【未来】物語の続き【南部】
マスター名:夢村円
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 普通
参加人数: 9人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2015/04/14 01:28



■オープニング本文

●もふらがたり
 とある資料室――一人の青年が、過去の報告書を整理していた。
 足元には暖房器具の中で宝珠が熱を発し、もふらが丸まって暖を取っている。
 彼は眠そうな瞳をこすりながら紙資料の山をめくり、中に少しずつ目を通していく。
 そこに記されているのは、遠い昔の出来事だ。
 それはまだ嵐の壁が存在していて、儀と儀、地上と天空が隔てられていた時代の物語。アヤカシが暴れ狂い、神が世界をその手にしていた時代の終焉。神話時代が終わって訪れた、英雄時代の叙事詩。
 開拓者――その名は廃されて久しく、彼らは既に創作世界の住人であった。
「何を調べてるもふ?」
 膝の上へ顔を出してもふらが訊ねる。
 彼が資料の内容を簡単に読み上げると、もふらはそれを知っているという。
「なにせぼくは、当時その場にいたもふ!」
 そんな馬鹿なと彼は笑ったが、もふらはふふんと得意満面な笑みを浮かべ、彼の膝上へとよじ登る。
「いいもふか? 今から話すのはぼくとおまえだけの秘密もふ。実は……」
 全ては物語となって過ぎ去っていく。
 最後に今一度彼らのその後を紡ぎ、この物語を終わりとしよう。

●物語の終わりと夢の続き
 南部辺境に時が流れた。
 ジルべリアの歴史を大きく揺り動かしたヴァイツァウの乱から15年。
 そして南部辺境最後の戦いとなったラスリールの乱より10年が過ぎようとしている天儀歴25年4月。
 南部辺境伯グレイス・ミハウ・グレフスカスの治世下において南部辺境は静かで豊かな繁栄の時代を迎えていた。
 その強大なカリスマでジルべリアを牽引していた皇帝ガラドルフは皇位を正妃の長男に譲り隠居することを発表した。
 自らが目を光らせる事で、世代交代に乗じて権力を狙う者達をけん制。
 新体制は多少の混乱こそあったものの、現皇帝の有能さもあって徐々に軌道に乗り始めている。
 そして、それを影から支える力の一翼となったのは南部辺境の自治区制度と、そこから排出された人材達であったのだ。
 南部辺境は現在、ジルべリアの特区とされ貴族特権が各地を治める数名の領主以外に認められていない。
 その代わり、身分に関係なく望めば誰もが同じ教育を受けられ、さらに才能と希望によってより高い知識も学ぶことができた。
 加え、天儀やアル=カマル、近年では地上世界などとも交易を始めていて、常に最新の情報が南部辺境には入ってきていた。
 身分の枠にとらわれず見出され、最先端の知識によって育てられた才能達は、時に厳しい目で現体制を見つめつつ、教育によって培われた愛国心をもって国を支える。
 貴族社会に認められない恋愛をする若者が南部辺境で、駆け落ち結婚的に式を挙げるなど予想外の事態も発生するにはしてはいるが、歴史と伝統を守るジルべリア中央と、それを支える情報や、技術の最先端、南部辺境という二本の柱は今のところ上手く機能しているようだった。
 
 リーガは南部辺境の中心として、そして今は学園都市として機能している。
 初等教育は南部辺境全域で行われており、一般の識字率は9割を超えるようになった。
 最初はその後、希望者により高度な専門教育を与える場として整備されたものであるが、今はその卒業生がさらに研究を続けたり、後進を育てたりする研究都市の意味合いも持つようになった。
 中央との知識交換なども盛んに行われている。

 南部辺境と中央の合流地点であるラスカーニアは結婚産業という思わぬ道での繁栄を始めた。
 親に認められない結婚を望む若者が、南部辺境に逃げてきて結婚するケースが増えてきているのだ。
 ラスカーニアを治める領主ユリアスが実は女性、皇帝の非嫡出の皇女であるという事実は緩やかな噂と吟遊詩人の唄によって公然の秘密となり、それがロマンティックな結婚を夢見る若者達の憧れとなっている。
 
 メーメルは今もなおジルべリア有数の劇場を有する芸術都市として名高い。
 春花劇場、ヒカリノニワは四季折々の花で彩られ、季節ごとに実施される演目は人々の心を引き付けている。今は桜が満開だろう。
 この劇場から発信されるのは舞台の芝居ばかりではない。
 新鋭のデザイナーが舞台の為に用意したファッションは若い男女の心を虜にし時に、今や流行を左右するとも言われていた。

 そしてそれらを支えるのが染色、被服をはじめとする第一次産業を守るフェルアナと、それらを輸出し天儀と直接貿易を行うイテユルムである。
 イテユルムから入ってきた最先端の情報が各地に伝えられ、それがジルべリア独自の色を取り入れつつ新しい姿となってジルべリアに、そして世界にまた広がっていくのだ。

 無論、それらの利権を狙う輩などの存在や、南部辺境の存在を良く思わない保守派の抵抗なども皆無ではない。
 魔の森が消滅し、アヤカシの存在も激減してはいるがまだ時折襲撃事例なども聞かれる。
 しかし、南部辺境が一番重要として育ててきた人材が、今、南部辺境をひいてはジルべリアを強く支えているのである。


 ここにジルべリアに、南部辺境に生きる人々の「今」を語ろう。
 彼らの物語は「今」も紡がれ、それは「未来」へと続いていく…。
 


■参加者一覧
/ 芦屋 璃凛(ia0303) / 龍牙・流陰(ia0556) / アーニャ・ベルマン(ia5465) / フレイ(ia6688) / リューリャ・ドラッケン(ia8037) / ユリア・ソル(ia9996) / ニクス・ソル(ib0444) / マックス・ボードマン(ib5426) / カミール リリス(ib7039


■リプレイ本文

●南部辺境の物語

 ここにジルべリアと、南部辺境に生きる人々を語ろう。
 吟遊詩人も歴史学者も、もふらさえ知らぬ、語らぬそれぞれの物語。
 後にジルべリアの歴史に語られる南部辺境の伝説。
 それを支えた人々の、人生のこれは欠片である。

 南部辺境リーガの街。
 この街は学園都市という性質上、若い学生などが多いようだ。
 あちらこちらで談義や賑やかな笑い声を耳にすることができる。
「うわあっ! にぎやかな街だね。父様!」
 ふわふわな髪をした少年は、側に立つ父親に目を輝かせてそう告げた。
「そうだな」
 息子に微笑むのはリューリャ・ドラッケン(ia8037)。
 ジルべリアに名高い凄腕外交官だと、街を歩く人が聞けば緊張しただろうが幸い、今はその心配はない。
「デュオ、この都市を良く学んでおきなさい」
 静かに語ると彼は息子に歩調を合わせ、街をゆっくりと歩くのだった。


 さて、その頃リーガ城。
 応接の間。
「お姉〜!」
「アーニャ!!」
 飛びつき、抱き付いたのはさて、どちらが先であったのか?
「どのくらいぶりかしら。よく来てくれたわね」
「お姉も元気そうで何より〜」
 お互い貴族の貴婦人であることを忘れる程の抱擁を交わした後、この館の女主人であるフレイ(ia6688)は妹アーニャ・ベルマン(ia5465)をソファに薦めた。
 とはいえふわふわのソファの感触に、同行していた二人の子供達はもうぽんぽんと身を弾ませて楽しんでいるようだが。
「これ、お土産だよ」
 アーニャは美しい箱に入れられた手土産をそっと差し出す。
「あら、スコーンと紅茶。素敵ね。早速頂いていい?」
 妹の頷きを確認してフレイは机の上のベルを鳴らした。
 やがて優美な仕草のエルダーメイドが現れ、お辞儀をする。
「何か御用ですか? フレイ様」
「アーニャからお土産を貰ったの。お茶菓子と一緒にこれも出して貰えるかしら。カリーナ」
「はい。承知しました。
 それからニーナ様がお昼寝からお目覚めなのですがこちらにお連れしてもよろしいでしょうか?」
「あら、もう起きちゃった? いいわ。お願い」
「かしこまりました」
 音もなく退室したカリーナは直ぐに戻ってきて、まず、抱き上げた女の子を母親の手に渡す。
「かあさま」
 ぱっちりとした目で自分を見つめ手を伸ばす娘をぎゅっと抱き締めて
「おはよう。ニーナ」
 そっとキスをした後、フレイは
「ほら、ニーナ。アーニャおばさんよ」
 とアーニャを指し示した。
 他の者に言われたらカチンとくるかもしれない「おばさん」だがかわいい姪っ子に関しては気にならない…筈だ。多分。
「ほら、お膝に来る?」
 手を伸ばして誘うとニーナは少し迷ったように母とアーニャを見返して…、アーニャに向けて手を伸ばしてきた。アーニャはニーナをそっと抱きしめる。
「う〜〜ん! かわいい。今、いくつだっけ?」
 腕の中にすっぽりと入る小さくて柔らかい感覚を楽しみながらアーニャはニーナに頬擦りした。
「今、二歳よ。アーニャのところは?」
「六歳と四歳よ。私の宝物」
 母親が別の家の子供を抱いている事でやきもちをやきそうになっていた子供達はその一言で、ふんわり笑顔を取り戻す。
「赤ちゃん、はい。あーん」
 四歳の男の子の方などはテーブルの上に並んだ菓子を手に取り、ちぎるとニーナの口に入れようとするほどだ。
 ちょっとお兄ちゃん気分なのかもしれない。
 お姉ちゃんの方も、菓子屑で汚れた口元を拭いてあげている。
 そんなほほえましい風景を眺めながらアーニャは
「こっちでの生活はどう? グレイス義兄さんを尻に引いてカカァ天下してるんじゃないかとお父さん心配してたよ」
 姉の方を見た。
 冗談めかして言ってみたが、父が嫁いだ姉の事を心配しているのは本当である。
 今日のお土産を用意したのも父。
 実家に対して苦手意識を持っている姉に精一杯の愛情を示しているらしい。
 そんな気持ちを知ってかしらずか。
「割と上手くいっていると思うわ。義父さまや義母さまともなるべく話しているし、良くして頂いてるわ。
 最近、リーガはようやく学園としての形態が整いつつあるの。
 南部辺境の教育改革が始まって十年でしょう。最初の子供達の結果がようやく出始まったところだから、いつもグレイスと色々相談しているのよ。
 それから、今、他の街でも色々あって…。
 特に、メーメルとラスカーニアがね…、ってゴメン。自分の事ばっかりで」
 妹の問いに真面目に答えるフレイの顔は姉、というより領主夫人のそれになっている。
「ううん、いいの。私が聞いていいことなら聞かせて欲しいな」
 アーニャは手元のティーカップの中、紅色の液体とよく似た姉の瞳を交互に見ながら彼女の語る、南部辺境の今に耳を傾けるのだった。
 
●メーメルの姫領主
 南部辺境メーメルは春花劇場を中心とする芸術都市として今も昔も栄えている。
 季節ごとに更新される演目を楽しみに繰り返し劇場に通う者も多かったしジェレゾ中央の上流貴族にもお忍びで観劇に訪れるファンも少なくない。
 だが、その一部は観劇よりもメーメルの女領主が目的ではないか、という噂がまことしやかにささやかれていた。
「おお! 麗しの御方よ。どうか私と一曲…」
 ある日、冬演目の終了を記念してメーメルの城で催された夜会で、その若い貴族は赤い薔薇を一輪差し出して夜会の主役にして主催者、メーメル領主アリアズナにダンスを請うた。
「あら、それは秋演目で主人公が恋人に行った求愛ですわね。
 熱心に見て頂いて光栄ですわ」
 ニッコリとアリアズナは微笑む。
 フォトジェニックな笑顔は逆にそれ以上人を近寄らせない妙な迫力があった。
「でも、できれば次は、誰かの真似ではなくご自分のお言葉と行動で求婚して下さいませ」
 優美にお辞儀をして別の客の方に向かうアリアズナ。
 一人残された客は劇場的表現をするなら、周囲が暗くなりひゅるりと風が舞うという感じだろうか。
 硬直したように動かなくなっていた。
 その光景を見た貴族達はこう噂する。
「アリアズナ姫はご結婚なさるおつもりはないのかしら?」
「誰からのお申し込みもお受けにならないわよね?」
「でも…もう行き遅…」
「無理に結婚にはこだわっておりませんの」
 アリアズナの声が背後から響いて、紳士淑女たちはビクッと背筋を伸ばした。
「アリアズナ様…」
 完璧な外交笑顔だが目が結構怖い。うわさ好きの雀たちは役者の違いを感じて押し黙る。
「本来であるなら我が一族はヴァイツァウの乱の時、父と兄を失い断絶しておりました。
 今の南部辺境は必ずしも領主の支配を必要としておりませんし、私といたしましては私の代で貴族位を返上してメーメルを辺境伯の指示の元、合議制に移行してもいいのではないかと思っておりますのよ。
 必要であれば優秀な人材も多いですから養子を迎えるというのもありですし、お気遣い頂くのは嬉しいですが、どうぞお気になさらず…」
「あ…そうですか。それは失礼を…」
 そそくさと散っていく貴族達。
 それを見送るアリアズナ。
 彼女を慕う役者や部下達はそんな様子を痛快な気持ちで見つめていた。
 凛と迷いのない意志で立つ姫領主。
 本人はもう姫と呼ばれる歳ではないと笑うが、民は彼女の事を心から慕っていた。
「…でも、アリアズナ姫、お一人で寂しくないのかしら」
 時に、そんな心配を胸に抱いて…。

「寂しくはありませんのよ。こうして、貴方がいて下さいますから…」
 夜遅いメーメル城。
 バルコニーでカンテラを掲げながらアリアズナはそう呟いた。
 星以外聞く者がいないように見えるその場所で。
「本当に、いいんですか?」
 影に紛れバルコニーからそっと入ってくるのは龍牙・流陰(ia0556)。
 アリアズナは
「ええ」
 微笑みながら彼を部屋に招き入れる。
 その笑顔は闇に溶けてはっきりと見える者はいないが、もし社交界の雀達が見れば驚いただろう。
 花よりも美しい、それは幸せの笑みであった。
 南部辺境の友、護り手と呼ばれた流陰は長い天儀での旅を終えて南部辺境へと戻ってきていた。
 表向きは天儀からの移住者としてメーメルに住んでいるが、実際は南部辺境の情報を集め、纏める。
 そして、怪しい動きや陰謀を探り、明るみに引きずり出す役割を果たしていた。
 南部辺境の監察官と言ったところだろうか?
 開拓者として長く南部辺境に関わってきた彼だからできる人脈と情報網は南部辺境伯も全幅の信頼を置いている。
 だが、その役割の性質上、彼は表舞台に立つことができないでいたのだ。
「私は構いません。影として私達を支え、守って下さる。それが流陰さんですから…
 私の愛した…」
 アリアズナはそっと流陰に身を寄せた。
 この数年の間に彼はアリアズナ姫と親しい仲になった。
 こうして、夜中に密かにアリアズナ姫に会ったりするくらいには…。
 本来なら、アリアズナには彼女の横に立ち、貴族社会で渡り合う彼女を助ける男が必要なのではと思う事もある。
「けれど…」
「貴方が戻って来て下さった。そしてこうして側にいて下さる。
 それ以上に私が望むことは何もありません。…貴方を愛しています」
 流陰を真っ直ぐに見つめるアリアズナを、彼は強く抱きしめる。
 自分の帰国に、涙を流して喜んでくれた。
 そして、ありのままの自分とその生き方を認め愛してくれた彼女を心から愛しく思っていたのだ。
 バルコニーを照らしていたカンテラの光が消え、夜の帳が静かに周囲を、二人を包み込む。
 二人きりの時間。
 それは、彼らにとって何よりも幸せな一時であったのだった。


「メーメルのアリアズナ姫はスキャンダルなんかには負けない強い女性よ。
 グレイスと私も、できるだけ彼女を助け、支えていきたいと思うの…」


●ラスカーニアの調停者
 ラスカーニアの領主館。
 その執務室の明かりが消えたのは、深夜にも近い時間になっていた。
 ラスカーニア城主、ユリアスはいくつかの書類を纏めるとそれを持って私室へと戻って行った。
「ふう〜。今日もなんとか終わった」
 部屋を開けて寛ぐユリアスに
「お疲れさまだ。ユーリ」
 そんな、気遣うような優しい声がかけられた。
「マックスさん」
 ユーリ。
 そう呼びかけられてユリアスは、笑みをこぼし一人の娘ユリアナ、いやユーリへと戻る。
 この部屋に使用人以外で唯一入れる人物。
 マックス・ボードマン(ib5426)は片手にワイングラスを三つ。
 そしてもう片方の手にワインを持って立って。
「例の駆け落ちの件はかたが付いたのだろう。いっぱい、どうかね?」
「ありがとう。頂きます」
 ユーリの言葉に頷いたマックスはサイドテーブルにグラスを並べると、ワインを注ぎ入れその一つをユーリに渡した。
 もう一つは、自分の目の前で持つ。
「では、とりあえず結婚まで辿り着いた恋人達と、それを助けた調停者に乾杯、だ。
 お疲れ様だったね」
「ありがとうございます。…でも本当に大変なのはこれからですよ」
「久しぶりの大きな一件だったようだからね」
 ユーリはマックスの慰労に微笑みながらも現実を見つめている。
「はい、貴族の後継者の青年と、使用人の娘の恋です。家同士で決められた婚約者を振り切って南部辺境まで来ましたが、夫が妻をちゃんと支えられるか。
 妻が周囲を認めさせられるか…本当にこれからです」
「まあ、婚約者の方も理不尽な暴力をふるうのは止めてくれたし、あとは本人達次第だろう?」
「そうですね。その節はマックスさんにも本当にお世話になりました」
 静かに本当に優しくユーリはマックスに微笑みかけた。
 南部辺境が自治区として進み始めて約十年。
 辺境伯も予想していなかった形で新しい流れが生まれた。
 貴族社会で認められない恋をする恋人達が、中央と違う自由の道を歩き始めた南部辺境に新天地を求めてくるようになったのだ。
 結果、国境の街、ラスカーニアは駆け落ちの名所(?)として思わぬ名を馳せることになる。
 無論、その陰には中央に敵意を向けられない為に、駆け落ちした恋人達と家族の間を取り持つ領主にして調停者、ユリアスの力がある。
 非嫡出であるとはいえ認知された皇帝の子に間を取り持たれては恋人達を引き裂こうとする親達も上げた拳を振り下ろせなくなり相談のテーブルにつくことになった。
 力で解決しようとする者もいないではなかったが、ユリアスの守護者によってそれは阻まれることとなり、結局不利な立場になると気付いてからは、多くの事例が話し合いで解決できるようになってきていた。
 今や、男装の麗人ユリアス、ユリアナは苦しい恋に悩む若い恋人達にとって憧れと尊敬を送られる存在になっていた。
 だが、当のユーリに恋愛と恋人の影は無い。
 こうして側にいるマックスも、今のところは本当に側にいるだけだ。
 それは互いの胸に、互いに消えない人物がいるからだろうと、マックスは解っていた。
 三つ目のグラスを共に囲みたかった…彼。
「あっという間の十年だったが、
 やれるだけのことはやってきたつもりだ。
 本来は許されるはずも無かったろう、新しい価値観やルールが、まずは南部に受け入れられ、そしてそれらは緩やかに帝国全土を変えてゆく。
 生き延び、戦い続けたユリアナが手にした勝利と言って良いとは思わんかね?」
「そうですね。でも…できるなら、この勝利はあの人と共に味わいたかった。
 あの人の目指す勝利は…今とは違ったものであったでしょうけれど…」
 寂しげに笑うユリアナにマックスは、肩にぽんと手をやるのが精いっぱいであった。
(十年経った今も過去に縛られている…。私も、ユリアナもな)
 ワイングラスを見ながらマックスは目を閉じた。

 友を救えなかったこと、
 ラスリールの乱を招くに至る失態
 そしてそれらを防げたとして、
 今より良い未来が得られた筈も無いと理屈では判りつつ納得したくなかったのだ。

 マックスはユリアナを見る。
 彼にとってユリアナは大切な女性ではある。
 彼女も貴族の一員である以上、いつか結婚し後継者を求められる事になるだろう。
「気にしなくていいですよ。私はこの家にも自分の地位にもあんまりこだわりは無いですから」
 ユリアナはそう言って笑っていた。
 彼女が言うほど簡単な事ではないだろうが、貴族階級や家意識の薄くなってきた南部辺境。
 領主が独身であり続ける事も可能ではあるかもしれない。
(何か過去の戒めを解く切っ掛けがあれば…、な)
 マックスは目を閉じる。
 贖罪の念が自分を、互いを縛っている限り、ユリアナの伴侶になるという選択肢には至らないし、彼女自身もマックスに甘える事はしないだろう。
 もしかしたらずっとこのままかもしれないと思わなくもない。
 でも…彼はワイングラスを掲げる。死者に語りかけるように
(ずっと共にいるさ。お互いの傷と想いと、お前を知る者として…な)
 死者は答えない。
 ただワイングラスに満たされた液体は、風もない部屋の中で静かに揺れていた。

「南部辺境の女性達は皆、家とか後継とかに縛られない考え方をしているみたいなの。
 彼女達の自由を、思いを護りたいと思っているわ…」

●フェルアナの空
「まったくもう! 何を考えているのよ!!」
 フェルアナ領主、ロレイスは自分の娘と大して変わらない歳の女性に怒鳴りつけられて身を竦ませていた。
 拳に力を込めて、今にも殴り飛ばさんばかりの妻をまあ、まあとニクス・ソル(ib0444)が宥めていた。
 と、いっても妻、ユリア・ソル(ia9996)はまったく宥められていない。
 結局、がつんと、一発容赦のないげんこつが飛んだ。
 甘んじてそれを受けるロレイス卿に、ふんと鼻を鳴らしユリアは腕を組む。
「自分の望みを息子に押し付けて失敗したのを、たかが10年で忘れるような男には当然!」
 ルーウィンは私が開拓者として仕込むわ。勿論、本当に開拓者になりたいのならだけど。
 後継者は別に探しなさい。今まで支えてくれた人たちがいるでしょう?
 行くわよ。アルバ。エステル」
 言いたいことだけ言って、執務室を出て行ってしまった妻に小さく肩を竦めハンカチを差し出したニクスは
「ロレイス卿」
 老人を静かに見つめていた。
 この十年。
 予想以上に努力して南部辺境、自治、学園計画の手助けをしてくれた彼の唐突な提案にニクス自身も懐疑的ではあったのだ。
「どうして、急にそのような事を言い出されたのですか?」
 ニクスの問いに大きくため息をついたロレイス卿は
「実はな…」
 と理由を話し始めたのだった。

 そしてここはリーガの下町。
「ハハハ、それは傑作だったわね〜。私も見てみたかったなあ〜」
 シーツをパンパンと広げて星ながら彼女はお腹を抱えて笑っていた。
「笑い事じゃないと思いますよ。お母さん。おじい様だって色々、考えて困っての事だったんでしょうし…」
 横で籠を持つ少年は生真面目な顔で母親を見る。
 諌める様なその態度に
「子供が生意気言ってるんじゃないの!」
 ピンと彼女は少年の額をおでこを弾いた。
「ティアラさん。向こう終わりましたよ。あと何かやることはありますか?」
「ありがとう。 瑠々那。じゃあ、こっちを手伝って。ほらほら、子供は遊んできなさい。
 アルバ、エステル。ルーウィンが遊んでくれるって」
 ティアラと呼ばれた母親は、手伝いに来てくれた人妖を手招きすると我が子を客の足元で退屈そうにする子供達の方へと押し出した。
「ホント? ルーウィンお兄ちゃん。あそぼ」「鬼ごっこしよう? あと戦いごっこ!」
「解った、解ったから引っ張らないで!」
 元気でやんちゃな子供達に引っ張られて遠ざかっていくルーウィンを手を振って見送るティアラは
「ホント。あの子も私に似ずいい子に育ってくれたわ」 
 嬉しそうな母親の笑顔を浮かべている。
「真面目な所は父親譲りね。志体もあるんでしょ?」
 ユリアの問いにティアラはええと頷く。
「ええ、そうみたい。本人はまだ何になりたいか決めてないみたいだけど、開拓者になってくれたらいいな、って思うわ」
「皮肉なものよね。欲しい欲しいと思う人の所には表れないで、必要のない人の所に出るんだから」
「それは、あの子にきっと必要だから授けられたんだと思うわ。
 ロレイス卿もそれを解ってくれればいいのに」
「ハハ…そうなんだけど、あんまり父様を責めないであげて」
 怒りに頬を膨らませるユリア。でもティアラは以外にも父親を庇っていた。
「あれで南部辺境や学園の事を大事に思ってるから。
 この間ちょっと大きな病気もしたし、やっと復興して、順調に回り始めたフェルアナや学園を次代にちゃんと引き継げるようにって願ってるんだと思うのよ」
「ロレイス卿もそう言ってたな」
「ニクス…」
 ユリアは戦馬の手綱を引いてやってきた夫を見る。
 自分の絶対の味方だと思っていた彼はロレイス卿の弁護についたのだ。
「南部辺境の未来を信頼できるものに託したい。だから、我が孫にってな」
「ニクス…」
 夫と友、両方を味方にされて分が悪いと思ったのだろう。
「解ったわ。彼も少しは変わってきているわよね。それは認めるし、話も聞くわ」
 ユリアは小さく肩を竦めて見せた。
「でも、最終的に決めるのはルーウィンよ。それは譲らないから」
「当然。本気でお父様がルーウィンの意思に反して無理強いするなら、私もひっぱたくから」
 二人の母親は顔を見合わせると、楽しそうに笑った。
 そして
「ニクス! ルーウィンがあの子達を見ている間に、少し遊びましょう! 気晴らししなくっちゃ」
 夫の手を引いたのだった。
「いいわよ。子供達は見ていてあげるから行ってらっしゃい!」
 ティアラの言葉に
「ああ…空の散歩としゃれ込もうか。行くぞ、ユリア。来い。アンネローゼ」
 戦馬の手綱をとり、気が付けば二人は空に飛びあがっていた。
「あ〜! お父様もお母様もずるい!!」
 ジタバタとだだをこねるように両手を動かすアルバ。
 妹のエステルも少し寂しそうに空を見上げている。
「直ぐに戻ってくるわよ。さあ、おやつにしましょう。瑠々那。あの人と診察交代してきて貰えるかしら」
「りょーかい!」
 子供達の背中を手で押しながら、ティアラは高い空を舞う自由な開拓者を眩しそうに見つめていた。

 四月とはいえ、上空の風は少し冷たくユリアの火照った頬を冷やしてくれる。
「風が、気持ちいいわね。
 夫婦水入らずで空の散歩♪ 幸せだわ」
「ああ、そうだな」
 二人は身を寄せ合いながら眼下の風景を見つめた。
 春が遅いジルべリア。南部辺境。
 しかし、大地は既に緑色の息吹をのぞかせ、大地は白、薄紅色、黄色と色とりどりに染まってきている。
 一番美しい春と、その先の夏を予感させる輝かしさだ。
「あの時の荒れ果てた様子が幻みたいに思えるわね。
 良い町になったわ。
 …ラスリールも悔しがってるでしょうね」
「そうだな…」
 ユリアの言葉にニクスも思いを噛みしめる。
 この地の歴史にその名を残そうとした男。
 けれど今を生きる人々の生活の前にはそんな思いも、名もいつしか埋もれていくものだ。
「人々の笑顔、未来。それが俺達が協力し、いま引き継いでいるものだ」
「ええ。私達はこれからもそれを護っていくのよ」
 二人は手を重ね合わせた。
 互いに伝わる温度が、お互いの気持ちも重ねてくれる。
 今の幸せ。
 それを守る為に、これからも共に行くと二人は言葉にならない思いで誓うのだった。
「ねえ、旦那様。フェルアナに降りて。新しい服が欲しいの。
 ジルべリアで学んだ天儀のデザイナーが新しい店を出しているのよ」
「それは構わないが…、アルバが暴れてるんじゃないか? 今頃」
「じゃあ、二人にもお土産を買っていきましょう。
 あとね、どうしても行きたいお店があるの」
「? どこだ?」
 こっそりと耳打ちした妻の言葉にニクスは顔を赤くする。
「夫婦にも情熱が必要よ♪ 素敵なのを選んで下さるわよね。旦那様?」
 ニッコリとほほ笑むユリア。この笑顔には叶わないとニクスは諦めて馬首を下げた。
 南部辺境、フェルアナ。
 彼らが守り、受け継ぐ大地へと…。


「ロレイス卿もお歳なんだけどでもまだまだ元気だから、もう少し頑張って欲しいと思うのよ。
 そうすれば次の世代も育ってくれると思うから…」

●南部辺境の未来
 研究室、と呼ぶには小さな講師用の部屋で
「ふう〜。やっぱりたくさんの人の前で話すのは疲れるわ〜」
 椅子にその身を投げ出して芦屋 璃凛(ia0303)は大きなため息をついた。
 滅多に訪れない客員講師だからだろうか。
 それとも演題が地上世界という興味深いテーマだから、だろうか?
 講義のたびにかなりの人が入ってくれることを璃凛は嬉しく感じていた。
 だが、同時に講義は地上探索の資金を得るためなので、深く教えることができない。
「うちは、よそ者だからどこか入り込めへんのや。それでええ、って辺境伯は言ってくれてるけど、いつまでも甘えるのもなあ」
 璃凛は目と頭を押さえながら思索にふけるのだった。
「センセイ、お客様、ですよ」
「…エクレール。お客様って誰や」
 控えめなノックと共に少女が顔を出す。
 ジルベリアでの協力者の一人、名づけ子のエクレールが返答するより早く
「私です」
 静かで深い声が響いてきた。
「辺境伯!」
「そのままでいいですよ。お帰りなさい。どうですか? 地上世界は? お話を聞かせて貰えるでしょうか?」
 身体を椅子から起こした璃凛は流石に、そのままの言葉に甘えはしなかったが
「はい、勿論です。色々、興味深い発見がありました。例えば…」
 と、旅に出た時に見聞きしたことを話し始めたのだ。 
 講師料という形で旅費の援助をしてくれるスポンサーでもある辺境伯には情報を伝える義務があると思ったのだ。
「成程。楽しい話をありがとうございます。
 また次の旅から戻られたら、話を聞かせて下さい。その知識は私のみならず、学園で学ぶ多くの生徒たちに意味のあるものになるでしょう」
「こちらこそ…。帰るたび迎え入れて下さってありがとうございます」
 一通りの話を終えた後、璃凛は立ち上がる辺境伯を呼び止め、頭を下げた。
「想像でしか埋められへんですけど、この喧噪だけでどれだけ栄えたか、解ります」
 その言葉を受けてグレイスは静かに微笑んだ。
「いいえ。南部辺境の今は、皆さんの協力と、一人一人の努力があってこその繁栄です。
 貴女もその一翼であり、ここは貴女の故郷の一つ。そう思って貰えると嬉しいですね」
「故郷…か」
 辺境伯を見送って璃凛は目を閉じた。
 考えようと思ったのだ。
 エクレールや教え子達。そして辺境伯。
 自分を受け入れてくれる彼らと、彼らの生きるこの大地の為に、何ができるかを…。

「おや、リューリャさん。お久しぶりです」
「…辺境伯。邪魔している…」
 学園都市を見て回っていたリューリャは、現れた辺境伯に小さく肩を竦めて、それから挨拶をした。
 別に後ろめたいことは何もないが、文官・武官兼務の外交官である自分が、他所の領地を見て回っているのは少々バツが悪くもある。
 無論、目の前の人物がそんなことを気にする男ではないのは百も承知だが。
「ご活躍は聞いています。希儀の開発も順調だそうですね…随分、貫録も出られたのは?」
「それは髭を生やしたからだろう? っていうよりあんたの変わらなさの方が問題じゃないか?」
「この童顔というかは本当にいかんともしがたく…」
「父上!!」
 雑談をしていた二人に駆け寄ってくる子供がいて、グレイスは瞬きした。
「父上。あっちの泉に鴨とかがいる。餌をあげてきていい?」
「落ちないように気をつけなさい」
「はーい!」
「彼は、リューリャさんの?」
 楽し気で元気な子供の背中を見ながらグレイスはリューリャに問いかける。
「ああ、息子だ。今日は共に学園都市となってる南部の観光と言う名の視察。
 フェルアナ、リーガと見て回ったところだ。ま、傍から見ていれば息子と遊んでいるようにしか見えないかもしれないけどね」
「そうですか…」
 グレイスは小さく笑うと
「いかがですか? 貴方の目から見て今の南部辺境は?」
 リューリャにそう問うてきた。
 グレイスにとってリューリャは南部辺境の守護者であり、友であり、同時に一番厳しい目で南部辺境を見る存在でもあったからだ。
 グレイスの思想に真っ向から危惧を伝え、反対もし続けた。
 だからこそ、彼の目で見た南部辺境の評価には意味がある。
 彼の質問の意図を正確に理解した上で
「…まあ、悪くはないさ」
 リューリャはそう答えた。
 脳裏に浮かぶのは息子との旅行の中見てきた活気のある街。
 人々の笑顔。
「何気ない日常、民を見ればその生活が良いか悪いかは自ずから見えてくる。
 俺が、そうじゃないんじゃないか、と思っても、民が笑って生活できていれば是だよ」
「…ありがとうございます。
 もし良ければこれからも、色々な形でご意見を頂ければ幸いです」
「俺も色々忙しいから…。ま、時間があったら、な」
 リューリャは小さく笑う。
 その雰囲気は尊敬して止まない先帝にどこか似ているような気がする。
 これは髭のせいばかり、ではないだろう。
「ええ、よろしくお願いします」
 グレイスは静かに笑ってお辞儀をしたのだった。


「そっか、南部辺境も色々大変そうだね〜」
 飲み干したカップをテーブルに置いたアーニャはフレイが話してくれた南部辺境の現状に頷いてみせた。
「人が生きていく限り、何かしらはあるものよ。でも、なんとかやっていると思うわ。
 そうそう、この間天儀に戻ったグレイスの甥っ子がね、新しいデザインのドレスを発表したのよ。
 今、婿入りした貸衣装屋の目玉商品になってるんですって。今度、アーニャにも見せてあげたいわ」
 自信に満ちた笑顔を見せる姉を見ながら
「私難しい話は苦手だけどね。南部辺境が順調そうで何より。
 でも何かお手伝いしたいな」
 アーニャはそっとカップを置いた。
「…アヤカシの様子とかはどう? 退治の手とか、いらない?」
「街道沿いとか森の奥で、たまに被害報告があるわ。でも…いいの?」
 伺う様に問うフレイにアーニャは、勿論、と頷いた。
「あ、その時は彼には内緒だけどね。たまには弓の腕を振るわないと鈍るもん。
 一緒に、ね」
「アーニャ!」
 軽く片目を閉じて見せるアーニャをフレイは愛しげに見つめ、そして
「そうね。…そうしましょ。アーニャ。大好きよ」
 強く抱き締めた。
 どうやら抱き付き癖は領主夫人になっても治っていないようだ。
「お姉…」
 大好きな姉のぬくもりをアーニャも身体と心で感じる。
 いろいろな事が変わっていく。
 けれど、変わらない事も、あるのだ、と…。
「あ、でもアヤカシ退治は、安定期に入ってからでもいい?」
「安定期…って、お姉!?」
 驚きに目を見開く妹をフレイは悪戯っぽい笑みで見つめていた。

「二人目…?ですか」
 視察から戻ってきたグレイスに、フレイが妊娠の報告をしたのはその日の夜の事であった。
「ええ、そう。解ったばかりなの。今、三か月くらいかしら。
 予定は今年の冬ですって」
「そうですか…ありがとう!」
 優しく、膝の上で遊ぶ娘ごと自分を抱き寄せるグレイスをフレイは腕の中から見つめた。
「それで、名前はどうする? ニーナの名前は私が決めたから、今度は貴方が決めて…」
 妻の言葉にグレイスは少し考える仕草をする。
「男か女かも解らないので、もう少し考えますが…男であれば…ヴィスナーとつけてもいいでしょうか?」
「ヴィスナー?」
「ええ。兄の名前でもあるのですが、古い言葉で春を意味します。
 南部辺境に訪れた幸せが、春が続くように…と」
「ステキね」
 フレイはそう言うと目を閉じる。
 辺境を訪れてくれた妹が、帰り際、問うた言葉を思い出したのだ。

『お姉? 今は、どう?』

 返答に迷う必要は無かった。
 ニーナを腕に抱き、グレイスを見つめフレイは微笑む。
「グレイス。私は今、幸せよ。愛しているわ」
「私もですよ…」

(これからもずっと支えあっていくわ。
 この大地で…愛する者達と共に…)

 心の中の誓いは言葉に出して紡がれる事は無かったけれども、何よりも確かなものとしてフレイの中に輝き続けていく。
 ずっと…。

 
 かくして、ジルべリア、南部辺境の物語はここに一応の終わりを告げる。
 人々が紡ぐ未来への物語は終わることなく続いていくが、語られるそれはひとまずの幕だ。
 だから、最後は使い古された。けれど優しい言葉で閉じよう。
 祈りと、感謝と、そして希望を込めて…。

 悩んだり、考えたり、人が生きている限り、物語は続き、いろいろあるけれど…
 それでも最後は

「いつまでも、みんな、幸せに暮らしました」

 と。