【朱雀】未来に繋がるもの
マスター名：夢村円
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| ■オープニング本文 【これは陰陽寮朱雀、三年生優先シナリオです】 新年度と同時に陰陽寮の新学期が始まって、気が付けば半年が経過していた。 今年度の卒業式はよほどの事がない限り昨年同様新年一月になるようだ。 残りは半年。 これを短いと思うか、長いと思うかはそれぞれだが、今までの事を考えれば振り返った時、あっという間と感じる程早く、過ぎ去ってしまうのは明らかに思えた。 だから 「今年度も半年が経過しようとしています。そろそろ皆さんの卒業試験の検討も始まっています。 一日一日を無駄にすることなく、大切に過ごして下さいね」 寮長 各務 紫郎の言葉も身と心に染みこむ様に感じるのだった。 「それで、今回の皆さんの課題ですが、卒業研究に向けての準備、です。 新年度の始めにそれぞれ卒業研究を定めたと思います。 その卒業研究について、検討を行って下さい」 卒業研究。 その言葉に寮生達はそれぞれ思い返す。 ここにいる殆どの寮生が新年度の始まりに卒業研究を定めた。 卒業研究は昨年度のような発表会があるものではなく、それぞれが自分自身で考え、調べ、追求していくものである。 今まで授業や戦乱で忙しかったから、なかなか研究の事まで頭が回らなかった。 確かに、そろそろ一度考えを纏めたり、実験を考えたりするべきかもしれないと納得したのだ。 「但し、場所はここではなく、東房で」 寮長が、そう続けるまでは。 「え？」 寮生達の驚き顔を気にする様子もなく、話を続ける。 「先の東房での戦闘に続いて行われた冥越への大規模な侵攻作戦。 再び各国が兵や物資で支援を行っています。 そこには五行軍や、陰陽寮の関係者なども少なからず加わっており、開拓者の皆さんと共に命がけの戦闘をしているのです。皆さんには後方拠点となる不動寺に支援物資である荷物を運んで行って貰います。 そして数日滞在し、戦闘の後方支援や避難者救護、アヤカシ調査などをして来て下さい」 「…それで、卒業研究の検討というのは…いつ？」 「滞在の間にそれぞれで、です。 不動寺から北に行けばアヤカシも多く存在しますし、後方拠点には負傷者もいるでしょう。 それぞれが自分の研究を踏まえた、…言葉は悪いような気もしますが実験と実践、検討ができますよ」 実験と実践。 いきなり戦場に行けと言われて戸惑いはしたが、そう言う意味でなら確かに行く価値はあるかもしれない。 「今回はやることも多いのでレポート提出などは課しません。 それぞれがやるべきことをやりながら、実地で陰陽術や瘴気について、考えて欲しいと思います。 研究や実験にオブザーバーなどが必要なら呼んで構いません。運搬する荷物などは既に準備はしてありますので用意ができ次第出発の事。 なお、卒業研究が決まっていない寮生は、今回研究を決定し報告の事。以上」 寮長が去って行ってから、寮生達は顔を見合わせた。 かなり厳しい課題である。 後方支援の作業を行いながらの研究検討と言うのは。 だが陰陽術と言うのは瘴気を扱う術。 机の前に座って本を捲っていても、確かにできる事は限られているだろうが…。 三年生達の前に否応なしに「卒業」の二文字が近づいて来た。 残された時間は半年。 先に巣立って行った先輩の様に、自分達は何かを残して行けるだろうか。 寮生達はそれぞれの思いを胸に「課題」に取り組むのであった。 |
■参加者一覧
芦屋 璃凛（ia0303）19歳・女・陰 
蒼詠（ia0827）16歳・男・陰 
劫光（ia9510）22歳・男・陰 
サラターシャ（ib0373）24歳・女・陰 
カミール リリス（ib7039）17歳・女・陰 |
| ■リプレイ本文 ●見えない道 朱雀寮の課題出発前はいつも忙しい。 大抵、普通の旅の準備では済まないからだ。 それに、今回は特に荷物が多い。 五行軍、陰陽寮関係者へ届ける物資なども預かっている為だろう。 「清心！ 支援物資のリストアップは終っとるんか？」 芦屋 璃凛（ia0303）は書類と荷物を確認している用具委員長にそう声をかけた。 「…概ね完了。後は積み込みと、僕達が用意して持っていく分の荷物の準備だね」 「そっか、お疲れさん。彼方。食料品とか何か追加で持っていく予定とかあるん？」 「新鮮な果物とか野菜をね。頼まれていた西瓜も入っているよ」 「おおきに、えーっと後は…」 くるくるとあちらこちらを忙しそうに歩き回っている。 一応笑顔を浮かべてはいるがその落ち着かない様子に二人とカミール リリス（ib7039）は顔を見合わせ、小さく肩を竦めている。 寮長に話があると出かけ、戻ってから、ずっとこうだ。 「あ、そうや。保健委員会の用意した薬草を運んで来ぃへんと…」 『はーい。お久しぶりです。元気してましたか？』 そこにかかった明るい声に寮生達はハッと振り向いた。 「あ、双樹さん。本当にお久しぶりですね」 彼方が笑顔で出迎える。 そこにいたのは先の朱雀寮卒業生 劫光（ia9510）の相棒、双樹である。 手には何やら箱を抱えていた。 『はい、これ預かりものです。薬草とかが入っているようですよ』 双樹は荷物を清心にはい、と手渡す。 「劫光先輩と一緒に来たんか？」 『はい、そうですよ。サラターシャ（ib0373）さんに呼ばれて来たのです』 双樹は優しく頷く。 「そう言えばサラさんは今回やりたいことがあるようですよ。不動寺の方は僕達で担当した方がいいかもしれません」 彼方が思い出した様に言う。 「彼女はまだ卒業研究の課題も決まって無い筈だしな」 頷く清心の横で「…サラ」 小さな璃凛の吐息に気付いた者は少なくない。けれど、みんなそれを聞かないふりをした。 そして 『サラさんも、蒼詠（ia0827）さんも後から来ますから。準備があるなら手伝いますよ』 「じゃあ、これ、お願いします。船が荷物を運んでくれる筈ですからみんなで摘み込んで…」 「了解！」 「カームも手伝って欲しいところなんですけどね。流石に狐の手は借りれませんか？」 それぞれ、出発準備を始めるのだった。 その少し前、蒼詠は図書室の隅で頭を抱えていた。 「……瘴気、吸収？こんな術まで…………これと治癒符の組み合わせで瘴気障害の浄化治療、とか出来ないかな……？」 目の前の文書に集中していた蒼詠は 「よう！ 何をしてるんだ？」 そう声をかけられるまで後ろに人が近付いていた事も気付かなかったようだ。 「劫光先輩！」 「サラターシャに呼ばれて来たんだが…いるか？」 「はい、彼女なら奥に…あ」 慌てて立ち上がろうとした蒼詠の前から、何冊の本が足元に落ちた。慌てて拾おうとする蒼詠を手伝う劫光はその一冊に目を止める。 「何だ？ これは俺達の卒業研究じゃないか？」 バレてしまったと、少し恥ずかしげに顔を下げた蒼詠ははいと静かに頷く。 「そうです。主に術関連ですが…。今回の課題は卒業研究の為の実践研究と位置付けられています。 僕の研究は治癒符を発展させて麻痺など様々な症状の治療ができるようにしたい、というものなのですが、卒業研究を決めた時は色々バタバタしていたので気付かなかったんです。 ……先輩方が既に解毒符の開発に成功していた事」 あの後知って、自分の未熟さと先輩方の偉大さ、凄さに落ち込んでいたと蒼詠は溜息を吐く。 「それで、新しい視点で何かできないかと調べていました。やっぱり自分は研究とか向いていない、なんても思ってしまったのですが…。 でも、もう出発の時間ですよね」 本を束ねて書架に戻そうと蒼詠は椅子を立つ。 「目標を見据えてもそこへ辿り着く道が見えない気がします……。本当に…今の僕は人の事をとやかくいうことができません」」 そこに 「蒼詠さん、そろそろ用意ができたようですよ」 丁度サラターシャがやってきていた。サラターシャは劫光に気付いたのだろう。 柔らかく、儚げに微笑んでお辞儀をする。 「劫光先輩。お待たせしました。おいで下さいまして本当に感謝致します。今回はどうぞよろしくお願いします」 「ああ、じゃあ行くか」 丁寧に頭を下げるサラターシャに頷いて歩き出す通りすがり、劫光は蒼詠の背中をポン、と叩いて行った。 「？」 言葉を残していかなかった劫光の真意は解らず蒼詠は首を捻る。 けれども彼等は先に行ってしまった。自分も続いていかなくてはならない。 蒼詠は気持ちを切り替えるように前を向いて、歩き出した。 ●不動寺にて 寮長から頼まれた物資運搬は直ぐに終わった。 「すまない。助かるよ」 五行の兵士や陰陽師達は届けられた物資を受け取るととても嬉しそうな笑顔を見せた。 かつてない長丁場となったアヤカシとの戦い。 故郷を離れて戦う彼らにとって故郷の物資や食料は何にも勝る喜びなのだろう。 「今日は五行の食材で料理を作ろうと思うんです。良かったら皆さんも召し上がって下さいね」 彼方はそう言って腕をまくっている。 朱雀寮の厨房で鍛えられて大量調理にも慣れてきている彼方だから、調理関係は任せておいて大丈夫だろうと寮生達は信頼する事にした。 「それじゃあ、うちらは避難している人達のお手伝いやな。蒼詠、リリス。清心、何しよか？」 今回は別行動をとると、言っていたサラターシャを除く寮生達は顔を見合わせ、考える。 「まずは掃除、でしょうか？ 劣悪な環境では身体に良くないです。それから怪我人や病人の診察と治療。人々の気分転換も必要ですね」 「私は簡易浴場とか、水遊びできる場所を作れないかと考えているんですよ。璃凛も手伝ってくれませんか？」 「ええよ。うちもちょっとやりたいことはあるんやけどそれにも水、合った方がええかもしれんしな」 「それじゃあ翡翠は掃除をよろしく。ピッカピカに磨いて」 『了解！ 任せて』 結論から言えば、朱雀寮生達の支援活動は大いに喜ばれた。 不動寺も入浴施設などが無いわけでは無い。 しかし、この夏へと移り変わる蒸し暑い時期、清潔にしたい、身体を流したいと願う人は多く、朱雀寮生達の活動は正にその要望に応えるものであった。 特に子供にとっては水遊びというのは特別なものでもある。 キャッキャ、キャッキャと大はしゃぎだった。水場を用意した中庭には弾けるような歓声が響く。 「お姉ちゃん！ こっち！！！」 バッシャーン！ リリスと璃凛はすっかり子供達に懐かれて、追い掛け回されて水遊びの餌食になっていた。 「こ、これは思ったより体力勝負ですね…」 リリスは最後の頃にはけっこう息を切らせていた。 氷龍で氷を作って氷の彫像を作る…というアイデアは彫刻に足る氷の柱を作ることができずに失敗。 だが、ひんやりと冷えた空気に子供達は大喜びだった。 水遊びに疲れた体に甘いスイカと果物を使った飲み物も大好評で 「喜んでもらえて良かったですね」 「うん」 遊び疲れて寝てしまった子供達を膝に、璃凛とリリスは微笑みあっていた。 それとは別にアヤカシとの戦いの中、怪我をした人や長い避難生活で体調を崩す人は少なくない。さらに術の治療や対応は重症者などが優先になりがちだ。 「体調はいかがですか？ 暑い時期だからこそ水分はしっかりとらないといけませんよ」 蒼詠はそんな、我慢強くなかなか自分の苦しみを口に出せない人々の元を回り治療や手当にあたった。 沢山の人達の手当てをし、感謝される中、蒼詠はふと思った。 「……既に出来ているならそれを発展させる方向で考えるべきですよね。解毒符なら一度に毒の症状全てを治療とか、治癒符なら一回の術で複数人の治療とか…」 実際、一回の術で、例え効果が小さな治癒でも複数に影響を与える事ができれば、戦場などで、またこういう場で大きな助けになるだろう。 「確かに現場に立ってみないとなかなか解らないことでしょうか？ 後は、瘴気障害の治療とか…で纏めてみましょうか」 「兄さん。ありがとうな」 感謝の言葉をくれた老人に、小さく微笑みながら蒼詠は自分の目標と、その道筋をもう一度 見つめ直すのだった。 ●見えないモノ 前を行く人妖の足が止まったのを見て 「どうした、双樹？」 劫光は周囲に気を配りながら声をかけた。 『向こうにアヤカシの小さな集団がいますね。蟻と蟲？ 山喰のところから逸れたやつかもしれませんね？』 先行偵察をしていた双樹の言葉に解った、と頷くと劫光は後ろを振り向いた。 「用意はいいか？ サラ？」 「はい。お願いします」 そこには目隠しをしたサラターシャとからくりのレオがいる。 表情の見えにくいのがからくりではあるが、その割にレオの表情には明らかな苛立ちが見て取れた。 『まったく、無茶ばっかりするんだから』 サラターシャは虫を大の苦手としている。先の蟲調査の合同課題でも課題終了まで必死に堪えたあげく終了直後に彼女はぶっ倒れていたのだ。 そんな彼女がまた虫達の中に進んで行こうとしている。 今は目隠しをしているから虫の姿は見えないだろうが、それはそれで危険であり、心配なのだ。 サラターシャは静かに深呼吸をすると、目隠しのその下でさらに目を閉じた。 そこに、ビョン！ と飛びかかる様に怪蝗が襲い掛かってきた。 『危ない！』 レオはサラターシャの前に立つと手に持った剣で蝗を両断した。 『大丈夫？ サラ？』 「大丈夫です。そのまま続けて」 『もう！ 解ったよ！』 強い決意の籠った声にレオは逆らうことができなかった。 言われるまま、彼女の進む前の敵を切り捨てる。 そんな相棒と後輩の様子を見ながら劫光は小さな笑みを浮かべていた。 卒業生である自分がここにいるのはサラターシャに頼まれたからだった。 「残留瘴気から、特定瘴気の追跡をしたり、アヤカシの特徴を把握できるかどうか、研究してみたいと思っています。その為の調査と実験にご協力を頂けないでしょうか？」 と。ただ、それだけだったら引き受けたかどうかは解らない。 多分、引き受けたかもしれないが劫光が今回決意したのには別の理由があった。 「私の目はいずれ光を失うかもしれません。…判っていた事です。私と同じ役目を持った歴代の方々の多くは亡くなっていますから」 彼女は静かにそう言っていた。もしかしたら見えていないかもしれない目で自分を真っ直ぐに見つめて。 「でも、幸運なことに私は生きています。だから、できる限りの事をしたいと思うのです。お力をお貸し下さい」 そう言って深く頭を下げられた劫光は、自分の性格を再確認する。 どうやら年下だけではなく、真摯に生きようとする女性全般に弱いのかもしれない。 「サラ…」 名前を噛みしめるように呼んだ劫光はその時、もう決意していた。 「…いいだろう。今回はお前に従おう。だから無茶をするなとは言わん。無理はするな」 「はい。ありがとうございます」 そして、今、自分はここにいる。 サラターシャは視覚を遮断して、周囲のアヤカシの瘴気の違いを感じようとしている。アヤカシの側にいないといけないし、倒さないといけない。 危険な「実験」だ。護身用の術は持っている筈だが、いつ、アヤカシに迫られるか解らないのだ。 だから、彼女と彼女の思いを守る。劫光はそう決めていた。 「悪いな、オレがいる限りは通しはしない」 （サラターシャの邪魔はさせん。それが今回のオレの仕事だ。 １個上の先輩の意地としてなあ！） 「双樹！ お前は俺の前に出るな。サラの前にいろ！」 霊剣「御雷」を握り、後ろをそっと見る。 「いいな、ここより先は通すな。…できるな？」 『うん』 頷く双樹の頭をそっと撫でて 「それに少しムカついてんだ、ちぃとばっかし八つ当たりさせてもらうぜ？」 劫光は増え始めた虫アヤカシ達の中に飛び込んで行った。 ●覚悟 「はああ〜」 授業を終え、朱雀寮に戻ってきた璃凛は大きなため息を零した。 「サラターシャに、信じて貰えない事がつらいで、けどやり通すしかない」 東房での課題を終えて戻ってきた朱雀寮の中庭で、彼女は脱力したように壁に身体を預ける。 今回の課題に失敗は無い。それぞれが自分自身の研究やその他を進められたと思えば成功なのだ。そう告げられている。 彼方は炊き出しの傍ら何度か戦場に出て、術や瘴気の実験をしていたようだ。特に人魂の変形などを今は工夫しているらしい。清心は今回の戦場に研究課題の憑依アヤカシはいないと割り切ってアヤカシの捕縛練習をしていたと聞く。 蒼詠は卒業研究の方向性を考え何かを掴んだようだし、研究を決めていなかったサラは今回、ちゃんとそれを決定、提出したらしかった。 許可を貰い、東房に残って新発見の護大の調査をしているリリスを含めてみても、それぞれ迷いなく、真っ直ぐに目標に進んでいるように見えた。 研究である「巴」の応用があまりにも先が見えない事もあり、他の研究が気になったり、迷ったりしている自分だけが足踏み、遠回りしているように思えてならなかったのだ。 「悔しいなぁ…、けど決めてしもうたしな」 「芦屋さん」 「！ 寮長！」 ぼんやりしていた璃凛は自分を呼ぶ声に、ハッと顔を上げた。 そこに立っていたのは朱雀寮長 各務 紫郎。寮生として慌てて立ち上がり、背中を伸ばす。 「先の話の返事をしたいのですがいいでしょうか？」 「は、はい！」 褒められる可能性の無い話なので璃凛は知らず下を向き唇を噛んでいた。 「主席の返上について別に私からの異論はありません。貴方が主席に自分がふさわしくないと思うのなら別に名乗る必要はありません。他者に押し付ける必要もありません。今年度は空位でいいでしょう」 「はい…」 申し訳ないような悲しいような気持ちが押し寄せてくる。 責任に押しつぶされそうだった「主席」の名。それは寮生にとって輝かしい誇りだった筈なのに…。 俯く璃凛に寮長は静かに告げた。 「朱雀寮の授業は目指す自分へ近づく為のもの。授業料を受け取っても、私には授業に出ろと強制することも、退学を希望する者を止める事も私にはできません。 だからこそ、自分の意思で羽ばたこうとする者を助けたいと思うし、その翼を守りたいと思います。その為に全力を尽くしたいと思うのです」 璃凛は顔を上げた。そこには見守るような瞳の寮長がいる。 「周りの声を聴き、自分を信じて進みなさい。そうすれば貴方を認め、支えてくれる人は必ずいます。…貴方の先輩も言っていましたよ。 オレの知る限り、朱雀寮に無力なものはいない、とね」 寮長は璃凛の返事を待たずに行ってしまった。 そして残された璃凛は寮長の言葉を一人、噛みしめるのだった。 卒業まであと半年。 時は全てを飲み込み、ただ前へと進んでいく。。 |
