|
■オープニング本文 天儀暦1009年12月末に蜂起したコンラート・ヴァイツァウ率いる反乱軍は、オリジナルアーマーの存在もあって、ジルベリア南部の広い地域を支配下に置いていた。 しかし、首都ジェレゾの大帝の居城スィーラ城に届く報告は、味方の劣勢を伝えるものばかりではなかった。だが、それが帝国にとって有意義な報告かと言えば‥‥ この一月、反乱軍と討伐軍は大きな戦闘を行っていない。だからその結果の不利はないが、大帝カラドルフの元にグレフスカス辺境伯が届ける報告には、南部のアヤカシ被害の前例ない増加も含まれていた。しかもこれらの被害はコンラートの支配地域に多く、合わせて入ってくる間諜からの報告には、コンラートの対処が場当たり的で被害を拡大させていることも添えられている。 常なら大帝自ら大軍を率いて出陣するところだが、流石に荒天続きのこの厳寒の季節に軍勢を整えるのは並大抵のことではなく、未だ辺境伯が討伐軍の指揮官だ。 「対策の責任者はこの通りに。必要な人員は、それぞれの裁量で手配せよ」 いつ自ら動くかは明らかにせず、大帝が署名入りの書類を文官達に手渡した。 討伐軍への援軍手配、物資輸送、反乱軍の情報収集に、もちろんアヤカシ退治。それらの責任者とされた人々が、動き出すのもすぐのことだろう。 ジルべリア南部、グレイス辺境伯の領内にて――。 ヴァイツァウ反乱軍の支配地域に近い町の酒場で、人々はこれから起こるであろう戦に噂していた。 「‥‥伝説の巨神機を復活させたコンラート様を止めることは出来るのか」 「まさか生きていたとは驚きだなあ。本当に俺たちを解放してくれるんだろうか」 「馬鹿! 滅多な事を口にするな。辺境伯の耳にでも入ったら大事だぞ」 「辺境伯たちはとうに逃げ出してしまったよ」 「そんなことより、ここは危ないぜ。アヤカシの攻撃も頻繁になってきてるし、反乱軍が来たら真っ先に戦場になるんじゃないか」 「南から逃げてきた奴の噂じゃ、アヤカシの人さらいが横行していて、反乱軍も軍資金集めに重税を開始したって。まあ噂ではあるが、いい話は聞かないな」 「俺たちも自分の身を守る算段をした方がいいかもな‥‥」 と、その時である。 雪原に囲まれた町の遠方から、アヤカシの咆哮が轟いてくる。 程なくして、民が一人駆け込んできた。 「大変だ! でっかいゴブリンの集団がこっちに向かってくるって! 反乱軍の占領地域からだ!」 「何だって反乱軍の占領地域からこんなにアヤカシがやってくるんだ」 それから程なくして、風信機を使ってギルドに大鬼の集団が町を攻撃してくると知らせてきた。 ――鬼のアヤカシたちは、巨大な岩狼に乗っている。これらの鬼はゴブリンではなく、上位種のオーガであった。真っ白な、毛皮に身を包んだオーガたちは、岩狼の手綱を操りながら、雪原のかなたに見える町に目を向けていた。オーガの中でも一回り大きな二体が明朗な人語を口にした。 「くっふっふ‥‥そろそろ狩りの範囲を広げてもいい頃だ。こちらにも戦の火が及ぼうとしている」 「人間どももご苦労なことだな。お互い斬り合ってくれればそれで良し。消耗すればするほどに我々の活動範囲は広がる。次は‥‥あの町からだ」 オーガスノウの集団は、そう言うと町を取り囲んで四方から攻撃を開始する。 ――リーガ城にて、グレイス・ミハウ・グレフスカス辺境伯は、増大するアヤカシの被害報告に厳しい顔であった。 「ただでさえ反乱軍がいつ動くとも知れぬ時に、アヤカシどもが‥‥」 今は耐えるしかない。辺境伯は、少数精鋭でアヤカシの迎撃に向かう開拓者たちに全てを託していた。 |
■参加者一覧
北条氏祗(ia0573)
27歳・男・志
焔部・虎徹(ia0840)
23歳・男・志
アルカ・セイル(ia0903)
18歳・女・サ
桐(ia1102)
14歳・男・巫
各務原 義視(ia4917)
19歳・男・陰
月酌 幻鬼(ia4931)
30歳・男・サ
叢雲・暁(ia5363)
16歳・女・シ
藍 舞(ia6207)
13歳・女・吟
ルエラ・ファールバルト(ia9645)
20歳・女・志
ハイネル(ia9965)
32歳・男・騎 |
■リプレイ本文 開拓者たちは、町へ接近すると、オーガの咆哮を聞いて足を止める。 「オーガども、残らず首を刎ねてくれようか」 北条氏祗(ia0573)の青い瞳に雷光に似た閃きが宿る。凄絶な剣気を放っていた。 「久しぶりの依頼ですが、成功させましょう」 焔部・虎徹(ia0840)は、言って理穴弓の具合を確かめる。ここ最近依頼を受けていなかったので、虎徹は少し緊張していた。オーガは恐らく虎徹の技をもってして十分に戦えるとは言い難い。 「俺一人では敵う相手ではないですが‥‥みなさんを支援しますよ」 「さーてと、いっちょぶちまけるかあ! 白い鬼って何か他人の気がしないけど‥‥ま、仕事はきっちりさせてもらうぜ!」 アルカ・セイル(ia0903)は飛手を打ち合わせる。独自の武術「無知負武道(ぶちまけスタイル)」で無手の技は最も危険なスタイルであると言う。 「ふーっ、さすがに北国の冬は厳寒ですね。天儀の冬どころじゃないです‥‥」 桐(ia1102)は毛皮の外套を手繰り寄せると、白い吐息を漏らした。 各務原義視(ia4917)は町の方に目を向ける。‥‥裏で反乱軍とアヤカシが繋がってるような気がしてならない。だとしても、民間人を攻撃するとなると人心を荒廃させるだけ。反乱軍指揮官は政治家としては無能だな。アヤカシにやらせたって、民衆が被害受けたら最終的には巡り巡って自分の所に回ってくるだけなのに。ま、民がこうなると義に依って行動するだけだけど。 「本当にアヤカシと繋がっているのでしょうかね? だとしたら憂慮するべき事態です。このような策謀の影には上位のアヤカシの存在があって然るべき」 人間同士を争わせ、不穏と怨嗟の念を撒くのはアヤカシの常套手段でもある。そしてそれらはアヤカシをより強くする。 月酌幻鬼(ia4931)は、鬼に関わる依頼しか受けない黒鬼を自称するサムライである。 鬼が人をさらうのはよくあることだが‥‥これは誰かに手引きされているような‥‥それにしても、応鬼は何処にいるのだろうか‥‥お前等に、鬼としての誇りは無いのか? 幻鬼は胸の内で呟きながら、獰猛な笑みを浮かべた。金砕棒を一振りする。 「ふふ‥‥応鬼を求めて彷徨い、異国に来てみたものの‥‥当たりはないか」 人攫い紛いの事をアヤカシがするとは、裏が気になるけどどうせオチはボスか森の勢力拡大の為だろうし、徹底的に邪魔させてもらうよ! 「それじゃあいってみよ〜〜〜〜〜〜〜! オーガの狙いが何であろうと、町の人たちを好き勝手にはさせないよ!」 叢雲・暁(ia5363)は言って、厳しい表情を浮かべる。NINJAとやらを目指す叢雲であるが、いつの日かその様式を確立させたいと思っていた。今日はジルべリアで鍛練の日になりそうだ。 藍舞(ia6207)は人さらいのオーガに怒り心頭。智恵があろうが人語を解そうが、交渉の余地がないのなら、罵倒しつつも斬り伏せるわ。 「オーガね‥‥何を企んでいるのか知らないけど。これ以上民に犠牲は出さないわよ」 藍舞はバトルアックスと焙烙玉を手に取り、仲間たちを振り仰ぐ。 「では私は北から向かい、アヤカシ達を突破した後、住民達を守る戦いに尽力します」 ルエラ・ファールバルト(ia9645)は言って、町の北に目を向けた。 「一刻の猶予もなりませんね。鬼は攻撃を開始している様子」 「当然、救われるべき者は救わねばならぬのだ」 ハイネル(ia9965)は毅然と言って、冷たい瞳でオーガの姿を見つめる。 果然、戦の被害を多く受けるのはやはり民。当然、少しでも救う為に私は動く。慨然、反乱軍の領地からアヤカシか。例え敵領地の民でも武装していない民を護ることなく無下にして帝国を打倒する事しか考えているのであれば愚かとしか言い様が無い。アヤカシを利用して帝国に抵抗しようとするのであっても同様。 「反乱軍、コンラート・ヴァイツァウ、民を蔑ろにして戦を起こすとは短慮な」 そうして開拓者たちは町の北と南からオーガへ攻撃を開始する。民が反乱軍のいる南ではなく、北へ向かって移動していることが確認されていたので、北へ回る開拓者たちはオーガを撃破しつつ町へ進入、民を保護するつもりである。 南から回る開拓者たちは、オーガを撃破後に、東西に回り込み、オーガを外周から殲滅していく。 「よし、行くぞ」 北に回るのは北条、アルカ、ルエラ、ハイネル。 南へ回るのは虎徹、桐、各務原、幻鬼、叢雲、藍舞。 「オーガを一気に殲滅するぞ。はっはあ! 果たして応鬼に敵うのかねえ!」 「アヤカシは逃がさないよ! みんな急ごう!」 開拓者たちは駆け出した。 ――オーガスノウボスは、接近してくる開拓者の姿に気付いたが、それが開拓者であるとすぐには分からなかった。しかし、攻撃するつもりであることは見抜いた。 「人間どもが近付いてくる‥‥?」 「援軍か‥‥無駄なあがきだ。たかだか数人でこちらを倒せると思うのか」 「まあいい、南は任せるぞ。俺は町中へ入って指揮を取る」 「ふふ‥‥任せろ。人間など、敵ではないわ」 ボスの一体は岩狼を駆ると、町中へ入って行く。 もう一体は、手近なオーガを呼び寄せると、南からやってくる開拓者たちに向き直った。 ――ガオオオオオオオ! とオーガの咆哮が空気を震わせた。 「オーガ四体、向かってきますね。支援します」 虎徹は言うと、弓を引き絞って矢を解き放った。虎徹はほとんど駆け出しの域。それでも矢の一撃は一般人を遥かに超える。矢は空を切り裂きオーガを撃った。 ――キイイイイイイン! としかし矢はオーガに弾かれた。 「行って下さい。矢を撃ち続けます」 「実際に見るとやはり多いですね。南でだけとなりますが怪我は治しますから思いっきりやっていいですよ」 桐はにこりと笑って仲間たちの後ろに付いた。 「鬼が誘拐とはいい度胸してるなあ! こらあ!」 幻鬼は金砕棒を振り回しながら突進した。藍舞、叢雲、各務原が同時に続く。 「民は北へ逃げている。敵がこちらへ戦力を集中してくれると助かるんだけど‥‥」 各務原は符を装填すると、「急々如律令!」と謎の呪文を唱えて斬撃符を叩き込んだ。――ドズバアアアア! とカマイタチが貫通してオーガを切り裂いた。 藍舞は焙烙玉を撃ち込み、叢雲は風魔手裏剣を投擲した。爆発の衝撃がオーガを吹き飛ばし、手裏剣が貫通する。 「おらおらあ!」 幻鬼は突進して、岩狼の頭に金砕棒を叩き込んだ。――ドゴオオオオオ! と金砕棒が岩狼を撃砕する。岩狼の頭部が吹き飛び、肉体が黒い塊となって崩れ落ちて行き瘴気に還元する。 ――オオオオオオオオ! 転がり落ちたオーガは怒りの咆哮を上げて幻鬼に撃ち掛かってくる。一撃、二撃と幻鬼は跳ね返した。 「応鬼はこんなものじゃなかったぜ!」 幻鬼は金砕棒を叩き込む。 「何だ貴様ら‥‥術士に剣士‥‥帝国の騎士か」 オーガボスは、武器を構えながら、岩狼の鞍上から開拓者たちを見下ろす。 「聞きたいのはこっちよ。人さらいの真実、ぺらぺらと喋る気があるのかしら。何を企んでいるのか、話せば苦しまずに瘴気に還して上げるわ」 「抜かすは小娘が。ふふん、真実か。真実は闇の中と人間もよく言うではないか。それにしても、帰ってこない人間がどうなっているか、想像もつくまい。生きたまま我らに捕えられた人間がどうなっているか、お前たちの興味は尽きないところであろう」 「話さないなら正義を騙る気も、仁徳を語る気も無い。互いに死活問題ならうちは活きる方を選ぶだけよ!」 藍舞は焙烙玉を撃ち込んだ。爆発を受けてボスは態勢を崩すが、狼狽の声を上げる岩狼を操ると突進してくる。 「ここで我らを倒したところで、あの方には遠く及ばぬわ! コンラートの小僧が勝とうが負けようが、戦が終わる頃には消えた民が戻ってくることはないわ!」 ボスは部下のオーガ達に命じて開拓者たちの牽制に当てる。 「そして、どの道お前たちがここから生きて帰ることもない!」 「言ってくれるなあ!」 幻鬼はボスの直撃を受け止める。万力を込めて、オーガボスが振り下ろした刀を押し返す。 「ふふん‥‥やはり応鬼には遠く及ばぬなあ!」 しかし、幻鬼の一撃はボスに弾かれた。 「乱戦に突入しましたか‥‥さて、みなさんの実力ならば」 虎徹は炎魂縛武を夜にまとわせると、オーガを撃った。ズドン! と矢が貫通する。 叢雲と藍舞はオーガの攻撃を身軽にかわしつつ、反撃を撃ち込んでいく。シノビの二人は格闘戦技も相当な使い手である。オーガに確実に打撃を与えていく。 「ここで手間取っているわけにはいかないんでね! 速攻で行かせてもらうよ!」 叢雲は兜割を連打で撃ち込んだ。――ドゴオオオオオオ! と岩狼が崩れ落ちて瘴気に還元する。 オーガは怒り狂って斧を振り下ろすが、叢雲は素早くかわした。 「えい!」 兜割の一撃がオーガを貫通して、肉体を吹き飛ばす。 「意外にしぶといですが‥‥急々如律令!」 各務原は謎の呪文を唱えながら斬撃符を連発する。凄絶な破壊力のカマイタチがオーガを突き抜けた。 「どうやら‥‥私が加勢しても行けそうですね」 桐は戦況を確認して、力の歪みを撃ち込んだ。オーガの周囲の空間が捻じ曲げられて、大打撃を与える。絶叫して断末魔の声を上げるオーガが崩れ落ちて瘴気に還元する。 「ぬう‥‥!」 オーガボスは形勢の不利を悟ると、後退する。 「逃がさないわよ!」 藍舞と叢雲が岩狼を倒し、幻鬼がボスに突撃する。 「この程度で! 人間に倒せるものか!」 ボスは幻鬼と激しく打ち合う。 雑魚のオーガを倒した各務原と桐がボスにも術を叩き込む。 叢雲と藍舞が牽制してボスの退路を塞ぎ、虎徹が支援攻撃を行う中で、幻鬼が金砕棒を叩き込んだ。 ボスもそれなりにタフで大打撃を受けつつも、幻鬼を押し返し、逃走を図ったが、最後には集中攻撃を浴びて崩れ落ちる。 「くはは‥‥いずれ手遅れよ‥‥全てはあの方の思惑通り‥‥止める術はない‥‥」 ボスは瘴気に還元して消滅した。 「手間取った。急ぎましょう」 開拓者たちは東西に分かれて回り込み、駆けだした。 町の北で――。 「ふん!」 北条の二刀が岩狼を打ち砕く。もの凄い一刀は狼の巨体を真っ二つに切り裂いた。 「当然ながら貴様らを生かしては返さん」 続いて、反撃してくるオーガに小揺るぎもせず、北条の二刀が撃ち下ろされた。超絶的な破壊力。二刀がオーガを脳天から真っ二つに切り裂き、たったの一撃で瘴気に還した。 「やるねえ北条‥‥!」 アルカは目の前のオーガに疾風の如く襲い掛かって飛手を叩き込んだ。ドゴオオオ! とオーガの肉体を貫通する。 ――ガオオオオオオ! とオーガは棍棒を振り回してくるが、アルカは掌で軽く捌いた。 「残念、当たらねえよ」 ルエラは厳流と横踏を駆使して流れるような動きで薙刀を振るう。 「あなた方を逃がしはしません」 ――ズバアアアアアア! とルエラの一撃がオーガを切り裂く。無双の薙刀捌きでひゅんひゅんと武器を回転させると、「えい!」と厳流でオーガを切った。 「オーガ、民にあだなすアヤカシよ滅せよ」 ハイネルは剣を叩き込んだ。凄まじい力で岩狼を粉砕して、オーガを叩き落とす。 圧倒的な力を見せる北条を軸に、四人は北のオーガを殲滅する。 町から逃げ出して混乱する民を保護して落ち着かせる。 「大丈夫だ。開拓者ギルドから派遣されてきた。怪我は無いか、後は任せられよ」 「北は確保しました。皆さんこのまま避難して下さい。町の中のアヤカシもこれから殲滅に向かいます」 北条とルエラが民に言葉を掛けた。 「あ‥‥ありがとうございます! ギルドの‥‥助かりました!」 「よし、町中の奴らを叩きのめすぜ」 アルカは戦闘に立って駆け出した。三人もアルカの後から町へ入る。 町中は混沌としている。開拓者たちは、逃げ惑う民を北へ向かわせる。 「このまま北へ行け! 北へ向かって走れ!」 民に呼び掛けていると、岩狼の口にくわえられた子供に向かって女性が鳴き叫んでいる。 アルカは背後から飛びかかって、一瞬のうちに岩狼を瘴気に還すと、子供を確保する。 地面に転がり落ちたオーガは咆哮してアルカを睨みつける。 女性がアルカに駆け寄ってくると、アルカはその母親に子供を手渡した。 「早く逃げな。俺は開拓者。ここは俺に任せろ」 「は‥‥はい!」 女は子供を連れて走り出した。 「さーて。オーガ君よ、ぶちまけてやるか?」 アルカがファイティングポーズを取ると、オーガは襲い掛かってきたが、攻撃はかすりもしない。アルカは文字通りオーガをぶちのめして瞬く間に瘴気に還した。 ルエラも民さらって逃げようとするアヤカシの足を止める。 「そうはさせませんよ」 岩狼の首を刎ね飛ばすと、転がり落ちるオーガに速攻を仕掛ける。オーガの反撃を跳ね返して、ルエラはアヤカシの胴を両断した。崩れ落ちて瘴気に還るオーガを確認して、町中を走る。 騒ぎの先にアヤカシはいる。ハイネルもガビシを撃ち込み岩狼を止めると、剣を構えて突進した。オーガと十合にわたって打ち合い、アヤカシを叩き斬った。 北条もオーガを切り伏せながら、町を走る。途中、民を保護し、北へ向かわせる。 そうして、町のアヤカシを撃退していると、東西からアヤカシを排除した幻鬼や各務原と合流する。 「外は安全です」 「よし、後は町中のアヤカシを始末するまで」 北条は各務原たちと分かれ、ボスと戦っているルエラと合流する。ルエラは苦戦を強いられていた。岩狼の鞍上から巧みな槍捌きで攻撃してくるボスの攻撃を何とか跳ね返していた。 「ここで俺と出会ったことを後悔するがよい!」 「民に仇名すアヤカシが、後悔するのはそっちです」 と、岩狼を北条が両断した。 「ぐお! 何だ!」 「北条さん!」 「ルエラ殿、助太刀致す」 素早く跳ね起きたオーガボスは、哄笑を発して襲い掛かってきたが、北条の圧倒的な一撃に腕を吹き飛ばされる。 「馬鹿な‥‥!」 ボスオーガはルエラの攻撃を受け止めながら後退すると、さっと反転して逃走する。 ――そこへハイネルが立ち塞がる。 「邪魔だ!」 オーガボスはハイネルを剛腕で跳ね飛ばそうとした。が、ハイネルは受け止めた。 「人語を‥‥敵の指揮官か」 「ハイネル殿! そやつを逃がすな!」 ボスは振り切って逃げようとしたが、ハイネルはスマッシュで弾き飛ばした。 転がり転倒するオーガボスの、北条は首を切り飛ばした。ボスは崩れ落ちて瘴気に還った。 「よし、残りを手分けして撃退するぞ」 それから開拓者たちは、町中へ侵入していたアヤカシを全て撃退する。 住民に幸い被害は無かった。全員が無事であったことを確認して、ひとまず安堵する開拓者たち。 「‥‥しかし、これらの攻撃に潜む影がありそうだが」 開拓者たちも全能ではない。推測は出来ても、真実に辿り着くのは容易ではなかった。 |