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■オープニング本文 「……妻を、連れ戻していただけませんか?」 物々しい空気を放っていた男は、開口一番でそう頼んできた。 え? なに? 夫婦喧嘩? 帰っていいですか? 「あああ! 帰らないでください!」 男が面倒臭そうな気配を放っているので、思わず詳しく話を聞く前にご辞退申し上げたい気持ちを、高額報酬を目の前にぐっと堪えた面々は「とりあえず話をどうぞ」と経緯を尋ねる。 奥方を探しているこの男、名前を如彩誉と言う。 五行国の東方にある米所、白螺鈿という大きな街を統べる地主の長男である。 「昨年末、妻の恵が『あまり家にいたくない』と言い出しました」 年若いこともあり、実家が恋しくなったのだろう……と考えた誉は、特に渋い顔もせずに『羽を伸ばしておいで』と送り出した。元々豪商の愛娘で、美食家としても名高い為、しばらく実家にいた恵は後に、首都の結陣へ一ヶ月ほど出かけてくるという手紙を夫の元に送付した。 「それから半月も経たずして、妻が帰ってきました」 より華やかで美しい装いをした妻。 帰宅後の恵は『あなたの傍がいい』とか『寂しかった』とか、それこそ普段口にもしない可愛い台詞に、多忙を極めていた誉も、仕事は大切だが偶には夫婦水入らずの時間も必要だ、と思い直すようになった。 そして薔薇色の正月が訪れた……かに思われた。 「更に半月経つと、もう一人『妻』が帰ってきました」 ん? 話がおかしな方向に進み始めた。 「それは……愛人とか?」 「いえ。妻の『恵』が、です。豚のように丸々肥えた妻っぽい女性が、人目を忍ぶように帰ってきて……私達と鉢合わせたんです」 「奥さんが二人? おかしいですよね、それ」 「はい。これは『妻を語る偽物』と思い、後から来た女性にお帰り頂きました。しかしながら、その日の午後に陰陽師の方とお会いした際『隣にいた妻』が夢魔というアヤカシだと分かりまして」 追い返してしまった方が『本物の恵だった』と。 「それは……奥さんを捜す前に、アヤカシをどうにかした方がいいのでは」 愛が通じなかった恵も可哀想だが。 「その点は心配無用です。当家にいらしていたのは封陣院の分室長様でしたので、早々に祓って頂きました」 さいですか。 「つまり……正月太りで外見が変わった為に、夫に偽物扱いされて傷心のあまりに失踪した奥さんを探し出して連れ戻して欲しい……と」 辛辣な確認に、沈黙が流れた。 「おっしゃる通りです」 弁解の言葉もないらしい。 恵が失踪したのが一月末。 その後、誉は仕事を滞らせつつも、妻に心から謝罪して家に帰ってきて欲しいと考え、行方を探し続けた。すると恵は、怪しげな団体にハマリ、暴飲暴食を続けている事が分かった。 噂の団体は『美肉の会』という。 ふくよかな女性達を集め『食べる女性は美しい!』とか『美意識は時代によって変化するのだ!』とか『我らが新たな美の化身になるのだ!』などと声高らかに歌い、過剰な食物摂取を正当化して、仲間を増やし続けている。これがまた女性達にひどくウケていた。 「……その団体に乗り込んで探せと?」 「いえ、解体含めてです。最近、過剰な布教活動が問題視されてまして、団体方針に興味のない女性を拉致監禁したり、法外なお布施を集めたりですね。野放しにできない状況になりまして」 誉は、妻を連れ戻す依頼の他に『美肉の会』討伐資金と地図を置いた。 色々骨が折れそうだ。 |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
ハッド(ib0295)
17歳・男・騎
フィーナ・ウェンカー(ib0389)
20歳・女・魔
罔象(ib5429)
15歳・女・砲
Kyrie(ib5916)
23歳・男・陰
フレス(ib6696)
11歳・女・ジ |
■リプレイ本文 依頼人の誉から恵(iz0226)失踪を聞かされたKyrie(ib5916)は真顔で呟く。 「雌ブ……いえ、恵さんが失踪を? しかも元の体型に」 心の声が漏れてるよ! 幸いにも旦那さんは自分の失態と連日の過労でイッパイイッパイだった。 ふぅやれやれと頭を振った罔象(ib5429)が、誉の両手を握った。 「では焼きブ……失礼、美肉の会の壊滅と恵さんの連れ戻し、承りました!」 「は?」 アウトオォォォォ! となると報酬が危ういので朝比奈 空(ia0086)が間に入る。 「ではやきぶ、それはつまり『早く気張っていく』という他国の流行語です!」 苦しい! 「ともかく誉兄さま!」 フレス(ib6696)も手を掴んだ。 「間違えたことはふかーく反省してね! 私達がその迷惑な団体を潰して、恵姉さま連れ戻して、元の夫婦生活送ってもらえるよう、がんばってくるからね!」 「あ、ああ、宜しく頼む」 話題の修正完了。 かくして危うい発言を経て依頼に至る。 手に地主からの書状を持った朝比奈は戸惑いの表情を浮かべながら門を注視していた。 書状の中身は『犯罪行為は住民に迷惑だから、強制解体ね!』な感じである。 「以前受けたお仕事の依頼人が怪しげな団体にのめり込んでいるという話でしたが……何と言いますか、門を見ますと……形容し難い物ですね」 食を賞賛する異様な門構え。 音便に済むと思えない。むしろ実力行使は間違いなし。 というのも。 「今回解体させる組織は……肉の群れ、でしたっけ?」 隣のフィーナ・ウェンカー(ib0389)は既に相手を人として認識していない。 「名前くらいは覚えてさしあげても」 「まあ、いいじゃありませんか。兎も角それを解体するんですよね。肉だけに」 「やる気ですね」 「もちろんです! 任せてください。破壊は錬金術の十八番です」 「……くろこよ……」 イイ笑顔に複雑な眼差しを送るハッド(ib0295)は保身を考え、距離を保つ。 ココで。 よい子の皆さんに役に立たない耳より情報をお送りしたい。 『せんせー! れんきんじゅつ、ってなあに?』 『それはですねー、鉄・鉛・銅などの卑金属から金・銀などの貴金属を製造しようと妄想してやまない方々が、湯水のように貴金属を買える位の大金をつぎ込む秘術のことです。今のところ実現はしていません』 以上、天儀の雑学より。 いつもは元気溌剌としたハッドも斜めの空を見ている。 「過度の正月太りで外見が変わった嫁と、太った妻の姿を見抜けなかった夫か……なんじゃかの〜、お似合いといえばお似合いじゃがの」 辛辣! しかし減量の努力が無になったのは間違いないので、気持ちはわからんでもない。 Kyrieが仲間の肩を叩く。 「後で減量させるとして……まずは連れ戻しましょう」 罔象がくるりと振り返る。 「思い切り単純な手ですが、正面から粉砕していく陽動班と、陽動班に美肉の会が注意を向けている間に潜入する潜入班に分かれ、美肉の会を壊しながら恵さんを連れ帰る、というのは如何でしょう? 私は正面から参ります!」 ウェンカーが暫く考えに耽り。 「では、これをどうぞ」 潜入説得を担うフレスに渡したのは、ウェンカー監修の元で夫の誉に書かせた、心の底からの謝罪と(適度な)愛の詰まった手紙である。 間違っても三行半ではない。 「恵さんに渡せば再会の心構えも出来るしょうし、説得の材料にでもなるでしょう」 「そっか! 流石だね! ありがとうなんだよ、フィーナ姉さま!」 「ふふふ、もっと崇めても構いませんよ」 笑顔の妄言を華麗にスルーしたフレスが走っていく。 「では参りましょう」 Kyrieは「よっこらしょ」と年寄りのような声を上げながら、山のような荷物を背負った。その荷物はさながら『これから雪山のぼってきまぁす』的な量であるが、中身はあれこれとチョイスしたお肌のケア道具一式である。 晴れやかで愛想のいい極上の笑顔が、何故か仲間の戦慄を煽る。 門を潜ると、そこは肉国でした。 「決して!」 「ここは!」 「通さない!」 なんか言ってる。なんか言ってるよ。 露出が高いが色気の欠片も感じないご婦人達が、ふーふーひーひー言いながら、輝く汗をキラキラさせて(現在の気温はマイナスです)横並びに立ちはだかり、よく分からないポーズを取ったまま、もぐもぐ言ってる。 「我ら美しき美肉の会!」 せめて食べ物を飲み下してから、喋ってくれ。 罔象は後ろの仲間達に、数秒間目を瞑るように告げた。 そしてくるりと振り返り。 「はい、そことそこと以下同文な方々、邪魔です」 にべもなく閃光練弾を放った罔象。 敵の目はくらませた! そのまま沸き上がる(破壊)衝動に身を任せる。 「さーちあんどですとろーい!」 どっこーん、ばっこーん、メキメキメキ…… 「これは負けていられません」 罔象に先手を取られたウェンカーは、真顔で肉(敵)を見据えた。 「ここはやはり仕事はきっちりこなすとしましょう」 そこでウェンカーは武器を頭上高くに振りかざし、遠慮なく雷を放ちはじめた。 ただし頬や体すれすれ。直撃はさせない。 まぁ髪が焦げるのは……許容範囲だ! 「ほーほっほっほ! 怯え震えなさい。こんがり美味しく焼いて差し上げますよ!」 それは既に錬金術ではなく、単なる破壊工作であると本人は気づいているのだろうか? 「おぉ……派手じゃのー、こんとろーるは抜群らしいのー」 同様に正面から挑んだハッドは、視界の冒涜に微笑みを向けている。身動きしない。 傍観するが吉。 「皆さんやめてください! 我々が間違っていたんです!」 突然、声高らかにKyrieが絶叫した。 急に予想外の位置に来るものだから、バリバリバリ、とちょっと雷を食らいそうになったりしたが、そこは一般人ではないので無問題だ。 華麗なる月歩で巧みに躱したKyrieは「なんのこれしき」と惚れるような姿勢をキメて、周囲の視線を浴びる中で、肉婦人の前にひざまずき、大げさに両腕を広げて、打ち震えた。 「何と美しい! 豊穣なる大地の精霊が如きお姿……是非私めに奉仕させて下さい!」 ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ! 驚愕に思考が停止する仲間達を放置して。 褌一丁になったKyrieは火をおこして、湯を沸かし、温かいお湯に浸した手拭いで、ぷりんぷりんなお肌を拭って、特製オイルでマッサージを行うという、奇行を始めた。 その満ち足りた表情からは、魂からの奉仕の精神を感じる。 彼は今、輝いている! まず呆然としていたフレスであったが、アル・カマルの暑苦しさに比べればこんな光景は耐えられると冷静に考え、隙を見て先に進んでいく。 丸い瞳に涙をためて振り返り。 「ごめんね、キリエ兄さま……必ず、必ず迎えに来るからね!」 今生の別れのような台詞を残して、フレス離脱。 「あれもまた幸せの形なのですね」 悟ったような眼差しで「後は任せてしまいましょう」とウェンカーが立ち去り。 ハッドや罔象も後ろに続く。 Kyrieに後を任せ、アムルリープをやめた朝比奈は、じっと奉仕する姿を眺めた。 「彼女らは……『ふくよか』という域を通り越して『別の何か』になっていますね」 命に関わりそうな気がしてならない。 大丈夫なのだろうか。いや、大丈夫ではないだろう。 しかし心配してもどうにもならないので、潔く身を翻す。 Kyrieに肉婦人を任せた五人が辿り着いたのは、豪勢な食事が部屋中に置かれた異様な場所だった。室内に食べ物の匂いが充満しており、既に美味しそう云々とかいう状態ではなくなっている。 まず最初に辿りついたフレスは困惑した。 『あれはエモノを狩る目なんだよー! えっとえっと……どう見ても標的なんだよー!』 絶叫。侵入者に気づいた肉婦人が、ずるり、と振り返る。 なにか蕎麦っぽいものを口にしている。 豪華なのは分かるが美味しそうに見えないのは仕様ですか。 壁に追いつめられるフレス、にじりよる肉婦人。 その手に輝くは! できたてほやほやのカツど…… 「通してくださいね」 罔象のオネガイが聞こえた刹那、天井が爆発した。 銃撃で木っ端微塵である。 「きゃあああああああ、わたしのごはんー!」 この期に及んでも食を守ろうとする肉婦人達が、食料を守るために瓦礫の下敷きになっていく。とりあえず天井は薄いようなので、死にはしない。無問題だ。 隙をついてフレスが走る。 さて改めて見てみよう。 天井は抜けている。 路は瓦礫と肉婦人の向こうだ。 うっかり行く手を塞がれたウェンカーと罔象が顔を合わせた。 「この際です。ついでに相手の拠点も破壊していきましょう」 くろこよ、もう破壊しておるじゃろ。 と。 ハッド、声にできない呟き。 「いいですね! 悪の拠点は破壊するに限ります!」 もはやどちらが悪なのか分かりませんね。 と。 朝比奈が胸中で突っ込む。仕方がないので怪我人は兎も角、死亡者を出さないためにアムルリープをせっせと使う。 緋色で飾られた悪趣味な部屋には、美肉の会の総長である松代と、今回の依頼の連れ戻し対象である恵がいた。見事なまでに丸々と肥えている。ふてくされた眼差しと涙の後は、旦那に見抜いてもらえなかった乙女心なのだろうか。 「何者か」 でっぷりとしたマツヨが、フレスを制止する。 「恵姉さま! 迎えにきたよ!」 無反応。しかしフレスはめげなかった。 「誉兄さまはアヤカシに操られていただけなんだよ!」 嘘である。 ほんとに見抜けなかったダメ亭主っぷりだが、ここはひとつ、そういうことにしておく。 恵がぴた、と動きを止めた。 「アヤカシは倒されたし、誉兄さまは心の底から悔やんでいて、帰ってきてほしいって思ってるんだよ! ほら、ここにお手紙もあるんだから!」 高く掲げた一枚の手紙! それはウェンカー監修の元で夫の誉に書かせた、心の底からの謝罪と(適度な)愛の詰まった手紙に他ならない! 「ふ、帰らせやしないよ! お前もここで美しい肉を獲得するのだ!」 立ち上がったマツヨが歩くたびに、床が地響きを立てる。 「はーはっはっは!」 ずしん、ずしん、ずしん……威圧感は凄いが、動きが鈍すぎる。 その時、廊下から声がした。 「この先ですね! やあ!」 扉が吹っ飛ぶ。罔象が壊した。追いついたウェンカーは松代を見据えた。 「大丈夫、志体持ちなら簡単には死にませんから。さぁ、一発いきましょうか」 どかーん、と遠慮なくエルファイヤーを放つ。鬼だ。 「きゃああ!」 ウェンカーを見るなり逃げようとした恵をアイヴィーバインドで捕獲しておく。 「あら……私から逃げようだなんて。これは躾直さないといけませんね?」 ウェンカーの黒き冷笑。 呆れた眼差しの朝比奈は、拳に白梅香を付与する。 「やれやれ。他者の思想に文句を言う気は無いのですが、流石に限度がありますからね。ここで終わらせるべきですね。……私の拳の前では、貴方の体もただの脂肪の塊に過ぎません」 「まてぃ! マツヨにこれ以上の暴力はゆるさぬぞ!」 今度はハッドが間に入り、突然マツヨを抱きしめた! 「我が輩は君の味方だ! そしていつしか君の本当の姿がみたいな」 輝く紳士の微笑み。 しかし顔で笑って心で野望。 『くっくっく、この調子で減量を勧め、会を解散させようぞ。今回は美肉の会に集った豚ちゃん達もついでに誘惑して巻き込んで、蝶となって羽ばたかせるのダッ!』 そんな野望はさておき、マツヨはハッドの手を掴んだ。 「結婚よ!」 え? 「これはもう結婚しかないわ!」 マツヨは手品師も真っ青な速さで特注にも程がある白無垢を纏う! どうやって着た! いやそもそもどこから出した! しかしそんな戸惑いをしている場合ではない。マツヨは硬直しているハッドの首筋をつかみ、あつぅぅぅぅぅぅぅぅい口づけを送ると、涎まみれになった顔に頬ずりし、そのまま「式場よおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」と叫んで走っていく。 体格差がありすぎて、捕獲されたハッドの腕力ではどうにもならない。 「ぎゃー! く、くろこおぉおおおぉぉぉ!」 助けて! とウェンカー達に手を伸ばす。 ウェンカーは。 「ふふ、お幸せに!」 忘れませんよ。 ええ、忘れません。 この私をくろこと呼ぶなんて。 丁度いい機会です。その身で学びなさい。 極上の笑顔が、ハッドへ死刑宣告を告げた。 一方のマツヨはこの世の春だった。 「永遠の愛よ、だーりん!」 「ぎゃああああああああ!」 マツヨとハッド、地平線に消ゆ! ちなみにハッドが松代に浚われた頃。 最初に立ちふさがった肉婦人達は居なくなっていた。 というのも捏造した人身売買の契約書をKyrieが見せた為である。 『いやぁ、本当に素晴らしい買い物をしました。 え、なにがですって? そりゃあこの会からの贈り物ですよ。 豊満な女性を愛好家に売り捌いてくださる、え、ご存じない? 皆さんは(ピー)豚として外国で愛玩されるんです。何、ちょっと両手両足を半ばで切(ピー)して、鼻を削(ピー)後は(ピー)槽で暮らしてもらうだけですから! さ、準備は整いました。 次はこの包丁で……え、あ、何処へいかれるんですか!』 文中の雑音は余りにも恐怖表現な為、ご了承下さい。 取り残された恵は手紙を読んでいた。 朝比奈は興味深そうに様子を眺めていた。どちらかといえば仲間達が、どんな地獄の減量を試みるのか興味があるらしい。しかし案外、穏便だった。恵の不幸を多少は理解しているらしい。 まぁ減量の件は別問題なのだが。 戻ってきたKyrieが褌一丁のまま恵の肩を叩く。 「恵さん。あれだけの苦行を貴女は耐えた。全てを無にするおつもりですか。また一から始めましょう! ご主人がお待ちですよ」 「ヴ、ヴン」 ずびー、と鼻を啜る肥えた恵。きたない。 「恵姉さま。戻ったら、こっちからも『本当に大切なもの見失うの悲しいだよ』って、誉兄様に文句言ってあげるからね! 戻ってジプシーダンスマーク2なんだよ!」 「ヴ、ヴン」 珍しく素直である。 これが愛なんですね、と微笑ましく見守る罔象と朝比奈。 しかしウェンカーの慈悲は此処までだった! 「さて恵さん。そういえばご帰宅された時には、ある程度太っておられたそうですね? 一体どれだけ食べたのか、私に懺悔してごらんなさい。あれだけ言い聞かせたのに、どうして食べようと考えたのか理解に苦しみます……さ、家まで走りましょうか」 なんかバリバリ音がする。 誰もとめない。 「ひ、きゃああああああ!」 「さあ走りなさい。こんなのは序の口です。ほら、速度が落ちてますよ。サンダー撃ちますよ?」 涙の減量はこれからである。 ちなみにマツヨと結婚に持ち込まれそうだったハッドは、なんとか逃げ出して帰ってきた。 マツヨの行方は、誰も知らない。 |