【龍王】那須羅王、討伐
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: 難しい
参加人数: 15人
サポート: 17人
リプレイ完成日時: 2012/06/28 22:54



■オープニング本文

 武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。

●東部〜魔の森、東の大樹海〜緩衝地帯を越えて
 大アヤカシ不厳王(iz0156)は、魔の森を活性化させると、緩衝地帯を越えて森を拡大させていく。
「……人間など、滅びゆく種族に過ぎん。ふふ……もはや……手遅れよ。滅亡へ向かって進む人間どもが、何を今更抵抗するか。滑稽極まりない……」
 不厳王は、瘴気の渦の中にいて、続々とアヤカシを排出し続けていた。それらは死人の軍団である。
 魔の森から続々と溢れだす死人アヤカシは、緩衝地帯を越えて鳳華の東部に展開していく。怪骨、屍人の大軍が続々と溢れだす。また、幽霊兵士の大軍が森から前進する。がしゃ髑髏に巨人兵、死骸の肉塊らが咆哮を上げれば、大気がびりびりと振動する。さらに、上級兵士である死人戦士、死人龍騎兵らが前進する。そして、指揮官クラスの中級アヤカシも多数、異形の死人の幹部たちが、鳳華の東部に襲い掛かっていく。その先頭に立つのは、上級アヤカシ禍津夜那須羅王である。
 里の人々は、その光景にパニックに陥った。
「ま……魔の森が前進して来るぞ……!」
「な、何だあれは……! 森が! 森が飲み込んでやってくる!」
 東部の里長たちは、誰もが二十年前の出来事を思い出していた。当時ここにいなかった者たちがほとんどだが。鳳華の東方に発生していた魔の森が急速に拡大を見せた。アヤカシたちとの戦いの始まりだった。
 里長たちは民を率いて後退する。この魔の森の勢いは近年にない例外である。東の里は、魔の森に沈んでいく……。

 上級アヤカシ禍津夜那須羅王は、魔の森が鳳華の東部へ面展開していくのに合わせて、その先端にいた。
 崩れる龍安軍を追撃し、衝撃波を叩き込んで来る。
「脆いな人間ども……不厳王様の強大な力の前には、なす術は無いか。森に飲み込まれ、沈みゆくがいい」
 禍津夜那須羅王は緑光の瘴気を持ち上げると、龍安軍に叩き込んだ――。

●龍安が仕掛けた策
 龍安軍の指揮官、楢新之助は、蓮高の里から後退しつつ、各方面軍と連携を取りながら禍津夜那須羅王を引きずり出していた。禍津夜那須羅王は生半なアヤカシではない。この一年近くにわたって、世間に姿を現してから、簡単な敵ではないことは各国にも知れ渡っている。その生半ではない敵を欺くために、龍安家は全軍を上げて退却戦を演じていたのである。禍津夜那須羅王は手元の情報を見て、これが退却戦であることは見抜いただろう。だが、今、自身が龍安軍のしかけた壮大なトリックに掛かっているとは気付いていなかったのである。その鍵となる蓮高の里での退却戦で、楢新之助は龍安軍の意図を隠し、禍津夜那須羅王を龍安軍の包囲網に誘い込むことに成功していた。別動隊が禍津夜那須羅王の退路を断つと、前線に家長の龍安弘秀と筆頭家老の西祥院静奈が到着する。
「お屋形様! 静奈殿!」
 楢は主君に駆け寄った。
「おう、新之助、生きていたか」
「は!」
「新之助、御苦労さま」
「静奈殿! 目と鼻の先に禍津夜那須羅王です! まだ奴は自分が包囲網に陥ったとは気付いていません。と言っても、アヤカシ軍が態勢を整えるまで僅かな時間しかありませんが……」
「この機会にあの上級アヤカシに全てをぶつけるわ。私たちが座して飲み込まれるのを見ていると思っているようね」
 静奈が言うと、弘秀は言った。
「もちろん、禍津夜那須羅王を討つ好機などそうあるものではない。奴が手勢を集めるまでが勝負だな。自分が人間に騙されたとは夢にも思っていないだろうからな」
 弘秀はシノビを放ち、全軍に触れを出した。
「手ぬかりなくやろう。ここで奴とは決着をつけるぞ!」
「おお!」と、龍安の兵たちは士気も高く、一つの決戦の地に臨むのだった。
 ――そしてまた、この地に駆け付けた開拓者たちの姿もあったのである。


■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067
17歳・女・巫
鈴梅雛(ia0116
12歳・女・巫
華御院 鬨(ia0351
22歳・男・志
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
ルエラ・ファールバルト(ia9645
20歳・女・志
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
宿奈 芳純(ia9695
25歳・男・陰
メグレズ・ファウンテン(ia9696
25歳・女・サ
フィン・ファルスト(ib0979
19歳・女・騎
朽葉・生(ib2229
19歳・女・魔
長谷部 円秀 (ib4529
24歳・男・泰
罔象(ib5429
15歳・女・砲
エラト(ib5623
17歳・女・吟
アナス・ディアズイ(ib5668
16歳・女・騎
サクル(ib6734
18歳・女・砂


■リプレイ本文

●開戦前
「よくぞみな耐えてくれたな」
 龍安弘秀は、開口一番言った。
「禍津夜那須羅王を叩くこの好機、逃さん」
 柊沢 霞澄(ia0067)は短く吐息して口を開いた。
「とびとびの参加になりましたが……。武天の情勢は気になるところでした……。今回の好機を逃したら那須羅王は更なる攻勢をかけてくるかもしれません……。武天の民をこれ以上苦しめない為にも、今回必ず討伐を成功させたいです……。麗霞さん、苦労をかけますが宜しくお願いしますね……」
 相棒のからくり、麗霞は頷き霞澄を支える。
「霞澄様、頑張りましょう。私がお守りします」
「ありがとう……。今回は禍津夜那須羅王の討伐です……。皆が大きな怪我をしないように心がけますね……」
「よろしく頼む柊沢」
「ここで逃がしてしまえば、向こうも慎重になり手が出し難くなるでしょう。何としても、禍津夜那須羅王を討ちましょう」
 鈴梅雛(ia0116)は言って、緊迫した面持ちで吐息した。
「多数の開拓者を含めた、総力戦とも言える様相です。これに失敗すれば、士気にも大きな影響が出るでしょうし、反乱軍にも大きな勢いを与える事になってしまいます。失敗するわけには、いきません」
 小さな、だが確かな声で雛は言った。
「ひいなは他の方たちと、正面から禍津夜那須羅王の軍を食い止め、包囲を更に厚くする為の時間を稼ぎます。龍安軍が偽装撤退しているので、それを支援する殿部隊を装います。周囲の人に、『れ以上進ませるな』など叫んで貰って、取り巻きのアヤカシを確実に止める事で、禍津夜那須羅王の突出を誘います。進軍が鈍れば、道を拓きに禍津夜那須羅王が出てくるのではないかと」
「おう、頼むぞ雛」
 歌舞伎役者の華御院 鬨(ia0351)は、女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は京美人の女装をしていた。
「目的はただ一つ。禍津夜那須羅王を倒すことどす。ほんま、禍津夜那須羅王を倒せるチャンスどすなぁ」
 と感慨深く云う。華御院は少なからず那須羅王と因縁のある相手である。
「禍津夜那須羅王を出来るだけ前線に引きとめて、気づかれない様に周囲を包囲して倒す。これに尽きるわけどすが」
「ここまで踏ん張ってくれたみなに礼を言う。もう一度力を貸してくれ」
「かみのますとりいにいれば、このみよりひつきのみやとやすらげくす」
 玲璃(ia1114)は最初に言って吐息した。
「私は巫女隊、サムライ隊に連携を打診させて頂き、サムライ隊の護衛のもと戦場で負傷した味方のもとを回り、その場で治療し順次戦線に復帰させる機動治療を提案いたします。判断はみな様に委ねます」
「いや、玲璃、よろしく頼む」
 弘秀は頷いた。
「それでは、各隊を預かるサムライ大将のみな様に、負傷者が出たら伝令等で場所や人数を教えてくれる様お願いいたします。巫女隊、サムライ隊のみな様のご協力が必要になります」
「お任せあれ玲璃殿。みな協力は惜しまんでしょう」
「ありがとうございます。改めて御礼申し上げます」
「怒りはまた喜ぶべく、憤りはまた悦ぶべきも、死者はもってまた生くべからず」
 ルエラ・ファールバルト(ia9645)は言ってからお辞儀した。
「ルエラと申します。よろしくお願いします」
「おう、よろしくな。禍津夜那須羅王を撃破する命運この一戦にありだ」
「私は、作戦はコルリスさんの案に従い、主軍の両翼包囲の際の片翼部隊に参加いたします。主軍防御部隊が敵の攻撃を食い止めたところで、側面を迂回して敵を撃退しつつ後背まで回り込み防御部隊の動きと連動し包囲網を形成します」
「ふむ……コルリスの作戦案を聞こうか」
 コルリス・フェネストラ(ia9657)は吐息してから口を開いた。
「龍安弘秀様、西祥院静奈様、楢新之助様、各隊大将のみな様。これは一案ではありますが、みな様の判断を仰ぎたく存じます」
「うむ」
「まずは、あえて主軍に敵軍を誘引し、主軍正面は防戦しつつ別働隊による両翼包囲を狙います。その間に、側面、後方隊は一部を予備隊として残し、慎重に進撃。予備隊は高所からの戦場観察や弾着観測を行いシノビ等伝令を介し各隊へ情報伝達。また空戦では各龍騎兵隊大将や仲間達に裁量を委ね、各戦術を駆使して制空権を掌握します。そして、主軍による両翼包囲を完了させ、制空権確保の後、両側面、後方隊の動きを気取られぬ様、龍騎兵にも協力依頼し禍津夜那須羅王の発見に尽力します。確認次第開拓者が集結。包囲網を作り集中攻撃し禍津夜那須羅王の注意をひきつけ続けます。その間に両側面、後方隊は集結し、更なる包囲網形成を完了。完了合図は私が空鏑を放ちます。開拓者及び主軍、飛行戦力は練力回復の後、包囲網を維持し攻撃を続行します。最後に、逃走に備え後方に予備隊を集結。全方位からの攻撃を続け、禍津夜那須羅王を総がかりで討伐いたします。以上となります」
「包囲殲滅戦か。俺だって本当は好きなんだがね。滅多にこういう機会は無い」
 言って、弘秀はコルリスの作戦に許可を出した。
 宿奈 芳純(ia9695)は頷き、言った。
「弘秀殿、私もコルリスさんの作戦に合わせますね。私からも陰陽師隊の戦法案を提案させて頂きますが、判断はお任せします」
「聞こう」
「これは全軍が包囲集結できるまでの30分が分岐点です。まずは主軍サムライ隊の咆哮使用時は、周辺に結界呪符『白』の防壁を作りサムライ隊等を防衛します。各隊と連携し側面、後方隊が来るまで防衛に尽力します。それから、今回は禍津夜那須羅王発見と開拓者による包囲攻撃を急ぎ、攻撃による音や戦塵等で禍津夜那須羅王の感覚を惑わせ、側面と後方隊の集結を察知されぬ様尽力すべきかと存じます。最後に、各隊合流後は開拓者や各隊は練力回復アイテムで練力回復しつつ、万が一に備えた予備を残し、全軍で禍津夜那須羅王に集中攻撃し続け撃破します」
「ふむ……それでは、陰陽隊の指揮は任せるぞ」
「ありがとうございます」
「急ぐと思うな。これこそ我らが歩み。死地を思うな。こここそ我らが生きる地」
 言ったのはメグレズ・ファウンテン(ia9696)。メグレズは吐息して、続けた。
「私もまたコルリスさんの作戦案に賛成します。自分も両翼包囲の片翼隊を率いて、敵群を切り開きながら、敵軍を包囲すると共に、側面、後方隊到着前に禍津夜那須羅王を発見後は、その注意をひきつけ続ける為、仲間達と共に向かい包囲し、仲間達の盾役等にもなりましょう」
「鉄壁だな。先の戦いでは見事だったと聞く」
「真に。鉄壁にございました」
 楢が言って、頷いた。
「前回手応えはあった……あの感覚、また掴めれば」
 フィン・ファルスト(ib0979)は言って、吐息した。前回の記憶が蘇る。禍津夜那須羅王に与えた衝撃。受けた衝撃。いずれにしても、凄絶なものではあった。フィンは微かに震える。
「禍津夜那須羅王撃破。前も言ったけど、長引かせるわけにも行かないのよぉっ!」
「うむ。フィン、ありったけの力をぶつけてやれ。お前さんの本領期待しているぞ」
「はい弘秀さん! よっしゃ、いっくぞー!」
 朽葉・生(ib2229)は、味方魔術師隊の隊長に協力を要請すると、一緒に提案した。
「弘秀様、私たちの方では、アイアンウォールで防壁を多数設置すると共に、突破される事を想定し、敵の攻撃から身を守る形に偽装し、追撃する敵の周囲に防壁が並ぶ形でアイアンウォールを設置する防戦案を提示いたします」
「ふむ」
「敵は一戦交えればこちらが簡単に退くと思い込んでます。それを逆手に取り、御味方の一部は一、二回敵と交戦後、偽装退却し、敵をアイアンウォールが周囲を覆う地帯に誘き寄せ、そこへ私はサンダーヘヴンレイで、魔術師隊の方々にはブリザーストームで敵を各個撃破する流れを繰り返し、敵を正面に釘付けにし、側面と後方隊の動きを悟られぬ様尽力します」
「了解した。では、正面に敵を引き付けるまで、そちらは任せる」
「ありがとうございます。それでは私たちはアイアンウォールを配置してきますので」
 朽葉は立ち上がった。
「ここが分水嶺……決めにいきましょうか。行くぞ! 勝利を我等に! 栄光を我等に! 奴等に目に物を見せてくれよう!」
 長谷部 円秀 (ib4529)は言って、珍しく高ぶる感情を表に出した。
「と、これまでの総決済ですね。この身全身全霊を持って王を打ち滅ぼします。私も当初は正面で防御を指揮します。正面を歩兵で固めつつ、弓、砲等の遠距離を斜めから打ち込みつつ、範囲を拡大し敵の突撃を止めます。その状態で包囲完成まで耐えましょう。包囲完成後、後方に待機させておいた突破部隊とともに王の位置まで突撃。勝負を掛けます。もし敵が包囲に気づき後退し始めても、まだ余裕がある機動力のある部隊で追撃隊を編成し、敵の退路を立つように機動しましょう。そのほかの部隊は敵を後方から追撃。挟撃して敵を撃滅します」
「長谷部、お前も奴には借りが多いな。ここで清算しよう」
 砲術士の罔象(ib5429)もまた、吐息して口を開いた。
「空の敵は早めに殲滅し、こちらの意図に気づかれる要素を消していく必要があるかと思います」
「そうだな」
「空戦戦術として、龍騎兵が二人人一組でペアを組み、片方が咆哮で敵をひきつけ、もう片方がその敵を横撃、真上からの攻撃等で倒す『繰引』戦法並びに、その応用として私の周囲に敵が集まる様、咆哮の角度等を調節し、集まったところで龍騎兵は退避し、魔砲スパークボムでまとめて倒す『空雷』戦法を提示致します。両方を使い分け制空権確保と空の敵殲滅を目指す形を提案します」
「了解した。空は任せるぞ。これまで同様、力を貸してくれ」
「弘秀様、よろしくお願いします」
 吟遊詩人のエラト(ib5623)は言って、自身の提案を投げる。
「私は味方サムライ隊や吟遊詩人達に協力をお願いし、咆哮で自分の周囲に敵を集め、連携して歌で敵を順次無力化し、禍津夜那須羅王戦でも敵の能力を低下させ、味方の能力を向上し、戦闘を支援する形式を提案いたします」
「ようやく吟遊詩人も集まった」
「集めたアヤカシは精霊の狂騒曲で混乱させ、指揮系統を破壊して順次無力化します。禍津夜那須羅王戦では各歌で味方を支援すると共に、周囲を音楽で包み、敵が側面、後方の御味方の動きを悟らせない様尽力します」
「よろしく頼む。吟遊詩人部隊の派手な初陣になるが、よろしくな」
「御身は我らが聖上、わが時は御身の手のうちにあり、です」
 アナス・ディアズイ(ib5668)は言って吐息した。
「龍安弘秀様、私も基本的にはコルリスさんの案に賛成します。蛇足ながら、宝珠砲の活用案を提示致します」
「聞こう」
「宝珠砲は鶴翼陣形で、奥から大型、中型、小型の順に配備し、榴弾を使い砲撃精度を粗めにし、簡略な修正で砲撃地区一帯を攻撃できる地帯弾幕射撃を行う、というのが過去の報告書を拝見して、最も慣れ親しんだ方式かと思いましたので、禍津夜那須羅王への欺瞞工作も兼ね、今回もその方式で宝珠砲を活用する事を提案します」
「そうだな。地帯射撃以外に策も見つからんし、それでいこうか」
「ありがとうございます。では少し砲兵部隊に挨拶してきます。私は主軍正面で防戦に尽力しますので、主軍及び砲兵達を守ると共に、発見後は仲間達と共に禍津夜那須羅王と戦い続ける事を表明しておきますね」
 アナスは立ち上がった。
「それでは、私からはみなさんの作戦案に合わせ、敵を主軍にひきつけ防戦し続ける一案として、多少手順を変えた『車懸り』戦法を提案しますね」
 砂迅騎のサクル(ib6734)は言って、言った。
「御味方のサムライと砲術士の方々にご協力願えれば、数で押されても包囲維持は可能かと思います」
「戦術を聞こうか。車懸りはしばしば成果を聞いているが」
「はい。まず、主軍中央に砲術士を集め五人一列の組を複数段構築します。両脇をサムライ部隊で守ります。次に、射程距離に入るまで陣形を維持し前進します。敵が来たら最前列は一斉射撃。射撃を終えた列の前に最後尾の砲術士の列が進み数段構えの射撃で敵を間断なく射撃。射撃支援を受けサムライ隊が敵を食い止める形で砲術士隊の機動を支援します。続いて、敵を多数誘引したら、射撃を終えた列は発砲後段列の最後尾に走り再装填。続く列の砲術士達が一斉射撃と今度は逆の機動で各列の砲術士達は発射する度に後退します。最後に、砲術士達の機動を左右サムライ部隊が敵を食い止める形で守り、敵に損害を与えながら突出を誘引します」
「なるほど。我が軍の砲術士ならば行けるだろう。よろしく頼むぞ」
「ありがとうございます」
 それから、作戦の相談は各大将も交えて打ち合わせを行い、龍安軍はコルリスの包囲作戦を基本に戦術を決定する。
「よし、では行くぞ! みなみなに精霊の加護があらんことを!」
 一同、杯に軽く注がれた酒を飲み干し、それを地面に叩きつけた。鈴梅だけはお酒ではなくミルクであったが。
 鳳珠(ib3369)、ヤリーロ(ib5666)、クシャスラ(ib5672)、ライ・ネック(ib5781)、ピスケ(ib6123)、マレシート(ib6124)、鴻領(ib6130)、黒嶄(ib6131)、黄霖(ib6132)、緑獅(ib6133)、赤封(ib6134)、汐劉(ib6135)、山階・澪(ib6137)、サラファ・トゥール(ib6650)、嶽御前(ib7951)、カルフ(ib9316)、中書令(ib9408)らもそれぞれ戦場に散っていく。

●戦闘開始
「撃て!」
 宝珠砲から閃光がほとばしり弾丸が炸裂するのが始まりだった。
 アヤカシ軍は咆哮して前進して来る。
 コルリスは山紫の鞍上で指揮を取りつつ、禍津夜那須羅王が出るのを待った。
「よーしいっくぞー!」
 フィンはランに搭乗して退却支援の為の殿部隊と敵に見せかけて敵正面で足止めを行う。後退しつつアヤカシを撃退する。
 長谷部も部隊を編成して迎撃する。
 アナスはりエータに搭乗すると、突進した。アヤカシの一団を打ち砕く。
「では行きますよみなさん! 車懸りをお願いします」
 サクルは言って、砲術士を率いて一斉銃撃を多段列で開始、前進していく。
 ルエラとメグレズは、互いに翼部隊を率いて、アヤカシ軍を包囲していく。
「慎重にお願いします」
 コルリスは伝令を飛ばした。
 華御院は最前線で死人戦士を切り倒していく。
「禍津夜那須羅王……今日こそ」
 宿奈は陰陽隊を率いて、結界呪符の防壁を立てていくと、友軍を支援する。サムライ隊の支援などに回る。結界呪符が龍安軍の動きを遮蔽する。
 朽葉は、アイアンウォールで築いた地帯にアヤカシ軍がなだれ込んで来るのを確認すると、サンダーヘヴンレイを叩き込んだ。魔術師隊はブリザーストームを連射する。
 上空では、罔象らが連携して繰引戦術で飛行アヤカシを撃破しつつ、空雷戦術で早期にアヤカシを薙ぎ払う。
「私から離れて下さい」
 罔象は言うと、魔砲「スパークボム」を叩き込んだ。
「ではみなさんお願いします」
 エラトら吟遊詩人部隊は、精霊の狂想曲を奏でると、アヤカシ軍を無力化していく。
 霞澄は麗霞を伴い、回復エリアに設定した場所で友軍のダメージを回復させていく。
「精霊さん、みなの傷を癒して……」
 霞澄は鈴の音色に合わせて歌う。
 麗霞は接近してくるアヤカシを切り捨てた。
「霞澄様、ご心配なく。お守りするのが私の役目です」
「麗霞さんお願いします……」
 雛は瑠璃を伴い、前線で神楽舞・攻で味方を支援する。
「これ以上進ませるな!」
 龍安軍は後退しつつアヤカシ軍を引き付ける。
「みなさん、今日こそ禍津夜那須羅王を討ちましょう」
 雛は言って、神楽を舞い続ける。
「アヤカシ20余、右方向から前進してきます。サムライ隊、迎撃をお願いします」
 玲璃は瘴策結界「念」で探知、報告すると、また機動治療に向かう。環を駆り、負傷者のもとへと急ぐ。
「みなさん私のもとへ負傷者を集めて下さい。巫女隊のみなさん、よろしくお願いします」
 玲璃らは友軍を回復していく。

「禍津夜那須羅王が出てきましたな」
 コルリスは兵士から報告を受けて、鏑矢を撃った。
「いよいよですね……各隊に触れを。作戦に則り、禍津夜那須羅王を包囲します」

「また会いやしたなぁ。毎度、うちの舞を見に来てくれてありがとうやす。せやかて、そろそろ千秋楽にさせてくれやせんか」
 と華御院は挑発気味に挨拶をした。
「ふふ……開拓者か、無駄なことだとなぜ気付かん」
 禍津夜那須羅王は華御院の攻撃を弾いた。
「あんさんは堅いやさかい、今回は地道に攻撃させてもらいやす」
「散!」
 シノビたちが不意打ちを仕掛ける。
「無駄だ――」
 禍津夜那須羅王は前進して来る。
「私達が林となり、戦いで巻き上がる戦塵を霧とし、叫喚でアヤカシ達の感覚を惑わせる事で、今後集結する御味方の動きを禍津夜那須羅王にできるだけ悟らせない事が、この包囲網のもう1つの役割です! 合流後には数多の包囲網をもって全員の力で禍津夜那須羅王を討ちましょう!」
 ルエラは翼部隊を操りつつ加速する。白梅香を打ち込む。
 メグレズも強引に包囲網を構築すると、禍津夜那須羅王に打ち掛かっていく。
「凰華を守る龍安の精兵よ、今こそ魂を燃やせ! 無念の涙を飲んだ亡き人の為に、仕えるべき主君の為に、帰りを待ってくれる愛する人たちの為に、己が戦う理由の為に!」
 フィンはランスロットから飛び出すと、兵を鼓舞し、突進した。オウガバトル+極地虎狼閣――タイラントクラッシュを連発。
 長谷部は玄亀鉄山靠と破軍を叩き込む。
 アナスはアーマーで突進したが、禍津夜那須羅王に腕を飛ばされる。アナスは脱出して反撃に出た。
 サクルは、敵を十分に引き付けたところで、猛烈な銃撃を開始する。旭を駆り、禍津夜那須羅王の頭部を狙う。
 宿奈は陰陽師隊を率いて到着。越影を駆った。結界呪符「白」を展開すると、
「蛇神と呪声の集中使用をお願いします!」
 宿奈は言って、禍津夜那須羅王の五感を惑わし続けると、隷役付の黄泉より這い出る者を連射する。
 朽葉はララド=メ・デリタを連発。注意をひきつけ続け包囲維持と撃破に尽力。

「いよいよ始まったようですね。では私たちは空を制圧に、禍津夜那須羅王の脱出する道を絶ちます」
 罔象は言うと、友軍とともに上空を制圧していく。
「逃がしませんよ……」

 エラト達は、吟遊詩人達は奴隷戦士の葛藤、闇のエチュード、怠惰なる日常の連続使用。エラト自身は天鵞絨の逢引や黒猫白猫を奏で続ける。吟遊詩人達のメロディーが戦場を包み込む。
 霞澄は麗霞とともに参戦する。麗霞はハンドキャノンで雑魚を払う。霞澄は精霊砲。
 雛は神楽舞「心」で、仲間たちを集中支援する。
「この戦いで、終わらせます」
 玲璃は、精霊の唄に天火明命で仲間たちを支援する。

 側面、後方から部隊が到着すると、禍津夜那須羅王は遂に戦況に気付いた。
「何だこれは……龍安軍、開拓者ども……包囲網を?」
 禍津夜那須羅王は牙を剥くと、みるまに変身していき、醜悪な巨漢の死人戦士に姿を変えて行く。
「私を倒せると思うな人間……!」
 衝撃が爆発した。禍津夜那須羅王は長刀と瘴気から爆発的な一撃を繰り出した。
 開拓者が、龍安軍が立ち上がり、禍津夜那須羅王目がけて突撃する。攻撃と術の集中攻撃が叩き込まれる。
 禍津夜那須羅王の肉体が吹っ飛んだ。
「おのれ……私を……人間が……!」
 その巨体に次々と吸い込まれて行く攻撃が、禍津夜那須羅王を遂に破壊する。
「おおおおおおお……!」
 禍津夜那須羅王は閃光を放って爆発した。跡形もなく、その肉体は瘴気となって完全に霧散して消失していった。
 全員の思いが形となった勝利。だが歓喜はない。喜びは一瞬。龍安軍はアヤカシ軍の残党を殲滅し、粛々と続く戦いに備えるのだった。