鳳華の龍脈、五芒星の弐
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/11/06 20:51



■オープニング本文

 武天国、実は王都此隅の北である、鳳華――。

 大アヤカシ不厳王(iz0156)は、全長百メートルの己の幻影を、天承城に向けて投影した。不厳王は幻影を通して言った。
「龍安軍よ、聞け。大地の精霊の力を解放するのはやめろ。取り返しがつかないことになるぞ。お前たちは滅びたいのか。わしが情で、最後の土地を残してやったのを、無駄にする気か。龍安弘秀。龍安家の残骸を世界に残しておきたければ、これ以上の危険に踏み出すな。精霊を解放すれば、お前は全てを失うぞ。それが巨勢王や真禅入道に報いる道か。よく考えろ。世界の均衡を保つわしと、危ういバランスを崩壊させる精霊と、どちらを取るか。お前たちは、考えなしに行動しようとしている。精霊など、暴走するだけだ。人界を破壊し、何も残さないだろう。我々との末長い共存を選択するか、即座に滅びの道を選ぶのか、よく、考えることだ――」

 動揺が広がる龍安軍に、弘秀は大将たちを集め、会合を開いた。
「不厳王の揺さぶりにうろたえるな。強い精霊力と瘴気は相反する。それくらいのことは我々も知っている。強い精霊力は魔の森をも退ける力があるのだ。不厳王は、我々の確信を砕こうとしているだけだ。我々は、浄化の砂塵の復活を目指す」
 弘秀は言いきった。
「ですが……」
 西祥院静奈が一同の懸念を代表して言った。
「不厳王は本当に揺さぶりを掛けているだけでしょうか? 真実なら……」
「真実とは思えない。自分から真実を人間に明かすはずがないだろう。意図するところは、こちらの動揺を誘って反撃の機会を窺っている……そんなところだろう」
「こうは考えられないか?」
 橘鉄州斎(iz0008)が言った。
「大地の精霊がすでに力を発揮していて、何らかの影響を受けて、不厳王は力の一部を制約されて弱っている……とか」
「そこまではさすがに楽観はできんが」
「だが辻褄は合うだろう。あんなはったりをかます必要など、奴には無いはずだ」
「あるいは……私たちが到底知りえない何かを知っているか、ですね……」
 芦屋馨(iz020)が言った。
「不厳王が私たちと同じ目線で話しているとは必ずしも思えません。大アヤカシにとっては当然のことでも、私たちが知りえないことは多いでしょうからね……」
「それだけに、こっちも混乱するわけだが。俺たちのことも気にして欲しいよね。現実に大アヤカシを倒してるわけだし」
 そこで、弘秀は言った。
「橘、芦屋殿、二人で、魔の森へ入ってはくれませんか? 東の不厳王に何が起きているのか、確かめて来て欲しい」
「分かった。大将の頼みとあればな。芦屋殿、では早速俺たちは行きましょうか」
「はい……」
 二人は退室した。

 弘秀は、動揺をいったん落ち着かせると、南の大穴に関する情報を確認した。
「大穴が開いているのは、南部の里、『沙羅』があった場所だそうだな」
「はい」
 静奈が頷く。
「上級アヤカシ真沙羅姫がいると思われます。大穴の上空を、沙羅の人面鳥の集団が飛び回っていると報告が来ています」
「想像したくないな……」
「それから、前回発見されました、瘴気の楔ですが、今回は番人はいないようです。ただ、地下には呪怨火玉が徘徊していて、死骸兵がすでに展開している模様です。総数は百を越えるかと思われます」
「問題は、真沙羅姫だな。向こうもここは本気だろう。あそこは奴にとっても因縁の場所だな。何と言っても、恐らく奴が生まれた場所だからな。沙羅の里は……」
 弘秀は、手元の手紙を開いた。いつだったか送られてきた沙羅の秘密が記された手紙。それは龍安家の始まりの真相でもある。光もあれば闇もある。弘秀は手紙を焚火にくべた。手紙は炎に包まれていく。
「お屋形様……」
「これはもう、必要ない」
 弘秀は言って、静奈に続けた。
「龍騎兵隊やグライダーを持っている奴に出撃命令を。人面鳥相手に飛空船は分が悪い。相棒は全員空戦仕様で大穴へ向かってもらう」
「はい!」
 静奈は敬礼すると、退室した。
「さて……次はどう出る。不厳王」
 弘秀は腕を組むと、目の前の地図に目を落とした。


■参加者一覧
柚乃(ia0638
17歳・女・巫
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
不破 颯(ib0495
25歳・男・弓
将門(ib1770
25歳・男・サ
成田 光紀(ib1846
19歳・男・陰
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔


■リプレイ本文

 コルリス・フェネストラ(ia9657)は、天承城に到着して、龍安弘秀のもとを訪れた。
「弘秀様。不厳王が揺さぶりを掛けてきたようですが」
「ああ。そうだな」
 弘秀は言って、コルリスに席を勧めた。
 今では瓦礫の城になってしまったが、西祥院静奈を始め、幾人かの家老衆が残っている。
「不厳王が言ったことは、まるきり嘘ではないのかも知れん……柔軟な対応も必要だろうが」
 そこで将門(ib1770)が言った。
「不厳王が人間の為に言っている、などとは思いませんが、全くの虚言を弄するほど間抜けとは思えません。大地の精霊の結界そのものではなくとも強力な精霊力を用いた儀式による副作用、弊害などの記録がないか、武天や朝廷の記録を探ってみるのもいいのでは? 逆に本当に虚言ならよほど不厳王にとって都合が悪く追い詰められているのでしょう」
「橘と芦屋殿が戻ってきたら、そちらへ回ってもらうか……」
 弘秀が思案するのをコルリスは見て口を開いた。
「今回の戦に関しては、一案ではありますが、策がございます」
「聞こう」
 コルリスは冷静に言った。
「兵の数ですが、龍騎兵二百程を希望致します。仲間の希望もありますので、グライダー部隊と。彼らへの焙烙玉支給をお願い致します」
「了解した」
「まずは空戦になりましょう。人面鳥を排除し、制空権を確保します」
「ふむ」
「制空権確保後、敵達の攻撃が届かない高度より龍騎兵達は焙烙玉を投下爆撃。この時大穴周囲の敵達も討ち取り味方の大穴入りを支援致します」
「なるほど」
「地下へ向かう味方を龍騎兵百が地上に降り随伴します」
「降下作戦だな」
「地下へ向かう味方部隊は真沙羅姫や死骸兵、呪怨火玉達と交戦し撃退。そして瘴気の楔を破壊します」
「真沙羅姫は強敵だ。恐らく最大の障害になる」
「そうですね……。で、残りの龍騎兵達はその間上空で周囲を警戒し新手の敵が来たら応戦します」
「分かった……」
 弘秀は、そこまで聞いて頷き、
「ところでなコルリス」
「はい」
「実は……お前を龍安家の家老衆に加えようと思う」
「え?」
「お前のこれまでの献策に、ぜひ家老衆へ迎えたいと思ってな。もちろん開拓者としての生活に我らが干渉するつもりは無い。ただこの地でのお前の行動は、家老衆に十分値する。他の開拓者を束縛することはできないが、我が軍の兵士達には、今まで以上にリーダーシップを発揮してやってくれ。みな頼りにしている。宜しく頼む」
 このサプライズにコルリスは言葉が出なかったが、彼女は龍安家家老衆の称号を得た。
 将門とコルリスは退室し、仲間や兵士達のもとへ向かった。
「良かったなコルリス」
「びっくりしました」
 コルリスは兵士達から拍手で迎えられた。
「コルリスさーん! おめでとうございます!」
 コルリスは兵士達から優しかったり手荒かったり祝福を受ける。
 リィムナ・ピサレット(ib5201)はコルリスを祝福した。
「家老衆かあ〜。コルリスなら文句のつけようがないね!」
「ありがとうございます」
 それからリィムナはサムライ大将たちのもとを回る。
「沙羅の人面鳥や呪怨火玉がいるみたいだしね。龍騎兵のみんなには射程の長い弓を使ってもらって。真沙羅姫の襲撃もあるだろうし、奇襲攻撃に備えて、呼子笛や狼煙銃を持てるだけ持ってもらおう」
「手配しよう」
「ところで、巫女さんの動員は出来ないの?」
「大丈夫だよ」
「それじゃあ、回復と状態異常治療と瘴索結界を活性化して、みんなに配置して。味方に真沙羅姫が入り込む可能性もあるので、戦闘中もおかしな挙動の味方いれば注意しないと」
「そうだな……」
「それに、猪王が真沙羅姫を助けに現れるかも知れないから、要注意だよ」
 と、そんな様子を見やりつつ柚乃(ia0638)は胸の内につぶやく。
(滅び……ですか。不厳王までもそう口にするのですね。動揺以前にやはり気になるところです。今、この世界で何が起こっているというのでしょうか……)
 轟龍の首筋を撫でてやりながら視線を巡らせる。赤毛の少年が歩いてくる。ルオウ(ia2445)だ。
「よお柚乃!」
「ルオウさん」
「全く不厳王の奴……何を言ってるかよくわかんねえけど、単純な脅しって訳でもなさそうな気がするんだよなぁ。それを知るためにもまずは行動しなくっちゃなあ!」
「俺らにとってアヤカシは敵だが、精霊は敵でも味方でもない……色々気になることはあるが、まあ何とかなるだろうさぁ。さぁて、美人な精霊さんの為に頑張りますかねぇ」
 ヘラリ笑み浮かべるのは不破 颯(ib0495)。
「大アヤカシしか知らぬ事、か」
 成田 光紀(ib1846)は言った。
「この世の仕組みを知る上でこの上なく重要な証人である事には違いあるまいが、真実を語るのであれば、あれも俺の目的の役に立つのかも知れんが……今は致し方あるまいか。話をするにも奴と直接まみえねばなるまい。引きずり出す為にも、今は精々動いてやろうかね」
「だけど、判らないことだらけです」
 鈴木 透子(ia5664)は思案顔。
「今考えても仕方のないことなのかもしれませんが、不厳王の言っていた事は多分お為ごかしだと思います」
「お為ごかしかね」
 成田は寮友の娘を面白そうに見やる。
「だけど真実も多分含んでいるのだと思います。生成姫も似た事を言っていました……。考えすぎでしょうか。アヤカシも精霊も判らないことだらけです。それに……」
「それに?」
「……あの白狐は信用できるのでしょうか。味方になった経緯は知らないのですが、ケモノも一体何なのでしょう」
 ところで、と柚乃が言った。
「大地の精霊さんてどんな方なのでしょう。お会いしてみたいです」
「そりゃあ、美人ですよぉ」
 笑ったのは不破。
「まあ、人間じゃないのが残念ですが……いや、人間じゃないからあんな完璧な美しさがあるんでしょうねぇ」
 不破が祝福を受けたことを話すと、柚乃は「へえ〜♪」と感嘆の吐息を漏らす。
「優しそうな精霊さんですねっ。逞しい精霊さんもかっこいいですけどっ」
 そこへコルリスと将門がやってくる。
 作戦内容を話して、お辞儀するコルリス。
「みなさんよろしくお願いします」
「俺ぁ指揮官って柄じゃないからなぁ。その分戦闘で頑張るんで、よろしくお願いしますよぉ」
 不破は笑った。
「は〜、いよいよですねっ。なんだか久しぶりな気がするね。よろしくね、ヒムカ」
 柚乃は轟龍の首筋なでなで、ハグぎゅっ。
 仲間たちは柚乃を見て微笑む。
「行きましょう」
 コルリスが言って、全軍、大穴へ向けて出撃した。

「全軍攻撃開始」
 コルリスの合図で戦闘が始まった。
 龍安軍は四指戦術で四騎一組の戦闘隊形をとり、加速した。
「チェン太! 行っけええええ!」
 リィムナは加速した。フルートを奏でる。魂よ原初に還れ。接近してくる人面鳥が次々と瘴気に還っていく。
「ヒムカっ!」
 柚乃は愛騎に合図を出す。ヒムカの口から火炎弾が吐き出される。ゴウッ! と炎弾が炸裂して、人面鳥を焼き払う。
 シュバルツドンナーを駆るルオウ。人面鳥をすれ違いざまに叩き斬っていく。
「蝉丸、ずるっこく頑張るんですよ」
 透子の指示に、蝉丸はひと鳴きすると、人面鳥をからかうように咆哮を上げて、旋回する。怒り狂って突進して来た人面鳥が龍安騎兵の集中攻撃を浴びて霧散する。
「それじゃあ行こうかぁ、瑠璃〜」
 不破は一発鞭を入れた。瑠璃はいななくと、不破と同調した。カザークショット。加速する瑠璃の鞍上から、不破は弓を引き絞ると、正確無比な一撃を放つ。矢が貫通して、人面鳥を瘴気に還して行く。
 加速する瑠璃が、方向転換して人面鳥を引き離す。不破は狙いを澄まして、矢を解き放つ。一撃、一撃が、確実に人面鳥を捕える。
「いいぞぉ、瑠璃」
 軽く首筋を叩いてやる。瑠璃は咆哮した。また加速すると、人面鳥の群れの中を果敢に突っ切っていく。
 人面鳥の旋風刃をバレルロールで回避しつつ不破がアヤカシを撃ち落として行く。
「瑠璃、上昇〜」
 不破は指示を出すと、人面鳥を引き連れ、上昇する。
「はいはいこちら注目ぅ〜……よし、良い位置だ」
 不破は瑠璃を反転させ、矢を解き放った。必殺のバーストアローが炸裂する。矢が纏う衝撃が人面鳥を破砕していく。人面鳥の集団は瘴気となって消滅した。
「ん?」
 不破は、グライダー部隊の一角が激しく戦っている方面へ援護に向かう。矢を連射して人面鳥を撃墜する。
「やるね、不破君は。八面六臂の活躍か」
 成田は言って、炎龍を操る。氷龍で人面鳥を薙ぎ払っていく。
「それにしても……ま、今は透子君の助けでもしてやるさ」
 成田は接近する人面鳥を炎龍の火炎と霊魂砲で撃ち落として行く。名前のない相棒を操り、空戦を援護する。友軍は数でも勝る。有利に進めているが、局所で不利になる兵士もいないわけではない。成田は全体をよく見ており、氷龍での牽制と支援を行う。人面鳥の知覚攻撃に軽く眉をひそめるも、氷龍で一掃する。
「ふむ、今回は透子君たちの無事を祈るばかりだね。真沙羅姫は簡単には倒せないだろうが……」
 成田は地上を制圧していく龍安軍を見やる。眼下の大穴周辺もほぼ一掃された。
「そろそろ行くか」
 将門は、人面鳥を叩き斬って、妙見の鞍上から大穴を見おろした。
 人面鳥の戦列は壊滅している。これなら行けるだろう。
「リィムナさん」
 コルリスは、仲間たちから集めておいた節分豆や梵露丸をリィムナに渡した。
「真沙羅姫とは長期戦になるかもしれません。これを」
「あ……そうなの。ありがとう」
「最後に爆撃を入れておきます」
 コルリスは、友軍に合図を送り、地下へ爆撃をしておく。
 将門、ルオウ、柚乃、透子、リィムナらは、龍安軍と地下へ下りた。
「空は何とかしとくから、地下にいる方々は任せたよぉ。精霊さんによろしくねぇ」
 不破は笑って見送った。

 地下の暗闇の中でグライダーを操るのは至難の業だ。ルオウは苦労した。呪怨火玉の明かりを頼りに、グライダーを旋回させる。空洞に高さがあったので、どうにか低空飛行で行く。
 柚乃は歌い始めた。天使の影絵踏み。
 将門は呪怨火玉を叩き伏せると、松明をかざした。
 暗闇の向こうから、死骸兵らが浮かび上がってくる。
「頼むぞ、リィムナ殿!」
 将門は突進した。
「おっけい!」
 リィムナは魂の楽曲を奏でる。次々と瘴気に還っていく死骸兵、呪怨火玉。
 透子は撃ち漏らしを氷龍で撃破していく。
 前進する開拓者たち。
 アヤカシ達は引き付けられるように集まってくる。
「アヤカシ多数!」
 巫女たちが叫ぶ。これではどこに真沙羅姫がいるか分からない。
 と――。
「あ……!」
 リィムナは衝撃を覚えて、よろめいた。背中から、胸を、刀が貫通している。ごふっと血が溢れてリィムナは倒れた。
「リィムナさん!」
 柚乃は悲鳴を上げて駆け寄った。精霊の唄ですぐさま回復する。
「逝ね」
 その声とともに、刀が振り下ろされた。
 ――キイイイイイン! と、将門が刀を突き出し受け止めた。
 真沙羅姫だった。
「真沙羅姫! リィムナさんしっかり! ルオウさん待って!」
 透子は叫んだ。
「畜生! そっちかよ!」
 さすがのルオウも、愛機から飛び降りて、救援に駆け付けた。
「くくく……甘いな人間ども」
 真沙羅姫は多重詠唱で魅了と言霊を発動した。
 しかし――。
「復活! やってやる!」
 意識を取り戻したリィムナが天使の影絵踏みで対抗する。
 ルオウは体当たりし、将門は戦塵烈波で牽制した。
 真沙羅姫は、後退して姿を消すと、魅了と言霊を詠唱し続けた。
 柚乃とリィムナは天使の影絵踏みで対抗する。
 この魔法合戦は途切れ途切れに十分近くに及んだ。莫大な練力を消耗する。
「んだよ! そんなに精霊や俺らが怖ぇのかよ!」
 ルオウは叫んだ。
「この身滅びようと、構わぬ。それはある場所へ還るだけ。だが……精霊だけは、復活させぬ!」
 真沙羅姫は実体化すると、瘴気刀を両手に、突撃して来た。
「もういいぞ! 行け! ルオウ! 刀の勝負なら俺がやる!」
 将門はルオウを押した。
「頼む将門! 適材適所だ! 俺は先行するぜ! あばよ真沙羅姫!」
 ルオウは真沙羅姫の攻撃を回避すると、シュバルツドンナーを浮上させ、奥地へ加速した。
 真沙羅姫と打ち合う将門。
 柚乃はホーリーアローで支援し、透子は黄泉よりを叩き込む。リィムナは魂の楽曲を演奏する。
「ぐ……!」
 凄まじい透子の陰陽術と、リィムナの超絶演奏が真沙羅姫の防御を突き破る。
 よろめく真沙羅姫。将門は立て続けに打ち込んだ。真沙羅姫は弾き返しつつ、遂に膝を突いた。
「あ、ぐっああ……!」
 真沙羅姫は空中を掴んだ。直後、その手が黒い塊となって崩れ落ちて行く。
 透子とリィムナは容赦なく術を打ち込む。手加減はしない。
「ぐ……あああああ……!」
 真沙羅姫は、最後に体を無数の刃に変身させ、透子とリィムナに襲い掛かった。しかし。それらは空中で落下して、黒い塊となって崩れ落ち、瘴気に還って行った。
 アヤカシ達の悲鳴が轟く。龍安軍は攻勢に転じ、死骸兵らを撃破した。
 かくして遂に、ここに、真沙羅姫は撃破されたのだった。

「でやああああ!」
 ルオウは巨大な瘴気の楔を殴りまくっていた。
 味方が到着し、一斉攻撃で楔を破壊する。
 爆発とともにざらついた咆哮が響き渡る。悲鳴のような……。
 そして、大地から黄金色の光が立ち上る。姿を見せる大地の精霊、亜紫亜。
 亜紫亜は、前よりも安らかな表情をして、開拓者達を見返した。
 例によって透子が進み出る。
「亜紫亜さん……教えて下さい。貴方が眠りにつくと、この土地はどうなるのですか。大丈夫なのでしょうか」
「私の力が回復すれば、光が戻ります。それはこの地のあるべき姿です」
「とはいえ……貴方は目覚めたら何をしますか?」
「私は今、目覚めていますよ。それが答えではないでしょうか」
「うーん……あなたが寝るってどういう意味なのですか」
「それは、私の力が戻ることです。光によって不厳王の力は削られるでしょう」
「本当ですか? 何か良いことばかりですねえ。では最後に。貴方たちにとって、あたし達は何ですか。アヤカシにとっては餌です。あとケモノは?」
「私たちにとって、人は世界の一部です。確かに、人の中には、精霊の力を大きく引き出す者もいるようですが、それはさしたることではありません。それはケモノも同じことです。彼らも世界の一部なのです。長く生きていることが、特別なことではありません。私たちのような存在から見れば、小石一つであろうと、世界の一部なのです」
 柚乃は亜紫亜の姿を見て、感動していた。人から神と呼ばれるような精霊と言うのは、そうそう対面出来るものではない。
 そうして、亜紫亜はまた光の中へ沈んで行った。

 ……魔の森の奥地で。
 不厳王(iz0156)は、掌に開拓者と亜紫亜の姿を映し出していた。
「おのれ……」
 大アヤカシは、それを握りつぶした。