【水庭】捜索 表【朱雀】
マスター名：夢村円
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| ■オープニング本文 【これは朱雀寮 三年生 合格者優先シナリオです】 その日、朱雀寮の恒例授業の日。講義室。 いつもの通り、朱雀寮生達は部屋に集められていた。 「あれっ？」 部屋に誰かが入ってくるたび、そんな声が上がる。 三年生、二年生、一年予備生全員がやがて同じ部屋の中に集まった時、寮生達は顔を見合わせ、ざわめく。 「今月って合同授業の日、だったっけ？？」 そう小首を傾げた三年生に、そして同じ感想を持ったであろう他の寮生達に 「違います」 やがていくつかの資料と大きな地図を抱え、現れた朱雀寮長 各務 紫郎は静かに告げた。 「ただ、とりあえずは話を聞いて下さい。皆さんを同時に集めた理由は後ほど話します」 顔を見合わせた寮生達は口をつぐみ、静寂を確認して後、彼は手に持っていた一番大きな地図を広げ黒板に貼りだした。 「…これは…」 寮生達は声を上げる。 それは、島の地図であった。 「ご存知の方も多いですね。冥越のさらに先に発見された儀です。 不思議な事に、一切の瘴気の汚染が無く、アヤカシも存在しない。 まるで箱庭のように守られた場所。 今回の課題は、三年生、二年生共にこの儀の探索です。 大まかな調査は既に先行した開拓者や調査団の手が入っています。 その報告を踏まえ、今回皆さんに調査して欲しい場所は、ここです」 紫郎は寮生達を見回してから指示棒で真ん中に近い場所を指し示した。 「西島中央北、密林の中に残されていた廃墟です。 この廃墟は開拓者によって発見された場所ですが、後に入った調査によって、何らかの研究施設ではないか？ という指摘がなされているそうです。 それで陰陽寮に先鞭をつける意味で調査が依頼されてきました。 この廃墟に向かい、調査を行うのが今回の課題です」 寮長は、そこまで言って後、寮生達を見た。 「今回は２班編成で同じ遺跡に向かいます。三年生班と、二年生、一年生班。 但し、出発の後、偶発的なものを除く両班の接触は禁止します。 情報交換も島にいる間は厳禁です。遺跡に向かうコースも別のルートを辿って貰います」 「ええっ？」 驚きの声を上げる寮生達に寮長は続ける。 「今回の遺跡は我々の今まで見た事の無い、未知のものであると推察されます。 それは既に調査が入っている水中遊歩道などを見ても明らかです。 水の中に通路を作るなど、現在の我々の知識、技術などでは到底再現不可能。 つまり、過去には我々が想像もつかないような高度な文明があったということなのでしょう。 ですので、今回はまったく別方向から同じ場所の調査を行うことで、より正確、かつ広い情報を集めようというのが目的なのです。 人手は必要でしょうから、協力者を要請し同行して貰う事は問題ありません。 ただし、報告はそれぞれの班が責任を持って行う事。 以上」 そう告げると寮長はそれぞれの学年主席に経路を示した地図と、資料を渡して去って行った。 三年生達には開拓者の上陸地点から、湖を東に迂回して北側から遺跡に向かう経路が指示されている。 アヤカシがほぼいないとされる島ではあるが、徒歩ではかなり時間がかかってしまうだろう。 だが島の調査も兼ねてのことだろうから、指定された経路は通って行く必要がある。 「遺跡…、失われた高度な文明の箱庭…」 寮生達は今、失われた過去に向かって手を伸ばそうとしていた。 |
■参加者一覧
芦屋 璃凛（ia0303）19歳・女・陰 
青嵐（ia0508）20歳・男・陰 
蒼詠（ia0827）16歳・男・陰 
サラターシャ（ib0373）24歳・女・陰 
雅楽川 陽向（ib3352）15歳・女・陰 
カミール リリス（ib7039）17歳・女・陰 
クリスティ・ボツリナム（ic0156）12歳・女・陰 |
| ■リプレイ本文 ●探す者 朱雀寮生の新儀捜索課題、出発の日。 「わあっ！ ちょ、ちょっと待って！！ 乗ります。乗るんやってば！！」 飛び込んだ雅楽川 陽向（ib3352）がふうと息を吐き出すと同時、飛空艇はふわりと静かに空に舞い上がった。 「ふう〜、間に合った。ごめんな〜。うち勘違いしてもうて…ってええっ！！」 全力疾走で走った息を整えた陽向は顔を上げた瞬間、その上気した頬を一瞬で凍りつかせた。 「せ、先輩？ …あれ、皆がおらん。なんで、姿も形も無いんや？ 皆、どこ行ったん？」 「こちらは三年生用の飛空艇ですよ。二年生用の飛空艇はあっち…どうしました？」 少し先を行く飛空艇を指差し心配そうに問いかける蒼詠（ia0827）の言葉にじわり、と陽向は目元を滲ませた。 「うち…、時間に遅れる、思うて…慌てて…間違えて…、ど、どないしよ〜〜〜！！！」 がくりと膝を落し、泣きじゃくる陽向に三年生達は顔を見合わせた。 正直、かける言葉が見つからない。 今回は学年別課題、しかも珍しく接触厳禁の指示が下っている新大陸、未知の場所の調査なのだ。 飛空艇は既に飛び立ってしまった。後戻りはできないし、戻っても合流は難しいだろう。 しょんぼりと尻尾を下げる陽向に蒼詠はそっと声をかけた。 「…気を落さないで下さい。陽向さん。起きてしまったことは仕方ありません」 ぐすんと、鼻を鳴らした陽向は 「そう、やね。泣いてても何にもならへん。何にもでけへんのや」 小さく頷くと立ち上がり、頭を下げた。 「隅っこで、おとなしゅうにしとるから、一緒につれて行ってください」 蒼詠が後ろを振り向く。 主席であるサラターシャ（ib0373）が小さく頷いて見せた。 横に立つ青嵐（ia0508）は無言で目を伏せる。 蒼詠はそれを肯定ととって陽向に手を差し伸べた。 「アヤカシや瘴気が未確認の新しい儀・・・・・・どんな所なのでしょうか。陽向さんも興味がありますよね？」 問いかける蒼詠に彼女はこくりと頷いた。 「だから、一緒に行きましょう」 そう、笑いかけて。 その後、島に到着した彼等、三年寮生と助っ人達は到着地点から湖を迂回し北側から回り込み遺跡に辿りついた。 門のような石造りの入口を潜り庭に入る。 むせ返るように生い茂る草木の中、堅い石で舗装された地面だけが寮生達を導く様に道を作っていた。 そこを行くこと暫し…。 「これは…」 目の前に現れた建物に寮生達は言葉を失った。 強く、大きくそびえ立つ石造りの遺跡が、そこにあったのである。 「…似とる…」 独り言のように呟いた璃凛の言葉にカミール リリス（ib7039）はふと、横を見る。 「あ…、別に気にせんといて。ただ、以前見た神代の建物によく似てるなあ思って。 以前から朝廷における秘中の秘とされていた事の一つに過去を『見る』ことができる「夢語り部の部屋」があった。 そこでは自分達が世界の登場人物となり歴史の追体験をすることができたという。 その中で一際異質な部屋があったことを芦屋 璃凛（ia0303）は覚えていた。 神代を遥かに超える数千年前の世界。 砂と絶望に覆われた世界で彼女は不思議な建物を見たのだ。 白い、大理石にも似た不思議な素材でできた横に巨大な建造物。 長い年月を経って土や木々に埋もれ、見る影もないが…この建物も確かに同じ材質でできているようだ。 「なあ？ クリスティ？」 「はい。ですが…」 慌てて手を振って見せた璃凛に声をかけられ、助っ人としてやってきたクリスティ・ボツリナム（ic0156）は頷きながらも考えていた。 「ただ、あの建造物に比べるとこのものは、我々になじみのある形のような気がします。どこかレトロで…人が住むことを前提としたような。 とはいえこの地で発見されたからくりなどの証言からしてみても、研究施設であるということに間違いはないと思うのですが…」 「…研究施設…ですか」 今まで沈黙を守っていた青嵐は吐き捨てる様に言う。 この儀に入った時から感じていた感覚と一緒に。 「とりあえず中に入って調べてみましょう。でないと何も解りません」 「遺跡探検隊、調査開始やな♪」 先輩の言葉に頷き合い、彼らは遺跡に足を踏み入れる。 未知の世界に踏み込んだ迷い子の気分で…。 ●失われた何か 遺跡は一つの広い平屋では無く、いくつもの建物が巨大な敷地内に点在するような形で存在していた。 それぞれに距離もあり、石の舗装が道を作っていなければ移動にも難儀しただろうと思う。 道があっても大変ではあるのだが。 「広いですね…。移動の手段が残されていないのでしょうか？」 サラターシャはそう言って暫くあちらこちらを探していたが、見つからなかった。 あったとしても何百年、もしくは何千年かもしれない時間の経過を経て使用することは難しかったろうが…。 『大丈夫？ 無理しちゃダメだよ』 気遣うように声をかけるからくりレオに 「ありがとう」 と礼を言ってサラターシャは自分の足で進んで行く。 そして地道な努力の結果、いくつかの部屋を発見していた。 ここもその一つだ。窓一つない部屋に並ぶいくつもの棚。 鉄にどこか似た冷たい金属でできているが、鉄よりも風化が少なくまだ形を保っている。 その殆どが空で、砂のようなものが棚の中にも、外にも溢れていた。 リリスはそう呟いて、さらさらとした砂を手の中で零す。 どこか黒みがかったそれは白とも茶色とも言えない不思議な色をしていた。 「…これは、元は本だったのではないでしょうかね？」 膝をつきサラターシャも同じように砂に触れる。 棚の中に残っていたそれよりも、こちらはさらに黒い。炭化しているのかもしれない。 「おそらく、そうでしょう。書庫…資料庫だったのだと思います。 ここにあった文書などは…おそらく焼き捨てられたか…経年劣化で崩れ落ちてしまったのでしょう…。 残念です」 そう言うサラターシャは心底寂しそうであった。 ここに来るまで彼女は資料の捜索に力を入れていたが、文献と言えるものは何一つ残っていなかったのだ。見つかるのは転がっている宝珠の欠片。砂と化した書物の残骸。 文字は僅かに部屋の入り口や壁に刻まれただけだった。 「文字が残っていたとしても、読めなかったかもしれませんがね。 …今伝えられている文字などとはあまりにもかけ離れています」 それらを書きとめてきた青嵐は肩を竦めて見せた。 「加えて殆どの部屋でここまで徹底的に行うか、と言う程の破壊が行われています。 さっきの研究室らしきものを見たでしょう？ あれは室内で爆発か、それに準じた行為があったとしか思えませんよ」 思い出す。真っ二つに折られた分厚い金属製の机、熱でねじ曲がり溶けたガラスの粒。粉々に砕けた宝珠の欠片。 「ここを破壊した人物は、よほど何かが許せず、残したくなかったとみえる…。一体、何を研究していたのか…」 そう青嵐が一人ごちた時。 「皆さん！」 蒼詠が声を上げた。全員が集まったのを見て彼は指で壁の一角を指し示す。 明らかに色の違う壁が、確かにそこにはあった。 「隠し扉…でしょうか？」 「この奥に何かあるのかもしれません。でも重い上に…ピッタリと閉まっていてびくとも…」 「どこかに隙間は…、あ、あった！ カーム！」 周囲を調べていたリリスは小さな隙間を見つけ、そこから相棒と一緒に小さな人魂を入れた。 「翡翠も手伝って」 光の無い真っ暗闇。だが三体の人魂は周囲を調べるうち、ふと、壁に突起状の何かを見つけた。 「押してみましょう。せーのでお願いします。せーの！」 人魂で体当たりをする。 するとカチリ、何かが動いた音がした。 小さな音が寮生達の耳にも届く。 「あ、扉、開くみたいです」 仲間達と力を合わせて重い扉を開いた彼らは 「な、何なんでしょう？ ここは…」 光の無い真の闇の中、一面に散らばる不思議な水晶片が散らばる部屋を見るのだった。 ●残されたモノ 「この儀は世界派と呼ばれるか人達の研究施設であったそうです。最後の生き残りである二人が全てを破壊して後、天儀へ渡ったと。 そしてそれは、天儀始祖帝と姉、慕容であるとこの地に残っていたからくりが証言したと以前、報告書を読みました」 夕刻、かれらは遺跡の一角で炎を囲んでいた。 小さな部屋がいくつもあるその棟は、かつての住人の住居部分ではないかと寮生達は推測する。 美しい石造りの模様が壁にモザイクのように嵌めこまれており、大きく開かれた壁の四角い穴はおそらく窓だったのだろうと思う。 家具は何も残ってはいなかったが、一角に竃のようなものがあり、外の自然など極力影響が出ないように寮生達はそこを調査の拠点とすることにしたのだった。 「大丈夫？ プルケッタ？」 ブルケッタは今日はここの掃除と調査にとてもよく働いてくれた。 瘴気の無いこの地で辛いだろうに気丈に働く相棒の人妖少女を気遣い声をかけると、クリスティは璃凛が作ったブイヤベースを静かに啜った。 夏にはバカンスに使われた温暖で良い気候の島だが夕方は少し冷え込む。 温かい汁物はありがたかった。 「ここでは、何かが研究されていた。 『破壊して、天儀に渡った』のならそれを為した始祖帝と慕容もそこに最初は属していた筈です。 ですが、それを嫌い離脱した。全てを破壊しつくして…。それほどまでに嫌った研究とは一体なんだったのか…」 青嵐の考えに繋げるようにサラターシャも自分の考えをゆっくりと紡いでいく。 「私は、アヤカシは…もしかしたら人が作り出した兵器なのかと思う事もあります。 あまりに人に特化した天敵だからです。もしかしたら、アヤカシを研究していたのでしょうか？」 「そうでは無いような気がしますね。 ここはあまりに無垢、あまりに整然とし過ぎて「気持ち悪い」場です。 例えるなら、何かを覆い隠すような…瘴気を、拒絶しているような。アヤカシも瘴気も拒絶して、もしかしたら何かを作ろうとしていたのでしょうか…」 「…あのな…先輩、ちょっと、ええやろか？」 一日、調査を手伝いながらも本当に大人しくしていた陽向が伺う様に顔を上げた。 「何でしょう？ 何か気付いたことがあるのですか？」 蒼詠が問いかけると陽向は小さな、本当に小さなモノを指先で摘まみ差し出した。 「これは…毛？ 何か、動物の毛ですか？」 うん、と頷くと陽向は言葉を選びながら話し始める。 「うちな、うちら、獣人の祖先についての資料が残っとらんかなって思ってたん。 神威人のご先祖様は、月の国から船に乗って、天儀に来たらしいんよ。 『月の国「あるすてら」に死の影が忍びよった時にケモノ、人、精霊は生き残る為に月を捨てて旅に出た』ちゅう、伝承やな。 …この島には、死の影は微塵もあらへん。人のおった痕跡はあるのに。 せやったら、伝承の船が、この島ちゅうか、「この儀そのもの」の可能性もあるやん。 逆に、船の一つが、旅の末に辿りついた場所なんかもしれん。 うちら獣人は、人間さんやエルフさんや修羅さんと違って、めっちゃ種類が多い。 そんでもってここには来るまでにたくさんの動物とかがおった。 人も、住んどったみたいや。もしかしたらあの部屋でなんか研究しとった、なんてことはないんやろか？」 「…それは、生命に纏わる実験がなされていた…と？」 陽向には答えられなかった。 陽向自身、はっきりと解らない事であったからだ。 シン、と空気が静まり返る。 その時…今まで沈黙を守っていた璃凛が 「あ、あの！！」 勇気を振り絞るように仲間達に声をかけた。彼女は今日一日仲間達と別行動をとり、彼女の相棒からくり遠雷と共に別の方を調査していたのだ。 「何です？」 静かに問う青嵐に璃凛は服の隠しから小さなものを差し出して渡す。 「これ、調べてた時に拾ったん！ そしたら、訳の分からない言葉が聞こえてきて…」 「言葉？ ちょっと貸して下さい？」 受け取った青嵐はそれを見つめる。不思議な色合いの宝珠であった。 手のひらサイズであちらこちらが傷ついている。 周囲を黒い金属が取り囲み、三つの突起のようなものがついている。 「一番上、押してみて下さい」 言われるままに一番上の突起を押してみる。 すると宝珠が鈍く光り音を、紡ぎ始めたのだ。 『精…力、導入実験――「火炎」を二…追封。被検体二十…号は発火の…消失。追…複製の術式を行っておくこと… 実験継続…次の課題は…生…の…』 ジリジリ…ザワザワという雑音の後、ぷつりと音が途切れ、聞こえたのはそれだけだった。 内容は正直理解できない言葉の羅列であった。 だが…言葉ではなく、言葉を再生したモノに 「この宝珠は…記録装置だったのですか？」 サラターシャは目を見開く。徹底的な破壊により文献や記録の多くは失われていたが、宝珠ならいくつか形を留めているものがあった。 なら、他にも残された記録があるかも！」 「明日は、それを探してみましょう！」 「まずはあの隠し部屋と…、資料庫をもう一度調べ直して…それから…」 寮生達の間に一度広がった昏い雰囲気が消え去り、活気が蘇った。 「うちも、いっぱいお手伝いするな！」 陽向もそう言って拳を上げかけ…そして止めた。 近付く気配に気づいて振り返り…肩を震わせる。 「先輩方、寮長、失礼します」 暗闇の中、歩み寄って来た影はそう言うと陽向に向けて手を指し伸ばした。 「陽向、迎えにきたぞ…。みんなが待ってる場所へ行こう」 と。 ●箱庭の闇 数日後、朱雀寮に戻った三年生達は寮長の元で報告を行った。 「調査の結果、言葉を記録した宝珠をいくつか回収しました。 そのいずれも、内容は不鮮明ですが…あの地で何か実験が行われていたのは確かなようです」 「箱庭にはあらゆる環境とあらゆる種が揃っていました。植物、動物、魚…全ての命の始まり…、かつてかの地で行われた、始祖帝が嫌い破壊した何かについてはこれからも調査を重ねる必要があります。 ですが…どんな技術も、こうだったら良いのにという思いから、試行錯誤した結果、実現させるもの。残された欠片から今後も想像を働かせ想像してみたいと思います」 報告と主席の言葉に満足したように寮長は頷いた。 合格を告げられた寮生達は笑顔で退室する。 陽向の件は心配ではあるが、仲間が迎えに来たのだ。大丈夫だろう。 「箱庭…興味は尽きませんね。また行く機会があればいいのですが…」 微笑む蒼詠。 彼の手には集めた天儀では見ない植物の標本がある。 これは今後に活用していいとのことだった。 だが青嵐は （もし我々の『血統による志体の発現』が偶然の、精霊の加護でも何でもなく、此処で「仕組まれたもの」だとしたら…？ いえ、想像に過ぎません。 ですが、そうだとしたら正に「絶望」ですね） 心の中でそう呟き、今は遠く、見えない儀を睨むように見つめていた。 |
