鳳華の龍脈、五芒星の参
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/11/19 20:35



■オープニング本文

「静かだな……」
 橘鉄州斎(iz0008)と芦屋馨(iz0207)は、東の魔の森へ入っていた。アヤカシの姿はほとんど見られず、うっすらと霧のようなものが漂っていた。不厳王(iz0156)が作り出した魔の森は、葉の無い大木の群生であり、枝が不気味にうねうねと広がって上空の日光をほとんど遮っていた。
「何でしょうあれは……」
 芦屋は、奥地で輝きを放つ、緑の光を指差した。
 二人は前進した。
 光は地面を走っており、その周辺に文様が浮かんでいた。
「アヤカシの結界か何かでしょうか……」
 芦屋が見つめていると、橘は頷き、小石を投げた。
 ぴしっ、と、石は弾けて粉々になった。
「これ以上先へ進むのは危険ですね」
「何かが……始まっているのでしょうか……」
「とにかく、いったん天承へ戻りましょう――」

 天承城――。
 龍安弘秀は、橘と芦屋から報告を受けて、眉間にしわを寄せた。
「結界か……」
「大地の精霊の龍脈と関係あるのでしょうか?」
 西祥院静奈が疑問を呈すると、ケモノの白狐が口を開いた。白狐は静奈の倍以上はあって、ふわふわしていた。
「光と闇が交錯するのを感じる。何か、強大なものが、生まれようとしているのではないか……と」
 白狐は、未来予知で感じることを口にした。
 この白狐は、まだ若かりし狐であった頃、主である天狐を喜ばせようと、この地へ葡萄の実を狩りにやってきた。だが、そこで山猫に襲われ、重傷を負ってしまう。その時、沙羅と言う娘に救われ、ある約束を交わす。以来、狐は鳳華に身を置き、数百年を生き白狐になった。
「龍脈は順調に解放されている。不厳王もただ見過ごすつもりはあるまい。何か、返してくることも十分あり得るな」
 弘秀は言って、橘と芦屋をまた見やる。
「ところで、二人にまた頼みたいことがある。今まさに進んでいる浄化の砂塵の件だ」
「何でしょう」
「強力な精霊力を用いた術の記録を探してみて欲しい。もし、龍脈の解放に副作用や弊害が出るなら、事前に知っておきたいからな」
「分かりました……」
「ふむ……」
 弘秀が吐息すると、静奈が卓上の地図に目を落とした。
「次の、北東の龍脈の星ですが、東の魔の森を突っ切るのは危険ですから、鳳華の外周を回って探索を行っています」
「大穴の中には何がある?」
「地下へ下りるところへ、上級アヤカシ猪王が待機しているとのことです。過去の戦いで かなりダメージを受けている様子で、そのままです。足はぼろぼろで機動力は落ちています。動きは鈍く、右目を失っている模様です。全身傷だらけではありますが、手負いの獣とは言え油断はできないでしょう」
「猪王だけなのか?」
「いえ、猪王を過ぎて奥へ進むと、地下には呪怨火刃が展開していて、次の瘴気の楔の周囲には、四種の上級死骸龍が配置されています。火炎霊龍、氷結霊龍、砂塵霊龍、風陣霊龍の四体です」
「堅い守りだが……先の真沙羅姫に比べれば、落ちるか」
「いえ。お屋形様。楔の前に、上級アヤカシ級の敵が残っています。我が軍の精鋭が辿りつくことが出来た最後の砦です」
「それは?」
「あの魔剣士、禍津夜那須羅王です」
「何? また再生されたのか?」
「大アヤカシは上級アヤカシを生み出すことが出来ると言われていますが、これは再生されたのかは分かりません。ただ、あの凄絶な剣技は健在で、凄まじく強かったと、報告が来ています。禍津夜那須羅王に酷似していたと」
「禍津夜那須羅王か……」
 弘秀は、卓上に目を落とした。
 龍脈の解放は着実に進んでいた。
 魔の森はここしばらく沈黙を保っている。
 そして、瘴気の楔の守りは激しくなっている。それは、敵の泣き所を突いているのだと、今は望みかけるしかなかった。

 ――瘴気の楔、その前。
 外見は長刀使いの剣士、黒衣のアヤカシが立ち尽くしていた。アヤカシは仮面を外した。蒼白い人外の肌に血の気は無い。不気味な文様が顔に刻まれている。禍津夜那須羅王・覇龍である。不厳王の懐刀の一人で、外国から呼び戻された。人語は話せないが、不厳王の命令はテレパシーで完璧に理解している。
 覇龍は、口許を堅く結んだ。待つのは性に合わないが、ひとまず、様子を見るとしよう。覇龍は仮面をつけると、長刀を地面に突いて、腰を下ろした。


■参加者一覧
柚乃(ia0638
17歳・女・巫
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
不破 颯(ib0495
25歳・男・弓
成田 光紀(ib1846
19歳・男・陰
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
草薙 早矢(ic0072
21歳・女・弓


■リプレイ本文

 居並ぶ諸将の間に、開拓者たちの姿もあった。
「敵の数が多く手強いですが、ここで退くわけにはいかないですね。無茶はせず……でも全力でいきますっ。目的を成功させ、必ず皆で生還しましょうっ」
 柚乃(ia0638)が言った。
「十六歳の誕生日おめでとう」
 ふわっと、毛並みが柚乃を撫でていった。
「はうっ」
 柚乃が振り返ると、白狐がいた。
「白狐様っ。な、なんですか〜、びっくりするじゃないですか」
「ふうむ……お主も選択の一つをすることになるやも知れんな……」
 白狐は言って、柚乃の側に体を沈めた。
「洗濯ですか〜、汚れが取れると嬉しいですよねえ〜♪」
「むう……」
「よー! 禍津夜那須羅王がいるってほんとかよ〜?」
 赤毛のルオウ(ia2445)少年だ。
「そのようだ」
 龍安弘秀は頷き、「ふむ」と思案顔だった。
「今回はリベンジするぜい!」
 エキサイトしているルオウの横で、鈴木 透子(ia5664)は沈思の中にいた。
(これで良いのでしょうか……龍安家も疑問は持っている様です。だけど止めて良いのかも分からない……)
「知らないって困ることです」
 透子は吐息した。
 羌大師は言ったと報告が上がっている。全ては「空」に還ると。精霊力と瘴気が結び付き、空に還元する。……では、仮に龍脈を解放出来たとして、大地の精霊と不厳王の莫大な力がぶつかれば、何が起きるのであろうか……。
「っはぁ〜、敵さんも随分サービス精神旺盛なこって。そんなに精霊さん眠ってもらうのが嫌なのかねぇ。ま、いつも通りにやるだけだけどなぁ」
 不破 颯(ib0495)は言って、笑っていた。いつものように口許に笑みをたたえている。
「全く、惜し気も無くこの規模のアヤカシを振る舞うとはな。これではありがたみも失せると言うもの。まともに相手をするつもりなど無いが……」
 成田 光紀(ib1846)が応じると、不破は笑みを向けた。
「全くだよなぁ」
「はいはーい!」
 リィムナ・ピサレット(ib5201)が手を上げた。
「ピサレットさん」
 西祥院静奈が頷く。
「何か、猪王がいると聞いたけど、猪王は何か言ってた?」
「俺はここで力を手に入れる、復活するとか何とか……不厳王に味方していることは確かなようですね」
「なるほどー!」
 篠崎早矢(ic0072)は、諸将の中にいて、緊張した面持ちだった。今日は大鎧「天魔」が映える。戦に備えて手持ちの鎧から最高クラスのものを取り出してきた。
「篠崎」
 弘秀が声を掛けた。
「不厳王が本気なのか……何か分からないところもある。本気なら奴が出てくればいいものを」
「確かに、思うところはあります。龍脈に関しては謎も多いですから」
「そうだな」
「不厳王が手をこまねいているのには、理由があるのでしょうけど、今はまだ、それが何かは分かりません」
「この戦、宜しく頼むぞ」
「はい。ところで、私に四十騎ほど頂けないでしょうか? お任せ下さい」
「騎馬武者が板についてきた、と聞いている。宜しく頼む」
 そこで龍安家家老衆のコルリス・フェネストラ(ia9657)が口を開いた。諸将の目がコルリスに移る。
「弘秀様、それにしても家老衆への昇進ありがとうございます」
「いや、満場一致だろうな」
 弘秀は笑った。
「作戦案、一案ではありますがございます」
「聞こう」
「龍騎兵に盾と焙烙玉を支給お願い致します。また、現地へ向かう際、練力回復アイテムを現地で使える様手配して、輸送して頂きたく存じます。また、今回は魔術師、陰陽師、巫女もできるだけ動員して頂きますようお願いします」
「了解した」
 弘秀は即答。コルリスは頷く。
「現地へ到着しましたら、大穴入口の猪王は龍騎兵とリィムナ様など開拓者の一部で入口より誘引し、その間に残りの開拓者と味方部隊が降下し大穴へ侵入します」
「リィムナが? どうするつもりだ?」
「あー、あたし猪王から恨まれてるんだ! あのイノシシの傷、あたしが付けたから」
「そうなのか?」
「そうですね」
 コルリスは頷いて微笑んだ。
「ですので、そちらが成功した場合は、大穴へ無事侵入。味方魔術師や陰陽師に防壁構築をお願いし、呪怨火刃を防壁で食い止め、練力補給を受けながら防壁を、敵が分散せざるを得ない配置に並べ敵を分散させ、味方部隊は分散した敵に対し集合と離散を繰り返し局所的に常に敵の数を上回る形で無駄なく呪怨火刃を屠る胡蝶陣を実施致します」
「任せる。胡蝶陣はお手の物だろう」
「火炎霊龍、氷結霊龍、砂塵霊龍、風陣霊龍、禍津夜那須羅王・覇龍は味方サムライの咆哮や巫女の負傷治療の協力も得ながら分散させ、できる限り動きを拘束します。ルオウ様や鈴木様も当たって下さいます」
「やるだけやってやんぜい!」
「宜しくお願いします」
「上記の敵を拘束する間、残りの味方で瘴気の楔の破壊を最優先で行い、破壊後、残存する強敵は無理に倒さず退却致します」
「了解した。では、今回は他にないようなので、残る兵たちの総大将はコルリスにする。任せたぞ」
 そして、開拓者たちと龍安軍は出立した。

「それでは、リィムナ様、宜しくお願いします」
 コルリスは言って、大穴の下で待ち受ける猪王を見やる。
 猪王は、上空を見上げて、咆哮して来た。
(人間ども……ここは通さんぞ! 俺様をやすやすと通過できると思うなよ)
 猪王のテレパシーが飛んでくる。
「じゃあ十騎ほどもらっていこうかな。行くよ!」
 リィムナは降下していく。
 猪王は瘴気の波動を放ってくる。
「おっと♪」
 猪王はリィムナの姿を視認した。
(小娘……! 貴様は……!?)
「やっほー豚王ちゃん♪ 体が痛くてろくに戦えないんだって? かわいそ〜♪ ここまでおいで♪」
(何を!)
 猪王は起き上がると、突進して来た。大穴から巨体が舞い上がる。
「行けるのかねぇ?」
 不破は矢を番えて、コルリスに軽く確認した。
「任せましょう」
 リィムナたちは巧みに猪王の瘴気砲から逃れると、この上級アヤカシを引き付けて大穴から離れて行く。猪王は突進して止まらない。
「では行きましょうか。全軍突入」
 コルリスは合図を下した。
 龍安軍、開拓者達は、開いた大穴入口へ続々と降下、侵入していく。
「村や人を滅ぼし、人族に仇名すアヤカシどもに鉄鎚を! 我ら、最強の騎兵である! 騎獣を狩り、アヤカシの喉笛を喰いちぎれ。全軍、突撃!!」
 篠崎も先陣を切っていく。
 リィムナは猪王から逃れていたが、上空に滞空して、距離を保って反転した。
「猪王!」
 リィムナは、うなり声を上げる猪王に呼び掛けた。猪王は我を忘れていた。
「猪王……真沙羅姫、死んだよ」
 リィムナの声に、猪王が止まった。
(何?)
「何で助けに来なかったの? 怪我してるから? それとも番犬役が忙しかった? 何であんな奴の下にいるの? 護大でも貰える約束したの?」
(不厳王は……俺様に……)
「不厳王が何考えてるか教えてあげる。あんた、捨て駒だよ。それだけじゃない、弱ってる隙に武天に昔から住んでるあんたを開拓者に排除させ、縄張りを奪う気だよ。あんたの周りに味方が誰もいないのが何よりの証拠!」
(俺が……捨て駒……? 俺は……!)
「あんた、猪系アヤカシの王様なんでしょ? 寧為鶏口、無為牛後! 番犬として朽ち果てるより、再起を目指し養生しなよ」
(何……!)
 目の前の少女に、猪王は釘づけになっていた。
「あんたとは、いずれお互い全力でやりあってみたいんだ」
 猪王は吐息した。コオオオオオオオ……。
(後悔するぞ、小娘)
 猪王は、ゆっくりと反転すると、魔の森へ消えて行った。

 巫女が瘴策結界で探索しながら、魔術師と陰陽師で防壁を築いていく。コルリスは報告を受けながら、胡蝶陣の指揮を執る。
 呪怨火刃が壁に突き刺さる。壁を回避してやって来るのを、胡蝶陣で討ちとっていく。
「楔までは各個撃破に専念」
 コルリスはシノビを飛ばして指示を伝える。
「だだだだだだだあ!」
 ルオウはシュバルツドンナーを操り、四連撃で呪怨火刃を叩き斬った。さらに回転しながら襲い来る呪怨火刃を打ち砕いて行く。
「大丈夫か鈴木?」
「大丈夫です」
 鈴木は真なる水晶の瞳を通し、精霊力の流れを見る。
「何度も龍脈を通れるのって凄い機会です」
 光の粒子が奥地へ流れているのを確認して進む。
 不破は防壁の後ろからガドリングボウを連射。三連射で呪怨火刃を撃墜していく。
「面倒な奴はさっさと落とすに限る……玻璃、出番だよぉ」
 相棒の玻璃が煌めきの刃で同化する。不破は目にも止まらぬ勢いで、矢を放って行く。高速ガドリング――。
 成田も珍しく前線に出る。回転して向かってくる呪怨火刃を結界呪符「黒」で受け止める。呪怨火刃は結界に突き刺さる。
「それにしても……この数は」
 成田は軽く眉をひそめて、氷龍で呪怨火刃を一掃する。続々と前進してくる呪怨火刃を氷龍で薙ぎ払う。補填された節分豆を飲み込み、練力を回復させる。
「撃て!」
 篠崎らの集団は仲間たちから離れて、遊撃的に動いていた。味方の防壁へ突進する呪怨火刃に側面から矢を叩き込む。次々と瘴気に還っていく呪怨火刃。篠崎自身もガドリングボウで高速連射。
「行きますっ」
 柚乃は、歌い始めた。魂よ原初に還れ。
 射程にいた呪怨火刃がボボボボボボウ! と瘴気に還っていく。
 やがて、リィムナも到着する。
「お待たせ!」
 リィムナも歌い始めた。恐るべきはリィムナの魂の楽曲。消費練力「2」は、この強力なスキルを連射可能にしている。
 ボボボボボボボボボボボボボボボウ……! と呪怨火刃が瘴気に還っていく。
 開拓者達は道を切り開いた。

 ゆらり……と四体の龍が起き上がった。その奥にいた禍津夜那須羅王・覇龍も刀を手に取った。
 来たか……。

 篠崎は前進した。
「龍騎は右翼、左翼に等しく回れ、龍騎術の上級者は地平すれすれを滑空、中級者は二、三ペアで連携して事に当たれ、散!」
 篠崎らは波のように上昇し、頂点から急降下して龍に襲い掛かっていく。
「咆哮放て!」
 コルリスが号令を下し、サムライたちは咆哮を叩き込んだ。
 龍達が分散する。
「ってえ!」
 篠崎は龍達に矢を叩き込んだ。
 龍達は咆哮して、ブレスを吐きだす。火炎、氷結、砂塵、風陣のブレスが薙ぎ払う。
「ふむ……」
 成田はブレスに手をかざして、幻影符を打ち込んだ。
 サムライ衆が突進する。
 鈴木も幻影符で援護する。
「ルオウさん!」
「分かってる! 一気に行くぞ!」
 ルオウはシュバルツドンナーを加速させた。
「ブレスと言っても……」
 不破はガドリングボウで龍を牽制する。ドウ! ドウ! ドウ! と矢が直撃する。不破は走った。彼の目的は奥の楔。
 サムライ達の一斉射撃に、柚乃のララド=メ・デリタが打ち込まれる。灰色が龍を包み込む。龍は咆哮した。その肉体が灰と化して崩れ落ちる。
「邪魔はさせません……っ!」
「はあああ……あああああ!」
 リィムナはマッキSIを駆り、声を叩きつけた。魂の楽曲を叩き込む。火炎霊龍が爆発して消滅する。
 ルオウは加速した。
「来いよ! 禍津夜那須羅王!」
 ゴウ! と衝撃波が大地を切り裂く。
「に……っ!」
 ルオウはロールしてかわした。
 禍津夜那須羅王・覇龍は、加速した。ぶん……! と分身してルオウに突進してくる。
「来やがれ!」
 ルオウは旋回して、方向転換した。
 覇龍が切り掛かって来るのを、ルオウは振り切るように上昇した。覇龍の一撃が空を切ると、逆方向に機体を振って大回りにかわそうと加速をいれる。
「やい! 覇龍!」
 覇龍は大地を蹴った。滑空してくる。
「ドンナー!」
 ルオウは練煙幕で煙幕を展開する。
 覇龍は突進する。
「今だ!」
 ルオウは愛機を失速させる。
 覇龍はルオウの頭上を通り抜けた。
 そこで再加速。覇龍の背後に回りこむ。
「……!」
 覇龍の刀が空を切る。
「悪いな! 俺の狙いは最初っからてめえだよ!」
 突撃したルオウは、蜻蛉からタイ捨剣を打ち込む。凄絶な袈裟懸けが覇龍の背後を切り裂く。覇龍は吹き飛ばされて、大地に叩きつけられた。
 不破は、その様子を見やりつつ、走った。
「……見えた」
 楔を確認すると、苑月で狙い澄ます。玻璃が弓に同化する。疾風の剣。そして月涙で矢を解き放つ。矢は吸い込まれるように楔に命中した。楔が咆哮する。
「撃て!」
 龍安軍も間隙をぬって楔に矢を打ち込む。
 禍津夜那須羅王が飛ぶ、瞬間。
 鈴木が幻影符に結界呪符を放つ。
「えい!」
 覇龍は壁に激突した。
 ルオウは急降下して、覇龍の腕を切り飛ばした。
 傾く覇龍。
 そこへリィムナが合流。
「死鬼冥壊破!」
 黄泉よりの四連発。
 覇龍の肉体に穴が開く。
「行くぜい!」
 ルオウは降下していくと、さらにタイ捨剣を打ち込んだ。ザン! と、覇龍の肉体が真っ二つに崩壊した。
 瘴気に還っていく禍津夜那須羅王・覇龍。
 篠崎はカザークショットで夜空と同調し、ギャロップで突撃すると、裂帛の気合とともに矢を打ち込んだ。サムライ衆が矢を叩き込む。霊龍の肉体を矢が貫通する。
「精霊さんのためです……っ!」
 柚乃はララド=メ・デリタを解放。
 龍は崩れ落ちて瘴気に還元する。
 そして最後の龍も撃破する。

 コルリスは吐息した。緊迫した面持ちで背後を見る。コルリスは退却も考えていたので、気を遣っていた。
「なるほど……」
 成田は観察していた覇龍らの姿を刻み込んでいた。
 例によって楔を破壊すると、黄金色の光とともに、大地の精霊「亜紫亜」が姿を現す。
「来たか……」
 不破は笑みを浮かべたまま見ていた。
 鈴木は進み出た。
「亜紫亜さん」
 精霊は、静かに透子を見返す。
「アヤカシが瘴気の結界を作っています。何かご存じですか」
「瘴気の結界ですか……雑音がすると思っていたら……」
 亜紫亜は眉をひそめた。
「亜紫亜さん、あの、この龍脈は貴方がこの形にしたのですか」
「いいえ。この形は元からあったもの」
「そうですか……ところで、この地にいる白狐のことをご存じですか」
「白狐?」
「ケモノです」
「いえ、知りませんね」
「では……沙羅のことは知っていますか?」
「いいえ? 聞いたことがありませんね……」
「ごめんなさい。では、龍脈って他の儀とも繋がっているのですか」
「いえ、私はそんな龍脈は知りませんね」
「そうですか……では最後に。この結界は、大地が浮く前からこうなのですか」
「私は世界の始まりからここで眠っていたわけではありません」
 亜紫亜は言って、微笑んでいた。
「あぁそうだ――」
 そこで不破が言った。
「あんたが起きた時ってアヤカシ以外の生き物いたのか? まあぶっちゃけ、あんたから見て浄化の砂塵の中で俺ら生きていられそうかい?」
 ヘラリ笑って手広げる。
「人間ならいましたよ。私の力は人を傷つけませんからね……」
 そこまで言って、亜紫亜は「ありがとう」と言葉を残して光の中へ還って行った。
「後……一つ」
 誰かが言った。
 龍脈の解放まで、あと、一つ。