開拓ケット〜春の陣〜刹血華
マスター名:やよい雛徒
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 普通
参加人数: 25人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/04/24 14:05



■オープニング本文

 桜舞う神楽の都。
 街の大通りには、なぜかもふら様の隊列が歩いていた。
 ぽかぽか陽気なのに道草をしない、もふら様が荷車を引いている。
 覆われた幕で、何が積まれているかは分からない。
 もっふ、もっふ、と懸命に荷を運ぶもふら様たちは、一つの建物に吸い込まれていく。
 搬入口、と書かれた裏口だ。
 そして建物の正面入口には、淡色の衣をまとった幅広い年代の男女が列を成していた。
 頭の禿げた素敵なオジサマが、人々に向かって大声を張り上げる。
「これより、サークル参加者様の入場を開始いたします。皆様、お足元にお気を付けて、ゆっくりとご入場ください。尚、一般参加者様の入場開始予定時刻は、一時間後となっております」
 誘導係員たちが掲げる看板には、

『カタケット〜春の陣〜』

 という謎めいた文字が記されていた。
 しかも北館と東館で、刹血華と生成姫のプチオンリー実施中らしい。

 + + +

 カタケットとは『開拓業自費出版絵巻本販売所(絵巻マーケット)』の略称である。
 親しみを込めて業界人からは『開拓ケット』(カタケット)と呼ばれている。

 何を売っているのかというと、名だたる開拓者や朋友への一方的で歪んだ情熱を形にした、絵巻や雑貨品の数々だ。
 もちろん本人の許可を得ているわけではないので、半ば犯罪である。
 また開拓ケット会場には著名な開拓者の装備を真似た仮装を得意とする、仮装麗人(コスプレ◎ヤー)なる方々も存在していた。
 業界人にとって、開拓者や朋友は、いわば憧れと尊敬の的。秘匿されるべき性癖のはけ口といえよう。
 開拓者ギルドに登録する開拓者の数。
 およそ2万人。
 神楽の都が総人口100万人と言われる事を考えると、僅か2パーセントに過ぎず、世界各国で活躍する活動的な開拓者に条件を絞れば、その数は更に減少する。
 開拓者とは、アヤカシから人々を救う存在である。
 そして腕の立つ開拓者は重宝される。
 英雄たちの名は人から人へと伝えられ、人々の関心を集める結果になった。
 問題は……彼ら英雄を元に、想像力の限りを働かせる奇特な若者たちが、近年大勢現れたことにある。
 憧れの英雄は、彼らの脳内において好き勝手に扱われた。

 その妄想に歯止めなど、ない。

 妄想は妄想を呼び、彼らに魂の友を見いださせ、分野と呼ばれる物が確立される頃になると「伴侶なんていらない、萌本さえあればいい」そう言わしめるほどの魔性を放っていた。

 + + +

 そして何故か、アナタはカタケットの会場にいた。
 大きな催しがあるので、会場設営という簡単なお仕事に駆り出されたのだ。
 夜明け前に会場へ集い、設営を終えた。
 それはいい。
 しかし仕事が終わった後、開拓者達は其々の戦場へと向かっていく。

 戦う相手は、アヤカシではない。

 ある者は、夜明け前から凍死寸前で並んでいる一般人に混じって、入場者列に並んだ。
 ある者は、急いでもふら様のいる搬入口へ走り、売り物の数々を取りに行った。
 ある者は、急いで手荷物預かり所へ走り、衣装を受け取る。
 そして事情を知らない不運な者は、警備仕事の延長を申し込まれ、気がついたら雛壇にいた。

 そう、ここはカタケット住民の聖地。
 開拓者たちを愛し、相棒を愛してやまない、情熱に満ちた人々の夢の国。

 会場の渡り廊下では、出張してきた飲食店が立ち並び、身もココロも満たす用意は万全。
 お昼になれば、お決まりのテーマソングを歌う吟遊詩人たちが現れる。
 入場者全員で起立し手拍子を行う、あの一体感が再来する!

「えー、皆様。
 大変長らくお待たせいたしました。
 只今より『開拓ケット〜春の陣〜』を開催致します!
 また今回は、開拓者様のご厚意により、外部会場にて相棒祭を実施しております!
 普段は報告書でしか目にできない相棒たちとの交流をどうぞ!
 えーっと、あとは。
 今回は『生成姫ぷちオンリー』と『刹血華ぷちオンリー』を同日開催中です!
 東館の生成姫と、北館の刹血華をお間違えのないようお願い致します!
 生成姫と刹血華の仮装麗人の皆様は、今回の華!
 入場料が無料でございます」

 世の中ではアヤカシは脅威として知られている。
 しかし此処は開拓者本拠地。
 神楽の都は他国に比べて、安全は保証済みと言っても過言ではない。
 しからば萌えずにはいられない。
 ぷちオンリーとは、それを議題として扱うサークルの集合体である。
 つまりちょっとしたお祭りだ。

「ひーめーさーま〜〜〜! ナマナリさまぁ〜〜〜!」 
「セツケツカちゅわぁぁぁぁぁん!」

 珍妙な世界?
 いいえ、愛に満ちた世界です。


■参加者一覧
/ 音羽 翡翠(ia0227) / 柚乃(ia0638) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 御樹青嵐(ia1669) / 弖志峰 直羽(ia1884) / 珠々(ia5322) / 菊池 志郎(ia5584) / からす(ia6525) / アグネス・ユーリ(ib0058) / エルディン・バウアー(ib0066) / 雪切・透夜(ib0135) / ヘスティア・V・D(ib0161) / 燕 一華(ib0718) / マルカ・アルフォレスタ(ib4596) / Kyrie(ib5916) / セレネー・アルジェント(ib7040) / 熾弦(ib7860) / フタバ(ib9419) / 黒曜 焔(ib9754) / 緋乃宮 白月(ib9855) / 音野寄 朔(ib9892) / 宮坂義乃(ib9942) / ヴィオレット・ハーネス(ic0349) / 鶫 梓(ic0379) / 島原 左近(ic0671


■リプレイ本文

【※当報告書は不適切表現を■で塗りつぶしております。――――ギルドの受付より。】


 開拓ケット(カタケット)……そこは未知の知識に溢れる楽園である。 

 一般入場の開始時間は、さぁくる入場を済ませてからだ。
 北館のよろず区画に合同さぁくるで参加した音野寄 朔(ib9892)と鶫 梓(ic0379)は、事前に、大量の菓子を作っていた。忍犬の顔型桜饅頭だ。これは全て周囲への差し入れである。
 隣り合うさぁくるは今日一日を共に過ごす魂の仲間だ。
「今日はお互い頑張りましょう。この子(犬)はウチの忍犬です。お行儀がいいので、安心してください。……お手は、未だに間違えるのだけど。あ、いえ、なんでもありません」
「初参加です。宜しくお願いします。お菓子はお昼にでもお召し上がりください」
 律儀な挨拶と爽やかな笑顔。
 看板犬として連れてきた和が、尻尾を振りながら愛想を振りまいていた。
 鮮やかな敷き布で卓を飾り、相棒擬人化のほのぼの絵巻や無料の宣伝紙を並べていく。
 音野寄が愛らしい値札をつけていく。
「新作の便箋を気に入ってくれる人がいるといいのだけど。忍犬の毛並みと猫又の毛並みには苦労したのよね。炎龍のウロコも難しかった。……相棒を意識した簪は一点モノばかりだし。そういえば、梓は一体何を……」
 売るの? と言いかけて音野寄が硬直した。
 鶫の手元には『姉×弟』と『弟×姉』の絵巻があった。
 内容は、自主規制せざるを得ない品物ばかり。弟という設定に……否、弟というものに尋常でない情熱を捧げる鶫は、会場案内図を眺めて弟萌えさぁくるを楽しそうに探し始める。
「――相変わらずね」
 そこへからくり朝比奈が刹血華姿で更衣室から戻ってきた。

 ところで。
 なだれ込む入場者は大凡二種類に分かれる。
 ひとつは、魂のお宝を求めて縦横無尽に旅する狩人。
 いまひとつはお手製の衣装に着替え、有名開拓者やアヤカシになりきる仮装麗人たちである。

 設営仕事の後で延長仕事として選ばれた開拓者たち(犠牲者)の多くは、雛壇に配備されて絵師に取り囲まれ、退路を断たれていた。
 あげく会場に招かれていた金髪碧眼の変人、憂汰の目に叶った一部の開拓者は、高級素材で作られた衣装を渡され、仮装麗人に混ざるよう命じられていた。
 報酬が上乗せされる為、嫌々でもつい引き受けてしまう者があとを絶たない。

「臆さずによくぞ来た!」
 専用更衣室に響き渡る、芝居がかった言葉。
 刹血華姿の憂汰が、きらりと紺碧の瞳を輝かせる。
「人に夢と希望を与えるのが、高位の開拓者の役目です。そして私は、アナタに勝つ!」
 カッ、と双眸を見開く御樹青嵐(ia1669)は、当たり前のように女装をしていた。
 結い上げた黒髪に、翡翠の髪飾り。
 金細工の簪。薄青から紺に変化する豪奢な着物と純白の女帯。
 御樹が選んだ仮装は、武天有数の氏族鷹来家の女傑――鷹来折梅(iz0056)だ。
「この気高く美しい私が厳選した格好に、今こそひれ伏すのです!」
 堂々と言い切る御樹。
 彼の度胸は、確かに我が道を貫く(変人の)憂汰とイイ勝負だ。
 天才となんとかは紙一重と、偉い人も言っている。
「青ちゃーん、この飾り、何処の〜?」
 男性更衣室から弖志峰 直羽(ia1884)が現れた。
「腰のところですよ」
「ありがと、青ちゃん。会場では格好良く頑張るね。微笑みは口元だけでいーかなー?」
 御樹に半ば押し付けられた弖志峰の衣装は、ジルベリア皇女レナ・マゼーパ(iz0102)を模したもの。
 ちなみに御樹の手作りである。
 彼は最初こそ女装に難色を示したが、今回は露出の低さとお菓子目当てであっさり承諾していた。ちなみに珠々(ia5322)は黒猫耳と尻尾を着用させられている。
 弖志峰と珠々が会場へ向かうのを見送ってから、憂汰と御樹は再び視線を交わして火花を散らす。
「君の衣装と僕の衣装、どちらが優れているか。とくと見せてもらおう!」
「望むところです」
 睨み合う憂汰と御樹。
 このふたりは一体、何を張り合っているのか。
「僕に並ぶ美しさを見せてあげよう! いでよ! 僕の芸術の乙女!」
 なんと刹血華の衣装を着せられた柚乃(ia0638)が黒い服を着た人達に連行されてきた。
「うう、兄様探しに行かないといけないのに。兄様助けてぇ〜」
 柚乃の兄様、昨日から行方不明。
 憂汰の着せ替え人形と化している柚乃が項垂れている。対照的に、からくりの天澪は弓弦童子の衣装が楽しいのか、もふらさまのぬいぐるみを抱えて、くるくると鏡面の前で踊ってみせた。
 男性の存在に気づいた柚乃が胸元を隠し、涙をこらえて懇願する。
「あ、あの……これ、胸元なんとかなりませんか?」
「ああ、こぼれそうなナイス乳だ!」
 ビッ、と立てられる親指。
 輝く笑顔の憂汰。
「そうじゃなくて」
 黄金体型を隠したい柚乃には、拷問に等しい。
 泣きそうな顔をしたままの柚乃は、容赦なく会場へ放り出された。追加報酬が良くなかったら、逃げ出していたに違いない。


 会場では歪な熱気が充満していた。
「暇だったら噂の祭に来てみたけど……これ、ふらっと来る場所じゃ無いわねぇ」
 アグネス・ユーリ(ib0058)はパタパタと手で顔を仰いだ。人肉の熱は馬鹿にできない。
 どことなく妖気も感じる。
 ふと設営で見かけた珠々や柚乃を見かけて「ねぇねぇ」と話しかけた。
「その衣装って買うの? 作るの?」
 ユーリの瞳が輝いている。
 かわゆい女の子に萌えを見出し始めていた。逃げる背中を楽しそうに追いかけていく。

 賑わう北館が、個々の声を消していく。
 館内で最も目立つ雛壇に立たされた、燕 一華(ib0718)が狼狽えていた。
「動けないんですけど、いいのかな、警備」
 現在、警備どころではない。
 熾弦(ib7860)の口元が引きつっている。
「警備、という話でここに残ったはずよね? 私たちは……」
 じわりと漂う怒りと、益々拍車をかけそうな人間不信。しかし人間、というより開拓者は総じて騙されているようなので、熾弦の怒りも矛先を失っている。
 同じく戸惑う緋乃宮 白月(ib9855)が「冬場にも同じ様な状況があったような気がします……」と呟いた。道行く本物の開拓者……例えば、着ぐるみ姿のからす(ia6525)やセレネー・アルジェント(ib7040)に助けを求めても、華麗に立ち去られる。
 見事なまでの放置プレイ。
「馬鹿だな、ここは畑だ」
 意味不明な呟きを投げてきたのは、椅子に腰掛けていたキサイ(iz0165)は、さぁくる【奈華綾里】の本の隠滅でお金が足りなくなったのか、もはや自分の本を探そうという意思はないらしい。昨日の南瓜大王の被り物が大きすぎて危険だと没収されてしまったので、単なる執事服で鎮座している。
 会場を見渡したキサイは悩ましげに微笑み、瞑想の彼方にいた。
「……南瓜だ、あれは全部動く南瓜だ」
「キサイ君、しっかりして!」
 熾弦が襟首を掴んで、ゆさゆさと前後に揺する。
 効果なし。
「ホント。おっさん、ここでナニやってんだろうなァ」
 煙管をくわえた島原 左近(ic0671)が黄昏ている。熾弦が声を投げた。
「そっちも騙されたのね」
「騙された、つーかァ。報酬額が高かったし。……いつも世話になってる可愛い義弟に、たまには旨いモンでも食わしてやろうと働きに来たはいいものの」
 警備の「け」の字もない現状に視線が虚ろだ。
「報酬……確かに『仕事』を引き受けたのは、事実だものね」
 熾弦は考え直した。
 神事の時は大衆の視線にさらされてきた。視線の中に含まれる暴走的な感情の炎はこの際見なかったことにして、今更この程度の人数を前に舞うことを臆する必要はない、と。
「どうしましょう」
 悩む燕に、熾弦は「舞いや歌で満足するみたいね」と声を投げた。
「なるほど! 武術の型でもすればいいのかな。ちょっと楽しみになってきました」
「楽しみ……楽しむ、ね。あっちは別な意味で凄いわね」
「存分におやりなさい! もっと美しく!」
 熾弦たちの視線の先には、腰布一枚になったKyrie(ib5916)が壁に拘束され、小道具の矢がいくつも体に貼り付けられていた。本人曰く『聖人の殉教』を意識しているらしい。鍛え抜かれた体を披露するKyrieは悦に入っていたが、間近から見上げる乙女たちの眼差しは肉付きと腰布に注がれていた。
 どの分野においても半裸と下着は大人気である。


 有名だからといって、身動きが取れない開拓者ばかりではない。
 機転を利かせたマルカ・アルフォレスタ(ib4596)は一旦更衣室に向かい、仮装麗人たちが身につける番号札を腰に吊るして、再び会場に戻ってきた。
「今日は完璧ですわ!」
 本日のアルフォレスタは『アルフォレスタに扮した一般人』を装う方針らしい。
 決して『じいやがぎっくり腰で衣装が間に合わなかったからではありませんわ!』とは本人談である。
 通りがかりの仮装麗人から頻繁に声をかけられた。
「わぁ、すごい衣装の完成度ですね。似てるって言われません?」
「よく言われます。ではこれにて! ……他にもチラホラわたくしの仮装をした方が。嬉しいような恥かしいような変な気持ちですわね」
 頬を染めて野外会場へ出かけていく。

 一方、雛壇を見捨てたからすは、まるごとからすを纏っていた。下手に露出の高い格好などをするより、動きにくい着ぐるみを来た方が、周囲も大変さをわかってくれるのか、それとも威圧感に圧倒されるのか、兎も角そっとしておいてくれる。
 よたよたと通路を歩くからすは己が題材の絵巻を見つけるたびに内容を眺めた。
「よくかけてるじゃないか。装備は申し分なし、骨格も医学的に適切だ」
 さぁくるの売り手が返事に窮している。何故ならば成人向け内容だったからだ。からすは絵の完璧さだけに着眼しているのか、とくに文句も言わずに去っていった。


 ところで音羽 翡翠(ia0227)は司空 亜祈(iz0234)の所へ点心を買いに来ていた。
 雛壇で身動きの取れない礼野 真夢紀(ia1144)に『豆腐花と芒果布丁買ってきて〜』と拝み倒された為である。頼んで取り置きしてもらえばいいのに、と溜息をこぼす。
「あら、昨日の」
「こんにちは。司空さん、豆腐花と芒果布丁三人前お願いします。あとこれ、姫……じゃない、礼野真夢紀から差し入れだそうです」
 最新刊「開拓メシ」にも掲載した筍おこわが筍の皮に包まれて縛られていた。
「あら、ありがとう! お昼にいただくわね。今日は特別に、泰国から素材を取り寄せたの。味わってくれるとうれしいわ」
 続いて飲茶を購入したアルジェントは、既に手荷物から溢れんばかりの絵巻を眺めて困っていた。
「まだ青嵐さん、直羽さん、エルディンさん、キサイさん分野も買っておりませんのに」
 元々個人的な仁義で、知り合いの了解がない絵巻は買わない主義のアルジェントも、年々拡大していく規模と参加者の多さに嬉しい悲鳴を隠せない。
 当然、気合も入る。
「今日読みたいもの以外は一旦、発送してしまいましょう」
 彼女の狩りは、まだ続く。


 その頃フタバ(ib9419)は、自分と黒曜 焔(ib9754)とエルディン・バウアー(ib0066)三人の財布と館内案内図を手に、東館から北館へと移動していた。
 地図には移動順路まで書き込まれているが、初めてのフタバには迷路同然。
「これみてても……正直迷ってしまうわ。こんなとこ初めてやもん。しかもみんななんか目がえらい血走っとるし」
 身震い一つ。
 すぺぇすを動けないバウアーと黒曜の代わりに、もふら関連絵巻と雑貨の数々を購入する旅の途中だ。荷物が多くなるからと、もふらのゆきやおまんじゅうちゃんも一緒であるが、フタバは催し内容を殆ど理解していない。
 しかし素養はあったのだろう。
「おお、もふらの絵巻が仰山ある! どれもかわええ!」
 両腕いっぱいのもふら絵巻。しまいには実物大もふら専用の服飾製品を買い漁っていた。


 その日、頼まれものの色紙を描いていた雪切・透夜(ib0135)のさぁくる『向月葵』に現れたのは、来風(iz0284)だった。来風は初日に、さぁくる【四月朔日さくら】の旧作を買い損ねたので、買い足しつつ、他国風俗や風景絵巻などを探して歩いていたらしい。
「これこそ私の求めていた作品です!」
「お買い上げ、ありがとうございます」
 ジルベリアのお仕着せ服――メイド姿で接客する、からくりのヴァイスが絵巻や冊子を丁寧に包んでいく。
「新作は土地それぞれの情緒をこめました。異国がお好きなんですか?」
 さぁくる主の雪切は、ギルド仕事で各地を尋ねた経験を生かし、天儀、ジルべリア、アル・カマルなど、各地民族衣装を纏った可愛らしい女性の絵を描いただけでなく、余白や別項には雑把な個々の土地の気候や土地柄、服装の解説を入れていた。
 草双紙作家志望の来風には、この上ない最高の資料だったわけである。
「わたし、もっといっぱい世界のことを知りたいんです! ここに来れば、なんでも揃うって聞いたので。二日目も来てよかった」
「確かに揃いますが……」
 拳を握って力説する様に、雪切が別な意味で不安を抱く。
 島一つ挟んだ隣の区画では、見るからに……薔薇や百合が乱舞していた。

 じゃんる違えば、そこは異世界。

「ほほほ、なーんつって。『そなたは妾に捧げられし贄』……最新刊売ってんよ〜!」
 胸を寄せてあげるまでもなく完璧な生成姫仮装のヘスティア・ヴォルフ(ib0161)は、艶っぽい眼差しを道行く一般客に投げながら、男性向けと女性向けの絵巻を自さぁくるで売りさばいていた。
 目指せ大手。
 野望は大きく抱く。
 ヴォルフの最新作を手に「生きてて申し訳ありません!」だとか「姫様総攻め! もっと遠慮なくお気に入りの子を食べていいんですよ!」と謎な雄叫びをあげているのが、区画巡り中のアルジェントと、本職はギルド受付な北花 真魚(iz0211)だ。昨日から読み続けた【鷹羽柊架】作の萌え絵巻は既に手提げにしまった。
 ヴォルフが不敵に笑う。
「ふっふっふ、その本の萌えドコロは、最後まで神に祈りながら堕ちる神父さんだ」
 キリッ、と真顔で萌えを語る。
 悶えていたアルジェントが、あることに気づいた。
「あら……そっちにあるのは『エルディン×雪切』本じゃありません?」
「そ、少部数しか用意してこなかったんだけど、攻め神父がイイ味出してるぜ! 現物見た新刊落としちゃって……代わりに。最近は受けが主流だったから、戦後だし、攻めの需要があるかと思ってさぁ」
「言い値で買い取りましょう」
 ぱちん、とガマ口財布が開いた。

 隣の吟遊詩人区画では、自分が題材の絵巻を食い入るように見るユーリがいた。さぁくる主達のざわめきなど、全く眼中に無い。
「エレンも一緒に載ってる絵巻とか無いかなー……あ、あった!」
「……皆、上手いものだねぇ。アグネスや友人の描かれ方は、興味深いよ」
 エレンの人化、ほのぼの、コメディ、成人向け。
 初めて開拓ケット(カタケット)にきたとは思えぬ、海のように広い許容範囲で雑食ぶりを発揮していた。

 刹血華区画にいたヴィオレット・ハーネス(ic0349)は、夢に出てきた刹血華の妄想を絵巻に炸裂させていた。
 実際に戦ったことはないのだが、報告書を眺めていて理性がカッ飛んだらしい。
 最近ジルベリアで流行りの魔術師ならぬ魔女っ子姿で、ちっちゃな刹血華が胸をたゆんたゆんと揺らす絵が目立つ。
「一定の層には需要があるだろうしな。あ、後で神風の様子見てこないと」
 神風とは、彼女のグライダーである。

 野外会場の片隅では、有名開拓者や有名アヤカシ柄に塗装されたグライダーなども相棒祭の一環で展示されていた。
 いずれも情熱と煩悩が炸裂した外観だ。
 普段は街中に出せない愛機が、本日は誇らしげに展示されている。
 ハーネスのグライダー「神風」は刹血華カラーに塗装されていた。

 人々は好みのグライダーの前で、憧れの相棒と姿絵を描いてもらっている。
 例えば、刹血華姿の羽妖精キリエなどは信者を増やしていた。
「さぁ僕にメロメロになって! ……あ」
 様子を見に来た主人からすの目の前で、キリエは『幸運の光粉』を発動させていた。能力の無駄使いだ。からすは近づいて一言告げた。
「へえ、よくできてる」
 服が。
 髪は鬘にしろ、隠せない羽と絶壁の胸は違和感を運ぶ。
 しかし得意げに胸を張るキリエは「このつるぺたボディが良いと変態さん方が言ってくれるのですよ」と臆面もなく言い放つ。
 からすは取り巻きを一瞥した。
「……気をつけて帰ってくるんだよ」
 拐われないようにね。

 相棒祭の隣が、仮装麗人達が集合絵を描いてもらおうと集う野外会場だ。
 どこかの蕪が叫ぶ。
「似合ってるぞー!」
「………あっち行け」
 流韻(iz0258)の帽子に、紅蓮の花が咲いている。
 初日に引き続き、変人芸術家の手で肌に塗りたくられた練り白粉。ぷるりとした唇。帽子と衣装を飾る造花の緑葉。特注の着物。
 アヤカシの花姫、禍輪公主の仮装である。……が、覇気がない。
「あつい……うごけないよう」
 半泣きの流韻を弖志峰が宥めていた。
「うー、仮装麗人って大変なんだなぁ。この季節にこの服、ギリギリ暑い……ちょっと上着くらい脱いでもいいかな。あ、セレネーちゃんだ! なんか面白い本でも売ってた?」
 友人を一目みようと現れたアルジェントが「ええ」と弖志峰たちに微笑みかける。
「珠々さんの猫耳も可愛らしいですよ。それと皆さんに差し入れです」
 陰鬱な表情の仮装麗人たちを応援してやまないアルジェントは、戦う友人の為に苺大福を差し入れた。
「……それで、あの、是非とも青嵐さんと直羽さんで、お互いでアーンて、やって頂ければ」
 ぽ、と頬を染める。
 身の危険を感じた流韻が、巻き添えになる前に逃亡した。
 よくわからぬままでも、お菓子をもらえることに喜んだ弖志峰は「別にいいけど。青ちゃーん」と口を開けて待つ雛鳥と化している。
 何かを諦めた眼差しの御樹は「……仕方ありませんね。これも持てる者の試練です」と謎めいた発言をしながら食わせる。
 その光景をフタバが見ていた。
「あれが仮装麗人? すごいなぁ。きれーやわ」
「君も興味があるかい? これを差し上げよう」
 フタバは突然現れた憂汰に貰った絵巻を読んでみた。
 中身は禁断の愛だ。
 こちーん、と氷像のように硬直したフタバは、御樹と弖志峰を見て「そ、そうだったんや!」と絵巻の中身をまるごと信じてしまった。
 純朴な少女に誤解が拡大していく。
 一方で複雑な光景が絵に仕上がる。
「引き続き頑張ってくださいね! うふふ……これでまた現実と戦えます」
 絵師から買った薔薇百合な姿絵を、満足そうに眺めていたアルジェントは歩きながら我に返った。
「……明日からの食費、削らないと」
 愛の為に捻出した予備金も空っぽ。夢の国はお金がかかるものなのです。


 同時刻、宮坂 玄人(ib9942)はからくり桜花に引きずり回されていた。
「玄人様、行列待ちで何故干からびているんですか。勝負はここからですわ! 午前中が戦時なのです! 大手は午後には完売なのですよ!」
「どうしてこうなった……あれか、冬のがダメだったのか。頼むから発禁は買うなよ」
 本当は心底帰りたい。
 だが、財布を握り締めた桜花がとんでもないシロモノを買って帰ってきそうな気配がした為、顔を隠して同伴している。
 何故か煩悩に目覚めた桜花は『相棒×主人』じゃんるをさまよい続けていた。
 普段は毛や鱗に覆われた凛々しい相棒が、魔術師のヤバイ薬で人化する、なんてトンデモ擬人化展開も美味しく頂く。
 ふと設営の時に一緒だった流韻に遭遇した。
 からくりの荷物持ちな宮坂は「こ、これは断じて俺の趣味じゃない!」と、無駄な悪あがきをしていた。


 巷では滅多に見かけないはずの羽妖精がさぁくるを構えて売り子をしている。
 あげく雛壇にいたはずの妖精や人妖たちまでが、買い物にやってくる。
 驚くべき光景に人々は「買うものあるのか」とざわついていた。
 だが侮るなかれ。
 例えば、ヴォルフが成人向けの絵巻を大量販売する隣で、からくりのD・Dが人妖や羽根妖精向けの小物を販売していた。その繊細な仕事ぶりは、レース編みのボレロやポシェットから伺うことができる。会場で受注までしているのだから、これを知る妖精や人妖達は狙ってやってくるほどだ。
 下手な街中より物が揃う。
「おかえりなさい、ケチャ。D・Dさんの新作でしたっけ。春らしいドレスですね」
 お留守番をしていたバウアーが、羽妖精ケチャの装いを褒める。
 そう。
 すぺぇすの主はバウアーではなくケチャの方だ。
 妖精ケチャが同族向けに作った特別な極小豆本や絵巻は虫眼鏡がなければ人間には読めなかった。外見の作りだけは異様に美しく凝っていたので、黒曜が「可愛らしい絵巻ですね」と褒める。
 混沌とした中身を知らずに。
 輝く黒曜の眼差しは『きっと自然を司る妖精の感性が抜群に生きた、清らかで浪曼あふれる神秘的な作品に違いない!』という妄信的な思い込みに満ちていた。
「本物の妖精や人妖がこれほど見れる場所は、ギルド以外では此処くらいでしょうね。なにやら絡みつくような視線も感じますが……これも有名開拓者ゆえの性でしょうか」
 つい説法したくなる衝動を『今日はケチャの休日ですし』と堪えて、司空の所で買ってきた点心とお茶を楽しむ。
「くすっ、神父様と焔様ったら、人気者ですわ」
 人妖に頼まれた色紙を描く、妖精ケチャが意味深に笑う。
 もっとも。
 購入していく全ての羽妖精や人妖が、ケチャの描く内容を理解している訳ではない。
 菊池の羽妖精こと天詩は、意味も分からぬまま豆本を手にしていた。
 さらに探しに来た菊池 志郎(ia5584)に褒めてもらおうと部分的な朗読を始めた。
「しーちゃん、うた、ご本が読めるよ! うんと……『はだざむいよるも、あなたのあつい■■■が』……」
「やめて、天詩やめて! 読んじゃだめ! お邪魔しましたァァァ!」
 恐慌状態になった菊池が、天詩を連れて走り去る。
 一陣の風だ。
 幸い。黒曜とバウアーはお喋りに夢中で、真実を聞き逃したらしい。残念。
「ケチャさぁーん。新刊くださいなー!」
 午前中の戦利品を発送して身軽になったアルジェントがツーステップで買い物にやってきた。バウアーたちが「読めるんですか?」と首をかしげると「さぁくるを出すと聞いた以上、虫眼鏡は標準装備ですわ」と凛々しく答える。
 萌えの為には、努力を惜しまない。
 アルジェントが、虫眼鏡で立ち読みを開始する。
『い、いけません! 焔殿、私は神に仕える者です。あぁ! カソックだけは!』
『今夜はエルディンさんのイイところをじっくりと探してさしあげ……』
 最初から最後まで二人は裸。
 満足そうなアルジェントが顔をあげた。
 実態を知らぬ、現物の二人がお茶をのんで和んでいる。
 アルジェントが爽やかに微笑み「今回も素晴らしい愛ですわね」とケチャに囁くと「もっと激しい作品を作りますわ」と気取った返事が返ってくる。
 羽妖精ケチャは、薔薇作家で名声を極めていた。
 そこへ更なる来客現る。
「こんにちは。黒曜さん。羽妖精さんまで絵巻を販売してるなんてすごいですね」
「風来さん?」
 黒曜がエルディンやアルジェント、ケチャを紹介する。
「どんな方にも発表の場があるのはいいですね。今日は異国のおとぎ話も手に入りましたし。いつかわたしも……」
「帰ったで〜、皆のお財布、からっぽや」
 フタバが狩りから帰ってきた。
 膨大な量もふら絵巻ともふらさま専用の着替えや宝飾品の数々。戦重視の万商屋では決して手に入らぬ『見栄え重視』商品の数々を前に、バウアーが感動で震えている。
「うはぁ! 今日は良い夢が見られそうです」 
「疲れたもふ〜、おやつ奮発してくれもふ〜」
 もふらのおまんじゅうちゃんは黒曜に菓子をせがんでいたが、もふら登場に誰よりも喜んでいたのは来風だった。フタバの戦利品を眺め、どこで購入したか情報交換が始まった。


「それでは皆様! 開拓衆『飛燕』が一の華の演舞をご覧に入れましょうっ!」
 完全に見世物を受け入れている燕が、観客の前で棍を振るっている。
 その生き生きとした無垢な笑顔は『求められている!』という充実感に満ちていた。
 絵師たちの為に演舞を繰り返し、華麗な姿絵が量産されていく。
「えへへー、喜んで貰えるとボクも嬉しいですっ! せっかくのお披露目ですし、何か要望があれば、どんどん言ってくださいね! あ、そこのお揃いさーん! 一緒に描いてもらいませんかー?」
 会場を歩く自分の仮装麗人に声をかけ、壇上にひきあげる。
 本物とのツーショット。
 興奮気味の仮装麗人に気づかない燕は、ある意味幸せだ。
 充実した時間を過ごす燕を眺めて「輝いてるわね」と遠巻きに見守る熾弦たちがいた。
 初めこそ困惑していた緋乃宮も、羽妖精の姫翠がノリノリでモデルになっているので脱出を放棄していた。しまいには、頻繁に姫翠が絵師の手元を覗き込んで『マスターはモット猫っ毛です』などと厳しい審査をしている。
「次は私とマスターの仲の良さが分かる絵を描いて欲しいです!」
「いいよー!」
 仲良くなった絵師と姫翠の光景を眺めて緋乃宮がくすりと笑った。
「……姫翠は楽しんでいるみたいですし、それが救いでしょうか」
「楽しめていれば、ね」
 熾弦の視線の先には、不憫代表の島原がいる。
 ボヤキから家族関係を暴かれた島原は、義弟との私生活について吐かされていた。虚空を飛び交う暗号めいた妄言の数々に「叫ばれても何言ってるか分からんのよ?」と宥めて話に向き合おうとする。
 島原がイイ人過ぎて涙を誘う。
「熾弦〜、あっちに熾弦を描いたのあったよ? お洋服と一緒に買ってきたの〜!」
 羽妖精の風花は、ヴォルフの所でからくりD・Dが作ったレースの上着を纏い、帰る途中で発見した、熾弦の描かれた絵巻を購入して戻ってきた。
 中身は勿論、成人向け。
 熾弦が硬直したのは言うまでもない。
 困惑する無知な開拓者の傍らで、礼野は淡々と回復術などを発動させていた。
 報告書で開拓者の活躍を読むことはできても、実際に一般人が術を目にする機会というものは少ない。目の前で繰り広げられる奇跡の技は、絵師たちの糧となり、次回作という煩悩に華を添えることになる。
「お腹すいた。翡翠、早く帰ってこないかしら……あれ? しらさぎ?」
 からくりがいない。
 慌てて周囲を見回し、礼野の顔が青ざめる。
 しらさぎは、着物が乱れ、花輪をかぶせられ、男達に囲まれていた。
「ネムルすがた、かきたい? うん」
「きゃー! しらさぎ! 知らない人についていかないの!」
「ん? ごめんね、バイバイ。……マユキ、これしらさぎだって。エスガタいっぱいもらった」
 美しいからくりの絵だ。
 しかし絵柄に覚えがある。署名を見て、それが成人向けの絵巻を販売する大手の絵であることに気がついた。絶対に絵巻は見せられない……、と真実を知る礼野が、今後の対策に悩みだす。
「お疲れさま〜」
 音羽が礼野に頼まれた本と点心を差し入れに来た。
 音羽は、これから服飾区画でアクセサリーの買い出しに行くらしい。
 道中によろず区画で、音野寄の作ったモコモコ簪を見つけて、運命の出会いを果たしていた。


 昼時だろうと、午後だろうと会場の人ごみは消えない。
 幾度も羽妖精を見失う菊池志郎は、仮装麗人が集結する会場にたどり着くと。
「しーちゃん、うた、このお洋服着てって、金髪のおねーさんに頼まれちゃった」
 天詩の手には、刹血華の衣装があった。
「天詩、着替えないで! そこのアンタ、子どもになんて格好させようとしてるんだ!」
 刹血華姿の憂汰が微笑む。
「子はいつか旅立つもの。そして僕は、可憐な蕾を花咲かせる、北の戦女神!」
 ビシィ!
 と謎の姿勢で天を仰ぐ。
「……その変なお姉ちゃん、人の話を聞かないんだ」
 悟りの眼差しの流韻が、菊池を慰めるように肩へ手を置いた。
 会場の片隅では、アルフォレスタが若い男性を足蹴にしていた。踏んでほしいと懇願された事を『腰でも痛いのでしょうか』と斜め上の発想により、善意で承諾した為である。
 しかし。
「姫騎士萌え〜! はぁはぁ、今日の下着は白い紐ショー、へぶぅ!」
 迂闊な発言で蹴り飛ばされている。
 手加減はしているようだが、あの調子では今日はもう出歩けまい。
 微笑んでいるのに、アルフォレスタの気配が重い。
 弖志峰がそっと屍に手を合わせた。
「あれ? そういえば」
 黒猫耳と尻尾を着用した珠々がいない。もしかして帰ったのかな、と弖志峰が首をかしげた瞬間、柱の影に華々しい刹血華――珠々がいた。お昼に消えたトコロを憂汰に捕獲されて着替えさせられたのだ。
 しかし、こっちにこない。
「どうしたの……?」
 物陰から出てきた珠々の仮装は『刹血華が少女だったらこんなかも』という妄想を彷彿とさせるくらいには胸のボリュームが足りなかった。
 スッカスカである。
「お、おしごとです。おしごとのはずなんです」
 無表情だが、声が半泣きだ。
「げ、元気出して! 同じ人たちのところに混ざれば大丈夫だよ!」
 手を引かれ、刹血華が集う場所に連れて行かれる。しかし、そこは胸の格差社会だった。
 豊満な胸元を隠そうとする柚乃。
 絶壁と形容される無い胸の珠々。
 同じ刹血華衣装でも正反対の格好をした二人が、お互いを見つめあう。
『『……いいなぁ……』』
 人は自分にないものを欲する生き物のようだ。



 夕暮れとともに、主催者が閉幕の声を張り上げる。


 本日も開拓ケットは満員御礼。
 おうちに帰るまでが開拓ケット(カタケット)!

 皆さん元気に連休をお過ごしください。

 桜が散り、入道雲が空を駆ける。
 情熱が萌える夏に、またお会いしましょう――と。