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■オープニング本文 五行、結陣の下町に一人の女性がいる。 彼女は下町の任侠達の頭領であり、女性ながら人々に強く慕われていた。 とはいえ、年齢も決して若くない彼女は先に大病をしたことをきっかけに息子にその実務の殆どを任せ、今は裏稼業の多くから手を引き、長屋の大家を務めながら静かに人々を見守っていた。 そんな彼女の側に、と息子がからくりを贈ったのは最近の事である。 「私の事はお母さん、と呼んでくれないかしら」 目覚めたからくりに彼女は最初にそう告げていた。 少女形態をしたからくりは彼女に沙耶と名付けられ、我が子、我が娘と可愛がられることとなった。 「主人はあの子を残して早くに亡くなってしまったの。 本当は娘も欲しかったから、貴方が私の娘になってくれたら、嬉しいわ」 『もったいないお言葉です。でも、私も貴女と一緒にいられるのが…嬉しいです。お母様』 沙耶もまたその愛に答えるべく、彼女の世話を誠実に、慈しみを持ってこなす。 『母』に教わった歌を聞き覚え、歌って聞かせることもある。 「沙耶は歌が上手ね。貴方の声を聴くと幸せな気持ちになるわ」 人とからくりながらも絆で結ばれた二人。 彼女達の存在を誰もが美しく感じていた。 …そう。 彼女達を狙う闇からの目もまた…。 「えっ? 沙耶がいなくなった?」 陰陽寮朱雀二年生である彼方は実習を終えて帰った長屋で、大家の息子である全法寺から密かにそう相談を受けた。 「そうなんだ。買い物に出たまま。もう三日帰らない。こんなこと初めてだよ」 「三日? それはタダごとじゃないですね」 「母は心配のあまりまた臥せってしまうし…。探そうにもこの近辺にはいないらしいし、からくりが行きそうな場所になんて心当たりがないんだ。君、何か思い当たることは無い? 僕よりからくりについて詳しいだろう?」 「詳しいって…言われても。からくりの知り合いは何人かいますけど、みんな陰陽寮の先輩とかのからくりで…僕自身が詳しいってわけでも…」 腕組みして悩む彼方。その横で 「失礼します」 静かな声と共に扉が開いた。 「今、外にこんな手紙が届いて…」 それは長屋の住人の一人であった。ありがとうと礼を言い全法寺は手紙を受け取ると封筒の表書きを見た。 宛名は母。差出人の名前は無かった。 中には手紙らしきものと…何やら固くて細いものが入っている。 「何だろう?」 母宛てとはいえ彼は実際には彼女の名代のようなものだ。 開けても怒らないだろう。そう思って全法寺は封を切り封筒の中身を手の中に転がした。 「!」 声を上げなかったのは任侠の長だからこそ、か。 同じものを見た彼方は 「わああっ!」 悲鳴にも似た声を上げてしまった。 それは引きちぎられた細い指。 からくりの…小指であったからだ。 そして、陰陽寮。 卒業と進級試験間際の委員会活動日。 彼方は朱雀寮の仲間達に相談する。 先輩、後輩、同輩。皆の前で事情を説明したのであった。 「その手紙は、ずっと下町の縄張りを狙っている流れ者のゴロツキ達から、だったんです。 沙耶を預かっている。返して欲しかったら、縄張りをよこせ、と」 人質をとっての誘拐、脅迫。 最低の話だ、と寮生達は思う。 「それからずっと奴らは家を見張っています。開拓者ギルドとか官憲に駆け込めば沙耶は本当に壊されてしまうでしょう。僕がここに来るのは大丈夫だと思うのですが。それに…」 きゅっと唇を噛む音が聞こえ、次に顔を上げた彼方は泣き出しそうな顔をして言った。 「全法寺さんはおっしゃってました。彼らの要求は呑めない。からくり一体と引き換えに下町全部を危険にはさらせないから、と。それは…下町を守り、束ねる方としては正しいのだと思います…でも」 目を開けても浮かぶ大家さんと沙耶の幸せそうな様子。 あの光景を本当に失ってもいいのかと。 「どうか…沙耶の捜索と救助に力を貸して頂けませんか? お願いします」 彼方は寮生達を前に、深く深く頭を下げた。 その光景と机の上の手紙、そして引きちぎられたからくりの指を寮生達は黙って、それぞれの思いで見つめるのであった。 |
■参加者一覧 / 芦屋 璃凛(ia0303) / 俳沢折々(ia0401) / 青嵐(ia0508) / 玉櫛・静音(ia0872) / 喪越(ia1670) / 瀬崎 静乃(ia4468) / 平野 譲治(ia5226) / 雲母(ia6295) / 劫光(ia9510) / 尾花 紫乃(ia9951) / 真名(ib1222) / 尾花 朔(ib1268) / 成田 光紀(ib1846) / 雅楽川 陽向(ib3352) / 比良坂 魅緒(ib7222) / ユイス(ib9655) |
■リプレイ本文 ●自由活動 『お母様…』 小屋の中で、一人沙耶は大切な人を想う。 ここに囚われて後、辛く、苦しいことしかないと言うのにかの人を想うだけでまだ前を向ける様な気がした。 胸が熱くなる。 心など持たないからくりの身である筈なのに、何かが自らの内から溢れてくるような気がするのだ。 それが、何かは解らない。 けれど、今の沙耶に力を与えてくれるものであるのだけは、確かであった。 からくりの誘拐。 そして救出の依頼。 話を聞いた朱雀寮生達の行動は素早かった。 「わかりました。急ぎましょう」 話を聞いてすぐ、玉櫛・静音(ia0872)は薬草の手配をし、立ち上がった。 「今日の委員会活動は、どうします?」 確認するように問う泉宮 紫乃(ia9951)に部屋の扉を開いて静音は答える。 「自由活動です」 静音が部屋の外に出ると 「…了解」 瀬崎 静乃(ia4468)も頷いて立ち上がる。紫乃も勿論続く。 今日何をするかはもう決まっていた。 朱雀寮において自由活動と言う事は、自分のやるべきことをする、ということなのだから。 朱雀寮において後輩に後を任せ、速攻動き出した保健委員会が特別な例でなかったのはいうまでも無い。 「どうもこういうのは感心しないよね…。あ、ユイス(ib9655)君。その本は奥の本棚の右」 「はい」 俳沢折々(ia0401)の指示に従いながらユイスは返却手続きの終わった本を本棚に戻す。 「一通りの仕事が終わったら、こっちは二年生ちゃん達に任せて私は行くつもりだけど、ユイス君はどうする?」 「勿論、行きます。僕にも身内にからくりがいますし、許せない気持ちです」 力強く頷いたユイスに折々は満足そうに頷いた。 「了解。でも私は直接の救出では無い方に動くつもりなんだ。向こうに行くならみんなの力になってあげて」 「はい」 最近のユイスはいつにも増して仕事に意欲的だ。折々や図書委員長に教わりながら図書の整理や仕事を一生懸命身につけようとしている。 「副委員長が休学しちゃって大変だけど、ここには後二人二年生がいる。二人のうちどちらが委員長になるかは解らないけど、支えてあげてくれると助かるよ。来年、委員会を移動しないのなら、だけどね」 「はい」 折々が言った通り、副委員長の休学はユイスにとって小さくないショックであった。 でも、彼は今、気持ちを切り替えている。 (新しい図書委員長を支えて、頑張ろう。何時、先輩が帰ってきてもいい様に) 後輩の前向きな様子に微笑んで、折々は書庫から本を取り出し開く。 その時、がらりと音を立てて図書室の扉が開く。 「先輩! 本貸して!!」 急いできた様子で息を切らせる雅楽川 陽向(ib3352)が入室してきた。 後ろから着いてきたらしい清心が 「図書室では静かに」 こつんと頭を小突く。 「すみません。先輩。委員長が外出されて俺達『仕事』を割り振られたんです。それで…」 「なんちゅうか、去年より用具が増えとる気がするんや。整理もなんも、もう大変でなかなか外にでられへん」 陽向はしっぽをへにょりと下げる。 「でも、やりたいことはあるんや。やらなきゃならんことも。それで先輩」 「了解。はい、これでしょ。話は聞いてるよ。私も…実はそのつもりだったんだ」 折々は手に持っていた本を閉じると二人に差し出した。 『からくりの修理と対応について…』 五行の下町は、元より静かなところでは無いが今日は一際に賑やかであった。 「わわっ!? 成田! そんなに怒らなくてもっ!?」 町の上空を旋回しながら龍が飛んでいるのである。 それも、どうやら一人の子供を追いかけて。 「待ちたまえ。平野君。逃げるなどとは男らしくないよ」 龍など一般人には見ることも少ないと言うのに人々は、驚きながらもあまり気にしている様子はないようであった。 「何だ? あれは?」 買い物をする男は露店の女にそう問いかける。 「ああ、あれはこの辺生まれの開拓者の兄弟ですよ。どっちも志体持ちの開拓者だから時々荒っぽいケンカをしてねえ」 「まったくはた迷惑な話だな」 呆れたように言うと男は食料品を詰めた袋を抱えて歩き出す。 店の女はそれを見送ると、後ろに控えていた男性に小さく頷いて見せる。 そして男性劫光(ia9510)は 「行くぞ、白房。双樹」 囁く様に懐を叩くと、男の後を追うのであった。 「まったく。ようやく慣れてきた委員会。真名や彼方に新しいメニューでも習おうと思っていた所であったのに」 「まあまあ、拗ねない拗ねない」 真名(ib1222)は頬を膨らませた比良坂 魅緒(ib7222)を宥めるようにそう言うが 「別に拗ねている訳では無い。怒っているのだ。からくりを攫ったゴロツキどもにな」 きっぱりと魅緒は言い放った。 「からくりを人の欲の為に弄ぶとは…気分の悪い話。妾も及ばすながら手を貸すぞ」 「そう。いい子ね。魅緒は」 くすくすと笑う真名は手を伸ばして頭を撫でかねない雰囲気だ。魅緒は微かに頬を上気させる。 「な、何を…。まあ、そんなことはどうでもいい。だが…真名よ。こんなことをしては埒が明かぬのではないか? もっと積極的に動くべきだと思うぞ」 照れを隠す様に顔を背けつつ魅緒は言う。 「人魂での周辺探索も大事だが、当てもなく探すよりも敵の本丸にこちらから仕掛けた方が良いと思うぞ」 「ん〜、確かにそうなんだけど、その本丸がまだどこで、誰の城か解らないのよ」 魅緒は肩を竦めた。 「どこで、誰のとはどういう意じゃ? それほどに本丸がたくさんあるというのか?」 「あるらしいのよ。それが」 真名は肩を竦めて見せる。 何者かに誘拐された沙耶は侠客の元締めに仕える者であった。 侠客には敵が多い。本当の流れ者から、縄張りを二分する任侠一族まで。 強さ弱さに差があれど、その数は片手を超える程という。 「その中の誰がやったのかが解らない。おそらく流れ者のゴロツキだろうと言ってたけどけどまだ確証はないから、その辺の確定から始めなきゃならないのよ」 「なるほど…。ならばなおの事下っ端では無い所に辿り着けるよう考えねば…」 「そうね」 真名は少し考えるとぽんと手を叩く。 「それでね、けっこういいとこまで行けそうな仲間がいるの。手伝ってあげてくれない?」 魅緒の返事は決まっていた。 長屋に戻ってきた彼方はちらりと周りを見る。 長屋の前には彼の顔見知り達とは明らかに違う、剣呑な気配を纏った男達がうろついている。 「彼方さん。目を合わせてはいけませんよ」 袋に荷物を抱えた尾花朔(ib1268)が彼方に声をかける。 「あ、はい…」 彼方は慌てて前をむいた。 「大家さんの具合はいかがでしょうか? 食事がのどを通る状態であればいいのですが…」 心配そうに言う紫乃にそうですね。と静音が答える。 「まずは診察したいと思います。その状態を見て朔さん、紫乃さん。食欲が出るような料理をお願いします」 「解りました」「お任せ下さい」 頼もしい二人を見ながら静音は冷静に周囲を確認し状況を判断する。 迎え入れてくれた長屋の者達。 ここに来るまでに対応してくれた下町の住人達。 「…どうやら、すでに傀儡師の糸は十二分に張り巡らされているようですね」 仲間たちにだけ聞こえる声で静かに囁く。 「ええ。見事な手腕です。後は奴らを糸に追い込みから娶るだけ…」 頷きあって彼らは長屋の一角、大家の部屋に入る。 それから暫くして慌ただしく彼方が走り抜ける。 怪しく動き出す男達。 彼らはそれを見つめる静かな目が「外に」あることを、まだ気が付いてはいなかった。 ●張り巡らされた糸 トントン。 「失礼します。お水と氷を持ってまいりました」 「お食事もできましたよ」 ノックをして入ってきた紫乃と朔を 「お疲れ様です」 静音は笑顔で迎えた。 「今日も暑いですね。お加減はいかがですか?」 「お手数をおかけして…申し訳ありません。寝てなど、いられないのに…」 身体を起こそうとする婦人を手で押し留めて朔は持ってきたお盆を枕元に置いた。 紫乃は塩と砂糖、果汁を混ぜた冷たい水を静音に渡し、持ってきた氷は縁側の風が通る場所を選んで配置する。 「これで少しは涼しくなると思いますよ」 「料理の方は熱いかもしれませんが、体が弱っている時にあまり冷えたものばかりというのもいけませんから雑炊を作ってみました。粗熱が取れたら召し上がってください」 「ありがとうございます…。でも…食欲が…」 俯く婦人に紫乃は首を横に振った。 「お母様が元気でないと沙耶さんが帰ってきた時に心配されますよ」 「沙耶…。あの子は何か事に巻き込まれているのでしょうか? 皆さんの手を煩わせるような…」 心配そうに婦人は寮生達を見る。 寮生達は顔を見合わせた。臥せっているとはかつて下町を取り仕切っていた婦人だ。 沙耶が戻って来ない理由、寮生達が看病に来た理由。それらから状況を薄々察しているのかもしれないと彼らは思った。 今、真実を全て告げることは彼女の身体には良くない。 でも…縁側の向こう青空を飛ぶ鳥と、 「沙耶さんは必ず戻って来ます」 その下にいる見えない仲間達を見つめながら 「だから、まずは元気になられますように。動いている者もおりますし」 静音は信頼を込めて呟いたのだった。 「さあ、よってらっしゃいみてらっしゃい。曳きたて打ちたての蕎麦だよ〜。秋の新蕎麦にも劣らない夏の新蕎麦を食べていきな!」 元気のいい口上と昼時の空腹に誘われて、町外れの広場に開かれた屋台にはたくさんの人が吸い込まれていく。 「お! うまいな。これ」 「この時期の蕎麦は食えたもんじゃないとおもってたが結構いけるじゃないか」 人の噂が人を呼び屋台は行列ができるほどの繁盛ぶりだ。 だが、その光景を心配そうに見つめる者もいる。 「おい…大丈夫なのか? あいつ知らないんじゃ…」 「でも、下手に関わりたくはな…!」 周囲のざわめきが一瞬で止まった。 そして合間を開けず数人の男達が店の暖簾をくぐる。たくさんいるお客を押しのけて。 「お客さ〜ん。すみません。今込み合ってますんで外で並んで…」 蕎麦をゆでていた店主が気配に振り返り、注意をしようとするが ガラガラガッシャン、ドン! ガラガラガラ! 返事の代わりに響いたのは蕎麦の器が砕かれ、屋台の椅子が飛んで割れる音。 「おい! おめえ。一体誰の許しをもらってここで商売してやがるんだ! ここは俺達のシマだってこと知らねえのか!」 「ああ、そうでしたか。あいすみません。存じませんでした」 店の奥から出て来たのは身の丈2mを超える大男。 一瞬男達は怯むが、虚勢を貼って続ける。 「ちょいとうちの親分の前まで来てもらおうか。落とし前はきっちりとつけて貰わねえとなな」 「あれえ〜。お助け〜」 「ふざけてんのか?」 「いえいえ、お言葉通りに致しますので店とお客様にはどうかお手を出さずにお願いします」 「なら、とっとと歩け! おい! お前ら。あっちの連中と交代する前にこっちを片付けていけ!」 身体に似合わないか弱そうな声で手を合わせると店主は男達に追い立てられていった。 「やれやれ。陰陽寮ってのはやけにごろつきが多い所だなあ?」 「…まあ、あの先輩はやや特殊であるとは思うのだがな」 様子の一部始終を影から見ていた魅緒は側で呆れたように言う雲母(ia6295)に小さく肩を竦めてみせる。 「しかし、からくりも攫われて数日経っているのだろう? 手足が無くなってる可能性は高いだろうなあ」 ぷかりと煙管を吹かす雲母の言葉に、魅緒は真顔になった。 「妾はあいつらのあとをつける。こっちは任せて良いか? 雑魚が二人ほど残っているようだ。調査によるとあのごろつきどもが一番犯人の可能性が高いらしい。交代というのも向こうの見張りのことやもしれぬぞ」 「気が向いたら手伝ってやる。やることがあるならとっとと行け」 けだるそうに手を振る雲母に微笑んで、魅緒はまだ何とか見える男達を追って行った。 残った男達は周囲にあたりちらしながら屋台の周りの人を追い払い屋台を動かし、片付けようとする。 「余計な仕事を増やしやがって、人形を痛めつけてる方がよっぽど面白いのに」 「まったくだ。意気地のないあいつらを見張ってる方が楽な仕事なのに。さっさと済ませていくか」 通常なら聞こえない音を拾った雲母はピタリと動きを止めた。 「…私はぬるま湯に浸かるより熱い湯の方が好きだ。奴らも…どうやらそうらしいな」 手の指をパキと鳴らすと静かに、そして悠然と男達の後について行ったのだった。 五行の下町を走り回っていた平野 譲治(ia5226)は町から抜けたところで足を止めると息を整えながら 「成田! こっちなりよ!!」 空に向けて手を振った。彼に答えるように成田 光紀(ib1846)は炎龍を駆り手近な場所に着地した。 「作戦を聞いた時は龍で飛ぶのはともかく目立ちすぎないかと思ったのだが…どうやら上手くいったようだね?」 「成田のおかげなりよ!」 「いやいや、そればかりではないだろうさ」 光紀は肩を竦めて見せた。 彼は朱雀では無く青龍寮の寮生だ。 『青龍生がいる? 平野君との付き合い上と、暇潰しと言うものでな。諸君らは気にする必要は無いぞ』 と出会った者達には言ってあるが、元より気にする朱雀寮生は誰もいなかった。 しかも、今回の作戦。 二人で派手に動くことで、仲間や自分達の行動をカモフラージュする効果が発揮されたのだが、その発動には寮生達以外の協力が不可欠であったのだ。 一般人との協力が… 「それを、きっちり為してしまうあたり大したものだよ」 小さく笑って、光紀はさて、と話を戻し歩きはじめる。 「それで、平野君。君の目算としてはどうだね?」 「うん! おいらがあたりをつけたのはここなりよ!」 そう言うと彼は下町の地図を広げある一角を指し示した。 「このけっこうでっかいお屋敷、この辺が怪しいと思うのだ」 ふむと頷く光紀。 「なるほど。私の意見も同じだよ。この屋敷は古い武家屋敷のような感じでね、ぐるりと土塀で囲まれた敷地の中にいくつか土蔵があったのだ。そこにごろつきらしいものが入って行くのが見えた」 「じゃあ、やっぱりここなりかね!?」 「いやいや、結論は早計だ。君の仲間達も調査に動いているのだろう? とりあえず、ここに行って様子を確認する。その間に他の仲間達もここに集まってくるようなら正解だ。 皆で踏み込めばいい」 そう話し合いながら光紀は 「そうなりね…。でも…」 「どうしたのかね?」 ふと譲治が黙り込んだのを見て首を傾げる。 「町を危険に晒すか、我が子を助けるか…辛い選択なりね。おいらは、おいらなら、どうするなりかね…」 眉を寄せ下を向き、腕を組み考え込む譲治に光紀は声をかけなかった。 これは簡単に他人が答えを出せる話では無い。自分自身が決めるしかない事である。 「…んーんっ! おいらは今のおいらに出来る事をするのだっ!」 くすと光紀は笑った。この真っ直ぐな結論と心、思いこそが彼の最大の力なのだろう。と。 「ま、その意気だね。おや、見えてきたようだよ」 「っとあそこなりか…あれ?」 目的の場所に近付いたその時、譲治は同じように館の様子を窺う先客を見つけ、瞬きした。 その赤い髪の少女に見覚えは十二分にある。 「璃凛? 璃凛なりよね? どうしてここに?」 呼び声に彼女は振り向いた。 「あ、先輩!」 猫又を伴い、近くの家の影に隠れながら様子を窺っていたのは譲治の後輩芦屋 璃凛(ia0303)だったのである。 「うちは猫達に話を聞いてみたんです。そしたら、どうやらこの辺が怪しいらしくて…。先輩達もここに来たってことは」 近くで騒ぎは拙い、という光紀の提案で少し離れた物陰で話を始めた三人は互いに頷きあう。 「ここが正解である確率が上がってきた、ということだね」 「璃凛、一人で良く見つけたなりね!」 「一人じゃなかったから」 璃凛はよこでふいと顔を背けた相棒の猫又冥夜を見る。 「冥夜やったら、安全に探れるんやったな、猫の情報網は侮れへん」 なんだかんだと言いながらも協力してくれた相棒に柔らかく微笑んで。 「一応、先輩達にも伝令は出して…あ、ユイス! こっちこっち」 話をしていても彼らは近寄ってくる人影や彼らは注意を怠ってはいない。 「あ、先輩達。成田さんも」 先輩達を見つけ駆け寄った一年生は丁寧にお辞儀をすると間もなく他の先輩達も来ると告げた。 程なく言葉通り 「お、やっぱりここだったか?」 静乃を伴いやってきた劫光が仲間達に笑いかける。後から彼方も来る。 「俺達の調査もおおむねこの方向と、この家を示していた。今、双樹に捜索に向かわせてる。それで…沙耶の居場所が解ればいいんだがな…」 「…でも…にいや。この家、ちょっと…問題」 「静乃? どうした?」 くいくいと劫光の服の裾を引いた静乃が劫光と仲間達に言う。 「…流れ者のごろつき、って聞いてたけど…ここは違う。…別の…本物の極道組のうち」 「え?」 寮生達は顔を見合わせる。静乃はゆっくりと自分が心配していた事と、独自にしていた調査の結果を話す。 今まで何もしなかったごろつきが急に動き出したのは沙耶と言う駒を見つけ出しただけではなく、何か後ろ盾を得たからではないか。と。 彼女の考えを全法寺との連絡役を務めた彼方が補足した。 同じように下町の一角を縄張りとする一家が彼らを取り込み援助していると解ったのだ。と。 同じようにと言っても彼らは全法寺が率いる様な人々と共存する侠客ではない。 力で人々を支配しようとする本物の極道である。 「となると…ヘタに手を出すのは拙いか? 最悪奴らと彼らの正面衝突ということも…」 「遠慮しなくていい、とのことですよ」 背後から静かな声がかかる。現れた仲間に全員が目を見開く。 「青嵐(ia0508)!」「先輩?」「どういうことだ?」 問いかける劫光に青嵐はフッと笑って見せる。 丁度その時、屋敷の中に大柄な男が何人かの男に引きたてられて行くのが見えた。 「あれは喪越…なりかね?」 さらにその少し後、慌てた様子で男達が入って行くのも。 「おお! 皆、ここをもうつきとめていたのか? 雲母からここが奴らの本拠らしいと連絡があったのじゃ。 でもごろつきどもの様子が何やらおかしいのじゃ。急に慌てた様子を見せ出してのお」 男達を尾行していた魅緒が仲間たちの元に合流する。 「彼女の作戦が効果を発揮してきたようよ」 真名の言葉に青嵐は笑って頷いた。その言葉の意味を全員が気付いたわけでは無いが 「ん、今、喪越君、だったかな? 朱雀の男性が土蔵の一つに入れられたようだよ。そこに縛られて囚われている…からくりが一体。これが沙耶とか言う子ではないかな?」 人魂で様子を探っていた光紀が言うのとほぼ同時、壁からするすると降りてきた鼠が人型に戻って告げる。 『見つけましたよ。からくりさんを閉じ込めた土蔵。そんでもって喪越さんがからくりさんに何かしろとか言われてるみたいです』 「ご苦労。双樹。…青嵐。どうする?」 劫光は青嵐を見る。青嵐はいつものように腕を組んで笑ったまま、沈黙を守っていた。 その時、ふと劫光は『気付く』。 周囲を見回して、頭を掻くと 「よしっ! こうなったら殴り込みと行こう。一気に攻め込んで、沙耶誘拐の証拠を掴み、救出する。だが、無理はするなよ!」 仲間たちに向けて号令をかけた。そして譲治と璃凜を見る。二人はすでに劫光の隣に立っていた。 こういう時、仲間達の先頭に立つのも体育委員の務めだ。 「行くぞ」 閉ざされてはいたが鍵のかかっていなかった門を技と大きな音を立てて蹴り開けると、寮生達はその屋敷へと踏み込んでいったのだった。 ●力で勝てない相手 蒸し暑い土蔵の暗闇の中 ドン。 喪越の巨体が土蔵の奥に押し飛ばされた。 「いてててて。もちっと優しく扱ってはもらえないもんかねえ?」 彼の異論など勿論相手は聞く気はないらしい。 喪越と、いや正確にはその奥にいるモノと慌てて間を開けるように離れた。 「お前の役目はそのからくりを壊すことだ」 「からくり?」 喪越はようやく暗闇に慣れてきた目で自分のいる場所のさらに奥を見る。 そこには梁から落ちる鎖にだらりと吊るされたからくりの少女がいた。 「無事にそいつを解体できたら逃がしてやる」 背中にかかる声を無視して喪越はその少女からくりに声をかける。 「もしかして、あんた…沙耶セニョリータかい?」 『どうして…私の名前を…』 「良かった。ちゃんと返事ができるな。おっと、挨拶が遅れたな。――おっはろ〜、お元気ですかぁ?」 言いながら喪越はよっと梁にとりつき絡まった鎖を外していく。 「お前、何をしている! からくりを壊せと言って…」 「おっと、手が滑ったぜ」 パッとかざした喪越の右手に光が集まり、巨大な龍となってごろつき達に襲い掛かる。 「な、なんだ!」「ぎゃあああ!」 逃げる者、気絶する者。気が付けば術が消えた後はもう目を覚まして動いている者はいなかった。 「なんだ〜。だらしがねえなあ〜」 本来威嚇のみの効果しかない大龍符であるがヘタレを装っていた自分に放たれたことで効果が上がったのだろう。 「女を盾に取るたぁ、なかなかの外道っぷりで極道的には花丸だが、残念だったな。そいつは同時に死亡フラグだ。よいせっと」 鎖を外した喪越は地面に崩れる少女からくり、沙耶の前に膝をつき身体をよく見る。 ほっそりとした身体は喪越の体格であれば片手でも抱き上げられそうな程に小さい。 しかし服は殆ど形状を残さないほどに引き裂かれて全裸に近かった。膝の関節は砕かれ、表面には無数の傷。左の小指は一本無くなり、指も折れている。 この様子からするに彼女がからくりであったことはむしろ僥倖であったかもしれないと喪越は思った。 「酷い連中だな。っと、ボロで悪いが、我慢してくれよ」 自分の外套で沙耶を包むと喪越は少女をそっと抱き上げた。 『お母様…は?』 「大丈夫だ。どうやら連中も外に来てる。直ぐにおうちに帰してやるからな。もう少しの辛抱だ」 沙耶の額をそっと撫でて目を閉じさせると 「おっと、悪ぃな」 倒れ伏した男どもをわざと思いっきり踏みつけて、土蔵の外へと走り出した。 寮生達が突入して間もなく屋敷内からは十数人の男達が現れ、彼らを取り囲んだ。 「お前達は何者だ!」 「お頭!」 騒ぎを聞きつけて出てきた男が声を上げる。周囲の男達の様子からするにこの一家の長なのかもしれないと寮生達は思った。 「貴方達が攫った少女を返してもらいに来ただけです」 だが状況にまったく怯まず答える青嵐の返事に、 「少女? さてはお前ら全法寺の手の者か! 我々と本気で事を構えるつもりなのか!」 男は慌てた様子を見せる。 (自分が常に人の上位者であると信じて疑いもしないタイプだな。…小さい奴) 軽く肩を竦めた青嵐は 「あぁ、安心してください。彼らと戦ったり、もちろん逃げ隠れする必要なんてもうなくなりますから」 笑って見せる。 「何を!」「貴様ら、俺達をバカにしてるのか!」 「何をいまさら。貴方方は最初から馬鹿でしょう?」 はっきりと言ってのけた青嵐に仲間の寮生達は少し目を見開くが、止めることはしない。 「頭を使う事をしない無法者。暴力で何でも解決できると思っている者が愚かでなくてなんでしょうか?」 「なんだと!」 「よく思い知ることです。暴力を生業とする者が成り立つのは暴力に怯える者がいるから。暴力に誰も怯えず負けなければ、貴方方など無力な存在だと」 「言わせておけば! やっちまえ!!」 個性のない文言と攻撃は寮生達にとっては完全に想定の範囲内であった。 武器を持って襲ってくる男達、だが、歴戦の開拓者でもある陰陽寮生達にとってはそれほど脅威となる相手でもなかった。 先頭に立つのは劫光、譲治、璃凛の三人。 巴で攻撃をかわしつつ投げつけた石清水で身体を濡らす男に譲治は雷閃を当てた。 「少しは頭が冷えたなりか?」 璃凛の方も相棒の冥夜と連携しながら一人ずつ確実に沈めていった。 加え、ユイスや魅緒、彼方も攻撃に加わる。 「あまり荒事は得意ではないんだがな」 「僕は怒っているからね。今日は手荒に行くよ」 呪縛符、斬撃符、幻影符。 陰陽術を駆使して闘う寮生達に武器を持っているとはいえ、ゴロツキ達の攻撃は殆ど通用していなかった。 「おいおい、あんまりやりすぎるなよ〜」 仲間達に気を配る劫光にも余裕がある。懐に借りた静乃の白房の援護もあり、雑魚レベルのごろつきは彼らに触れることさえできないでいた。 状況は一目瞭然。男達に不利であった。 「くそっ!」 頭と呼ばれていた男が舌打ちすると、側にいた者に命令する。 「あのからくりを連れてこい! あいつを人質に…」 「おっと!」 走り出そうとした男の前に結界術符が立ちふさがる。 「行かせはしないよ」 光紀の声と同時、壁にぶつかった男は地面に転がる。 「くっ!」 今度は自分でと動こうとしたのかもしれなかったが、けれど男の考えは行動に移す間もなく徒労に終わった。 「皆の衆、ご苦労。お姫様は助け出したぜ」 土蔵の方からやってきた喪越が近寄ってきた男を蹴り飛ばしつつ、仲間に腕に抱えた少女を差し出したからだ。それは寮生達の勝利の証。 そして男どもの犯罪の証拠である。 周囲に歓喜の声が上がり、寮生達は喪越と沙耶の元へ駆け寄った。 「お、おのれええ!!」 頭である男は最後の抵抗にと青嵐に飛びかかった。 無手の彼ならともしかしたら思ったのかもしれない。 だが、その瞬間男の首を青嵐の手が掴んだ。そのまま握りしめ、斬撃符を放つ。 「ぐあああっ!」 「我々は陰陽寮生です。誘拐の証拠も発見しましたしじきに官憲が来ますよ」 あっという間に意識を失った男を見下すように投げ捨て、青嵐もまた沙耶の元に近寄った。 身体の様子は正直目を背けたくなるほどである。 だが、彼女の横に膝をついた真名は沙耶の小さな手を取った。 「朔達が言ってたわ。貴方の事を「お母さん」は凄く心配してるって、他にも貴方を助ける為に動いてくれた人がたくさんいるの」 もしこの子が自分の相棒であったら。思うと手に力が籠る。 「…待ってて。治してあげる」 『癒してあげたい』 強く願って。心からの思いを込めて真名は治癒符をかけた。 人妖の治癒符が凛に効果を表したことがある。 きっとできる。 「誰も、泣かない様に!」 祈るように発動された力は沙耶の表面の傷をそっと埋めていく。 「やった!」 砕かれた関節や指は治ってはいないが沙耶は、静かに目を開けた。 『…私…は』 「大丈夫。もうすぐおうちに、お母さんの所に帰れるわ。少し、おやすみなさい」 真名の優しい声に沙耶は頷き目を閉じる。 一瞬溶けるような優しい表情を浮かべて…。 ●小さなからくりの大きな未来 沙耶の傷の修復には専門技師の手と機材を擁して数日を必要とした。 陰陽寮の伝手から腕のいい技師を探し、材料を提供し修復を行って貰う。 応急手当と折々や陽向、寮生達の事前手配のおかげで救出後の修理はスムーズに進み、今日、沙耶は回復し母親の元へと戻ることになったのだ。 『お母様!』 「沙耶!」 息子に支えられながらも自分の足で門の外まで迎えに出ていた婦人は駆け寄ってきた『娘』を強く抱きしめる。 「…お帰りなさい。もう…どこにもいかないでね」 『はい。沙耶はお母様とずっと一緒にいたいです』 沙耶も自分の手を母の背に回し、強く抱きしめる。 その美しい光景を寮生達は遠巻きに、だが心に焼き付けるように見つめていた。 「…この度は本当にお世話になりました。心からお礼申し上げます」 息子である全法寺が寮生達の前に進み出ると深く頭を下げた。 「後の事は、我々が責任を持って対処します」 「よろしくお願いします」 全法寺の言葉に青嵐は頷く。 今回、寮生達の作戦が上手くいった影には全法寺とその一家のものだけではなく、彼らを慕う下町の民の多くの協力があった。 青嵐はまず始めに長屋の店子や婦人を慕う者達を集め、彼らと話したのだ。 沙耶の話、思い出、婦人の優しさ、一家の誠実など。 そして思いを強めた上で、 「それが奪われているのですから、貴方達に協力をお願いしたい」 と切り出したのだ。 幸いだったことは全法寺の一家が犯人達とは違い、正しい侠客であり周囲に慕われていたことであろう。 店子達から始まった連携は下町全体に静かに、だが驚く程早く広がり、下町全体が猫さえも寮生達に協力した。 「からくりは一定の衝撃を与えると起爆スイッチが入る」 というある程度知識があれば気が付く噂を信憑性のある話として伝えたのは折々であるが、人々が真実味を持って話した為に敵を浮足立たせた。 結果、敵に気付かれるより早く包囲網が完成し、敵を捕らえることに成功したのだった。 寮生達のカチコミの時も援護すべく一家の者達が集まっていたことを寮生達は後に知った。 ただ、一家と一家の全力戦闘になってしまうと、本当の抗争に発展してしまうから 「誘拐という犯罪を犯した者達を陰陽寮生が発見、捕えた」 とできた今回の結果が最高であったのだが。 「我々も…怒っていなかった訳ではないのですよ。特に私にとっても沙耶は母の娘であるなら妹です。大事な存在ですから…」 「沙耶。歌を歌って。久しぶりに貴女の唄が聞きたいわ」 『はい、お母様』 愛しげに二人を見つめる全法寺に寮生達は頷く。 「ゴロツキってお化け屋敷、邪魔しとった奴等なん? もっと脅かしとったら良かったで」 しゅんと尻尾を下げる陽向の頭を喪越はぽんぽんと撫でた。 「まあ、あいつらは当分出て来れねえだろうさ。出てくる前に旦那らが頭をなくした連中を潰しておいてくれりゃあ完璧だ。対処てことは、そういうことだろ?」 「はい、お任せ下さい。二度と同じことはさせません」 全法寺は頷いた。 全てが終わった後、婦人にも紫乃と朔が真実を話したという。 自分のせいでと、婦人は嘆くよりも変わらずに沙耶と接し、再発を防ぐ為に手を尽くすと決めたようであった。 沙耶自身も自分のと母の身を守れるように今まで会得や使用を封じていた護身の術を見につけると言う。 『お母様を、助け、守れるようになりたいんです』 彼女は真っ直ぐな目でそう言っていた。 「〜〜〜ん。綺麗な歌声だね〜」 折々は目を閉じながら沙耶の歌を聞いていた。 寮生達もそれには同意見であった。 澄み切った声にはどこか不思議な力が宿っている様にさえ感じる。 「からくりってもしかしたら陰陽術や精霊術だけじゃなくて、吟遊詩人の唄とかも使えるようになるんじゃないかな?」 「そうだとしたら沙耶さんはきっと素晴らしい吟遊詩人になれるかもしれませんね」 明るく笑う寮生達に改めて婦人と沙耶は近づいてきた。 しっかりと手を繋いで。 そして深々と頭を下げる。 「今回は、本当にありがとうございました。心からお礼申し上げます」 『ありがとうございました。私も、皆さんのようになりたいです』 「我が一家はいつでも皆さんのお力になります。このご恩は決して」 寮生達は彼らの感謝と戻ってきた家族の笑顔を報酬にして、陰陽寮へと帰って行くのであった。 後に、護身術を学び始めた沙耶が他のカラクリとは違う才能を発揮し始めた事を寮生達が知るのはもう少し後の事。 この事件はからくり達を巡る大きな流れの先駆けであった事を知るのもまた後日の話である。 寮生達に救われた小さなからくりは、やがて大きな未来、力を手に入れる。 大切な人を守る為に…。 |