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■オープニング本文 【朱雀】目指す未来 朱雀寮は卒業生を送り出した翌日から新しい年度が始まった。 一年生が二年生となり、二年生が三年生になる。 そして、新一年生の入寮が無い代わりに陰陽寮預かりとなった桃音ともう一人の入寮希望者が一年生待遇予備生として二年生の授業に同行することに決まった。 二カ月に一度は全学年が一堂に会する合同授業があり、その時は遠征やその他少し難易度の高い授業が組まれる予定である、と。 ここまでは全員に周知された事であり、新三年生達にとっても特に新しい事では無い。 「さて、皆さん」 新年度最初の授業。 講堂に召集をかけられた三年生達は、朱雀寮長 各務 紫郎の声に背筋を伸ばす。 「今までの三年生が卒業し、今日から皆さんが陰陽寮 朱雀の最高学年となります。 時に五行の予備戦力として、時には五行の名代として責任を任せられることもあるのが朱雀寮 三年生、最高学年です。 自覚と責任を持って行動に臨んでくれることを願います」 まず最初に厳しくそう告げて後、寮長は寮生達をじっと見て、そして微笑んだ。 「まあ、最初からそう固くなる必要はありません。 肩の力は抜いて下さい。 まず最初の授業において、皆さんに考えて貰うのは卒業研究の事、です」 「卒業研究…ですか?」 寮生の質問にはい、と寮長は答える。 「三年生になると寮生は例年、卒業研究を一人一つ、それぞれテーマを決めて行うことになっています。 昨年は術と、アヤカシ研究に分けましたが今度はチーム分けはしません。自分自身で自分の研究テーマを決めて下さい。それに基づいて一年間、実習、調査を行って貰う事になります。 卒業研究は必修では無いのでやらなければ卒業できない、と言うわけではありませんが、自分自身を高める為。 そして、陰陽術の未来の為にとても重要な意味を持ちますので、殆どの寮生が行い卒業時に論文に纏めて提出していきます。 昨年度の三年生も一年間研究し、纏め上げたとても素晴らしい研究を行って行きましたよ」 確かに、と寮生達は思い出す。 三つの新術式の確立と、新しいアイテムの可能性の提示。 他にもアヤカシの研究における新視点、からくり進化への重大発見など昨年の三年生の卒業論文は全体的に評価が高いと聞いている。 「そう言うわけで皆さんにも、卒業研究を決めて頂きます。 アヤカシ、術の研究、その他、基本的に研究テーマは何でも構いません。アイテムでも、符でも。陰陽寮生として陰陽術の進歩、発展に関わる研究であるならテーマは自由です。 途中でのテーマ変更は原則認めませんのでよく考えて決定して下さい。 まあ、方向性が同じであれば多少変わってもかまいませんが」 つまり、卒業研究を決めることで、これからの一年の課題活動に方向性を与えると言うわけだ。 「但し、言っておきますが研究テーマを決めて、それを行っても必ず全員が成果を出せるとは限りません。 昨年度の三年生が術式を開発できたのは、本人達の努力も去ることながら運の要素も少なからずありました。 三つの術式のどれもが古代の術式の再構築ですからね」 一年間、研究を続けても成果が形として残らないこともある。 むしろその方が多いと、寮長は言う。 「それからアヤカシ牢の使用制限が三年生はかからなくなりますので、かなり突っ込んだ実験を行って問題ありません。勿論、口外禁止と解放厳禁の両点は厳守して貰いますが」 なるほど、と寮生達が思っていると寮長は一本の鍵をどこからか取り出すと、教卓の上に置いた。 「皆さんに、これを預けます」 「その…鍵は?」 誰からともなく放たれた疑問の言葉に寮長は静かに答える。 「これは、朱雀寮の蔵書書庫の鍵です。図書委員の二人に預けます。 陰陽寮内でも特別な書庫。陰陽術やアヤカシについて現在公開されている書物よりかなり詳しく調べることができるでしょう。貸し出し禁止の図書ばかりですので内部での閲覧のみになりますが、役立てて下さい。 卒業研究は何より、自分自身の為に行い纏めるものです。 形になる、ならないに拘らず、自分が一番興味のある、またはやってみたい研究を良く考え、選び、提出して下さい。 相談、資料検索は妨げません。 但し、過去の卒業生の卒業研究論文の閲覧は禁止。自身の研究制定に他者の研究を参考にしないようにという理由からです。今後解禁される可能性はありますが人の研究を当てにせず、自分自身の考えで決めること。 期日までに文書にて研究課題をその理由と共に提出。 以上」 そう言って、寮長は去って行った。 いつも通り。 朱雀寮の新学期が始まる。 最高学年として今までと同じ、けれども決して同じではない授業が。 問われるのは、自分自身の考えと覚悟。 目指す未来。 朱雀寮 新年度最初の授業に彼らはそれぞれの思いで取り組もうとしていた。 |
■参加者一覧
芦屋 璃凛(ia0303)
19歳・女・陰
蒼詠(ia0827)
16歳・男・陰
クラリッサ・ヴェルト(ib7001)
13歳・女・陰
カミール リリス(ib7039)
17歳・女・陰 |
■リプレイ本文 ●始めての課題 ふと、前を見た時、少し前までそこにあった背中が無いことに気付く。 そしてふと不安になるのだ。 先輩達のようにできるのだろうか、 自分はここにいていいのだろうか…、と。 三年生に進級した六人はそれぞれ、与えられた始めての課題に取り込んでいた。 彼らが最初に決めなくてはならないのは『卒業研究の課題』 この一年は全て、卒業と言うその時に向けての日々であると思い知らされる。 「…主席やのに授業以外で、思いを示せてへん。うち、こんなんでええんやろか?」 意気消沈した気持ちで一人呟く芦屋 璃凛(ia0303)は大きく息を吐き出した。 やりたいと思う事が決まっていない…訳では無い。 だが、最近、いつも思いが空回ってしまう。 自分の意思を押し通したい訳でもない、相手の事を真剣に考えての行動なのに…何故、気持ちが伝わらないのだろう。 「卒業…か、うちはちゃんと卒業できるんやろか? …皆はどんなこと考えてやってるんやろな?」 別に今回の授業で相談や意見交換が禁止されている訳では無い。 ただ、なんとなく聞きにくくてひとりぼんやりと歩いていた璃凛は、ふと前を行く三人に気付いた。 「そう言えばお二人は研究課題、決まったんですか? 僕は治癒符をこれからもつきつめてみるつもりなんですが。 先輩方の研究成果をまだよく見ていないので、残された資料を見てさらに発展出来ないか調べていきたいんですよね」 「俺はアヤカシ研究。憑依型のアヤカシとかアヤカシの捕縛法とかをもう一度研究しなおそうと思ってる」 「僕は瘴気について。お師匠様は瘴気で式を作ってたけど、これって実は結構難しいんだって聞いた。 だから瘴気でどこまで何ができるか調べてみようかなって…。範囲、広すぎるって解ってるけどね。 っていうか、清心。これ重いんだけど。少し手伝えよ!」 「やなこった。冬野菜は美味しいからって買い込んだのお前だろ。相変わらず買い物下手なんだから!」 大籠一杯の野菜を持って歩く彼方と、その横でからかうように笑う清心と、二人を楽しそうに見る蒼詠(ia0827)。 朱雀寮の三年男子 仲良し三人組みだ。 「あ、璃凛さん」 真っ直ぐに笑いかけてくる三人からふと、璃凛は顔を逸らしてしまう。 だから、彼らが互いに顔を見合わせて笑ったことを知らなかった。 「璃凛さん、ちょっと一緒に来ませんか?」 「えっ? わっ? な、なんや??」 「ま、ナンパってところかな?」 「美味しいもの作りますから。味見して下さい」 強引に手を引っ張られて、ナンパ(?)されるまで。 ●贈られたぬくもり 璃凛が引っ張られて連れて行かれたのは食堂であった。 奥の台所に調理委員会委員長となった彼方が入って行き、テーブルの一つに蒼詠と清心。そして璃凛が座る。 「はい、薬草茶です。どうぞ」 「…おおきに」 蒼詠が注いでくれた薬草茶で手を暖めながら璃凛はふと前の二人を見る。 楽しそうに話しをしていた二人は彼女の視線に気づいたのだろうか? ふと話を止めこっちを見た。 「璃凛さん。そう言えば聞きましたか? 彼女が戻って来るかもしれないそうですよ」 「あ、うん。聞いたで」 彼女と言うのは昨年まで一緒だった仲間の一人。一年、二年と一緒だった友で学年主席であった女性である。 一身上の都合から休寮していたが、先頃可能であるなら戻りたいと言う意思を寮長に伝えて来たのだという。 「寮長は三年生全員の了解が得られれば追試を行って三年生に復帰させてもいいと言っておられましたが、璃凛さんも反対ではありませんよね?」 「ああ、もちろん、うちもかまへんよ」 「他のお二人も歓迎するとおっしゃっていましたから、これで全員了承ですね。良かった。 凄く嬉しいです。早くまた一緒にやりたいですね」 わくわくとした笑顔で告げる蒼詠を見て、また璃凛から知らずため息が零れる。 「主席は、どうするべきやろか…。帰って来るなら、返上した方が…」 吐き出されるような呟きに驚く様に、蒼詠は目を見開いている。 「そのまま継続で良いと思いますよ。貴女が一年間頑張ってきたからこそ得た評価なのですから」 「でも、うちは…あまりにも代表にそぐわないし、卒業生誰も良しとしないだろうし」 「なあ、璃凛」 今まで口を閉じていた清心がふと顔を上げた。 真顔で璃凛を見る。 「ずっと聞きたいと思ってたんだけど、なんであんた、そんなになっちまったんだ?」 「えっ?」 「前、入寮した時は少なくともあんた、そんな感じじゃ無かったろ? もう少し明るくて前向きだった気がする。 それがいつからそんなに内に籠るようになっちまったんだ?」 「…それは…」 「主席の事だって、卒業生との事だってそうだ。誰も璃凛の事を悪く思ったりしてない。なのに自分を必要以上に卑下したりして…。 それが周りを余計困らせたり、怒らせたりしてるって…解ってないのかよ!」 「清心くん…」 少し困ったような表情を浮かべて蒼詠が声をかけるが、止めようとはしない。 それは、彼もきっと同じ思いだからなのだろうと気が付いて璃凛は頭を下げてしまう。 「うちは…周りの為に動きたいんや。例え…嫌われても…」 「だーから。誰も璃凛を嫌ったりなんかしないんだって。前みたいに前むいて、意見出して、それができないのか? 内に籠って自分を自分で見下して、周り苛立たせて、それで本当にいいのかって言ってるんだってば!」 「清心。止めろよ…」 声を荒げはじめた清心を台所から戻ってきた彼方が静かな声で制する。 手には三つのお椀と匙が乗っていて、暖かい湯気を上げていた。 「璃凛さん。お腹空いてませんか? 野菜スープ作ったんで味を見てくれると嬉しいです」 そう言うと彼方は璃凜の前の机にそっと、椀を置いた。 澄んだ透明なスープに細かく賽の目に切られた人参、大根、白菜などが沈んでいる。 所々にふんわりと緑の葉も浮かんでいて見た目も美しい。 「うちのお師匠はあんまり食事とかに興味の無い人なんですよ。肉や魚も殆ど食べないし…。でも野菜のスープとかは喜んで食べてくれたから覚えたんです」 優しい笑顔に進められて璃凛は匙でスープをそっと口に運ぶ。 「美味しい…」 出汁も何もない野菜だけの味。 けれど冬の寒さを受け、その身に甘さをじっくりと蓄えた野菜の旨みがスープから零れる程であった。 「自分なんて…自分が一番解らないものですよ。僕だって四年前、山で暮らしていた頃は外の事なんて全然解らなかったし、今の自分なんて考えもつかなかった」 静かに暖かくスープの味と一緒に彼方の言葉が身体に沁みこんでくるようで、璃凛は顔を上げた。 「でも、たくさんの人と出会って、教えて貰って今の自分ができた。 自分っていうのはきっと、自分一人じゃ自分じゃないんです。誰かに認めて貰って、きっと自分になるんですよ」 静かに言う彼方の目は璃凛をまっすぐ見つめている。 「璃凛さんに変わってくれ、とかは言えません。けど…信じてくれませんか? 自分を信じられないなら自分と一緒にいる僕らや皆の事。 一人で抱える必要はないんだって事。そして、皆で頑張ればきっとなんとかなるんだってこと…」 優しい笑顔と言葉を、思いを、璃凛はスープと一緒に静かに呑み込むのであった。 ●やりたい事、目指すもの 「なんだかこの図書室も広くなったような気がしますねえ〜」 書庫の整理をしながら独り言のようにカミール リリス(ib7039)が呟くのに 「ん、そうだね」 同じく独り言のようにクラリッサ・ヴェルト(ib7001)は頷いた。 いつもここにいた先輩達がいない。それがどこかぽっかりと空いた穴のように感じるのはまだ慣れていないせいだろうか? 「そう言えばクラリッサは卒業研究の課題、決めたんですか?」 リリスの問いにクラリッサは少し考える様な仕草の後 「うん」 そう頷いた。 「いろいろ考えたんだけどね…」 クラリッサは決定に至るまでの会話を思い出す。 ――『治癒符にするのではないのですか?』 「うん、進級論文の題材だった治癒符を本腰入れて…っていうのが一番妥当で、いいかな、っては思うんだけど…」 『過程が想像できない、と』 うん、ともう一度相談に乗ってくれている相手にクラリッサは頷いた。 「治癒符、っていうのはある意味完成されている術だから。それを強化って難しいかもしれないって思う。先輩達のも違う側からのアプローチだったしね」 『存分に実験ができるようになればその中で或いは、といったところでしょうか』 なるほど、と頷いたあと彼女は静かに微笑んで告げる。 『何れにしろ。 結果が出ると限らないのならば、己の意思に素直に従えば宜しいかと』 「己の意志…それは、自分のやりたいことってこと?」 『はい』――。 結果的にその言葉に背中を押された形になるが、とにかくやりたいことをやってみようと思ったのだ。 「ま、結果が形にならなくてもいいかな、って思ってる。 勿論、形にできればいいけどね」 「そうですね〜。私の研究は形にするのが難しいと思いますから纏まりそうな時はお手伝いしますよ」 小さく笑ったクラリッサにそう言ってリリスは笑い返す。 「形にするのが難しいって? 何にしたか聞いていい?」 「護大について、です」 リリスはそう言うと真面目な顔で図書室の奥にあった資料を出して見せた。 「きっかけはやっぱり生成姫の件に関ったから、なんですけどね。護大というものが持つ影響というのに興味があって…。 ほら、雷太という少年が護大に適応させるための調整が成されていたというじゃないですか。ということは護大が人間に対して何かしら影響を与えるのではないか、と…」 護大というものには謎が多く、その資料も陰陽寮ですらそれほど多くは無い。 大アヤカシが体内に持つ瘴気の塊という認識だ。 だが、ここ数年で解ったいくつかの事例などは参照できる。 希儀におけるヘカトンケイレスは、植物が瘴気を取り込むという現象を体現した物と言える。 陰殻国に呼ばれる事になる土地におけるいつらめ様は、生物が持ち合わせていた精霊力が護大によるなにがしかの力つまり瘴気と呼ばれる物に反応した結果、生物では、余りあり得ない不死に近い存在になったこと。 泰国におけるフェンケゥアンと護大に関しては、人間の思考の操作や行動を操り、結果的に幾たびもの戦を、引き起こしてきたようだ。 「まだはっきりとは言えませんが、ジルベリアのでのことやボクの出身儀である、アル=カマルで起きた出来事に関わってきたのかも知れません。だから、まぁ、これからの事を考えるとこれ以外にはあり得ないと考えたんですよ。 一人でやるには手に余る事だとは解ってますけどね」 肩を竦めるリリスに、 「でも、それがやりたい事なんでしょ?」 とクラリッサは微笑み、リリスは頷いた。 「だったら、一緒に頑張ろうよ。そう言えば彼女も帰ってくるかもしれないって言ってたし」 「ええ、皆でならどんな難しいこともきっと乗り越えられますからね」 それは二年間の時を経て、得られた思いである。 「そうだね」 きっと皆同じだと、思える。確信できる。 「クラリッサ。ちゃんと決めてませんでしたけど、図書委員長は今年は無しでいいんじゃないかと思うんです」 そして、とリリスは寮長から預かった鍵をテーブルの上に置く。 「この鍵はこの鍵は三人で管理しましょうね」 「うん、それでいいよ。やっぱり、皆で卒業したいもんね」 そうして、三年生達は卒業研究を決定、提出した。 それぞれの、思いを込めて。 ●卒業研究提出 「芦屋 璃凛。 巴の応用研究 選択した理由は、個人的な理由で言えばこの術に可能性を見いだしたからです。 二年生の時とは違い理論で終わらない物にしたいと考えます 攻撃転用と言うような術としての範疇を超えるものでは無く実現可能な物にしようかと考えています。 自身の動きを把握しつつ周囲を確認するとともに的確に指示を出す為の術としたいです。 今のところ、考えつく方法は外部に動きを表示する式を表すか、ソレを可能とする道具を作り出すかでしょうか 応用のために総合的に行いたいと考えています 結論で言えばこれからを考えると、誰一人犠牲を出したくは無いです。 その為には、冷静に周囲を確認し仲間の行動や術を把握し先を見据えた行動を示すためです」 「蒼詠 テーマ:陰陽術による治療 治癒符を軸に、様々な要治療の症状の回復術の模索。怪我や毒の他に麻痺等様々な症状を治療出来る様に」 「クラリッサ・ヴェルト 治癒符の改良。 練力消費の軽減あるいは治癒効果の向上を目指して」 「カミール リリス 護大について 護大が周囲に与える影響、護大の能力、最終的にはその正体について。 個人の能力には余るものだと思いますが、だからこそ研究してみたいです」 「彼方 瘴気について。 アイテム、術、その他応用範囲の広い瘴気によって一体、何が、どこまでできるかを調べたい。 最終的には瘴気によって何かを生み出せるようになりたい」 「清心 アヤカシについて。憑依型のアヤカシなどの研究。 と同時にアヤカシを捕獲方法や使役などについても方法論を得たい」 新三年生それぞれの卒業研究を朱雀寮長 各務 紫郎は確認する。 この課題は元より失格者が出る様なものでは無いが、全員がそれぞれの視点で卒業研究を定めた事で十分に合格である。 昨年の三年生と比べる様な事は勿論、しない。 それぞれが、それぞれの意思を持つこの世でただ一人きりの陰陽寮生なのだから。 そしてもう一人。 復帰の意思を届けてきたもう一人の寮生が戻ってくれば、新三年生達は本当の意味で新たなスタートを切ることができるだろう。 年の初めから揺れる天儀。 五行国からも戦乱に援軍が出されることが決まった。 もしかしたら寮生も動くことがあるかもしれない。 「期待していますよ。頑張りなさい」 直接寮生達に告げることのない激励の言葉を、寮生達の意思と思いが籠った書類に贈って、寮長は静かに微笑むのだった。 |