輝く陶器 〜七羽〜
マスター名:天田洋介
シナリオ形態: シリーズ
相棒
難易度: 普通
参加人数: 4人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/06/24 22:13



■オープニング本文

前回のリプレイを見る


 兄の七羽矢吉は十五歳。弟の七羽的吉は十四歳。父が亡くなって家族は母親と兄弟のみになった。
 普段から父の商売を手伝っていた七羽兄弟は継いで交易商人となる。ただ次々と常連が離れて知り尻窄み状態。立ちゆかなくなるのは時間の問題となっていた。
 そこへきて希儀の発見である。
 ギルドに依頼して開拓者を応援に迎えながら未知の大陸へ。
 希儀の大陸南部へと到達して点在する遺跡のうちの一つを探検し、いくつかの品を持ち帰った。
 ピスタチオの実は市場で非常に好評。その他に七羽兄弟が注目していたのがキラキラと表面が輝く陶器である。
 新しい街になるであろう『羽流阿出州』(パルアディス)と名付けられた土地で情報収集。さらに調査した結果、粘土の採掘場と壊れた窯跡を発見する。
 捨てられていた欠片からしてそこが注目していた陶器が作られた場所だと断定する。
 陶芸家の『二代目万力京太郎』を連れて再度立ち寄ると助けを求める精霊達の姿が。自分達の精霊女王『ミヨニ』を助けて欲しいと懇願される。
 引き受けた一同はミヨニの本身である月桂樹からアヤカシの蛇共を排除した。今後はアヤカシに入り込まれないよう充分な罠を仕掛けるという。
 粘土の採掘場跡と焼き窯跡は精霊達の活動域に含まれるが、熊牙号一行については歓迎してくれるそうだ。
 充分な粘土を採取して天儀へと戻った二代目は作陶の日々を送る。しかし思うような陶器は作れなかった。
 紆余曲折の上、覚悟を決めた二代目は七羽兄弟の飛空船で希儀の地へ。
 開拓者のおかげで新たな小屋も出来上がる。二代目はミヨニの地で陶芸に没頭する日々を送れるようになった。いろいろと世話を焼いてくる精霊達にお礼として小柄な食器類を焼いてあげたりも。
 あるとき物資を届けに立ち寄った七羽兄弟と開拓者達は精霊達から相談を受けた。失敗し続けていたトマト栽培についてだ。間違っていた知識を修正し、農具や肥料を揃えた上で土を耕す。
 後日、お礼として一同は精霊の丸太小屋へと招待される。美味しい食事で楽しい時間を過ごしたのであった。


 二代目万力京太郎は今日も希儀ミヨニの地で陶器作りに汗を流していた。
 手に入れた現地の粘土を水に浸すことで不純物を取り除く。さらに練りながら小石を取ったりなど実際に作り始めるまでには手間と時間がかかるものである。
『こんにちはー。トマト、できたよー♪』
『できたよー♪ おいしいよー♪』
 時折、男の子風の小人のガルナと女の子風の羽妖精のパリリが二代目の小屋を訪れてくれる。畑で収穫されたばかりのトマトを持ってきてくれた。
 さっそく小川の水で冷やして丸のまま頬張る。
『がんばっている陶器ってどんな感じ?』
「んだなー。まだ狙って作るのは難しいだべな。出来るときゃ半分とかあるだども、まったくだめなときもあるう〜」
 パリリと二代目が話題にしていたのは輝く陶器のことである。かつてこの地で焼かれていた輝く陶器の再現を目指して二代目は精進していた。
 陶器の破片を頼りにかなりのところまできていたが、もう一歩が進めない状況にある。
「そういや、こんあいだ、丸太小屋に招待してもらったとき、気になったことがあんだけんども――」
 二代目は変わった燃料を使っていたのではとガルナに訊ねる。
『あれは泥炭だよー。木を伐って薪にもするけど、そればっかりだと森が大変だからねー』
「泥炭?」
 二代目は泥炭を知らなかった。
 泥炭とは特定の沼地で採れる燃える土のことである。
「もしがして‥‥」
 燃料についてもこれまで工夫を凝らしてきた二代目であったが、泥炭はまだ使ったことがなかった。
 もしやということでガルナが持ってきてくれた泥炭で陶器を焼いてみる。するとこれまでにない成功率で輝く陶器が出来上がった。
『よかったねー』
 ガルナとパリリが二代目を祝福してくれる。
 だが問題が残った。精霊達が泥炭を採取している沼は二代目の小屋からあまりにも遠かったのである。
『きっとこの近くの沼でも採れるとは思うんだけど‥‥』
『採れるといいねー』
 ガルナとパリリによれば二代目の小屋から二キロメートル先にも泥炭が採れそうな沼が存在するという。
 これまで使われなかったのは底なし沼だからだ。泥炭がありそうな沼の中央までたどり着くのに湿地帯を通り抜けなければならなかった。
 小舟を使えば沈むことはないものの、粘度が高すぎていくら漕いでも前に進まないらしい。
「きっとやりようはあるはずや‥‥。だどんども、思いつかねぇ‥‥‥‥」
 呻り考え続ける二代目だがよい方法は思い浮かばなかった。
 それから一週間後。七羽兄弟の中型飛空船・熊牙号が商売のついでに二代目の小屋へと立ち寄るのであった。


■参加者一覧
からす(ia6525
13歳・女・弓
メグレズ・ファウンテン(ia9696
25歳・女・サ
緋乃宮 白月(ib9855
15歳・男・泰
エメラダ・エーティア(ic0162
16歳・女・魔


■リプレイ本文

●湿地帯
「実はよ――」
 二代目万力京太郎は到着したばかりの七羽兄弟と開拓者四名に報告と相談をした。
 泥炭を燃料の一部に使ったことで輝く陶器の成功率が飛躍的にあがったこと。
 但し、妖精達が譲ってくれた泥炭の採掘場所はあまりに遠く、また人が常に出入りするのは難しい土地であること。
 この小屋から二キロメートル先で同質の泥炭が採れるのだが、周囲が底なし沼の状態で辿り着くのが難しく困っていると。
「現地を確かめるのが一番だよな」
「熊牙号ならすぐだね」
 七羽兄弟の案でまずは現地の状況を確認をすることに。中型飛空船・熊牙号で飛べば二キロなどものの数分の距離である。
『すごーい♪』
『飛空船はいいよねー』
 案内係として一緒に乗り込んだ妖精のガルナとパリリは、大はしゃぎで操縦室内を駆け回る。全員が乗り込んだところで矢吉は熊牙号を浮上させた。
「一つなんとかなったらなったでまた難題でよー」
「でも輝く陶器は作れるようになった。これだけでも進歩だよ」
 浮かない表情の二代目に、からす(ia6525)は着地中のときから準備していたお茶を淹れてあげた。一口啜った二代目の顔が和らいだ。
「そうですよ。輝く陶器作りがここまで来られたのは二代目さんの頑張りです。もう少しですから♪」
「あんがとよ、緋乃宮さんや」
 緋乃宮 白月(ib9855)の励ましに二代目が頬を緩ませた。
(「持ってきた大工道具が役立つとよいのですが‥‥」)
 メグレズ・ファウンテン(ia9696)は見晴らしのよい甲板から大地を見下ろす。
 すぐに湿地帯は見えてきた。湿地帯の中央部分のみが周囲と色が違って小さな島のようである。
「沼の‥中央を…観て‥きます‥」
 エメラダ・エーティア(ic0162)は連れてきた甲龍・ラギに乗って熊牙号の甲板を飛び立つ。そして湿地帯の中央の小島へと降りてみた。かなり柔らかかったものの、龍の体重でも沈むことはなかった。
 エメラダが麻袋いっぱいの土を採取して小島から離脱。ぐるぐると旋回しながら湿地帯を眺める。
 熊牙号も同様に湿地帯の上空を旋回した。一度は湿地帯の外縁へと着陸して様子を確かめた。
 その後、小屋の近くに帰って着陸し全員で話し合う。様々な案が出される中、メグレズが思い出したように呟いた。
「そういえば天儀には小舟を繋いで橋を作る『舟橋』という手法がありました」
 メグレズのいう舟橋とは小舟を浮橋代わりにして縄で繋げて通れるようにする架け方である。
「それなら底なし沼でも渡れる橋が作れるな」
「んだな」
 矢吉と目が合った二代目が大きく頷いた。
 挙手が行われてメグレズの案が採用される。
「なら材料を買いに行かないとね」
 的吉は操縦席に座ってさっそく熊牙号の再離陸準備に取りかかる。
『いってらっしゃいー』
 ガルナとパリリが下船。二体の妖精に見送られながら熊牙号は羽流阿出州へと買い物に出かけるのであった。

●買い物
 賑やかなる街、羽流阿出州。
「やはり高い」
 からすが仲間内にしかわからない程の小声で呟いた。
 熊牙号一行が羽流阿出州に到着して最初に向かった先が小舟の完成品を商う店舗である。誰もがからすと同じ感想を持ち、そそくさと店を立ち去った。
 次に立ち寄ったのは主に木材を扱う資材屋。広い敷地に木ぎれから磨き上げられた柱まで様々な建築用の資材が並んでいた。
「質の‥‥良い‥‥橋に‥‥必要‥‥な‥材料‥計算‥‥する、です」
 エメラダはメグレズによって準備された購入一覧に沿って資材にかかる金額を計算する。
 二十分後、総金額を知った二代目がびっくり仰天。足下がふらつき、たまたまあった近くの支柱へと両腕でしがみついた。
 七羽兄弟が計算結果を覗き込んでさもありなんといった表情を浮かべる。
 休憩がてら一行は茶屋に寄った。
「もう一度、設計を考え直してみますね」
 メグレズは購入する資材を再検討する。
「丸太を並べただけで済めばいいんですけどね」
 緋乃宮は上級羽妖精・姫翠に団子をあげながら二代目に話しかけた。
「そりゃ無理ぽいんだがや」
 二代目の言うとおり、あの湿地帯に浮かべるには丸太を束ねただけの筏では不十分。浮力を得るために舟の形にしなければならなかった。かといって板を張り合わせて作る舟はどうしても高くつく。
『頑張れば大丈夫です。泥炭が手に入れば輝く陶器が沢山作られますっ』
「あんがとよ」
 姫翠に励まされた二代目は口一杯に団子を頬張ってみせるのだった。
「地衝はモノ作り好きだよね」
『作られた存在故に』
「それは何だ?」
『お戯れを』
 からすは土偶ゴーレム・地衝の鎧の隙間に何かが挟まっているのを発見した。摘んでみると笹の葉である。
 この希儀の地で竹の自生は発見されていないので、おそらく天儀本島から持ち込まれたものだろう。そういえば先程の資材屋に竹が置かれていたと思い出す。
 からすは何となく笹舟を作ってみる。
『もう少し大きければわたしが乗れそうですっ』
 からすが手にする笹舟を卓に立つ姫翠が興味深げな瞳で見上げた。
「笹舟‥‥、これのように一枚の葉で作れたのなら。一枚、いや一本の大木‥‥それどころか半分でも‥‥!!」
 思いついたメグレズは新たな紙を取りだして簡易な図案を描き上げる。真っ先に七羽兄弟が覗き込んだ。
「半分にした丸太をくり抜いているね」
「丸木舟っていうんだっけっか?」
 図案は縦に斬った丸太の中をくり抜いて作る丸木舟であった。
「木板は高価ですが、この地で伐採された丸太なら大した値段はしていませんでした。問題はどれだけ寝かされていたかなのですが‥‥」
 メグレズが気にしていたのは丸太の乾燥状態である。木は伐ってすぐに使えるものではない。数年は慣らしてから使わないと半年も経てば割れたり腐ったりしてしまう。
 希儀は天儀本島から到達した時点で無人の地。これまでに伐採した木材を十分に寝かしておく年月はなかった。
「私も木材を商う者。ぬかりないよ」
 再度、資材屋に出向いてメグレズが店番に質問すると、扱っている丸太の由来を話してくれる。
 ここにある丸太は希儀の建物奥を探った際に発見されたものだという。おかげで雨風に晒されることなく、また寝かせも完璧だと店番は胸を張って答えた。
「間違いないようです‥‥」
 メグレズは丸太の質をあらためて確かめ、店番を信じることにする。但し、新しいとしか判断出来ない丸太が混ざっているのも確かである。
「あれ、おかしいなー。運ぶ途中でどうかしたかな」
 メグレズに指摘されて誤魔化す店番に一行は冷たい視線を浴びせまくった。
 そこで購入する丸太は一本ずつ吟味して購入することに。熊牙号を資材屋の敷地内に移動させて積み込みを開始する。
「ラギにも‥丸太を…運んで…もらい、ます」
 エメラダは甲龍・ラギにも縄を引っ張ってもらい、船倉内へと丸太を運び込んだ。
「下に細めの丸太を敷けば楽に運べる」
『き、強力を使うでござる。こ、これでよいのでござるな』
 からすは土偶ゴーレム・地衝に丸太を持ち上げてもらっているうちに下に車輪代わりの細めの丸太を何本も差し込んだ。
 ゆっくりと押し、使わなくなった後方の細めの丸太を進行方向に並べ直す。その作業はからすの他に緋乃宮も担当した。
『がんばれー』
 姫翠が降らす幸運の粉を浴びながら緋乃宮が細めの丸太を担いで運ぶ。
(「おそらく一度には運びきれませんね」)
 緋乃宮が感じていた通り、舟橋作りに必要な丸太は熊牙号の船倉内に収まりきれなかった。何度か往復する必要がある。
 丸太の他に長い二人用の鋸や釘なども購入してから熊牙号は離陸。メグレズとエメラダは羽流阿出州に残って丸太の選別や足りない資材や工具の購入を担当する。
 熊牙号が二代目の小屋に戻ったときにはすでに深夜であった。

●作業
 舟橋作りに必要な資材を熊牙号で運ぶのに三往復を要す。
 二回目以降の運んだ丸太については羽流阿出州に残ったメグレズとエメラダによって約五分の一が縦半分に切られてある。
 そして残りの分についてはガルナを含めた小人達が頑張ってくれた。端に二体ずつ計四体で巨大な鋸をひいて丸太を真っ二つに。
「丸太がこれだけあるなんて壮観だね」
 的吉が作業現場となる二代目の小屋庭を見渡す。
 丸木舟を横に三メートル間隔で並べたとして大まかに三十五艘が必要。さらに歩きやすいよう木板の道を作らなければならなかった。
 半分になった丸太の外側を舟の形に削るのは比較的簡単。難しいのは中を刳り抜く作業である。
 やり方はいろいろ。丸太の縦の切断面の上でわざと焚き火をして炭化させてから削るなど。
 一同が選んだのは自分達の特徴に合いそうなノミで削る方法だ。志体持ちの開拓者なら一般人よりも力強く長い時間削り続けられる。但し、ノミと鎚は開拓者の腕力に負けないよう特に頑丈なものが選ばれていた。
「ヤスリをかける必要はない。漕いで乗るための舟ではないからな」
『合点承知でござる!』
 からすと土偶ゴーレム・地衝は船首と船尾に分かれながら一緒に丸太を刳りぬいた。
「修理がしやすいよう設計図や手順書を残しておかなくてはなりませんね」
 メグレズは霊騎・瞬に引っ張ってもらい、出来上がったばかりの丸木舟を熊牙号へと積み込んだ。一定数が揃ったところで湿地帯まで運ぶことになるだろう。
 七羽兄弟と一緒に刳り抜き作業をしていた緋乃宮の元に上級羽妖精・姫翠が報告に向かう。
『正確な距離を測ってきましたっ!』
 姫翠は湿地帯の低空を飛びながら長い糸を泥の上に這わせ、最後に回収することで距離を測ってくれた。船橋の始まる予定の岩場から湿地帯中央までは九十六メートルと判明する。
「休憩してくださいね。小屋の炊事場にトマトがあります。さっきパリリさんとがリリさんが持ってきてくれたんですよ」
『わ〜! 嬉しいなっ!』
 船橋の開始地点を決めたのは緋乃宮と姫翠である。
 湿地帯は岸沿いがわかりにくいので、一年を通して沈むことがない小高い岩場が選ばれた。二代目の小屋からも近かった。
 エメラダは大量の木板に次々と螺旋錐で穴を開けてゆく。
「底なし‥沼‥怖い‥です‥。設置の‥ときには‥落ちない様‥気を付け‥ます‥」
「んだ。ありゃ落ちたら大変すぎるー。洗濯も苦労すんぞ」
 エメラダは二代目と一緒に繋げた十メートル分の板を丸めて小さくまとめる。現地で組み立てることになるのでこれでよかった。甲龍・ラギの背中に木板の巻きを載せて熊牙号へと運び込む。
 今日の料理当番は二代目。途中で舟橋作りを切り上げると小麦粉その他を用意して調理を始めた。
「今晩の料理は自信あるんや。教えてもらったでのぉ〜」
 二代目が作ろうとしていたのはチーズとトマトのピザ。さすが陶芸家として粘土をいじり続けてきただけあってピザ生地を練る姿は堂に入っていた。
 二種のチーズは羽流阿出州で購入してきたものを使う。トマトはもちろん妖精達の畑で採れたもの。事前に煮込んですでにトマトソースになっていた。
 調理用の窯は陶芸用のと隣接しており、余剰熱を利用して使える特別製た。今は陶器を焼いていないので薪をくべての単独使用となる。
 日暮れ頃には作業が切り上げられる。
 夕食の時間となり、二代目が焼き上がったピザを卓へと運んできた。
「京太郎殿、このピザは金がとれる」
「からすはん、お世辞、うまいのぉ〜」
「いや、お世辞ではない」
「そ、そっかぁ」
 からすに誉められた二代目は顔を真っ赤にする。
 その隣りでは緋乃宮と姫翠も熱々のピザを楽しんでいた。
『このトマトを使ったピザ、美味しいですっ!!』
「そんなに急いで食べると喉につっかえて‥‥だ、大丈夫ですっ?」
 二代目とは別の意味で顔を真っ赤にする姫翠。緋乃宮が指先で姫翠の背中をとんとんと叩いてあげる。
 七羽兄弟も満面の笑みでピザの味を堪能していた。
「いや、本当にうめぇ。二代目、こっちで食っていった方がいいんじゃねぇか?」
「もう、兄さんは一言多いんだよ。でも本当に美味しいよ」
 七羽兄弟がピザを美味しそうにかぶりついた。
 エメラダとメグレズはすでに二枚目のピザに手をつけている。
「ん、美味しい‥です。沢山‥食べて‥しまいそう‥です」
「トマトのピザソースならやり方次第で保存が効きます。トマトを作っている小人達にも教えてあげたら如何でしょうか?」
 エメラダとメグレズからも誉められた二代目は溶けそうなぐらいに照れまくる。
 お腹が膨れた後、ノミなどの道具を手入れしてから一同は就寝するのであった。

●舟橋
 丸木舟が十艘出来上がると湿地帯に運んで設置が行われた。
 最初の頃は土地に杭を打った上で舟橋を繋げていったが途中からは難しくなる。
 三メートルの杭が使えなくなった時点で最初に中央部まで繋げた四本の縄のみが舟橋の導きとなった。
 始めてから六日目。舟橋は完成する。
「地衝、落ちるなよ」
『故郷に還れそうでござるな』
 籤で一番を引いたからすと土偶ゴーレム・地衝が最初に舟橋を渡る。
 幅は一メートル強あって思っていたよりも揺れは少ない。しかし風の強い日には通らない方がよいと、からすは感想を持つ。後で二代目に伝えられることとなる。
 やがて関わった殆どの者が舟橋を渡って湿地帯中央の小島へと辿り着いた。
 採掘について心配していた開拓者達だが、泥炭は広く地表に露出していた。これなら当分の間、露天掘りで大丈夫。井戸のような設備が必要になるのはかなり先になるだろう。
 泥炭は湿っているので天日に干さなければならない。ちゃんと燃料として役に立ってくれるのは数日前に確認済だった。
「ここに‥置いて‥おきます」
「この木箱の中に仕舞っておけば問題ありません」
 エメラダとメグレズは運んできたスコップや桶などの採掘道具一式を設置する。
「大変でしたね」
『平気ですっ!』
 緋乃宮は上級羽妖精・姫翠を誉めてあげた。舟橋の縄を繋げる際、飛んで小回りが利く姫翠が大活躍してくれたのである。
『おーい』
 遠くから声が聞こえて小島の全員が振り返る。舟橋に沿って二つの影が近づいてきた。
『すごいすごーい』
『これなら渡るのかんたんだねー』
 小人のガルナが舟橋を渡り、羽妖精のパリリが飛んで追いかける。妖精二体は小島に辿り着くと二代目に抱きついて喜んだ。
 帰り道、一同は妖精達の畑に立ち寄った。
 七羽兄弟は妖精達からトマトを仕入れる。妖精達のがんばりのおかげでトマトはこれでもかと沢山なっていた。
「こうして、こうすんだ」
『へぇ〜♪』
 二代目は小屋でガルナにピザ用のトマトソースの作り方を教える。密閉できる容器と煮沸をうまくやれば長期保存が可能なことも伝えた。
 もう一度、二代目のピザを味わってから熊牙号一行は天儀への帰路に着くのであった。