ワールドガイド>天儀の技術
【 天儀の技術 】

新たな「儀」が発見され、異文化との結びつきが深まりつつある天儀においては、
技術の進歩も、それまでの数百年を数ヶ月単位で経過するほど、めまぐるしい勢いで進んでいる。
ここでは天儀に存在している産業技術のうち、特筆すべき事項について記述していく。


【 宝珠加工技術 】

天儀における技術体系の核となっているのが、宝珠である。
王朝が封を解いた遺跡を主な産出地とし、それ以外の部分から宝珠が産出することは非常に稀である。

宝珠はかなり昔から盗掘によって若干量が流通しており、美しい光を放つ希少な宝石として取引されていたが、王朝が遺跡の封を解き、宝珠及び加工技術の伝播を許容してから状況は一変する。
希少性によって決まる宝石としての価値は暴落したが、王朝から伝えられた技術によって加工を施すことにより、宝珠は装着された道具の強度を増したり、風を噴出したり、保持したものに特殊能力を与えたりと、ありとあらゆる力を発揮するようになった。
技術は王朝及び各国が信頼する技術氏族のみに伝播されており、加工技術は厳重に管理されているが、今や宝珠加工業は天儀各島において欠かすことのできない一大産業となっている。
宝珠が込められた武器の例

【 飛空船 】
飛空船
天儀における開拓時代の象徴ともいえる存在がこの飛空船である。
飛空船とは、多数の浮遊宝珠と風の宝珠を活用することで、空中での航行を可能とした船舶である。
元々海上船から発達したこともあってか、海運を兼ねるのみならず、海上船と同様港への係留が容易である為、海上船の形状やそれに近い姿をしているものが多い。
儀と儀の間は天空や雲海で隔てられており、またアヤカシの妨害も多いこの世界において、輸送力と戦闘力を兼ね備えた飛空船の存在は必須である。
一隻で運行する際に自衛手段を確保することはもちろん、数隻で船団を編成するさいには護衛船が付随するのが一般的である。
冥越を除く各国間には定期便も運行しており、ジルベリア、泰といった異国とも週に一、二回程度の往復運行が行なわれている他、商船も行き来し、人々の生活、交流には欠かせないものとなっている。しかしながら宝珠の希少性、コスト等の理由からまだまだ輸送能力には限りがあり、今後の更なる発展が期待されている。

【 銃 】

天儀においては精霊術や陰陽術が発達していたことから、火薬を用いた武器の必要性が薄く、火薬を使用する武器の代表格である銃も、発明されてから長らくの間省みられることがなかった。
だが、第二次開拓計画によってジルベリア帝国と接触したことで、性能の高い銃が多数輸入されるようになる。神教会を禁止したジルベリアでは、魔法技術の発展が停滞し、その不足を補う為、積極的に銃の改良に取り組んできた為である。
こうして天儀でも、ジルベリアの進んだ銃が輸入されると同時に、これらの宝珠による強化が試みられるようになった。
現在、世界で流通している銃は、着火方式の違いを主として大きく四種類に別けられる。
多くの銃は火薬で弾丸を放つが、一部は宝珠によって爆発力が強化されている他、宝珠式(エレメントロック式)のように宝珠の力だけで弾丸を放つことのできる銃もある。ただし、これらは希少であり、概ね高価で手にも入りにくい。

銃は、その取り扱いについて何点かの問題を抱えている。
まず火薬が湿気に弱いことである。降雨の中では火薬の慎重な取り扱いが必要となり、不発も多い。砲術士であれば耐湿スキルによる保護も可能であるが、恒常的に発動していては練力を消耗してしまう。
また、銃は弾薬の装填に時間が掛かる為、装填中は射手が無防備となってしまう。しかも、防御行動を取る為には装填作業を中断せざるをえないため、銃での戦いは非常に接近戦に弱い。
一方、天儀とジルベリアの技術交流に伴って飛躍的に性能の向上した現在の銃は、重厚な鎧さえも貫く、その他の弱点を補うに足る高い物理攻撃力を獲得している。
銃

◆銃の種類
・火縄式(マッチロック)
火縄(マッチコード)を火薬に接触させて発砲する。
・火打石式(フリントロック)
火打石が設置されており、火花で火薬に着火する。
・火打宝珠式(ファイアロック)
宝珠で火薬に着火する。全体のバランスが良い。
・宝珠式(エレメンタルロック)
宝珠の力のみで弾丸を放つ。高価、かつ希少。

【 爆連銃(シュベリア銃) 】

爆連銃は朱藩において既存銃の連射速度を改良したものである。
外見は一般的な銃と大差ないが、内部構造は大いに異なる。
まず銃身に刻まれた施条が挙げられる。これは銃身に刻まれた溝によって銃弾に回転を与えるというもので、弾道を安定させ、銃の命中率向上に寄与する。
次に、より大きな違いとして、弾倉(挿弾子)を利用した連射機能が挙げられる。これは原則として宝珠式(エレメンタルロック)を利用したもので、装填用の補助宝珠と遊底の操作によって弾丸を送り込み、宝珠の力によって弾丸を発射する。
挿弾子の装填には一度銃の基部を開放する必要があり、複雑な機構と、かさばることもあって一度の装弾数はまだ少ない。
爆連銃は魔槍砲改良の実績を買われ、安州外れに工房を構える「紅蓮」工房が設計と開発を担当。紅蓮の主である小槌鉄郎と、ジルベリア機械工房ギルドから出向したキストニア・ギミック両名が協力しており、銃身の施条削りに使われる特殊旋盤は、宝珠研磨師である戸上保波の手によって準備された。開拓者らの、危険を省みぬ試射などといった協力を経て完成した。
興志王が名付けた俗名「シュベリア銃」には朱藩とジルベリアによる共同開発の意味が込められている。

【 魔槍砲 】
魔槍砲  魔槍砲はアル=カマルで発展した特殊な銃である。
宝珠の装着された長銃身の銃で、先端は槍のように刃が取り付けられており、宝珠の力によって砲撃を行える。
この武器に銃口といったものは必要とされない。
砲撃の際は、宝珠が活性化することで槍の先端から突如爆炎が轟く。
この砲撃の破壊力は絶大で連発も可能だが、多くの練力を消費するために使用できる回数に限りがあり、使いどころをよく見極めねばならない。
一般的には、白兵戦を行いつつ相手の隙を伺って必殺の一撃を繰り出す、もしくは銃撃を連発して敵に大きなダメージを与え、練力が底を尽いた後の予備に白兵戦を行う、という戦術が広く普及している。
魔槍砲の砲撃は練力を集積して放つものであり、一見魔法のようにも見えることから「魔槍砲」と呼ばれ、これを装備した首都の精鋭部隊は「イェニチェリ」とその名を知られていた。
一方で、アル=カマルにおける宝珠の加工技術の問題から、近年の魔槍砲は性能が伸び悩み、発展は大きな壁にぶつかっていた。ところが、貿易商が数十丁を購入して持ち帰ったことから魔槍砲は朱藩の手へ渡る。
新しもの好きの興志王は早速開拓者を募って試行錯誤を繰り返し、遂に魔槍砲欠点の大幅な改善に成功したのである。

【 アーマー 】
アーマー「遠雷」  専門の修練を積んだ騎士の為に作られている特殊な鎧。
天儀では駆鎧と書いて「くがい」とも呼ばれる。
アーマーは強靭な金属の身体で戦う。その内部には人体の骨格に相当する機関があり、宝珠を動力源として稼動する。そこへ布と鎧を被せて全体を覆い、間接部は専用の金属部品によって保護されている。
アーマーは宝珠を利用した複雑な武器であり、定期的な整備を必要とする。これらの整備には、工房ギルドや開拓者ギルドに所属する専門の技術者を当てるのが常である。

宝珠を動力源としているがそのアーマー単体では稼動せず、志体(開拓者)が装備することによって初めて駆動し、志体の戦闘能力を大幅に向上させる。
装備者の精神と思考によって操縦することができ、幾つかの細かな動作、特殊な動作については手元で操作することとなっている。また、その機能上、稼働中は大量の練力を消費し、練力が底を突くと活動を停止する。
従って、志体が乗り込まぬままでは何ら戦闘能力を持たず、アーマーは帝国と一部ギルドによって厳重に管理されている。
非常に高価な事もあって配備は遅々として進まないものの、帝国では、自軍及び騎士に対して優先的に配備を行っている。

※遠雷(エンライ)(左記画像)
全長:約2.5~3m
ジルベリア帝国が正式採用した三代目の標準アーマー。
一代目は退役が決定しており、二代目は既に生産が終了している。
前面の胸部装甲が開閉する構造で、騎士はそこから乗り込んでシートに腰掛け、専用のヘルメットを被り、操縦用グローブとブーツに四肢を入れるようになっている。
胸部装甲を中心として、アーマー各部には搭乗者の家紋等を掲載できるようになっている他、頭頂部の飾り、及び頭部そのものは搭乗者が自由に変更しても良い。
交換用の頭部はもちろん、カラフルなペイントセットや装飾品も工房ギルドを中心に販売されている。

【 アーマーの歴史 】

アーマーの基礎となったのは、古代遺跡より偶然に発見された巨大な機械の体躯だった。
その姿と力は伝承に謳われる巨神機と酷似していた為、その名のまま巨神機、もしくは現存する全ての巨神機が失われた現在、オリジナルアーマーとも呼称される。
巨神機は一機が一軍にも匹敵すると称され、伝承によれば十二機が存在している筈だった。帝国は国家を挙げて巨神機の捜索を開始し、最終的に三機を発見、当時のジルベリア勢力図を大きく塗り替える事となる。
巨神機の圧倒的な戦闘能力は敵対勢力を次々と打ち滅ぼし、帝国はベラリエース大陸の統一を達成。時の皇帝は勢いのままに大アヤカシボフォラスの討伐に乗り出し、奇襲を決行。
巨神機を中心に総力を結集しボフォラスを追い詰めたものの、寸でのところで作戦は失敗。巨神機は全て破壊され、戦乱の中、皇帝も巨神機もろとも戦死する。
現皇帝、ガラドルフ大帝はこの時14歳。ガラドルフもまたこの戦いに参加していたが、彼は辛うじて戦場を脱出。敗残兵を率いて砦へと退却し、その場で戦装束のまま戴冠式を行った。

一方、巨神機の破壊により帝国の軍事力が激減したと考えた周辺諸勢力は、一斉に反乱の兵を挙げた。
大帝はこれらの撃破に明け暮れる傍ら、敗戦のショックを少しでも和らげる為、工房ギルドに巨神機の再現を指示。工房ギルドには惜しげもなく資金が投入され、非稼動状態で発見された巨神機の構造を参考に、自国生産へと乗り出した。
地道な基礎研究を進める中、帝国は、嵐の壁を突破した天儀王朝と接触。その三年後には宝珠の輸入が開始され、アーマーの製作にはこれら宝珠も活用されたが、実験は大失敗に終わる。
988年、騎士技術の提供と引き換えに宝珠技術者を招致し、997年には稼動実験に成功。
その後、オリジナルの戦闘能力には遠く及ばないものの、一応の実用化には成功し、生産体制を確立。ようやく戦力化にこぎつける事となった。
ワールドガイド>天儀の技術