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■オープニング本文 前回のリプレイを見る 深夜の朱藩の首都、安州。 安州城の寝室では国王・興志宗末が高いびきをかいていた。 「こいつはすげーぞぉー。なんたってよ‥‥」 寝言で呟くのは先程完成して量産された爆連銃のことばかり。お気に入りで今日も呼んだ開拓者達と一緒に海上の超大型飛空船『赤光』の甲板で射撃を楽しんだばかりである。波に浮かべた板を的にして腕を磨いたようだ。 廊下を小走りする足音。 「王、一大事で御座います」 世話係に起こしてもらいながら伝達係まだ眠る興志王へと座して頭を下げる。 「ん‥‥。何事だ。寝ている俺を叩き起こすほどのものなのか?」 上半身を起こした興志王は半目の状態で寝ぼけた表情ながら言葉はしっかりしていた。 「はっ! 今日未明、理穴東部の魔の森との境界線が急変。瘴気の噴出と共にアヤカシによる理穴侵攻が始まったとのこと」 「規模はどの程度だ?」 「はっきりとした数字は伝わっていませんが、ほぼ全域に渡っての侵攻のようで御座います」 「全域? ‥‥それが本当ならば一大事だな‥‥」 「どういたしましょう?」 興志王は十秒ほど考え込む。 「よし! これからすぐに向かおう。赤光他、動かせる飛空船の三分の二は連れて行くからな。それと海上の赤光まで龍で向かう。庭に連れて来い」 興志王が立ち上がって衣を脱ぎ褌一丁になる。そして世話係による着替えが始まった。 「それとちょうどいいから、城で寝ている開拓者にも手伝ってもらおうか。訳を話しても構わんが寝ぼけてよくわからん者もいるだろう。とにかく赤光に乗せるのを優先してくれ。後でちゃんと俺から説明する」 興志王は指示を出しながら出立の準備を整える。開拓者も起こされてよくわからないまま赤光へ。 出航の連絡はすでに届いており、赤光の船内は慌ただしかった。興志王と開拓者達が乗船してから十分後には離水して星空輝く夜空へと飛び立つ。 興志王は集めた開拓者に理穴の状況を説明した。 「推測だが今朝から理穴東部での戦闘は始まっているはずだ。更にいくら急いでも赤光では丸一日かかっちまう。つまり戦いが始まってから二日経ってからようやく俺達は現地に到着するってことだ。決着がついていることも考えておかなくてはならねぇ。‥‥ま、あの女王さんのことだ。簡単にはやられはしねぇだろうがな」 興志王は自分達が到着する頃まで戦闘は続いているだろうと考えていた。正確にはそう望んでいたが正しいのだが。 「戦線はめちゃくちゃ長げぇ。なんせ四百キロだ。不利な状況に陥っている味方に加勢するか、もしくは見逃されていて拡大の一途にあるアヤカシの侵攻を止めるつもりだ。だから戦いを見つけたからといってすぐに参戦する気はねぇ。すれ違う際に射撃援護をするぐらいは許すからよっ」 戦いが均衡し、理穴軍側とアヤカシ側の双方とも疲弊していたのならば朱藩飛空船団の活躍の場もあろうというものである。 興志王は尖頭歯を露わにしながら口元のみで笑うのであった。 |
■参加者一覧
和奏(ia8807)
17歳・男・志
磨魅 キスリング(ia9596)
23歳・女・志
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
十 砂魚(ib5408)
16歳・女・砲
エラト(ib5623)
17歳・女・吟 |
■リプレイ本文 ●理穴東部 朱藩飛空船団が理穴東部に到達したのは繁茂とアヤカシの侵攻から数えて二日目の深夜のことである。 急変の報が届くまでに要する時間と朱藩・理穴間の距離を考えれば奇跡的な早さなのだが、それでも興志王は苛立ちを感じていた。 全艦船のうち超大型飛空船『赤光』と一緒に行動できたのは全体の七割に過ぎない。残りは順次合流していた。 「ゆっくりと北上しながらアヤカシを叩いていくとするかぁ。宝珠砲は一山いくらでわんさか現れたときまでお休みだ。まずは銃撃で倒していけ!」 興志王の指示が伝令龍騎兵によって各艦船へと伝えられる。 狼煙銃や宝珠光の照射点滅による伝達も使われていたが、朱藩飛空船団においては伝令龍騎兵が重用されていた。これは細かい指示を出したい興志王の趣向によるものである。 「興志王からの連絡です。陣形は参。低空を維持しつつ北上せよとのことです。なお――」 エラト(ib5623)はその伝令龍騎兵の役目を自ら望み任されていた。特に重要な超大型飛空船『赤光』と『轟雷』を含む大型飛空船三隻との橋渡し役としてである。 各艦船の外装に特設された小さな窪み状の待機場へと降りて艦橋直通の伝声管で話す。相手側の用件も聞いた上で次の飛空船へと飛び立った。 朱藩飛空船団は百メートルを切った低空飛行をしながら宝珠光で地表を照らす。繁茂の浸食によって魔の森の境界線は蠢いていた。そしてアヤカシも多数確認できる。 「酷い有様ですね。ここは露払いをしておきましょうか」 和奏(ia8807)は上級鷲獅鳥・漣李に乗り、一度高く上昇してから滑空する。 「アヤカシの大攻勢とはね‥‥戦いは数じゃないって事、教えてあげるよ♪」 滑空艇・マッキSIで飛び立ったリィムナ・ピサレット(ib5201)赤光の艦橋と並びながら魔の森との境界線を見下ろす。 使う予定の技はさすがに今の高度からだと地表のアヤカシには届かない。近づいてきた敵を狙うかそれとも地上に降りなければ無理である。 「特徴的な眷属が居るアヤカシなら、すぐ分りますのに」 十 砂魚(ib5408)は魔の森の再活性化について、ある推理をしていた。それは新しい大アヤカシの存在である。 炎羅と呼ばれる大アヤカシによって以前の緑茂における戦いは勃発した。ならば今回もそのような役目を持つアヤカシがいるのではないかというのが十砂魚の考えである。 「長丁場になりそうですね‥‥」 磨魅 キスリング(ia9596)と駿龍・ブリュンヒルトは赤光の甲板に残って状況を見守った。手には赤光備品の銃砲が握られている。 赤光がアヤカシに取り憑かれたときには近接戦闘に移行するとして、それまでは銃で支援するつもりである。 「来ましたか‥‥」 赤光より先行する和奏は迫る複数の飛蝗・妖を発見した。 鷲獅鳥・漣李に手綱と軽い胴蹴りで進行方向の微調整を伝える。次に手にしていた『刀「鬼神丸」』に紅焔桜を纏わせた。桜色の燐光を散らせながら大きく刀を振ると風が巻き起こる。 瞬風波による風の刃はまっすぐに突き進んだ。飛蝗・妖五体の身体は斬られ削がれて一部が弾け飛ぶ。 すれ違い様、和奏は鷲獅鳥・漣李を上昇に転じさせながら深手を負わせた飛蝗・妖の行く末を見届ける。 羽を失った飛蝗・妖二体が姿勢を崩して墜落してゆく。残りは赤光の砲術士達による銃撃を受けてすべてが瘴気の塵となった。 和奏の印象からすればこの辺りのアヤカシの侵攻はそれほどでもなかった。連動しているといわれている魔の森の繁茂についてもそうである。 (「すでに一度戦場になっているのかも‥‥」) 確信を持つには至らない和奏だったが彼の想像は当たっている。丸一日前に武天飛空船団が通過した際、戦闘が行われていた。 (「そうだとするなら派手好きの興志王には不満な状況になるかも知れませんね‥‥」) 和奏は先行して北上し、偵察を行うことにした。 朱藩飛空船団がわざと低空低速で飛行しているからなのだが、鷲獅鳥・漣李が全力を出せば四倍の速さで移動可能。偵察には十分な能力といえる。 「ここは‥‥集落ですかね?」 和奏は暗闇の中に潜む人家の集まりを発見して降りてみる。ランタンをかざし、逃げ遅れた者はいないか声をかけながら探ってみたが返事はなかった。 何軒か人家を立ち入ってみたがやはり無人である。戸締まりはされておらず、急いで逃げ出した感がある。 派手に壊された家屋もあり、浸食よりも先に侵攻した数体のアヤカシに襲われたのだろうと和奏は想像した。 立ち去ろうとしたところ、建ち並ぶ蔵が気にかかる。鷲獅鳥・漣李に乗ったまま蔵の屋根に空いていた穴から突入。米俵と砲弾が詰まった木箱が大量に見つかった。 理穴国が秘密裏に用意した備蓄だろうと考えた和奏は戻って興志王に報告する。 「そんなにたくさんあるのか?」 「調べたのは一棟のみですが、似たような蔵は十棟ありました。但し、自分の見立てでは二時間後には魔の森の繁茂に呑み込まれてしまいます」 艦橋の興志王は和奏を前にしてわずかに考え込む。 「‥‥米と砲弾ならいくらでも欲しいところだ。この戦いが短期で終わる保証はどこにもねぇからな。ここまで運んでくる手間が省けたって考えて、いっちょアヤカシ共をぶっ倒すついでに守るとするか! 回収はその後だ。まずは全力で魔の森の繁茂の抑え込む!!」 興志王の決断によって朱藩飛空船団は北方二十キロメートル先にある集落跡まで即座に移動を完了させる。 魔の森の繁茂は激しさを増して蔵のある集落跡まで一時間といったところまで迫っていた。 一部艦船は集落跡の周囲に着陸して地上宝珠砲台と化す。 上空に残った艦船は迫るアヤカシの群れに対して包囲陣形をとった。地表を的としている飛空船もあったが、飛翔可能なアヤカシが主な敵とされた。 「蹴散らせ!!」 甲板に立った興志王が狼煙銃を打ち上げて攻撃の合図を出す。 一斉に火を噴く宝珠砲。大地を抉りながら迫り来るアヤカシを巻き込んだ。 昼間に降ったと思われる雨で地面が濡れていたせいか土埃は大したことはなかった。しかし還元した瘴気の塵が煙状になって辺りを包み込む。 巻き込まれたら瘴気感染は避けられないが、風向きは朱藩飛空船団の味方をしてくれる。魔の森の方へと瘴気の塵は流れていった。 「あとは頼んだ!!」 興志王も自ら爆連銃を構えて銃砲による遠距離攻撃に参加する。銃眼と呼ばれる穴から銃身を突きだしてまだ残るアヤカシを狙い撃った。 (「ちゃんと考えていらっしゃるのですね」) エラトは興志王に報告しながら状況を整理する。 宝珠砲は威力こそ凄まじかったが命中率は非常に低い代物。一部艦船を着陸させて地上宝珠砲台にしたのも少しでも命中率を上げるためだ。 派手好きに見える興志王でも砲弾や練力を効率的に使おうとする配慮をしているようだ。 「エラトっていったな。ここを守りきるまではしばらく伝令は不要だ。開拓者の力、存分に奮ってくれ」 「そうさせて頂きます」 エラトは一時的に伝令龍騎兵の役をおりて戦闘に参加する。 待機させていた炎龍・風月の背に乗って集落跡地内へと着陸。迂回して集落跡に辿り着こうとするアヤカシに対抗しようとしていた。 同じように興志王からの指示を受けた開拓者仲間も集まり出す。 「それじゃあたしは集落跡の北東で戦うね♪」 「私は南東を担当させて頂きます」 吟遊詩人のリィムナとエラトは相談して担当場所を決めて分かれる。リィムナには和奏、エラトには磨魅と十砂魚が同行した。 「さてと♪」 リィムナは彷徨くアヤカシの存在を確認すると『フルート「ヒーリングミスト」』に唇を当てて演奏を始める。 曲名は『魂よ原初に還れ』。 荒ぶる神霊を鎮めるために編纂された曲といわれており、その威力は外傷として現れることはない。しかし効果が及ぶ範囲内に踏み入れたアヤカシは確実に弱まっていった。 (「ここを守りきれば、ものすごく有利になるのかもね〜♪」) リィムナが笛を吹くと目前に迫った四肢歩行のアヤカシが跪いてバラバラに崩れ落ちる。昆虫型のアヤカシはひっくり返ってもだえ苦しみながら瘴気の塵に。 広範囲かつ練力消費もわずか。リィムナが立つ集落跡外縁へ近づく前に瘴気へと還るアヤカシが続出する。 「これなら大丈夫ですね。宝珠砲の砲撃ですでに弱っているようですし」 和奏が騎乗する鷲獅鳥・漣李の蹄鉄がかすっただけで蝉・妖が四散した。まとめて来られて厄介な時のみ瞬風波で一掃する。 漂う瘴気にはなるべく触れないよう注意深く行動するリィムナと和奏である。 集落跡の南東に向かったエラト、磨魅、十砂魚もまた『魂よ原初に還れ』を軸にしてアヤカシに対抗していた。 (「砲弾があれば宝珠砲をもっと活用できるはずです」) エラトの楽器は『リュート「激情の炎」』。岩に腰掛けて弦を弾いての『魂よ原初に還れ』の調べ。 接近してきた鬼・妖が耳にして持っていた棍棒を投げ捨てて頭を抱えて苦しみ吼えた。『魂よ原初に還れ』は集落跡南東での戦いにおいても非常に役立つ。 「この状況なら危険をおかさずに倒せますね。ブリュンヒルト、ソニックブームをあちらに」 大地に足をつける磨魅は駿龍・ブリュンヒルトを傍らにおいて死角を作らぬよう心がけながら戦う。 踏み込んだ磨魅は真っ赤に輝かせたグニェーフソードを奇怪な水色の鬼・妖へと叩きつけた。磨魅の顔を鷲掴みにする前に鬼・妖の腕が吹き飛んだ。 砲術士の十砂魚は近場を磨魅に任せてなるべく遠方のアヤカシを選んで仕留めていった。 『魂よ原初に還れ』によってまとめて弱まったアヤカシに銃弾を見舞う。樹木の幹に背中を当てて安定性を高め、落ち着いて『マスケット「クルマルス」』の引き金を絞る。 (「七体目‥‥‥‥少しずつ風が出てきましたの」) 十砂魚は頬に風を感じて弾道が逸れるのを計算した上で撃ち始めた。今はまだ大したことはないが、荒れてくる予感がしていた。 迫るアヤカシが一時的に途絶えたところで十砂魚は炎龍・風月の背に乗って蔵の上へと移動する。再び襲ってくると見渡しやすい高所からの射撃で次々と仕留めてゆく。 上空で旋回する飛空船が宝珠光で地表を照らしてくれた。加えて一部のアヤカシが燐光のようなものを纏っていたのでそれを手がかりにして闇の敵を狙う。 集落跡周辺のアヤカシを一掃する作戦は約二時間で終了。周辺の魔の森の繁茂は無視できるほど遅くなり、蔵十棟に残っていた物資は各飛空船の船倉内へと積み込まれる。 「突然の出発で余裕がなかったからな‥‥。これで思う存分、暴れられる」 赤光の艦橋から搬入作業を眺める興志王は十分な物資があるのを前提として作戦を練り直すのであった。 ●最北端 朱藩飛空船団はひたすらに北上した。 すれ違うアヤカシに砲撃、銃撃を浴びせながらも立ち止まらずに通過する。そして午後になる前には魔の森との境界線の最北端まで到達した。 その間に龍騎伝令兵を飛ばして各戦場との情報交換が行われる。 興志王が一番に驚いたのは巨勢王ではなく娘の綾姫が武天飛空船団を指揮していた事実だ。 武天飛空船団が儀弐王率いる理穴軍の本隊に加勢しているのならば、自分の戦場は北部だと興志王は判断したのである。かなり手薄になっているだろうと。 その読みは当たった。 魔の森の繁茂開始から三日目の暴風吹き荒れる魔の森境界線北部は地獄絵図と化していた。これでもかと大地と空にアヤカシが跋扈する。 「ここで砲弾を撃ちきっても構わねぇ!! 全力で掃討しろ!!」 赤光の艦橋では興志王が大声で指示を出す。 朱藩飛空船団は全力で宝珠砲を放ち続けた。 一日目から二日目にかけての雨で湿っていたはずの地面は乾き、砲撃による土煙は暴風によって巻き上げられた。当然、アヤカシの滓といえる瘴気も混じらせて視界を悪くする。 開拓者達は上空の赤光を守ることに専念していた。砲術士達の銃弾を掻い潜って到達する飛翔アヤカシが少なくなかったからだ。 「ここが正念場ですね」 和奏は鷲獅鳥・漣李で赤光の艦橋周辺を飛んでアヤカシを排除し続ける。ひとまず落としてしまえばよいとアヤカシの羽根や翼を狙って斬り落とす。 「急いでください!」 焦る和奏は踵で鷲獅鳥・漣李の腹を軽く二回蹴って瞬速を使わせた。そして赤光艦橋の窓に体当たりをしようとした甲虫・妖に刃を突き立てて阻止する。 力と力のぶつかり合い。 和奏は捻るように『刀「鬼神丸」』を引き抜き、再度斬りつけた。 甲虫・妖の裂かれた胴から瘴気が撒き散らされても怯まず振り切った。それでようやく甲虫・妖が力を失って墜落してゆく。 駿龍・ブリュンヒルトを駆る磨魅は赤光の真下を飛んでいた。地表から垂直に飛んでくる植物の種子のような砲弾アヤカシから赤光を守るために。 「まだ来ますか?!」 磨魅は駿龍・ブリュンヒルトの高速飛行を生かして追いつき、グニェーフソードで種子砲弾アヤカシを叩き斬る。複数まとめて飛んできたときには叩いて軌道を逸らし、やり過ごす。 甲板でも開拓者は奮闘していた。 「王様がいる赤光の中にアヤカシを入れるわけにはいかないからね〜」 リィムナは艦橋に近い甲板で『魂よ原初に還れ』を演奏する。仲間達の危機に駆けつけられるよう滑空艇・マッキSIは傍らに置いてあった。 「この瘴気の濃さは危険ですね」 エラトは船首付近で懐中時計「ド・マリニー」を確認しつつ『魂よ原初に還れ』を使い続けた。 エラトの空龍・鼓は赤光の船首を止まり木にして掴まり、吐いた火炎でアヤカシの侵攻を阻止する。さながら火炎砲台のように。 魔の森境界線最北端における戦いが始まって四時間が経過した。 十砂魚は外部伝声管近くの待機場にて銃弾でアヤカシを倒し続ける。 しばらくして甲板のリィムナから十砂魚に声が届いた。『貴女の声の届く距離』を使えば容易い距離である。遠くのリィムナの側には味方の龍騎兵が倒れていた。 十砂魚は伝声管に顔を近づけて代わりに赤光艦橋へと報告を入れる。 「『轟雷』からの連絡を代わりに伝達ですの。目標殲滅せり。繰り返しますの。目標殲滅せり」 十砂魚が艦橋に伝えた内容は興志王が命じた大型飛空船『轟雷』の作戦成果。魔の森に突入しての急襲に成功した模様だ。 これによって魔の森の繁茂が一気に弱まった。 報告を聞いた興志王はここぞと攻勢を強める。これによってアヤカシ側の攻めが瓦解した。 それまで拮抗していたぶつかり合いが一方的になり、わずか十数分のうちに朱藩飛空船団側の勝利が確定する。 魔の森の境界線北部は静けさを取り戻した。 船体の応急修理や怪我人の治療などで二時間の大休止となる。その後、立て直した朱藩飛空船団はゆっくりと南下しながらアヤカシ掃討を続けた。 夕暮れ時を境にしてアヤカシが一切姿を現さなくなる。 地域によって数時間の差はあったものの、魔の森の繁茂とアヤカシの侵攻は一旦収束するのであった。 |