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■オープニング本文 武天、とある鉱山街で‥‥。 男達は運び出してきた鉱石を町長に見せていた。筋肉隆々の鉱夫達はすすまみれで、背中はびっしょり汗に濡れていた。 「どうだい町長。ここは使い物になりそうかい」 「ふーむ」 町長の老人は拡大鏡で鉱石を見つめていた。 「駄目じゃな」 町長は吐息して、鉱石を戻した。 「駄目? 駄目なのかよ」 「ああ。これじゃ採算は取れん。もう少しましな鉱石が必要じゃな。ふーむ」 「これだけ掘ってもまともな石が採れないってことは、ここはもう駄目かなあ」 「ふーむ‥‥そうじゃなあ、もう少し西の方へ掘り進めて見るのが良いかも知れん」 町長の提案に鉱夫たちは吐息する。 「そうか‥‥まあしゃあねえな。仕方ねえ。今日はここまでにして、また明日から仕切りなおしと行くか」 「ああ、そうだな」 鉱夫たちは肩をほぐして、つるはしを担ぎ上げると、町へと戻っていく。 その時である。 「おーい、大変だー! 大変だー!」 「何だ? まご吉の奴、何慌ててやがるんだ?」 「大変だ!」 「おうまご吉、どうしたんでえ」 「鉱山の中に‥‥鬼が出たんだ!」 まご吉の言葉に一瞬言葉を失う鉱夫たち。 「な、あ、アヤカシが?」 「大変なんだ! 俺たちは何とか逃げ出したんだが、まだ六助と平太が取り残されてるんだ!」 「何だと」 鉱夫たちはざわめき始める。 「鬼って、どんな奴なんだ?」 「こーんなでっかい赤鬼と青鬼の群れと、いかつい角を生やした大男が出やがった!」 まご吉は全身で鬼の大きさを強調する。 そこで、鉱山の奥から絶叫が響いてくる。 屈強な男達がびくっと顔を見合わせる。 「お、おい‥‥」 やがて、鉱山から赤鬼と青鬼を引き連れた大男が姿を見せる。 鬼たちは、人の手足らしきものを口にくわえて貪り食っていた。 「う、うわああああ‥‥!」 「本物だあ! 本物の大鬼アヤカシだ!」 角を生やした大男は、牙を剥いて大きな刀を持ち上げた。 「ふっふっふっ‥‥人間ども、滅びの時は近いぞ。この鉱山町は、俺様『楽李』が頂くぞ。貴様らは全員滅亡あるのみ。ふっふっふっ‥‥さあ掛かれ! 鬼たちよ! 狩りの時間だ!」 そうして、攻撃を受けた鉱山街の情報は、すぐさま神楽の都へと伝えられた。 ――開拓者ギルド。 「‥‥ふむ、大鬼アヤカシが出やがったか。近頃は大国武天と言えども安穏とはしていられないが」 ギルドの職員と話をしていたのは、最近長旅から神楽に帰ってきたサムライ開拓者の橘鉄州斎(iz0008)。 「鉄州斎殿、どうして依頼を受けないんですか。引退したわけじゃないんでしょう?」 「ま、そのうち剣を取ることもあるかも知れん」 ギルド職員は不思議そうに鉄州斎を見つめる。 そこへ、あなた達が訪れる。依頼書を持って、職員に詳細を尋ねると、受付の青年はあなた達に説明を始める。厳しい戦いになるだろうと‥‥。 |
■参加者一覧
井伊 貴政(ia0213)
22歳・男・サ
当摩 彰人(ia0214)
19歳・男・サ
鳳・陽媛(ia0920)
18歳・女・吟
紬 柳斎(ia1231)
27歳・女・サ
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
翔(ia3095)
17歳・男・泰
幻斗(ia3320)
16歳・男・志
伊予凪白鷺(ia3652)
28歳・男・巫 |
■リプレイ本文 「うわあああああ! 向こうにも鬼がいるぞ!」 「だ、駄目だ‥‥この町は終わりだ‥‥」 町は混沌としていた。逃げまどう人、絶望する人、パニックに陥る人、泣き叫んで動けない人で騒然となっていた。 「落ち着け! 開拓者が来るはずだ! 知らせはすぐに飛んでいるんだ! すぐに開拓者がやってくる‥‥!」 一人の若者がそう言って、村人達をなだめる。 「よお若造、誰が来るって?」 「開拓者だ、神楽の都に知らせが‥‥!」 若者は凍りついた。目の前に長大な刀を持った鬼アヤカシのボス、楽李が立っていた。 「ほう? 開拓者どもが来るのか? へえ、そうなのか」 若者はあるいは無謀だった。 「そ、そうだ! 開拓者がお前達を叩きのめして、町の恨みを晴らしてくれるさ――」 ズン! と楽李は刀で若者を一刀両断した。 「ぐっふっふ、奴らが来た時には、すでに町は滅びて死体が残るのみ、そうして俺様はとっくに姿を消しておるわ」 楽李は禍々しい瘴気の息を吐き出すと、ぎらりと町の中を見渡した。 「ひ、ひい!」 人々は慌てふためいて逃走する。 「逃げろ逃げろお! 逃げまどえ! 狩りは始まったばかりだ! ぐっふっふ」 だが、果たして、そこへ神楽の都から、開拓者の一団が到達する。 「鉱山街の皆さん! あっちへ! あちらの方向へ逃げて下さい! 僕たちが来た方角は安全です! さあ気を取り戻して!」 井伊貴政(ia0213)は泣き叫んで母親を呼ぶ子供を抱かかえると、町人たちに指示を出していく。 「僕たちは神楽から来た者です! 開拓者です、鬼は必ず倒します! 皆さんは一刻も早く安全な方角へ逃げて下さい!」 「開拓者の方、私の娘です!」 貴政は子供を母親に預けると、その肩を叩いて逃げる方角を指差す。 「町人のみんな、あっちは安全なんだねぃ! ――よお大丈夫か爺さん」 当摩彰人(ia0214)は腰を抜かして動けない老人に駆け寄る。 「わ、わしはもう駄目じゃ‥‥あんな怪物に食い殺されるとは‥‥何の因果じゃ」 「爺さん諦めるな。おい誰か! そこのあんた!」 彰人は近くの青年を捕まえる。 「この爺さん動けないんだ。運んでやってくれないか」 「あ、ああ‥‥」 「俺は神楽から来た開拓者だ。アヤカシどもはぶっ倒してやるからさ〜、爺さんを頼むよ」 「開拓者? そうか‥‥間に合ったか」 青年は安堵したように老人を抱きかかえる。 「ところでさ〜、あんた鬼の動きがどうなっているか分かるかな。全く混沌としているようだけど」 「ああ‥‥鬼たちは多分こことは反対方向から、町の中に入り込んで、破壊活動や逃げ遅れた人たちを襲っているんじゃないかな。頼むよあんた! みんなを助けてやってくれ」 彰人は町人を逃がすと、走りながらこの厄介な状況に舌打ちする。 「神楽の都から参りました! 開拓者の者です!」 鳳・陽媛(ia0920)は町の中に駆け込みながら、民に声をかけて回る。 「開拓者ですか? 一体何人来てくれたんですか?」 「神楽から派遣されたのは八名です。鬼はどこにいますか?」 「鬼はあっちからやってきて、今もどんどん町をぶっ壊してます。まだみんなが取り残されているかも」 「そうですか‥‥何とか頑張ってみます。他の皆さんに声をかけて、応援が来たことを知らせて下さい。私たちが来た方角は安全ですから、あちらへ逃げるように」 「は、はい‥‥!」 民はまだ子供と言っていい鳳にてきぱきと支持されて、慌てて走り出した。 「拙者は神楽から来た者。開拓者だが‥‥」 紬柳斎(ia1231)は右往左往している民に近付くと、声をかけて安心させる。 「開拓者‥‥そ、そうですか‥‥来てくれたんですね。良かった!」 「鬼たちはどの辺りまで来ている。逃げ遅れたものはいるのか」 「ああ‥‥あそこ、煙が見えるでしょう? 多分鬼が焼き払ってるんです。まだ向こうには人が残っていますよ。ここまで来れたのは運が良かったんです」 「民をまとめて、拙者たちが来た方向へ逃げるように。なるだけ多くの民に声をかけて、とにかくこの混乱を少しでも鎮めるように」 「は、はい、やってみます。みなさんが来たことを知れば、みんなも勇気百倍、頼みましたよ! あっしはとにかくここから離れますんでね!」 民は柳斎にお辞儀すると、風のようにいなくなった。 「おい! 大丈夫か!」 ルオウ(ia2445)は民に駆け寄り、動けなくなっている女性を介抱した。 「おい、あんた、しっかりしろ」 女性は怪我をしているわけではなかったが、息を切らして座り込んでいた。 「も、もう駄目だわ、ねえお願い。走りに走って限界よ。誰かを呼んできてくれない?」 「俺は神楽の開拓者だ。背中を貸してやる」 「開拓者? 本当に? 随分と小さな少年なのね」 「安心しろ。あんた一人連れていくくらい何でもねえ」 ルオウは有無を言わさず女性を軽々抱き上げると、疾風のようにあっという間に女性を運んだ。女性は余りの速さにびっくりしていたが。 「さ、あっちへ逃げて下さい。俺たちが来た方角は安全ですから」 翔(ia3095)は鬼の近くへ近付いていて、悲鳴を上げて逃げまどう民を捕まえては声をかけていた。 「鬼が‥‥鬼があっちに‥‥!」 「落ち着いて下さい。俺は神楽の開拓者です。知らせを聞いて急いで来ましたよ」 「開拓者? 本当に?」 「仲間達も一緒です。今はとにかく、安全な方向へ逃げて下さい。鬼は俺たちで必ず食い止めますから」 翔は民の背中を叩いて落ち着かせると、鬼のいない方へ彼らを逃がす。 「逃げろ! すぐに向こうに鬼たちがいるぞ! 鬼たちが向こうからやってくる!」 民は幻斗(ia3320)に駆け寄ってくると、息を切らしてしがみついてくる。 「すぐ向こうに鬼がいるのですか。分かりました。皆さんは向こうへ逃げて下さい。拙者は神楽の開拓者です。みなさんの救出にやって参りました。御安心召されよ。鬼は拙者たちで倒しますゆえ」 民は開拓者と聞いて驚き、だが落ち着きを取り戻して、幻斗の言うことを聞いて避難する。 「鬼は近いようですね」 幻斗はその後も民と遭遇しながら、彼らを逃がしながら進んでいく。 「失礼、怪しい者ではありませんよ」 そう言って民の避難誘導を行っていた伊予凪白鷺(ia3652)だが、白虎の被り物で民が恐れをなして逃げるので、今は被り物を取っていた。 「あんた! もうすぐそこに鬼が来てるよ! あんたも逃げんさい! さあ早く!」 「失礼、私は神楽の開拓者です。皆様の救出に参りました。そうですか、鬼はすぐ近くに来ていますか。結構です。皆さんは一刻も早い脱出をなさって下さい」 伊予凪は淡々とそう言って、民を自身がやって来た方角へ誘導する。 「開拓者ですかあ? 本当に来てくれたんですね‥‥もう駄目かと思っていました」 「皆様の無事を願えばこそ、私たちも急いで参りました。さあ、行って下さい。後は私たちに任せて下さい」 「はい‥‥はい‥‥お願いします」 民は伊予凪にお辞儀しながら走っていく。 ――ギャオオオオオ! 赤鬼は民を捕まえて持ち上げると、ばくりと食いついた。民の絶叫が響くと、鮮血が飛び散って民は事切れた。 ‥‥グオオオオ‥‥。民を貪り食う赤鬼。 「やめろ!」 ざんっ、と四人の開拓者、貴政、鳳、ルオウ、翔が赤鬼の前に立つ。 「グオ‥‥?」 赤鬼は武器を構える開拓者に、亡骸を放り投げると、血まみれの口を釣り上げて牙を剥いた。 「てめえ‥‥てめえだけは‥‥」 わなわなと怒りに打ち震えるルオウ。 「行きますよルオウ君。油断なきよう」 翔の言葉にルオウは赤鬼を睨みつける。 「ルオウ君、気をつけてね」 鳳は友を気遣って声をかける。 「俺は‥‥もう頭が爆発しそうだぜ‥‥!」 「行くぞ!」 貴政、ルオウ、翔は赤鬼に突進する。 赤鬼はかっと口を開くと、火炎を吐き出した。が、開拓者達はものともせずに突き進んだ。 「あの時と同じと思うなよ赤鬼! ――でやああああああああああ!」 ルオウは怒りに任せて驀進、飛び上がって刀を振り上げると、強打で鬼の腕を一撃で切り飛ばした。 ギャアアアアアア! と鬼が咆哮する。 「ルオウさんだけに良い所持って行かれる訳にはいきませんね」 貴政は突進すると鬼の胴体をズバアアア! と切り裂いた。 翔は拳を素早く赤鬼の肉体に打ち込んだ。 「みんな‥‥しっかり!」 鳳は少し離れて戦況を見やりつつ、神楽舞を使うタイミングを計っていたが、三人で赤鬼を圧倒する。 ルオウと貴政の刀にずたずたに切れ裂かれ、翔の素早い攻撃に動きを封じられて、赤鬼は瞬く間に撃沈、瘴気に還って消滅する。 隠れていた民が恐れをなして姿を見せると、鳳が神楽からの味方だと告げる。 「みなさん逃げて下さい。ここはもう大丈夫です。鬼は私たちが必ず‥‥!」 「ありがとうございます!」 「御武運をお祈りしますよ」 民は鳳たちに感謝の念を伝えながら一目散に逃げていく。 「終わり良ければ全て好しってね♪ さぁさ、笑みを湛えてもういっちょ踏ん張りますか!」 彰人は二刀を振るって青鬼に突撃する。 グオオオオ! 青鬼の棍棒を転がるようにかわすと、爪先や間接を狙って二刀を叩き込む。 肉と骨が砕ける音がして、青鬼は苦悶の咆哮を上げる。 「俺の場合、痛み感じないのがネックなんだよね〜☆ 血ぃ出過ぎて気絶なんて御免だから気をつけよう、でもなんとな〜く女の子に看護されたいのも事実、りゅ〜ちゃんとか?」 「冗談を言ってると死ぬぞお彰人!」 柳斎はぶうん! と大斧を振り回すと、「りゃああああああ!」と豪快な一撃を叩き込んだ。 ドシャアアアア! と斧は青鬼の屈強な足を一撃で吹っ飛ばした。 「りゅ〜ちゃんすっげーの」 彰人は起き上がって、よろめく青鬼に攻撃を加える。 「あなた方に殺された民の無念を、晴らさせて頂きますよ、この二刀に祈りを込めて」 幻斗は青鬼に連続攻撃を見舞う。 「オオオオオオ‥‥!」 青鬼は幻斗に至近距離から雷撃を打ち込んだが、伊予凪は神楽舞「抗」で幻斗の抵抗を上昇させる。幻斗は体を包み込む雷に耐えた。 「強敵とは言え引くわけには参りませんね、皆様、油断なさらぬように」 「伊予凪さん、助かります‥‥青鬼よ、あなたには、この世界から消えてもらいますよ。民人のために」 幻斗は続いて攻撃を開始する。 「悪鬼羅刹を食らいねえって! てめえは俺があの世へ送ってやるぜ! アヤカシにあの世があるかは知らないけどね〜☆」 彰人も連撃を叩き込めば、柳斎も凄絶な大斧の攻撃を青鬼の肉体に打ち込んだ。 「あまり梃子摺っていられないのでな‥‥一気に決めさせてもらう!」 開拓者の猛攻を受けて、崩れ落ちた青鬼は最後に首を切り飛ばされた。絶命して瘴気に還元する青鬼。 「みなさんお怪我はありませんか」 伊予凪は気遣ったが、仲間は今のところ無事だ。 「よし、次だ‥‥鬼の頭も近いぞ、気をつけて掛かろう」 開拓者達は赤鬼、青鬼を撃破しながら進む。 「‥‥ぐっふっふ、さあて、鬼どもは十分に働いたか?」 鬼の大将である楽李は、悠然と町の中に進んでくるが‥‥。 その前に次々と開拓者達が姿を見せる。 「あいつが大将らしいな?」 ルオウが楽李の角や口から生えている牙を見て、仲間達に注意を喚起する。 「人語を解するアヤカシの頭はどいつも強敵だぜ」 「何だあ貴様らは?」 楽李は眉をひそめて開拓者を見つめる。 「貴様が楽李だな? 貴様のその首をもって犠牲となった人々の弔いとしてくれる!」 柳斎はぶんっと斧を一振りする。 「何い? まさか‥‥開拓者か?」 「てめえら‥‥何でこんなことしかしねえんだよ!」 ルオウは怒りを叩きつける。 「ほざけ、貴様ら人間は滅びる運命よ。我らに食われてなあ。餌がぴいぴいとうるさいわ」 「何だと‥‥この‥‥!」 「ルオウ君、落ち着いて!」 鳳は今にも飛び出して行きそうなルオウを止める。 「私たちも全力で支援しますよ。鳳様、ここまで来ました、楽李相手に練力の温存は不要です」 「はい‥‥皆さん、私と伊予凪さんで神楽舞の支援を」 「頼むぞ。よし、行くぞ、一気怒涛に決めようか!」 柳斎は先頭に立つと、巫女の二人が神楽舞で支援を開始する。 「ほざけ人間があ!」 楽李は大刀を振り上げると、遠距離攻撃の衝撃刃を繰り出してくる。 貴政、彰人、柳斎、ルオウら、サムライ達が先頭に立って衝撃刃を受け止める。サムライ達はざくっと切り裂かれるが構わず突進した。 翔と幻斗も楽李の側背に回りこんでいく。 「御先祖様は伊井の赤鬼なんて呼ばれてたけど‥‥」 貴政は盾を放り投げると、両断剣を叩き込む。彰人、ルオウ、柳斎も楽李を取り囲んで次々と攻撃を打ち込んでいく。 翔はぼこぼこにされる楽李の隙を伺って、泰練気胞壱を発動させて飛び掛った。志体が覚醒して体が赤く染まる。 「ぬう‥‥」 楽李は片腕で翔の蹴りを受け止める。 「ああああああああ!」 突っ込んでくる幻斗の攻撃を受けながらも、楽李は大刀で幻斗を叩き伏せる。 ズン! と地面に叩きつけられる幻斗。 「く‥‥やってくれますねアヤカシ頭領」 貴政の両断剣に体を切り裂かれながらも楽李は反撃。彰人は裂ぱくの気合いを込めて二刀を打ち込むと、すぐに距離を保って一撃離脱。 「危ない危ない〜まともに食らったら堪った物じゃないし」 「はああああああ! 落ちろ大鬼アヤカシ!」 柳斎の両断剣を受けてなお、楽李は体から血が吹き出すが、刀で柳斎を叩きのめす――いや、柳斎は耐えた。凄まじい衝撃で足が地面にめり込む。 「これしきで拙者は倒せんぞアヤカシ!」 「ぬうっ、何を!」 「今だ! これで‥‥どうだあ!」 ルオウは強打を繰り出して唐竹割で斬劇を叩き込む。 ドシュウウ! と刀がめり込むが、楽李は拳でルオウを殴り飛ばした。 「おのれい‥‥開拓者ども‥‥この借りはいずれ返してやるぞ。もはや天儀は戦場には事欠かない世界よ! 覚えているがいい!」 楽李はそう言うと、ジャンプして包囲を飛び出して逃走を図る。 開拓者達は楽李を見送った。開拓者達も全力を尽くして、アヤカシボスを追撃する余力は無かったのである。 戦闘終結後、開拓者達は町の復興作業を手伝った。町の三分の一が壊滅的な打撃を受けており、死者も多数出ていた。 「何という酷いことでしょうか‥‥」 幻斗は亡くなった人々の冥福を祈る。 「差し当たりアヤカシは去った。奴らの脅威も無くなれば、町もいずれ元通りになるだろうが‥‥すぐにというわけにもいかぬか」 柳斎は瓦礫をどける作業を手伝いながら、吐息する。 「さて‥‥噂では大きな戦いが始まろうとしているようですね。神楽に戻りましたら、暫しの休息を頂きましょう」 伊予凪は言って再び白虎の被り物を被る。 かくして鉱山街の戦いは終わった。そうして、神楽に戻った開拓者達のもとに、理穴国におけるアヤカシ不穏の知らせが入ってくるのだった。 |