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■オープニング本文 天儀本島、武天国、某村――。 ここに金剛応鬼と言う黒い鬼がいる。豪奢な毛皮に身を包み、金髪の、鋼のように強靭な肉体を持つ冷徹な黒い鬼であり、配下にも黒い鬼を従えていた。人語を解し、悪辣非道な性格かつ計算高い金剛応鬼は、幾つかの小村を密かに壊滅させていた。生き残った者はまだいない。金剛応鬼は人知れず、その日も武天の村を襲う算段を立てていた。この日、金剛応鬼のもとに集まっていたのは50体近い黒い鬼たちである。みな残酷な笑みを浮かべていて、今まさに村を包囲して攻撃を仕掛けようとしていた。 「ふふ‥‥俺の力は開拓者を越えつつある。無敵の鬼となるのもそう遠い日ではあるまい」 金剛応鬼の金色の瞳が爛々と輝く。 『行くぞ! 皆殺しだ!』 黒い鬼たちは歓喜の雄たけびを上げると、村に殺到して行った。 ――開拓者ギルドに、黒い鬼の集団が人里を襲っていると言う知らせが入って来たのは、間もなくのことである。奇跡的に逃げ延びた一人の少年が保護されたのである。地獄を生き延びた少年の話では、民は捕えられ、黒い鬼たちによってじわじわと捕食されていると言う。人語を話す金髪の黒い鬼が恐ろしい言葉を吐きだしていた――そう少年は語った。 開拓者ギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)は、報告を受けて、この依頼の危険度を推し量った。 「橘――」 上役から声を掛けられた鉄州斎は、思案顔で頷く。 「すぐに開拓者たちとともに現地へ急行しろ、人語を解する黒い鬼‥‥大きな災いを引き起こすだろう。危険度から言って、相談役のお前がその目で黒い鬼を見てくるのだ」 「承知しました」 上役から命じられ、鉄州斎は立ち上がった。こうして現場へ出向くのも相談役の仕事である。そして開拓者たちを集めると、ともに件の村へ急行するのだった。 |
■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
鬼啼里 鎮璃(ia0871)
18歳・男・志
斑鳩(ia1002)
19歳・女・巫
秋桜(ia2482)
17歳・女・シ
月酌 幻鬼(ia4931)
30歳・男・サ
倉城 紬(ia5229)
20歳・女・巫
タクト・ローランド(ia5373)
20歳・男・シ
天ヶ瀬 焔騎(ia8250)
25歳・男・志
トカキ=ウィンメルト(ib0323)
20歳・男・シ
フィリー・N・ヴァラハ(ib0445)
24歳・女・騎 |
■リプレイ本文 「また、鬼どすか。しかし本当に色んな鬼がいるもんどすなぁ」 華御院 鬨(ia0351)は、村へ向かう途上でそう漏らした。 「捕まった村人たちのことを考えると、一刻も早く鬼を倒す必要がありますね。最低でもこちらに引き付けておきませんと」 鬼啼里 鎮璃(ia0871)は言って、民の無事を願う。 「言語を発するアヤカシが相手ですか。これは一筋縄ではいかなそうですね。しかし、被害にあっている村のためにも、負けるわけにはいかないのです」 斑鳩(ia1002)はぐぐっと拳を握りしめる。 「この様な非道‥‥。まだ生き残る村人が居る可能性があるならば‥‥急がねばなりませんね。笑顔を取り戻す。必ず、この手で‥‥」 秋桜(ia2482)は静かに呟く。 「あのような蛮族どもが‥‥」 「我、漆黒の鬼であると」 月酌 幻鬼(ia4931)は、笑っていた。 「我、『人』の夢幻、儚む鬼――。我、ただ強き恐れられる黒鬼であれと」 幻鬼、この男は鬼を狩ることに異常なまでの執着と喜びを見出す謎の開拓者である。 「‥‥応鬼よ、待っていろ。黒鬼は俺一人でいいのだ‥‥今から俺が行って、止めをくれてやる。先の戦のようにはいかんぞ。くく‥‥」 倉城 紬(ia5229)は同行するギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)に声を掛けた。 「はじめまして。橘さん。巫女の倉城といいます、今回はよろしくお願いしますね」 倉城から言葉を掛けられた鉄州斎は笑みを浮かべると、口を開いた。 「ああ。よろしく頼むぜ。今回の黒鬼、一度報告が出ているが、先の戦闘では呆気なく逃がしたからな。金剛応鬼は、何としても討ち取りたいところだな」 「そうですね‥‥でも、黒鬼って強いんでしょう? 簡単に行くでしょうか」 「優しくはないだろうが、お前さんたちも今じゃほとんどが熟練の域に達している。最近の依頼を見ていても、頼もしく思っているよ。ジルべリアの内乱でもよくやってくれているし、危険な依頼を解決するのに、これからもお前さんたちの力が必要になるだろうな」 「相談役様からそんなふうに言われると、何だか嬉しいやら恥ずかしいやらです‥‥」 「いや、俺は本気だぜ? 最近は見どころのある奴が増えた」 鉄州斎は言ってまた笑みを浮かべる。 「お前さんも、もう駆け出しじゃなかろう。開拓者名簿には目を通してきたがな。頼りにしてるぜ、仲間を助けてくれ」 「はいっ、頑張りますの!」 倉城は俄然やる気が出て来て、拳をぐっと握りしめる。 ‥‥にしても、まさしく多勢に無勢ってか。殲滅のみならまだしも村人の救出もってか?明らかに戦力足りてねーだろ。それなのに、何で俺はこんな危ねー依頼を受けてるんだかな。 胸の内に呟くタクト・ローランド(ia5373)、シノビ。滅多なことではやる気を見せないぐーたらな若者だが、今日は本気である。 「何かあんたが担当する依頼は危険なものばかりな気もするが、気のせいか? 今回の依頼も相当やばいだろう」 タクトは何となく思ったことを鉄州斎にぶつけてみる。 「危ないものばかりってのは気のせいだな」 相談役は苦笑する。 「まあ、相談役ってのは、無論の依頼の斡旋や案内とか事務仕事もするが、危険な依頼などでは現場へ同行することも珍しくないんだ」 「ふーん、相談役ってのもふんぞり返ってるだけじゃないんだな」 ずけずけと言うタクトに、鉄州斎は苦笑して「ご覧の通りだ」と肩をすくめる。 黒鬼は滅す滅す滅す! 滅し尽くす対象! 此の焔の猛りの侭に! 金剛応鬼‥‥似てるんだよ。俺が、いや、俺達が10年前に戦ったアヤカシと、な。何時もと同じ、刀「業物」を握る此の手が、普段より熱く感じる。『「狂焔の魔鬼」のこの二つ名、貴様らに等しく滅びを与える事で、教えてやる――‥ッ』静かに熱く、燃える。復讐の鬼人、再来と言うだけだ。さぁ、金剛応鬼‥‥貴様の断末魔を聞かせてもらおうか‥‥。 天ヶ瀬 焔騎(ia8250)は内心で沸騰するような狂気に身を委ねていたが、外見上は平静を装っていた。 「ところで、天ヶ瀬。この依頼を受けた時から気になっていたんだが、お前さん心が穏やかじゃないな」 そんな天ヶ瀬の心中を察したのは鉄州斎である。天ヶ瀬は微かに笑った。 「橘さん。金剛応鬼は‥‥俺が十年前に戦った因縁のアヤカシに似ているんです」 「ふむ、因縁か」 「橘さんには気付かれましたか。さすがに相談役の肩書は伊達じゃないですね」 「おだてても何も出んぞ。まあ冗談はさておき、月酌と言いお前と言い、執念を燃やしている奴がいるのは気がかりだな」 鉄州斎は頭を掻いてぼやいた。 さて、難しそうな仕事ではありますが‥‥頑張るとしましょうか。今回は対金剛応鬼班の方に回らせて貰った訳だし、全力で行く‥‥。 魔術師のトカキ=ウィンメルト(ib0323)、アヤカシにとっての死神でありたいと願う青年は、スカルマスクで顔を覆い、僅かに見える真紅の瞳が異様に光っている。 「村までは後どのくらいですかね」 トカキはマスクの中から低い声を出した。 「間もなくだ。もう半刻もすれば着く」 鉄州斎の言葉に、頷くトカキ。 「こうして話している間にも、人が死んでいるかと思うと、心が痛みますね。誰もみな平穏無事に暮らしたいと願っているのに。アヤカシは酷い‥‥何て残酷なんでしょうか」 「奴らは人外の化生だ。人の道理が通じる相手じゃないからな。今俺たちは、紛れもなく奴らに生存を脅かされているのさ」 「‥‥‥‥」 鉄州斎の言葉に、トカキは答えない。確かに鉄州斎が言うのは、今天儀が直面している現実だ。 「相談役がしけたこと言ってんじゃないよ、橘。トカキを少しは励ましてやりな。どうも落ち込んでいるようにも見えるからね」 フィリー・N・ヴァラハ(ib0445)は言って、豪快に笑った。 「天ヶ瀬! 今日はあんたとどっちが鬼を多く倒せるか競争だね! こんな機会も滅多にないからねえ」 言ってフィリーは笑った。 「よろしくお願いします。でも負けませんよフィリーさん。今日の俺はいつも以上に気合十分ですからね」 「そうこなくっちゃねえ。橘! あんたも頼むよ! 相談役はしっかり締めるところは締めてくれよ!」 「そう言われるとこの仕事もやりがいがあるな」 鉄州斎は言って、からからと笑った。 そうして、開拓者たちと鉄州斎は、黒鬼、金剛応鬼たちが占拠する村へ突入するのだった――。 「――行きますよ!」 鬼啼里は突進してくる黒い小鬼に太刀を叩きつけた。小鬼の頭が粉砕される。 天ヶ瀬は業物を振るって小鬼の腕を切り飛ばして、踏み倒すと、鬼の胸を突き刺した。 「温いんだよ、この程度じゃ、俺は倒せないぜ」 一気に切り裂かれた小鬼は瘴気となって崩れ落ちた。 フィリーも鬼の群れに激突する。一気に距離を縮めてスタッキング。 「まずは一撃目! アンファングエアーストブリッツァァァ!!」 密着しての思い切った拳による殴打。 思いっきり吹っ飛ばした後に、さらに別の鬼に対してブラインドアタック。 「そして2撃目ぇ! プラルツヴァイトブリッツァァァ!!」 体を一回転させて、攻撃が読まれにくくし、攻撃する。 そして、また別の鬼に対してポイントアタック。 「まだまだ3撃目いっくよ! グレンチェドリットブリッツァァァーー!!」 相手の防御のもろい部分を狙って思いっきり殴打する。 練力を使い果たす勢いで鬼を三連続で沈めると、フィリーは天ヶ瀬をちらりと見る。 「まだまだあ!」 天ヶ瀬は負けじと勢い中鬼を切り飛ばした。 ――ガオオオオオオ! しかし鬼の群れも数で押してくる。黒い小鬼の群れはざわざわと開拓者たちを包囲する。 大鬼が出てくると、咆哮して中型と小鬼を前進させる。 「くくく‥‥応鬼以外の雑魚に興味はない!」 幻鬼は金砕棒を振りかざして踏み出した。鬼の列が後退する。 「金剛応鬼は後ろどすかな」 「行って下さい。こちらは止めます‥‥」 「そういうこった。よお橘、お前も行ってくれよ。民を守ってやってくれ」 タクトは言うと、鉄州斎は頷いた。 鬨、幻鬼、斑鳩、トカキ、鉄州斎は鬼の包囲の一角に突進する。切り崩すと一気に突破して駆け抜ける。 ――ガオオオオオオオ! 大鬼が咆哮して突破して行く開拓者たちを足止めしようとするが、鬨と幻鬼が吹き飛ばし、開拓者たちは包囲を脱した。 「あなたの相手はこちらです‥‥」 秋桜は大鬼に打ち掛かって行く。大鬼の棍棒を受け止めて、転反攻を叩き込む。疾風雷閃、拳が大鬼を貫通して、肉を裂き、頑強なアヤカシの肉体を打ち砕いた。 タクトは風魔手裏剣を撃ち込めば、後方に飛びながら木葉隠で大鬼の攻撃を回避する。ちらりと秋桜を見やり、大鬼を引き付ける。 「さすがです‥‥」 秋桜はタクトが作り出した隙に大鬼へ連打を浴びせる。 「神楽舞‥‥攻!」 倉城は神楽を舞うと、秋桜は大鬼を一機怒涛に沈めた。 反撃も食らったが、倉城が神風恩寵で回復させる。 「しかし‥‥さすがに数は多い」 鬼啼里は中型と小鬼と相手取りながら、指揮を取る中型鬼の撃破を狙う。一体を粉砕したところで小鬼の群れに囲まれる。連打に耐えながら、小鬼の首を吹き飛ばした。 倉城が乱戦の中で支援に奔走する。 天ヶ瀬、フィリーの二人は次々と小鬼を撃破して行くが、それでも数に押されてダメージを食う。 「フィリーさん、何体倒しましたか!」 背中を合わせるフィリーに、天ヶ瀬は問うと、フィリーは呼吸を整えながら笑った。 「さあてね、10体までは数えたけどね」 「ここで終わるわけにはいきません。金剛応鬼のもとへ行くまでは」 「あんたも物好きだね。アヤカシのボスがそんなに気になるかい」 「俺は狂ってるんですよ」 「ああ、どうもそうらしいね!」 「行きますよ!」 天ヶ瀬とフィリーは再び鬼の群れに突進した。 金剛応鬼は、手下の鬼を何体か側に置いて、家の外に出ていた。遠目に開拓者たちが接近してくるのが見える。 「人間どもが‥‥なぜここが分かった」 金剛応鬼は舌打ちすると、大刀を構えて前進する。 「応鬼!」 幻鬼は金剛応鬼と相対して、気持が昂ぶってくる。 「久しい! 実に久しいぞこの感覚! 我が黒き同族の魂が集まったこの感覚!」 「貴様は‥‥見覚えがある。そうか、開拓者か」 「‥‥応鬼、お前と刃を交えるのも最後かと思うと、感極まるものがあるな。俺の通り名がまた増えるかと思うと‥‥お前の名は俺の金砕棒に刻み込まれる」 「よく喋る奴だ」 金剛応鬼は部下の鬼を前に出すと、残酷な笑みを浮かべる。 「奴は任せたぞ」 鉄州斎はするすると横に抜け出すと、民の確保に向かう。 「逃がさんぞ」 「鬼さんこちらどす」 鬨と幻鬼が突進した。 「さて、鬼退治と行きますか」 トカキはサンダーを撃ち込むと、金剛応鬼がよろめいた。 「ぬう!」 「応鬼!」 幻鬼の一撃を、金剛応鬼は弾き返す。 「神楽舞、防!」 斑鳩は神楽を舞い、鬨と幻鬼の防御を上昇させる。 「何や強そうな鬼どすなぁ。こないな武器では堅そうで刃がたたなんどすわ」 鬨は金剛応鬼に喋りかけながら、撹乱を誘う。 「ならば、落ちろ!」 しかし、鬨は横踏で回避すると、白梅香を叩き込んだ。浄化の一撃が金剛応鬼の肉体を砕く。 「あら、残念どすな」 「浄化の力――!」 金剛応鬼は後退する。 「俺はどんな汚い手を使ってもお前を消す‥‥」 トカキはファイヤーボールを撃ち込んだ。火の玉が金剛応鬼を炎で包み込む。 「おおおおお応鬼い!」 幻鬼はスキル全開で突撃。金剛応鬼と打ち合い激しく切り合う。 「幻鬼さん、支援は任せて下さい!」 斑鳩は神風恩寵と神楽舞で幻鬼をサポートする。 幻鬼は重傷を負いながらも金剛応鬼と打ち合う。 「ちい!」 金剛応鬼は予想を越える幻鬼たちの猛攻に、逃げを打つ。 「逃げられるなんて、思うなよ?」 トカキはフローズを連打した。 動きが鈍った金剛応鬼に肉薄する鬨と幻鬼。 「逃がしはしませんよ!」 斑鳩も神楽舞・攻で攻勢に転じる。 「せいやあ!」 幻鬼の金砕棒が金剛応鬼の肉体にめり込み、鬨の白梅香が切り裂く。 「おおおおおおおあああああああああ!」 ドン! と突如加速した金剛応鬼が鬨と幻鬼を吹き飛ばした。 「何!?」 「開拓者どもが‥‥貴様らに捕まるほど雑魚ではない」 金剛応鬼はコオオオオオオ‥‥と瘴気の息を吐き出すと、前に踏み出してきた。 「まだまだ俺は死なん」 そこで、後方から天ヶ瀬や秋桜たちが援護に駆けつける。 「大鬼たちはほとんど片づけた」 「ご苦労さん。残る金剛応鬼は要注意どす」 「こいつが金剛応鬼ですか‥‥」 開拓者たちと向き合う金剛応鬼は、牙を剥いた。アヤカシの本性を剥き出しにする。 「立ち向かってくるなら、貴様らを倒し、俺はさらに力を得る」 一瞬、金剛応鬼は、開拓者たちを確かに圧倒した。 が、開拓者たちは気力を振り絞って金剛応鬼に立ち向かう。 金剛応鬼は咆哮した。びりびりと凄まじい殺気が開拓者たちの肌をざわりと撫でた。 「次は貴様の番だ――」 天ヶ瀬は業物を構えると、突進した。 「行くぞ!」 開拓者たちの猛攻を金剛応鬼は受け止める。手応えはあったが、金剛応鬼は倒れない。 「てめえには容赦はしねえ――!」 天ヶ瀬の紅蓮紅葉が金剛応鬼を貫通する。 だが金剛応鬼はしぶとく立ちふさがった。不死身のような生命力で反撃し、最後にはまたしても逃走を図る。 「逃げたくば逃げるがいい。負け犬の様に尻尾を巻いて。敵に背を向け、相応の惨めで哀れな悲鳴をあげながら‥‥何度来ようと、屈辱を味あわせてあげましょう。人間を、舐めるな」 秋桜の挑発にも金剛応鬼は哄笑を発して後退する。 「最高の褒め言葉よ! あがくがいい人間ども!」 だが、次の瞬間、天ヶ瀬の一撃が金剛応鬼の腕を切り飛ばした。 「――!?」 態勢を崩したところへ、幻鬼がその足を打ち砕き、鬨の白梅香が続いて足を寸断した。 崩れ落ちる金剛応鬼は、笑っていた。 開拓者たちは、確実に消失する金剛応鬼を目の前に、止めを差す。 そこへ幻鬼が近付き、金剛応鬼に問う。 「応鬼よ、我が好敵手よ、逝く前に一つだけ教えてくれ。お前以上に強い鬼はいるか?」 「いずれまた、俺を越える鬼が現れる‥‥くはは‥‥」 「さらばだ、応鬼よ」 幻鬼は金砕棒を金剛応鬼に振り下ろした。 そして、金剛応鬼は、遂に黒い塊となって崩れ落ちて行った。 「‥‥ご苦労だったな」 鉄州斎は、やって来た開拓者たちを前に、ほっとした表情を見せた。彼の後ろには、生き残った民人たちがいた。 「いつになっても、人の死には慣れないものですね‥‥」 トカキは埋葬した民の墓標の前でヴォトカを一口。 「怪我はありませんか? 安心して下さい、もう黒い鬼はいなくなりましたから‥‥」 倉城は最後まで残って、村人のケアに当たっていた。 かくして、金剛応鬼を巡る事件は幕を閉じたのである。 |