安らいだ時間 〜春華王〜
マスター名:天田洋介
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: やや易
参加人数: 4人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/05/31 23:03



■オープニング本文

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 本来大学内で保存されるべき書物、資料の一部が泰国南部の官僚、深山家の地下蔵に移送されていた。
 春華王の仮の姿、常春は開拓者達と力を合わせて深山家の屋敷を強襲。その殆どを取り返して秘密基地内へと運び込んだ。
 常春はその中でも幼子に聞かせるための冊子、お伽噺『割れた柿』に興味を引かれる。
 春王朝側を『日陰の民』、東春王朝側を『陽光の民』と置き換えていたが『春王朝・梁山時代』を主題として書かれていた。
 春王朝歴九二○年頃から一○○○年頃までを『春王朝・梁山時代』と呼ぶ。天儀暦に直すと四○○年頃から四八○年頃を指す。
 それぞれを率いる二人の兄弟天帝が覇権を争った内容で陽光の民が勝利する結末だ。現実の歴史も東春王朝側が勝利して泰国は再平定されている。
 時代を経るに従って東の文字が外れて単に春王朝と呼ばれるようになった。当の天帝も春王朝と名乗っているが、いにしえに従って呼称すれば現王朝は『東春王朝』で間違いない。
 この歴史的事実は春華王たる常春と兄の飛鳥にとって心の隅に置かれた教訓といえた。まったく同じではないが王朝が二つに割れた状況が自分達と重なったからである。
 題名の割れた柿は袂を分かった天帝兄弟を表している。だがもう一つ、二つ目の意味も内包していた。
 それは裂けた大地。
 泰国を成す泰儀本島を高みから眺めた場合、帝都朱春を中心点にして放射状の形をしている。
 大地変動によるものだが、まるで海岸線となる外縁の端を何者かに摘まれ、引っ張られて耐えきれずに裂けてしまったようにも見える。
 割れた柿によれば自然現象などではなく日陰の民がある策を使っての人工的な災いであったという。更なる壊滅的な状況になるところを陽光の王が阻み、そして日陰の王を倒して物語は締めくくられていた。
 大学に付随する図書館では暗躍が確認される。
 図書館の関係者である南部の深山家の当主『深山砥』と女性司書『七瀬山奈』が曾頭全の関係者だったからである。
 七瀬は香木の黄熟香を利用して深い刷り込みの研究をしていた。ようは曾頭全による民衆洗脳の準備である。だが必要充分な黄熟香は集まっておらず、巧妙な作戦が行われていた。
 それは開拓者ギルドを利用したもの。
 黄熟香の元となるジンコウジュの樹木はアヤカシが多く徘徊する森林に自生している。そこに巣くうアヤカシ退治を開拓者ギルドに依頼していたのだ。
 アヤカシは人に仇なす存在。依頼料の出所が何にせよ退治は正義。しかしそれによって黄熟香の採取がしやすくなるのも事実。
 対抗策として常春は継続的に森林を徘徊する賊退治を開拓者ギルドに依頼することに。
 もちろん賊とは曾頭全の関係者のこと。黄熟香の洗脳によって凶暴なこともあって賊と決めつけることは容易かった。


(「曾頭全は黄熟香を入手するのに手こずっているはず‥‥。果たして‥‥」)
 泰国の帝都、朱春にある天帝宮。常春は春華王としての生活を送る。
 儀式の類がない日は青の間で絵筆を振るう。
 曾頭全の行動は配下の密偵に監視させていた。報告によれば今のところ大きな動きはないようである。
「この機会に秘密基地‥‥何とかしようか」
「何か仰いましたか? 春華王様」
「いや、なんでもない。よきにはからえ」
「はっ」
 侍従長の『孝 亮順』に独り言を聞かれて誤魔化す。時間があるうちに人里離れた山頂の窪みに作った秘密基地の充実を図ろうと考えていた。
 秘密基地は超中型飛空船『春嵐号』が格納されている以外にも兄の飛鳥親子の住まいとなっている。曾頭全から隠れる必要があるにせよ、閉じられた世界は退屈だ。飛鳥親子の気晴らしになればいいと。
 ある日、常春はお忍びで朱春の街へ。そしてギルドで懇意の開拓者に集まってもらう依頼をお願いするのであった。


■参加者一覧
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
伊崎 紫音(ia1138
13歳・男・サ
パラーリア・ゲラー(ia9712
18歳・女・弓
ライ・ネック(ib5781
27歳・女・シ


■リプレイ本文

●買い物
 泰国の朱春に朝が訪れる。
 真夜中に集合し宿で休んでいた常春と開拓者達は町中へと繰り出す。目的は秘密基地に持ち込むための買い物である。
「大ナマズって何を食べるのです? 湖の中の魚ですか?」
「縦穴を通じて湖面まで降りてきた水鳥を食べているよ。あの巨体がその気になれば湖の魚を食い尽くすのは簡単だと思うんだ。湖では魚釣れるから食べないようにしているんじゃないかな」
 玲璃(ia1114)と常春は歩きながら湖のヌシを話題にしていた。それを聞いていた伊崎 紫音(ia1138)が常春に視線を向ける。
「水鳥を食べているみたいですし、鳥肉がいいのでしょうか?」
「鳥肉でいいとは思うんだけど、生き餌かどうかで悩むところなんだ‥‥」
 常春は伊崎紫音に答えながら胸の前で腕を組んだ。
「湖のヌシってケモノだよね。どうなんだろ〜」
 パラーリア・ゲラー(ia9712)が常春と同じポーズで首を捻る。
「ヌシには魚がよいかと考えていましたが、鳥を食べているならそれがいいですかね。でも食べ飽きたりしないんでしょうか?」
 ライ・ネック(ib5781)の言葉がヒントになって常春が閃いた。
「ここは奮発して鳥以外のものを買っていくのはどうだろう? 例えば豚とか」
 常春は必要ならば自分が絞めるからといって、そのままの豚一頭を購入することに。野外料理で使う肉については塊となった状態で手に入れる。
 肉屋は懇意の朱春の宿屋から紹介してもらった店だ。なので大量購入しても疑わず口外はしないでいてくれるだろう。
 一行は主に食材を買い込んで牽いている荷車へと載せていった。
(「あれも作ってみるのにゃ‥‥」)
 パラーリアはちょっとしたことを思いつく。それ用に大量の小麦粉とネギ、大蒜、小豆、砂糖を買い求めた。お肉も追加して購入する。
「炭火でお肉を焼くと一層美味しいですね」
「そうだね、なぜあんなに違うんだろう」
 伊崎紫音と常春は忘れずに長持ちしそうな質の良い炭を手に入れた。
(「ぬこにゃん、がんばってくれてるのにゃ‥‥」)
 パラーリアがちらりと見上げた屋根瓦の上には猫又のぬこにゃんの姿が。
 ぬこにゃんは尻尾を隠して普通の猫のように振る舞いながら、猫心眼で常春を中心とした周囲に危険がないかを探っていた。
 こんな時だからこそ油断は禁物。追っ手がいないかどうか細心の注意を払うパラーリアである。
「常春くんはどんな果物が好きなの?」
「そうだなあ。子供っぽいけど甘いのがいいな。すっぱいのは苦手なんだ」
 パラーリアは露天で果物を手に取りながら常春に訊ねた。程良く熟れたマンゴーがあったのでそれを購入。
 また新しい案も思いつく。材料を運ぶために荷車をもう一両、常春に借りてもらう。
(「尾行はいないようだが‥‥」)
 ライも不審者の追跡を警戒していた一人である。忍装束を裏返した作業着姿を纏い、途中から仲間達とは別行動をとった。超越聴覚で常春の周囲に耳をそばだてる。
 雑踏の中、会話のすべてを知ることは適わないが物音に注意した。シノビ独特のかすかな足運びの響き、または武器を用意する際に生じる金属音などなど。
「こちらを一袋。こちらも頂きます。あと――」
 玲璃は生薬の材料を買い求める。常春の兄、飛鳥は泰国薬に通じた者だが薬そのものがなければどうしようもないこともあるだろうと。
 買い物を終えた一行は二両の荷車を牽きながら郊外へ足を運んだ。
 パラーリアとライ、そして猫又のぬこにゃんによる警戒は続く。
 ライが秘術影舞で姿を消して移動用の飛空船の周囲に不審者がいないかを確認。安全が確認されると目立たぬよう素早く乗り込んで離陸させる。
「ここは任せてください。塩だれとか味噌漬けとか、色々楽しめるようにしようと思って」
 伊崎紫音はさっそく飛空船の調理場でタレを作り始めた。
 出来れば切った肉をタレに漬け込むところまでやっておきたかったが、そこまでの余裕はなさそうである。
 約一時間後、移動用の飛空船は山頂の穴の底にある湖へと着水するのであった。

●湖のヌシと野外料理
「アス兄っ」
「久しぶりだな」
 常春と開拓者一行は飛鳥親子と再会の挨拶を交わす。
 荷物を居住場所へと運ぶとヌシにお土産を渡すことに。一同は湖畔に集まった。
「湖のヌシに挨拶代わりとしてお肉をあげようか」
「この上でいいんですね」
 常春はライに協力してもらいながら骨を取り除いた丸の豚肉を浮かぶ板にのせて湖の中央へと流す。
「静かなのにゃ‥‥」
 パラーリアの呟き通り、何事も起こらなかった。湖のヌシ、大ナマズは現れない。
「やっぱり生き餌じゃないとダメなのかな‥‥」
 今度はそのままの豚を板にくくりつけて湖の中央へ。すると水柱が立ちのぼった。
 ヌシが湖面より高く跳ねて板ごと豚をパクリ。数分後、板だけがプカリと浮かび上がってくる。
 動物が生き抜くには他の命を取り込まなくてはならない。それはケモノとて同じ。命の尊さに感謝する一同である。
「今日はいくら食べても構わないからな」
「やったー!」
 飛鳥の側で息子の高檜が大はしゃぎ。もふらの丸々と一緒に跳びはねて喜んだ。
 ちなみに常春と開拓者はしばらくこの秘密基地に滞在するつもりである。
 パラーリアは調理に使うための水を汲みに。縦穴の内壁から染み出る水は地面で集まり、小川となって湖へと流れ込んでいた。
「‥‥やっぱり水車があると便利なのにゃ」
 水車の半完成品とその他の材料は朱春で入手済。パラーリアは滞在中に組み立てるつもりである。だが今は野外での楽しい食事を優先。桶で水を汲んで仲間の元へと戻った。
 玲璃は調理を手伝う前に飛鳥を探して木箱を渡す。
「こちらは私が作った生薬になります。泰国薬用の材料も手に入れてきましたので、よかったらご利用下さい」
「助かります。こんな場所なので突然の病気や怪我が命取りです。準備を怠らないようにしないといけませんので」
 玲璃にとても感謝する飛鳥だ。一つ一つを確かめて質がよいと感心していた。
 薪や炭の火熾しは飛鳥の妻である棗にお願いして伊崎紫音とライはテキパキと調理をこなす。
「玉葱とキャベツは切り終わりました」
「お肉はもう少し漬けておいた方がいいですね」
 ライと伊崎紫音による包丁の小気味よい音が響き渡る。皿の上へと瞬く間に切られた食材が並んでゆく。
 今日の野外料理は網か鉄板のどちらかで焼くだけなので食材を切れば作業の八割は終わり。飛空船内で作られたタレは肉を漬けるのに使われた。残る作業は肉が程良くなるまでにつけダレを作るぐらいである。
「ここがいいよー」
「教えてくれて助かったのにゃ♪」
 パラーリアは高檜に一番冷たい水が流れる小川まで案内してもらう。高檜はぬこにゃんを気に入ったようでずっと抱えていた。
 流れてしまわないようマンゴーは網に入れて流水の中へ。玲璃から預かった西瓜も同じように小川の底へと沈められた。
「お食事の用意が出来たそうです。少し早いけど始めましょう」
 棗の声で散らばっていた一同が集まりだす。まだ暮れなずむ頃だが、野外での夕食が始まるのであった。

●お肉ジュージュー
「これはそろそろ食べ頃だと思います」
 伊崎紫音は炭火で熱せられた網の上に手際よく箸で肉を並べてゆく。
「肉が焼けるにおいには胃袋が揺すられっぱなしですね」
「焼けるまで待てない気分になるよね」
 ライと常春が網の上の肉をひっくり返す。脂が滴って炭の上に落ち、それが香ばしい煙となって辺りに充満する。
「野菜も食べると身体にいいと聞きます」
 玲璃は鉄板の上で野菜を炒めた。適度に油を引いて山盛りにどかんと。よい具合になると優先的に常春と高檜の皿の上へ。
「えー。お肉だけでいいよ〜。父さんもいってたし」
「お肉も大切ですが、野菜も食べれば早く大きくなれますので」
 玲璃に文句をいいながらも高檜はちゃんと野菜も平らげる。
『もふっ♪』
 もふらの丸々もお肉のお裾分けをもらってご機嫌である。但し、主人と同じく野菜はあまり好きではないようだ。
「ぬこにゃんは頑張ってくれたからとくべつなのにゃ〜♪」
 パラーリアは焼き肉の他にお魚も用意していた。
 網の隅っこで焼いた秋刀魚やアジを猫又のぬこにゃん用の皿の上へ。朱春での見張りの褒美である。ある程度冷めてからかじりつく賢いぬこにゃんだ。
「食べないとダメだよ。ほら、このお皿のは紫音さんのだから」
 肉を焼いてばかりの伊崎紫音に常春が食べるのを勧めた。
「それでは頂きます‥‥。柔らかくて美味しいお肉ですね。食材選びがよかったおかげです」
 伊崎紫音もその美味しさに頬を綻ばせる。
「あの肉売りは真面目な商売をしていますね。きっとヌシの大ナマズが丸飲みした豚も美味しかったはずです」
 ライは焼けた肉をいくつか頬張ってから頷いた。
「同じ豚でも美味しいのとそうでないのがあるからね。やっぱり与えている餌や育て方とか違いがあるんだろうな。畜産も奥が深いよね」
 常春もたくさん食べていた。肉は豚の他にも鶏や牛の肉もある。
「常春、ありがとう。だが私達がこうしているのは自ら招いたことだから気にする必要はないぞ」
 飛鳥に声をかけられた常春は照れた様子である。
(「常春くんは飛鳥お兄さんが大好きなのにゃ‥‥」)
 骨付き肉を食べるパラーリアは常春と飛鳥を離れたところから眺める。
 お肉と野菜でお腹が膨らんだところでデザートの時間である。せっかくなので西瓜割りを楽しむことに。
「はい、こちらを。目隠しをしますね」
「まっくらだー。みーえーなーいー」
 玲璃が布で目隠しをすると高檜はあたふたし始めた。
「もう少し右なのにゃ〜」
「そこ、真っ直ぐです!」
 木の棒をもってうろうろする高檜に様々なアドバイスが飛び交う。勢いよく振り下ろされた棒は大きく外れ。だが二回目の挑戦で西瓜は真っ二つに。
「えっ? もう一個あるからわたしも?」
 常春も西瓜割りに挑戦することに。
「迷いがないですね」
「まるで見えているみたい‥‥」
 歩き出す前に飛鳥によってたくさん回されたにもかかわらず、常春の歩みにはふらつきがなかった。
「こういうのは何故か得意なんです。暗がりとかでもぶつかったりしないで歩けるんです」
 当然目隠しもされていたが、常春は易々とスイカに木の棒を当てる。散らばらないようコツンと軽く。
 西瓜は切り分けられてみんなの手元へ。
「西瓜も美味しいけどこれもあるのにゃ♪」
 パラーリアが半分に切ったマンゴーを皿にのせて常春に渡した。もちろんマンゴーも全員が食べられるだけの数がある。
「美味しい♪ パラーリアさん、ありがとう」
 常春が一瞬、寂しそうな表情を浮かべたのをパラーリアだけでなく開拓者の誰もが見逃さなかった。
 曾頭全との戦いをふり返った、または春華王として思うところがあったのかも知れないが、本当のところは常春の心の内だけにある。
 いつの間にか日が暮れていた。篝火の中、全員で後かたづけをする。
 その後、緑茶やワッフル、甘酒やチョコレートを頂きながらお喋りは続いた。
「ま、まだ大丈夫だよ‥‥。ボク眠くないもん‥‥」
 高檜はチョコレートを囓りながらうとうとと。棗が歯を磨かせて先に布団へ連れて行く。
 夜遅くまで楽しい時間は続くのであった。

●そして
「棗お姉さん、お願いがあるのにゃ」
「どうかされたんですか?」
 翌日、パラーリアは棗に相談してヘルシー肉まんと餡まんの調理に取りかかる。内緒にしてみんなを驚かすためにこっそりと。
 場所は湖に浮かぶ春嵐号内の調理室。ここならばれないと考えていたものの、目論みは三十分も経たずに崩れ去った。
「パラーリアさん、なにしているの?」
「棗、どこにいったかと思ったら船の中にいたとは」
 常春と飛鳥が釣りをしようとして春嵐号を訪れたのである。
「まさかこんなにはやくばれちゃうなんて思っていなかったのにゃ‥‥いやこれはもしかしたら‥‥‥‥」
 計画が失敗してがっかりしたパラーリアだがよい案が浮かんだ。
「常春くんと飛鳥お兄さんにも手伝ってもらお〜♪」
「手伝うって?」
 パラーリアは肉まんと餡まん作りの訳を話す。そういうことならばと常春と飛鳥の兄弟は力仕事となる皮の生地を捏ねてくれた。
「思い出すな。子供の頃、似たことをやったことがあったな」
「え〜と‥‥。そうか、厨房でこっそりと餃子作りの手伝いをしたことがあったね」
 兄弟の思い出話に花が咲いた。
「ヌシ用の肉まんは特大だよ〜♪」
 パラーリアは大ナマズの分も用意する。むしろこれが本命だ。
 荒れ狂う川の氾濫を鎮めるために饅頭を捧げたといった泰国の逸話もある。大ナマズが特大肉まんを気に入ってくれたのならそれが一番だ。
 出来上がった肉まんと餡まんは蒸籠のまま小舟に乗せられて湖岸へと運ばれた。
 みんなで食べながら大ナマズにもお裾分けである。豚の時と同じように板の上に乗せて湖の中央へと流された。
(「やっぱり生き餌じゃないとダメかな‥‥」)
 常春の心配は杞憂であった。現れた湖のヌシは巨大肉まんをパクリ。しかも食べ終わったあとで湖面から尻尾を出して振ってくれる。
「あれはきっと気に入ってくれたんだな」
 飛鳥の感想にパラーリアがコクリと頷く。水鳥の件は別にして、人からの差し入れは肉まんでよさそうである。
 一行の滞在の間に水道作りも行われた。
 ライ、パラーリア、常春、飛鳥が水車の組み立て。管の施設は玲璃、伊崎紫音、高檜が汗を流してくれた。棗は食事作りで支援する。
「もふ〜♪」
 もふらの丸々も荷運びで頑張ってくれる。
 水車で汲みあげられた水が陶器の管の中を通って飛鳥親子が暮らす家の中へ。これで大変な水汲み労働が軽減されるだろう。
 パラーリアは余った水漏れ防止用の粘土で春嵐号を作り、高檜に贈る。
 四日目の朝、英気を養った一行は朱春への帰路に就くのであった。