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■オープニング本文 ●石鏡からの招待状 その日、五行王・架茂天禅(iz0021)は石鏡からの勅使が来たと知らせを受け、隣国とは言えそうあるわけでもない事態を鑑み五行国の警邏隊総指揮官である矢戸田平蔵を伴って面会に赴いた。 ――が、勅使と紹介された『彼女』の顔を見た途端に五行王の眉間の皺が増えた。 平蔵に至っては目を丸くした後で五行王を見遣り、思わず吹き出しそうになってしまって慌てて顔を背けるという状態。 五行王は問う。 「……此方が勅使か」 そう彼に伝えた役人は頭を垂れて「はっ」と肯定の意を示すが、王の様子がおかしい事には気付いていた。何か問題があっただろうかと内心で戦々恐々としていた彼に、王は深い溜息の後で告げた。 「隣国の王の顔ぐらい覚えておけ」 役人、固まる。 再び溜息を吐く五行王に、勅使――そう自ら名乗った女性はとても楽しそうに笑った。 石鏡の双子王が片翼、香香背(iz0020)。その背後では側近であり護衛でもある楠木玄氏が強面に呆れきった表情を浮かべていた。 役人達を下がらせ、五行王と石鏡王、平蔵と玄氏が向かい合って座す応接間。 「王自らのお越しとは火急の用か」と尋ねた五行側に対し、石鏡は「『あの』五行王が可愛らしくなられたと聞いたので直にお目に掛かりたくて」と笑顔。ゆえに場の空気はピリピリしている。……五行王が一人で不機嫌を露わにしているだけなのだが。 おかげで話は彼を除く三人で進められていた。 真面目な話をするならば、石鏡側は先の戦――五行東を支配していた大アヤカシ生成姫との大戦において様々な傷を負った五行の民を、数日後に控えた『三位湖湖水祭り』に招待したいというのだ。 もちろん招待と言うからには石鏡側で飛空船を準備し送迎を行う。 これから開拓者ギルドにも話を通し、当日の送迎警護や現地警備を依頼して来るつもりだ、と。 それ故に五行王の許可を得るため石鏡王は自らやって来たようだ。 「湖水祭と言えば三位湖畔に咲く彩り鮮やかな花の美しさも見どころの一つでしたね」 「ええ。今の時期は、特に鈴蘭の慎ましやかな美しさが湖の青と合わさって……」 平蔵の言葉にそう返した石鏡王は、しかしふと気付いたように意味深な笑みを覗かせた。 「そういえばこんな話を御存知? 鈴蘭は恋人達に幸せを運んでくれる花なのですって。五行王も矢戸田様も意中の方がいらっしゃるのでしたら、是非」 十四と言う幼さで王になった少女もすっかり年頃の娘になったかと思いきや、他人をからかう笑顔は一端の女性である。 平蔵が笑って誤魔化す傍らで、五行王はふんっと鼻を鳴らして一蹴だ。 その後、生成姫の消失によって起きた異変の件で石鏡の貴族、星見家の助力を得た事への感謝や、調査の進捗状況。神代に関しての話題もありつつ、王達の会談は恙なく(?)終了したのだった。 ●三位湖湖水祭り 石鏡を天儀において尤も豊かな国とした最大の恵み――それが国土の約三分の一を占める巨大な湖、三位湖である。 毎年6月の上旬に催される湖水祭りでは、水辺を散策してその恵みに感謝し、特設舞台では音楽隊や踊り手達が楽しい演舞を披露する。 また、首都安雲から安須神宮へと掛かる橋の上、巫女達が舞い踊る中央をもふら牧場の大もふ様をはじめとしたもふら様達が大行進するという。 例年は石鏡の民が楽しむための行事だが、今年は五行の民にも笑顔をという願いを込めた招待状が送られたことで、この警備、警護の依頼が開拓者ギルドに張り出された。 ●寮長と湖水祭りと 「皆さんにお願いがあります」 朱雀寮長各務 紫郎(iz0149)は委員会の活動日。 集まった寮生達を前にそう切り出した。彼の横には朱里と一人の娘。 長い黒髪と分厚い眼鏡をかけた娘は陰陽寮生ではないとは解る。 「お願い?」 「ああ、その前に紹介しておきます。ここにいるのは心愛(ここな)。私の乳兄弟で、今は五行の避難民達の介護や支援をしています」 「お見知りおきを…」 おずおずと頭を下げた娘を見る寮長の珍しい表現に顔を見合わせる寮生達。 だが、彼はすぐに寮長の顔に戻って告げる 「間もなく石鏡で湖水祭りが行われます。今年は先の戦乱で傷ついた人々を励ましたいと五行の民にも招待状が送られており、王の指示もあって本景の里や、瘴気汚染で避難した里の子供達と五行の下町の子供達を祭りに連れて行くことになったのです。その護衛と引率に皆さんの力を貸してほしいのです」 「孤児や、片親の子供もかなりいるので基本保護者はいても、同伴しません。今回参加するのは子供達だけです。宿舎は子供達と、護衛と引率である陰陽寮生用に宿が一軒用意されていますのでそちらを利用してということでした」 心愛が説明する。 「子供の数と年齢は?」 「年齢は5歳から14歳くらいまでです。今、希望者を募っていますが約30人〜50人前後でしょうか? お一人につき一人、ないし二人の子供を担当し、責任を持って連れ帰って頂けると助かります」 「人手が足りないようなら友人知人を誘っても構いませんよ。宿泊費、経費は五行と石鏡で持ちます」 「連れて行った先でやらなくてはならないこととかありますか?」 「特に何も。五行の皆さんを笑顔にしたいという石鏡の暖かいお心です。子供達と皆さんが楽しむのが一番でしょう」 にっこりと寮長は笑う。 つまりこの「お願い」は陰陽寮生にも祭りを楽しんでこいという粋な計らいであるのかもしれない。 「私も祭りに参加せよと五行王の命が下っていますので、子供達の件はほぼ皆さんと心愛にお任せしてしまうことになります。今回の件は強制ではありません。ただ護衛と引率が多ければ多いほど、たくさんの子供達が参加できるので力を貸して貰えると幸いです。人数が決まったら私か心愛に報告を。よろしくお願いします」 そう言って彼は去って行った。 …寮長が退室して後 「?」 いつも彼の側に控えている朱里が 『ねえ、皆。まだちょっと散らないで!』 珍しくも彼から離れて場に残り、寮生達に声をかける。 「どうしたの?」 『あのね。皆にお願いがあるの…ほら、心愛!』 朱里に背を押され心愛が前に進み出る。 「あ、あの! 紫郎様にはこの祭りで…縁談があるんです。五行王より直々に石鏡と縁を、と。…でも、紫郎様はお気が進まない様子で…」 俯く少女の頬は真っ赤に染まる。 ああ、と寮生達は思った。 この子は寮長の事が好きなのだ、と。 「…もし、紫郎様が、本当に望んでご結婚なさるのなら…私に止めることはできません。でも、もし…気が進まないご結婚であるなら…、なんとか考え直されるようお伝え頂けないでしょうか? お願いします!」 それだけ言って心愛は逃げるように走り去っていく。 『主家の後継者に使用人の娘が…なんて言ってるの。ねえ、なんとかしてやれない?』 かくして寮生達は、遠い石鏡の祭りと寮長の未来に思いを馳せるのであった。 |
■参加者一覧 / 芦屋 璃凛(ia0303) / 俳沢折々(ia0401) / 青嵐(ia0508) / 喪越(ia1670) / 瀬崎 静乃(ia4468) / 平野 譲治(ia5226) / 鈴木 透子(ia5664) / 尾花 紫乃(ia9951) / アッピン(ib0840) / 真名(ib1222) / 雅楽川 陽向(ib3352) |
■リプレイ本文 ●はじめての… 「うわ〜! すっげえっ!!!」 子供達は上空から見る、その光景にまず素直な歓声を上げた。 太陽の光と、空の青を移す三位湖はまるで水晶のような輝きを放っている。 「これから、あそこに行くんだ」「嬉しいな。どんなところだろう!」 はじめての旅行。はじめての祭り。 わくわくと胸を躍らせる子供達の笑顔に、それを見守る寮生達もまた、嬉しそうに、楽しそうにその顔を輝かせるのであった。 戦乱で辛い目にあった五行の民に笑顔を。 石鏡からの好意によって実現した今回の五行の子供達の湖水祭り参加である。 殆どの子供達は五行どころか生まれ育った町村から出た事も無い。 飛空船に乗るのも初めてなら、外の国に行くのも初めて。 飛空船が湖畔に到着した途端、今にも走り出さんばかりの子供達を 「待って下さい! まずは荷物を宿に置いてからですよ!」 鈴木 透子(ia5664)がピッ! と凛々しい声で諌めた。 子供達の足が止まり 「はいっ!」 と背筋を伸ばした。 「よろしい。ちゃんと約束を守れるなら、好きなところに連れて行ってあげますからね」 「お見事ですね。子供の扱いに慣れていらっしゃるみたい」 世話役の心愛が感心したように透子を見る。 飛行船に乗る前に透子はやや人の言う事を聞かないようなガキ大将の子供達を捕まえて勝負を挑んでいた。 「退屈しのぎに私と勝負してみませんか?」 かけっこと腕相撲。 最初は自分達と同じくらいの女の子とどこか甘く見ていた様子の子供達。 だが、彼女は百戦錬磨の開拓者である。 どちらも当然ながら透子の圧勝であり、それ以降子供達は透子を自分達よりも上の存在と位置づけたようである。 とりあえず素直に言う事を聞いている。 「透子さんは物事のポイントを捕えるのが上手でいらっしゃるようですね。見習わないといけませんね」 「!」 突然背後からかかった声に心愛は凍りついた。 おそるおそる振り返るとそこには柔らかく微笑む朱雀寮寮長 各務 紫郎がいる。 「紫郎様…」 「よっ! 寮長。今回はごこーいに甘えて遊ばせて貰うぜ!」 喪越(ia1670) がサインを切ると他の寮生達も会釈をしたり、笑いかけたりする。 「ご苦労です。心愛。皆さんも参加して下さったこと。感謝しますよ」 労う様に笑うと彼は宿はこっちだと手で合図した。 どうやら、迎えに来てくれたようだ。 「で、では、行きましょう。皆さん、ちゃんと寮生の方達と一緒に付いてきて下さいね」 「「「はーい!」」」 子供達は元気に手を上げると歩きはじめる。 賑やかに、おしゃべりしながら。 …ため息をつく心愛としては一列に並んで欲しかったのだろうが、子供達に黙っていろと言うのは無理な話だし、あっちへちょろちょろ、こっちへふらふらとする子がいるのはまあ仕方ないこと。 何せここは見知らぬ外国なのである。 子供達にとっては足もとの雑草でさえ興味の対象だ。 「ねえ、お姉ちゃん。これなあに?」 しゃがみこんだ女の子の指差した花にああ、と俳沢折々(ia0401)は答える。 「それは確かイヌゴマ。水辺に咲くことが多い花なのにこんなところにも咲いてるんだ。水の恵みがやっぱり豊かなんだね〜」 「おー! 見るなりよ。虫もたくさんいるのだ! こんなところで虫取りしたらきっと面白いなりね〜」 平野 譲治 (ia5226)も目を輝かせ嬉しそうである。 「先輩?」 どこか心配そうに芦屋 璃凛(ia0303)が譲治を見るが、そこは陰陽寮の三年生である。切り替えは早い。 「解ってるのだ。まずは祭りを楽しむのが第一なりね。ほら、皆、行くのだ! お祭りが待ってるなりよ!」 「わーーい!」 子供達を先頭に立って誘導していく。 「子供たちに、もっと笑顔をあげられるといいですねえ〜」 元気に進んでいく子供達をアッピン(ib0840)や真名(ib1222)、それに他の寮生達も眩しげに見つめていた。 子供達と寮生達に与えられた宿は、三位湖の湖畔に位置し、どの部屋も窓から三位湖が望めるなかなかのロケーションであった。 「勝手に出歩いてはいけませんよ。寮生の皆さんの言う事をちゃんと聞いて下さいね」 言い聞かせる心愛の言葉にとりあえず、子供達ははーいと返事をする。寮生達も改めて自己紹介だ。 「心愛はん、何が出来るか解らんけど…、よろしくな。皆も仲良くやろうな」 璃凛は心愛と子供達にお辞儀をし 「…瀬崎だよ。今日一日、よろしくね」 受け持つ子供達の前で、瀬崎 静乃(ia4468)はしゃがんで目線を合わせ右手を振りながら挨拶した。 振った手の中にふわりと小鳥が舞い降りる、声を上げる三人の子供達。 その一人の肩に静乃は小鳥を止めた。 「これは術の鳥でね。もし迷子になっても怖がらなくていい、おまじないだよ」 「それでどこにいきましょうか? 行きたいところはありますか?」 目線を合わせて問う寮生達に子供達は 「屋台!」「お祭り!」「湖!」「踊り見たい!」 とそれぞれ手を上げる。 「それじゃあ、明るいうちに湖で遊んで、それからお祭りを見に行こうか。大もふ様の行列や、巫女舞があるらしいからそれを見に行くとして」 「いいですねえ。それから石鏡といえば、もふら牧場ですよね。水遊びと屋台の食べ物で一通り楽しんだ後はもふら牧場でもふらさまたちを思いっきりもっふもっふして癒されるといいですよ〜」 「もふらさま! いっぱいいるの? 見たい、見たい!」 子供達のテンションは更に上がっている。 「ええか、良い子のお約束や、いきなり人の耳掴んだり、しっぽひっぱたら…あかん! こら! あかんゆうてるやろ!! めっちゃ、痛いねん!」 担当になった5〜6歳の子供達にこんこんと言い聞かせる雅楽川 陽向(ib3352)であるが、子供達の耳には入っているのかいないのか。 紹介された次の瞬間、ふわふわの尻尾を引っ張られた狼の獣人は、三度尻尾を触られ、もふもふされてもはや半泣き状態である。 「もふらさまより、こっちがいい…ふかふか」 尻尾を撫でる子供達に陽向は優しく言い聞かせる。 「人のもん触るときは、一言声かけてお願いするねん。相手がええちゅうたら、優しくさわるんやで。あかんちゅうたら、ごめんなさい謝るねん」 「…いまは…ダメ?」 「…ええよ」 「ありがと」 すりすりと頬を寄せる子供達に陽向は肩を軽く竦めながらも優しく頭を下げている。 「よしよし。良い子には贈りもん、手作りクッキーあげたる。獣耳カチューシャは、うちとお揃いや♪」 「かわいい!」 柔らかい獣耳をそっと撫でる様はなかなかに可愛いものだ。 「祭りは夜遅くまでやっていますが、子供達なのであまり遅くならないうちに戻って来て下さい。それ以外は皆さんにお任せします」 参加した子供の数は約30名。 寮生一人につき3人前後を見ることになった。 「私は基本、宿におりますので何かありましたらお知らせ下さい」 心愛が寮生達にそう告げる。 「寮長は?」 譲治の問いに寮長は小さく笑って答えた。 「私も夜まで宿にいます」 「お! てえ事は…寮長も隅に置けねぇな。こ〜んなキュートなセニョリータに、あ〜んな事やそ〜んな事を…」 ぐふふと笑って肘で突く喪越に 「止めて下さい。私と心愛はそんな関係ではありませんよ」 はっきり彼は答えた。 俯く心愛の顔にあちゃあという表情を見せた寮生達の思いを知る由もなく寮長は続ける。 「周辺の探索と、身支度を整えたら城に向かいます。その後は王の宴に同伴する形になるでしょう」 「王の宴? ああ、だからいつもと少し違う服着てるなりね」 今日の寮長の装束はいつもの平服である狩衣ではなく直衣だ。 色合いも彼に合わせられた陰陽寮でいつも来ている普段着より、上質の物に見える。 「王の宴って、お見合いなんですか?」 「見合い? どうしてそんな話を?」 「あ、ギルドでそんな依頼を出している方がいたって聞いたので…」 真名が子供達の頭を撫でながら聞く。 「ああ。確かに柚子平殿にも話が言っていると聞きましたが…」 透子は勿論、他の寮生達も聞き耳を立てた。 「お見合い…なんでしょうかね。良い相手がいないならこの祭りで探せ、とは言われていますが…。お前は柚子平よりさらに年上であろう。結婚する気はないのか、と問われました」 ふむ、と寮生達は顔を合わせる。 噂に聞く封陣院分室長に課せられた命令よりはどうやら緩い話ではあるらしい。 だが、探せと言われて探そうとしているあたり、心愛は対象外なのか。 「寮長先生、独身やったんか…知らんかったで!」 「まあ、仕事が忙しくてなかなかご縁が無かったのですよ。陰陽寮の寮長を拝命してからは研究に、授業に忙しくて、実家に帰ることもままなりませんでしたからね」 寮長は苦笑する。背後の心愛の顔がどんどん沈んでいく。 「それで、ここで相手を探せと。五行重鎮衆の婚活…五行七不思議やな」 「まあ、王命ですし…とりあえずお会いすれば義理は果たせるかと」 「もしその気がなくて、付き合いだけでお見合いしようというなら止めた方がいいとおもいますよ? 相手にも失礼です」 きっぱりと真名は寮長に告げる。珍しく寮長が目を丸くする。 「そういう…ものですか?」 「そういうものです」 したり顔で自信満々に言う真名の言葉に寮長は考え込む。 「先生の理想の新婚生活って、どんなん? お相手の好みとか、あるやろ? 奥さんは着飾ったお人形さんがええとか…マメに動いてくれる方がええとか…お気楽極楽な性格がええとか…色々あるやん!」 「解りません」 陽向の質問にさらに寮長は考え込む。本当に考えたことが無かったという感じだ。 「はあ? どういう意味や?」 「だから、結婚、というものを自分がすると意識したことが無かったのですよ。この手のことは、本当にはじめてで。今まで自分と周りの事で手いっぱいでして…女性とそういう会話をしたこともありませんでしたし」 こりゃダメだ。処置なしと言った感じで寮生達は肩を竦めた。 「知らんかったなぁ…、寮長センセが、色恋沙汰を知らん朴念仁やったなんてなぁ」 だが、安心もする。これなら逆に今回の見合いで見知らぬ相手といきなり結婚ということは無かろう。 「お見合いがはじめてなら、とりあえずお会いするだけしてみたら? その上で、素直に思ったところをお相手に伝えればいいだけだと思う。意外とこういう体験が自分自身の深い部分を見つめ直すきっかけにもなるしね」 折々はまだ考えている寮長の背をポーンと押して見せた。そして心愛の耳に軽く何事かを囁く。 「えっ?」 「あ、いやいやなんでもない。じゃあ、そろそろ私達はお祭りに行って来るから!」 「また後でな。心愛セニョリータ。それ行くぞ! ちび共競争だ!」 「いってきまあす!!」 「いってらっしゃいませ。どうかお気をつけて」 手を振って子供達と寮生を見送る心愛は 「やれやれ、あの子達には叶いませんね」 苦笑いする寮長に 「そうですね」 静かに微笑み頷いたのだった。 ●白き花咲く… まずは三位湖の周りで軽く水遊び。 「うわ〜。すご〜〜い!」 海と見まごう程に広い泉の入り江。周囲にはたくさんの鈴蘭の花。 浜に降りた子供達はさっそく水に足を浸して遊び始めた。 「これからお祭りに行くんですからね〜。服は濡らさない様にするんですよ〜」 「は〜い!」 アッピンの指示に子供達は返事をするが、さてさて、どこまで解っているのやら。 「ねえ。折々」 「ん? 何?」 子供達との身体をはった水遊びは喪越や譲治に任せて、娘達は少し離れた所から子供達を見守っていた。 「さっき、心愛に何を言ったの?」 真名の問いに折々は苦笑の顔で答える。 「う〜ん、大したことじゃあないよ。心配しなくて大丈夫。って王様の命令だからってピンとこない人とつきあうような寮長じゃないし、そもそも寮長そんなにモテないしって…」 「え? モテないって、それ、はっきり言ったの?」 目を丸くする真名に慌てて折々は手を振る。 「あ! 言ってない。言ってないよ。ただ、これがきっかけで寮長が結婚とか、恋愛とか意識してくれたらいいなあ、って思ったのは本当。だって、そうじゃないと王様も結婚する気にならないでしょ?」 「う〜ん、あの王様が結婚ですかぁ? 寮長や柚子平さんよりも想像ができないですねえ〜」 アッピンは言い、皆その通りだと思うが折々には別の計画があるようである。 「王様の周りの人が幸せな家庭を築けば、王様も所帯を持とうという気分になるかもしれないでしょ」 (そこに颯爽と名乗りをあげるわたし…うへへへへ) 「折々?」 「あ! いや、何でもない、何でもないよ! 今まで結婚する自分、を意識したことが無かったのならこれをきっかけに意識するかもしれない。そうすれば、心愛さんの気持ちもきっと通じやすくなるよ」 計画はともかく、これも本心である。 「心愛さん。子供の頃から、寮長の事、ずーっと好きやったんやて。子供の頃は一緒に祭りに行ったり遊びに行ったりしてたけど、だんだん寮長は家の跡取りとして忙しくなって、身分違いとかそんな感じで離れてもうたって言ってた。子供の頃貰った鈴蘭の花、心愛さん。今も大事に押し花にして持ってるんやて」 「身分違い、なんて五行じゃそれほど気にするモノじゃないですけどねえ〜。やっぱり主家がどうとか気になるんでしょうかねえ」 「こっちにも少しのきっかけがあればいいんじゃないかと思うんだけどね〜」 女子の恋バナよもやま話は尽きない。だが、 「おねえちゃ〜ん! そろそろおなかすいた〜〜!」 「服、びしゃびしゃになっちゃった…。どうしよう」 水遊びに飽きた子供達が戻ってくる。 「おやおや。あれほど言ったのに。まあ、大丈夫ですよ。心愛さんから着替えも預かって来てますから」 「お疲れ様。大変だったでしょ」 「いやはや。ガキンチョの引率なんてガラじゃないぜ!」 「でも、キレイな湖で遊べて楽しかったのだ! さあ、これから本番の祭りなりよ!」 「わーい!」 あれだけ大暴れしたと言うのに子供達はまだまだ元気いっぱいのようだ。 「あ、はいこれ。お姉ちゃん。おみやげ」 濡れた髪を拭いて貰っていた女の子の一人が手に持っていたものをはい、とアッピンに差し出した。 それは鈴蘭であった。 三位湖の湖畔に当たり前のように沢山咲いている。 白くて優しくて…綺麗な花だ。 「ありがとうございますね〜。でも祭りに行くとしおれちゃうかもしれないですから、帰るまでここで待っていて貰いましょうか」 小さな瓶に水を入れて鈴蘭をさすとアッピンはそれを道の端に置いた。 「よーし。それじゃあ本番の祭りにしゅっぱあつ!」 「さあ、遊ぶなりよ〜!」 子供達と共に寮生達は祭りに沸き立つ安曇の街へと足を踏み入れたのだった。 ●湖水祭りの輝き 祭りで賑わう安曇の街は、噂通りの凄い人であった。 「これは、集団で歩くのはちょっと無理だね〜」 「じゃあ、ここからはそれぞれに動きましょう。遅くならないうちに宿に戻るということで」 軽く打ちあわせて後、寮生達はそれぞれの子供達を連れて自由に歩くことにした。 「でも、せっかくだし、最初は皆でなにか美味しいものでも食べに行こうか。 やっぱりお祭りの醍醐味は屋台巡りだからね」 折々は子供達を連れてまずは屋台街に行くことにした。 他の寮生達もそれに続く。 安っぽい飾りやぬいぐるみを売る店、金魚すくいや射的の店などで子供達と一緒に足を止めながら食事の屋台へと向かうが…。 「うわあっ! 凄い数の店やね!」 思わず陽向は尻尾を振った。 ここに来る道すがらにも屋台はたくさんあったが食べ物の屋台だけが集まった食事の為の広場はさらに一層の賑わいであった。 「さあ、いらっしゃいいらっしゃい。あっつあつの焼き魚はいかが? 今日の朝まで三位湖で泳いでいたぴっちぴちのお魚だよ」 「今日は暑いね〜。冷たい冷やし飴、のんでいかっしゃい。甘くておいしいよ〜」 「ふかしたてのもふらまんじゅう! ふわふわで最高に美味いよ。美味しすぎてほっぺた落さない様に気を着けな!」 「焼きおにぎり〜、焼きまんじゅう〜、田楽に餅は如何?」 「冷たく冷えた胡瓜に人参。水分たっぷりの野菜は夏にピッタリだよ」 「三色焼き〜。肉に魚に野菜たっぷり。何が入ってるかはお楽しみ〜」 「飴細工〜。鈴蘭に、動物、龍も、鳥でも何でも作るよ〜」 「「「わああっ!」」」 子供達の目が前にも増してキラキラと輝き出す。 結陣の街の子も何人かはいるが、ここにいる子の殆どは五行の辺境の村の子供達である。 祭りと言っても小さな村の秋祭りくらいしかしらない。 こんなにたくさんの人がいるのを見るのも初めてなら、こんなにたくさんの食べ物を見るのも初めてなのだ。 「どれがいいかな。どれにしよう!」 「何でもいいよ。でも食べ過ぎるとお腹を壊すから気を付けてね」 「はい。お小遣い。好きなものを買っておいで」 「はーい!」 嬉しそうに屋台を巡る子供達が迷子にならない様に寮生達も後に着いて行く。 勿論、自分達も美味しいものを物色しながら、である。 「食事代込とは石鏡も太っ腹だねえ。あ、その林檎飴5本な」 「あいよ!」 「お姉ちゃ〜ん! 買ってきた〜!」 嬉しそうに走ってくる子供達。 「あ! そんなに走ったら危ないわよ…って、ああっ!」 真名が心配した通り、子供の一人が…こけた。 買ってきたもふら飴はぽーんと空を飛び、地面に落ちる。 ふわふわのもふら飴は、落下の途端、ぺしゃんこに潰れて、もう見る影もない。 「あっ…」 泣きそうになる子供。 「わっ! 泣かないで…また…」 買ってあげるからと言いかけた真名の前に一人の少年がすっと手を伸ばし、子供を抱き上げ立たせた。 そして、スッと自分のもふら飴を差し出したのだ。 「男なら泣くんじゃないよ。ほら、これあげるから」 「あ、ありがとう…」 何も言わずに軽く手を振って去って行く少年。 「ありがとーーー!」 もう一度大きく手を振る子供の背中を寮生達は嬉しそうに眺める。 「いい国なりね。石鏡は」 「そうですね〜。じゃあ、早くご飯を食べましょうか。もうじき大もふらさまの行列が始まるそうですよ」 「いっただきま〜〜す!」 「おいしい!」「あつあつのお魚最高!」「林檎飴あま〜い!」 「野菜嫌いだったけど、今日は美味しい!」 彼等はそうして、美味しい屋台料理に舌鼓を打つのであった。 祭りはまだまだ続く。 人の波はますます大きくなっていくようである。 それからも五行の子供達と寮生達は祭りを最大限に満喫した。 「ほらよ! 見えるか?」 年少の子を両腕に肩車した喪越の頭上から 「うん! 良く見える! とっても綺麗な女の人が踊ってる」 とはしゃぐ声が聞こえた。 「そりゃあ良かった。よーく見とけよ。あ〜。巫女のお姉さん達の見事なダンスは俺も見たかったぜ」 喪越は口ではそんなため息をつくが、子供達の嬉しそうな笑顔にまんざらではない様子であった。 「うわあ〜、ほんもののもふらさまだ〜。おっきい〜」 「あれは大もふらさまだからね。特別だよ」 もふらさまの行列に目を輝かせる子供達。でも、手はしっかりと陽向の尻尾を掴んでいる。 「あれもおねえちゃんのしっぽよりふかふか?」 「うちのしっぽより、もっともふもふやで。あとで、さわらせてもらいにいこか!」 「うん!」 「行列が終わった後であれば特別に触らせて貰えるかもしれないということですよ〜」 「やったあ!」 飛び跳ねる子供達をアッピンと陽向は楽しげに見守る。 「…人ごみに疲れた? ちょっと休もうか?」 「うん…」 興奮と人ごみの為か顔が赤い子供達を静乃はそっと人ごみから連れ出した。 気が付けば空はもうだいぶ茜色に染まっている。 祭りはこれからが本番であろうから、無理をさせてはいけない。 冷えた冷やし飴を飲んで一息。 「もうだいじょうぶ」 「…そう?…じゃあ、行こうか。逸れない様にね」「うん」 子供達と手をしっかり繋いで静乃は子供達と祭りの輪の中に入って行った。 「あ、このもふらのぬいぐるみ。かわいいわね」 「おねーちゃん。おかあさんへのおみやげにこれ買ってもいい?」 「いいわよ。私も桃音にお土産買って行ってあげようかしら」 露店を子供たちと一緒に見て回っていた真名はふと、顔を上げた。 広場の一角にあった仮設舞台で、飛び入り参加の芸人達が芸を披露しているのだが…。 「あら?」 気が付けばそこに譲治と璃凛。そして子供達がいる。 「おいらたちは五行から来たなり! 今回はご招待頂いてありがとうなのだ! 石鏡の湖水祭りはとっても楽しくて最高なのだ。そのお礼の気持ちを込めて歌と楽器を演奏するなり。皆も一緒に! なのだ」 譲治の合図で子供達が手に手に持った楽器を鳴らす。 笛やブブゼラ、鈴などありあわせのモノ。 歌も誰でも知っている古謡ではあるが即興である為、お世辞にも上手であるとはいえない。 ただ、子供達の笑顔が素晴らしかった。 楽しくて、嬉しくて、そんな満面の笑顔と共に奏でられる演奏は、見ている者達の心を温かくする。 いつの間にか、手拍子が沸き起こる。 歌を口ずさむ者もいる。 溢れる笑顔とリズムは、いつしか広場全体に広がり、長くいつまでも続くのだった。 「姉ちゃん! 今度はあっち! 輪投げしようよ!!」 「あ。もふら掴みだって。やりたい!!」 祭りの中で透子は自分の誤算を少々後悔していた。 子供達を元気づける為には夜店や屋台がいいだろうと思ったのだが、祭りでテンションが上がった子供達のエネルギーは留まるところを知らない。 ついでに言えばあまり大きな子供だと引率にならないので10歳程度の子をと希望し、そうして貰ったのだが実は、10歳の子供の知恵と体力と言うのは正直ハンパないのである。 「あっち!」「こっち!」「あれやりたい!」「これやろう!!」 「ちょっと待って!! 言う事を聞くの! 迷子になるわよ」 敬語も一休み。透子の言う事を聞かないわけでは無いが、少しもじっとしていない子供達相手はアヤカシ退治よりもずっと神経を使うものであった。 振り回されて、自分が遊ぶどころでは無い。正直くたくたであった。 「早く疲れて…」 そんな透子の心の叫びを知る由もなく、 「姉ちゃん! 早く早く!!」 暗くなって灯が入り、赤々と灯った提灯に子供達はさらに元気に祭りを走り回るのであった。 一方その頃の朱雀寮寮長は宴席にあった。 国賓の前で踊る名誉を賜る舞姫の踊りは見事なものであったし、出された食事も美味ではあった。 しかし各務の意識は別の所にあった。 『もしその気がなくて、付き合いだけでお見合いしようというなら止めた方がいいとおもいますよ?』 寮生の言葉が頭の中で渦を巻いていた。 例えば、今目の前で酒を注いでくれる女性。 彼女は美しくしとやかな女性であるが、共に生活ができるかと問われれば否、であろう。 各務には今まで仕事が第一であった。 仕事と言うと聞こえは悪いが、それが一番やりたいことであったのだ。 陰陽術を発展させ、可能性を広げる。瘴気という忌み嫌われる力で人を守り、未来へ繋がる希望を育てる。 『奥さんは着飾ったお人形さんがええとか…マメに動いてくれる方がええとか…お気楽極楽な性格がええとか…色々あるやん!』 だから…自分がだれか伴侶を持つとしたら、それは自分を理解し、共に歩んでくれる人…。 丁度舞姫の舞が終った。 拍手の中、各務は立ち上がると王の側に向かい一礼する。 「宴の途中ですが、本日は失礼いたします。人を…待たせておりますので」 「…解った。帰れ」 軽く手を振り追い払う様な仕草をした王と、宴席に向かって一礼すると各務は静かにその場を後にしたのだった。 ●鈴蘭の祈り 全力で食べ、走り、はしゃぎ、遊びまわった子供達はやがて、スイッチが切れるように静かになった。 疲れたのだろう。 低年齢の子は開拓者が抱いたり、おんぶをして。 高年齢の子は舟をこぎながらもなんとか歩いて、宿に辿り着くと子供達は皆、早々に寝てしまった。 「ふう、…寝顔はかわいいものですが、今日は本当に疲れました」 「お疲れ様です…」 ぐったりと肩を落とす透子に寮生達も苦笑いしながら同意する。 「冷たい麦茶をどうぞ。お酒などもご用意してあります」 「ありがと」 宿の者が用意してくれた飲み物を飲みながら彼らは大きく開いた居間の窓から三位湖を望む。 「確かに疲れはしたんだけど…」 夜の三位湖は昼間の水晶の輝きとはまた違って、静かな波音が広がる地上に降りた星空のようだ。 「でも、楽しかったね」 「うん。楽しかったのだ!」 「ええ」「そうですね」「そうだな…」 子供達と一緒に過ごした祭りはきっと一人で来るそれよりも楽しくて、寮生達も一緒に今日と言う日を満喫出来たと思う。 「石鏡の方と寮長に感謝しないと…あれ? そう言えば寮長は? さっき帰って来たでしょ?」 「多分、お部屋か心愛さんの所ではないですか? まあ、あれ一回でそう簡単に事が進むとは思いませんが」 「何かしたの?」 仲間の問いにアッピンが湯呑を揺らしながら笑う。 『寮長は鈍チンなトコありますからね〜。でもまずは自分の思いをキチンと相手に伝えるトコからです。ここはひとつ、勇気を出してみましょー!』 『寮長が好き、なりか?…なら、どんな結果が待っていようと言わなきゃなのだ。生あるうちに後悔はしちゃいけない。のだ。…なんてっ!』 譲治や少女達の後押しもあって、勇気を出した心愛。 その後、アッピンは寮長へのメッセンジャーを勤めた。純白の扇に思いを込めて。 『…これは?』 『可愛らしい女の子からの願いと思いの一欠けら。ちゃんと受け止めてあげて下さいね〜』 __ずっと、お慕いしていました。 昔…共に出かけた芝居小屋で、皆が笑っている中、一人泣いていた紫郎様。 小屋で働く子が不憫だと…。 誰も苦しまないで幸せに過ごせる国を作りたいと…そう言っていた紫郎様を、支え共に歩めたらと…夢見ています__ 添えられた鈴蘭の花と心愛の精一杯の告白。 折々ではないが、これが寮長の考え方を変える一つのきっかけになってくれればいいと思う。 「お師匠様の好みとは違いますね。結構遊び人好みだったんですけど…」 軽く微笑んで、寮生達は三位湖を見る。 湖からの涼やかな風が祭りに火照った体と心をそっと鎮めてくれる。 ふんわりと漂う鈴蘭の花の香り。 「これからまた祭りに繰り出すのも悪くないが…この余韻も捨てがたいかな」 「…そうだね」 「それじゃあ、後はのんびりしようか。屋台で買ってきた食べ物も、まだたくさんあるし。 五行と石鏡と…そして皆と子供達の未来に」 「…そして寮長と心愛さんに」 「乾杯」 寮生達は静かにそれぞれの杯を重ねあわせるのであった。 翌日、子供達と三位湖でもうひと遊びしてから寮生達は五行に戻って行った。 子供達は両手いっぱいのお土産と鈴蘭の花。 そして抱えきれない程のお土産話を家に持って帰り、家族に満面の笑顔で楽しかったと伝えていたと後に心愛が寮生達に伝えてくれた。 たった一泊二日であったが、子供達の胸に輝く思い出になったのならば、それが寮生達にとって何よりの報酬かもしれない。 さて、その後、心愛と各務の間が進展した、と言う話はまだ残念ながら聞かない。 戦乱の残務整理と、進級、卒業試験の準備に今までにも増して寮長は忙しくなったからだ。 ただ 「寮長! 子を産み、その子と共に成長するというのも一つなり。おいら、その子と遊びたいなりよっ♪! …って、あたっ!」 譲治の言葉に彼には珍しくこつんと頭を小突くという返事を返していた。 その時の彼の顔に譲治はいつもどこか取り澄ました朱雀寮寮長ではなく、どこか照れた顔の各務 紫郎を見たような気がしてにんまりと楽しそうに笑ったのだったという。 「桃音。お土産よ」 真名はもふらのぬいぐるみと鈴蘭の花を牢に差し入れる。 楽しかった湖水祭りの話をして、寮長の恋バナもして 「桃音は気になる人とかいるの?」 ふと真名は問いかけた。 桃音はそっと鈴蘭を手に持ったまま首を横に降る。 「好きだった人は…もういないから…」 そう囁いて。 「そう…でも、花には花言葉ってのがあってね、鈴蘭の花言葉には『幸福の到来』っていうのがあるんだって…」 真名は笑いかける。そっと桃音の手を取って… 「桃音にも幸せが訪れますように…」 かくして石鏡の三位湖水祭りは賑やかに終わる。 参加した人々の心に、鮮やかで優しい思い出をいっぱいに残して。 |