贈り物 〜儀弐王〜
マスター名:天田洋介
シナリオ形態: シリーズ
相棒
難易度: 普通
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/12/31 22:28



■オープニング本文

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 理穴の儀弐王が願った幼なじみである波路雪絵の失踪調査。消えたといわれる宿場町で開拓者達はいくつかの痕跡を発見する。
 特に鏃と矢羽根に関しては儀弐王の心を揺さぶった。非常に忠誠心の厚い理穴の有力氏族『綾記家』の特徴が見て取れたからだ。
 後日、儀弐王は開拓者達を連れて綾記家を来訪して調査。軟禁されていた雪絵と再会する。そして病に伏せていた当主の明全を問い質した。
 明全によれば雪絵が嫁ごうとしていた鶴時家には深遠な知恵を持つアヤカシが巣くっているらしい。真実を知るために間者を放ったものの全員が闇に葬られてしまい、確証は得られていなかった。
 鶴時家へ入る前に攫うしか雪絵を助ける術はなかったと明全は釈明する。
 明全の言葉を確かめるべく、儀弐王は開拓者達に鶴時家への急襲を依頼した。表向きは高価な黒茶碗の奪取。真の目的はアヤカシが本当に巣くっているかを確かめる為だ。
 結果、鶴時家当主の妻『梔』がアヤカシだと判明した。
 疑いから確固な状況に変化し、儀弐王は再三に渡って鶴時家次期当主『鶴時君義』に理穴の首都、奏生への上洛を命じる。
 謀反を起こすかと思われていたが君義は登城。儀弐王に無実の申し開きをし、そして婚姻がうやむやになってしまった波路雪絵との再会を果たす。
 その時、奏生の城を襲う二隻の飛空船。君義の救出と儀弐家に対する反旗を鶴時家が明白にした瞬間であった。
 逃亡した君義が残した問いの深い意味。
 開拓者達の苦労のおかげで雪絵の母である氷魅から儀弐王に送られた手紙によって真実が語られる。
 不思議なことに波路家の女性はある宝珠を体内に取り込んでいるという。その宝珠は生まれる次の女児に受け継がれる性質があるらしい。
 宿す女性の回りの瘴気をすべて消し去ってしまう宝珠の効果。しかし事実がわかると当時の王によって封印される。瘴気を消し去るのではなく、吸い込み蓄える性質を持っていたのである。
 苦悩の末、儀弐王はその事実を雪絵に伝えた。絶望に苛まれた雪絵だが信頼と希望を取り戻す。
 儀弐王は軍を率いて鶴時家の領内へ進攻。開拓者達の協力を得て城塞・鶴を奪取する。
 万が一にも濃縮蓄積された瘴気が解放されたのなら。
 それはアヤカシにとっては希望であり、人々にとっては悪夢でしかなかった。


 真っ白な雪原。未だ降り止まぬ雪。
 理穴軍は二週間にも及ぶ吹雪のせいで占領した城塞・鶴において立ち往生を強いられていた。
 少々の犠牲を厭わなければ数において有利な理穴軍が鶴時家の兵団に負けるはずもなかった。しかし肝心なのは鶴時家を滅ぼすにあらず。
 アヤカシと判明している鶴時家当主の妻『梔』を捕らえるのが行軍の目的である。波路雪絵の体内にある瘴気を蓄える宝珠をどうすれば取り出せるのかを梔から聞き出さなくては意味がない。悪天候で無理をして取り逃す訳にはいかなかった。
(「こうしている間にも策を練られてしまうかも知れない‥‥」)
 儀弐王は降り続く雪を見上げながら焦りを感じていた。
 ところ変わって理穴の首都、奏生。
「ふー。予定より遅くなってしまいましたが、何とか仕上がりました。重音に喜んでもらえるとよいのてすが」
 深夜、城内の一室で雪絵は青い襟巻きを編み終わる。
 その襟巻きを贈る相手は自分の為にがんばってくれている幼なじみの儀弐重音。敵となってしまった鶴時君義を思い出さない訳ではないが今は心の奥にしまう雪絵だ。
 ジルベリアから天儀本島に入ってきた祭りの風習としてクリスマスがある。襟巻きはクリスマスの贈り物と用意したものだ。
 翌日、雪絵は城の者にお願いして開拓者ギルドで募集をかける。編んだ襟巻きと認めた手紙を儀弐王の元に送り届けて欲しいという内容であった。


■参加者一覧
剣桜花(ia1851
18歳・女・泰
只木 岑(ia6834
19歳・男・弓
ルエラ・ファールバルト(ia9645
20歳・女・志
パラーリア・ゲラー(ia9712
18歳・女・弓
琉宇(ib1119
12歳・男・吟
朱華(ib1944
19歳・男・志
長谷部 円秀 (ib4529
24歳・男・泰


■リプレイ本文

●儀弐王の元へ
 理穴の首都、奏生。早朝の城庭で離陸待機をしていたのは一隻の中型飛空船。
「重音、いえ儀弐王様にお渡し下さい」
「贈り物は必ず届けます。ご安心を」
 只木 岑(ia6834)は庭先で波路雪絵から布の包みを受け取ると蒔絵の箱に仕舞う。さらに別布で包み、籾殻が詰まった木箱に入れて蓋を被せると釘で打ち付けた。仕上げに札で封をして肩に担ぐ。
「それとこちらの手紙も儀弐王様にお願いします」
「わかったのにゃ。絶対重音お姉さんに直接渡すね♪」
 雪絵から受け取った手紙をパラーリア・ゲラー(ia9712)は、桐の小箱に入れて大事に懐へと仕舞った。
 クリスマスの贈り物と手紙を分けたのはわざとである。不慮の事態が起きたとしても同時に失わない為の策としてだ。
「贈り物、か‥‥。心が温かくなるな」
 朱華(ib1944)は雪絵と仲間達のやり取りを飛空船内部から眺めていた。
 まもなく全員が乗り込むと飛空船が離陸する。目指すは儀弐王が待つ鶴時家領内の城塞・鶴である。
「現地は吹雪って聞いたけど‥‥大丈夫?」
「少しぐらいなら平気平気。俺の腕を信用してくれ」
 心配する剣桜花(ia1851)に飛空船の操縦士がどんと自分の胸を叩いた。それが安請け合いだとわかるのに大した時間はかからなかった。
 暮れなずむ頃。まだ日が昇っている時刻のはずなのに辺りは暗かった。吹雪のせいで船体が激しく揺れだす。
「雪とは聞いていましたが‥‥これほどとは」
 ルエラ・ファールバルト(ia9645)は船内の支柱に掴まりながら吹雪いている外を眺める。
「この吹雪、まず‥‥まず過ぎるな‥‥。すまない。飛空船ではここまでが限界だ」
 船体が振動で空中分解すると判断した操縦士は雪に覆われた平原へと着陸を強行する。
 停止を確認した後、長谷部 円秀(ib4529)が乗降口を開けると大量の雪が船内に吹き込んできた。一瞬で凍ってしまいそうな冷気と一緒に。
「雪絵さんの想いがこもった贈り物です、無事届けて見せましょう」
 外套をまとった長谷部が雪上に飛び降りる。そしてかなり雪が積もっているのをまだ船内にいる仲間へと報せた。
 雪絵によってカンジキなどの雪上で必要な道具類は揃っていた。残る全員が身につけてから飛空船の外へと出る。長谷部も外で履いて準備完了である。
(「雪中行軍かぁ‥‥。楽器をちゃんとしておかないと」)
 琉宇(ib1119)は寒さで楽器の調子が悪くないかを第一に心配する。取り出しやすくはしておくものの、ひとまず毛布に包んで仕舞っておいた。
「雪絵さんからの贈り物、ボクに任せてください。どんなことがあっても守り通しますので」
 只木岑は贈り物が入った木箱を袋に入れて背負っている。大した重さではないはずなのにずっしりと感じられた。
「ほえ〜。ふっ、吹雪いてるのにゃ〜」
 パラーリアは桐の小箱を仕舞っている身体の辺りを服の上から触って確かめる。
「この吹雪の中を進むとはまた強行軍を‥‥」
 外に出て吹雪の激しさを剣桜花は再確認する。たくさんの木炭を袋に入れて担いでいるが余裕のある仲間にも持ってもらっていた。手に入ったのは欲した石炭ではなく木炭だったが、暖まるのにはこちらでも十分だ。
 着陸中の飛空船内で夜を明かしてから出発した方が正しいのかも知れなかった。だがもっと雪が降り積もって歩きにくくなる可能性も残る。少しでも早く雪絵から預かった贈り物を儀弐王に届けたい気持ちもあって即座の出発を選択した開拓者達だ。
「もっと積もった場所もおそらくあるはずだ」
 試しに朱華が木の枝を雪面に刺してみる。足下は大体二十センチ前後の積雪であった。
 迷わないように一行は雪上を一列になって進む。先頭は志士である長谷部、朱華、ルエラの三人が持ち回りで担当する。
 二時間ほど歩いたところで野営の準備が行われた。
「立っているだけで吹き飛ばされそうです‥‥」
 ルエラの提案が採用されて雪でカマクラが作られる。天幕では風に吹き飛ばされそうであったからだ。天幕の部品はカマクラの補強や風避けに活用された。
 雪は十分にあるので志体持ちの開拓者達ならばカマクラ作りは造作もない力仕事。ただ寒さだけはどうしようもなく震えながらの作業となる。
「さ、寒い‥‥」
 出来上ったばかりのカマクラの中で剣桜花が木炭を並べる。震えながら火種を出現させるとすぐに点火させた。
「暖かいのはとても助かるよ。楽器の大敵だからね」
 カマクラの中が暖まると、琉宇は楽器の手入れを始める。
「これを飲むと身体の中から温まりますから――」
 長谷部は震えている仲間にヴォトカを分ける。とても強い酒で一口呑んだだけで身体に火が灯ったように感じられた。
「こちらも――」
 只木岑も天儀酒などの酒類を提供する。
 その他にも木炭にかけた鍋で雪を融かし、味噌味の乾物を入れて温かい料理が作られた。
「前にアヤカシを倒したところからそんなに離れていないのにゃ‥‥」
 心配そうにパラーリアが入り口付近の隙間から外を覗く。暗くて見えないだけでなく、吹雪の激しさにかき消されて物音もよく聞こえなかった。
「この人数ですと三つの班に分かれて見張りましょうかっ」
 剣桜花はルエラと組んで最初の見張りを受け持った。その次は只木岑と朱華。最後はパラーリア、琉宇、長谷部の三名である。
 毛布にくるまって密集しながら横になる。なかなか寝付けない者もいたようだが、呑んだ酒が効いてきたのかやがて眠りに就いた。
 夜が更けるにつれていっそう寒さが増す。
「何か聞こえた気がします。羽ばたきのような音だったような‥‥」
 只木岑が炭火にかざす手を引っ込めて横に置いてあった弓を握った。朱華と一緒に耳を澄ませるが聞こえるのは荒れる吹雪の風音だけ。
「只木さんは大事な贈り物を預かっているからここにいてくれ。辺りを一周してくるだけだ。何かあれば叫んで報せるから弓矢で援護を」
 朱華は二刀を抜いてからカマクラを出た。少しでも気を緩めると飛ばされそうな風の勢いと暗闇の中、勘で周囲を歩いてみる。灯火を持たなかったのはあまりの強風で役に立ちそうもなかったからである。壊れるか、火が消えてしまうかのどちらかであろうと。
 代わりに朱華は心眼で周囲の存在を探ってみる。
(「なんだ?」)
 空中から急接近してくる何かを察知した朱華だが、あまりに突然で体当たりを腹に受けてしまう。続いてこめかみにも強烈な打撃を食らった。
「只木さん! 何かわからないが敵だ!」
 朱華の叫び声に只木岑が反応した。近くで寝ていた剣桜花を揺り起こしてから只木岑はカマクラの外へと飛びだす。
 起きた剣桜花は目覚まし代わりのブブセラを思い切り吹いて鳴り響かせる。
 朱華が心眼で察知した方角に向けて只木岑が矢を乱射した。そのうちの何本かが当たったようで飛ぶ何かは墜落する。
 起きた仲間達と一緒にカマクラから洩れてくる炭の赤光を頼りに探したが、倒したはずの敵の亡骸は見つからなかった。空飛ぶ敵の正体はアヤカシで瘴気に戻ったのだろうと推測がなされる。
 それから朝になるまでの間、力の回復に睡眠が必要な仲間を除いて全員が警戒にあたるのだった。

●執拗な攻撃
 夜が明けても薄暗い。吹雪はわずかに弱まっているものの、相変わらずの悪天候であった。
「風の音に混じって‥‥聞こえるよ」
 歩きながら妙な音を耳にした琉宇が仲間に報告する。
「まさか?」
 昨晩の事を思い出した朱華が即座に心眼を使った。
 ルエラと長谷部も心眼を使えたが戦いの準備を優先する。ルエラは炎魂縛武を武器にまとわせた。長谷部は紅蓮紅葉を自らに付与する。
 急降下しながら飛来してきたのは鳥のアヤカシ。凄まじい勢いで接近するそれを、雪折の居合いで長谷部が斬る。軌道を狂わされた鳥のアヤカシは雪面に落下して雪煙を巻き上げた。
「昨日の敵の正体、このアヤカシと同種でしょうね」
 只木岑が瘴気に戻って消えようとしていた鳥のアヤカシを観察する。隼によく似た姿である。
「隼よりもクチバシがすごく尖っているにゃ。これで貫かれたら大変だよ〜」
 屈んだパラーリアが触ろうとした瞬間、隼に似たアヤカシは完全に消え去ってしまう。
 それからも別個体による隼に似たアヤカシからの攻撃は続いた。いつ襲われるかも知れない状況に開拓者達の神経が削られてゆく。
「これで大丈夫。出発しましょうか」
 時には攻撃を受けてしまう開拓者もいたが、剣桜花の治療と閃癒によって問題はなかった。
 カンジキを履いてなければ、積もったばかりの新雪に埋まって身動きがとれなくなるだろう。しかしそのカンジキのせいで素早い回避が出来ずに、せいぜい雪面に倒れる程度しか方法はない。このジレンマは開拓者達を憔悴させるに十分だった。
 何度か風が避けられる場所を見つけては休憩が行われる。木炭を火種にして集めた枯れ木の焚き火で暖をとる。
 薄暗さが増してきた暮れなずむ頃、開拓者達は何度目かの選択を迫られていた。
 今日はあきらめて早めに野営の準備をして明日に備えるのか、それとも無理をしてでも城塞・鶴への到着を望むのかのどちらかかを。
 隼に似たアヤカシに襲われた昨晩は運が良かった面がある。たった一度の、しかも一羽のみの襲来だったからだ。
 もし灯りが用意できない吹雪の夜に大量の隼に似たアヤカシに襲われたとしたら、開拓者達もただではすまないのは明白である。三名の心眼使いがいるので負けはしないだろうが。
 悩んだ末、開拓者達は早々の到着を選んで先を急いだ。
「‥‥来る!」
 突然に立ち止まり、しばらく遠くに目を凝らしていた只木岑が叫んだ。大量の隼に似たアヤカシが向かってくると。
 開拓者達が歩んでいた周辺には遮蔽物は何もなかった。正念場だと感じ取った一行は全力で迎え撃つ覚悟を決める。
「これで一気に眠ってもらうよ」
 ここまで温存してきた三味線「獅子冠」を取り出した琉宇は夜の子守唄を奏でる。勢いのまま隼に似たアヤカシが眠りこけて次々と雪面へと突き刺さってゆく。
「届けると約束したのです」
「こっちに来たらイヤなのにゃ」
 只木岑とパラーリアは並んで弓矢を構え、一緒に放つ。只木岑は乱射、パラーリアはガドリングボウによって空中に矢による幕を張った。
「立ち止まらずに!」
 長谷部は飛んでくるアヤカシを両断しながら仲間へと声をかける。
 一行は少しずつながら前へと進んだ。夜の帳が降りる前に辿り着かなくてはならないと声を掛け合いながら。
「あれは‥‥。光が見える。見えるぞ!」
 先頭の朱華がなだらかな丘陵を越えた瞬間に大声をあげる。遠くにいくつかの灯火を見つけて。
 それは城塞・鶴の篝火であった。
「ここは一気に向かいましょう!」
 ルエラは隼に似たアヤカシの攻撃を盾で受け流す。向かう途中で日は暮れてしまうが、城塞・鶴の篝火のおかげで方角に迷うことはなくなった。
 仲間の心眼でアヤカシの動きを把握しながら、開拓者達は城塞内に飛び込む事を優先する。辿り着く前に城塞の巡回兵が気づいて応戦してくれた。
「やれやれやっと着きましたね‥‥。吹雪が止むまで待って新年祝いにしてしまっても良かったように思うのですが‥‥あれ? 禁句ですかっ?」
 城塞の門を潜った剣桜花がにこやかに呟いた。仲間達から総ツッコミがあったのはいうまでもない。
 宵の口、開拓者一行は城塞・鶴へと到着したのだった。

●贈り物
 怪我の治療や食事、さらに温かい入浴を終えてから儀弐王との面会の時間がとられる。
「雪に閉ざされたこの地まで勇敢なみなさんでも大変だったと思います」
 戦を主として造られているせいなのか、城塞の招かれた室内は椅子と卓が並べられていた。儀弐王に従って開拓者達は椅子に腰掛ける。
「雪絵さんからの‥‥お届け物です」
 それだけをいって只木岑は木箱から取りだしておいた包みを儀弐王に手渡す。
 儀弐王はしばらく胸元で抱きしめた後で「かたじけない」と開拓者一人一人を見つめながら礼をいった。
「この中の手紙も預かったのにゃ」
 パラーリアから儀弐王は桐の小箱を渡される。こちらはさっそく開けて手紙に目を通す。
「来年は雪絵と一緒のクリスマスを過ごせるでしょう。本当にご苦労様でした」
 開拓者達に労いの言葉をかける儀弐王の瞳は潤んでいた。
 雪絵の夫になるはずだった君義の鶴時家を攻め滅ぼそうとしているのは他ならぬ儀弐王だ。回り回って雪絵を救う為ではある。しかし人の心というのは理屈だけで片づくものではない。雪絵の心情を考えると儀弐王の心は痛んだ。
 吹雪が止んだのは開拓者達が到着してから三日後の事だ。その間にパラーリアが用意した果実酒で儀弐王と一緒にクリスマスを祝った。ゆっくりと休養した開拓者達は元気な姿で儀弐王が用意してくれた飛空船に乗り込む。
「雪絵にとても暖かい贈り物をありがとうと伝えてください」
 飛空船を見送る儀弐王の首には青い襟巻きがまかれてた。儀弐王からの返信の手紙を預かった開拓者達は窓から手を振って別れを惜しんだ。
「こちらになります」
 奏生に戻ると城へと立ち寄り、剣桜花が仲間の代表として儀弐王からの手紙と言葉を雪絵に伝える。
「ありがとうだなんて‥‥。わたしのせいで重音が苦しんでいるのに‥‥」
 その場で手紙に目を通した雪絵は涙目で呟いた。
 雪絵によって開拓者達が途中で消費した酒などは同じものが補填される。
 儀弐王と雪絵の思いを考えながら開拓者達は神楽の都への帰路に就くのだった。