【南部辺境】辺境の初夏
マスター名:夢村円
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/06/24 05:14



■オープニング本文

 長い冬と春が終わり、ジルベリアの美しい初夏がやってきた。
 決して長くはないがそれだけに眩しく、輝かしい夏。
 ジルベリアがもっとも活気づく季節である。

 その季節、南部辺境から一人の少年がやってきた。
「南部辺境伯グレイス卿からの内密の依頼である。開拓者に力をお借りしたい」
 この少年の名はオーシニィ。
 辺境伯の甥であり、側近中の側近である。
 彼を差し向けての改まっての要件とはなんであろう。
 ギルドの係員が緊張の面持ちで少年の顔を見ると‥‥。

「そんなに、緊張しないでくれよ。っていうかあんまり堅苦しく思って貰っちゃ困る仕事なんだ」
 彼はそう言って明るく笑ったのだった。

「南部辺境の一番南に近い所。リーガよりさらに南に近い所に小さな町があるんだ。
 元は綺麗なネムナス川の水と森の草木による染物や糸での織物などを特産としていた町でそこは領主に赴任して約四か月。ジルベリアで一番新しい領主が治めている。名前はラスリールっていうんだけど‥‥」
 少年は地図を広げて場所を指し示した。
 場所で言うならリーガよりもクラフカウの南となる。
 去年の合戦で戦場になったメーメルよりもさらに南だ。
「前領主は先のヴァイツァウの乱でコンラート卿に与した罪で減俸。さらに皇帝陛下に叛意を表して処刑された。その跡を継ぐ形で彼は領主に任命されたんだ」
 領主任命にあたっては実は色々と一言で表すにはあまりにもたくさんの事があったのだが、それを今語る必要はない。
「新領主はとりあえず、そつなく仕事をこなしてる。民の評判も悪くない。でも‥‥表向きの顔はいくらでもいい顔ができる。実際、中の実情、民の評判を知りたいっていうのが叔父上、辺境伯の希望なんだ。だから、それを開拓者に頼みたいんだ」
 つまり、潜入調査、ということになるわけだ。
「条件がいくつか。
 第一は開拓者の身分で無く潜入すること。
 第二は基本的にリーガの助力は無しで動く事。
 辺境伯からの使者が来た、なんてバレて警戒されたら意味がないから」
 まあ、多少の品物の援助くらいはできると思うけど。と少年は言う。
 集める情報は街の様子、民の領主への評判、そして領主の近況や人間関係など。
「そしてこれが一番重要。絶対に領主に辺境伯の調査が入ったと知られない事。知られると逆にこちらの弱みになるんだ。信用してないのかって。‥‥実際信用してはいないんだけどさ」
 彼はその本質はにアヤカシ以上に闇を抱えている可能性もある。と辺境伯は見ていると言う。
「秋には南部辺境の領主が集まる会議や祭りとかもあるし、なんだか今度織物やドレスの注文が増えそうって話もある。だから今のうちに様子をしっかりと把握したいんだって」
 少年はそう言って帰って行った。
 
 ジルベリアの初夏は過ごしやすく美しいと評判高い。
 じんわりと、だが一日毎、暑くなっていく天儀や、灼熱のアル=カマルから少し離れて涼んでくるのは悪くない話だろうと係員は頷いた。

 輝かしい夏の緑に潜入調査という仕事は似つかわしくないかもしれないけれど‥‥。
 


■参加者一覧
フェルル=グライフ(ia4572
19歳・女・騎
神鷹 弦一郎(ia5349
24歳・男・弓
シュヴァリエ(ia9958
30歳・男・騎
フェンリエッタ(ib0018
18歳・女・シ
ケロリーナ(ib2037
15歳・女・巫
アルベール(ib2061
18歳・男・魔
御調 昴(ib5479
16歳・男・砂
巳(ib6432
18歳・男・シ


■リプレイ本文

●南部辺境フェルアナ
 その街はフェルアナという。
 人口は数千人。
 街と言うには小さく、村と言うには大きい。
 リーガやメーメル。ましてやジェレゾと比べれば明らかに小さいが、
「ふぁ〜。皆、楽しそうです〜」
 想像していたより遥かに賑やかで活気に満ちた様子に開拓者達は少々驚いたようであった。
「ここが南部ですのね。色がきらきらですの〜」
 目を輝かせるケロリーナ(ib2037)。
 南部辺境が初めてという彼女の感動を指し引いても、「色がきらきら」という表現に開拓者達は素直に同感していた。
 ジルベリアの初夏は一番美しいと言われている。
 木々は新緑や深緑に染まった森に囲まれた街は純粋に綺麗だ。
 とはいえ、今は彼女の言葉に同意の思いを表すことはできない。
 商店街を楽しそうに歩く少女にある者は背を向け、ある者は横を通り、ある者は視線の端に入れながらも視線の端でリュートを爪弾く。
「うわ〜、このリボンキレイですの〜。赤もいいですけど、青いリボンも空の色みたいでステキです〜」
「おい、カーチャ。あんまりはしゃぎ過ぎて迷子になるなよ」
「はあい、ジャックおじさま。今行きますですの〜。あ、荷物。荷物も忘れずに、っと。この青いリボン買いますの」
「はい。あんがとよ。可愛いお嬢ちゃんにはきっと似合うぜ」
「うふ、ありがとですの」
 そう言ってケロリーナは側で待つジャック。
 いや、シュヴァリエ(ia9958)の元へと駆け出したのだった。

 開拓者達が南部辺境伯グレイス・ミハウ・グレフスカスから受けた依頼は南部辺境に新しく生まれた領主と、その町の調査であった。
 領主の名前はラスリール。
 アヤカシと開拓者を利用して一介の貴族から領主にまで登った人物だ。
「己の身も心も全てを利用した彼。町一つで彼の望みが収まるはずもなく‥‥辺境伯のご心配はごもっともであると考えます。領主らしからぬ事だけはして欲しくないものですが」
 話を聞いた時アルベール(ib2061)はそう言って唇を噛みしめたものだ。
「しかも、私達はフェイカーを野に放ってしまった。今や帝国全土が危険とさえ言えます」 
 悔しげなアルベールよりもさらに辛そうな顔のフェンリエッタ(ib0018)の手をフェルル=グライフ(ia4572)は無言で握り締めた。フェイカー暗躍の事情は開拓者達の耳にも少なからず入ってきている。
 南部が、ひいてはフェンリエッタの言うとおり帝国全土が危険にさらされる可能性は確かにあるが、闇に沈んだフェイカーの居場所を今の所探す術は少ない。
 待つより他になくできることは少ないのだから今、彼女を責めても仕方のない話だ。
「まあ、とりあえずは依頼をこなすと致しましょう? この町の事も私達は何も知らないのですから?」
「巳(ib6432)さん?」
 震える声で、それでも顔を上げたフェンリエッタに
「今の私は巳ではなく、鬼灯、ですよ?」
 ニッコリと笑う巳。吐き出された息はため息、というわけではない。
 感嘆を多分に含んでいる。
「なるべく開拓者であることを知られないようにするのなら変装は必須でしょう? 何か問題があるのかしら」
「いえ‥‥ただ巳さん、確か男性、でしたよね?」
「それが何か?」
「どこから見ても、女性にしか見えないので‥‥」
「まあ、あまり褒めないでください。照れてしまいます」
 口元を隠してホホホと笑う巳に向けて、大きく息を吐き出した御調 昴(ib5479)のそれは明らかなため息であった。
 昴も調査の為に変装することに異論はない。ただ、それが女装と言うのが問題であるだけで。
「あら、可愛いですよ。プレアさん」
「フェルルさんまで‥‥」
 くすくす、とフェルルに笑われて昴はもう一度大きなため息を吐き出してしまう。
 彼も女装をしていた。獣人の特徴である翼などを隠す為もあり、ゆったりとしたドレスを着ている。
 正直気が引ける。とても恥ずかしい。顔が赤くなる。
 けれど、髪を止めた紐が揺れて白い花が目の横に流れる。
 それを見て、彼は何か覚悟を決めたように強く手を握り締めたのだった。
「早く行きましょう」
「そうですね。のんびりしている暇はありません」
 落ち込み気味であったフェンリエッタも顔を上げる。
 手早く打ち合わせと組み合わせを決めると彼らはそれぞれ動き始める。
 今、ラスリールは町を離れ領地を見回っているらしい。
「では、フェンリエッタさん。じゃなくて、カンナ。そろそろ行こうか?」
「弦一郎さん‥‥いえ、レンですね」
 柔らかく笑った神鷹 弦一郎(ia5349)がフェンリエッタに手を差し出す。
 どこかぶっきらぼうで、でも優しく笑う彼の手を、調査の間のパートナーの手を
「はい。よろしくお願いします」
 フェンリエッタはそっと取って自分の手を重ねたのだった。

●織物と芸術の街
 フェルアナは草木染と織物が有名であると言う。
「見てご覧。良い色合いだと思わないかい? カンナ」
「そうね。レン。天儀とはやはり同じ色でも色合いが違うみたい」
 楽しげに品々を手に取りながら話す男女二人連れに
「おや、お二人さん。恋人同士かい?」
 店の店主はからかうようにそんな声をかけた。
「恋人だなんて‥‥そんな。私は‥‥その」
 頬を赤らめる娘の茶色の髪を軽く撫でるようにして、レンと呼ばれた青年は助け舟を出す。
「そんなにからかわないであげて下さい。でも、この藍は本当に良い色ですね。こちらの織物も赤がとても映えている」
 ふと、店主の二人を見る目が変わる。
「ほお、解ってくれるかい? あんた素人じゃないのかな?」
「まあ、ちょっと修行中なんだ」
「レンの店は天儀でも少し知れた反物問屋なんです。私も、そこで知り合って‥‥」
「なるほど。御曹司と未来の奥方の勉強旅行って奴ですか」
「もう!」
「まあ、そんなところ。それでいろいろ見せて欲しいんだけどいいかな?」
「どうぞどうぞ」
 と明るく笑って店主はお茶まで出してくれた。
「ずいぶん活気がありますね」
 問う娘に商人は胸を張る。
「何せ新しい領主様が良くってね。やり手で、しかも正義感も強い。若い連中も戻ってきたしね。最近近くの街道とかで盗賊とかが出るようになってきたけど‥‥ご領主様はきっとなんとかすると言ってくれた。この町はこれからだよ」
 出されたカップを手で撫でながらカンナ、いやフェンリエッタはここまでの会話を思い出していた。どこで聞いても悪評の聞こえないラスリールの統治に逆に背中が寒くなり思わず小さく身震いする。その時、
「カンナ。手を出して」
「なあに? これ」
 言われるまま差し出された手に何かが落ちる。
「君の髪に映えるんじゃないかと思って」
 見ればそれは美しいリボンだった。天儀の藍にも勝ると劣らない美しさだ。
「お熱いですなあ?」
「茶化さないでくれないか? でも、これはいい品だ。仕入れてみたいな」
「でしょう? 恋人へのプレゼントに最適ですよ」
 商人とレン、弦一郎の会話に
「そういえば! 領主様は私より若いらしいしご苦労も沢山おありでしょうね。まだご家族もいらっしゃらないようですし恋人や親しい人を作って落ち着いて貰えれば皆安心なのに」
 フェンリエッタも加わり、本来の仕事、情報収集を再開する。けれどリボンを髪に結び
「ありがとう、ございます」
 小さな声で『弦一郎』にそう告げることだけは忘れなかった。

「流石、卿の治める町ですね。そう思いませんか? プレアさん」
「あんまり大きな声で話しかけないで下さいませんか? フェ‥‥ヴィーシニャさん」
 姉妹のように仲良く歩く少女が二人を良く見ているとそんな会話が聞こえる。
 観光客が買い物を楽しんでいる様に見えるが、そのうちの一人が服の端を引っ張ったようなのだ。
「どうしてです?」
 首を傾げる三つ編みの「ヴィーシニャ」。俯く「プレア」の髪には白い髪紐が揺れている。
「その‥‥あんまり目立ちたくないんです。‥‥やっぱり恥ずかしいし」
「大丈夫です。堂々としてて下さい」
「でも‥‥」
「昴さん」
 決意は決めた筈だが恥ずかしげに顔を伏せるプレアではなく昴にふと、ヴィーシニャではなくフェルルはそう声をかけた。
「貴方ならもうお判りでしょう? この町の様子。凄く活気があって、表情は明るい。それだけなら問題ありませんが、卿は卓越したその能力で人々の心を掴んでいるようだ、ということ」
 真面目な顔のフェルルに問われ‥‥昴は
「はい」
 と真面目な顔で答える。
「若い人達も戻ってきて、元気に働いている。みんな幸せそうで‥‥でも、それが危険だと感じるのは僕の考えすぎでしょうか?」
「そんなことはありません。だからこその調査です。私達は街の人達が幸せかどうかを確かめないといけないんです。目的の為にアヤカシすら利用する歪は、何かを町に落としているかもしれない。些細な事でも見落とさず注意して。でも‥‥」
「でも?」
 真っ直ぐ前とフェルルを見つめる昴に、ニコッ。
 緊張を解く笑顔で、フェルルは笑った。
「堅い心じゃ、人の心に本当に寄り添う事はできないと思います。お仕事は真面目に、そして夏も楽しんで。ね?」
 彼女の笑顔は確かに人の心に寄り添う力があるようで。
 握られた手と笑顔に、緊張と強張った心が溶けるのを感じていた。
「そうですね。解りました!」
 その返事の瞬間、昴の手をつないだまま、フェルルは足を速めた。
「じゃあ、今度は向こうに行きましょう。屋台の食べ歩きを‥‥えっ?」
 急に足を止めたフェルルに昴はぶつかる。
「どうしたんです? フェルルさん?」
「今、知った顔がいたような‥‥多分気のせいですね。行きましょう!」
「あ、待って下さい!」
 何度目か。フェルルの後を昴は笑顔で、一生懸命追いかけて行った。

●犯罪者のいない町
 町の小さな広場や路地裏では子供達がかくれんぼをしている。
「みーつけた。ですの♪」
「おい、カーチャ。あんまり遠くに行くなよ」
「は〜い。ジャックおじさま。みんな〜。あと一回やったら一休みしましょ〜。美味しいイチゴがあるんですの〜」
 カーチャ、ケロリーナの周りに集まる子供達の様子は無垢で、少し離れた所で見守りながらシュヴァリエは無意識に小さく肩を竦めていた。
 子供達が裏路地で自由に遊べるくらいこの町の治安はいい。
 と、言うか荒れた者達をまるで見ない。
「あの話は本当なのか?」
 ケロリーナの護衛をしながら町の兵士達の言葉を思い出していた。
『新しいご領主様がね、町の悪者達を説得してくれたんだ』
『凄いんだぜ。単身やつらの本拠地に乗り込んで町で悪いことをするなって説教したらしい』
 兵士達の言葉は話半分に聞くとしても、その説得に応じ下町を仕切っていた一団が領主の説得以降その鳴りを潜めたことは本当らしい。
 新しい領主はかなりのやり手であるようだ。
 だが開拓者はその行動を言葉通りには取らない‥‥。
「それじゃあ、またですの〜〜」
「お姉ちゃん、また遊んでね〜〜」
 おやつの果物が空になったのを機に子供達は家に帰って行った。
「終ったのか?」
「は〜い。後は買い物がしたいですの〜」
「解った」
 戻ってきたケロリーナはシュヴァリエと並んで歩きながら
「あのですね、お聞きしたいことがありますの?」
 彼の目をまっすぐ見つめた。
「なんだ?」
 シュヴァリエは問い返す。
「シュヴァリエさんは、ラスリールおじさまをご存じですのね?」
「まあ、な」
「お話を聞くと、皆、前より住みよくなったと言いますの。税金も安くなって、子供達も大好きだって。本当にラスリールおじさまは悪い人ですの?」
 首を傾げて問うケロリーナにシュヴァリエは
「そうだ」
 とも
「違う」
 とも答えることはできなかった。

 フェルアナの酒場でアルベールたちが出会ったのは旅の芸人達である。
 この町の活気に引き寄せられるように芸人達が多く集まってくる。
 楽師が具合を悪くしてしまったという彼らに乞われていくつかの伴奏をしたのだった。
 妖艶な踊り子に合わせた甘い恋歌は子供達と一緒に歌っていた時とは違う大人の唄、である。そのムードに当てられでもしたのか
「よお! 姉ちゃん。こっちへ来いよ!」 
 一人の男がテーブルに杯を乱暴に置くと踊り子の一人を乱暴に手招きした。
 ぐいと強く手を引く男に
「止めて頂戴! 離して!!」
 女の胸元で赤い首飾りが大きく揺れた。
 アルベールと、丁度居合わせた巳がそれぞれ助けに動こうとした、その丁度その時。
「止めなさい! 何の騒ぎです?」
 酒場の入り口から声がした。張りのある声に誰もが振り返ると、そこには一人の男性が立っていた。
「ご領主様!」
 周囲から上がった声に軽く微笑んで彼は踊り子の手を掴む男の手を逆に掴んだ。
「フェルアナは私の名において旅芸人を保護しています。乱暴は為になりませんよ」
 射抜く視線を揺るがせない領主。その言葉に男は顔を歪めると踊り子の手を投げ捨てるように放した。
「ここはお前の顔を立ててやる。だが、忘れるなよ!!」
 吐き捨てるように言葉を残して逃げていく男、喝采と拍手に包まれる領主を見ながら巳とアルベール。
 二人は胸の中に広がる苦い思いを、嫌な予感を消すことはできなかった。

●理想郷?
「つまり、現時点では理想郷のような町である? と?」
「結論から言えば、そういうことですね」
 リーガに戻り依頼人に報告を行う弦一郎は腕を組みながらそう言った。
 表情は調査をしてた時と同一人物とは思えない程の憮然とした顔である。
「治安が良く、町を離れていた人達も戻ってきた。悪人と呼ばれる者達もおとなしい。旅芸人も多く賑やか。それでいて職人はプライドを持って仕事をしている。税金も適性。正直文句のつけようがありません」
 報告の内容に自分自身が納得していない。
 それが解るから、依頼人の少年は依頼人としてではなく、一人の少年としての好奇心で問いかけた。
「その割にあんまりいい顔してないのは、なんで?」
「不自然だからですよ」
 吐き出すように弦一郎は言って顔を背ける。
 犯罪者達さえ一目置く領主。楽しげに笑う人々。
 そこには今までが酷かった故に誠実に見える新領主への信頼がある。
「まるで出来の悪い劇を見ているようだ、と巳さんは言っていましたよ」
「解った。叔父上にも伝えて注意するように言っておく」
「よろしくお願いします」
 頭を下げて退室した弦一郎は暗い部屋から外に出て目を押さえた。
 眩しい、けれど涼やかな日差し。
 街に緑を添える桜の若木。あちこちに植えられた向日葵の苗はもう子供の身長を超えているものもある。
 かつて仲間達。辺境の復興を願って開拓者が植えたものであると聞く。
 遠くから聞こえる賑やかな人々の声。
 活気ある声に彼は小さく微笑しその輪の中にいるであろう仲間達の元へと戻って行った。
 
 辺境の町「フェルアナ」
 この町を始まりとする新たなる運命が町の領主と一人の人物との出会いによって今、始まろうとしていた。