鳳華の龍脈、五芒星の肆
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/12/09 19:27



■オープニング本文

 過去――。
 狐はとうに寿命を越えていた。体毛は白くなり、ケモノ――白狐となった。尻尾はまだ一本しかないが。白狐は、丘の上から村を見おろしていた。思念を飛ばす。
 一軒の家が見えて来る。家の中に、布団を着た老婆が横たわっていた。老婆の名を、沙羅と言った。
「沙羅」
 白狐は呼び掛けた。
 沙羅はゆっくりと目を開けた。微かに笑う。
「あんたは……あの時の狐かい……見えるよ。立派になったね……」
「沙羅。わしはお前に救われた。もし、わしが代償を払うとすれば、お前は何を望む」
「何も要らないよ……そんなもの……あんたが長生きしてくれれば……何も要らない……」
 そこまで言って、沙羅は「ああ……」と思いだしたように言った。
「もし……我儘を一つ聞いてくれるなら……あんたに頼みたいことがある……」
「聞こう」
「……れ……あたしが願うのはそれだけだ……」
「それだけか」
「神様に大それた願いは出来ないよ……それに……あんたを縛ろうなんて……思わないからね……達者で行きな……」
「そうか……さらばだ、沙羅」
「さようなら……」
 沙羅が目を閉じると、白狐は踵を返した。

 現在――。
 白狐は目を覚ました。どうやら、夢を見ていたらしい。
「ん……」
 軽く首を持ち上げると、ここは天承城内の一室だが、人々が会話しているのが聞こえる。
「最後の大穴の番人は、厄介です。攻撃が全く通じないのです」
「通じないとはどういうことだ」
 龍安弘秀が、大穴から帰還した橘鉄州斎(iz0008)に問う。
「分かりません。とにかく、打撃も術も、全て、通らないのです。番人に触れることすらできません。我々は、ただ番人の範囲攻撃になぎ倒されるだけで……」
 鳳華南東に開いた龍脈最後の大穴には、またしても番人がいた。地下には規格外の巨龍骸骨や死骸巨龍らが配置されており、その奥の瘴気の楔には、最強の番人がいたのだ。
 番人の姿は、いわゆる龍人で、甲冑と刀を身に付けていて、身長は五メートル程あった。そして、龍人は、自身が纏う浮遊する九つの輝く緑光の魔法陣のようなものに守られていて、全ての攻撃を遮断する結界のような能力を持っていた。それによって楔をも守っていた。
「いずれ不厳王の妖術でしょうが……」
 西祥院静奈が言うと、弘秀は眉間にしわを寄せた。
「さて……どうしたものかな。打つ手はないか?」
 弘秀は、一同を見渡した。
「…………」
 ぼろぼろになったサムライ大将たちから重苦しい沈黙が発せられる。
 と、そこで白狐が言葉を発した。
「九星結界だ」
「何だって?」
 弘秀は、声がした方を見た。
「白狐か? 今何と言った」
「それは九星結界だ」
「九星……結界……? 何だそれは?」
「詳しく説明すると長くなる。簡単に言うと、九つの結界が多層になって張り巡らされている無敵属性の結界だ。破るには、秘儀が必要だ」
 室内にざわめきが起こる。
「お前は……その秘儀を知っているのか?」
「知っている」
 おお! と大将たちが声を上げた。
「破れるのか、お前が」
 弘秀は問うた。
「破れるとも」
 何と!
「ただし」
 白狐の言葉に、室内が凍りついた。
「秘儀を用いるには触媒が必要だ。わしだけの力では不可能なのだ。天狐様ならともかく、九つの結界全てを破るには、九つの、精霊の加護を受けた物品が必要だ。例えば霊剣とか。まあそんな大層なものでなくとも良いがな」
「俺は霊剣を一本持ってきている。使ってくれ」
 橘は霊剣を取り出した。
「ふむ。では、あと八つ。一つでも破れば、番人の無敵属性は消えるだろう。ただし、一つではまだ厳しいかも知れんな」
 そして――。

 最後の大穴へ、龍安軍は向かう。開拓者達の姿もそこにあった。飛空船には、白狐が乗っていた。白狐を番人のもとへ連れて行き、九星結界を一つでも破らねばならない。どのような秘儀を使うのかは知らない。ただ、集中して無防備になるらしく、今回、白狐を守りながら戦わなくてはならないから大変だ。みな、緊迫した面持ちで、龍人との再戦に向かっていた。

 ……魔の森の奥地で。
 大アヤカシ不厳王(iz0156)は、未来を見ていた。不確かなものが、形になろうとしている。不厳王は、苛立ちを覚えた。
「まさか……あの結界を破ることはできまい。人間にそんなことが出来る者などいないはずだ……が」
 不厳王は、掌に、映像を浮かべた。白狐を見出す。
「そうか。あの狐か……。まさか……だが、あんな狐ごときが? どこまでもわしを舐めおって……」
 不厳王は、立ち上がった。

 龍脈――。
 鳳華の地下を流れる五芒星の龍脈が、脈動していた。大地の精霊「亜紫亜」は、龍脈の中に浮かんでいた。
「光が……すぐ……そこまで来ている……懐かしい光が……」
 亜紫亜は、穏やかな表情で、龍脈に身を委ねていた。

 ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……。

 龍脈は、静かに脈動していた。


■参加者一覧
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
和奏(ia8807
17歳・男・志
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
不破 颯(ib0495
25歳・男・弓
成田 光紀(ib1846
19歳・男・陰
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
津田とも(ic0154
15歳・女・砲


■リプレイ本文

「へー、そんな結界や秘術があんだな!すっげー」
 ルオウ(ia2445)は白狐の言葉を聞いて感心した。
「でもよお、九本の霊剣を使って壊すとか手間かかってるけど、使うのはあんたにとって負担大きくないんか?」
「わしの心配より、自分の心配をした方が良いぞ。ルオウ。今回はな」
「うん? 何だかなあ……」
 鈴木 透子(ia5664)は進み出た。
「白狐さん、何故、人間に力を貸してくれるのですか? なぜそこまで、あたし達に力を貸してくれるのですか? 本当のことを教えて下さい」
「透子や。わしは、狐だ。それは変わらん。だが、ある人がわしに心を吹きこんでくれた。それはわしの中で大きくなり、強い感情を育んでくれた。わしはその人が大事に思っているものを壊したくはない。たとえ古い約束でも、わしにとっては特別な時間なのだ」
 白狐は、女性の幻影を出した。
「沙羅だ」
「沙羅さん? て……これ、真沙羅姫じゃ」
「わしにあることを遺して逝った。数奇なものだ。彼女は善人だったが、真沙羅姫はアヤカシであった」
「ごめんなさい」
 透子は言った。白狐の傷に触れてしまったと思ったから。
「精霊が眠っているのに。鳳華は因縁が多い所です。怨差や因縁は瘴気を呼びます。それは、あたし(陰陽師)の領分です」
「謝ることは無い。所詮、狐の戯言よ」
「話しが出来過ぎてる……」
 リィムナ・ピサレット(ib5201)が言った。
「何じゃと?」
「九星結界の事、白狐さんだけが知ってて破る事が出来て、儀式は白狐さんが番人の近くで行わなければならない。……白狐さんを誘き寄せて始末しようっていう不厳王の罠かもしれないよ! それに精霊の加護を受けた触媒すら消失する程の儀式……術者の体に負担がかからない筈がない。儀式を行う事で、白狐さんはどうなるの? 全部教えて欲しい。あたしは白狐さんに何かあってほしくない。あたしだけじゃない。仲間も、龍安さんも、兵士の皆だって、白狐さんが今までどれだけ助けてくれたか知ってる。すごく感謝してるし、大切な仲間だと思ってるよ」
 そうだよね? リィムナはみなに問い掛けた。
「それに……あたし、平和になったら白狐さんに抱き付いてもふもふしながら一緒にお昼寝してみたいんだ(赤 駄目かな……?」
「案ずるなリィムナ」
 白狐はリィムナを撫でた。
「わしは簡単にはくたばらん。必ず九星結界を破る。それはわしにしかできぬこと」
「精霊の力でもって結界を破るとは、つまり空の状態を作ると言えるか」
 成田 光紀(ib1846)が言った。
「打ち消す為の触媒となった物が消えるのは勿論だが、半ば精霊とも言える術者は、どうだろうかね。さて、人の身には知れぬ事、か。アヤカシの真意も、精霊の真意も伺えぬものよ。空の状態を作りたいのはむしろ精霊か……果たして両者、人の意に沿うものなのだろうか」
「白狐さん……?」
 リィムナは白狐を見る。
「九星結界を破れば、白狐様はただでは済みませんよ」
「え?」
 室内に、芦屋馨(iz0207)が入って来た。旅から戻ってきたのだ。
「弘秀様、お待たせしました」
 龍安弘秀は頷いた。
「馨さん、今言ったことは本当なの?」
「少なくとも、莫大な力を失ってしまうことは確かです」
 リィムナの問いに、芦屋は頷く。
「朝廷の陰陽師……」
 白狐は吐息した。
 不破 颯(ib0495)は「待った」と。
「事情はよく知らんが相手にとってあんたは目の上のたんこぶなんだろぉ? これだけ大掛かりな術だ。もし完成してあんたに被害があるようなら、さすがに考えないとねぇ」
 不破は、自分が持ってきていた精霊アイテムを引っこめた。
「白狐さん。九星結界を破るには、あなたの命が必要なのですか?」
 和奏(ia8807)がそれだけ問うと、
「九星結界は、八つまで破ってくれたらそれで良いよ! 結界一つくらい火力で破る!」
 リィムナは言った。
 そうして、開拓者達は精霊アイテムを差し出した。ルオウが霊杖「ククノチ」。透子が精霊槍「グランテピエ」。和奏がドレス「水姫」。コルリス・フェネストラ(ia9657)がクリムゾンリング。成田が四聖宝珠「白虎」。リィムナがアゾット。津田とも(ic0154)が厄除けの壷、である。
 さて、芦屋が持ち帰った報告でも、浄化の砂塵について確かなことは分からなかった。
「そうなんですね……」
 透子は迷っていた。正しいことをしている確信は持てない。「世の中上手くいかないのが当たり前」お師匠様の言葉を思い出す。それを何とかするしかない。
「当たり前のことかもしれないのですが、たぶん新しい問題が出てくると思います。もし不厳王の狙いが泰国の合戦で示された様な精霊力の中和なら、もし亜紫亜の力が戻ったらこんどは自分の力を増すことで同じ結果を目指すかも知れないと思います」
「亜紫亜は、永遠に眠るか……嫌な予感がするねぇ。ま、そんときゃそん時。最後の龍脈、開けさせてもらうよぉ?」
 不破は笑った。
「ま、やるしかないな。最終決戦なんだろう? 不厳王の意表をついてやろうじゃないか」
 津田は不敵に口許を緩めた。
「今回は、いつもに加え、大変ですね」
 コルリスは弘秀に作戦案を述べた。
「いつも通り龍騎兵に焙烙玉と盾を支給願います。また練力回復アイテムを現地で使える様手配し輸送。こちらもお願いします」
「了解した」
「それから、今回は魔術師と陰陽師、巫女をできるだけ動員願います。また、小型宝珠砲五門と油を大穴内で使用する為船で運搬させて下さい」
「ふむ」
「大穴侵入後は味方の行軍に支障のない区域に油を散布し松明で火をつけ視界を確保。味方魔術師や陰陽師に防壁構築をお願いし、敵の攻撃を防壁で防ぎ、その間に船から小型宝珠砲を大穴内へ入れ一部の兵を運用に回します」
「出来そうか?」
「やります」
「分かった」
「練力補給を受けながら防壁を特に白狐様周囲に巡らせ、白狐様と秘儀を防衛します。そして、巨龍骸骨、死骸巨龍は巫女の負傷治療、小型宝珠砲の地帯弾幕射撃による支援射撃を交えながら、龍騎兵等飛行できる味方が焙烙玉で爆撃する等高度を利用した攻撃を行い迎撃し、龍人は結界破壊まで牽制。敵を拘束する間に秘儀が発動し結界を破壊後、敵を撃破し瘴気の楔を破壊します」
 かくして方針は決したのであった。龍安軍と開拓者達は出立する。

 大穴内部に到着――。
 ――バオオオオオオオオオオオ!
 猛烈なドラゴンブレスが襲い来る。十体のアンデッドドラゴンの瘴気ブレスが人間たちを木端のように薙ぎ払う。防壁は消し飛んだ。
「怯むな! 防壁再構築! 砲撃!」
 コルリスが咆哮する。
「ってえ!」
 ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! と、宝珠砲が火を吹く。
「突撃!」
 コルリスは腕を振り下ろした。「行くぞ!」と兵士と開拓者達は舞い上がって加速した。
「行くぜい! ドンナー!」
 ルオウはぐんっ、と突進した。巨大なドラゴンを素早く切り裂く。
「黄泉より!」
 透子は呪殺符「罪業」を飛ばした。蒼白い炎が明滅する。ドラゴンは血を吐いて絶叫。
 和奏は蓮李を駆る。接近して秋水。凄絶に切り裂く。巨大ドラゴンの肉と骨が飛ぶ。
 不破は魔弓「夜の夢」を連射した。三連射がドラゴンを貫く。
「御大、気を付けろ」
 成田は白狐の前に立ち塞がり、手を差し出した。
「心配は無用。九星結界を破れば、わしは消滅する……はずであったが」
「そうであったかよ」
 リィムナはドラゴンたちの背後から接近。
「行くよマッキ! 食らえええ! あたしの魂の楽曲! 白狐さんの分も、ぶつけてやる!」
 魂よ原初に還れ。リィムナの声がほとばしる。
「ああああああ――!」
 ドラゴンたちは楽曲のダメージで絶叫した。
 津田は冷静に火縄銃「轟龍」を構えていた。砲術士の素早い手つきで弾を込めて行く。九七式滑空機「は号」を操る。銃弾セット。
「行くぞ……」
 銃口をアンデッドドラゴンの目に狙いを定める。
「ってえ!」
 轟龍が咆哮する。ゴオオオオン! 銃弾は直撃し、ドラゴンの目を爆砕した。
「掛かれー!」
 龍安兵も一斉に攻撃を開始する。
 ――バオオオオオオオオオオオ!
 ドラゴンたちは反撃に転じ、体当たりとブレスで人間たちを押し潰そうとする。
「攻撃は無視かぁおい」
 不破は瑠璃を操りつつ、響鳴弓を叩き込んだ。
「大きさだけは大したものですが……!」
 和奏は上空から襲い掛かり、白梅香を真上から叩き込んだ。
 ……ガアアアアア……! ドラゴンは、一体、また一体と崩れ落ちて行く。巨大な肉体が落ちて行く。黒い塊となって落ちて行き、瘴気に還元する。

「御大、行くぞ。道が開けた」
 成田は白狐と走った。すぐ側にドラゴンだったものが横たわっている。
「行くぜい! ドンナー!」
 ルオウも加速した。
 魔法陣が見えて来る。「一」から「九」の文字が浮かび上がった魔法陣が楔を取り囲んでいる。
「これは……」
 透子は見張った。
「では、始めるとするか」
 白狐は目の前に精霊アイテムを並べてもらった。
「行くぞ」
 キイイイイイイイイイイン……。白狐の体が白く光り始めた。
「御大」
 成田は白狐に呼び掛けたが、ケモノの意識はすでにここには無かった。光の粒子が精霊アイテムに吸い込まれて行く。
「来るぞ!」
 ルオウが叫んだ。
 龍人が前進してくる。大刀を構えると、振りおろして波動を飛ばしてきた。
 ゴウウウウウウウ――!
 と、波動が襲い来る。
 成田は結界呪符「黒」を張った。
「御大!」
 次の瞬間、シュバア! と、フラッシュが炸裂して、白い光弾と化した精霊アイテムが、一つ、九星結界に打ち込まれた。
 そして、パキイイイイイイイイイン! と、「一」の魔法陣が砕け散った。
 がくん、と白狐がよろめく。
「おい」
 成田は支えた。
「さすがは天狐様直伝の秘儀……これほどとは……」
 白狐は立て直して次の術発動に入る。
「ってえ!」
 津田は銃撃を叩き込んだ。銃弾は結界を貫通して、龍人に命中。しかし龍人は小揺るぎもしない。
「何だあ……利いてない?」
 ゴウウウウウ! と波動が来る。
「ちい!」
 ルオウは結界に激突した。空間に透明の堅いバリアーのようなものが張られている。
「な? なんだあ?」
 透子が結界呪符を張り、成田とともに白狐を守る。
「白狐さん……! 畜生!」
 リィムナは黄泉よりを連射した。それでも龍人はびくともしない。一つの結界を破壊しただけではほとんどダメージは通らないようだ。
「翔!」
 コルリスが矢を叩き込み、不破も連射したが、龍人は不動。
「何と言う堅さ……」
 和奏も上空を飛び、見えない結界に触れていた。
 続いて――。
 キイイイイイイン……ギュン! と、二つ目の白い光弾が「二」の結界を破壊する。
「撃て!」
 龍安兵も矢を叩き込む。ドカカカカカ――! と、龍人に矢が突き刺さる。
 反撃の波動が来る。
「三」、「四」、「五」と破壊したところで、空中のバリアーが消えた。
「おお! 行けるぞ!」
 ルオウは加速した。
「白狐! 無理すんな! 後は任せとけ!」
 ルオウは不破とコルリス、津田の射撃と合わせて龍人の背後に回り込んだ。
「でかけりゃいいってもんじゃねえんだよ!」
 滑空艇を加速させ、蜻蛉からタイ捨剣で切りつける。――ズバアアアアア! 龍人は切り裂かれた。
「に……! くっ、まだか! 堅い!」
 ルオウの手応えは浅かった。
「行きますよ蓮李さん!」
 和奏は突進した。納刀した鬼神丸に手を掛け、秋水を解き放つ。龍人は素手で受け止めた。
「食らえええ!」
 リィムナは黄泉よりを連射した。
 龍人は大刀を持ち上げ、逆袈裟に振り上げた。波動が全方位に飛ぶ。ズバアアアア!
「御大、いけるか!」
 成田は結界呪符を張りながら、白狐を見た。
 白狐は白く光っていた。
「あと三つ……同時に行くぞ……! フェネストラ! 結界を八段階まで破壊する!」
 白狐は思念を送った。
 ピキイイイイン――! 白い閃光が弾ける。三つの白い光弾が飛ぶ。光は結界に吸い込まれた。
 そして――。
「六」、「七」、「八」の結界が焼失した。
 開拓者達の攻撃が勢い貫通し始める。
「行くぜ!」
 ルオウのタイ捨剣で龍人の腕が飛ぶ。和奏の秋水で胴体が凄絶に切り裂かれた。
「撃て! 翔!」
 コルリスの合図で、兵士達が矢を全弾発射する。龍人に何十本もの矢が突き刺さる。
 不破、津田が龍人に銃撃と矢の打撃を加える。
「…………」
 不破は上空に上がり、周囲を見ていた。不厳王の気配を探る。
 後ろでは最後のドラゴンが撃破されている。
 リィムナと透子の黄泉が龍人を貫通する。
 龍人がぐらり……と揺れる。
「かああああ……つ!」
 リィムナの魂の楽曲が龍人に止めを差した。龍人は瘴気に還元して消滅した。
「御大、やったぞ」
 成田が振り返ると、白狐はうずくまって欠伸をした。
「後は任せたぞ――」

 開拓者、龍安兵は、最後の楔を破壊した。
 そして、復活する黄金色の光。大地の精霊「亜紫亜」が姿を現す。
「素晴らしいわ……」
 亜紫亜は言った。
「さて、これで龍脈全開放だ……満足に眠れるのかい? そうならちょいと寂しくなるけど嬉しいねぇ」
 不破はヘラリ笑った。
「あなたに最後に聞きたいことがあります」
 透子が進み出た。
「精霊とアヤカシは常に対立しているのですか?」
 亜紫亜は沈黙ののちに応えた。
「私たちは自ら滅ぶとは考えません。アヤカシ達は違うようですが……。特に大アヤカシ達は、自らの意思で私たちも、人も敵と見なしているようですからね」
 そして、亜紫亜は黄金の粒子となって、ぱあっと、散った。
 大地から黄金色の光が立ち上ってくる。
「みんな! 急ごう! 何が起こるか分からないし、上空へ避難だよ!」
 リィムナはコルリスを促した。龍安兵も退避する。
 その時だった。大アヤカシ不厳王(iz0156)が空中の緑光の中から瞬間移動で出現した。
「やりおったな……人間ども……愚かな」
「不厳王!? 幻影か!?」
「どけ人間ども、貴様等の相手をしている時間はない」
 不厳王は手を薙いで衝撃でみなを吹き飛ばすと、ずかずかと歩いて行く。最後の楔が刺さっていた場所に手を当てた。
「人間ども! 龍脈を全開にしたのなら、龍脈に瘴気を注ぎこみ、精霊力を『空』に還元してくれるわ! 終わりだ大地の精霊! 無限の瘴気を食らえ!」
 不厳王から緑光が放たれる。空間が歪む。大気が震動する。
「む……!? おおおおお……!」
 不厳王は咆哮した。
「今は退くぞ! ここは撤退だ!」
 全員大穴から離脱する。
 眼下を見下ろすと、大地の、鳳華を走る五芒星の龍脈から黄金色の光が立ち上っている。光は魔の森を突き破って、黄金色の砂塵となって吹き出した。
「これが浄化の砂塵……」
 と、不厳王が出現した場所から緑色の光が爆発する。そこから瘴気の波動が鳳華を包み込み、浄化の砂塵と混じり合い、激しく渦を巻く。
 そして――。
 フラッシュ、閃光が爆発する。
 鳳華は光に包まれた。