたらアヤカシの餌食となってしまう状況下だ。 「こっちだ! アヤカシ!!」 炎龍・大火を反転させて薙刀をアヤカシの額に突き立てる紅鶸。 「流石に数が多いですね‥」 出来る限り遠くのアヤカシを狙い、自分を含めた味方へ近づく前に出来るだけ消耗させておくセシル。 (「アヤカシに隙は見せられぬ」) 守月柳はセシルの前に出てアヤカシの攻撃を捌いてゆく。 次々とアヤカシを墜落させる紅鶸、セシル、守月柳であった。 (「いるね〜。雲の中にたくさんのアヤカシが」) 七郎太は駿龍の機動性を活かしてアヤカシの攻撃をすり抜けながら怪しい雲を探っていた。超越の聴覚で潜む何かを探り当てる。いるとすればアヤカシ以外にあり得なかった。 状況を把握した七郎太は引き返すと赤光艦橋の側で呼子笛を吹いた。 「アヤカシが雲の中にいるって合図だよ‥。前方のほとんどの雲の中にいるみたいよ‥」 白蛇は七郎太が吹く笛の間隔から意味を読みとって興志王に伝える。 「それは注意しなくてはな。頼むぞ、艦長」 興志王からの指示を受けた艦長は雲の中に潜むアヤカシに警戒するよう全艦船に命じるのだった。 ●強行着陸 調査船団が鬼咲島の海上空へと差し掛かる頃、中型飛空船一隻がアヤカシに片翼を破壊されて姿勢を崩す。まもなく墜落し、海面へ接触すると同時に船体が弾けた。間髪入れずに海中から水柱が立ちのぼる。 「大変な状況に! せめて手助けを」 駿龍・ブリュンヒルトを駆る磨魅は龍・第三小団と共に急降下する。海面では生き残った団員達が救命艇で脱出を図っていた。 「我が名は磨魅キスリング、悪断つ義の刃なり!」 磨魅を含めた七名は海中から団員を襲おうとするアヤカシの排除に尽力した。 龍に二人乗りをする形で海から団員を拾い上げなかったのは戦闘不可能な状況を回避する為だ。そうなったら役目を果たせず全滅の憂き目に遭ってしまっただろう。 海面を滑るように飛ぶ炉縁魚を磨魅は刀で両断した。 「小雷蛇の奇襲は凄まじいのものがありましたね」 フィーネもまた磨魅とは別の龍・小団を連れて救難補助に加勢する。 多くの飛空船は小雷蛇の奇襲に持ちこたえたのだが、さすがにすべてとはいかなかったのは残念であった。だが開拓者達の事前察知がなければ、状況は最悪に傾いていたかも知れない。 駿龍・ヴァーユが吐く炎がアヤカシの勢いを削いだ。これ以上はやらせないとフィーネは刀を振るう。千切れたアヤカシの肉片が霧のように消えてゆく。 しばらくして一隻の中型飛空船が遭難現場近くの海面に着水する。 海原を漂っている団員達が救助されるまで、磨魅とフィーネ達は海のアヤカシとの戦いを続けるのだった。 「一部艦船を鬼咲島に強行着陸させる!!」 興志王は状況打開の為に新たな判断を下した。 不利な状況に業を煮やした苦し紛れの作戦だと感じる者もいたが、興志王には勝算があった。地上と空中からによる立体的な制圧ならばこれほどの数のアヤカシでも退けられるはずだと。 鬼咲島のほとんどは森に覆われていたが、拓けている土地もわずかながらあった。すでに興志王からの作戦が伝わっていた大型飛空船『轟雷』と中型飛空船八隻が強行着陸を決行する。 「はは、なるほど興志王らしく豪快だ。しかし‥‥逆に被害を最小限にできるやもしれませんね」 戦闘の最中に興志王の指示を知った紅鶸は感心する。 赤光は着陸せずに上空でアヤカシを迎え撃った。多くのアヤカシが赤光へと群がり、各所で激戦が繰り広げられる。 「ここは絶対に守らなくてはいかないね‥」 白蛇は髪を靡かせながらミヅチ・オトヒメを連れて艦外の左舷翼のプロペラ近くに立っていた。砲術士達の砲撃をすり抜けてきたアヤカシに向けて手裏剣を放つ。ミヅチ・オトヒメは赤光に取り憑いたアヤカシを水柱で邪魔をして時間を稼いでくれる。 「ここは赤光を守るべきだよね。帰るところは確保しておかないとね〜」 駿龍で赤光近くを飛んでいた七郎太もプロペラの守りに力を貸してくれた。アヤカシの動きを察知して艦上で戦う仲間達に伝え、自らも手裏剣で戦う。場合によって自らの身体をアヤカシにさらけ出して盾となった。 「あっはっは! ホントいきなりだねぇあの人は!」 不破颯がいう『あの人』とは興志王の事だ。 不破颯は愉快そうに笑いながら駿龍・瑠璃を赤光甲板に着艦させる。即座に構えると矢を同時に複数放ってアヤカシを赤光から引き剥がした。 砲術士達と共に甲板周辺のアヤカシ排除を見届けた不破颯は再び駿龍・瑠璃で浮かび上がる。今度は下方のアヤカシに向けて矢を放つ。 地上でも激しい戦いが繰り広げられていた。 土煙をあげながら次々と島へと強行着陸する船団の飛空船。 一番乗りの大型飛空船『轟雷』へとアヤカシの群れが一斉に集ろうとする。だが同行していた開拓者達がそれを阻止しようと動いた。 「ここは狙いやすいように引きつけるがいいやね」 機動性に優れる駿龍・夢彈で位置取りをした景倉恭冶は、咆哮で『轟雷』に向かおうとするアヤカシの群れを自らに引きつけた。 『轟雷』の甲板へと飛びだした砲術士達が景倉恭冶を襲おうとするアヤカシに狙いを定める。一斉に放たれた砲弾がアヤカシの群れを圧倒する。 「龍さんは援護をお願いしますね」 和奏は駿龍・颯から島の大地へ飛び降りると真っ先に刀へ白梅香をまとわせた。 そして飛空船が取り囲む空間からアヤカシを排除するように努める。居留用の駐屯地を得るのが強行着陸の目的なので安全圏の確保が大事だと不破颯は考えたのだ。 駿龍・颯の翼が起こしたソニックブームの風でアヤカシが吹き飛ぶ。おかげで和奏はアヤカシに囲まれずに済んだ。 上空であらかたのアヤカシを倒し終えた紅鶸、守月柳、セシルの三人や、海に投げ出された団員を救うために尽力したフィーネと磨魅もまもなく地上戦に参加する。 戦闘の最中、着陸した数々の飛空船はわずかだけ浮かんで着陸地点を修正した。大型飛空船『轟雷』を中心にして出来るだけ円を描くように。この円の中こそが守るべき駐屯地だと示すが如く。 超大型飛空船『赤光』、大型一隻と中型四隻は上空からのアヤカシの駐屯地侵入を阻止し続けていた。そのおかげもあって徐々に駐屯地に集るアヤカシの数は減少してゆく。 鬼咲島に着陸した飛空船は大型『轟雷』の他に中型八隻。 残念ながら中型飛空船一隻は強行着陸時に失敗して大破する。海上に墜ちたものを含めて復旧不可能な飛空船の損害は二隻となっていた。 日が暮れてきた頃、戦いは一時終息する。 飛空船に取り付けられている輝く宝珠の他に篝火も設置された。 どこかにアヤカシが紛れていないかの探索が念入りに行われる。その上で怪我人の治療が行われた。 大破こそしていなかったが、各艦船の損傷もかなりのものがあった。暗がりですべてを把握するのは無理なのでひとまずの応急修理が施される。 団員を休ませたいと興志王は考えていたが、一部を実行に移せたのは深夜になってからだ。それだけせっぱ詰まった状況といえた。 沈静化しているとはいえ駐屯地の周囲からアヤカシが完全に消えた訳ではなかった。窺うように近づいては遠ざかるのを繰り返す。まるで獲物を狙う猛獣の群れように。 瘴気にまみれている危険はあったものの他に用意出来るものがないので、柵作りには現地の木が使われる。とはいえ出来る限り船内にあるものでやり繰りがなされた。特に水、食料に関しては持ち込んだ物以外に口にしてはいけないとの達しが興志王から出される。 朝日が昇り、長い夜がようやく終わりを告げるのだった。 ●そして 早朝、龍に乗った興志王は赤光から鬼咲島の大地へと降り立った。開拓者達も同行する。 「黒井って奴はよくまあこんなところに来ようと思ったもんだ」 腕を組んで呆れ顔の興志王に同感した者は少なくない。 黒井奈那介の探索よりまずは駐屯地の維持に力が注がれる。彼が生きているとすれば上空で繰り広げられた戦いを目撃しているかも知れなかった。自らの足でこの駐屯地を訪れる可能性もある。 (「ま、生きていればだがな‥‥」) 興志王が考える黒井奈那介の生存率は非常に低かった。万に一つといったところだ。 開拓者達は団員に混じって怪我人の治療、巡回警備、飛空船の補修に手を貸す。 駐屯地は鬼咲島の中央よりも東側に位置している。南北で考えると島を分断する川より北側だ。大きさはいびつながら直径二百メートル程度。状況によってはもう少し広げる事も可能であろう。 島へ着陸している飛空船は大型の『轟雷』と中型八隻。上空を飛んでいるのは超大型の『赤光』、そして大型一隻と中型四隻。 このうち損傷の激しい大型一隻と中型三隻は朱藩の首都、安州の飛空船基地に帰投予定だ。開拓者達はこの中のどれかに乗って帰路に就く予定である。 ちなみに興志王は指揮を執る為に鬼咲島へしばらく残る事となった。とはいえ何かしらの重要な案件が発生すれば安州に戻らなければならないのだが。 「耳にしたところだと俺達以外にも黒井奈那介の捜索に着手した奴らはいるようだ。こんなところでも探してもらえるなんて幸せもんだな、黒井は」 彼にその価値があるのかまでは言及しなかった興志王だ。可能性としてはあるからこそ、興志王も危険を覚悟して遙々やって来たのだが。 開拓者達は帰路の間、身体を休ませるように努めた。だが完全回復には届かず、ある程度疲れが残ったままで依頼は終了するのであった。 |