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【 天儀の文化 】

開拓計画が発令される以前の天儀の文化は、氏族社会の閉鎖性そのままに、特筆すべき変化は殆ど見られなかった。
ところが、第一次開拓計画以降諸外国との交流が始まるにいたり、文化体系は大きな変化を迎える。
既存の概念は次々と打ち破られ、文化の衝突と摩擦がまた新たな文化を作り上げていく。
以下の記述は天儀暦1011年3月時点での一般的な文化である。
しかしこれも、あるいは今後の動きによって大きく変化していくかもしれないのだ。


【 衣服 】

全体的には、腕が入る裾をつけた一枚布を帯などで留める天儀風(いわゆる和服)が主流を占めていますが、泰やジルベリアとの交流が進んだことによって、徐々に中華圏、欧州圏の衣服も数多く流通するようになっています。
デザインは徐々に洗練されてきており、特に、新しいものを好む開拓者の間では、過去百年単位で進んだ衣服の変化が数ヶ月で起こりうるほどのスピードです。
暑い地方では解放的な衣類が、寒い地方では毛皮や羽毛を用いた暖かい衣服が好まれる傾向があります。
また、天儀においては、貴族たちの間では古式ゆかしい平安装束のような衣服が好まれ、神威人の里ではいわゆるアイヌ様式に近い衣服も存在します。なお、泰には中華及び周辺文化圏、例えばベトナムやモンゴルのような衣服が、ジルベリアには欧州、特に中欧以東の東欧から北欧の文化圏の衣服が数多く存在します。

ガラスや水晶の加工技術も改良が続けられ、ガラスの生産も盛んに成りつつあって、眼鏡やゴーグルなども流通量が拡大。中でも、水晶を利用したものは最高級品として取引されています。
ボタンやベルトも既に存在しますが、十分な工業技術が必要であるガジェット、例えば化学繊維やファスナーは存在しません。
天儀の衣服


【 産業 】

世界の産業は大きな変化を迎えつつあります。
商業は、通信手段や輸送手段の発展や外界との貿易拡大に従い、それまでの「氏族」や「村」を集合体とした閉鎖的な取引から、需要と供給を基本とする取引へと大々的に移行しつつあります。
そこには摩擦も生じており、経済格差や競争力不足を懸念して領地を囲い込もうと保護貿易を構築する氏族や領主がいるかと思えば、一方ではこれをチャンスと捉えて殖産興業を進めたり自由貿易に乗り出す者達もおり、変化に対する人々の考え方は千差万別です。
中でも「万屋」は、自由貿易による広大なネットワークを構築して大成功を収めた代表例として数えられるでしょう。

▼農業
天儀の農業は、主食となる稲作を中心に成り立っています。
しかしながらアヤカシの脅威による作付け面積の減少もさることながら、多様性の確保による安定性確保を重視して、近年は他国の農業技術を取り入れた麦などの穀物地帯も徐々に形成されつつあります。
農業は既に苗による作付けが前提であり、安定して生産されています。
寒冷地は土地が痩せている場合も多いので、休耕田を四ヶ月ほど設ける三圃式農業が主軸となっています。
ジルベリアでは大麦や小麦はもちろん、ライ麦やじゃがいもの生産も大きく、特にじゃがいもはその有用性が高く評価されています。一方、泰は食文化の発達もあって、これと特徴的なものはなく、あらゆる農作物が生産されています。

▼林業
林業は、各国で重要な一次産業の一角を占めています。
特に精霊の加護を受けた森や林から伐採される材木には不思議な加護が宿っていることもあり、様々な用途に転用されています。特に、神威の森で伐採される材木が名を知られています。
一方、魔の森に生ずる植物は、一般的に加工に適していません。

▼鉱業
各地には様々な鉱物が眠っています。
鉱物の中には極めて希少性の高い、耐久性や剛性に優れる鉱物もあり、これらは主に武器の生産などに優先的に廻されています。昨今は鉄や銅の需要が年々高まっており、もちろん、金や銀、宝石などは極めて高価に取引きされています。
こうしたことから、各地の氏族にとっては、朝廷などによって強くコントロールされている宝珠採掘に比べ、鉱業は旨みの大きな事業であると考えられています。

▼加工業
天儀において、加工業、特に宝珠加工業は新興氏族にとっての代表的な産業として発展しつつあります。
従来、朝廷に独占されていた加工技術は、僅かではあれ民間にも技術が広まりつつあり、新たな技術を他氏族に先んじての開発に成功することは、一攫千金の富を氏族にもたらすことを意味します。
ただ、新技術の開発は技術者の個人的力量に頼るところも多く、腕の良い加工職人は氏族や国が直接抱え、中には領地を与えることすらあるのです。

▼建築業
比較的温暖な気候の天儀においては、棟梁の指揮下で職人たちが活躍する町屋建築が発展しており、都市部では、平屋建ての長屋が軒を連ねています。
一方で宝珠を利用して強度を高めたり快適性を高めるというような、新しい建造物も登場し、富裕層を中心に広まりつつあります。また、これらは都市部の住居不足に一定の解決策を提示できるのではないかと期待されています。

▼その他
産業としての畜産業は、広い土地と余剰生産力を必要とする為、武天などの土地を中心に発展しています。
漁業は近海漁業が中心で、遠洋漁業に出る際は落下に注意しなければなりません。近年では、その危険性を鑑みて飛空船による漁業も目立ちつつあります。
また、芸術や学術といった分野は、剣術や魔術といった分野に比べて志体の能力に左右される場面が少ないこともあって、その道を極めんとする専門家における一般人の占める割合がかなり高いとも言われています。


【 流通手段 】

◆大型飛空船  :

速度:◎ 運搬量:○ コスト:× 小回り:×

国家プロジェクトや島と島を結ぶ定期便など、比較的大規模なプロジェクトにおいて運用される飛空船です。
多数の動力と宝珠を備えており、大ぶりながらその速度は他を圧倒します。
しかし、運用コストや着陸場所には常に困り、一度着陸すると次の離陸までに時間がかかってしまうことも問題点です。

◆小型飛空船  :

速度:○ 運搬量:△ コスト:△ 小回り:△

個人あるいは小集団単位でも保持できる小型の飛空船です。
基本的に人間が10人乗ったら飛べない程度の動力しか持ち合わせておらず、昨今改良されてきているとはいえ、風の気分次第で進路が変わってしまうことがあるなど、コスト面及び運用面に問題があることは事実である。
しかしながら地形を無視できるその性能は尊ばれており、高速長距離運搬業などに利用される。

◆グライダー  :

速度:○ 運搬量:× コスト:△ 小回り:◎

飛空船と共に発展した個人乗りの小型飛空艇。
軽量であり、短時間での戦闘を主としている為に積載量も少ないが、龍よりも手軽に利用できる安全な交通手段として、主に長短距離の書類輸送や飛空船が着陸できない地点の偵察などに利用されている。
個人でも気軽に所有できるが、前述の通り長距離を移動する能力は持たず、全力可動は概ね30分程度を限界とする。一方、滑空を生かした巡航モードであれば、2時間程度飛行可能。

◆龍  :

速度:○ 運搬量:× コスト:△ 小回り:◎

宝珠が開発される迄は最速にして唯一の航空交通手段であり、悪路であっても無視して航行できる利便性は重宝されていた。
だが運搬量としては絶望的に少なく、書類関連程度しか運べないことや、時勢が時勢であるため、どこの国家も龍を囲いこもうと躍起になっていることから、成長した龍などは高値で取引される場合も多い。

◆もふらさま  :

速度:△ 運搬量:◎ コスト:◎ 小回り:○

天儀において神のつかいと称されるもふらだが、外見の通り速度はゆっくりとしているものの、意外に力持ちであり、荷車と繋げば多くの荷物を運ぶことができる。
食料も雑食でなんでも食べるので、農耕用としても重宝されている。
急がない旅や、重い物を運ぶ際には利用される。
    :
速度:○ 運搬量:○ コスト:○ 小回り:○
概要:激動の時代を生きる天儀において、馬は龍と並んで貴重品であるが、龍に比べれば育成が容易であることと、気性が大人しいことから、荷車をつける、つけないに関わらず、積極的に利用されている。
もっともバランスの取れた運搬手段ではあるが、安定した陸路でなければその真価を発揮できないことから主に都市間輸送などに使われることが多い。

翔馬    :
速度:◎ 運搬量:◎ コスト:不明 小回り:◎
天儀王朝が保持する天馬です。
高速飛空船と同等の速度を出すことができ、運搬量も(積載できれば)いかなる重量であっても難なく運ぶことができるという代物であり、天儀王朝の象徴的存在となっています。
ですが生息数は片手の指で数えられるほどしかいないといわれ、重要な国家伝令に伝われるのみとなっています。

風信術    :
速度:◎
風の精霊の力を専用の巨大機械によって増幅させ、伝える技術です。
精霊力が乱れていると使えないことや、全長30mほどもある巨大機械を設置しなければならない、他からの盗聴に弱いという制約条件はありますが、ほぼリアルタイムに情報を伝達することができます。
余り重要でない伝令や、極端に速度を重視する伝令に使用されます。

精霊門    :
速度:◎ 運搬量:◎ コスト:× 小回り:×
天儀王朝に属する高位の巫女、神官が管理している移動手段であり、各国にひとつと開拓者ギルドに設置されている。
使用には開拓者ギルド及び各国長の許可が必要であり、依頼以外での使用は原則許可されていない。
毎夜24:00頃門が開き、門の中に入ると対象者は光に包まれ、任意の門へ瞬間的に移動する。


【 宗教 】
 天儀における宗教は精霊信仰によるものが多い。
人々はあらゆる自然に精霊を見いだし、言霊を感じて精霊力を引き出すことで力を発揮する。
多くの人々は高位の精霊と話したことさえなく、精霊という概念も自然の中から想像したに過ぎないが、魔術や剣術の中に精霊力として宿り、あるいは開拓者と呼ばれる存在が身近となった今、精霊の存在もまた人々にとって身近なものとなっている。

・天儀日照宗
日照宗とは、朝廷が公式に承認している国教である。
巫女や砲術士、志士などを中心とする氏族に多く、精霊力を授かって能力を発現させることを基本とする。
自らを精霊に対して下位の存在であると認め、自ら精霊に寄り添い、その言葉に従って己を律しながら生きていかんとする思想に支えられており、精霊や自然は克服したり制御したりするものではなく、それは精霊の代弁者たる朝廷の威信を高めることにも繋がっている。
教えられるものは精霊術や魔法、奇跡などと称され、無から有を生み出したり、武器を強化したりといった外的要因を変化させるものが多く、時には精霊に自らの身体を貸すことも良しとする。

・天儀天輪宗
天輪宗は比較的歴史の新しい宗派である。
現在の形は、東房の僧侶らと泰の拳士らが共に築き上げたものである。
精霊の力を己の身体に宿すことで、その能力を発現させようとするもので、その思想は自らを精霊と同列に置き、精霊と人、お互いが歩み寄らねばならぬものと考える。
宗教、技術の区別無く、敬意を払うのはあくまで自らの師と精霊であり、それでもなお最終的には自ら悟りを開くことを良しとする為、精霊や師匠を絶対視することも少ない。当然のことながら、精霊を奉じる朝廷に対する畏敬の念も薄い。
伝えられている技術は身体を一時的に強化したり、瞬間的に強力な一撃を発揮するようなものが多い。精霊力を駆使することは、あくまでもお互いの合意の下になりたっているのである。

・無神宗(無宗教)
純粋に技術体系として精霊を扱う考え。
武天を中心とする、サムライや新興氏族に多い。
精霊の存在そのものは否定されるものではないが、彼らにとってみれば精霊を奉じたり力を借りているといった考えは無く、その能力はあくまで、技術として修練を積み、その結果自然に身に付くものであると考えられている。
技術体系は師匠に弟子入りして秘伝書などから学んだり、あるいは師事して盗むもとして伝えられ、発現される能力も様々なであるが、個人の才覚に左右される部分が大きい。

・陰陽道
技術体系として、精霊ではなく瘴気を用いる技術体系。
知識と研究を重んじ、陰陽師らにとっては、姿形の定まらぬあやふやな存在たる精霊よりも、最高位の存在に至るまで全てに姿形のあるアヤカシのほうがよほど魅力的で興味をそそられる存在と考えられた。
いわば、深まるアヤカシの脅威に対し、あえて危険を冒し、毒を以って毒を制す覚悟で挑むのが陰陽道の思想である。
危険な力を用いている自覚が強いことから、その技術開発は挑戦的でありながら慎重。技術的にはアヤカシに近い存在を「式」として召喚する術や、瘴気を操る術が多い。

・皇帝崇拝(無宗教)
皇帝のみを絶対的な存在として認め、すべては技術や皇帝の力に拠るという考え。
本当にそう考えている者は少ないだろうが、技術はすべて国家に管理されており、国家から修練を許可されなければ学ぶこともできない。
精霊の力も、その力を如何にして活かすかにのみ注力されている。
修練の伝播は極めてスムーズに行なわれるが、やや画一化されがち。

・神教会
通称「教会」。かつてジルベリア人口の殆どが信仰していた宗教。
およそ百年前、アヤカシとの対抗上から生じた国内改革に強い敵対姿勢を見せたことから帝国の攻撃を招き、禁教令が布告された。
その後も幾度か大規模な反乱を起こすが、全て失敗して壊滅。ジルベリアにおいて、その信仰は全面的に禁止されている
習慣や法にまで関与していた以上完全に消え去った訳ではないが、教会奥深くに保存されていた聖典は既に焼失し、正統な教義は解らなくなっている。一般的には、唯一絶対なる神の御許に全ての民は平等であると考え、精霊を使役して世を善なる方向へ導く事を美徳と定める。

・天儀神教会
天儀に逃げてきた隠れ信徒たちによって再興された教会。
ジルベリアと天儀の間で国交が持たれたことから、ジルベリアでの禁教から逃れてきた信徒らが神楽の都にて相互扶助的な小さな教会を設立した。段階的に拡大してきてはいるものの、組織としての規模は小さく、決して潤沢とは言えない寄付金で運営されている。
魔術の修練を願う者に対しては、信仰を条件に広く門戸を開いている。

・聖典主義
アル=カマルにおける国教。月に鎮座する神を奉り、同国で成立した法や習慣の根幹として機能している。
その曖昧な名が示すとおり、古代に成立した「聖典」を根幹としてこそいるが、聖典主義は単独で成立したものではなく、成立後に周辺地域のとの交流によって新しい考えかたを次々と取り入れ、常に変化しながら形が整えられている。
聖典主義では「解釈」が重要とされる。宗教の多くは精霊信仰から発するものであるため、元を辿れば全て同じ泉源に行き着くはずであるから、教義の違いは精霊に対する解釈の違いによるものである、と考える為である。
その為、国教ではあるが絶対的な教義としては考えられておらず、他の宗教や文化についてもかなり寛容である。

・精霊信仰
神威族や猫族、天儀の地方に点在する素朴な精霊信仰。
体系化されておらず、精霊に対する態度も、崇拝的なものから対等なものまで定まらないが、とりあえずこれまでのところ特に困ったこともないらしい。
神威らの間では月を崇め、尊ぶ風習もある。

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