【龍王】禍深の軍
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/03/30 19:40



■オープニング本文

 天儀本島武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。
 首都の天承城にて、領主の龍安弘秀は、次席家老の栗原直光始め、家老衆からの報告を受けていた。
 この一カ月の間、魔の森は沈黙し、アヤカシ軍の攻撃はなかった。北部の成楼始め、東部と南部の主要な里の防備は回復しつつあった。実は鳳華全体としてはかなりの回復傾向にある。今年に入ってから連戦はあったものの、昨年全体を通して被害が少なかったことから、ここ数年の水準と比べると回復傾向であった。
 報告を終えた家老達は、退室していく。残った栗原は、吐息して弘秀に歩み寄った。
「聞きましたか、厳存秘教の件」
「ああ。此隅の正信から文を貰った。長篠安盛の根は深かったのだな。背後に不厳王(iz0156)が関わっていたとは……」
「私は天儀朝廷の壮大な陰謀かと思って、芦屋馨(iz0207)殿を通して藤原家に抗議文を送ったんですがねえ」
「そいつは効果があったろう」
 弘秀は栗原のジョークに笑って、次の会合の文に目を通し始めた。宝珠砲の生産体制に関する報告だ。
「何をお話になっているんですか」
 そこで室内に入って来たのは筆頭家老の西祥院静奈だった。
「ああいや、別に……ちょっと最近の鳳華の回復基調について話していたんだよ」
 栗原は適当にごまかす。
「そう。天儀朝廷の壮大な陰謀に、藤原家に抗議文を送ったとか何とか?」
「いつから聞いてたの」
「壁に耳あり障子に目あり。長篠は確かにアヤカシの内通者だったけど、ちょっと軽率なんじゃない。次席家老様のお言葉とも思えないわね」
「直光、静奈に一本取られたな」
「お屋形様までそんな……ここだけの話じゃないですか」
「嘘よ。ちょっと部下をいじめたくなっただけ」
 静奈が言うと、弘秀は笑って彼女に目を向けた。
「それで静奈、何か」
「東の大樹海に動きがあります。禍津夜那須羅王が不厳王麾下の集団、禍深兵士を展開させていると前線より報告が入っています」
「良くそんな名前が出て来るものだな」
「現場にはギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)がおります。橘から詳細な報告が届いています」
「なるほどな。みな集まってるのか」
「はい」
「では行くとするか――」
 弘秀は立ち上がると、栗原の肩を叩いて、静奈と部屋を後にするのだった。


■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351
22歳・男・志
鬼啼里 鎮璃(ia0871
18歳・男・志
焔 龍牙(ia0904
25歳・男・サ
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
宿奈 芳純(ia9695
25歳・男・陰
朽葉・生(ib2229
19歳・女・魔


■リプレイ本文

 軍議が始まると、大将たちが卓上の地図を見やり言葉を交わす。と、手を上げたのはコルリス・フェネストラ(ia9657)。
「コルリス――」
「私からの提案はあくまで一案ですが」
 と前置きし、作戦案を奏上する。
「基本戦術ですが、敵の動きに応じ衡軛陣から鶴翼陣へ各隊大将の裁量で敵の動きに応じ陣形を変化させ迎撃します。敵到達前には、数重の塹壕網を多数構築。塹壕網を通り味方が分進合撃可能な塹壕防御で迎撃します。騎兵隊は塹壕や防壁内で待機となります。宝珠砲台は鶴翼陣形に配置し榴弾を曲撃。中央に大型、両脇に中型、翼部分は小型を配置。予め各宝珠砲曲射の着弾区域に砲手が識別し易い印を記しておくことを提案いたします」
 続いて――。
「敵の進撃速度から印の区域への到達時間を割り出し、敵到達時に砲弾が着弾する様砲撃。砲撃後各宝珠砲台は後退。私たち開拓者は各自必要な行動をとりますのでご安心頂きたく」
 そして――。
「敵正面と左翼を食い止める間に、敵右翼へは積極的に反撃。敵の崩れを確認次第騎兵隊は突撃し敵右翼を撃破。機動力を生かし敵側面及び後背へ回り、敵を片翼包囲します。味方と連携、挟撃し敵軍を撃破。禍津夜那須羅王が現れた場合は開拓者が包囲し撃破します」
「ふむ……どうか」
 伊野大地は言って、大将、開拓者たちを見渡す。
「皆はん、今回もいつも通り禍津夜那須羅王の軍勢どすぅ。いつも通りやっつけちゃいやしょうぉ!」
 龍安家家臣として明るく自軍を鼓舞するのは華御院 鬨(ia0351)。歌舞伎役者である彼は女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は巫女風のコスプレしたかわいい系の女の子を演じていた。成楼での講演が何かと話題になっている歌舞伎役者である。
「うちもコルリスはんの作戦で良いと思いやすぅ〜。右翼側に配置して、霊騎の部隊がスムーズに移動できるように誘導するのと、その防衛を行いやすぅ」
「今回はまた随分と厄介な編成ですね。何とか食い止めませんと……!」
 言ったのは鬼啼里 鎮璃(ia0871)。
「僕も基本戦術はコルリスさんの提案で良いと思いますね。中央にて霊騎隊突撃までの抑えを担当しましょう。作戦開始前の塹壕作りを頑張りますね〜」
「禍深の軍か、色々な軍が出てくるな。不厳王(iz0156)は、一体いくつの軍を持っているのだ」
 焔龍――焔 龍牙(ia0904)は言った。
「あわよくば禍津夜那須羅王の撃破も狙っていきたいところだが……俺ももコルリスさんの提案する作戦に賛同する。俺としては敵中央に対する防衛に布陣し、片翼が殲滅するまで防衛線を維持する、と言ったところかな。遊軍として戦闘の状況を確認し、押されている箇所を応援し防衛線を維持していく。片翼部隊が敵の背後に回りこんだら、防衛から攻撃に切り替えて敵中央部隊を撃破し、残りの片翼も撃破していく。那須羅王の出陣か仲間からの合図で那須羅王を確認したら、優先順位を那須羅王に切り替え、那須羅王に対して攻撃を行います」
「私は、作戦では主に味方の巫女達と共に、負傷した味方の治療を行いますね。私も霊騎を駆り、負傷された御味方のもとへ迅速に回ります。機動治療を行いますので、恐れ入りますが負傷者周囲の方々には近くへ負傷者を集める作業と、治療要請をお願いします」
 玲璃(ia1114)は言った。
「巫女の力は重要だ。回復なくしてこの大戦を乗り切ることはできない。よろしく頼むぞ玲璃」
「俺はサムライのルオウ(ia2445)! よろしくなー。ほんっとに色々手を打ってくるよなー。こっちも負けてる訳にはいかねえぜぃ!!」
 赤毛の熱血ルオウ少年は言った。
「作戦はコルリス案の作戦で、姉ちゃんの指示に従う形で行動するぜい! 防戦維持を続ける左翼に陣取って敵を迎撃するぜ! 皆! 守り抜こうぜぃ!!」
 熱血ルオウ少年の言葉に、一同力強く頷く。
「今回は騎兵隊の機動と攻撃が要になるでしょうね」
 言ったのは宿奈 芳純(ia9695)。
「私も作戦はコルリスさんの片翼包囲を支持します。恐らく敵は中央突破を狙うでしょうから、私はこれを食い止めます」
 宿奈は思案顔で言った。
「短時間ではありますが、結界呪符『白』の壁を各所に構築し、主に中央と騎兵隊が突撃しない方面を守り、片翼包囲を支援いたします」
「んじゃあ芳純のあんちゃん! こっちの支援もよろしく頼むぜい! 騎兵が右翼に回る分、左翼は動きが鈍りそうだし、禍深兵士から押されるかも知れねえしな! 理想的には、全部の方面で優勢に立てれば良いけどよ!」
 ルオウが言うと、宿奈は頷いた。
「お任せ下さいルオウさん。そっちもカバーしますので」
「私もコルリスさんの作戦案を指示いたしますね」
 朽葉・生(ib2229)も言った。
「その上で、私は敵の遠距離攻撃を防ぐ手段としてアイアンウォールで塹壕網の防壁を多数設置すると共に、片翼包囲へ向けサムライ騎兵を効果的に突入させる為、塹壕網の防壁の中にサムライ騎兵用の隠匿と、倒して騎兵の通過用に使用できる足場を兼ねた防壁の設置案を提示します」
「と言うと……実際どうするつもりなんだ?」
 大地の問いに、朽葉は思案顔で頷く。
「騎兵隊が突撃する場所の塹壕の幅はアイアンウォールの幅より狭くすれば、少し時間はかかりますがアイアンウォールを倒していけば、そのまま騎兵隊が通過できる足場に変える事は可能なはずです。難しければ塹壕を埋め戻す作業を行いサムライ騎兵隊の通る足場を確保します」
「ふむ……なるほどな。まあ、時間的な余裕はあるので、塹壕幅を設定するのは任せておけば大丈夫だと思うがね」
「ありがとうございます」
 それから意見が交わされ、最終的にコルリス案で戦術はまとまる。
「それではまず、塹壕の設置から始めるとしよう。みな、よろしく頼むぞ」
 大地は立ち上がった。
 大将、開拓者たちは「おう!」と出撃した――。

「塹壕掘りに協力しちゃうどすぅ〜」
 華御院は言って、猛烈な勢いで土を掘っていく。見た目が可愛い系の女の子なので、ガチの土木作業を凄まじい速さでこなしていくのは志体持ちのギャップと言える。
「華御院ちゃん、凄い力だね〜」
 そう言う周りの女性陣たちもきゃいきゃい言いながら凄い速さで土を掘っていく。みなでざくざくと掘っていくのを楽しんでいるかのよう。
「今日も今日とて、塹壕掘りですねえ。そのうち、鳳華の前線は塹壕だらけになってしまいそうですね〜」
 飄々とした口調で言いながら、鬼啼里は塹壕を掘り進めていく。
「いや、全くですね。でも、アヤカシが入って来るよりはましでしょうけどね……」
 焔は言って、吐息する。鳳華の魔の森との境界線は大規模な戦場と化している。過ぎ去りし激戦を物語る塹壕や砦の跡地はそこかしこに点在しているのが現状だった。
 玲璃は、霊騎に搭乗して、望遠鏡で敵軍の方を見やる。禍深兵士の軍勢は、戦闘隊形を取りつつ蠢いている。
「玲璃様――」
 巫女たちが言葉を掛けると、玲璃は頷いた。
「みなさんよろしくお願いしますね。禍深兵士たちの戦力は不明ですからね。回復量がどれだけ必要になりますか……」
「おう! みな守りぬこうぜい!」
 ルオウ少年は、「おりゃおりゃ〜!」と壕を掘っていく。
「でででででででででででで〜い!」
 凄まじい勢いでルオウは前進加速する。見る間に積み上げられていく土に、兵士達は呆気にとられる。
「ガキ……すげえな。ただ者じゃねえ……」
「宝珠砲はそこへ。着弾地点を図って下さいね」
 コルリスは、各方面を回り、宝珠砲の設置に注意を払っていた。望遠鏡で着弾地点を確認しつつ、砲の位置を定めて行く。
「宝珠砲は最初の布陣が重要ですからね」
「まあ、撃てばいいと言うものではありませんからね」
 砲兵は、頷き、角度を調整していく。
 宿奈は霊騎を駆り、完成していく壕を確認する。
「いよいよですね。禍深兵士ですか……どんなものですかね」
 宿奈は望遠鏡でアヤカシ軍を観察する。少なくとも、今のところ敵軍は整然とした戦闘隊形を取っている。
「では、私はそろそろアイアンウォールの設置に入りますかね」
 朽葉は、塹壕網の構築作業を手伝っていたが、およそ壕が完成していくと、梵露丸で練力を補充しつつアイアンウォールで塹壕網や自分が提示した並べ方での防壁をできるだけ設置していく。壕の幅は五メートル以内に抑えられ、アイアンウォールを倒して通路が可能なように調整された。

「大地様、アヤカシ軍、前進してきます」
「作戦に従い、迎撃せよ」
「砲撃開始――」
 コルリスは指示を出した。
「撃て!」
 衡軛陣で受けつつ、砲撃が始まる。
 ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ――! と砲撃が撃ち込まれる。
 禍深兵士たちは吹っ飛び、粉々になっていく。だが、禍深兵士は隊列を崩さず、整然と前進して来る。
「凍れ」
 宿奈は、結界呪符「白」を構築する傍ら、氷龍を叩き込む。冷気を纏う白銀の龍のような式を召還し、一直線に吐き出される凍てつく息によって敵を攻撃する。息によりアヤカシの体は凍りつき、超威力の術に消滅していく。
「ではやりますか」
 朽葉は騎兵隊が突撃する片翼側に配置していた。アイアンウォールや塹壕に身を潜めつつ術の範囲内で味方がいない事を確認し、サンダーヘヴンレイを叩き込む。轟音とともに雷を走らせた光の束が直線状を薙ぎ払う。こちらも超威力の魔術がアヤカシ軍を貫通する。
 鬼啼里は弓を叩き込んでいたが、禍深兵士の接近に伴い、魔槍砲を構えて友軍と突進した。
「ではみなさん行きましょ〜。死なない程度に、軽やかに、侵略する炎の如く――」
「片翼包囲が完成するまではこちらで受け止める! 行くぞ!」
 焔も突進した。
 ルオウは左翼にあり、迎撃に当たる。
「てめえら纏めて面倒みてやんぜぃ!! きやがれえええええ!!」
 咆哮を使用して狙いを自分に集める。集まって来たところに仲間を巻き込まない様に気をつけながら回転切りを叩き込む。そして成敗! で決め、大見得を切りつつ周囲の士気を上げる様にする。
「このルオウ様がいる限り、破らせなんかしないぜぃ!! まとめてかかってきやがれってんだ!」
 いつものノリだけどいつもより真剣に。自分たちが押し切られればそれだけ皆が危険にさらされるのはわかってる。だからここは死にもの狂いで全力で立ち塞がる心意気。
「こっから先は!ぜっっったいに行かせねえ!!」
 ここを堪えられればきっと友軍が敵の陣を破ってくれる。それまでの辛抱だ。
 激戦が続く中、玲璃は霊騎を駆り、あちこちで負傷者の回復に回る。
「みなさん、私の元へ負傷者を集めえて下さい。精霊の唄で回復します」
「玲璃殿、よろしくお願いします!」
 負傷者を抱えて、傷ついた兵士たちが彼の周りに集まって来る。
 玲璃の回復力は甚大である。負傷者の傷が見る間に癒えて行く。
「さすがに玲璃殿……並の巫女ではない」
「みなさまも、無理をなさいませぬよう」
 そして、華御院は、右翼にあり、配置された騎兵の突撃のタイミングを図りつつ、禍深兵士を切り捨てて行く。
「再生できへんように浄化しちゃいやすぅ!」
 と白梅香の浄化の力で攻撃をする。
 やがて、アヤカシ軍の攻勢が後退する。
「よーし行け!」
 霊騎の騎兵部隊は、アイアンウォールを倒して道を作りだしていくと、アヤカシ軍の左翼に突進した。
 華御院は「背中は守りやすぅ」と鼓舞して見送りながら、後方から追いかける形で移動しつつ、後方からの攻撃をされた場合に不意打ちとならない様に防衛する。
 騎兵部隊は敵陣を突破し、片翼包囲を完成させていく。
「来ましたね禍津夜那須羅王――」
 コルリスは、軍馬に乗った禍津夜那須羅王を確認し、狼煙銃を打ち上げた。
 禍津夜那須羅王は殿を務めつつ、龍安兵を切り捨てて行く。
「禍津夜那須羅王ってよく見るとぉ、結構男前どすぅ。これから、男前じゃなくなってしまうなんて、もったいないどすぅ」
 華御院は違いな言動で相手の集中を削ごうとする挑発する。
「そんな余裕あるまい、華御院鬨」
 華御院は攻撃は紅焔桜の後に、刀「夜宵姫」での隠逸華で攻撃をフェイクにし、舞傘「梅」での白梅香での隙をついた攻撃で、足を狙って移動力を削ぐ様に攻撃。禍津夜那須羅王の移動の邪魔をして自軍が攻撃されない様に打撃を与える。
 鬼啼里も呼吸と間合いを測り、華御院に意識が向いた所で死角に回り込み攻撃する。魔槍砲を槍として使用し、突き込んだ勢いで至近距離から砲撃。接射状態で一撃を撃ち込む。
「そう簡単にやらせはしませんよ〜」
 焔は突進すると、一撃離脱で撃ち込み。
「攻撃を集中させるぞ!」
 太刀「阿修羅」と魔槍砲「瞬輝」で両足に向け攻撃を行う。太刀「阿修羅」+スキル「ファクタ・カトラス」と魔槍砲「瞬輝」+スキル「ストライクスピア」による切り札。
「唸れ阿修羅、煌け瞬輝! 焔龍、修羅真輝」
 ボウ! と禍津夜那須羅王の馬が粉々になった。
 玲璃も駆けつけ、霊騎を操り、仲間たちの回復に努める。
「玲璃さんお願いします!」
 吹っ飛んだ焔は言って、華御院と鬼啼里の回復を求める。
「お任せ下さい!」
 玲璃は高速走行で回り込み、精霊の唄で回復する。
「禍津夜那須羅王! てめえともここでお終いにしてやる!」
 ルオウも赤き疾風となって禍津夜那須羅王に打ち掛かる。四連撃で打ち合う。
「烈!」
 コルリスは六節+鳴響弓の合成技で連射する。矢が激しく貫通する。
 宿奈は結界呪符「白」で複数壁を構築しつつ、黄泉より這い出る者を練力と気力の続く限り禍津夜那須羅王に放ち続ける。
「貪れ」
「おうっ!?」
 禍津夜那須羅王の肉体が吹き飛ぶ。
 今度こそ絶対に撃破する覚悟をもって、
「貪れ」
 黄泉より這い出る者を禍津夜那須羅王に放ち続ける。宿奈は練力が尽きると、焙烙玉をぶつけて意地でも撃破にこぎつける。
「一体どこまでしぶとい……あちこちに邪悪の芽を張り、あなたは幾つの禍を振り撒いてきたのですか……今日こそ」
 朽葉はララド=デ・メリタを連射し、禍津夜那須羅王の腕をもぎ取った。
「……まだだ、まだ足りない。私の力は……まだ足りない……」
 禍津夜那須羅王は不死身さながらに立ち塞がり、緑光の瘴気を全身から放つと、それを長刀に集め、開拓者達にぶつけた。
 閃光の爆発が開拓者たちを薙ぎ倒す。
 ……禍津夜那須羅王は撤退した。禍深兵士も撤退していく。
 とにかくも、戦には勝利を収めた。それが何よりも開拓者たちの心に一抹の安堵感をもたらすのだった。