暗闇の御伽草子
マスター名:やよい雛徒
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: やや難
参加人数: 9人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/03/28 22:09



■オープニング本文

 あなたを、
 あなたは、
 あなたが、

 だから、

 あなたを、ください。 


 狂わすなら四つ辻。
 子供の頃、そんな根拠もない噂が広がったことがある。
 恐ろしい何か。不思議な何か。そんな些細な刺激を求めてかもしれないが、とある長屋の一角に、最近そんな『狂った四つ辻』が本当に現れた。元々ゴミの掃き溜めのような一角であったが、此処最近、漬け物のような、腐った卵のような異臭を発しはじめ、時同じくして人が消えたり襲われるという話が立て続けにおきていた。

 まず姿を消したのは、四つ辻の傍に住んでいた六十代の老女、彰子だった。
 老女は元々偏屈で意地悪ではあったが、十代の美しい娘、沙華と二人暮らしで、娘の恋人、紫苑も足を運ぶ光景が見られたという。
 ところが、四つ辻の一角に住んでいた娘の恋人、紫苑が役者の端役『雪之丞』を掴んだことで、より役に専念しやすい場所を求めて後輩の家へ転居した。劇場は朝早くから夕方まである。打ち上げがあれば、夜遅くにもなることが多いからだという。男手がなくなった直後、老女は「散歩に行ってくる」と告げたまま姿を消した。

 一人残された娘は亡霊のように町を歩き回り、母を捜したが見つからず、噂を聞きつけた紫苑に引き取られた。気を抜くと家に戻ってしまう娘を案じて、四つ辻にあったお互いの家を板でふさぎ、思い出を断ち切るように言ったらしい。そして紫苑も後輩の家をでて、所帯を持った。気のいい若者だから、これなら安心だと近所の者達は胸をなで下ろしたと言う。

 ところがまもなくして紫苑も姿を消した。消える前日に後輩に役を譲ったというが、劇場の者が、仕事に来ないことを心配して若者の家を訪ねると、抜け殻のようになった沙華が一人座っていて、一言こういった。
『帰ってこないの』
 二人を探しに行こうとしたのか、ふらふらと町へ出て。
 そして二度と帰らなかった。

 それから半月もしないうちに、今度は四つ辻で通り魔が発生するようになる。

 最初に通ったのは、幸せそうな二十代の恋人達だった。
 時刻は真夜中。酒場の帰りだったらしく、酔っぱらっていたという。
 翌朝になって、腹の中身がなくなった男と、両目のない娘が見つかった。

 次に通ったのは、精悍な宮大工の若者だった。
 何故か素っ裸に近い状態であったが、心臓がなくなっていた。

 次に通ったのは、六十代の老人だった。
 うしろからひたひたと後を追ってくる音を聞いたと言うが、この人は無事だった。

 その次に通ったのは、二十代と十代の男性役者三人だった。
 翌朝、両足と両腕を1組ずつ失った男性二人が四つ辻で息を引き取っていた。一人は生き残ったが、事件に関して一切の口をつぐみ、現在は端役『雪之丞』から一転して、花形役者『影虎』として活躍をしているという。
 

 開拓者ギルドで調査資料を読んだ者はこういった。
「狂った四つ辻ですか」
 近隣住民から、気味が悪くて夜も眠れないと苦情が出たのだ。
「そういうこった。調査して、犯人をつきとめてこい」

 アヤカシか、モノノケか、それともタタリか。
 人は恐れる。
 けれど、犯人は相応の罰を、受けるべきだ。


■参加者一覧
万木・朱璃(ia0029
23歳・女・巫
鷺ノ宮 朝陽(ia0083
14歳・男・志
斑鳩(ia1002
19歳・女・巫
黎乃壬弥(ia3249
38歳・男・志
楊・夏蝶(ia5341
18歳・女・シ
ベルンスト(ib0001
36歳・男・魔
オラース・カノーヴァ(ib0141
29歳・男・魔
リン・ヴィタメール(ib0231
21歳・女・吟
フリーデライヒ・M(ib0581
12歳・女・サ


■リプレイ本文

「殺され方からして、アヤカシは絡んでそうやけど、直接何かしてるのは、狂わされた『誰か』ですやろか」
 リン・ヴィタメール(ib0231)は、傍らにいた黎乃壬弥(ia3249)の長身を見上げた。
「余り後味よくなりそうにねぇな。果たして関係者何人生きてるか。何にしても、首筋ひりつく時は、大抵碌な事にならねぇんだよな」
 黎乃が過去の経験からぼやく。
「消えた男女に、身体の一部を失った遺体。面妖な話じゃのう。調べた先にて現れるのは、鬼か蛇か。殺しの事は当人に聞くのが一番。妾は野暮用に出かけてくるぞ」
 意味深に笑ってフリーデライヒ・M(ib0581)は姿を消した。
「何故一部だけが失われているのでしょうね? まるで新しく作ろうとしているような」
 万木・朱璃(ia0029)の示唆する点は、皆同じらしい。鷺ノ宮 朝陽(ia0083)も頷く。
「ような、というより。一人分の部位を集めているようだね。奪われた部位も、優れているものを選んでいるようにも感じるよ」
「無くなったもん全部繋ぐと、人間一人分にちょいと足りない、ね。俺はご老体のお茶の相手でも、してくるとするか」
 黎乃は『お前もいくだろう?』と小首を傾げている楊・夏蝶(ia5341)を一瞥した。
「誰かがアヤカシになって周囲を順に害してる? だけど‥‥うーん、だめね。私も行くわ。次に近所、一座ね」
 生き残りの老人に、臭いがしなかったか、何か覚えていることは、と尋ねるつもりで。
 ベルンスト(ib0001)が黎乃と楊を呼び止めた。
「私は先に周辺住民の聞き込みにいく。後で来るなら一声かけてくれ。二度手間は避けられるだろう」
 オラース・カノーヴァ(ib0141)達は一座へ向かう。
 鷺ノ宮が時々町中で見かけるのぼり。雄々しい影虎。けれどその前に、紫苑から譲られたという『雪之丞』という女形に目を奪われる。
「雪之丞‥‥何て言う演目なんだろう? あの人。何故、語らないの?」
 演目の内容を、彼らは知らない。
 代替わりをした、その役が示す意味も。


 相手は今や花形役者。
 邪魔をしない条件で話を許され、万木達は楽屋裏へと通された。
 鷺ノ宮は、調査対象を舞台仲間やお客へと変えた。
 裏方にいる役者や座長は捕まえられる。
 残りは辛抱強く待った。
「口を噤んでるんは、犯人が紫苑か、紫苑から何か聞いてるからやろか?」
 憶測の域を出ないが、リンが万木に耳打ちする。
「知っているからなのでしょうが、そう簡単には口を開きそうにないですね」
 さて、どう口を割らせるか。
 斑鳩(ia1002)が舞台の方向を眺めて、方法を考える。
「奇遇ですね。私もそう思いです。話せないのは、事件がそれだけ凄惨だったか、後ろ暗い事があるのか、もしくは、知人が犯人だった為に言えなかったか」
「同感だな。或いは、言わなかったのは自分を守るためだった。とかな」
 カノーヴァが戻ってくる影虎を一瞥する。
「いきなり直球を投げても答えてくれないでしょう。焦りは、禁物です」
 斑鳩はまず相手の警戒を解くことから始めた。
「雪之丞や影虎という役どころについて興味があるのですが」


 一方、フリーデライヒは意外な場所にいた。
「後方からの頸部圧迫が死因とな。では盗まれたモノは死後に、このような包丁でか」
 殺しの当事者。それすなわち『被害者の遺体』である。
 物言わぬ死人こそが、最も情報を残してくれていると考えたのだ。
 既に埋葬済みの遺体なら、実際に扱った者に詳しく話を聞けばいい。残っている死体は直接検分する。致命傷、部位を持ち去る際、如何な道具を用いて取り払ったのか。
 自分自身に専門の知識はなくとも。
 専門家を介せば、詳細を知ることが出来る。
「ええ。よそで殺して転がした可能性が高いですね。一件目の男女は顔が鬱血してましたが、後頭部に別の膨脹がありました。男は頭蓋上部が骨折、女は点状の出血が下部にある程度。損傷の形状も異なるので凶器は別ですね。犯人は複数で聞き手も体格も違う。背後から殴って気絶したのを運び、絞めたのが適切かと。首吊りだと現場に諸々の体液があるものですが、衣服に付着している程度ですし、二つとも背中に死斑が集まっていた。死後、長時間仰向けにしてモノを盗み、辻に戻したんでしょうな」
 運搬は重労働だ。
 一体ずつ正確な情報を集めたフリーデライヒは、複数犯の確信を得て、そこを後にした。
「さて、老人は黎乃と楊があたってくれておったな。一座の方は沢山の者がいっておったし、今更わらわが押し掛けても‥‥そういえば。肝心な場所を忘れておった。合流まで間に合うじゃろ。日記の類があれば、色々分かるやも知れぬしのう」
 移り住んだ後の、紫苑と沙華の部屋へ。


 四つ辻の周辺は多くが漂う悪臭に耐えきれず、気味悪がって引っ越していた。人通りが少ないこの辻では、時々どこかの荷車が通る音がする程度だという。
『悲鳴を上げるくらいはできたはずだ』
 別れ際のカノーヴァの台詞が、ベルンストの脳裏をよぎる。万木も異を唱えていた。
「いずれも目撃者無き事件。被害者を無抵抗にする力でもあるのか」
 ベルンストの眉間にしわが刻まれる。
 そこへ老人を尋ねた黎乃と楊が戻ってきた。
「やっぱり異臭はしてたみたい。ただ追いかけてくる足音とは別に誰か走ってきて、細い悲鳴がして、振り返ると誰もいなかったとか」
 楊の話はまるで怪談だ。
「成る程。犯人を見る前に、何かあったな。三名の失踪事件の鍵は恐らく紫苑。前日に役を譲ったのは、何かを察していたと見るべきだろう。ならば先に消えた老女の一件とも繋がりはある筈と踏んでみた。老女は偏屈と聞いたからな」
 住民曰く、老女は紫苑を馬の骨扱いし、毛嫌いしていたという。近所の者は不憫に思った。沙華と紫苑の関係は、忍耐と葛藤の上で成り立っていたに違いない。
 ただ一つベルンストの想定外だった話がある。
 老婆の彰子は、最初から紫苑を毛嫌いしていた訳ではないということ。紫苑が一座の役者で、次期座長を目指していると夢を語った頃から、急激に関係が悪化したという。
「娘の亭主が夢見がちじゃ、ばーさんも納得がいかなかったのかね」
 黎乃がベルンストの話に唸る。ふと楊が通行人を呼び止めた。
「こちらの路地にお住まいの方ですか?」
 今引っ越しの最中だという。楊は質問の雨を振らせた。沙華の生立ち、本当の親子か、父親はどうしたのか、二人の暮らしぶりと関係は良好だったか否か。
「沙華ちゃんの親父さんなら死んじまってるよ。苦しい生活でも、彰子さんが若い頃に比べたら幸せだったんじゃないかねぇ。娘とふたり、念願かなって」
「念願?」
 楊が眉を潜めた。
 黎乃と不在の万木で、首をひねっていた問題がある。
「なぁ。沙華が彰子の娘にしちゃ、年離れ過ぎじゃねぇか? 孫とか養女を迎えたとか」
「沙華ちゃんは二人目でねぇ。四十の頃さね。この辺の皆で、お産は騒いだもんだ」
「二人目と来たか。ばーさん、一人目の事はしらねーか?」
「あー雪‥‥セツだったかね。エエトコのお女中の頃、旦那のお手つきになって、男子だったけん、取られたんよ。今頃は二十七、八? どこぞの若旦那なんじゃないかね」

 一方、リン達は、影虎の役者と押し問答を繰り返していた。
 名前で呼び合い、演目の解説をしてもらうなど、多少うち解けたとはいえ、散々無言で通した役者だ。紫苑は世話になった先輩でもあり尊敬もしていた、沙華は不憫でならなかった等の話はあったが、事件の日の事は頑として語らない。
「教えてくれはってもええんとちゃいますの?」
 それとも、とリンの口調には含みが残る。
「犠牲を増やさないため、人々の安心のために話して欲しいんです」
 もし知り合いのために口を噤んでいるのだとしても、それは犯人のためにならない。
 斑鳩の訴えに、カノーヴァが重なる。
「脅されているのなら、犯人から守ってやるからよ」
「舞台に参ります」
 再び出ていく役者。
 徐々に仲間が戻ってくる。ねぎらいの台詞を投げて斑鳩達の収穫を伺う。
 紫苑の失踪する直前の様子、役を譲った時の経緯、三人の評判。
「紫苑は挙動不審だったようです。俺にはやはり自信がないから変わってくれと頼まれたそうで。演目、見ていきますか?」
 斑鳩の説明きく黎乃は舞台を見た。
「筋から何か見えたり‥‥しねぇか」
 舞台に花が咲く。黎乃が楊に、尾行を囁いた。

 夜になって二件を見て回った。正面と窓は閉ざされている。カノーヴァが「こう見えて、俺は鼻が利くんだ」と示した先は、沙華の家だった。ベルンストが壁をつくり、男達が突破する。その間、残虐で人間離れした殺され方に、アヤカシの関与を頭から疑うリン、万木、鷺ノ宮、楊。しかし確証無く論じても堂々巡り。点と点が、線にならない。
 アヤカシか否か。疑念を払拭する方法を、斑鳩が提示した。
 瘴索結界。
 瘴気の有無で明確に出来る。斑鳩と万木、ともに反応はない。
 精々あるのは、隣の空き家に繋がる、不自然な窓だけ。増築の際に、壁を共有して増やしていった名残なのだろう。窓は空き家の方からタンスでふさがれていた。
 黎乃と万木が床下を調べようとして、あることに気がついた。
「このタタミ、裏返されてますよ、ね」
「隣の部屋と消耗具合が違うな」
 無造作にひっくり返して、血臭に気が遠のく。
 黒くこびりついた血、そして糞尿の入り交じった悪臭。
 もはや疑うまでもない。解体現場は、沙華の家だ。ここまでくれば、床下まで剥がさねばならない。床を剥いだが、何もなかった。とくれば、残るはもう一件。
「考えたくありませんが」
「あるとすれば死体、でしょうか?」
 万木に斑鳩が冷静に答えた。
「多分ここに答えがあるんじゃないかしら」
 楊の言葉通り、まず床を剥いで発見したのはひしゃげた遺体だった。着物から見て、失踪した老女、彰子に違いない。首に巻き付いた縄は、絞殺を意味していた。
「あながち、間違いでもなかったか」
 つぎはぎだらけの歪な男の死体があった。寄り添うような娘の遺体も。下から抉るように心臓を刺したままの包丁。裁縫道具が、隣にある。
 娘の膝には『ごめんなさい』と書かれた血文字の紙も。
 ベルンストは仮説を立てていた。紫苑が邪魔な老婆を手に掛け、それを沙華が知り思わず殺し、壊れた沙華がアヤカシにでも憑かれ『紫苑』を作る為にやっているのでは、と。
「沙華の凶行だったか」
 そこで話が完結しようとした時。
「わらわも同意するが、恐らく若干違うな」
 フリーデライヒが床下に潜り、沙華の顔をのぞき込む。
「自殺ではない。窒息の症状が顔に残っておる。昼間、遺体を検分した者を尋ねた。個別の死因に加え、妾に余計なことも教えてくれた。失血死では、このようにはならんそうだ」
 ためらい傷と呼ばれるモノが一切無い。傷の形も持っている刃の向きと違う。
 これはごく最近に偽装された自殺と見抜いた。
「じゃあ誰が」
「王手には弱いが、ほれ。二人の新居を見てきた。紫苑の日記じゃ。理不尽な彰子への苦悩と恨み、彰子殺害、後輩に現場を見られた事が暗に書いておったよ。紫苑は役を譲ったと言うより」
「脅されて口を閉ざしたのは、紫苑の方か」
 日記をのぞき込み頬をかくカノーヴァ。フリーデライヒが頷く。
「じゃな。影虎が紫苑を脅迫して役を奪い、放置された日記を沙華が読んだのは確実として‥‥その件と、紫苑失踪、沙華の他殺偽装、凶行の犯人まで繋がらぬのが問題じゃが」
 単なる目撃者ならば生涯、紫苑を下僕のように扱える。
「分かる、かも」
 黙っていた鷺ノ宮が手を挙げた。
「古株の仲間と座長さんに聞いたの。セツさんは小さい頃に一座に預けられてて、その時の母親に、沙華がよく似てるって」
「セツ?」
 ベルンストの問いに、斑鳩が答えた。
「影虎の役者さんの幼名だそうですよ」
「ってこた、彰子の第一子は、今の影虎か。彰子が一座に嫌悪感を示しても無理はない」
 黎乃が顎をかく。斑鳩達、役者を訪ねた者の脳裏に蘇る楽屋の会話。

『役どころ? ああ、この演目の雪之丞はね。大店の主人の隠し子で』

「仮にセツさんがそれを知っていたなら」

『密輸抜け荷の濡れ衣で、実の家族が殺されてしまうんだ』

「実母殺しの紫苑を、許さない、よね。きっと」

『影で見ていた雪之丞は仇敵に復讐を誓い、初舞台で仇敵に出会う。好意を寄せてきた仇敵の娘に接近し、好機を見いだすけれど、すがる娘に情が湧いてしまう』

 実母を殺害した紫苑を手に掛け、残された沙華は経緯を知て飛び出し、気が狂う。妹の沙華に情が湧いて手を貸したとすれば、男手を得た連続猟奇殺人は可能になる。
「影虎は繰り上がったって話だが、上役が巻き込まれたのは偶然じゃないな」
 カノーヴァの睨んでいた問題は、別の意味を含むことになる。
「影虎の人、表情にも声にも出さないけれど、後ろめたい事があるようにしか感じなくて」
 鷺ノ宮の台詞に、万木がため息を零す。
「ですね。実は別れ際にカマをかけてきました。ありがちですが『実はほとんど犯人のことはわかっているんです』と」
 反応は『へぇ、どれのことですか?』だったという。複数犯だと知られていないのに。


 聞き込みの成果と日記が物的な証拠に繋がり、彰子殺害は紫苑、紫苑脅迫と殺害は動機充分として雪が、多くの者を殺害し体を繋いでいたのは不審死を遂げた沙華となった。
 雪はカノーヴァ達によって役人につき出されている。
「どんなに恐ろしくても、人間の感情が起こした事なのよね」
 花を手向け、楊が寂しく呟いた。リンが鎮魂歌を歌う。万木が肩をすくめた。
「嫌な事件ですね。幽霊の正体が柳であってくれたほうがどれほどいいか」
 燦々と輝く光の下で、路地に風が吹き込んでゆく。
「沙華さんを殺したのは、雪さんなのかな」
「順番で行けば妥当だが、相手はだんまりだしな」
 鷺ノ宮の疑問に、ベルンストは肩をすくめた。斑鳩が残った謎に首を傾げる。
「んー。雪さん。何故妹にまで、手をかけたんでしょう。罪をなすりつけるにしても、そこまで? 沙華さんと二人で紫苑さんの体を繋いで、何をしようとしたんでしょうか」
「妾達は犯人は捕まえたが、あと一歩辿りつかなかった。それだけじゃ」


 記憶は、知られざる闇に眠る。
 あなたを、慕い。
 あなたは、秘密を知らず。
 あなたが、全て奪っていく。
 だから、返して。
 あなたを、ください。

『なんでここに、ひっ』
『日記にあったの。やっと見つけた。腐ったものを取ってるの。ある人が、教えてくれたの。鮮度のいいと、まれに命が宿るって』
『一体だれがそんな』
『ね。手伝ってくださるでしょう? よりいいものを集めなさい、って言ってたの』

 それは闇のなかで語られる。

『堪忍なぁ。でもこのままじゃ苦しいだけだ。バレたら獄の中だ。せめて夢の中で一緒にしてやるから。これできっと全部幸せになれる』

 血塗られた、おとぎばなし。