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■オープニング本文 天儀本島武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。 首都の天承では、各地から募集広告を見て鳳華に集まって来た砲兵たちが専属の砲兵隊長から教育を受けていた。家長の龍安弘秀の方針であり、砲兵の育成に力を注いでいた。また、生産体制も整えるべく各地の工廠でも準備が着々と進められていた。 南部の里「郷梨」で起こっている戦いはあるにせよ、弘秀はそれだけに頭を集中させるわけにもいかなかった。弘秀の仕事の半分は外政であり、鳳華の戦況を武天国王の巨勢王(iz0088)に逐次報告し、また資金調達に各地を奔走しているのが実際である。内政や軍事の実務を取り仕切るのは筆頭家老始め家老衆たちであり、彼らの下に実戦部隊を統括する武将やサムライ大将たちがいる。 この日も、弘秀は武天の資本家のもとから帰還し、資金調達の段取りを付けたところだった。 「お帰りなさいませ」 筆頭家老の西祥院静奈が出迎えにやってくると、弘秀は飛空船から降り立ち、彼女を抱きしめた。 「やったぞ! ……殿から出資の約束を取りつけた! 天に舞い上がって喜びたいよ!」 弘秀は静奈の手を取って踊り始めた。 「おめでとうございますお屋形様」 「随分ご機嫌なようね」 弘秀の後から降りて来た奥方の春香は、息子の清久郎丸と娘の菊音を連れて呆れた様子。 「お帰りなさいませ奥様。清久郎丸様と菊音様も、旅はいかがでしたか」 「友友は凄いところじゃった。旅泰たちの豪邸がならんでおっての」 旅泰とは泰国の商人たちのことである。友友は旅泰の総本山とも噂される武天国最大級の金融都市なのだ。 「華やかな町でした。泰国とは変わった文化を持っているのですね」 「いつか、お二人も泰国を訪問されると良いでしょう。天儀とは違う文化に触れることは学ぶことも多いですよ」 静奈は優しく言うと、弘秀の手を離した。 「お屋形様、お帰りになって早々なのですが、事件が――」 「郷梨の件か」 「いえ、東です。魔の森――東の大樹海に動きが」 「ふむ……」 弘秀は春香と子供たちに別れを告げると、静奈と歩き出した。 「資本家から言われたよ。俺たちの戦いは波に抗う鯨のようだと。鳳華の戦力はそれはそれで大きいかもしれないが、この世に満ちる瘴気の中ではもがいたところで無駄だろうと。それでも、戦うことに意味はある。戦うことをやめてしまったら、鳳華はお終いだとな」 「どこの国でもそうですが、根本的に私たちはアヤカシに対して有効な策を見いだせていません。開拓者たちが劇的な勝利を収めていますが、世界は広大ですからね」 「…………」 弘秀はうなるように吐息し、「それで事件とは」と続ける。 「詳しいことは芦屋様から」 「芦屋殿も忙しいな――」 弘秀と静奈が執務室に入って行くと、アドバイザーとして龍安家にいる藤原家の芦屋馨(iz0207)と朝廷貴族の長篠安盛、それかれ開拓者ギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)がいた。 「お疲れ様でした弘秀様。成果はおありでしたか」 芦屋が問うと、弘秀は苦笑して席に着いた。 「金を無心に行ったもんですから、先方からはとっととくたばった方がいいんじゃないかと言われましたよ」 「それはひどい」 「冗談ですよ。商談は成立しました。――それで、知らせがあるとか」 弘秀が言うと、芦屋と長篠は着席した。 「東の魔の森から敵軍が出現しました。出現したのは幽霊の集団です。ただの幽霊ではありません。かつて不厳王(iz0156)が用いた古の軍、灰霊幽鬼です」 すると、長篠が補足した。 「なぜ灰霊幽鬼の存在が分かったかと言うと、幽霊どもの外見、装備が古き時代のもので統一されていたからだ。詳しく説明するのは難しいが、いわゆる古代人と言った方がいいだろう」 弘秀はしかめっ面でうなった。 「確かに、古い記録は全て朝廷の奥に眠っているわけですから、我々にそれを知るすべはないわけですが」 「いずれにしましても、灰霊幽鬼はあの万覇軍に匹敵する危険な兵団です。幽霊なのですが空を飛ばず、肉体の一部でもあるその霊体による武器での格闘攻撃を主としており、それは全て非物理攻撃となります。幽霊の格闘戦が想像できますでしょうか? 何と言っても厄介なのが、幽霊である特殊能力を生かした攻撃です。恐らく練力を消費して行われるのですが、こちらの盾や鎧を素通りして非物理による接触攻撃をぶつけてきます。灰霊幽鬼の中でも上位のアヤカシとなりますと、志体持ちでもただでは済みません。そしてまた、極低空を舞うように移動し機動力に長け、障害物を通り抜けてきます」 芦屋の言葉に、弘秀は思案顔。幽体による格闘攻撃が防御を素通りする。そんなアヤカシとは戦ったことがない。幽霊と言えば「呪声」などの遠距離知覚攻撃が常識。 「不厳王はアヤカシの宝庫ですな」 「感心ばかりもしていられません。哨戒中の部隊が魔の森との緩衝地帯で交戦し、死者が一名出ております」 「志体持ちがやられたのか? 本当に?」 「残念ですが」 静奈の言葉に、弘秀は込み上げて来る怒りを押さえこみ、拳を握りしめた。 「橘、お前は――?」 「弘秀殿、すでに開拓者たちも、この灰霊幽鬼なるアヤカシを見極めようと天承へ到着しております」 「なるほどな……」 そうして、弘秀は言った。 「ではその灰霊幽鬼の対応は任せる。俺は亡くなった兵士の家族に手紙を書く」 「脇田七之助。二十一歳。北面生まれの志士で傭兵でした」 「静奈、彼の家族と連絡はとれるのか」 「確認しました。風信機で連絡は取れますので。今からお繋ぎいたしますか?」 「ああ――」 そうして、弘秀と静奈は出て行く。 長篠は、うなるように吐息する。 「早くも死者が出るとは……先が思いやられるな」 「長篠様、今は、戦いに集中しましょう。それに、北面では惨劇が起こっています」 「…………」 長篠は、無言で出て行く。 「馨殿――」 橘は呼び掛けた。 「こんな形でしかお会いできないのが残念ですね。何と言うか、珈琲でも飲みながら話が出来ればいいのですが」 「話と言っても、お互い仕事のことになってしまうんじゃないですか?」 「それでも、いつも事件が起こっている時ですからね。良い思い出が無いですよ」 「鉄州斎殿、急ぎましょう。灰霊幽鬼はすでに里へ向かって展開しています」 「そうでしたな。では行ってきます」 「お気をつけて」 橘と芦屋もここで別れる。 かくして、古の灰霊幽鬼との戦いが始まる――。 |
■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
焔 龍牙(ia0904)
25歳・男・サ
滝月 玲(ia1409)
19歳・男・シ
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
ヴェルナー・ガーランド(ib5424)
24歳・男・砲
ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)
10歳・女・砲 |
■リプレイ本文 軍議に列席する開拓者たち――。 「亡者の軍……死せる者達の姿を取ったそれはどれだけ人の心に恐れを呼ぶでしょうか……。ですが私達は守り通さねばなりません、この里を……この人の世を……。どの程度お役に立てるかわかりませんが、自分にできるだけの事をしていきましょう……。皆さん宜しくお願い致します……」 柊沢 霞澄(ia0067)は内気ながら言葉を選んで言うと、深々とお辞儀した。 「俺はサムライのルオウ(ia2445)! よろしくなー」 赤毛の少年が元気に言った。ギルド屈指の剣客ルオウ少年。 「へっ、流石に次から次へと出てくんじゃねえか、おもしれえ。纏めて叩っ切ってやるぜぃ!!」 上座に座る総大将の天河院は、武将にしては艶やかな雰囲気の女性で、派手な甲冑に身を包んでいた。 華御院 鬨(ia0351)。女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は魔術師ではないが、魔法少女の演技をしている。 鬨は橘鉄州斎(iz0008)ににこにこしながら言った。 「鉄州斎さん、馨さんをお茶に誘ったと聞いたど〜す。結構やり手ど〜すね」 と明るく挨拶する。 「お前何言ってんだ〜、魔法少女なのに、恋愛指南役とはどういうことなんだ〜」 橘は女装しているからと言って遠慮はしない、鬨の頭をぐりぐりかき回した。 「うちに任すといいど〜す、馨さんを口説くのは大変ど〜すよ」 「や・か・ま・し・い」 橘は鬨の口を手近にあったおにぎりで塞いだ。 「今度は幽霊か! 色々いるものだな! だが、いつも通りにやるだけだな」 焔 龍牙(ia0904)は言うと、冷静に諸将の話を聞いていた。「焔龍」の二つ名を持つ猛将の一面を持つ男だが、焔は普段は冷静沈着な人物である。作戦について冷静に聞いていた。 「灰霊幽鬼……厄介な相手のようだが、引くわけにはいかない。やらせん!」 滝月 玲(ia1409)は、友人の焔に言った。 「幽霊の集団と言うのも珍しいですね。さしずめ亡霊軍隊と言ったところでしょうか」 「不厳王(iz0156)の古の兵隊だと言うが……これで終わりかな? 万覇軍も相当手ごわい相手だったが」 「芦屋さんと会う機会があったんですけど、鳳華の七魔将とは桁違いだそうですよ。古の軍隊は不厳王の常設軍みたいなものだそうですから」 「不厳王の動員兵力は絶大……だそうだからな」 それから、滝月は手を上げて、軍議を進めるコルリス・フェネストラ(ia9657)に言葉を投げた。 「迅速な連携にはそれに見合うスピードと意思疎通が実をなします。コルリスさん、今回も砲撃ポイント、タイミング、塹壕網の配置を教えてもらえるでしょうか? 作戦を円滑に行うルートを幾つか頭に入れておきたいので。まずは砲撃を掻い潜ってきた敵を迎撃することになるでしょうしね」 「そうですね……」 コルリスは、コンパスと定規を用いて、卓上の地図に線を引いて行く。 「塹壕網の配置はここに……それから最初の砲撃ポイントはここ……ですね」 「ふむふむ。成程……」 ヴェルナー・ガーランド(ib5424)とルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)も同じ小隊の仲間である。 「はは、これは凄い。戦争だな。素晴しい」 ヴェルナーは言って、不敵に笑った。 「こんな数での殴りあいは胸が躍るものがあるね。素晴しい。足手纏いにならないようにはするさね。まあ銃剣使う事が無い事を祈るだけだが……ルゥミ、頼むぞ?」 ん、胸が躍るね。故郷での野戦を思い出す。少しでも大物仕留めて、報酬上乗せしてもらうべく頑張るさね。――ヴェルナーはジルべリアの銃士隊出身であり、各地の内乱鎮圧に参加していたタフな兵士であった。 「敵の大群が相手なんだね! ヴェルナー猟兵隊の砲撃力、見せてやるんだから!」 まだ十歳のルゥミであるが、原則開拓者に十歳は駄目とか言った年齢制限は存在しない。ルゥミは心優しい老人に見つけられ、ジルべリアの山で育てられた。天儀にわたり、開拓者になってからもルゥミは老人の言葉を忘れたことはない。そして、多くの仲間と出会った。 「ヴェルナーさんは小隊長さんだよ! 合戦ではいつも一緒に火力集中砲火で敵をやっつけてるんだ! コルリスさんの献策案に従い行動するよ! まずは塹壕網作りを手伝うよ! あたい泥だらけになっても頑張る!」 それから、諸将たちはコルリスが語りだすのに耳を傾ける。 「あくまで一案ですが――」 コルリスは、鵬嵐の里防衛の流れは仲間達や天河院舞子や各隊大将を交え相談。前置きすると、作戦案を奏上するが判断はみなに委ねる。 「予め数重の塹壕網を構築し、塹壕網を通り味方が非物理攻撃を回避しつつ移動できる様整備いたします」 続いて――。 「戦闘では陰陽師、砲術士、弓術師をサムライ達の護衛付の形で集中運用いたします。開拓者はペアを組み行動。宝珠砲台は鶴翼陣に配置し榴弾を曲撃します。中央に大型、両脇に中型、翼部分は小型を配置。予め各宝珠砲の曲射の着弾区域に砲手が識別しやすい印を書き記します」 そして――。 「敵の進撃速度から印の区域への到達時間を割り出し、敵到達時に砲弾が着弾する様砲撃指示。宝珠砲台は砲撃後、敵攻撃射程外へ退避します」 最後に――。 「陰陽師隊に結界呪符「黒」で塹壕網の防壁の設置を、敵の攻撃から身を守る形に偽装し、塹壕を突破した敵を包囲する形になる様依頼し、設置した防壁で敵の非物理攻撃を凌ぎつつ防戦します。それから頃合いを見て、味方は後方塹壕へ偽装退避。敵を防壁で包囲された塹壕へ誘導し、後方や周囲の塹壕から支援射撃やサムライ等、前衛系の味方と連携し包囲。陰陽師隊の結界呪符「黒」の防壁効果のある内に包囲攻撃に持ち込み、敵を順次撃破し殲滅を目指します」 コルリスは語り終えると、「私から奏上させて頂くのは以上です」と言葉を切った。 「なるほどな……全体的には悪くない」 天河院は言うと、コルリスの案に補足した。 「もちろんアヤカシどもを全て叩くのは不可能だが、要するにアヤカシどもを撤退に追い込めればよい。灰霊幽鬼の戦闘能力も不明だしな。結界呪符で確実に追い込むのは良かろう。ただし、呪符で敵の前進を全てを押さえることが出来るとも思えん。呪符の周りにも兵士を配置し、確実に幽鬼どもを逃がさぬようにするのも必要だろう」 「確かに、未知の敵と戦うのは手探り状態ですので、その判断は難しいところでした」 コルリスは言って、お辞儀した。 「うむ。だが、基本戦術はお前の立案で行く」 天河院は、それから諸将と開拓者たちを交えて、卓上の地図を囲んで作戦を詰めていく。そうして、龍安軍は出撃態勢を整え、出立した。 ルゥミは、泥だらけになりながらも、シャベルで土を掘り起こしていく。10歳とは言え、志体持ちのルゥミは一般人を軽くしのぐ体力がある。 「よおちびっ子、頑張るなあ」 サムライが声を掛けると、ルゥミは笑った。 「うん! あたい頑張るよ! 幽霊なんかに負けないもん!」 ルゥミの言葉に、サムライ達から笑声が上がる。 ……やがて、塹壕が完成していく。 「敵、灰霊幽鬼、来ます――」 コルリスは望遠鏡を下ろすと、傍らの天河院を見やる。 舞子は頷いた。 「砲撃開始せよ」 コルリスは頷くと、手を上げ、振り下ろした。 「砲撃開始! 撃て!」 砲兵たちの怒号が響き渡ると、27門の宝珠砲が火を吹く。榴弾が着弾し、幽霊たちを粉々に吹き飛ばしていく。 灰霊幽鬼の集団は、地面を滑るように移動して来る。 宝珠砲は三度の集中砲火を行い、後退していく。 「ルオウさん……みなさんも……気を付けて」 柊沢が静かに言って、兵士達を送りだす。 ルオウは頷き、胸に感情を抱き言った。 「今回は霞澄がいるなら兵隊の皆と連携していこうと思う。先陣斬らせて貰うな。俺がひきつけっから皆はフォローよろしく! まだメインじゃないんだし無理せずに、命を大事にさ。これからもこの戦争は続くんだろうし、自分の国を守ろうっていう兵隊さんが主役だもんな」 「何だ、ルオウ、やけに神妙じゃねえか。どうしちまったんだい」 サムライたちは、苦笑する。 ルオウは刀を持ち上げると、先陣を切った。 「俺がいる時は、無茶は俺の担当だぜぃ! よっしゃあああ! いくぜ! 霞澄、いつも通りフォロー、頼むぜぇええ!」 なるべく多くの敵を巻き込み咆哮を叩き込む。龍安兵も咆哮を撃ち込む。 「俺はもともと回避のが得意なんだよ!」 ルオウは幽鬼と激突、一撃二撃と打ち合い、幽鬼の首を刎ねた。 「何が……透過スキルか」 ルオウは刀をすり抜けて来る一撃をかわした。 「これでも食らいやがれ!」 ルオウは回転切りでまとめて幽鬼を切り飛ばした。 「成敗!」 柊沢は、後退して来る友軍兵士を回復させる。 「大丈夫ですか、しっかり……すぐに回復します」 柊沢は精霊の唄で兵士達を癒す。 「ルオウさんは大丈夫でしょうか……」 「はは! あの坊やは大したもんだな。一騎当千の猛者だぜ」 「みなさん、先頭に立つルオウさんを軸に陣を組み、負傷した人は陣の中へ下がって頂き、回復したらまた次に負傷した人と交代して前に……等といった形にして、できるだけ部隊としての戦力低下を防いでいくのが良いかと思います……無茶はしないで下さい」 精霊の唄と閃癒を使い分け、効率良く回復させていく。 魔法少女の鬨は、砲台に近づいて、邪魔しそうなアヤカシをどんどん始末していく。 「宝珠砲に近づけはしないど〜す!」 鬨は、短剣で幽鬼を始末していく。殺到して来る幽鬼の騎兵と激突し、差し貫く。幽鬼は咆哮を上げて瘴気に還元していく。 「さっさとあっちへ行くど〜す!」 鬨は兵士達と連携して、アヤカシをまとめるように追い詰めていく。幽鬼たちは機動力に長けるが、ずば抜けた戦闘能力を持っているわけではない。非物理攻撃と言っても格闘戦は互角。砲台に接近するアヤカシを蹴散らすと、塹壕の前で、後退のタイミングを計る。 ――と、上級幽鬼が集団を率いて前進して来る。 「むむ、新魔法を食らうど〜す」 鬨は、加速すると、紅焔桜&白梅香で「ハッピープラムブロッサム!」と言って針短剣で接近戦をする。紅白でハッピーを演出。 上級幽鬼を貫通する短剣の一撃がアヤカシの肉体を吹き飛ばす。 コルリスは、鬨と連携して動き、 「翔!」 月涙+響鳴弓の合成技で上級幽鬼を撃破する。 「大丈夫ですか華御院さん!」 コルリスは鬨に駆け寄ると、引っ張り上げた。 「幽霊と心中は御免ど〜す」 鬨は土を払って立ち上がると、戦場に目を向ける。龍安軍はどうにか幽鬼の前進を食い止めている。 焔と滝月は前線で連携していた。 塹壕を利用して、アヤカシに発見されない様に移動し、アヤカシに奇襲を仕掛ける。 「玲! 久しぶりに連携と行きますか!」 「了解です」 「炎帝と焔龍の連携、受けきれるかな!」 焔と滝月は勢い飛び出した。幽鬼の戦列の側面から切り掛かる。滝月が槍の一撃を叩き込めば、続いて焔が太刀で打ち込む。幽鬼の防御を打ち貫き、連続で撃破していく。 「龍牙さん!」 「玲! さすが!」 背を預け、隙を潰しあうなどフォローしあう行動を心がける。 二人は巧みな位置取りで幽鬼たちの攻撃を捌いて行くと、前進して来る龍安軍と連携して幽鬼たちを側面から潰していく。 二人の交差攻撃で上級幽鬼の首が飛ぶ。 滝月はそうしながらも良く敵を観察していた。厄介な敵の「透過」スキルを発動する際の前触れが何かないか。良く見ていると、幽鬼は発光して、霊体が半透明になるのが確認された。 「玲!」 焔は、滝月にを庇って、一撃を受け止めた。 「龍牙さんすまない!」 「これしき!」 焔は、幽鬼の首を切り飛ばす。 ヴェルナーは、ルゥミとペアを組み射撃戦を行う。 突出してくる幽鬼を優先に狙っていく。 塹壕を盾に、幽鬼に照準を合わせると、ルゥミ始め、砲術士たちと集中砲撃。 「こんなのでも、一応小隊指揮官さね」 言って、弾を込めつつ、塹壕に身を隠す。 「おい、援護はいるか?」 「当てにしてるぜ小隊長。行くぞ!」 サムライ達は突進する。 「前衛連中、派手にやってるな。騎兵に蹂躙される銃兵てのは、故郷で散々見てきたんでね。優先的にやらせてもらうよ」 言って、ルゥミに合図する。 「ルゥミ、集中射撃だ。鉛玉をたっぷり喰らいな」 「はい! みんな! 一斉射撃だよ!」 砲術士たちは、塹壕から身を乗り出すと連続銃撃。 幽鬼たちは次々と瘴気に還元していく。 「よーしまだ来るぞ、弾込め!」 ヴェルナーは言って、龍安の砲術士とも連携して組織的な一斉射撃を実行する。 「撃て!」 ルゥミも一斉射撃に加わる。 弓術士、陰陽師部隊が連携し、集中砲火で幽鬼たちを討ち取って行く。 ルゥミは長銃「狙い撃ち」を使い、照準眼鏡で敵の動向を視認し、近い敵、足の速い敵を優先し銃撃していく。 そうする間にも、龍安軍は後退のタイミングを着実に測っていた。 陰陽師たちは結界呪符「黒」で防壁を構築していく。 「よし、全軍を後退させろ」 天河院は望遠鏡を下ろすと、命令を下した。 開拓者とサムライ大将たちは連携して兵士達を後退させる。 灰霊幽鬼は後退に合わせて前進して来る。 龍安軍は後方塹壕に一斉に撤退する。 アヤカシは見事にこれに食いついた。 幽鬼たちは、結界呪符で囲まれた防壁の中へ突入して来る。その動きが止まる。 ルゥミはそれを待っていた。 「あたいのデスクロス――魔槍砲「死十字」の出番! あたいの魔砲弾幕受けてみろ! デスクロス・ジェノサイドスパーク!」 魔砲「スパークボム」を連続で撃ち込み幽鬼たちを殲滅していく。 滝月もルオウらも、サムライたちは結界呪符の中へ誘い込むべく咆哮を解き放つ。 幽鬼の群れはなだれ込んできたところを、弓術士と砲術士、陰陽師の集中攻撃によって壊滅させられた。 『人間ども……食ってやるわ……』 赤い光をまとった幽鬼のボス、赤怨幽士が結界呪符を破壊して飛び出してくる。 滝月、焔、鬨、ルオウらは一斉に打ち掛かった。 焔の必殺、魔槍砲+スキル「ヒートバレット」 「焔龍、炎砲槍弾!」 滝月は破軍を3回重ね掛けした一撃を、八極天陣でカウンター気味に攻撃を仕掛ける。 続いてヴェルナーとルゥミ、コルリスの集中攻撃、ルオウらの連撃、龍安兵からの集中攻撃を受けて、赤怨幽士は崩れ落ちた。 赤怨幽士を失い、大打撃を受けた灰霊幽鬼は撤退していく。 「どうにか、勝ったか……」 ヴェルナーは、祝杯を上げた。 鬨は、長篠安盛の姿を探していた。 「流石にいないど〜すね」 と言って辺りに注意をはらうが、他の皆や橘には、 「内通者をばらしたのも敵の内部分裂を狙う作戦かもしれないど〜す。皆、仲良くするど〜す!」 と忠告するのだった。 |