【四月】新たなる伝説
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/04/11 19:15



■オープニング本文

 天儀から遥か遠く――天空に浮かぶ儀、ベイダルシュ。そこは、アヤカシが跋扈する暗黒の世界であった。大地を覆い尽くす魔の森は、人々を追い詰め、その生活圏を奪い去った。ベイダルシュの暦で1687年――。
「王の中の王」を自称するアヤカシの王ジャミル=ハイは、ベイダルシュの完全なる征服を目前に、勝利に酔いしれていた。
「いよいよ‥‥ベイダルシュを我が手に‥‥もはや人間たちの希望は絶たれた。全てを収めたなら嵐の門を越え、次なる儀を我が手に!」
 そこへ、ジャミル=ハイの腹心である大アヤカシのモー・グロウが駆けこんで来る。
「陛下、大事にございます!」
「何事か」
「逃げ延びた人間どもが辺境の小国ダル=カーンに集結し、決起したと知らせが」
「ほう‥‥まだ私に抵抗するだけの力が人間たちに‥‥よかろう。余、自ら出向き、余と余の軍隊と力によって、人間どもを撃ち滅ぼしてくれよう! 全軍に出陣の触れを出せ! 小賢しい生き残りがいる! ダル=カーンが人類の墓場となろう!」
 アヤカシ大王ジャミル=ハイは、自らの魔剣ジール=デイムを携え、数百の大アヤカシと八千万の軍勢を引き連れ、ダル=カーンへ向かって進軍を開始した。

 ――ダル=カーン王都跡、キングスエルシルド。
 ベイダルシュ最後の民が王都の跡地に集まっていた。戦士たちは剣を取り、民は祈りをささげていた。
「陛下――!」
 ドラゴンから飛び降りた若い剣士がベイダルシュ最後の王カール四世のもとへ走り込んできた。
「ダル=カーンの国境を、ジャミル=ハイの軍勢が越えました! もの凄い数です!」
「来たか‥‥」
 カール四世は、戦士たち、民に呼び掛ける。
「皆の者、聞いてほしい――。今日、ベイダルシュの歴史は終わるかも知れない。だが、我々は最後までジャミル=ハイと戦う。我々はベイダルシュの民、ここに、ジャミル=ハイに最後まで屈しなかった記憶を刻もう。みなが、精霊とともにあらんことを――」
 カール四世の言葉を聞き、涙を浮かべる民。
「預言は嘘だったのか‥‥伝説の開拓者が現れると信じていた‥‥」
「泣くな、開拓者なんて御伽話だったんだ。もう、終ったんだ」
 そんな時である。民の一人が、精霊門に光が灯るのを見つけた。精霊門に光が灯るのは数世紀ぶりのことである。
「何だ‥‥? 王様! 精霊門に光が!」
「何だと?」
 ざわめくベイダルシュの人々の前、光の中から、天儀王朝からやってきた開拓者たちは姿を見せた。
「ここか‥‥失われた世界、ベイダルシュ」
「伝承によると、高度な魔法文明を誇っていたとか‥‥ん?」
 開拓者たちは、精霊門から出ると、目の前に多くの人々が集まってきているのに気付いた。
「お、お前たちは‥‥」
 カール四世の問いに、
「俺たちは天儀王朝から派遣された開拓者だ。失われた世界の探索を命じられてきた」
「か、開拓者? あの伝説の開拓者だと言うのか‥‥!」
「伝説?」
 開拓者たちは顔を見合わせる。天儀ではすでにアヤカシは滅び、平和な世界になっていた。
「何の話なんだ?」
 開拓者たちの問いに、カール四世は助けを求めた。
「開拓者たちよ、預言の戦士たちよ、今、ベイダルシュは滅亡の危機に瀕している。我々の世界を助けて欲しい――」
 今、新たなる伝説の物語が開く――。

※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。


■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351
22歳・男・志
焔 龍牙(ia0904
25歳・男・サ
滝月 玲(ia1409
19歳・男・シ
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
瀧鷲 漸(ia8176
25歳・女・サ
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
ブローディア・F・H(ib0334
26歳・女・魔


■リプレイ本文

「こらまた、変わった所にきてしまいやしたな」
 とたおやかに感想を云う華御院 鬨(ia0351)。
「八千万のアヤカシか、相手にとって不足はないな! 思いっきり暴れてやるぜ!」
 焔 龍牙(ia0904)の瞳には微塵の恐怖もなかった。
「伝説ってのはこそばゆいけど瘴気で満ちた儀など見たくないからね」
 天儀において平和を取り戻して来た滝月 玲(ia1409)にとって、ここの惨状は信じ難いものであった。
「地図はありますか?」
 鈴木 透子(ia5664)は現地の戦士たちに言うと、地図を持ってこさせた。
「まずは下準備です」
 戦士が地図を持ってくると、鈴木は地形を確認する。
「この周辺にある古い戦場や古い墓所のある位置はどこか分かりますか?」
「はい、かなり古いものですよ」
 戦士は地図上に印をつけて行くと、鈴木の問いに答えて行く。
 鈴木は地図上を探し、陰陽道的に決戦場所を選ぶ。
「では、決戦は、この近くでお願いします。」
 鈴木は、地図に印を付けた。
「私は前線に出て攻撃するしか脳がないからな。ふふふ。どうなるか、楽しみだ」
 瀧鷲 漸(ia8176)は巨大な胸を誇示するように背筋を伸ばして、嬉しそうに茶目っけのある笑みを浮かべた。
 コルリス・フェネストラ(ia9657)は現地の人間たちに挨拶して回る。
「私はコルリスと言います。どうも、預言と言うのは分からないのですが‥‥私たちに出来る限りのことは致しますので」
「お願いします‥‥あなたたちは精霊の意思によってこの世界に使わされたのです」
「それは‥‥」
「私の魔術と美しい胸でアヤカシを粉砕しますね。ふふふ」
 ブローディア・F・H(ib0334)はそう言うと、民の視線が自分の身に注がれているのを心地よく思った。民の目はただこの世界を救ってほしいと望む、祈るような視線であったが。
 滝月は、現地の戦士たちにアヤカシ大王の特徴を聞きだす。
「それで、アヤカシ大王と言うのは、どんな姿をしているんですか?」
「ああ‥‥見た目はどこかの貴公子みたいな印象を与える奴だ。黒い鎧に身を包んでいて、黒い騎兵隊に囲まれている。恐ろしい奴だ‥‥一体どれだけの民が犠牲となったか‥‥」
「分かった。アヤカシを倒せても民が居なくちゃ未来はない、皆を頼んだぜ」
 滝月は防衛線を戦士に任せ皆と大王討伐へ。
「行こう。俺たちに出来ることを為そう」
 開拓者たちは決戦場へ向かう。

「では、行きますよみなさん――」
 ブローディアが最初に詠唱に入ると、コルリスが弓衝壁を張り巡らせる。
 ヘル・バーストフレア――。
 詠唱時間:かなり長い(5分程度)
 射程:視認できる範囲
 効果:視認できる範囲のある一点を中心にして、大地を揺るがすほどの大爆発を起こす。詠唱から発動までの間に爆心の周辺では爆心に向かって徐々に空気や魔力などが集中する。その威力は絶大で、半径500m以内は一瞬で大穴があく程。大アヤカシクラスでも半径1km以内にいればその威力で粉々に。
 やがて、詠唱が完成する。
 ブローディアは腕を天から前方に、ゆっくり差し出すと、囁くように言った。
「ヘル・バーストフレア」
 次の瞬間、閃光が地平線で炸裂した。大爆発と衝撃が、アヤカシ軍を吹き飛ばした。その威力は凄まじく、大地に巨大な穴が開いた。
「な、何だ‥‥!」
 アヤカシ軍に狼狽の声が上がる。
「よし、では行きましょう」
 焔は言って飛び立つと、開拓者たちはアヤカシ軍に突進して行った。
「うちの舞を見て、楽しんでいって下さいやす」
 鬨は魅了の舞を舞う。流れるような鬨の舞に、アヤカシ兵士たちは魅了されて無力化されて行く。
「私はあなたに従います!」
「従います!」
 アヤカシ兵士達は、雪崩を打つように鬨に魅了されて味方のアヤカシ軍に突撃して行く。
「何だあやつは‥‥怪しげな術を‥‥」
 大アヤカシの一人が抜刀すると、鬨に向かってくる。
「噂の開拓者か! わしがなます切りにしてくれるわ!」
「あんさんもうちの舞を見て行きなはれ」
 鬨は色っぽく腕を差しだすと、大アヤカシはたちまちのうちに魅了の舞の虜になった。
「何だ‥‥この気持ちは‥‥人間と戦う意思が消えて行く‥‥?」
 そして、大アヤカシは、咆哮して向きを変えると、自軍に向かって突進して行く。
「我が敵はジャミル=ハイ! 今こそ大王を討つ時!」
 鬨は魅了の舞を舞い続け、アヤカシ軍の戦線を崩壊させていく。
 焔は相棒の蒼隼に搭乗し、次々と群がって来るアヤカシ達を粉砕して行く。
「これじゃ、埒が明かないな! やるぞ! 蒼隼!」
 焔は念を込めると、精霊の力を呼び起こす。
「焔家秘伝、秘術『精龍霊』、さらに秘術『焔龍身』、一挙に片付ける!」
 秘術「精龍霊」:同行している龍の身体が一瞬輝き、精霊化することができる
秘術「焔龍身」:精霊化した龍を己の身体に憑依させ、龍の力を最大限使用することができる
 スキル「桔梗」と龍スキル「ソニックブーム」の複合「桔梗ソニック」により巨大な真空波で攻撃する。
「行くぞ!」
 空を飛行する焔は加速して二刀を構えると、裂帛の気合とともに桔梗ソニックを叩き込んだ。
 莫大な真空波がアヤカシ軍を寸断する。
 断末魔の咆哮とともに消失して行くアヤカシたち。
「まだまだ! これからだ!」
 焔は加速しながら真空波でアヤカシ軍の陣を切り裂いていく。
 ――グオオオオオオオ! とアヤカシ達が悲鳴を上げて消失していく。
「何だ奴らは!? 本当に人間か!?」
 大アヤカシたちは混乱に陥った。
「残念だな、俺たちは人間だ」
 滝月は突進すると、桔梗を叩き込んだ。
 凄絶なカマイタチがアヤカシ軍の戦列を薙ぎ払う。
「馬鹿な‥‥! 人間一人でこれほどの力を‥‥あり得ん!」
 大アヤカシたちは力を結集すると、魔術でアヤカシ兵士達を強化する。
「あの人間どもを殺せ!」
 ――ガオオオオオオ!
「炎魂縛武――!」
 滝月の一撃で、アヤカシ軍の戦列が吹っ飛ぶ。
「さすがに数だけは多いな‥‥ならば! 竜神召喚!」
 滝月は腕を一振りすると、炎に包まれた龍が召喚される。
「焼き払え!」
「承知した‥‥」
 竜神は上昇すると、絶大な火炎を放射した。
「な、何だあ!」
 大アヤカシ達は、莫大な炎に飲み込まれてことごとく消失して行く。アヤカシ軍の陣中に巨大な穴が開く。
「行くぞ竜神!」
「よかろう‥‥」
 鈴木は仲間たちを結界呪符で支援しつつ、敵中を進んでいた。
「敵は八千万、しかも大魔王までいます。方針はとにかくジャミル=ハイに向かって前へ! 前へ!」
 敵を掻き分け進む仲間を結界呪符を次々を張り敵の攻撃から守る。
「結界呪符!」
 鈴木の強力な結界はアヤカシ達の妖術をことごとく跳ね返す。
「おのれ‥‥突き破れ!」
 アヤカシ魔道士たちが魔力の塊を結界呪符に叩きつけるが、結界はびくともしない。
 やがて、鈴木は陰陽道的に探していた位置に辿りつく。
「ここです」
 小石を積み上げ石塔をつくり、その周囲に符を撒き、巨大な方陣を敷く。
 式神を召喚する鈴木。
 後光とともに母のような優しい姿をした式神が陣の中央に現れる。
 迷える魂を光で導き、手を差し伸べ、輪廻へと戻す力を持つ式神で、その容姿や後光に、少しでも魅入ったアヤカシは力の強弱に関わらず吸い寄せられこの世から消滅する。
 その容姿と光はアヤカシにとって非常に懐かしいもので、アヤカシは赤子のように安堵した表情で消滅して行く。
「ひとつ積んでは父のため、ふたつ積んでは母のため‥‥迷える子らに救いの手を‥‥」
「な、何だこれは‥‥この気は‥‥」
「こんな穏やかな気が‥‥」
 式神に吸い寄せられていくアヤカシは、次々と消滅して行く。その影響はアヤカシ軍の陣中に瞬く間に伝播して行く。
「おおおおおお‥‥」
 アヤカシ達は、みな、赤子のように安堵した表情で消滅して行く。
「こ、このわしが‥‥消え‥‥る‥‥」
 大アヤカシ達も次々と消滅して行く。
「ふふふ‥‥さて‥‥」
 漸は、ハルベルトを一閃すると、柄を大地に置いた。目を閉じ体内の力を解放して行く。すると、見る間に漸の体が鎧ごと武装ごと巨大化して行く。
 敵軍の巨人アヤカシ並みに巨大化した漸は、不敵な笑みを浮かべると、
「行くぞ――」
 加速した。
 アヤカシ兵士を踏み潰していく漸。
 ハルベルトを振り上げると、裂帛の気合とともに一閃した。
 衝撃の波動――。
 武器を大きく横に振り、練力を乗せる事で、扇状に巨大な衝撃波を発生させる。飛距離も長く、前方にいる敵を纏めて一掃する。
 衝撃波がアヤカシ軍を貫通する。ばたばたと倒れて消失して行くアヤカシ兵士たち。
「私の一撃、どこまで耐えられるかな――」
 ハルベルトを立て続けに振って、衝撃の波動を叩きつける。一撃ごとに、甚大な数のアヤカシが消失して行く。
「奴を止め‥‥ぐああああああ!」
 大アヤカシも波動に飲み込まれて消えて行く。
「アースブレイク!」
 続いて、漸は武器を大きく縦に振って地面に突き刺す。そこから前方に大きく衝撃が走り、前方のかなりの距離に亘って大きく地割れが発生する。
 衝撃がアヤカシ軍を貫通し、地我に飲み込まれて消えて行く。
「ふふ‥‥その程度かアヤカシ軍――」
 漸は武器を構えると、大蜻蛉で攻撃力を上昇させていく。
 粉微塵になったアヤカシ軍の後ろから、またやがて無傷の敵軍が現れ、怒濤のように迫りくる。
 漸は大蜻蛉の充填を完了させ、にっ、と笑うと、また衝撃の波動を叩き込んだ。
 炸裂する波動が、アヤカシ軍を木っ端みじんにかき消した。
 コルリスのもとへ殺到するアヤカシ兵――。
 コルリスは冷静であった。すうっと矢を構えると、それを解き放った。直後、光が爆発した。
 天弓――バーストアローの応用技。衝撃波を集め貫通性のある長射程の光の矢を放つ。
 光の矢が敵軍を貫通すると、アヤカシ兵士の戦列に穴が開く。
 一撃、二撃、三撃と天弓を連射するコルリス。閃光がアヤカシ軍を貫き、アヤカシを消失させていく。
「これだけの軍勢に、よく耐えてきましたね」
 コルリスは言って、術を構築する鈴木やブローディアを弓衝壁で守る。
 弓衝壁――バーストアロー+乱射の応用技。周囲に衝撃波を放ち身を守る直径6m程度の衝撃波の防壁を構築。効果時間は4ターン程。欠点:壁を構築中他の技が使えない。
 さらに、仲間たちがジャミル=ハイの下へ行くのを「鋒龍」で支援する。
 鋒龍――バーストアロー+乱射の応用技。弓に駿龍の応鳳を宿らせ乱射範囲を一方向に集中。射程と範囲を直線状に延ばし応鳳の形をした衝撃波を放ち直線状の敵を一掃。欠点:技を放つまで少し時間がかかる。
「解き放て――」
 直後、衝撃波がアヤカシ軍を貫通する。
「行くぞ!」
 鬨、滝月、焔、漸らは、ジャミル=ハイに向かって突進する。
 コルリスはさらに天に向かって光の矢を解き放つ。
 天弓雨――天弓の応用技。天に向けて【天弓】を乱射すると増幅された光の衝撃波が地上の敵に次々と降り注ぐ。
 閃光が爆発して、アヤカシ軍に降り注ぐ。光の衝撃波がアヤカシ軍を薙ぎ倒していく。
 ブローディアは次々と魔術を繰り出す。
「エレメントアロー」
 詠唱時間:長い(行動2程度)
 射程:視認できる範囲
 効果:炎、雷、水、風など、全ての魔術の要素を集約し、それを矢として放つ。この矢は、屈折する事が可能で、自由に曲がって当てる事ができる。威力は高め。当たった敵を撃破したら、矢は貫通する。
 虹色の矢が貫通して、アヤカシ達を討ち倒していく。ブローディアは自在に矢を操る。
 さらにエレメントコート――。
 詠唱時間:普通(行動1程度)
 射程:半径100m
 効果:範囲内の任意の対象全員に、身体能力を大幅に向上させる術をつける。全ての能力が上昇し、その効果時間は非常に長い。
 鬨と焔、滝月に漸らは、コートの支援を受けて一気にジャミル=ハイの周辺の護衛を粉砕する。
「あの魔術師を殺せ!」
 大アヤカシ達はブローディアに殺到する。莫大な魔力の塊を叩きつける。
 ブローディアは素早くマジックシールドを展開する。
 詠唱時間:非常に短い
 魔術に対し、対抗性のあるシールドを、一瞬のうちに生成し、出現させる。性能は術者の魔力に依存する為、非常に効果が高い。
 全弾弾き返したブローディアは、エレメントアローで大アヤカシ達を薙ぎ倒す。
 アヤカシ軍を粉砕した開拓者たちは、ジャミル=ハイの下へ辿り着く。
「開拓者か‥‥信じられん‥‥」
 囲まれたジャミル=ハイは狼狽した様子で、魔剣を抜いた。
「そないなことして、終わった後に何をしたいんどすか。うち、世界征服する人の目的って聞いてみたかたんどす」
 鬨はジャミル=ハイに普通に聞いてみる。
「余は生まれながらのアヤカシの王の中の王。私には世界を統べる理由があるのだ!」
「決着を付ける時だな。最終秘術『紅焔龍』!」
 焔は力を解放した。秘術「紅焔龍」:龍と一体化した時、スキル「紅蓮紅葉」の効果で焔を身に纏い、火の鳥と化す。その焔に触れたアヤカシは一瞬にして瘴気に戻り浄化される。
「我が焔に抱かれて、眠るがいい」
 火の鳥と化した状態で体当たり攻撃を行う。
「ぐおおおお‥‥!」
「悪の元凶が儀を統べるなど悪い夢は俺達が覚ましてやる」
 滝月は『炎魂絆融』で炎帝化する。斬竜刀に宿りし焔塊の竜神を召還し同化する事により炎帝化し攻撃・命中アップ。外見:炎の龍鎧で包まれ敵意を持てば引火、絆が一定値以下になると青炎に。
 止めとばかりに奥義形態になり『鬼龍爆斬〜炎帝〜』を急所に向け放つ。
「我炎帝が一撃、犠牲となった者の怒りの炎と知れ! 受けよ、鬼龍爆斬〜炎帝〜!!」
 奥義『鬼龍爆斬〜炎帝〜』炎帝状態から気を高め奥義形態へ。焔で出来た竜翼を生やし飛翔。空から急降下突撃し斬ると共に爆炎を発す二連撃。
 ジャミル=ハイの魔剣が砕け散る。
「おのれ!」
 ジャミル=ハイは魔術を全開で放出するが――
「大王か――より強い敵と戦えるのは本望だ」
 漸はハルベルトを振り下ろした。ジャミル=ハイの腕が飛ぶ。
 鈴木はずたずたのジャミル=ハイに言った。
「貴方も、もう、終りにしてはどうですか? 皆、幸せそうですよ」
 鬨は歩み寄ると、
「そないな人生で終わってしもたらつまらんやろう。人生もう一度やり直してみるんもええどすよ」
 と『早変わり』を使って大王を人間にする。
 果たして、ジャミル=ハイは苦しそうに立ち上がると、
「貴様等ももろとも吹き飛ばしてくれるわ!」
 と言い残して、最後の魔力を放出して自爆、消失した。

 戦後――。
「これからが本当の試練だ。王は民の道標に、戦士は民を守る行いを、民は未来を切り拓く希望を胸に生きて欲しい」
 滝月の言葉に、ベイダルシュの民の顔は感謝感激の涙に濡れていた。
「民よ、預言は真実であった。見よ、ベイダルシュに希望が蘇ったのだ――」
 王の言葉に、民は開拓者たちを歓呼の声で迎えるのだった。