【踏破】黒井を守れ
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/08/09 17:57



■オープニング本文

 天儀王朝――。
 複数人の貴族たちが闇の中で話し合っていた。
「聞くところによると、黒井奈那介が救出されたそうだ」
「黒井には死んでほしかったな。このままでは‥‥本当にまた多くの命が失われる。荒唐無稽な伝説のために、嵐の壁が開かれるようなことがあってはならんのだ」
「しかし、あの方のお考えは分からん」
「我々の手でやるしかない。黒井奈那介には、気の毒だがな」

 黒井奈那介の怪我は快方に向かっていた。元々志体持ちである奈那介は、肉体は頑丈にできていた。全快すれば最前線に復帰して、開拓者たちと合流する予定である。
「さて‥‥大事な資料も無事に戻ってきたことやし、一気に鬼咲島の攻略といくかねえ」
 奈那介は、室内で資料の一つに目を留める。
「そう言えば、親父がしきりに残していたこの風景‥‥言葉‥‥今にして思えば気になるな。開門の宝珠も実際に存在したわけやしな」
 奈那介は、その資料を見つめると、家庭を顧みずに行方知れずとなった父親の顔を思い浮かべていた。

 開拓者ギルドに、編み笠で顔を隠した女性がやってきた。ギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)は、女性が奥の部屋で話したいと申し出ると、
「何を依頼されるおつもりですか」
 と尋ねた。女性は、
「黒井奈那介に魔の手が迫っています」
 とだけ答えると、静かな瞳で鉄州斎を見下ろし、少し見えるように、多額の金子を見せた。
 鉄州斎は頷き、女性を奥の専用の部屋へ通すと、向き合った。
 女性は編み笠を取る。整った美しい顔立ちの女性であった。が、表情に感情は見えない。
「それで、黒井奈那介にどんな危険が迫っているのですかな」
「刺客が放たれました。腕の立つシノビが12人です。開拓者には、黒井をお守りして頂きたいのです。あの男はこの計画に欠かせぬ人物です。刺客の生死は問いませんし、背後関係を探る必要もありません。ただ、黒井を守って頂きたい」
 鉄州斎はしばし考えて、
「開拓者が不利益を被るような依頼はお受けできませんが」
「その点は信じて下さい。私たちはむしろ開拓者の力を必要とする立場にあります」
鉄州斎は軽く頷いた。
「ギルドにわけありの依頼が並ぶことは珍しくありません。腕利きが必要とあらば、それにお応えしましょう」
「ありがとう。感謝します」
 女性はそう言って、立ち上がった。鉄州斎は女性を見送り、それからいつものように依頼書をまとめる作業を始めた。
 簡単に引き受けたわけではない。相手を見定めてのことだ。重要な依頼であることは承知していた。
 そして、ギルドに、黒井奈那介の護衛依頼が並ぶことになるのであった。


■参加者一覧
北條 黯羽(ia0072
25歳・女・陰
星鈴(ia0087
18歳・女・志
芦屋 璃凛(ia0303
19歳・女・陰
八嶋 双伍(ia2195
23歳・男・陰
御凪 祥(ia5285
23歳・男・志
神凪瑞姫(ia5328
20歳・女・シ
瀧鷲 漸(ia8176
25歳・女・サ
天ヶ瀬 焔騎(ia8250
25歳・男・志
朱鳳院 龍影(ib3148
25歳・女・弓
鳳珠(ib3369
14歳・女・巫


■リプレイ本文

「何やて?」
 黒井奈那介は、やってきた開拓者たちに対して、眉をひそめた。
「わいを狙う輩がおる? あほなこと言いなや。何を根拠にそないなことを。開拓計画は順調や。誰が邪魔する言うねん」
「とにかくだ。お前は屋内こもってじっとしていてもらう。こいつはわけありの依頼なんだ。相手の正体も不明で、危険度が高い。何もなければそれに越したことはないがな」
 北條 黯羽(ia0072)はそう言って、黒井を説き伏せる。
「わけありの依頼て、じゃ、誰がそんなこと言いだしたんや」
「黒井はん、とにかく、今は身に危険が迫ってるんや。うちらを信じてもらうしかないんや」
 星鈴(ia0087)もそう言って、黒井をなだめた。黒井は思案顔で顎をつまむと、瞳を虚空に向けた。
「わいを狙う奴か‥‥とんと見当がつかんなあ。わいをやっかんでる奴ら言うたら、学会のお堅い連中くらいやで。それも今では遺跡が本当に発見されたから言うて、掌返したように新大陸の伝説は本当やったて言うてるらしいしな。ふーむ‥‥」
「あの、聞いて良いここの島の事」
 芦屋 璃凛(ia0303)は黒井に鬼咲島の事を聞く。
 ‥‥何でなんだろうこの人は命まで張ったのに。いつもそうだ、嫌な事はしないくせに、嘲笑ってばっかりアヤカシとも戦えやしないのに‥‥そんな奴ばっか。
「あー、ここは見ての通り、嵐の壁の駐屯地に持って来いの土地や。ここから南東に、魔戦獣の出現地域と想定されている空域があるんやけどな。伝承によると、見たこともないケモノに乗った化け物が出てくるそうや。ここはキキリニシオクが活発に動いとる、あの化け蜻蛉を叩き落とさんことにはな。‥‥て、なんやお前、浮かない顔してるな。そんなにわいのことが心配か」
「違うよっ、馬鹿」
 ここに来てから落ち着かないな‥‥、アヤカシ見れるからはしゃいでるのも有るけど魔の森近いからこの傷がやたらと疼くしいつ来るか分からなから尚更。だけど――芦屋は胸の内に呟き、今はこのとぼけた男を守ることに集中する。
「‥‥?(なんや? 璃凛の奴‥‥)」
 星鈴は芦屋に歩み寄った。
「‥‥どないしたん?」
「うん、何でもない。少し気分が落ち着かないだけ」
「‥‥一難去ってまた一難、ですか。せっかく助かったかと思えば‥‥本当に大変ですね。‥‥などと、嘆いてる場合でもありませんか。狙う方にも言い分はあるのかもしれませんが、未知を追い求める身としては、あなたを死なせるわけには参りません。刺客の方々には諦めていただきますよ」
 八嶋 双伍(ia2195)は、黒井に言って、軽く彼の肩を叩いた。
「ま、誰が狙うんか知らんが、がせねたっちゅうこともあるわけやしなあ」
「そうであれば結構ですが、ギルドが受けたと言うことは、それなりの確証があってのことでしょうしね。裏のある依頼でしょうが‥‥」
「お前らにも迷惑掛けるな。ま、すまんこっちゃで」
「黒井さん、安心しろ、何があってもあんたに手出しはさせん。依頼を受けた以上はな」
 御凪 祥(ia5285)はそう言うと、黒井に軽く頷いて見せる。
 正直な所、新大陸に興味がある訳じゃない、開拓に参加するのも見た事のないアヤカシと戦ってみたいと思う程度だ。今回の依頼に参加したのも襲撃に来る手練れと戦えるって事に興味がある、己が戦う事ができてそれで守られる命があるならいいかと思ってる。
 御凪は胸の内にはそう呟くが、黒井に向かっては「安心しろ」と言って落ち着かせる。
「そなたを死なせはせん」
 神凪瑞姫(ia5328)はそう言うと、吐息した。
「私は、ただシノビとして職務を果たすのみ」
「シノビか‥‥わいを狙ってるのもシノビと聞いたけどな、どこの誰の差し金かね。お前ら、裏を取ってくれんか。依頼には含まれてないそうやけどな。わいかて敵の正体を知っておきたいんでな」
「それは構わんが、多分無駄だぞ。この手の仕事を引き受けるシノビは、恐らく依頼人の秘密までは知らん」
「ふむ、そうかねえ」
「璃凜、では、行くとするか」
「はいっ」
 うちは、瑞姫姉さんの様には成れやしないけど強くなるんだ。この殺気は姉さんの青い炎が燃えてるから‥‥、それもシノビ相手の時の。
「また一緒んやし、よろしゅう頼むで二人とも」
 星鈴もまた、友人の二人に向かって言葉を掛けた。
「星鈴、また一緒だね!」
 芦屋は溌剌とした笑みを浮かべ、神凪は微かに口許を緩めた。
 仕事とはいえ、あまり人を殺めるを見せたくはないものだな‥‥しかし、雇い主は何を考えている。差し向けるなどとは、己だけが良ければよいのかシノビとは駒でしか‥‥いや私が言えぬか、望んだ事では無いか。
「面倒なことになったな、相手はシノビか。どうだろうか双伍」
 瀧鷲 漸(ia8176)の問いに、八嶋は思案顔。
「さて、背後の事情はともかくとして、敵の数は私たちを上回っていますし、油断はなりませんね。何と言ってもシノビですからね」
「全くだ。どこから攻撃が来るか分からんぞ。おい黒井、貴様大人しくしていろよ。脱走とかしたら後でぼこぼこにする」
 漸はばきばきと拳を鳴らした。黒井はひきつった笑みを浮かべて後ずさった。
「私は本気だからな」
 漸はずいっと、黒井に顔を近づけて睨みつけた。
「そないな怖い顔したら、美人が台無しやで」
「ふふん、貴様、調子の良いことを言って誤魔化すなよ。死ぬぞ。私でも心配してやっているんだからな」
「黒井氏とは、縁でもあるのか、気が付いたらその身に関わっているな。皆で協力して救出した存在だ、そう簡単に、やらせてたまるかよ。『目の前の障害は排除するまで立向かう、それが解消屋、ディスペアーズ。志士の天ヶ瀬だ』」
 天ヶ瀬 焔騎(ia8250)は、黒井に握手を求める。漸の前から逃れた黒井は、「お前はこの間の」と驚いた様子で握手に応じた。
 天ヶ瀬は黒井に少し話しかける。命の危険より、使命に燃えてたら、その理由や、夢、を聞いてみる。
「まだ、死ぬ訳にはいかないんだろ? 生き残りたい、か?」
「まあな。ここで死んでしまったら、多分志半ばで倒れた親父にも申し訳なく思う。親父は確かに家庭を滅茶苦茶にしてしまったし、そのことを許す気にはなれんけど、けど、親父は確かな真実を追い掛けていたんや。新大陸の話は夢物語やないで。わいはせめて、親父が成し遂げられなかった夢をかなえてやりたいと思う。他の誰でもない、わいの手で、アルステラが存在すると言うことを、証明してやりたい」
「そうか‥‥遭難しても生き残った強運だ、俺達の力とその運があれば、必ず生き残れる、勝ち抜こうぜ」
 天ヶ瀬はこの黒井にも熱い心があるのだと、やや驚いた様子。開拓者顔負けの体を張った現地調査を敢行するだけのことはある。黒井はそれなりに胆力の座った男である。
「さて、この開拓に必要な人材を失うわけにもいかんからの」
 朱鳳院 龍影(ib3148)の頭に生える、二本の角を見た黒井は軽くまゆを吊り上げた。
「龍人か? 珍しいな。もしかして神威人?」
「ああ。私は神威の獣人だが」
「神威人の話には不明瞭だが、月の国アルステラに関する確かな伝承が残っているよな。親父も幾つか説を立てている。昔は一笑に付された伝承やけどな。ほれ、これを見てくれ」
 黒井が差し出した古びたノートには、夜の闇に大きく浮かぶ月と、光に包まれた不思議な大地が描かれていた。
「これは?」
「親父が残した資料や」
 黒井はそう言って、他にも見たこともない月と光の景色の絵を見せてくれた。
「アルステラは、全くこの世界とは違う国やっちゅうこっちゃ。胸躍るやろ。わい、嵐の壁が開かれたら、真っさきにアルステラへ行くねん。まあその前に、王朝の三成はんにも、少し話をせんとな。魔戦獣は油断できん相手やからな」
「神威の伝承か。本当にそんな国があるなら、ぜひ行ってみたいものだ。自分のルーツを辿る旅にでも出たいな」
「やろ? やろ? いざ開拓ってわくわくするよなあ」
「その前に。黒井さん」
 鳳珠(ib3369)が鋭い声を飛ばした。
「依頼のこと、忘れてません? 命を狙われてるんですから、それらしく振舞って下さいね。今回はおとなしくしてもらいますからねっ」
「ま、まあ勘弁や。それなりに大人しくはするけど」
「それなりじゃ駄目です。危険が去るまでは、閉じ籠もってもらいますよ」
「わい、じっとしてるの性に合わんねん」
「いいからじっとしろ。今回お前には完全に隠れてもらう」
 朱鳳院が黒井の首根っこを掴んだ。凄い力で、黒井を引きずっていく。
「だー、待て待て! 分かった分かった! 言うこと聞くから!」
「‥‥さて、あいつを閉じ込めておくとして、後は敵がどこから来るか、だな。気の張る仕事になりそうだ」
 漸は言って、ハルバードを担いだ。
 そして、開拓者たちと刺客の戦いが駐屯地で始まろうとしていた――。

 ‥‥夜、闇の中で。
「どうやら、黒井に護衛がついたか。朱藩の兵ではない。開拓者だな」
「どこから情報が漏れたのだ? 待ち伏せされていると言うことはないだろうな」
「そんなふうではない。奴らも、我々がどこから来るか見当はつかないらしい」
「では、予定通り、囮は任せるぞ。我々は黒井をやる」
「行くぞ――」
 シノビ達は動き出した。

 ――ドカーン! と家屋の外で爆発が起こった。焙烙玉が投擲されたのだ。
 シノビ達は神凪の超越聴覚をすり抜けて接近してくる。
 呼子笛で合図を送る開拓者たち。
「どこから‥‥!」
 星鈴は、突如襲ってきた衝撃に切り裂かれる。目の前にふっとシノビが姿を見せる。
「にっ! ここは抜かせへんでえ! うちんらがいる間はな!」
 星鈴は切り返して薙刀を叩き込んだ。――キイイイイイン! と夜の闇に刃がぶつかる音が響く。
「奇襲攻撃か‥‥予測はしていたが」
 漸は出現したシノビと交戦に入る。ハルバードを思い切り叩き込んだ。並みのアヤカシを打ち砕く一撃を、シノビは受け止めた。
「邪魔だ! 開拓者!」
「やかましい」
 漸は万力を込めて一撃を撃ち込む。
 芦屋は斬撃符で応戦する。
「死んでもらうぞ!」
「何をっ、霊青打!」
 シノビはかわして、芦屋の腹部を蹴りつけた。それから刀を振り下ろす。かろうじて芦屋は転がるように逃げる。
「錆壊符――!」
 八嶋からスライム状の式が浴びせかけられ、一瞬シノビは怯んだ。
 直後、シノビが駆けて、芦屋は連続攻撃を受けて切り裂かれる。
「うぐっ! 瑞姫姉さん‥‥」
 そこへ神凪が飛び込んできて、水流刃を撃ち込んだ。
「姉さん」
「璃凛――」
 神凪はシノビの側面を捕えると、万力で首を切り裂いた。刀身が貫通する。鮮血が舞い、シノビが下がったところを首をばきっとへし折った。シノビは倒れた。
「大丈夫か、まだ来るぞ」
 御凪はシノビ二人を相手にしていた。攻撃を捌きつつ、斜陽や葉擦で撃ち込む。凄絶に切り裂かれるシノビが、後退して、間合いを図る。
「ふふふ‥‥無駄なことだ、開拓者。黒井の命はもらった」
「奴の命など、どうでもいいが。貴様らを通すわけにはいかんな。これも仕事でな」
 御凪は槍でシノビを牽制する。
「ふふ‥‥」
 次の瞬間、じわじわとシノビの姿が消えて行く。
「ぬっ‥‥」
 御凪は槍を構えた。
 秘術影舞い。シノビの透明化スキル。
 御凪は大地を蹴る音を聞いたが、姿は見えない。
「抜かれるか、まずい」
 御凪は黒井が隠れている家屋の方へ走った。

「敵が来るぞ。情報は確かだったようだな」
 北條は言って、通路に結界呪符「黒」を張り巡らせた。
「有り難い話じゃないが。朱鳳院さん! 鳳珠さん! 黒井を奥の部屋へ!」
 天ヶ瀬は言って、通路の奥を見やる。
 ばらばらと黒装束に身を包んだシノビ達がやってくる。
「行くぞ! 北條さん援護を頼む」
「死ぬなよ天ヶ瀬」
 天ヶ瀬は咆哮して突進した。
 激突する。
 狭い通路の中で、シノビは跳躍すると、天井や壁に張り付いて、天ヶ瀬を抜き去ろうと試みる。
「ちい!」
 天ヶ瀬はタックルで飛び付いたが、一人に抜かれる。
「北條さん!」
「結界呪符――!」
 シノビの目の前に結界呪符を召喚する。
 天ヶ瀬はシノビと打ち合い、敵の腕を切り飛ばした。
「ぐううう、しまった」
「お前ら誰に雇われた」
 天ヶ瀬はシノビに刀を突き付けて鋭く詰問した。
「そんなことを聞いてどうするつもりだ」
「言ってみろよ」
「馬鹿め!」
 シノビは跳ね起きて飛び退る。手裏剣を投擲すると、影舞で消える。
 結界呪符を破壊したシノビは、北條に突進する。
「ちっ」
 北條は刀を抜くと、シノビの攻撃を弾いたが、格闘戦では敵が上。切り裂かれて血が飛ぶ。
 と、天ヶ瀬がシノビの背後から背中を一刀両断した。
「それ以上は行かせん!」
「おのれ‥‥」
 シノビは印を結ぶと、煙幕を出現させた。通路が煙に包まれて視界が遮られる。
「黒井を!」
 天ヶ瀬と北條は後退すると、黒井のもとへ走った。

 家屋の反対側の壁が突如として切り裂かれた。シノビが地道な攻撃で穴を開けたのだ。
 混沌とする家屋周辺。だがシノビ達の速攻で、まださして時間は経過していない。
 壁に穴を開けたシノビ達は、そこからするすると入り込んでいく。
「黒井。戦えるか。どうにも嫌な予感がする」
 朱鳳院は言って、片方の武器を黒井に投げた。
「戦えるけどな。正直言って熟練のシノビ相手となると微妙だが」
 その瞬間、壁が爆発で吹き飛んだ。
「何――!」
 シノビが飛び込んで来る。
「黒井はここだ!」
 声が飛び、影が黒井に飛びかかっていく。
「ぬん!」
 朱鳳院がシノビを叩き斬った。一撃でシノビの腕が飛ぶ。
「黒井! 逃げろ!」
「逃げて下さい!」
 鳳珠は黒井を押し出すように部屋の入口に向かう。
「逃がすな!」
 怒号が飛び交うが、朱鳳院は落ち着いていた。不動で入口を塞ぐと、襲い掛かってくるシノビを叩き伏せた。
 ちらりと後ろを見ると、鳳珠が黒井とともに逃げて行く。

「黒井さん! そっちへ!」
「全く‥‥どこのどいつや、こんなことを」
 鳳珠は黒井の背中を押し、別の部屋へと飛び込んだ。逃げ道を開けておくと、背後を見た。
「みんな、どうしたかしら。外はどうなっているのかな」
「大丈夫や。多分な。けどお前らがおらんかったらとっくにやられてたな。助かったで」
「黒井さん、まだ安心するのは早いです」
 そこへ、天ヶ瀬と北條が合流する。
「お二人とも、無事でしたか!」
「敵に入り込まれた。黒井を移動させるぞ」
「何や忙しいな」
「あんたを殺させるわけにはいかないからな」
 天ヶ瀬たちは、その場を離れて、脱出すると、シノビの目を逃れて駐屯地の別の場所へ移動する。
 シノビ達の目論見は外れる。最初の攻撃を開拓者に防がれた時点で、シノビ達の成功率は大きく下がった。
 そして黒井を見失ったシノビ達は、騒動が大きくなる前にその場から退散したのだった。